JP2005093603A - 信号伝送用基板装置、信号伝送用基板装置の製造方法、コネクタ、通信装置および通信装置の製造方法 - Google Patents

信号伝送用基板装置、信号伝送用基板装置の製造方法、コネクタ、通信装置および通信装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 信号伝送用基板装置と通信素子とを別体として構成した通信装置を提供する。
【解決手段】 本発明の基板装置14は、第1信号伝達層20と、電源層44または接地層である第2信号伝達層30の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する。この基板装置14は、コネクタ222が挿入される開口部を備えており、この開口部は階段状に形成される。コネクタ222の外部形状も、開口部の形状に合わせて階段状に形成される。これにより、各層とコネクタ222の電極224との電気的接続を確実にすることができる。
【選択図】 図27

Description

本発明は通信を行う通信装置に関し、さらに、通信装置を構成する基板装置と、基板装置に電気的に接続するコネクタ装置に関する。
LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークにおいて、複数の通信端末が同軸ケーブルや光ファイバなどにより接続されている。これらの通信端末は、ネットワーク中のアドレスを指定することにより、所望の通信端末に信号を伝達する。従来のネットワークは、通信端末同士を有線にて接続することが一般であり、近年では、これを無線で接続するシステムも提案されている。例えば、移動デバイスであるノードの全てが所定の伝送半径をもち、ノード間で無線通信を行うアドホックネットワークが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1とは全く異なるアプローチとして、個別の配線を形成することなく、複数の通信素子が信号を中継することにより信号を伝達する通信装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−268127号公報 特開2003−188882号公報
従来の通信ネットワークや実装基板においては端末や素子などを1本の個別配線により一対一の関係で物理的に接続しているため、仮に1本しかない配線が切断された場合には信号を伝達することができなくなり、通信機能が停止する事態も生じうる。また、個々の物理的配線をひくことが面倒であったり、スペースの関係で困難を極める場合もある。特許文献2は、そのような事態を解消する通信装置につき提案しており、優れた効果的な技術であるといえる。特許文献2では、複数の通信素子を基板中に埋設した通信装置について開示しているが、通信素子の実装については改善の余地がある。また、通信手法についても、改善の余地があるといえる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な通信装置に関する技術を提供することにあり、特に通信素子の基板装置への実装に関する技術を提供することにある。さらに、本発明の目的は、従来の通信技術とは異なる新規な通信技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、複数の開口部を備え、開口部は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層を、露出させることを特徴とする信号伝送用基板装置を提供する。この信号伝送用基板装置によると、開口部にコネクタなどの接続部品を装着して、通信素子を実装し、所期の機能をもたせた通信装置を容易に作製することができる。
開口部は階段状に形成されていることが好ましく、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層は、階段状に形成された開口部の平坦部で露出されることが好ましい。これにより、開口部にコネクタを挿入するときに、コネクタの電極と信号伝達層などの層との接続を確実にすることができる。また開口部は、テーパ状に形成されてもよく、さらに筒状に形成されてもよい。このような構造をとることにより、開口部を容易に形成することが可能となる。
開口部は積層構造を貫通して形成されてもよい。貫通させることで、コネクタの止め部材を底面まで挿入して、コネクタと基板装置の固定を容易に行うことができる。複数の開口部は、所定の間隔で設けられることが好ましく、この所定の間隔は、通信素子の通信距離を最大として、その距離以下に定められることが好ましい。
開口部は、間に高抵抗層または絶縁層が介在する少なくとも2つの信号伝達層を露出させてもよい。これにより、通信素子が複数の信号伝達層に接続し、信号伝達層間における信号の送受信を行うことが可能となる。また、少なくとも2つの信号伝達層は、積層構造において別の高さの層に形成されていてもよい。
本発明の別の態様は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層から当該信号伝送用基板装置の表面まで延びる導電路を複数設けたことを特徴とする信号伝送用基板装置を提供する。この表面は、信号伝送用基板装置の上面または底面であってよく、また両面であってもよい。表面まで導電路を延ばすことで、通信素子を表面に固定するだけで通信素子の電極と各層との電気的接続を実現でき、通信素子の装着プロセスを容易にすることができる。
当該信号伝送用基板装置の表面には、信号伝達層から延びる導電路の表出部と、電源層または接地層の少なくとも一層から延びる導電路の表出部との組が複数存在し、各組における表出部同士の間隔は、実質的に等しく設定されていることが好ましい。この表出部同士の間隔は、装着する通信素子の複数の電極の配置と等しくされ、したがって、どの組、すなわちどの表出部のセットに対しても、通信素子を接続することが可能となる。各組は、当該信号伝送用基板装置の表面において所定の間隔で配置されていることが好ましい。この所定の間隔は、通信素子の通信距離を基準に定められることが好ましい。
本発明のさらに別の態様は、絶縁性基板に複数の貫通穴を形成するステップと、貫通する絶縁性の管状部材を所定の貫通穴の上方に形成するステップと、絶縁性基板上に第1導電層を形成するとともに、貫通穴を導電性材料で充填するステップと、第1導電層上に、絶縁層、高抵抗層または誘電層のうちの少なくとも一層を形成するステップと、形成された絶縁層、高抵抗層または誘電層の上に、第2導電層を形成するとともに、管状部材を導電性材料で充填するステップとを備えることを特徴とする信号伝送用基板装置の製造方法を提供する。これにより、複数の層からの導電路を基板表面に表出させ、通信素子などの外部機器との接続を容易とする信号伝送用基板装置を製造することができる。
本発明のさらに別の態様は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置に設けられた開口部に装着されるコネクタであって、開口部に接触する外部形状が階段状に形成され、階段状に形成された平坦部において、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層と電気的に接続するための電極を有することを特徴とするコネクタを提供する。このコネクタによると、基板装置の開口部との電気的接続を安定的に実現することができる。
本発明のさらに別の態様は、互いに絶縁されて積層された少なくとも2つの信号伝達層に接続して、当該少なくとも2つの信号伝達層間における信号の送受信を行う複数の通信素子が設けられ、少なくとも2つの信号伝達層は、積層構造において別の高さの層に形成されていることを特徴とする通信装置を提供する。
本発明のさらに別の態様は、信号を伝達する複数の信号伝達層が形成され、少なくとも2つの信号伝達層に接続して当該少なくとも2つの信号伝達層間における信号の送受信を行う複数の通信素子が設けられ、信号の伝達は、発信元となる通信素子と、送信先となる通信素子の相対的な位置関係を利用して実現することを特徴とする通信装置を提供する。
本発明のさらに別の態様は、網の目状に形成された配線に電気的に接続した複数の通信素子を備えた通信装置であって、各通信素子が、配線上で隣り合う他の通信素子に対して配線を介して局所的な通信を行う通信機能を有しており、この局所的な通信により通信素子間で信号を順次伝達することによって、目的とする通信素子まで信号を伝達することを特徴とする通信装置を提供する。配線は格子状に形成されており、通信素子は、格子状配線の交点に配置されてもよい。また、網の目状の配線が形成される層を含んだ積層構造をもつ基板装置を備え、基板装置は、配線と通信素子との電気的接続を行わせる構造を有することが好ましい。複数の通信素子のうちの少なくとも一部は、外部機器とのインタフェース機能を備えることが好ましい。ここで、外部機器は、コンピュータ、情報装置、通信装置、センサ、発光素子、アクチュエータ、計算素子、メモリなどであってよい。これにより、通信装置が外部機器と片方向または双方向の通信を行うことができ、また2以上の外部機器を通信素子に接続することで、外部機器間の中継装置としても機能することが可能となる。また、複数の通信素子の少なくとも一部は、コンピュータ、情報装置、通信装置、センサ、発光素子、アクチュエータ、計算素子、メモリなどの機能を備えてもよい。
本発明のさらに別の態様は、信号を伝達するための導電配線を網の目状に形成した層を少なくとも1層を含んだ積層構造をもつ基板装置を形成するステップと、網の目状の導電配線に電気的に接続するように、基板装置に複数の通信素子を配置するステップを備えることを特徴とする通信装置の製造方法を提供する。複数の通信素子のうちの少なくとも一部は、外部機器とのインタフェース機能を備えることが好ましい。ここで、外部機器は、コンピュータ、情報装置、通信装置、センサ、発光素子、アクチュエータ、計算素子、メモリなどであってよい。
本発明のさらに別の態様は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層を露出させる開口部が複数設けられており、前記開口部において、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層における露出部分に電気的に接続するコネクタが設けられることを特徴とする信号伝送用基板装置を提供する。
本発明のさらに別の態様は、導電層と、絶縁層または高抵抗層とが、交互に複数段積層された構造をもつ基板装置であって、導電層の材料の硬さは、絶縁層または高抵抗層の材料の硬さと異なるようにされて、硬い層と柔らかい層とが交互に積層されたことを特徴とする基板装置を提供する。
本発明のさらに別の態様は、硬い層と柔らかい層とが交互に積層された積層構造をもつ基板装置に差し込まれるコネクタであって、側面において、積層構造における各層の厚さに合わせた凹凸を設けたことを特徴とするコネクタを提供する。
本発明のさらに別の態様は、導電層あるいは網の目状に形成された配線に対して予め通信素子を配置した基板装置において、複数の通信素子のうちの少なくとも一部がインタフェース機能を有して構成されており、インタフェース機能を備えた任意の通信素子に対して外部機器を電気的に接続することで、当該外部機器との間で片方向または双方向の通信を行う通信装置を提供する。ここで、外部機器は、コンピュータ、情報装置、通信装置、センサ、発光素子、アクチュエータ、計算素子、メモリなどであってよい。
本発明のさらに別の態様は、導電層あるいは網の目状に形成された配線に対して予め通信素子を配置した基板装置において、導電層の一部の領域あるいは網の目状に形成された配線の一部にインタフェース部が構成されており、インタフェース部に対して外部機器を電気的に接続することで、当該外部機器との間で片方向または双方向の通信を行う通信装置を提供する。ここで、外部機器は、コンピュータ、情報装置、通信装置、センサ、発光素子、アクチュエータ、計算素子、メモリなどであってよい。
上記した基板装置は、単一のシリコンウェハ上に形成されてもよい。
なお、本発明の表現を装置、方法で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によると、通信素子の実装が容易な基板装置を提供することができる。これにより、必要に応じて通信装置に所期の追加機能をもたせることも可能となり、設計自由度の高い通信装置を実現することができる。また、故障した通信素子の交換等も容易に行うことができる。
図1は、本発明の実施例に係る通信技術の方式を説明するための図である。この通信方式を連鎖伝達型の通信方式と呼ぶ。小さな円で示す複数の通信素子が空間内に分散して配置されている状態が示される。各通信素子は、その周辺に配置された他の通信素子に対して信号を伝達する局所的な通信機能を有する。この局所的な通信により隣り合う通信素子間で信号を順次連鎖的に中継し、最終目的地である通信素子まで信号を伝達する。
信号の送信元が通信素子200aであり、最終目的地が通信素子200bである場合、連鎖伝達型通信方式によると、信号が通信素子200aから通信素子200cおよび200dを介して通信素子200bに伝達される。信号の伝達方法としては、例えば通信素子200aが、信号が届く範囲にある周辺の全ての通信素子に信号を伝達し、この信号を受けた全ての通信素子が更に周辺の通信素子に信号を伝達することによって、信号を最終目的地まで同心円状に伝達させてもよい。さらに好ましい方法としては、通信素子200aおよび200b間の経路を予めまたはリアルタイムで設定し、この経路により特定の通信素子のみを介して信号を伝達してもよい。特に後者の方法を採用する場合には、信号伝達に必要な通信素子のみが発信するため、電力消費を少なくすることができ、また他の通信素子の通信に対する干渉を低減することも可能となる。
空間内に複数の通信素子が存在し、この空間内には通信素子間を物理的に接続するための個別配線が形成されていなくてよい。例えば、これらの通信素子は、平坦な導電層または導電性基板、交流信号を伝達可能な電磁作用伝達層などに接続されてもよく、また無線により信号の送受が行えるように構成されてもよい。信号の送信は、導電層における電荷の放出により実現されてもよく、また光や電磁波を放出することにより実現されてもよい。ここで通信素子は、チップとして構成されるものに限定されず、本発明の実施例において説明する通信機能を備えたものを含む概念であり、その形態および形状は問わない。
各通信素子は、信号の伝達可能な距離(以下、「有効通信距離」とも呼ぶ)を比較的短く設定されていることが好ましい。信号の通信距離を長くすることは、それだけ電力消費量を大きくし且つ通信に寄与しない他の通信素子に対して悪影響を及ぼす可能性がある。連鎖伝達型の通信方式によると、自身の近傍に存在する通信素子に信号を伝達できれば十分であるため、有効通信距離は周辺の通信素子までの平均距離に応じて設定されることが好ましい。
本発明の通信技術は、様々な用途に応用することができる。例えば、LSIやメモリなどの電子部品(回路素子)に本発明の通信機能をもたせることによって、各電子部品を個別に配線することなく、複数の電子部品を基板実装する技術を提供することが可能である。これとは別に、網の目上に張り巡らされた配線上に通信素子を配設する、従来とは異なる設計思想をベースとする新規な通信実装技術を提供することもできる。また、近年、皮膚の感覚を持つロボットの研究が盛んに行われているが、ロボットの触覚センサに本発明の通信機能をもたせ、触覚センサの検知情報をロボットの頭脳コンピュータに送信する技術を提供することも可能である。また建物の床に本発明の通信機能を有するセンサを点在させることにより、一人暮らしの老人の行動を監視したり、留守中の防犯に役立てることも可能である。また、発光素子に本発明の通信機能をもたせることにより、布状の表示装置などを製造することも可能となる。また、タグに本発明の通信機能をもたせることにより、安価で精度のよい情報の読み取りを可能とするタグを作製することも可能となる。さらに無線通信素子に本発明の通信機能をもたせて例えばコンピュータにそれを装備させ、無線通信素子の近傍に相手方のコンピュータの無線通信素子を配置することによって、コンピュータ間の情報の送受信を容易に行うことも可能となる。また自動車の導電性内壁に本発明の通信機能を備えた通信素子を埋め込み、煩わしい個別配線を不要とした通信装置を実現することも可能となる。なお、後述するように、通信素子をコネクタと通信用LSIなどから構成することで、任意の機能をもたせた通信装置をフレキシブルに実現することも可能となる。
この通信技術は、比較的短い距離に配置された通信素子間で信号を伝達するため、距離による信号の減衰および劣化が少なく、高いスループットでノード数によらない高速伝送を可能とする。また空間内に多くの通信素子を分散して配置させることにより、センサなどの所定の機能をもつチップとの情報交換媒体として広範囲の信号伝達領域を実現する。また、通信素子を比較的自由な位置に配置することができるため、簡易な設計により所望の機能を備えた人工皮膚や表示装置などを生成することも可能である。また従来型の素子同士を個別に接続する配線に関する基板回路設計を不要とし、少ないプロセスで基板回路を製造することも可能である。通信素子を導電層で挟持する場合には電磁ノイズ放射がなくなるため、特に病院などの公共性の高い場所においてはその有用性が高い。さらに、導電層などに障害が生じた場合であっても、チップ間の経路を再設定することができ、新たな通信経路を確立することができるという自己修復機能もあわせ持つ。
図2は、本発明の実施例にかかる通信装置100の外観構成の概要を示す図である。この通信装置100においては、複数の通信素子200が信号伝送用の基板装置14に接続される。基板装置14は、開口部80を複数備えて構成され、この開口部80に通信素子200が挿入されることで、通信装置100の通信機能を実現する。基板装置14は、信号を伝達するための信号伝達層、電源層および接地層などを含んだ積層構造を備えて構成される。なお接地層は、信号伝達層としての役割を担ってもよい。開口部80において、これらの層は外部に露出しており、通信素子200を押し込んで固定することにより、通信素子200と各層との電気的接続が行われる。なお基板装置14は、接地層ないしは電源層を備えず、接地層ないしは電源層として機能する導電体に接続してもよい。例えば、金属で構成される板状部材に基板装置14を貼り付け、この板状部材を接地し、又は板状部材に電荷を供給することで、導電性の板状部材を接地層ないしは電源層としても機能させることも可能である。
通信素子200は、開口部80に嵌合されて基板装置14の積層構造において接続するべき層に電気的に接続するコネクタと、コネクタに電気的に接続する電極を備えた通信用LSIを含んで構成されてもよい。コネクタと通信用LSIは別体として構成されてもよいが、一体として形成されてもよい。この例では、基板装置14が二次元的に一面に広がった構成を有しているが、帯状に一次元的に広がった構成を有してもよい。なお、コネクタは、基板装置14の開口部において、接続するべき層の露出部分に電気的に接続するように予め設けられていてもよく、その場合には、基板装置14は、コネクタ付き基板装置として構成されることになる。コネクタ付き基板装置に通信素子200を接続し、これにより通信装置100が実現されてもよい。なお、この場合、通信素子200は通信用LSIにより構成されてもよく、また、基板装置14に設けられたコネクタと接続するコネクタと通信用LSIを備えて構成されてもよい。
例えば、本発明による通信装置100をロボットの表面を覆う人工皮膚として応用する場合、基板装置14を導電性のゴム材料により形成することが好ましい。可撓性のあるゴム材料で人工皮膚を形成することにより、この人工皮膚はロボットの動作に合せて自在に伸縮することが可能となる。また、個別配線が存在せず、伸縮性のある基板装置14を介して信号を伝達するため、断線などにより通信機能に障害が生じる可能性を低減し、安定した通信能力を提供することも可能となる。また、本発明による通信装置100を回路基板として応用する場合、基板装置14を導電性のゴム材料あるいは導電性繊維で形成することによって、フレキシブルな回路基板を実現することも可能となる。なお、前記したように、基板装置14が積層構造を有する場合には、各層が導電性のゴム材料あるいは導電性繊維で構成されて、全体として可撓性を有することが好ましい。なお、網の目状に形成された配線に通信素子200を接続し、これらの通信素子間で信号伝達することで、安定した通信能力を提供することも可能である。なお、網の目状の配線を形成するため、通信経路の再設定が可能であり、したがって断線などによる障害が生じる可能性を低減することができる。
各通信素子200は通信機能以外に、さらに他の機能を有していてもよい。通信装置100をロボットの人工皮膚として応用する場合には、通信素子200のいくつかが触覚センサとしての機能も有し、外部から受けた刺激を検出した後、他の通信素子と協同して検出した信号を目的の通信素子まで伝達する。また通信装置100を基板の実装技術として応用する場合には、通信素子200が、例えば演算機能をもつLSIやメモリなどの回路素子としての機能を有してもよい。このように、本明細書において「通信装置」は少なくとも通信機能を有する装置の意味で用い、これに付加した他の機能、例えば人工皮膚としてのセンサ機能や電子回路としての演算機能などを有してもよく、またCPUやメモリを含むマイクロコンピュータを含んでもよい。
図3は、通信素子200の機能ブロック図である。通信素子200は、通信部50、処理部60およびメモリ70を備える。メモリ70は、レジスタとして構成されてもよい。通信部50は、基板装置14(図2参照)を介して、他の通信素子との間で信号の送受を行う。処理部60は、通信素子200の通信機能を制御する。具体的に処理部60は、周囲の信号の監視、受信信号の解析や、送信信号の生成および送信タイミングの制御など、他の通信素子200との間の信号伝達に関する行為を行う。また処理部60は、センサ機能や演算機能など通信機能以外の他の機能を実現してもよい。メモリ70は、通信機能や他の機能を実現するために必要な情報を予め記録し、また必要に応じて記録していく。通信素子200がコネクタと通信用LSIとから構成される場合は、通信用LSIが上記の機能を実現する。
以下、通信装置100の構造の具体例につき説明する。3種類の構造例を説明するための図面では、通信を実現するための物理的な構造に着目し、説明の便宜上、通信素子200を基板装置14に埋め込んだ状態で一次元的に示している。なお、通信素子200は基板装置14に予め埋設されて作りこまれてもよいが、図2に関して説明したように、通信素子200は、基板装置14の開口部80に着脱可能に押し込まれて、積層構造を構成する複数の層との電気的接続を実現してもよい。
<構造例1>
図4は、実施例に係る通信装置100の断面を示し、局所的通信を実現する通信デバイス300の構造の一例を説明するための図である。本明細書において「通信デバイス」は、局所的な通信機能を実現する構造の意味で用いる。
この例において通信デバイス300は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、これらの層に電気的に接続する通信素子200を備える。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は絶縁層25により絶縁されており、第2信号伝達層30は接地されたグランド層であってもよい。第1信号伝達層20、絶縁層25および第2信号伝達層30は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。この通信デバイス300において、有効通信距離は第1信号伝達層20または第2信号伝達層30の抵抗と、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間の容量に基づいて定められ、第1信号伝達層20または第2信号伝達層30に電荷を放出することにより信号を発信する。各通信素子200はコンデンサを有していてもよく、放出された電荷は有効通信距離内に配置されている周辺の通信素子のコンデンサに蓄積されてもよい。この場合、周辺の通信素子は、その電圧変化により信号を認識することができる。このように図4に示した通信デバイス300はコンデンサを駆動するように振る舞うことから、この通信デバイスを「電荷蓄積型」の通信デバイスと呼んでもよい。なおこの呼び名は、説明の便宜上、後述する「電流拡散型」の通信デバイスと区別するために名付けたものであって、図4に示した通信デバイス300の特性および構成が、この呼び名の意味により限定されるものではない。
図5は、電荷蓄積型の通信デバイスが信号を発信する原理を説明するための図である。図5(a)は、駆動用コンデンサ34bを充電する通信素子200の状態を示す。通信デバイス300において、主コンデンサ34aは、通信素子200全体を駆動するために必要な電荷を蓄積し、駆動用コンデンサ34bは、通信層36を駆動するために必要な電荷を蓄積する。通信層36は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30(図4参照)を模式的に表したものである。駆動用コンデンサ34bの充電時には、スイッチ32aを開き、スイッチ32bを閉じる。なお、各スイッチ32aおよび32bは、処理部60(図3参照)により所定のタイミングで開閉される。これらのスイッチ32aおよび32bは、MOSスイッチなどにより構成されてもよい。なおスイッチ開閉により容量に蓄積された電荷を通信層36に放出する本方式により、後述の電流拡散型の通信デバイスにおける通信素子を駆動することも可能である。
図5(b)は、駆動用コンデンサ34bを放電する通信素子200の状態を示す。通信デバイス300において、駆動用コンデンサ34bの放電時には、スイッチ32aを閉じ、スイッチ32bを開く。この通信デバイス300は、駆動用コンデンサ34bの電荷を通信層36に放電することによって信号を発信する。1ビットの送信ごとに、主コンデンサ34aから駆動用コンデンサ34bに電荷を移動し、駆動用コンデンサ34bの電荷を通信層36に放電することによって、連続した通信を実現することが可能となる。
図6は、図4および図5に示す通信装置100における通信原理を説明するための図である。図6のようにシート抵抗ρ[Ω]の第1信号伝達層20(正方形シートを切り出したときの向かい合う辺間の抵抗がρ[Ω]であるような材料と厚みでできた層)、誘電率εの絶縁層25、良導層である第2信号伝達層30の3層からなる構造を考える。絶縁層25は、通信素子200の間であって、且つ第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間に介在する。今、通信層36、すなわち第1信号伝達層20と第2信号伝達層30に電源が接続され第1信号伝達層20に電流密度I(x,y)が生じたと仮定する。まず簡単のため、図に垂直な方向では電流は一様であり、図に垂直な方向の層の幅は1であるような1次元問題を考える。ここで第2信号伝達層30の抵抗は、無視できるほど小さいと考える。位置xにおいて層の断面を横切る電流をI(x,t)とすれば(このとき良導体である第2信号伝達層30には−I(x,t)が発生している)、微小領域[x,x+dx]から単位時間に流出する電荷は、
Figure 2005093603
を満たす。ここでq(x,t)は単位面積あたりの蓄積電荷量である。
また、位置xにおける第1信号伝達層20の(第2信号伝達層30に対する)電位V(x,t)は、第1信号伝達層20の厚みが十分小さければ
Figure 2005093603
を満たす。C=ε/dは、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間の容量の単位面積あたりの値である。なおdは、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間隔である。
また第1信号伝達層20の厚みが十分小さく、電流の上下方向分布は一様と仮定できる場合、以下のオーム則
Figure 2005093603
が成り立つ。
上の(1),(2)および(3)から、Iおよびqを消去すると以下の拡散方程式
Figure 2005093603
を得る。(4)式の一般解は
Figure 2005093603
と与えられる。ここで
Figure 2005093603
である。
例えばx=0に電圧源を接続し、強制的にV(0,t)=Vexp(jωt)なる交流電圧を与えると、遠方で発散しない解を組み合わせた以下の関数が電圧分布を与える。
Figure 2005093603
この式より、電圧印加点から一定の距離(拡散距離)
Figure 2005093603
程度以内においては有意に電圧が追従し、それより離れたところでの電圧振幅は指数関数的に減少する。このように通信デバイス300の有効通信距離は、通信層36の抵抗および容量に基づいて定められる。そのため、通信層36の抵抗および容量を適宜設定することにより、所望の有効通信距離を実現することが可能となる。
連鎖伝達型の通信方式においては、近傍の通信素子200との間で信号の送受を行うことができればよいため、有効通信距離を可能な限り短く設定することが好ましい。例えば通信装置100内において、通信素子200間の距離が10cm以内となるような密度で複数の通信素子200が配置されている場合には、有効通信距離が10cm程度となるように通信層36の抵抗および容量を設定することが好ましい。有効通信距離を短く設定することによって、他の通信素子200への干渉や無用な電力消費を低減することが可能となる。式(6)はDを用いると、
Figure 2005093603
として表現される。
図7は、V/V0の実部を縦軸、x/Dを横軸とするグラフであって、電荷蓄積型の通信デバイスにおける電圧と通信距離の関係を示す図である。原点から離れるにつれ、電圧の振幅は指数関数的に減少するため、有効通信距離Dを大きく越える距離への影響は無視できることが分かる。したがって、この有効通信距離Dを通信素子200の密度に応じて好適に設定することにより、効率よい通信を実現することが可能となる。
<構造例2>
図8は、実施例に係る通信装置100の断面を示し、局所的な通信を実現する通信デバイス300の構造の別の例について説明するための図である。この通信デバイス300は、スイッチング動作によって通信素子200を導通させ、その電圧降下によって信号を発信することから、この通信デバイスを「電流拡散型」の通信デバイスと呼んでもよい。なおこの呼び名は、説明の便宜上、前述した「電荷蓄積型」の通信デバイスと区別するために名付けたものであって、図8に示す通信デバイス300の特性および構成が、この呼び名の意味により限定されるものではない。
図8(a)は、電流拡散型の通信デバイスの構造の一例を示す図である。この通信デバイス300は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、これらの層に電気的に接続する通信素子200を備える。第2信号伝達層30は良導体として構成され、グランド層であってもよい。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は、これらの層よりも高い抵抗値を有する高抵抗層40によって導通される。具体的には、通信素子200の周囲に高抵抗層40が設けられ、この通信素子200および高抵抗層40とが第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に挟持される。第1信号伝達層20、高抵抗層40および第2信号伝達層30は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。高抵抗層40の抵抗値を第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の抵抗値に対して適切に設定し、または通信素子200の2つの電極間を素子内部において適切な抵抗値で常時導通させることにより、通信素子200内で第1信号伝達層20および第2信号伝達層30をスイッチング動作により導通させた場合に、発信した信号が遠くまで広がらず、有効通信距離を近傍の通信素子までの短い距離に設定することができる。
図8(b)は、電流拡散型の通信デバイスの構造の別の例を示す図である。この通信デバイス300は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、これらの層に電気的に接続する通信素子200を備える。第2信号伝達層30はグランド層であってもよい。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は絶縁層25により絶縁されており、第1信号伝達層20には、第1信号伝達層20よりも高い抵抗値を有する高抵抗層42が電気的に接続され、この高抵抗層42には、通信素子200に電力を供給する電源層44が電気的に接続されている。電源層44および第2信号伝達層30は、抵抗の低い良導体により構成される。第1信号伝達層20は、高抵抗層42よりも低く、電源層44および第2信号伝達層30よりも高い抵抗値を有するのが好ましい。図示のとおり、第1信号伝達層20上には、高抵抗層42および電源層44とがこの順に積層されている。電源層44、高抵抗層42、第1信号伝達層20、絶縁層25および第2信号伝達層30は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30が絶縁されることにより、これらの層間において電流が定常的に流れる状態を回避することができる。第2信号伝達層30と電源層44は、その抵抗値が非常に小さくなるように形成される。
第1信号伝達層20の抵抗は、有効通信距離に基づいて設定される。すなわち第1信号伝達層20の抵抗を高抵抗層42との関係において適切に定めることによって、電流の拡散範囲を設定することが可能となる。抵抗の調整は、材料によっても、高抵抗層42および/または第1信号伝達層20の2次元的なパターンによっても行うことができる。なお単位面積あたりで、高抵抗層42の縦方向インピーダンスが、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30および電源層44との間の静電容量によるインピーダンスZよりも大きい場合には、拡散距離は第1信号伝達層20の抵抗と静電容量によって決まる。
図9は、図8(b)に示した5層構造の通信装置100の構成を示す。電源層44および第2信号伝達層30は良導体で構成され、第1信号伝達層20は、良導体と高抵抗層42の間の中抵抗値で構成されている。また、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間において、通信素子200同士の間には、絶縁層25が存在している。この5層構造によって第1信号伝達層20と第2信号伝達層30に接続された通信素子200に電力を供給する。高抵抗層42の体積抵抗率はη[Ωm]、高抵抗層42の厚さをd[m]とし、第1信号伝達層20の電位をV(x)、電源層44の電位を一定値VEとすると、第1信号伝達層20から電源層44に向かって電流密度
Figure 2005093603
なる電流が生じる。
したがって、(1)式は
Figure 2005093603
のように変更される。第1信号伝達層20と電源層44および第2信号伝達層30との間の単位面積あたりの容量、すなわち第1信号伝達層20と電源層44の間の単位面積あたりの容量と第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間の単位面積あたりの容量の和をあらためてC[F/m2]と書くと(2)式および(3)式はそのまま成立する。
V(x,t)が時間的に変動する成分(交流成分)のみを表すとすると、(4)式は
Figure 2005093603
となる。
2次元問題においては電流密度ベクトルI(x,y,t)に対し、(1)式が
Figure 2005093603
のように変更され、第1信号伝達層20の電圧の交流成分V(x,y,t) に関する方程式
Figure 2005093603
が得られる。この解は、1次元問題において求めた解に含まれる変数ωCを
Figure 2005093603
のように置き換えることで得られる。いま、変位電流よりも高抵抗層42を垂直方向に流れる電流の方が支配的、すなわち
Figure 2005093603
の場合には、1次元問題の解は
Figure 2005093603
と書かれる。したがって、有効伝達距離
Figure 2005093603
に対し、
Figure 2005093603
が成立する。例えば第1信号伝達層20の抵抗を適宜設定することにより、所望の有効通信距離を得ることが可能となる。
図8(c)は、電流拡散型の通信デバイスの構造の別の例を示す図である。この通信デバイス300は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、これらの層に電気的に接続する通信素子200を備える。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は絶縁層25により絶縁されており、第1信号伝達層20には、第1信号伝達層20よりも高い抵抗値を有する高抵抗層42が電気的に接続され、この高抵抗層42には、通信素子200に電力を供給する電源層44が電気的に接続されている。同様に、第2信号伝達層30には、第2信号伝達層30よりも高い抵抗値を有する高抵抗層46が電気的に接続され、この高抵抗層46には、通信素子200に電力を供給する電源層48が電気的に接続されている。図示のとおり、第1信号伝達層20の上面に、高抵抗層42および電源層44とがこの順に積層されており、第2信号伝達層30の下面に、高抵抗層46および電源層48とがこの順に積層されている。電源層44、高抵抗層42、第1信号伝達層20、絶縁層25、第2信号伝達層30、高抵抗層46および電源層48は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。図8(b)に示した通信デバイス300は、通信素子200の片面のみに積層構造を形成していたが、図8(c)のように、通信素子200の両面に上下対称な積層構造を形成してもよい。各層の構成および特性については、図8(b)に関連して説明したとおりである。
図10は、電流拡散型の通信デバイスが信号を発信する原理を説明するための図である。この通信デバイス300において、主コンデンサ34は、通信素子200全体を駆動するために必要な電荷を蓄積する。通信層36は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30(図8参照)を模式的に表したものである。この通信素子200は、MOSスイッチなどにより構成されるスイッチ32のスイッチング動作により電極間インピーダンスを変化させ、信号を発信する。なおスイッチ32は処理部60(図3参照)により所定のタイミングで開閉される。スイッチ32に直列にダイオードを挿入してもよい。なおこの方式で、電荷蓄積型の通信デバイスの通信素子200を駆動することも可能である。
スイッチ32を閉じると、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30とが短絡する。その結果、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間に電圧降下が生じ、近傍の通信素子がその影響を受け、この電圧降下を信号として認識する。前述のとおり、連鎖伝達型の通信方式においては、この電圧降下の影響は、近傍の通信素子に伝達されればよく、遠くに位置する通信素子にまで伝達される必要はない。有効通信距離を近傍に位置する他の通信素子の距離程度に設定することにより、電力消費を少なくすることができ、また他の通信素子との干渉を低減することも可能となる。
次に、通信素子200に電力を供給する方法について説明する。その一つの方法として、図8(b)に示すように、通信デバイス300を多層構造に形成することにより、電源層44から電力を通信素子200に供給することが可能である。通信素子200と電源層44との間に高抵抗層42を介在させることにより、電荷が低抵抗である電源層44全面に供給される。そのため通信装置100全体に分布している通信素子200のコンデンサを安定して充電することができる。
<構造例3>
図11(a)は、実施例に係る通信装置100の断面を示し、局所的通信を実現する通信デバイスの構造のさらに別の例を説明するための図である。この例において通信デバイス300は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に電磁的に接続する通信素子200と、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間に配置される誘電層22とを備える。図示のごとく、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は、誘電層22および複数の通信素子200を挟持する。通信素子200と誘電層22は、電磁的に接続する。第1信号伝達層20、誘電層22および第2信号伝達層30は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。第2信号伝達層30は接地されたグランド層であってもよい。
通信デバイス300は、信号を発信するために、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の通信素子200側の表面から、電荷の吸出しおよび放出を繰り返し、交流電流Iを発生させる。層厚などの条件を適宜定めることにより、交流電流Iにより発生する電場や電磁場を誘電層22に閉じ込めることができ、電磁波動を誘電層22内で2次元放射状に伝達させることができる。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に流れる電流は、誘電層22側の表面付近のみを流れ、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の電気伝導率によって、電磁波動の伝達距離がきまる。これらの電気伝導率が大きいほど、減衰は小さく、伝達距離、すなわち有効通信距離が長くなる。
第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は、金属や導電性ゴム材料などの導体により構成されてよいが、誘電体により構成されてもよい。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30が誘電体で構成される場合、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は、誘電層22の誘電率よりも小さい誘電率を有する材料から構成される。これにより、誘電層22内に電場や電磁場を閉じ込めることが可能となる。なお、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30は、空気や真空のような構成をとってもよい。
また電場や電磁場を発生させる交流電流Iは、均一な電流であってもよいが、変位電流であってもよい。なお電磁場を発生させるために、レーザーやLEDによる光などの電磁波を用いることも可能である。
図11(b)は、局所的通信を実現する通信デバイス300の構造の別の例を説明するための図である。この例では、通信デバイス300が、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30と、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に電磁的に接続する通信素子200と、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間に配置される誘電層22aおよび22bと、誘電層22aと誘電層22bとの間に配置される導電層24を備える。第1信号伝達層20、誘電層22a、導電層24、誘電層22bおよび第2信号伝達層30は、図2における基板装置14の積層構造に対応する。通信デバイス300がこのような構造をとった場合であっても、通信素子200中に交流電流を発生させることにより、電場または電磁場を利用した通信が可能となる。
図12(a)は、図11(a)に示す通信デバイス300が信号を発信する基本原理を説明するための図である。通信デバイス300は、スイッチ26を交互に切り替えて、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間で電荷の吸出し、放出を行い、交流電流を生じさせることにより、電磁場を発生させる。この電磁場は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に挟持される誘電層22中を伝わって、近傍に位置する通信デバイス300まで伝達される。
図12(b)は、図11(a)に示す通信デバイス300が信号を発信する原理の別の例を説明するための図である。通信デバイス300は、一組のスイッチ26aおよびスイッチ26bを同時に交互に切り替えることにより、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間に交流電流を発生させ、電磁場を発生させる。
図13は、構造例3における通信デバイス300の具体的な実現例を示す。この通信デバイス300は、グランド層である第2信号伝達層30および電源層44と、第2信号伝達層30および電源層44に電磁的に接続する通信素子200と、第2信号伝達層30および電源層44の間に積層された誘電層22、第1信号伝達層20、誘電層43を備える。第2信号伝達層30、誘電層22、第1信号伝達層20、誘電層43および電源層44は、この順に積層され、図2における基板装置14の積層構造に対応する。通信素子200は、誘電層22および誘電層43に、電場または電磁場を発生させることにより信号を発信する。通信素子200は、第2信号伝達層30および電源層44に挟持され、周囲を誘電層22、第1信号伝達層20および誘電層43に囲まれて構成される。誘電層22、第1信号伝達層20および誘電層43は、通信素子200に電磁的に接続している。この構造により、通信素子200は、誘電層22および誘電層43における電場または電磁場をそれぞれ検出し、誘電層22および誘電層43における電場または電磁場の差分を検出することによって、信号を高い精度で検出することが可能となる。差分をとることにより、外部から混入するノイズの影響を最小とすることができ、SN比をあげることができる。第1信号伝達層20と、電源層44および第2信号伝達層30の間に図12(a)のようなスイッチ26を設けることにより、第1信号伝達層20と電源層44、および第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間をショートすることができ、第1信号伝達層20の電位をふりやすくなる。これは、通信素子200が電源層44およびグランド層である第2信号伝達層30に接続したことの利点である。
図14(a)は、図13に示す通信デバイス300を実現する回路動作の概要を示す。通信デバイス300は半導体製造技術を用いてシリコン上に形成されてもよい。通信デバイス300は、pMOSとnMOSを接続したMOSスイッチなどのスイッチ26を有し、スイッチ26は、通信素子200と、グランド層である第2信号伝達層30および電源層44との電磁的な接続を交互に切り替える。具体的には、スイッチ26が、送信すべき信号の論理値に応じて、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の接続と、第1信号伝達層20および電源層44の接続とを切り替え、電磁波動として信号を発信する。なお、既述のごとく、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間には誘電層22が設けられ、また、同様に、第1信号伝達層20と電源層44との間には、別の誘電層43が設けられる。入力部52には、送信すべき信号の論理値に応じた電圧が印加され、スイッチ26によるスイッチング動作が実行される。通信素子200内の処理部60(図3参照)が入力部52に入力信号を供給する。
スイッチ26によるスイッチング動作の結果、第1信号伝達層20から第2信号伝達層30に、また電源層44から第1信号伝達層20に電流が発生し、第1信号伝達層20と第2信号伝達層30の間に存在する誘電層22、および電源層44と第1信号伝達層20の間に存在する誘電層43において、2次元放射状に広がる電場または電磁場が発生する。この電場または電磁場は、隣接する通信素子200に伝播される。
隣接する通信素子200は、電場または電磁場の変化を観測し、信号を検出する。隣接する通信素子200は、誘電層22において発生した電場または電磁場から信号を検出してもよく、また誘電層43において発生した電場または電磁場から信号を検出してもよい。なお、既述のごとく、通信素子200は、誘電層22および誘電層43の両方において発生した電場または電磁場から信号を検出してもよい。誘電層22および誘電層43における電場または電磁場をそれぞれ検出し、誘電層22および誘電層43における電場または電磁場の差分を検出することによって、外部から混入するノイズの影響を最小とすることができ、SN比をあげることができる。
図14(b)は、第1信号伝達層20に印加する交流電圧の振幅を制限する回路の例を示す。電源層44および第2信号伝達層30から第1信号伝達層20に電圧を印加する電力経路のそれぞれに、電圧を制限するための電圧制限素子54、この例ではダイオード列を配置させる。電圧制限素子54として、1個または複数個のダイオードを順方向にそれぞれの電力経路に挿入することにより、第1信号伝達層20に印加する電圧を制限することができる。電圧制限素子54を設けない場合、第2信号伝達層30からのグランド電圧(0[V])と、電源層44からの電源電圧(E[V])とが交互に第1信号伝達層20に印加されるが、第2信号伝達層30からの電力経路と電源層44からの電力経路にそれぞれn個のダイオード列を順方向に挿入した場合には、第1信号伝達層20には、ne[V]と(E−ne)[V]の電圧が交互に印加されることになる。ここでe[V]は、ダイオードの順方向電圧を示す。
電圧制限素子54を設けることにより、電源電圧が信号発信に必要な電圧よりも十分高い場合であっても、印加電圧を必要なレベルにまで下げることが可能となる。また、電圧制限素子54を電力経路に挿入することによって、電流量が減るため、消費電力を下げることができ、通信デバイス300の省電力化に寄与することになる。なお、第2信号伝達層30と第1信号伝達層20の間に設けられる電圧制限素子54aと、電源層44と第1信号伝達層20の間に設けられる電圧制限素子54bの抵抗値は異なってもよい。
以上、通信装置100を構成する通信デバイス300の構造例について説明した。通信デバイス300は所定の通信距離を有しており、基板装置14が一様な積層構造を有する場合は、隣接する通信素子200同士が、基板装置14において、互いに通信距離の範囲内に位置するように配置されればよい。これにより、通信素子200を自由に配置することが可能となり、システムの柔軟性という観点から優れているといえる。
以下では、基板装置14に工夫を凝らし、通信の安定性を高めるために基板装置14を複数のサイトに分割して、このサイトを利用して通信装置100を構成する例について説明する。なお、第1信号伝達層20に関して説明するが、第2信号伝達層30も第1信号伝達層20と同様の構造および機能等を具備することができる。
図15(a)は、通信装置100における第1信号伝達層20の抵抗分布を示す。第1信号伝達層20は、複数のサイト210と、サイト210を囲む高抵抗領域212を含む。サイト210は、高抵抗領域212よりも低い抵抗値を示し、低抵抗領域を構成する。通信素子200はサイト210に配置され、最も単純な構造においては、1つのサイト210につき1つの通信素子200が存在する。図示のごとく、第1信号伝達層20において、5×5の四角形のサイト210が形成されている。なお、1次元的にサイト210と高抵抗領域212とを交互に配置し、帯状の第1信号伝達層20を構成してもよい。
最初に、信号を発信する通信素子200の周囲に連続的な電圧勾配が生じ、この電圧降下を検出することにより、信号を認識する場合について考察する。電極の大きさが電圧降下の生じる拡散距離よりも著しく小さい場合、電極付近での電圧降下が大きくなる。図15(b)は、均一な抵抗で第1信号伝達層20が形成されているときの電圧振幅分布を示す。発信する通信素子200から離れた地点に所定の閾値以上の電圧を発生させるためには、発信する通信素子200の電極における信号振幅を大きくする必要がある。
第1信号伝達層20に図15(a)に示すような抵抗分布を設定し、通信素子200を発信させると、サイト210内では、ほぼ均一な電圧を伝達できるようになる。高抵抗領域212の抵抗値を適切に定めれば、信号を発したサイト210から一定の距離までは閾値以上の信号電圧が到達し、それより遠くでは閾値以下となるように、到達信号強度を段階的に変化させることができるようになる。これにより、安定した信号伝達が可能になる。なおサイト210は四角形に限らず、任意の形状であってよい。
図15(c)は、第1信号伝達層20を抵抗分布をつけて形成したときの電圧振幅分布を示す。図15(c)は、図15(a)において図示する通信素子200eが信号を発信したときの横方向の電圧振幅分布を示している。第1信号伝達層20において、サイト210内では電位に大きな変動はなく、高抵抗領域212を通過するときに、大きな電圧降下が生じる。通信素子200eが発信したサイト210aにおいては、電位が、電源層44から印加される電位Vに保たれる。また、横方向に隣り合うサイト210bにおいては電位が全体的にVに保たれ、さらに横方向に位置するサイト210cにおいては電位が全体的にVに保たれる。したがって、各サイト210における通信素子200の受信電圧の閾値をVからVの間に設定しておけば、発信する通信素子200に隣接する通信素子200のみが信号を受信することができ、さらに隣の通信素子200は信号を受信することができなくなる。すなわち、第1信号伝達層20における抵抗分布および通信素子200の受信電圧閾値を適切に設定することにより、近傍の通信素子200のみに信号を伝達することが可能となる。これにより、信号の有効通信距離を制限し、信号の衝突を減少させることができるため、連鎖伝達型の通信を安定的に実現することができる。
以上は、電圧降下を利用した信号伝達を行う通信デバイス300を備えた通信装置100の例であるが、電磁場を利用した信号伝達を行う通信デバイス300に対しても、第1信号伝達層20に抵抗分布を設けることは有効である。
電磁波動の減衰率は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の伝導率、言い換えると電気抵抗によって定まる。そのため、高抵抗領域212においては電磁波動の減衰が大きくなる。このことを利用して、高抵抗領域212により電磁波動を強く減衰させることにより、電磁場を近傍のサイト210に局在させることが可能となる。すなわち、隣接するサイト210における通信素子200のみが電磁場の変化を観測できるように、第1信号伝達層20を形成することができる。
図16は、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30に厚み分布を設けた構造を示す。第1信号伝達層20および第2信号伝達層30の間隔を一部狭めることにより、電磁波動の減衰効果を高めてもよい。図示のごとく、電磁波動の伝達経路、すなわち誘電層22の厚みに変化をもたせることにより、狭くなった伝達経路において電磁波動を反射させ、これにより、信号の有効通信距離を制限し、信号の衝突を減少させることができ、連鎖伝達型の通信を安定的に実現することができる。なお、電磁波の吸収体や反射体を第1信号伝達層20と第2信号伝達層30との間に配置し、信号の有効通信距離を制限することも可能である。この場合、電磁波動が通過するスペースはあけておく必要がある。
図17は、サイトを利用した通信装置100の構造の変形例を示す。通信装置100には、信号を伝達する複数の信号伝達層410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410h、410i(以下、総称する場合は「信号伝達層410」と呼ぶ)が形成される。信号伝達層410は導電性材料により形成され、近傍の信号伝達層410とは互いに絶縁される。隣り合う信号伝達層410の間には高抵抗層420が設けられてもよく、また各信号伝達層410は、互いに離間して高抵抗層420上に設けられてもよい。ここで高抵抗層420は絶縁層として存在してもよい。また、複数の信号伝達層410は、積層構造として形成され、近傍の信号伝達層410同士は、積層構造の上下方向に絶縁層を介して重なり合って配置され、通信素子200が、絶縁層中に設けられて、上下方向で信号伝達層410と接続してもよい。図17の通信装置100においては、信号伝達層410がサイトを構成し、信号を伝達するための第1信号伝達層としての役割を果たす。なお、概念的には、高抵抗層420も信号を首尾よく伝達するために設けられるものであるため、高抵抗層420および信号伝達層410を含めて、第1信号伝達層と呼んでもよい。
通信装置100には、2つ以上の信号伝達層410に接続して、当該2つ以上の信号伝達層410間における信号の送受信を行う計12の通信素子200e、200f、200h、200i、200j、200l、200m、200o、200p、200q、200s、200tが設けられる。図17の例では、縦横3×3個の信号伝達層410が形成されているが、中央の信号伝達層410eを除く周囲の信号伝達層410には、1つの信号伝達層410にのみ接続する計12の通信素子200a、200b、200c、200d、200g、200k、200n、200r、200u、200v、200w、200xが設けられる。このように、通信装置100においては、信号伝達層410内または信号伝達層410間における信号の送受信を担うべく、計24の通信素子200が設けられている。図17においては、計12の通信素子200が、隣り合う2つの信号伝達層410を接続するべく設けられているが、別の例においては、そのうちの一部の通信素子200が省略されてもよい。また図示の例では、信号伝達層410の個数が少ないため、通信素子200の全体の個数(計24)に対して、複数の信号伝達層410にまたがる通信素子200の個数(計12)の占める割合が50%に過ぎないが、信号伝達層410の個数が増えるにつれて、その割合は高くなる。説明の便宜上、以下では、特に断らない限り、通信素子200が、複数の信号伝達層410に接続する場合を想定して、通信装置100の説明を行う。
図17に示す構成例において、通信素子200は、隣り合う2つの信号伝達層410に電気的に接続し、接続する信号伝達層410内に設けられた他の通信素子200との間で信号を送受信する機能を有し、また接続する2つの信号伝達層410間において信号を送受信する機能も有する。信号伝達層410内における通信機能として、例えば通信素子200eは信号伝達層410aと信号伝達層410bとに接続するが、信号伝達層410a内に設けられた他の通信素子200a、200dおよび200hとの間で信号を送受信することができ、また信号伝達層410b内に設けられた他の通信素子200b、200fおよび200iとの間でも信号を送受信することができる。この信号伝達層410内における通信を、内方向の通信と呼ぶ。また、信号伝達層410間における通信機能として、通信素子200eは、信号伝達層410aを伝達される信号を信号伝達層410bに伝達することができ、また信号伝達層410bを伝達される信号を信号伝達層410aに伝達することもできる。この信号伝達層410間における通信を、外方向の通信と呼ぶ。例えば通信素子200eは、信号伝達層410aにおける通信素子200aから信号を受信して、信号伝達層410bにおける通信素子200fに送信することができ、また、その逆も可能とする。各通信素子200が上記のような機能をもつことにより、図17に示す通信装置100は、配線を形成することなく、任意の通信素子200間における通信を実現することができる。
通信装置100における信号伝達方法を、通信素子200dから通信素子200fに信号を伝達する場合を例に説明する。ここでは、通信素子200dが信号の送信元であり、通信素子200fが信号の最終目的地であることを仮定する。この場合、まず通信素子200dが、信号伝達層410aを介して通信素子200eに信号を伝達し、通信素子200eが、信号伝達層410bを介して通信素子200fに信号を転送する。通信素子200eに注目すると、通信素子200eは、通信素子200dとの間で信号伝達層410a内通信を行い、また通信素子200fとの間で信号伝達層410b内通信を行うことによって、結果として信号伝達層410bと信号伝達層410cの間の通信を実現することになる。このように各通信素子200が、互いに絶縁された複数の信号伝達層410に接続して、信号伝達層410間の通信を行うことにより、信号を送信元の信号伝達層410から所期の目的地となる信号伝達層410まで順次伝達することができ、送信元および最終目的地間の信号伝達を実現することが可能となる。
各信号伝達層410には、センシングユニット、パワーユニット、また表示ユニットなど、各種機能を実現するための構成が備えられてもよい。特に、これらのユニットを容易に置換可能とすることで、応用性の高い通信装置100を実現することができる。また、各通信素子200は外部機器に対するコネクタなどの機能を備え、外部機器との接続を可能としてもよい。通信素子200に外部機器とのインタフェース機能をもたせることにより、通信装置100を様々な環境で利用することが可能となる。例えば通信素子200は、誘導結合を用いた近接接合を行うコネクタを有してもよい。また、通信素子200は、光を用いる近接接合を行うコネクタを有してもよい。さらに、通信素子200は、容量結合を利用する近接接合を行うコネクタを有してもよい。また、通信素子200は、機械的なコネクタを有してもよい。なお、通信素子200のインタフェース機能については、図17に示す通信装置100だけでなく、本明細書において示す他の通信装置100においても備えられることが好ましい。なお、通信装置100において、全ての通信素子200がインタフェース機能をもつ必要はなく、一部の通信素子200のみが有していてもよい。
図18(a)は、図17に示す通信装置100の断面の一例を示し、この例では、隣り合う信号伝達層410が高抵抗層420により絶縁されている。隣り合う信号伝達層410間は、通信素子200により接続され、信号伝達層410間の通信が実現される。
図18(b)は通信装置100の断面の別の例を示し、この例では、隣り合う信号伝達層410が互いに離間して高抵抗層420上に設けられる。隣り合う信号伝達層410間は、通信素子200により接続され、信号伝達層410間の通信が実現される。
図19(a)は、通信装置100の構成の変形例を示す。この通信装置100は、6角形の複数の信号伝達層410と、信号伝達層410間における信号の送受信を行う複数の通信素子200とを有する。図18に示す通信装置100と同様に、各信号伝達層410は、高抵抗層420により絶縁されている。
図19(b)は、通信装置100の構成の変形例を示す。この通信装置100では、信号伝達層410内に高抵抗領域430が形成されて、信号伝達層410内の導電領域が部分的に形成されている。なお、図18に示す通信装置100と同様に、各信号伝達層410は、高抵抗層420により絶縁されている。
図19(c)は、通信装置100の構成の変形例を示す。この通信装置100は、4角形の複数の信号伝達層410と、4つの信号伝達層410に接続する複数の通信素子200とを有する。信号伝達層410の形状は、図18に示す通信装置100における信号伝達層410の形状と同様であるが、通信素子200の配置位置が異なっている。なお、各信号伝達層410は、高抵抗層420により絶縁されている。
以上のように、通信装置100は様々な形状および構造の信号伝達層410を備えることができ、また通信素子200が接続する信号伝達層410の個数は任意であってもよい。上記した例において、信号伝達層410の形状は正多角形であるが、これに限定するものではない。通信装置100において、各通信素子200は、送信するパケットに最終目的地となる信号伝達層410の識別番号を含めることにより、そのパケットを最終目的地まで伝達する。この実施例において、信号伝達層410は平面上に形成されており、各信号伝達層410の識別番号として、各信号伝達層410の2次元座標を利用することとする。なお、別の例においては、識別番号として、信号伝達層410に固有のシリアル番号を割り振ることも可能であり、また信号伝達層410が3次元的に形成される場合には、信号伝達層410の識別番号を3次元座標で表現することも可能である。
図20は、図17に示した通信装置100の模式図を示す。図20において、各通信素子200を結ぶように描かれている実線は、隣り合う信号伝達層410が絶縁されている状態を意味する。信号伝達層410aを原点とするXY軸を設定することにより、信号伝達層410aの座標すなわち識別番号を(0,0)、信号伝達層410bの識別番号を(1,0)、信号伝達層410cの識別番号を(2,0)、信号伝達層410dの識別番号を(0,1)、信号伝達層410eの識別番号を(1,1)、信号伝達層410fの識別番号を(2,1)、信号伝達層410gの識別番号を(0,2)、信号伝達層410hの識別番号を(1,2)、信号伝達層410iの識別番号を(2,2)と定めることができる。信号伝達層410の識別番号は、通信装置100の製造時に予め設定してもよく、また後述するアルゴリズムにより自律的に設定してもよい。信号伝達層410間の信号の伝達は、信号伝達層410の識別番号を利用して実現される。以下、信号伝達層410の識別番号を、「信号伝達層ID」と呼ぶ。なお、各通信素子200は、自身が接続する信号伝達層410の信号伝達層IDを記憶しており、したがって複数の信号伝達層410に接続する場合は、複数の信号伝達層IDを記憶することになる。
各通信素子200には、自身が接続する信号伝達層410ごとに、信号伝達層410内のローカルな識別番号が割り振られる。図示の例では、信号伝達層410が四角形に形成されており、信号伝達層410において、右側に位置する通信素子200のローカル識別番号が「1」、上側に位置する通信素子200のローカル識別番号が「2」、下側に位置する通信素子200のローカル識別番号が「3」、左側に位置する通信素子200のローカル識別番号が「4」に設定される。信号伝達層410内の信号の伝達は、このローカル識別番号を利用して実現される。例えば、通信素子200eに注目すると、信号伝達層ID(0,0)の信号伝達層410aにおいては、右側に位置しているためローカル識別番号「1」を有し、一方で、信号伝達層ID(1,0)の信号伝達層410bにおいては、左側に位置しているためローカル識別番号「4」が割り当てられている。以下、通信素子200のローカル識別番号を「ローカルID」と呼ぶ。
以上のように、各通信素子200は、自身が接続する信号伝達層410の信号伝達層IDと、各信号伝達層410におけるローカルIDとを保持する。この前提のもと、この実施例における通信方法を説明する。この通信方法においては、3種類のパケットを使用する。
(1)RTS(request to send-stream)パケット
信号伝達層410内の通信素子200に対してコネクションの確立を要求するパケット
(2)CTS(clear to send-stream)パケット
RTS送信元に対してコネクションの確立許可を示すパケット
(3)DT(data transmission-stream)パケット
データ転送のパケット
図21(a)は、RTSパケットのデータフォーマットを示す。RTSパケットは3つのフィールドを有する。以下、各フィールドの項目を示す。
第1フィールド:反応すべき通信素子200のローカルID
第2フィールド:コマンド(RTS)
第3フィールド:RTSパケットの送信元の通信素子200のローカルID
図21(b)は、CTSパケットのデータフォーマットを示す。CTSパケットは2つのフィールドを有する。以下、各フィールドの項目を示す。
第1フィールド:反応すべき通信素子200のローカルID
第2フィールド:コマンド(CTS)
図21(c)は、DTパケットのデータフォーマットを示す。以下、各フィールドの項目を示す。
第1フィールド:反応すべき通信素子200のローカルID
第2フィールド:コマンド(DT)
第3フィールド:ホップリミット、すなわち通信素子10の中継回数の上限値
第4フィールド:データ長
第5フィールド:最終目的地のX座標
第6フィールド:最終目的地のY座標
第7フィールド:送信元のX座標
第8フィールド:送信元のY座標
第9フィールド:目的地でのアプリケーション
第10フィールド以降:データ
なお、図21(a)〜(c)の例では、各フィールドが8ビットで構成されている。
図22は、通信装置100における通信方法を説明するための図を示す。図22では、送信元である通信素子200dから最終目的地である通信素子200gに信号を伝達する場合を例にとる。
(ステップ1)
通信素子200dは、自身の信号伝達層ID(0,0)と、最終目的地である通信素子200gの信号伝達層ID(2,0)の位置関係から、DTパケットを送信する方向を計算し、信号伝達層410a内でDTパケットを伝達すべき通信素子を決定する。すなわち通信素子200dは、通信素子200gまでの最短経路を演算し、DTパケットを、信号伝達層410a、410bを経由して信号伝達層410cに伝達するルートが最短であることを判定する。この経路上に存在する素子は通信素子200eであるため、通信素子200dは、通信素子200eとコネクションを確立するべく、通信素子200eに対してRTSパケットを送信する。このとき、RTSパケットの第1フィールドは「1」に設定される。なお、通信素子200dは、信号の衝突を避けるため、信号伝達層410a内で他の通信素子が通信を行っているか否かを監視し、通信が行われていない場合にRTSパケットを送信することが好ましい。
(ステップ2)
通信素子200eは、RTSパケットに含まれる第1フィールドを参照し、RTSパケットが自身宛てであることを判定すると、通信素子200dに対してCTSパケットを送信する。このとき、CTSパケットの第1フィールドは「4」に設定される。
(ステップ3)
通信素子200dは、一定時間内に自身宛てのCTSパケットを受け取ると、DTパケットを送信する。DTパケットの第1フィールドは「1」に設定される。通信素子200eは、DTパケットを受け取る。通信素子200dが一定時間内にCTSパケットを受け取れない場合は、ステップ1に戻って、再度RTSパケットを送信する。なお、複数回にわたり通信素子200eからの応答がない場合には、送信先を変更したRTSパケットを送信してもよい。これにより、通信経路を自律的に変更することが可能となる。図20に戻って、この場合は、RTSパケットの第1フィールドを「2」に設定することが好ましい。
(ステップ4)
通信素子200eは、DTパケットを受け取ると、DTパケットを転送する方向を決定する。この場合、通信素子200eは、DTパケットを信号伝達層410a側の通信素子200dより受け取ったため、転送する方向が信号伝達層410b側であること、すなわち外方向であることを決定する。これにより、続くDTパケットの送信を、信号伝達層410bにおいて行うことが定められる。
通信素子200eは、自身の信号伝達層ID(1,0)と、最終目的地である通信素子200gの信号伝達層ID(2,0)の位置関係から、信号伝達層410b内でDTパケットを伝達すべき通信素子を決定する。最短経路上に存在する素子は通信素子200fであるため、通信素子200eは、通信素子200fとコネクションを確立するべく、通信素子200fに対してRTSパケットを送信する。このとき、RTSパケットの第1フィールドは「1」に設定される。通信素子200eは、信号の衝突を避けるため、信号伝達層410b内で他の通信素子が通信を行っているか否かを監視し、通信が行われていない場合にRTSパケットを送信してもよい。
(ステップ5)
通信素子200fは、RTSパケットに含まれる第1フィールドを参照し、RTSパケットが自身宛てであることを判定すると、通信素子200eに対してCTSパケットを送信する。このとき、CTSパケットの第1フィールドは「4」に設定される。
(ステップ6)
通信素子200eは、一定時間内に自身宛てのCTSパケットを受け取ると、DTパケットを送信する。DTパケットの第1フィールドは「1」に設定される。通信素子200fは、DTパケットを受け取る。
(ステップ7)
通信素子200fは、DTパケットを受け取ると、DTパケットを転送する方向を決定する。通信素子200fは、DTパケットを信号伝達層410b側の通信素子200eより受け取ったため、転送する方向が信号伝達層410c側であること、すなわち外方向であることを決定する。これにより続くDTパケットの送信を、信号伝達層410cにおいて行うことが定められる。
通信素子200fは、DTパケットの第5および第6フィールドの目的地座標から、最終目的地が信号伝達層410cにおける通信素子200gであることを認識する。なお、第5および第6フィールドの目的地座標には、信号伝達層410cを特定する座標と、通信素子200gを特定するローカルIDとが含まれるものとする。これにより、通信素子200fは、通信素子200gとコネクションを確立するべく、通信素子200gに対してRTSパケットを送信する。このとき、RTSパケットの第1フィールドは「1」に設定される。
(ステップ8)
通信素子200gは、RTSパケットに含まれる第1フィールドを参照し、RTSパケットが自身宛てであることを判定すると、通信素子200fに対してCTSパケットを送信する。このとき、CTSパケットの第1フィールドは「4」に設定される。
(ステップ9)
通信素子200fは、一定時間内に自身宛てのCTSパケットを受け取ると、DTパケットを送信する。DTパケットの第1フィールドは「1」に設定される。これにより、最終目的地である通信素子200gは、DTパケットを受け取ることができる。例えば、通信素子200gに外部機器が接続されている場合は、DTパケットに含まれるデータを外部に送信することが可能となる。
以上の通信方法によると、信号の送信元から最終目的地までの経路を予め設定することなく、信号を中継する各通信素子200が信号伝達層IDをもとに、動的に経路を設定することが可能となる。そのため、通信装置100においては、例えば一部の通信素子200が故障した場合であっても、その通信素子200を回避して、最終目的地までDTパケットを伝送することが可能となる。
なお、図22の例では、信号を一軸方向すなわちX軸方向に伝達する場合を示すが、信号は、斜め方向であっても当然に伝達することができる。例えば、信号伝達層ID(0,0)の信号伝達層410aから信号伝達層ID(1,1)の信号伝達層410eに信号を伝達する場合、途中の経路として、信号伝達層ID(1,0)の信号伝達層410bまたは信号伝達層ID(0,1)の信号伝達層410dのいずれを経由することも可能である。いずれの経路を選択するかは、ランダムに決定されてもよく、また例えばX軸方向への信号伝達をY軸方向への信号伝達よりも優先的に行うなどの所定の規則に沿って決定されてもよい。
図23(a)は、信号伝達層410を流れる信号の波形フォーマットを示す。各パケットの先頭には、スタートビットと、フィールド開始を示すデータが付加される。スタートビットは、一定時間、ここではデジタル回路の動作クロック周期の30倍の時間、「01」のパターンが周期的に繰り返される。この周期パターンにより、サンプリング時間を決定する。通信データは10ビットをひとまとまりとして取り扱い、これを1フレームと呼ぶ。
図23(b)は、1フレームの構成を示す。1フレームは、8ビットの実データと2ビットのフレーム区切りからなる。例えば、10進数のデータ「10」を出力する場合には、フレーム区切り「10」を先頭に付加して、フレームは、1000001010として表現される。また、信号には20フレームごとに、ビット列11111111を挿入する。このとき、フレーム区切りは挿入しない。フィールド開始指示用データは、フィールド区切り「10」にビット列11111111を付加した1011111111として表現される。スタートビット後に必ずこのデータ列が挿入され、このデータ列の後が、各パケットの先頭となる。
図24は、通信素子200のデジタル回路の実現例を示す。デジタル回路におけるポート定義は以下のとおりである。
(入力ポート)
Ainp_a:入力信号(常時観測型コンパレータからの出力)
Ainp_b:入力信号(常時観測型コンパレータからの出力)
Init_flg:初期化フラグ
clk:マスタークロック
in:サンプリングされた信号
ms:信号伝達層選択
selectID: 0:ローカルID_a=1 1:ローカルID_a=2
sleepmode: 0:スリープモードなし
tSite_x:信号伝達層X座標
tSite_y:信号伝達層Y座標
(出力ポート)
Inp_a:信号伝達層内方向入力判定フラグ 0:入力なし 1:入力あり
Inp_b:信号伝達層外方向入力判定フラグ 0:入力なし 1:入力あり
OutBit_a:信号伝達層内方向出力データ
OutBit_b:信号伝達層外方向出力データ
OutBit_na:OutBit_aの反転
OutBit_nb:OutBit_bの反転
ena_AppL:アプリケーション層プロセスイネーブル
ena_dwnDatL:データリンク層プロセスイネーブル
ena_dwnNetL:ネットワーク層プロセスイネーブル
ena_upDatL:データリンク層プロセスイネーブル
ena_upNetL:ネットワーク層プロセスイネーブル
inmonitor:物理層プロセス監視フラグ 1:スタートビット検出
図25は、通信素子200のデジタル回路におけるプロセスの状態遷移図を示す。通信素子200は、以下に示す各状態をとることができる。
(状態0)開始・初期化
各レイヤのプロセスを初期化したのち、状態1へ遷移する。このとき、通信素子200はいずれの方向からの入力も受け入れることができる。
(状態1)RTS待ち・受け入れ
信号伝達層410の内方向または外方向の通信のうち、早く到達した方向のデータを受け入れるように、Inp_a、Inp_bのいずれかを1にする。以後1になった方のデータをサンプリングする。なお信号伝達層410の内方向の通信とは、信号伝達層410内の他の通信素子200とのデータの送受信を意味し、信号伝達層410の外方向の通信とは、その信号伝達層410とは異なる信号伝達層における通信素子との間のデータの送受信を意味する。
入力データの第1フィールドより順にRTSフォーマットに準じた判定を行い、コネクションを確立するかどうか決定する。RTSパケットを正しく受け取った場合は状態2へ遷移する。プロセスエラーを検出した場合は状態0へ戻る。
(状態2)CTS出力
CTSパケットを出力する。出力方向はRTSパケットを受け取った方向と同じである。このとき、他の方向からの信号がきてもすべて無視される。出力中にエラーが生じた場合は状態0へ遷移する。出力が完了したら状態3へ遷移する。
(状態3)DT待ち・受け入れ
DTパケットを受け入れる。受け入れ方向はCTSパケット出力の方向と同じ方向である。一定時間内(100T:Tはマスタークロック周期)にDTパケットがこない場合はエラーとし、状態0へ遷移する。DTパケットを取得中にエラーが発生した場合、すでに10バイト以上データを取得した場合は状態4へ遷移し、それ以外の場合は状態0へ遷移する。
(状態4)ルーティング
ネットワーク層のプロセスであり、DTパケットのヘッダ部より、目的地の座標を取得する。取得データと、自身の座標と比較して、目的地が、自身の信号伝達層410の座標と一致していればアプリケーション層へプロセスを渡す。目的地ではない場合は次のコネクション先(方向、ローカルID)を決定する。このとき、DTパケットのヘッダ部の第1フィールド(反応すべきローカルID)と第3フィールド(ホップリミット)を書き換え、状態5へ遷移する。ホップリミットの書き換えは、中継数の上限値を1デクリメントすることにより行う。
(状態5)RTS出力
次のコネクション先へRTSパケットを出力する。このとき物理層では出力方向のネットワークの占有状況を監視し、時間16T(2バイト)の間に周囲の素子が通信を行っていなければ、出力を開始する。RTSパケットの出力が完了すると、状態6へ遷移する。周囲の素子が通信を行っていて、一定時間(100T)まっても出力が開始されない場合は状態8へ遷移する。
(状態6)CTS待ち・受け入れ
自身宛のCTSパケットを待ちうける。一定時間(100T)内にCTSパケットを受け取ると、状態7へ遷移する。一定時間内にCTSパケットを受け取らなければ、状態8へ遷移する。
(状態7)DT出力
DTパケットを出力する。出力方向はRTS出力方向と同じである。データが正しく出力できたら状態9へ遷移する。途中、エラーを検出したら状態8へ遷移する。
(状態8)再ルーティング
コネクションが正しく確立できなかった場合、5回までは同じ通信素子に対してコネクションを確立しようとする。5回の挑戦でもコネクションが確立されなかった場合、ネットワーク層で別なルートを計算する。ルートを再計算後、状態5へ遷移する。
(状態9)終了・初期化
全てのフラグを初期化して状態0へ遷移する。
以上、この実施例においては、各信号伝達層410に予め信号伝達層IDが付与されていることを前提としてきたが、各信号伝達層410に含まれる通信素子200は、自身の接続する信号伝達層IDを動的に取得することも可能である。
以下に「ID決定コマンド」を使用する例を示す。ID決定コマンドには、信号伝達層410の座標(X,Y)が記述される。ID決定コマンドを受け取った通信素子200は、自身の属する信号伝達層410の座標が(X,Y)であることを認識する。
各通信素子200は、ID決定コマンドを、同一信号伝達層410内におけるローカルIDが「1」および「2」の通信素子200に送信する。このとき、送信先の通信素子200が通信中である場合は、ID決定コマンドの送信を停止する。ID決定コマンドを受信した通信素子200は、受信した方向とは別の方向、すなわち内方向とは逆向きの外方向に存在する別の信号伝達層410にID決定コマンドを送信する。具体的に、「1」のローカルIDでID決定コマンドを受信した通信素子200は、隣り合う信号伝達層410において、「4」のローカルIDをもつ通信素子200として座標(X+1,Y)を記述したID決定コマンドを送信する。また、「2」のローカルIDでID決定コマンドを受信した通信素子200は、隣り合う信号伝達層410において、「3」のローカルIDをもつ通信素子200として座標(X,Y+1)を記述したID決定コマンドを送信する。
以上のように通信素子200が機能することにより、通信装置100への電源投入後に、左下隅の信号伝達層410aの座標を(0,0)として、信号伝達層410aに属する通信素子200からID決定コマンドを送信することによって、全ての信号伝達層410に信号伝達層IDを動的に割り振ることが可能となる。
このように、少なくとも一つの信号伝達層410、この例では信号伝達層410aに基準となる信号伝達層ID(0,0)を設定し、その基準となる信号伝達層IDをもとに、他の信号伝達層410の識別番号を順次設定することにより、通信装置100内の信号伝達層410の信号伝達層IDを設定することが可能となる。基準となる信号伝達層IDは、通信装置100における左下隅の信号伝達層410aに限らず、他の信号伝達層410に設定してもよい。例えば、図20の通信装置100において、中央の信号伝達層410eを信号伝達層IDを決定するための基準信号伝達層として定めた場合には、信号伝達層410eに属する通信素子200m、500p、500i、500lが、外方向にID決定コマンドを送信して、周囲の信号伝達層410の信号伝達層IDを順次設定していけばよい。このアルゴリズムにおいては、通信素子200は、自身が接続する信号伝達層410の信号伝達層IDを含んだ信号(ID決定コマンド)を受け取ると、その信号を伝達した信号伝達層410の信号伝達層IDを保持し、続いて自身が接続する他の信号伝達層410の信号伝達層IDを設定して、設定した信号伝達層IDを含むID決定コマンドを、当該他の信号伝達層410に送信する。この実施例における通信装置100によると、通信素子200がローカルIDを保持し、信号伝達層410における自身の位置関係を把握することによって、座標で表現する信号伝達層IDを簡易なアルゴリズムによって自律的に設定することが可能となる。
以上のアルゴリズムにより、絶対的な信号伝達層IDを決定することができるが、変形例として、通信ごとに相対的な位置関係を求め、その位置関係を利用して通信を実現してもよい。例えば、信号の発信元となる通信素子200が接続する信号伝達層を原点(0,0)と設定し、信号の送信先となる通信素子200が接続する信号伝達層の相対的な座標値(x、y)を求め、発信元である通信素子200は、相対的な位置関係を利用して、信号を所望の送信先となる信号伝達層まで送信してもよい。複数の発信元と送信先が存在して、複数の経路によりそれぞれ独立した通信を実現する通信装置100においては、それぞれの発信元となる通信素子200が、相対的な位置関係として送信先を把握しておくことで、通信装置100の柔軟性を高めることができる。この場合、送信先の相対的な座標値(x、y)を求め、例えば、右方向にx、上方向にy、という宛先をパケットに含めることで、信号を所望の送信先まで伝達することが可能となる。こうすることで、信号伝達層に予めIDを設定しておかない場合であっても、通信を行うことができる。
上記の実施例では、信号伝達層にIDを予め設定する場合について説明したが、これは例えば通信素子200自体にIDを予め設定して通信を行うようにしてもよい。この場合であっても、通信ごとに通信素子200の間の相対的な位置関係を利用して、通信を行うこともでき、すなわち通信素子に予めIDを設定しておかない場合であっても、通信を行うことが可能である。
また、上記の実施例では、通信素子200が、一旦信号を受信してから転送することとしたが、信号の受信が完了する前に、信号の転送を開始してもよい。DTパケットにおいては、パケットの先頭にコマンドや目的地の座標などのヘッダ項目が記述されているため、ヘッダ項目を受け取った時点から、信号の転送先となる通信素子200を特定して、コネクションの確立を行い、DTパケットを受信しながら、そのDTパケットを転送先となる通信素子200に順次転送することが可能である。これにより、データが最終目的地に到達するまでの遅延時間を減らすことができ、またスループットを向上することが可能となる。
以上、様々な通信デバイス300の形態および通信装置100の構造について説明した。通信装置100における局所的通信は、例えば、各通信素子200がIDをもち、周囲に存在する通信素子のIDを認識することで、行われてもよい。本発明者らにより提案された特開2003-188882号公報においては、通信方法の一例が示されている。
上述の実施例および実施例で用いた図面では、通信素子200を基板装置14の中に埋め込んだ状態ないしは絶縁層(高抵抗層)上に配置した状態で示したが、以下では、通信素子200を基板装置14に外部から取り付け可能な技術を提案する。通信素子200は着脱自在に取り付けることができ、状況に応じてセンサ機能をもつ通信素子200などを任意の場所に配置できることが好ましい。
図26(a)は、基板装置14の構造を示す。基板装置14は開口部80を有する。開口部80は、通信素子200を嵌入するための穴部であり、図示のごとく積層構造を貫通する穴部として構成されてもよいが、貫通しなくてもよい。図示の例では、基板装置14は、絶縁層23、第2信号伝達層30、絶縁層25、第1信号伝達層20、絶縁層21、電源層44および絶縁層27から構成される積層構造を有している。図中、開口部80は1つしか示されていないが、基板装置14は複数の開口部80を有する。開口部80は所定の間隔で設けられることが好ましい。この間隔は、通信素子200の有効通信距離を最大として、有効通信距離以下の距離に設定されるのが好ましい。なお、通信素子200を挿入する以前は、柔軟ゴムなどの封止材で開口部80を塞いでおき、必要が生じたときに封止材を取り外して通信素子200を装着する。
この積層構造は、図4に示す積層構造に更に電源層44を追加したものであり、電源層44が絶縁層21により第1信号伝達層20と絶縁されている。既述のごとく、第2信号伝達層30は接地層であってよい。通信装置100の使用形態によっては第2信号伝達層30を省略してもよく、例えば接地された導電性の板状部材に基板装置14を貼り付ける場合は、その板状部材を接地層として利用することも可能である。この場合には、基板装置14が、絶縁層23および第2信号伝達層30を除いた積層構造を備えることになる。絶縁層23および絶縁層27は、基板装置14の表面を絶縁し、外部からの電荷の流入または外部への電荷の放出を阻止する。なお、積層構造の例としては、上記した他の基板装置14の構造をとってもよい。
この積層構造において、電源層44が通信素子200に電力を供給し、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30が、供給された電力を使用して信号伝達に寄与する。そのため通信素子200を開口部80に装着すると、通信素子200の電極が、第1信号伝達層20、第2信号伝達層30および電源層44に電気的に接続する必要がある。
開口部80は、通信素子200と電気的に接続するべき層、図示の例では第1信号伝達層20、第2信号伝達層30および電源層44を外部に露出するように設けられる。開口部80は、電気的に接続するべき層の表面を露出させ、且つ、露出面が階段状となるように形成されることが好ましい。接続するべき層の表面を階段状に設けられた開口部80の平坦部で露出させることで、通信素子200との接続面積を広くとることが可能となる。
この形状は、例えば既知のパターニング技術などを利用して作製することができる。絶縁層27を基板装置14の上面、絶縁層23を下面として上下方向を定めると、通信素子200は、上面側から下方向に押されて開口部80に挿入される。そのため、挿入方向において、通信素子200の電極と基板装置14の露出表面とが押下力により好適に接触することとなり、弾性をもつ基板装置14の各層との電気的接続を確実にすることができる。なお、電極と露出面との接触は、各層の側面においてなされてもよい。このとき、通信素子200の挿入部位を横方向に広がる方向に弾力をもつように構成することで、通信素子200の電極と露出側面との好適な接触を実現することができる。
図26(b)は、基板装置14の構造の変形例を示す。基板装置14は、絶縁層23、第2信号伝達層30、絶縁層25、第1信号伝達層20、絶縁層21、電源層44および絶縁層27から構成される積層構造を有する。図26(a)の基板装置14の構造と比較すると、図26(b)の基板装置14においては、開口部80が、テーパ状に形成されている。通信素子200と電気的に接続するべき層は、テーパ状に形成された開口部80の表面において外部に露出する。このように構成することで、基板装置14の開口部80を容易に作成することが可能となる。
図26(c)は、基板装置14の構造の変形例を示す。基板装置14は、絶縁層23、第2信号伝達層30、絶縁層25、第1信号伝達層20、絶縁層21、電源層44および絶縁層27から構成される積層構造を有する。図26(a)の基板装置14の構造と比較すると、図26(c)の基板装置14においては、開口部80が、筒状に形成されている。通信素子200と電気的に接続するべき層は、筒状に形成された開口部80の側面において外部に露出する。このように構成することで、図26(b)に示す基板装置14よりも、開口部80を容易に作成することが可能となる。
図26(d)は、基板装置14の構造の変形例を示す。基板装置14は、絶縁層23、第2信号伝達層30、絶縁層25、第1信号伝達層20、絶縁層21、電源層44および絶縁層27から構成される積層構造を有する。図26(c)の基板装置14の構造と比較すると、図26(d)の基板装置14においては、開口部80が、層方向に凹凸を有するように形成されている。なお凹凸は、1つの層方向において形成されていればよく、例えば図面に垂直な方向まで凹凸を有している必要はない。通信素子200と電気的に接続するべき層は、開口部80の側面において外部に露出する。このように構成することで、通信素子200を開口部80に挿入したときに、通信素子200を開口部80に確実に固定することができ、また通信素子200の電極と、基板装置14の接続するべき層との対応を確実にとることができる。なお、この場合には、コネクタまたは基板装置14の少なくとも一方を、弾性材料で形成することが好ましい。
図27(a)は、基板装置14の開口部80に通信素子200を挿入した状態を示す。通信素子200は、開口部80における各層の露出面に接触する電極224を備えたコネクタ222と、通信用LSI220を備える。通信用LSI220は、図3に示した機能を備えて、これまでの実施例で述べた局所的通信を行う能力をもつ。なお、通信用LSI220は、通信機能だけでなく、センサ機能などの他の付加的な機能を有してもよい。コネクタ222と通信用LSI220は一体として構成されてもよく、また別体として構成されてもよい。例えばコネクタ222と通信用LSI220は、接続部228においてハンダ接続、ワイヤボンディング接続あるいはフリップチップ実装などで電気的に接続される。
なお、図示の例では、通信用LSI220が直方体の形状を有しており、通信用LSI220の平坦な下面において接続されているが、通信用LSI220は、コネクタ222の内部形状の空間に合わせて形成されてもよい。なお、通信用LSI220をシリコン微細加工技術により開口部80の形状に合わせて直接階段状に形成し、開口部80に直接押し込んでもよく、この場合は、通信用LSI220がコネクタとしての機能も有することになる。
コネクタ222は、対となる固定用の止め部材226を有する。止め部材226は、横方向外向きに突起しており、貫通穴である開口部80に挿入されて、最下面である絶縁層23を突き抜けると、止め部材226の外向き突起部により、コネクタ222が基板装置14に固定される。このように、開口部80を貫通口とすることで、コネクタ222と基板装置14との固定機構を簡易に実現できる。なお、止め部材226は、横方向内向きに曲げることができるため、ユーザが止め部材226を指でつまんで内向きに変形させると、コネクタ222を開口部80から容易に引き抜くことができる。なお、絶縁層23を保護するため、絶縁層23の貫通穴の周囲に補強部品230を設けて、補強部品230と止め部材226とが接触するようにしてもよい。なお補強部品230は、設けられない場合があってもよい。
コネクタ222の基体は、電気的な短絡等を防ぐために絶縁体で構成される。コネクタ222の外部形状は、開口部80の形状に合わせて階段状に構成される。コネクタ222の外表面には、基板装置14の各層との電気接続を行うための複数の電極224が設けられ、この電極224と接続部228とが配線で接続される。図示の例では、第1信号伝達層20aおよび20bのそれぞれに2つの電極224が接触し、それぞれ別個の接続部228で通信用LSI220と接続するように配線が設けられている。これは、通信素子200が、第1信号伝達層20aおよび20bの2つのサイトに接続する例を示しており、サイト分割した図17の通信装置100に相当する。すなわち、図中の第1信号伝達層20aおよび20bは、図17において隣接する信号伝達層410に相当する。図28において別の例を示すが、これは、各サイトの深さが同一となるように設計されている例である。
基板装置14における各層との接続を確実にするため、コネクタ222の上下方向の外部形状は、開口部80の形状に一致させるか、または僅かに小さく形成されてもよい。具体的には、階段状に形成された開口部80の段差部分よりも、コネクタ222の外部形状における段差部分の方が僅かに小さくなるように形成されることが好ましい。基板装置14の積層構造が可撓性すなわち弾性を有している場合、コネクタ222を開口部80に押し込むと、止め部材226によりコネクタ222が開口部80に固定された状態で、積層構造が上下方向に縮み、コネクタ222の階段状の外表面に対して各層から上向きに押し上げる方向に押圧力が加わるため、電気的な接続を確実にすることができる。
図27(b)は、コネクタ222の構造を示す。中段の平坦部において、電極224が2つに分割されている状態が示される。第1信号伝達層20のサイト分割を行わない場合には、電極224は上段または下段の電極と同様に、平坦部の全体に構成されることが好ましい。なお、図26(b)〜図26(d)に示す構造を基板装置14がとる場合には、コネクタ222の形状も、それぞれの開口部80の形状に合わせた外部形状および電極を有して構成される。
図28(a)は、第1信号伝達層20において、サイトの深さが異なる場合を示す概念図である。通信素子200は、深さの異なるサイト1およびサイト2に接続する。図28(b)は、深さの異なる複数の第1信号伝達層20aおよび20bを有する基板装置14の断面構造を示す。この場合、図27(a)と比べると、接続するべき層が一層増えるが、第1信号伝達層20aおよび20bを別の高さの層に形成することで、コネクタ222と各層との電気的接続を確実に行うことが可能となる。また、第1信号伝達層20を2層に分けて形成することで、コネクタ222の電極との接触部位を開口部80の周囲にわたり設けることができるため、限られた領域の中で接触部分を大きくすることができ、良好な電気的接続を可能とする。第1信号伝達層20aおよび20bは、開口部80において露出するように、開口部80付近の領域で互いに重なるように形成されていればよい。第1信号伝達層20aはサイト1を構成し、第1信号伝達層20bはサイト2を構成する。
図29は、基板装置14における第1信号伝達層20aおよび20bの位置関係の一例を示す。第1信号伝達層20aと第1信号伝達層20bは、別の層、つまり積層構造において異なる高さに形成される。図中、丸印は、開口部80を示す。この例では、第1信号伝達層20がホームベース状の5角形に形成され、1つの第1信号伝達層20が、別の高さの層にある第1信号伝達層と4箇所で重なり合うように構成されている。それぞれの層において、第1信号伝達層20aおよび20bを図示のごとく配置することで、第1信号伝達層20aおよび20bが重なる箇所に、開口部80を形成することができ、また、どこに開口部80を形成しても、第1信号伝達層20を露出させることが可能となる。これは、基板装置14の全面にわたって第1信号伝達層20aまたは20bが存在するように、これらの信号伝達層の形状を工夫することで実現できる。なお、例えばセンサ素子などをいずれか一層と接続する開口部に装着することも可能である。同一の高さに隣り合う複数のサイトを形成する場合、位置決めを正確に行う必要があるが、このように別の高さの層を用いてサイト分割を実現することで、厳密な位置決め精度を必要とせず、第1信号伝達層20の形成が容易となる利点がある。なお形状は、ホームベース状に限らず、任意の形状をとることが可能である。
図28(b)に戻って、第2信号伝達層30との接続は、補強部品230を介して行われる。止め部材226および補強部品230を導体で形成し、止め部材226から配線を接続部228まで延ばす。絶縁層23は、補強部品230を設ける箇所に切欠を形成され、その切欠に導体である補強部品230をはめ込む。こうすることで、止め部材226の最下面が絶縁層23の表面から下方に突出する長さを短くすることができ、また補強部品230の厚さと止め部材226の厚さを薄くすることで、絶縁層23の表面から突出させないようにすることができる。
図30は、コネクタ222と基板装置14の固定方法を説明するための図である。図30(a)は、補強部品230に弾性をもつ止め部材226を嵌め込む形式の固定方法を示す。図30(b)は、コネクタ222の先端にネジである止め部材226を形成し、補強部品230にネジ穴を切って、補強部品230をネジに螺合する形式の固定方法を示す。ネジを利用することで、固定具合をある程度調整することができ、コネクタ222および基板装置14の製造誤差を吸収できる。例えば、コネクタ222の電極と基板装置14の各層との接触不良が生じている場合には、ネジをさらにきつく締めることで対応することができる。図30(c)は、コネクタ222の先端部に接着剤31をつけて、絶縁層23に固着する形式の固定方法を示す。ここでは、開口部80を貫通させず、絶縁層23を残して、絶縁層23とコネクタ222の先端部とを接着させる。なお、第2信号伝達層30も残して、第2信号伝達層30とコネクタ222の先端部とを導電性の接着剤で接着させてもよい。
図31は、コネクタ222の構造の変形例を示す。図31(a)は、一方向の両側を階段状に形成したコネクタ222を示す。図31(b)は、一方向の片側を階段状に形成したコネクタ222を示す。止め部材226は、4つ示されているが、図27(b)に示すように2つであってもよく、またそれ以外の個数であってもよい。止め部材226から見た形状は、4角形、円形または任意の形状を有してよい。なお、コネクタ222は基板装置14の開口部80の形状に応じて形成される必要があり、図31に示すようなコネクタ222は、それに対応する開口部80を有した基板装置14に適用されることは言うまでもない。
図32は、コネクタ222にケーブル232を取り付けた構造を示す。コネクタ222付きのケーブル232を利用することで、外部機器が通信装置100に容易に接続できるようになる。これにより、外部機器は、通信装置100における通信に参加することができ、また別のケーブルを介して通信装置100に接続される別の外部機器との通信も可能となる。このように、通信装置100は通信中継装置として機能してもよく、ユーザは、適当な開口部80にケーブル232のコネクタ222を差し込むだけでよい。なお、他の開口部80には、既述のように、通信素子200を挿入すればよい。このとき、通信素子200は、外部機器間の通信を中継する中継素子として機能することになる。
図33は、コネクタ222を、別のコネクタ234との電気接続に利用する例を示す。コネクタ222の内部形状を雌型に構成することで、雄型のコネクタ234の受け口となる。コネクタ222に対して、任意の外部機器や、所定の機能をもつ機能素子、例えば発光素子、計算素子、センサ等の着脱が可能となる。
図34は、開口部80およびコネクタ222の変形例を示す。なお、この基板装置14は、図28(b)に示すように、別の層に第1信号伝達層20aおよび20bを備えた構成を有する。開口部80は、上面側だけでなく下面側も階段状に形成されており、コネクタ222は、別体である上側コネクタ部材222aと下側コネクタ部材222bとから構成される。上側コネクタ部材222aには止め部材226が設けられ、下方より先に装着された下側コネクタ部材222bの穴部に嵌合して、上側コネクタ部材222aと下側コネクタ部材222bとが基板装置14に固定される。このように、2つのコネクタ部材を用いると、上面側と下面側から基板装置14における各層に接続できるため、開口部80における階段の段数を少なくすることができ、したがって横方向の広がりを小さくして、開口部80を小さくできる。また、止め部材226を基板装置14の内部にとどめることができ、止め部材226が外部に突き出ない。
図35は、コネクタ222の構造の変形例を示す。このコネクタ222は、図34に示すコネクタ222と異なり、上側コネクタ部材222aおよび下側コネクタ部材222bが、内部空間を有しないで構成されている。なお、図35に示すコネクタ222においても、それぞれのコネクタ部材の内部を配線が通り、基板装置14における接続するべき層と通信用LSI220の端子とが電気的に接続される。このように内部を絶縁体で充填する場合には、通信用LSI220の端子位置に合わせた配線を自由に設けることができるため、メリットがある。
図36は、開口部80の構造の変形例を示す。この例では、開口部80は2段で形成され、図27の例と比較すると、段数を1段減らした構造となっている。これにより、製造工程を簡易にすることができ、また開口部80の幅を小さくすることができる。なお、導電性の補強部品230と第2信号伝達層30を接続し、またこの補強部品230と止め部材226とを接続する。止め部材226は、配線により接続部228に接続される。
図37は、図13に示す通信デバイス300をコネクタ222を用いて実現するための構造を示す。図13に示す通信デバイス300では、第1信号伝達層20および第2信号伝達層30との電気的接続をとれればよいため、開口部80を1段で形成し、またコネクタ222の構造を簡易にすることができる。
図38は、電極224の構造例を示す。基板装置14の積層構造の完成後、層を削ることで開口部80を形成する場合に、露出させるべき層の表面に絶縁層が残存する可能性がある。そのため、電極224の表面に短いピンを剣山のように設けることで、絶縁層が残存していても、所望の層との電気的接続を確保することができる。
図39は、複数の接続ピン225を備えた通信素子200を示す。接続ピン225は、通信用LSI220の接続端子として作用し、通信用LSI220の下面から下方に伸びる。接続ピン225は、表面を絶縁体でコーティングされ、その先端で電気的接触を行う。接続ピン225の長さは、接続するべき層の深さに応じて適宜定められる。また複数の接続ピン225が、同一の層と接触し、電気的な接続を安定にする。この例では、接続ピン225aおよび225fが第2信号伝達層30に接触し、接続ピン225bおよび225eが第1信号伝達層20に接触し、接続ピン225cおよび225dが電源層44に接触する。
以上の通信装置100においては、第1信号伝達層20、第2信号伝達層30および電源層44などが広い範囲または所定の範囲で一様な構造をもち、通信素子200は、基板装置14内で2層で挟み込まれるか、あるいは電極224を接続すべき層に直接接触させるなどして、電気的接続を確保している。
図40〜図42は、本発明の実施例で提案する通信デバイスの実装形態を示す。なお、以下で、実装形態を説明するために「n接点m面」という言葉を用いる。これは、通信素子200の表面または裏面における接点の最大値がnであり、通信素子200が電気的接点をもっている面の数がmであることを意味する。通信素子200が基板装置14の片面に接触する場合、接触面の数mは1であり、基板装置14の内部に埋設される場合、通信素子200の表面および裏面が基板装置14内部の層に接触するため、接触面の数mは2となる。したがって、通信素子200が表面および裏面の両面で基板装置14に接触し、表面のコンタクト数が2、裏面のコンタクト数が1の場合、これを「2接点2面」式の実装とよぶ。また、「電源信号独立形式」は接地線、電源線、信号線の導電路がそれぞれ独立であることを意味し、「電源信号非独立形式」は信号線から電源の供給も受ける方式を意味する。図40〜図42においては、基板装置14が、第1信号伝達層20、第2信号伝達層30、絶縁層25、高抵抗層42、電源層44の任意の順番による積層構造として構成されている。
図40は、電源信号非独立形式の通信デバイスであって、隣接する通信素子に信号を伝達する構造を示す。図40(a)は、1接点2面式の実装形態の一例を示し、図40(b)は、1接点2面式の実装形態の別の例を示し、図40(c)は、2接点1面式の実装形態の一例を示す。この実装形態は、サイトを形成しない基板装置14の通信に用いられ、またはサイト内の通信に用いられる。
図41は、電源信号非独立形式の通信デバイスであって、サイト間で信号を伝達する構造を示す。図41(a)は、2接点2面式の実装形態の一例を示し、図41(b)は、2接点2面式の実装形態の別の例を示し、図41(c)は、3接点1面式の実装形態の一例を示す。
図42は、電源信号独立形式の通信デバイスであって、サイト間で信号を伝達する構造を示す。図42(a)は、2接点2面式の実装形態の一例を示し、図42(b)は、2接点2面式の実装形態の別の例を示し、図42(c)は、3接点2面式の実装形態の一例を示し、図42(d)は、4接点1面式の実装形態の一例を示す。
図40〜図42に示すように、実施例では通信デバイスの実装形態として様々なものを提案するが、実装の容易性を考えると、基板装置14の内部に埋め込むのではなく、外部から基板装置14の各層に接続できることが好ましい。例えば、図40(c)、図41(b)、図41(c)、図42(d)に示す1面式の実装形態のように、全ての接続端子が基板装置14の表面に出ていれば、その表面上に通信素子200を載置することで接触を確保することができる。このうち、図40(c)、図41(c)、図42(d)に示す基板装置14は、第1信号伝達層20と、第2信号伝達層30または電源層44の少なくとも一層から、基板表面まで延びる導電路を備えている。これらの層から延びる導電路の表出部は、1つの通信素子200が接続するために一組のセットとして存在する。具体的には、これらの層から延びる導電路の表出部は、通信素子200との接触部として機能するが、通信素子200を載置して固定するだけで電気的接触を実現できるように、通信素子200の電極の配置に合わせて、各表出部が位置づけられる必要がある。通信素子200を載置したときに、通信素子200の複数の電極に接触する複数の表出部を、表出部の組と呼ぶ。したがって、全ての組において、表出部同士の間隔は、通信素子200の電極の配置に合わせて等しく設定されることが好ましい。これにより、通信素子200を、どの表出部の組にも載置することが可能となる。また、各組は、基板装置14の表面において所定の間隔で配置されることが好ましい。この間隔は、通信素子200の有効通信距離をもとに定められる。
図43は、3接点1面式の通信デバイスにおける基板装置を作成する方法を説明するための図である。説明のため、図41(c)に示した3接点1面式の通信デバイスの構造とは異なり、それぞれ別の深さに位置する層、すなわち3層から導電路を表面に導き、基板表面に複数の表出部を生成することとする。
まず、絶縁体である基板250を用意し、複数の貫通穴を形成する。3接点1層式の基板装置を作製する場合、複数の貫通穴は、3層からの導電路を形成するために設けられる。この3層をそれぞれ表面から近い順に第1層、第2層、第3層とすると、複数の貫通穴は、第1層用、第2層用、第3層用の導電路を形成するためのものに分けられる。続いて、貫通する絶縁性の管状部材を、柔軟な絶縁体をモールド成型することにより、第2層用の貫通穴および第3層用の貫通穴の上方に形成する。第2層用の管状部材は第2層用の貫通穴と同軸に形成され、また第3層用の管状部材は第3層用の貫通穴と同軸に形成されることが好ましい。第3層用の管状部材は、第2層用の管状部材よりも長く形成する。図43(a)は、基板250上に複数の貫通穴および管状部材を形成した状態を示す。
ここで、貫通穴252は第1層用の導電路を形成するために用いられ、管状部材254は、第2層用の導電路を形成するために用いられ、また管状部材256は、第3層用の導電路を形成するために用いられる。なお図示の例では、底面が、最終的に通信素子200を載置するための接触面となる。
続いて、基板250上に、管状部材254の高さよりも低い位置まで、導電性材料である導電ゴムを流し込み、固化させる。なお、それぞれの管状部材の高さや、流し込む導電ゴムの量は、通信素子200で実現しようとする通信距離に応じて定められる。図示の例では、管状部材254の高さの半分程度の位置まで、導電ゴムが流し込まれている。これにより、貫通穴252は導電ゴムで充填され、基板250の底面には、第1層の導電路の端面となる導電ゴムが表出することになる。図43(b)は、このようにして形成された第1層260を示す。
続いて、第1層260の上に、管状部材254を超えない位置まで絶縁材料を流し込む。図43(c)は、このようにして形成された絶縁層262を示す。管状部材254の口は開いた状態にある。導電ゴムおよび絶縁材料の流し込みをもう一度行い、絶縁層262上に第2層264および絶縁層266を形成する。導電ゴムを流し込むことで、第2層264が形成されるとともに、管状部材254の貫通穴が導電性材料で充填される。図43(d)は、基板250上に絶縁層266までを積層した状態を示す。管状部材254が第2層の導電ゴムで充填されているため、基板250の底面には、第2層の導電路の端面となる導電ゴムが表出することになる。最後に、絶縁層266上に導電ゴムを流し、第3層268を形成するとともに、管状部材256を導電ゴムで充填する。以上により、3接点1層式の基板装置14を作製することができる。
なお、上記製造プロセスの例では、第1層、第2層、第3層の間に絶縁層を形成することとしているが、他に高抵抗層や誘電層などの層を形成してもよい。絶縁層、高抵抗層または誘電層のいずれを形成するかは、実施例で説明したどの種類の通信デバイス300を作製するかによるものであり、適宜選択することができる。また、導電性材料として導電ゴムを使用しているが、これは基板装置14に柔軟性をもたせるためであり、他の導電性材料を使用できることは言うまでもない。
以上、実施例をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施例に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。
本発明によると、上記の実施例で説明したように、2次元的な導電層である信号伝達層を利用して通信を行うことができるが、別の実施例では、信号伝達層が、メッシュや導電性繊維として構成されてもよい。例えば信号伝達層が、いわゆる「練り物」として形成される場合であっても、抵抗成分などの2次元的な特性は、ある程度の不均一性であれば、不均一であっても許容することができる。導電性繊維を用いることで、導電層を薄く且つ柔軟に構成することが可能となり、通信装置100の用途を拡大することができる。また、信号伝達層は2次元的に構成されるだけでなく、1次元的に帯状の形態をとってもよい。
図44は、通信装置100の構造の変形例を示す。この通信装置100においては、1次元的に構成された第1信号伝達層20が、網の目状に張り巡らされている。この例では、第1信号伝達層20は格子状に形成され、その交点に通信素子200が配置されている。第1信号伝達層20は、通信素子200同士を接続し、いわゆる配線的な機能を担うことになる。
従来の基板作成技術は、まず配置すべき素子や機器の位置関係を想定し、想定した位置同士を配線するという工程で行われている。すなわち、まず、素子および機器の配置ありきで、物理的な配線がそれらを結合させるというのが、従来の基板設計思想の前提となる。
一方で、本発明の基板作成技術は、基板装置14のどこに外部素子や外部機器を接続しても通信が可能となるような基板装置を予め作っておくという設計思想が根底にある。通信装置100内、すなわち基板装置14内では、これまで説明してきたように、通信素子200による局所的な通信で信号が順次伝達されていく。複数の通信素子200のうち少なくとも一部が外部素子や外部機器との間のインタフェース機能を備え、その通信素子200に対して外部素子や外部機器を接続させることで、通信装置100と外部との通信を実現できる。例えば、多くの場合は1対となる2つの外部機器同士を任意の2つの通信素子200に接続し、これらの間の信号の中継を、これらの間に存在する複数の通信素子200が担うことで、通信装置100が中継装置として機能することとなる。外部機器は、インタフェース機能を備えた通信素子200であれば、任意のものと接続させればよい。また、(N+1)個の外部機器を任意の通信素子200に接続させ、1対Nの通信の中継を通信装置100が担うことも可能である。さらに、通信装置100は、1セットだけでなく、複数セットの通信の中継を行うことができ、したがって、通信装置100を利用するユーザは、単に外部機器のコネクタを通信素子200と接続させるだけで、通信装置100が、所期の接続を確立して、通信を行うことができる。なお、複数セットの通信を中継する場合には、それぞれの通信セットであることを特定する情報を送信パケットに含めることで、各通信素子200が、適切に信号を伝送することが可能となる。通信装置100は、中継だけでなく、通信装置100と外部機器との間の通信を行えることは言うまでもない。例えば、通信装置100がロボットの皮膚として使用される場合に、触覚センサ機能を有する通信素子200からのセンサ情報をロボットの頭脳CPUなどに送信する場合がある。なお、外部機器との間の通信は、片方向であってもよく、また双方向であってもよい。単純にセンサ情報を外部機器に送信するような場合には、片方向の通信を実現できればよいが、外部機器との間で情報のやりとりを行う場合には、所定の通信プロトコルを用いて双方向通信を実現できることが好ましい。双方向通信は、各通信素子200が信号の送信機能および受信機能をもつため、通信装置100において容易に実現することが可能である。
このように、本発明により提供する技術は、従来の基板作成技術とは全く異なる視点から生み出されたものであり、設計思想が基本的に異なっている。図44に示す通信装置100についていうと、予め第1信号伝達層20を網の目状に形成した基板装置を作成しておき、基板装置の開口部に通信素子200を挿入することで、通信機能をもつことが可能となり、さらに外部機器を接続することで、外部機器との通信も可能となるのである。なお、通信素子200の実装形態については、差込タイプであってもよく、また予め埋設されるタイプであってもよく、さらに図40〜図42で説明したような一面式、すなわち基盤装置14の表面に接触させるタイプであってもよい。いずれにしても、基板装置14は、配線と通信素子200との電気的接続を行わせる構造を有する。
なお、この変形例では、配線を利用しているが、外部機器との中継を行う機能については、既述した2次元的な第1信号伝達層20を備えた通信装置100についても同様である。また、この変形例で説明する配線を備えた通信装置100においては、配線の一部が切断された場合であっても、もともと網の目状に配線を張り巡らしているため、目標位置までの別の経路を設定することが可能であり、断線による通信障害が生じる可能性は低減される。以下では、図44に示す第1信号伝達層20を、これまでの実施例で述べた2次元的な第1信号伝達層20との構造上の差異を明確にするために、「配線20」と呼んで表現する。
図44に示す通信装置100においては、通信素子200を網の目状に設けられた配線20に接続させること以外に、他の構造については上記実施例で説明した通信装置100と同様である。すなわち、通信原理についても、上述した実施例で説明した通信原理の任意のいずれかを利用することができる。配線20は格子状に形成されており、通信素子200は、格子状配線の交点に配置される。なお、配線20の形態は、他の形態であってもよく、いずれにしても規則的に構成されており、また通信素子200についても、上述の実施例で説明した2次元の導電層の場合と同様に、規則的に配置されていることが好ましい。これにより、製造工程が容易となる。既述のごとく、通信素子200は外部機器とのインタフェース機能を備えて構成される。
図44に示す通信装置100は、まず、信号を伝達するための配線12を網の目状に形成した層を少なくとも1層含んだ積層構造をもつ基板装置を形成し、その配線に電気的に接続するように、基板装置14に複数の通信素子200を配置することで製造される。基板装置14を例えば単一のシリコンウェハ上に形成してもよい。
通信装置100の変形例として、導電層あるいは網の目状に形成された配線に対して予め通信素子を配置した基板装置14において、導電層の一部の領域あるいは網の目状に形成された配線の一部にインタフェース部が構成されており、インタフェース部に対して外部機器を電気的に接続することで、当該外部機器との間で片方向または双方向の通信を行うことができてもよい。すなわち、上記した例では、通信素子200にインタフェース機能をもたせて、その通信素子200に対して外部機器を電気的に接続させる通信装置100について説明したが、導電層あるいは配線にインターフェース部、すなわちコネクタを設けて、そのコネクタに外部機器を電気的に接続させることも可能である。その場合における作用および効果については、既述したとおりである。
図45は、基板装置14およびコネクタ222の接続方法の変形例を説明するための図である。この変形例では、基板装置14において、導電層の材料の硬さと、絶縁層または高抵抗層の材料の硬さとを異なるようにし、コネクタ222を、導電層と、絶縁層または高抵抗層の厚さに合わせて、段をつけて形成する。これにより、コネクタ222を基板装置14に差し込んだときに、導電層と、コネクタに設けた電極とを適切な位置にとめることが可能となり、電気的接触を確保することができる。なお、導電層は、既述した実施例における第1信号伝達層20、第2信号伝達層30、あるいは電源層44に対応する。
図45(a)は、基板装置14の各層の硬さを調整した構造の一例を示す。ここでは、導電層302を硬い材料で形成し、絶縁層301を柔らかい材料で形成する。なお、絶縁層301は、高抵抗層も含む概念である。この基板装置14に対して、コネクタ222を上方から差し込む。コネクタ222の先端は、基板装置14に挿入しやすいように、尖っていることが好ましい。コネクタ222の側面は、積層構造における各層の厚さに合わせた長さの凹凸を設けて構成される。すなわち、コネクタ222の側面に形成される凹凸の軸方向の長さは、コネクタ222を基板装置14に押し込んだ最終位置において、積層構造の収まるべき各層の厚さと等しくなるように設けられる。なお、柔らかい層におさまる部分が太く、硬い層におさまる部分が細くなるように凹凸が形成され、したがって、この場合は、導電層302におさまる部分が細く、絶縁層301におさまる部分が太くされる。なお、この凹凸については、挿入方向の抵抗を少なくするように、凸部分の挿入面がテーパ状に形成されることが好ましい。細い部分、すなわち導電層302におさまる部分には電極224が形成される。これにより、コネクタ222を押し込んだときに、太い部分は柔らかい層でとまりやすくなり、コネクタ222を基板装置14に好適に装着することが可能となる。例えば、コネクタ222の周囲をドリル状に形成して、ユーザは、コネクタ222を回転させながら基板装置14に挿入させてもよい。
図45(b)は、基板装置14の各層の硬さを調整した構造の一例を示す。ここでは、導電層302を柔らかい材料で形成し、絶縁層301を硬い材料で形成する。コネクタ222の側面は、導電層302におさまる部分が太く、絶縁層301におさまる部分が細くされる。太い部分、すなわち導電層302におさまる部分には電極224が形成される。
このように、導電層302と絶縁層(高抵抗層)301とが、交互に複数段積層された構造をもつ基板装置14において、導電層の材料の硬さと、絶縁層または高抵抗層の材料の硬さとを異なるようにして、硬い層と柔らかい層とを交互に積層させることで、差し込まれるコネクタ222の電極224と導電層301との接続を容易にとることが可能となる。
実施例に係る通信技術の方式を説明するための図である。 実施例にかかる通信装置の外観構成を示す図である。 通信素子の機能ブロック図である。 通信装置の断面を示し、局所的通信を実現する通信デバイスの構造の一例を説明するための図である。 電荷蓄積型の通信デバイスが信号を発信する原理を説明するための図である。 通信装置における通信原理を説明するための図である。 電荷蓄積型の通信デバイスにおける電圧と通信距離の関係を示す図である。 通信装置の断面を示し、局所的な通信を実現する通信デバイスの構造の別の例について説明するための図である。 5層構造の通信装置の構成図である。 電流拡散型の通信デバイスが信号を発信する原理を説明するための図である。 (a)は通信装置の断面図であり、(b)は通信装置の別の例を示す断面図である。 (a)は通信デバイスが信号を発信する基本原理を説明するための図であり、(b)は通信デバイスが信号を発信する原理の別の例を説明するための図である。 通信素子を備えた通信デバイスを示す図である。 (a)は通信デバイスを実現する回路動作の概要を示す図であり、(b)は第1信号伝達層に印加する交流電圧の振幅を制限する回路の例を示す図である。 (a)は通信装置における第1信号伝達層の抵抗分布を示す図であり、(b)は均一な抵抗で第1信号伝達層が形成されているときの電圧振幅分布を示す図であり、(c)は第1信号伝達層を抵抗分布をつけて形成したときの電圧振幅分布を示す図である。 第1信号伝達層および第2信号伝達層に厚み分布を設けた構造を示す図である。 通信装置の構成を示す図である。 (a)は通信装置の断面の一例を示す図であり、(b)は通信装置の断面の別の例を示す図である。 (a)は通信装置の構成の変形例を示す図であり、(b)は通信装置の構成のさらなる変形例を示す図であり、(c)は通信装置の構成のさらなる変形例を示す図である。 通信装置の模式図である。 (a)はRTSパケットのデータフォーマットを示す図であり、(b)はCTSパケットのデータフォーマットを示す図であり、(c)はDTパケットのデータフォーマットを示す図である。 通信装置における通信方式を説明するための説明図である。 (a)は信号層を流れる信号の波形フォーマットを示す図であり、(b)は1フレームの構成を示す図である。 通信素子のデジタル回路の実現例を示す図である。 通信素子のデジタル回路におけるプロセスの状態遷移図である。 基板装置の構造図である。 (a)は基板装置の開口部に通信素子を挿入した状態を示す図であり、(b)はコネクタの構造図である。 (a)はサイト深さが異なる場合を示す概念図であり、(b)は、深さの異なる複数の第1信号伝達層を有する基板装置の断面構造図である。 基板装置における第1信号伝達層の位置関係の一例を示す図である。 コネクタと基板装置の固定方法を説明するための図である。 コネクタの構造の変形例を示す図である。 コネクタにケーブルを取り付けた構造を示す図である。 コネクタを、別のコネクタとの電気接続に利用する例を示す図である。 開口部およびコネクタの変形例を示す図である。 コネクタの構造の変形例を示す図である。 開口部の構造の変形例を示す図である。 図13に示す通信デバイスをコネクタを用いて実現するための構造を示す図である。 電極の構造例を示す図である。 複数の接続ピンを備えた通信素子を示す図である。 通信デバイスの実装形態を示す図である。 通信デバイスの実装形態を示す図である。 通信デバイスの実装形態を示す図である。 3接点1層式の通信デバイスにおける基板装置を作成する方法を説明するための図である。 通信装置の構造の変形例を示す図である。 基板装置およびコネクタの接続方法の変形例を説明するための図である。
符号の説明
14・・・基板装置、20・・・第1信号伝達層、30・・・第2信号伝達層、80・・・開口部、100・・・通信装置、200・・・通信素子、220・・・通信用LSI、222・・・コネクタ、224・・・電極、225・・・接続ピン、226・・・止め部材、228・・・接続部、230・・・補強部品、250・・・基板、252・・・貫通穴、254、256・・・管状部材。

Claims (28)

  1. 信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、複数の開口部を備え、
    前記開口部は、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層を、露出させることを特徴とする信号伝送用基板装置。
  2. 前記開口部は、階段状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送用基板装置。
  3. 信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層は、階段状に形成された前記開口部の平坦部で露出されることを特徴とする請求項2に記載の信号伝送用基板装置。
  4. 前記開口部は、テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送用基板装置。
  5. 前記開口部は、筒状または側面に凹凸のある筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送用基板装置。
  6. 前記開口部は、積層構造を貫通して形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の信号伝送用基板装置。
  7. 複数の前記開口部は、所定の間隔で設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の信号伝送用基板装置。
  8. 前記開口部は少なくとも2つの信号伝達層を露出させ、少なくとも2つの信号伝達層の間には、高抵抗層または絶縁層が介在することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の信号伝送用基板装置。
  9. 前記少なくとも2つの信号伝達層は、積層構造において別の高さの層に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の信号伝送用基板装置。
  10. 信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層から当該信号伝送用基板装置の表面まで延びる導電路を複数設けたことを特徴とする信号伝送用基板装置。
  11. 当該信号伝送用基板装置の表面には、信号伝達層から延びる導電路の表出部と、電源層または接地層の少なくとも一層から延びる導電路の表出部との組が複数存在し、
    各組における表出部同士の間隔は、実質的に等しく設定されていることを特徴とする請求項10に記載の信号伝送用基板装置。
  12. 表出部の各組は、当該信号伝送用基板装置の表面において所定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項11に記載の信号伝送用基板装置。
  13. 絶縁性基板に複数の貫通穴を形成するステップと、
    貫通する絶縁性の管状部材を所定の貫通穴の上方に形成するステップと、
    絶縁性基板上に第1導電層を形成するとともに、貫通穴を導電性材料で充填するステップと、
    第1導電層上に、絶縁層、高抵抗層または誘電層のうちの少なくとも一層を形成するステップと、
    形成された絶縁層、高抵抗層または誘電層の上に、第2導電層を形成するとともに、管状部材を導電性材料で充填するステップと、
    を備えることを特徴とする信号伝送用基板装置の製造方法。
  14. 信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置に設けられた開口部に装着されるコネクタであって、開口部に接触する外部形状が階段状に形成され、階段状に形成された平坦部において、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層と電気的に接続するための電極を有することを特徴とするコネクタ。
  15. 互いに絶縁されて積層された少なくとも2つの信号伝達層に接続して、当該少なくとも2つの信号伝達層間における信号の送受信を行う複数の通信素子が設けられ、前記少なくとも2つの信号伝達層は、積層構造において別の高さの層に形成されていることを特徴とする通信装置。
  16. 信号を伝達する複数の信号伝達層が形成され、少なくとも2つの信号伝達層に接続して当該少なくとも2つの信号伝達層間における信号の送受信を行う複数の通信素子が設けられ、信号の伝達は、発信元となる通信素子と、送信先となる通信素子の相対的な位置関係を利用して実現することを特徴とする通信装置。
  17. 網の目状に形成された配線に電気的に接続した複数の通信素子を備えた通信装置であって、各通信素子が、配線上で隣り合う他の通信素子に対して配線を介して局所的な通信を行う通信機能を有しており、この局所的な通信により通信素子間で信号を順次伝達することによって、目的とする通信素子まで信号を伝達することを特徴とする通信装置。
  18. 配線は格子状に形成されており、通信素子は、格子状配線の交点に配置されることを特徴とする請求項17に記載の通信装置。
  19. 網の目状の配線が形成される層を含んだ積層構造をもつ基板装置を備え、
    基板装置は、配線と通信素子との電気的接続を行わせる構造を有することを特徴とする請求項17または18に記載の通信装置。
  20. 複数の通信素子のうちの少なくとも一部は、外部機器とのインタフェース機能を備えることを特徴とする請求項15から19のいずれかに記載の通信装置。
  21. 信号を伝達するための導電配線を網の目状に形成した層を少なくとも1層を含んだ積層構造をもつ基板装置を形成するステップと、
    網の目状の導電配線に電気的に接続するように、基板装置に複数の通信素子を配置するステップと、
    を備えることを特徴とする通信装置の製造方法。
  22. 複数の通信素子のうちの少なくとも一部は、外部機器とのインタフェース機能を備えることを特徴とする通信装置の製造方法。
  23. 信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層とを含んだ積層構造を有する信号伝送用基板装置であって、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層を露出させる開口部が複数設けられており、前記開口部において、信号伝達層と、電源層または接地層の少なくとも一層における露出部分に電気的に接続するコネクタが設けられることを特徴とする信号伝送用基板装置。
  24. 導電層と、絶縁層または高抵抗層とが、交互に複数段積層された構造をもつ基板装置であって、導電層の材料の硬さは、絶縁層または高抵抗層の材料の硬さと異なるようにされて、硬い層と柔らかい層とが交互に積層されたことを特徴とする基板装置。
  25. 硬い層と柔らかい層とが交互に積層された積層構造をもつ基板装置に差し込まれるコネクタであって、側面において、積層構造における各層の厚さに合わせた凹凸を設けたことを特徴とするコネクタ。
  26. 導電層あるいは網の目状に形成された配線に対して予め通信素子を配置した基板装置において、複数の通信素子のうちの少なくとも一部がインタフェース機能を有して構成されており、インタフェース機能を備えた任意の通信素子に対して外部機器を電気的に接続することで、当該外部機器との間で片方向または双方向の通信を行う通信装置。
  27. 導電層あるいは網の目状に形成された配線に対して予め通信素子を配置した基板装置において、導電層の一部の領域あるいは網の目状に形成された配線の一部にインタフェース部が構成されており、インタフェース部に対して外部機器を電気的に接続することで、当該外部機器との間で片方向または双方向の通信を行う通信装置。
  28. 前記基板装置は、単一のシリコンウェハ上に形成されることを特徴とする請求項26または27に記載の通信装置。
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