JP2005097016A - 高強度ガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックス及びその製造方法 - Google Patents

高強度ガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックス及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ガラス・フッ素金雲母系原料粉末に添加物を加えて焼結し、添加物の効果によって高密度化し、且つ、雲母粒子の微細化などの微細構造の制御によって、優れた強度を持つガラス基マシナブルセラミックスの製造方法を提供すること。
【解決手段】 ガラス・フッ素金雲母系原料粉末に、ガラス相に溶解する添加物を加えて雲母粒子の成長を抑制して高密度化し、若しくは、雲母粒子の成長が顕著になる温度付近でガラス相に溶解する添加物を加えて焼成収縮速度を高めて高密度化し、さらに、これらの添加物の効果によって、焼結体中の雲母粒子を微細化し、且つ、添加物粒子によりガラス相の分散強化し、また、添加物がガラス相に溶解することによりヤング率を増加させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、旋盤やドリルなど一般の工具を用いて加工できるガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックス[易加工性(マシナビリティー)セラミックス]の高強度化に関するものである。
マシナブルセラミックスは、旋盤やドリルなど一般の工具を用いて加工できるセラミックスのことで、加工時に発生する応力をセラミックス中に分散させた第二成分物質や微細な空隙などによって分散、吸収させることによって減衰させ、材料全体を破壊にいたらせることなく、平易に加工できるようにしたセラミックスのことである。
マシナブルセラミックスには、ガラス・マトリックスに雲母などの劈開性物質を分散させたガラス基マシナブルセラミックス、アルミナなどの酸化物セラミックスに雲母などを分散させた酸化物セラミックス基マシナブルセラミックス、窒化ケイ素や窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスに窒化ホウ素などを加えた非酸化物セラミックス基マシナブルセラミックスなどがある。
特に、表1の組成を持ち、30〜60体積%のフッ素金雲母を含む焼結法ガラス基マシナブルセラミックスは、極めて優れた加工性を示すことが知られている(特許文献1)。
Figure 2005097016
マシナブルセラミックスは、加工応力を減衰するために劈開性などを持つ板状、針状などの形状異方性を持つ粒子を分散させて作製されている。焼結法で作製されるガラス基マシナブルセラミックスは、異方性粒子の成長のため、並びに、これら成長した粒子が互いにぶつかり合って生じるインターロックのため、高密度に焼結することが難しい。
また、これらがマシナブルセラミックス内部に空隙や欠陥を生じる原因となるため、得られるマシナブルセラミックスは、強度が100〜150MPa程度あるいはそれ以下と低い。このようなことから従来のマシナブルセラミックスは、エンジニアリング・セラミックスとして広く使われるに至っていない。このような焼結過程における異方性粒子の成長による強度の低下は、優れた加工性を得るために雲母等の分散質の量を増やすほど起こりやすい。
比較的高い強度が得られる酸化物系及び非酸化物系マシナブルセラミックスは、原料コストが高いこと、及び、製造時の焼結温度が高いことに加えて、非酸化物系では更に窒素雰囲気中で焼結する必要があるなどの理由で製造コストが高くなる。
以上問題はあるものの、特殊な設備を用いることなく、平易な加工が可能なマシナブルセラミックスの特徴は、エンジニアリング・セラミックスとして潜在的に重要な特質であり、マシナブルセラミックスの強度が改善されれば、セラミックスが一般的に持っている耐熱性、耐食性、低熱膨張性、軽量性などの特質を生かして、広く利用されることが期待できる。
特開平3−122045号公報 (特許請求の範囲)
また、ガラス基マシナブルセラミックスは、ガラス相の組成を調整することによって材料の構造や機能を制御できる可能性があり、比較的低温(1000〜1200℃)でも焼結可能で、コスト面で有利であるとともに、温度の制御が容易である。そこで、本発明者らは、フッ素金雲母がガラス・マトリックスに分散した構造をもつガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの高強度化を鋭意検討することとしたものである。
本発明は、原料粉末に添加物を加えて焼結することにより高密度化すること、及び、添加物によって微細構造を制御して優れた強度を持たせたガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法を提供することを解決の課題とする。
セラミックスの強度は、高密度に焼結すること[濱野健也、木村修七編、「新セラミックス工学1ファインセラミックス基礎科学」、朝倉書店(1992)p.99]、材料に内在する亀裂(空隙)の大きさを小さくすること、及び、ヤング率を高くすること[西田俊彦、安田榮一編著、「セラミックスの力学的特性評価」、日刊工業新聞社(1986)p.66]などによってなされる。
本発明者らは、上記問題について種々検討しているうちに、所定の添加物を加え、その微細な粒子を分散して材料の微細組織を制御することによって強度の改善ができることを知得した。この強化機構では板状に成長しやすい性質を持つフッ素金雲母粒子とガラス粉末からなる原料粉末の焼結過程で、雲母粒子が成長して互いにぶつかり合う(インターロック)ことによって生じる空隙の発生とその成長を抑え、密度の向上、雲母粒子の微細化と分散強化により、強度の向上が見込まれることを本発明者らは知得した。
また、所定の添加物を加え、その添加物が焼結過程でガラス相に溶解して緻密化を促進し、高密度化することによって強度の改善ができることを本発明者らは知得した。この強化機構では板状に成長しやすい性質を持つフッ素金雲母粒子とガラス粉末からなる原料粉末の焼結過程で、密度の向上、雲母粒子の微細化、ガラス相のヤング率の向上と分散強化により、強度の向上が見込まれることを本発明者らは知得し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明の目的とするところは、これらの強化機構の一つあるいはいくつかを組み合わせて強度を高めたガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 ガラス相に溶解しない酸化ジルコニウムなどの粉末を添加物として原料粉末に加えて焼結することによって、添加した粉末粒子がフッ素金雲母粒子の成長部分に集まることによって焼結過程における雲母粒子の成長を抑制し、このことによって、インターロックの発生を抑えて焼結体の密度を高めることにより、強度を高めることを特徴とするガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
〔2〕 焼結過程でガラス相に溶解する添加物を原料粉末に加えて焼結し、フッ素金雲母の成長が顕著になり始める温度付近で添加物がガラス相に溶解してガラス相の体積を増やすことによって、インターロックを抑えて焼結体の密度を高めることにより、強度を高めることを特徴とするガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
〔3〕 添加した粉末粒子がフッ素金雲母粒子の成長部分に集まることによって焼結過程における雲母粒子の成長を抑制し、雲母粒子の大きさを小さく抑えることによってセラミックスの強度を高める〔1〕に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
〔4〕 添加した粉末粒子が焼結後のセラミックスのガラス相を分散強化することによりセラミックスの強度を高める〔1〕に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
〔5〕 添加物粒子が溶解して組成が変化したガラス相がフッ素金雲母粒子の成長を抑えてフッ素金雲母粒子の大きさを小さくすることによりセラミックスの強度を高める〔2〕に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
〔6〕 添加物粒子が溶解して組成が変化してガラス相のヤング率を高くすることによりセラミックスの強度を高める〔2〕に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
本発明の〔1〕によれば、フッ素金雲母とガラスとの混合組成の原料粉末に、YTZ(3mol%酸化イットリウムを固溶した正方晶ジルコニア)粉末、固溶成分を含まない酸化ジルコニウム粉末、又は、酸化チタン粉末など、ガラス相に溶解しない添加物を加えて焼結することによって、密度が向上し、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
本発明の〔2〕によれば、フッ素金雲母とガラスとの混合組成の原料粉末に、雲母粒子の成長が顕著になる温度付近でガラス相に溶解するセルシアン粉末などを添加物として加えて焼結することによって、密度が向上し、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
本発明の〔3〕によれば、ガラス相に溶解しない添加物微粒子が雲母粒子の長軸先端部分に集まって、その成長を抑制し、焼結体中の雲母粒子の大きさを小さくすることによって、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
本発明の〔4〕によれば、ガラス相に溶解せず、焼結体中に残留した添加物がガラス相を分散強化することによって、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
本発明の〔5〕によれば、添加物粒子が溶解して組成が変化したガラス相が雲母粒子の成長を抑制して、その大きさを小さくすることによって、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
本発明の〔6〕によれば、添加物粒子が溶解して組成が変化したガラス相が焼結体のヤング率を高めることによって、高強度ガラス基マシナブルセラミックスが得られる。
以下、本発明のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法について、詳細に説明する。
本発明は、特殊な設備を用いることなく、平易な加工が可能なマシナブルセラミックスの内、フッ素金雲母がガラス・マトリックスに分散した構造をもつガラス・雲母系マシナブルセラミックスの原料に材料組織を制御するための添加物を加えて高強度化するものである。
本発明で対象とする原料粉末は、30〜60体積%のフッ素金雲母を含むガラス基マシナブルセラミックス原料で、この原料粉末に添加物を混合した後に焼結することによって、緻密化を促進し,かつ、焼結過程における雲母粒子の成長を制御して高強度化するものである。
本発明における高強度化は、高密度に焼結すること、材料に内在する亀裂(空隙)の大きさを小さくすること、及び、ヤング率を高くすること、微細な粒子を分散してガラス相を分散強化することによってなされる。
焼結過程における緻密化の速度は、原料粒子の大きさが同じであれば、粒子の成長が少ないほど大きいことが知られている。そこで、焼結過程における雲母粒子の成長を抑えれば緻密化の速度を高くすることができるが、このことは、同時に、板状に成長しやすい性質を持つフッ素金雲母粒子が成長して互いにぶつかり合う(インターロック)現象による密度の低下を抑えることにも効果的で、雲母粒子の成長を抑えることによって高密度な焼結体が期待できる。
原料のガラス相に溶解しない添加物を加える場合には、雲母粒子の成長及びインターロックの抑制とこれによる焼結体密度の改善は、添加物を粉末状にして原料に混合し、焼結過程で添加物が雲母粒子の成長部分に集まってその成長を抑制することによってなされる。
この時、加える添加物粒子の大きさは、雲母粒子の成長部分(長軸の先端部分)と同程度の大きさ(0.1〜1μm)であることが適切と考えられるが,それ以下の大きさ(例えば、0.005μm程度)でも、それが雲母粒子の成長部分に集まれば雲母粒子の成長を抑制する効果が期待できる。
ガラス相に溶解しない添加物は、焼結温度以下で前述の表1にその組成を示した原料由来のガラス相に不溶のものであれば良く、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び関連化合物、酸化チタンなど多くのセラミックス粉末が考えられる。
焼結体中の平均的な大きさの雲母粒子(一片が1.5μm、厚みが1μmの六角板状)の六角形の外周を、雲母粒子の厚みの2分の1である0.5μmの球状添加物粒子でとり囲むとすると、雲母粒子1個に対して添加物粒子は18個必要になり、雲母粒子と添加物粒子の体積比は5.8:1.2になる。ガラス・雲母原料中の雲母粒子の体積割合(30〜60体積%)から、必要な添加物の量は6.2〜12.4体積%になる。実際には、雲母粒子の外周を完全にとり囲む必要はないから、その数分の1で雲母粒子の成長を抑制できると考えられ、添加量の最小値の目安は約2体積%となる。
セラミックスやガラスの強度は、材料内部の欠陥の大きさの逆数の平方根に比例するから、雲母粒子の成長を抑制して、欠陥の原因となるインターロックを抑えることは、高密度化ばかりではなく、強度改善にも直接効果があると考えられる。
微粒子を分散したガラスの強度が改善されるように、添加物粒子がガラス・雲母系材料中のガラス相に分散した場合も強度を改善できると考えられるが、この時、添加量は雲母粒子の成長を抑えるために必要な量よりも多くなる。
ガラス相に溶解する添加物による場合には、焼結温度よりもあまり低い温度で溶解してしまうものは好ましくない。ガラス・雲母系原料の焼結温度は800〜1250℃であるので、この温度範囲でガラス相に溶解し、かつ、そのことによって雲母の成長が促進されない添加物が適切である。
このような添加物として、セルシアン[BaSi2Al28]やその関連化合物[(Ba,Sr)Si2Al28、(Ba,Ca)Si2Al28]などが考えられる。
添加物のガラス相への溶解は、添加物粒子の大きさによっても制御できる。例えば、粒子径が0.05μm程度の酸化チタンは1100℃以下ではガラス相に溶解せず、ガラス相に溶解しない添加物として働くが、1100℃以上の温度ではガラス相に徐々に溶解し、ガラス相に溶解する添加物として作用する。
添加物の溶解が雲母粒子の成長と同じ温度範囲で起こるときには、添加量の最小値は、ガラス相に溶解しない添加物を加える場合と同様に、溶解前の添加物が六角板状の雲母粒子の外周をとり囲むことができる程度(2体積%程度)、添加量の最大値は加工性が失われない雲母の体積割合(30〜60体積%)を保つことのできる範囲が適切と考えられる。
添加物が溶解したことによるガラス相の組成の変化は、雲母粒子の成長に影響する。バリウム(Ba)やストロンチウム(Sr)を成分として含むセルシアンが溶解すると、相対的にガラス相中のカリウム(K)の濃度が低下し、カリウムを成分の一つとして含むフッ素金雲母の成長も抑制されると期待できる。
また、バリウムやストロンチウムのような原子量の大きな元素を含む化合物がガラス相に溶解すると、ガラス相のヤング率が増加する。強度はヤング率の増加によっても高くなるので、このような添加物のガラス相への溶解によっても強度が改善されると期待できる。
これらの添加物は、粉末状としてガラス・雲母原料粉末に混合して用いることができる。混合は湿式、乾式のいずれでも可能であり、また、合成したガラス・雲母原料を粉砕する工程で、添加物を加えてガラス・雲母原料の粉砕と添加物の混合を同時に行うこともできる。
添加物を混合した粉末の成形には、通常の金型成形、冷間精水圧成形などが利用でき、添加物を加えたことにより特別な措置を講じた成形装置は必要としない。
本発明の添加物は雲母粒子の成長とインターロックを抑えて焼結を促進するものであり、添加物を加えたことによって焼結温度などを高くする必要はなく、添加物を加えない場合と同じ温度範囲若しくはそれ以下の温度での焼結が可能である。
本発明を以下の実施例及び比較例により詳述する。
以下の実施例及び比較例で使用したフッ素金雲母とガラスを成分とする原料粉末の組成は、フッ素金雲母粒子がガラス中で三次元ネットワークを示すことによって良好なマシナビリティーを示す前述の表1に示した組成のうち、代表的な表2の組成である。この原料粉末は45体積%のフッ素金雲母と残部のガラス粉末よりなる。
Figure 2005097016
この原料粉末に、表3に示す6種類の添加物粉末を内割で3.1体積%から15.9体積%加えてボールミル又は遊星ボールミルにて湿式混合し、5×5×22mmの角柱状に金型成形した後、147MPaで冷間静水圧成形して得た成形体を、大気中、1100℃で2時間焼結して焼結体を作製した。得られた焼結体を、3×3.5×20mmの大きさに研磨し、最終的に1μmのダイヤモンド砥粒で表面を仕上げ、#600の研磨紙で面取りをして試験片とした。
表3のうち、酸化チタン(A−TiO2)、酸化イットリウム固溶正方晶ジルコニア(YTZ)と酸化ジルコニウム(m−ZrO2)はガラス相に溶解しない添加物、組成比の異なる3種類のセルシアン(BAS、B9SAS、B8SAS)は雲母の成長が顕著になり始める950℃付近でガラス相に溶解する添加物である。
Figure 2005097016
実施例及び比較例には、実施例1〜8及び比較例1〜2の番号を付し、それぞれの添加物の種類と添加量、焼結体特性の測定値、焼結体中の雲母粒子の大きさの代表値を表4及び表5にまとめて示した。
図1と図2には、添加物がガラス相に溶解しない場合と溶解する場合のそれぞれについて、焼結過程における試料の収縮量の時間微分である焼成収縮速度を温度の関数として示した。また、図3〜図8には、代表的な焼結体の微細組織を示した。
以下、これら図1〜8について、更に詳述する。
図1は、ガラス相に溶解しない添加物A−TiO2とYTZを加えた実施例1と実施例2の試料の緻密化促進効果を、添加物を加えない比較例1の試料と比較して示したものである。比較例1の試料の焼成収縮速度は950℃付近で一度頭打ちになり、温度が1050℃付近になると再び増加する。焼成収縮速度が頭打ちになったことは原料粉末に含まれる雲母粒子の成長が950℃付近で顕著になり始めたことを示し、ガラス相に溶解しない添加物を加えた実施例1と実施例2には、このような頭打ちが認められないことから、これらの添加物が焼結過程における雲母粒子の成長を抑制して、緻密化に寄与していることがわかる。
図2は、ガラス相に溶解する添加物BAS、B9SAS、B8SASを加えた実施例6〜8の試料の緻密化促進効果を、添加物を加えない比較例1の試料と比較して示したものである。実施例6、7、8ともに、雲母粒子の成長が顕著になり始める950〜1050℃付近での収縮速度の頭打ちを示さない。1050℃以上の温度から急冷した試料のX線回折図形にセルシアンの回折ピークが認められないことと考え合わせると、ガラス相に溶解した添加物が試料の緻密化を促進していることがわかる。
図3は、添加物を加えずに焼結した比較例1の試料のSEM写真である。この試料の長軸積算個数90%径は2.42μmで、3μm程度に成長した板状の大きな雲母粒子も認められ、また、雲母粒子のインターロック部に空隙が認められる。
図4は、添加物としてTiO2を加えて焼結した実施例1の試料のSEM写真である。この試料の長軸積算個数90%径は2.13μmとなり、3μm以上に成長した雲母粒子はほとんど認められなくなる。しなしながら、添加したアナターゼ型TiO2(A−TiO2)は高温安定型のルチル型(R−TiO2)に相転移している。TiO2粒子は等軸状の粒子形状で区別できるが、微細なR−TiO2は少なく、焼結過程で粒成長を起こしている。
図5は、添加物としてYTZを加えて焼結した実施例2の試料のSEM写真である。この試料の長軸個数積算90%径は2.01μmとなり、図4よりも雲母粒子の微細化が進んでいる。図中A部とB部には雲母粒子の長軸先端部分に集まったYTZの微粒子が認められる。また、図中C部はYTZ微粒子の一部がガラス相の内部に分散していることを示している。
図6は、添加物としてBASを加えて焼結した実施例6の試料のSEM写真である。この試料の長軸個数積算90%径は1.72μmとなり、検討した添加物中で最も小さくなったが、写真中にセルシアン(BAS)の微粒子はほとんど認められず、また、X線回折図形も痕跡量のセルシアンの回折ピークを示すのみであった。したがって、添加したセルシアン(BAS)はほとんどがガラス相に溶解していることがわかる。
図7は、添加物としてB9SASを加えて焼結した実施例7の試料のSEM写真である。この試料の長軸個数積算90%径は1.88μmで、図6よりわずかに大きい程度である。この写真にも、セルシアン(B9SAS)の微粒子はほとんど認められず、また、X線回折図形も痕跡量のセルシアンの回折ピークを示すのみで、添加したセルシアン(BAS)はほとんどがガラス相に溶解していることがわかる。
図8は、添加物としてB8SASを加えて焼結した実施例8の試料のSEM写真である。この試料の長軸個数積算90%径は1.74μmで、図6とほとんど同じである。この写真にも、セルシアン(B9SAS)の微粒子はほとんど認められず、また、X線回折図形も痕跡量のセルシアンの回折ピークを示すのみで、添加したセルシアン(BAS)はほとんどがガラス相に溶解していることがわかる。
各実施例及び比較例における測定値は次のようにして求めた。
(1) 試験片の密度は、アルキメデス法で測定し、理論密度に対する百分率である相対密度で表した。
(2) 強度は、インストロン1195型試験機を用い、スパン10mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minで、3点曲げ法により測定した。測定結果は、5〜10本の試験片の強度の平均値とその標準偏差で表した。
(3) ヤング率は、日本パナメトリックス製超音波パルサーレシーバー5800PR型を用い、超音波パルス法で測定した。
(4) ビッカ―ス硬度は、(株)アカシ製、HV−114S型ビッカ―ス硬度計を用い、試験片の表面を更に0.1μmのシリカ砥粒で鏡面に研磨した後、試験荷重を98N、負荷時間を15秒として測定し、5回の測定の平均値として表した。
(5) 材料の微細組織は、試験片の研磨面を酸エッチングし、日立製作所S4300型操作型電子顕微鏡で(SEM)観察することによって評価した。SEM観察で得られた画像データをもとに、200〜240個の雲母粒子の長軸径と短軸径を測定し、平均長軸径、平均短軸径、及び、平均長軸径/平均短軸径としてアスペクト比を求めた。また、長軸径を小さいほうから順に並べた個数積算分布から90%の粒子がその値よりも小さくなる値である長軸個数積算90%径を求めた。
(6) 焼結体中の結晶相は、理学電気製RAD−C型X腺回折形を用いてX線回折法により同定した。
(7) 焼成収縮速度の温度依存性は、前述の角柱状CIP成形体を試料とし、理学電気製TMAを用い、大気中、加熱速度5K/minで測定した。
Figure 2005097016
Figure 2005097016
<実施例1〜8及び比較例1〜2の考察>
1.まず、ガラス相にほとんど溶解しない添加物の効果について、比較例1〜2及び実施例1〜5の結果を表4と表5で比較してみると、添加物を加えずに粉砕だけを行った比較例2は、焼結体中の雲母粒子が小さくなっても密度と強度の向上は不十分であるのに対して、TiO2を添加した実施例1とYTZを添加した実施例2では、密度と強度が大幅に改善されている。また、密度が等しい実施例1と実施例2では、雲母粒子の個数積算90%径が小さくなった実施例2で強度の向上が著しい。
実施例3〜5は、添加量3.1〜15.9体積%の範囲で,高強度化に効果があることを示している。また、安定化剤を加えないm−ZrO2を添加した実施例4の強度はほぼ同じ体積割合でYTZを添加した実施例2の強度とほぼ等しくなっている。ジルコニアの応力誘起変態の効果はイットリアなどを加えて部分安定化したジルコニアに特有の現象であるから、実施例2と実施例4がほぼ等しい強度を示したことは、添加物が密度の向上と雲母粒子の微細化によって強度を高めることを示している。
2.比較例1、並びに、実施例1及び2の焼成収縮速度を図1で比較すると、原料粉末に含まれる雲母粒子の成長が顕著になり始めたことにより生じる比較例1の試料の950〜1050℃付近の焼成収縮速度の頭打ちは、実施例1及び2では明らかに少なくなり、これらの添加物が焼結過程における雲母粒子の成長を抑えて緻密化に寄与していることがわかる。
3.比較例1、並びに、実施例1及び2の焼結体のSEM写真を図3〜図5で比較すると、実施例1では添加したTiO2が成長しているのに対して、実施例2ではYTZがほとんど大きくならずに残っており、これが、実施例1に比較した実施例2の高強度の原因のひとつと考えられる。この時、実施例2の焼結体中のYTZは、雲母粒子の長軸の先端部に埋め込まれたように存在しているものと、ガラス相内部に一様に分散されているものとがあり、前者は雲母粒子の成長を直接抑制して雲母粒子の微細化に寄与し、後者はガラス相を分散強化しているものと考えられる。このため、実施例2の材料は実施例1の材料と同じ密度でも強度が高くなる。
4.次に、ガラス相に溶解する添加物の効果について、比較例1及び実施例6〜8の結果を表4と表5で比較してみると、添加物を加えた実施例6〜8は、密度と強度が大幅に改善されており、雲母粒子の大きさも他の材料に比較して明らかに小さくなっている。密度がほぼ等しい実施例6と実施例7では、ヤング率が高い実施例7が,実施例6よりも雲母粒子が大きいにも関わらず、高強度である。また、ヤング率がほぼ等しい実施例7と実施例8では、雲母粒子が小さい実施例8が高強度である。
5.実施例6〜8の焼成収縮速度を図2で比較すると、950〜1050℃付近の焼成収縮速度の頭打ちは、実施例6〜8では明らかに認められなくなり、また、焼成収縮速度自体も大きく改善されていることがわかる。
6.実施例6〜8の焼結体のSEM写真を図6から図8で比較すると、どの材料中にも残留したセルシアン粒子が非常に少なくなっており、添加物したセルシアンがガラス相中に溶解したことがわかる。このことから、前述した焼成収縮速度の大幅な改善は、セルシアンが溶解してガラス相の体積が増加したことにより生じ、これによって、密度が大幅に改善されたと考えられる。また、表5から、密度の改善に加えてヤング率の改善と雲母粒子の微細化も強度の向上に寄与していることは明らかで、SEM写真等から添加物の残留が確認できないことから、ヤング率の改善と雲母粒子の微細化は溶解によってガラス相の組成が変化したことが原因と考えられる。
<実施例1〜8及び比較例1〜2の考察のまとめ>
フッ素金雲母とガラスから成るマシナブル材料の原料粉末に、ガラス相に溶解しない添加物を加えて焼結すると、添加物は雲母粒子の長軸先端部分に集まって、その成長を抑制し、高密度化と雲母粒子の微細化によって強度の向上に寄与する。
特に、添加物粒子が焼結過程で成長しない場合には、その効果が大きく、上記の効果に加えてガラス相の分散強化による材料の高強度化が可能になる。
フッ素金雲母とガラスから成るマシナブル材料の原料粉末に、雲母粒子の成長が顕著になる温度付近でガラス相に溶解する添加物を加えて焼結すると、添加物が焼結性を大幅に改善して高密度化が可能になり、強度が改善される。
上記の場合で、添加物を溶解したガラス相の組成が雲母粒子の微細化とヤング率の向上に寄与する場合には、強度は大幅に改善される。
ガラス相に溶解しない添加物A−TiO2とYTZを加えた実施例1と実施例2の試料の緻密化促進効果を、添加物を加えない比較例1の試料と比較して示したグラフである。 ガラス相に溶解する添加物BAS、B9SAS、B8SASを加えた実施例6〜8の試料の緻密化促進効果を、添加物を加えない比較例1の試料と比較して示したグラフである。 添加物を加えずに焼結した比較例1の試料の図面代用SEM写真である。 添加物としてTiO2を加えて焼結した実施例1の試料の図面代用SEM写真である。 添加物としてYTZを加えて焼結した実施例2の試料の図面代用SEM写真である。 添加物としてBASを加えて焼結した実施例6の試料の図面代用SEM写真である。 添加物としてB9SASを加えて焼結した実施例7の試料の図面代用SEM写真である。 添加物としてB8SASを加えて焼結した実施例8の試料の図面代用SEM写真である。

Claims (6)

  1. ガラス・マトリックスにフッ素金雲母を分散して易加工性を付与するガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法であって、焼結過程でガラス相に溶解しない添加物粒子を加えて焼結することによって、焼結過程におけるフッ素金雲母粒子の成長と、成長したフッ素金雲母粒子同士がぶつかり合って生じるインターロックとを抑えて高密度化することにより強度を高めることを特徴とするガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
  2. ガラス・マトリックスにフッ素金雲母を分散して易加工性を付与するガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法であって、焼結過程でガラス相に溶解する添加物粒子を加えることによって、添加物が焼結過程でガラス相に溶解して緻密化を促進し、高密度化することによりセラミックスの強度を高めることを特徴とするガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
  3. 添加物粒子が焼結過程におけるフッ素金雲母粒子の成長を抑えてフッ素金雲母粒子の大きさを小さくすることによりセラミックスの強度を高める請求項1に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
  4. 添加物粒子がガラス相を分散強化することによりセラミックスの強度を高める請求項1に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
  5. 添加物粒子が溶解して組成が変化したガラス相がフッ素金雲母粒子の成長を抑えてフッ素金雲母粒子の大きさを小さくすることによりセラミックスの強度を高める請求項2に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
  6. 添加物粒子が溶解して組成が変化してガラス相のヤング率を高くすることによりセラミックスの強度を高める請求項2に記載のガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックスの製造方法。
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JP2007217748A (ja) * 2006-02-16 2007-08-30 Taiheiyo Cement Corp マシナブルセラミックス基板への溶射皮膜の形成方法
WO2018198968A1 (ja) * 2017-04-27 2018-11-01 Agc株式会社 化学強化用ガラスセラミックス複合体、化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法

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