JP2005093351A - 誘導加熱ローラ装置、定着装置および画像形成装置 - Google Patents

誘導加熱ローラ装置、定着装置および画像形成装置 Download PDF

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祥平 前田
Hiroyuki Doi
洋幸 土井
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Abstract

【課題】
1つの加熱領域の最大サイズより小さい被加熱体を用いる際の温度分布を改善した誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】
誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイル装置ICに磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、被加熱体aのサイズに応じて複数の加熱領域A、Bに切り換えることができる加熱ローラHRと、加熱ローラHRの軸方向に分散しているとともに、加熱ローHRの各加熱領域A、Bにそれぞれ対向して配設された複数の誘導コイルIC1、IC2を含み、各誘導コイルIC1、IC2のコイルターン間が2mm以下の等間隔で、かつ、隣接する誘導コイル間の間隔sが2mm超〜30mmになっている誘導コイル装置ICと、誘導コイル装置ICに高周波電力を供給する高周波電源HFSとを具備している。
【選択図】
図4

Description

本発明は、誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置に関する。
トナー画像を熱定着するために、従来からハロゲン電球を熱源として用いた加熱ローラが用いられているが、効率が悪く、大電力を必要とする不具合がある。そこで、誘導加熱方式を導入してこの問題を解決しようと開発が行われている。この種の目的のための誘導加熱方式には渦電流損方式(例えば、特許文献1参照。)とトランス方式(例えば、特許文献2参照。)とが知られている。
渦電流損方式は、IHジャーなどにおいて実用化されているのと同様な動作原理である。なお、渦電流損方式において用いられている高周波の周波数は、20〜100kHz程度である。これに対して、トランス方式は、渦電流損方式より磁気的結合が強いために定常効率が高いとともに、加熱ローラ全体を加熱できるので、渦電流損方式に比較して定着装置の構造が簡単になるという利点がある。また、加えて動作周波数を100kHz以上、好適には1MHz以上の高周波にすることによって、誘導コイルのQを大きくして電力伝達効率を高くすることができる。このため、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。また、渦電流損方式に比較して定着装置の構造が簡単になるという利点もある。さらに、渦電流損方式の加熱ローラより熱容量をかなり小さくすることができる。したがって、トランス方式は、熱定着の高速化に甚だ好適である。
さらに、トランス方式の改良形として、誘導コイルに空芯トランス結合する回転可能に支持される中空構造からなる加熱ローラの2次側抵抗値を2次リアクタンスにほぼ等しい閉回路に形成することにより、誘導コイルから加熱ローラへの電力伝達効率が高くなり、加熱ローラを効率よく加熱できる著しい効果が得られる空芯トランス結合方式が本件出願人により特許出願されている(特許文献3参照。)。この発明により加熱ローラの誘導加熱の省電力を図るとともに、熱定着を高速化することが容易になった。
さらにまた、トナー画像が形成された被定着用紙のサイズに応じて誘導ローラの所望の加熱領域のみを加熱できるようにするために、誘導加熱ローラの軸方向に沿って複数に分割された複数の誘導コイルを配設し、かつ、特定領域に対応する誘導コイルに対して選択的に高周波電力を投入可能にすること技術が本発明者らにより開発されていて、例えば特願2002−120365号として特許出願されている。
上述した複数の誘導コイルを配設して加熱ローラの加熱領域を切り換え可能にする構成においては、加熱ローラの軸方向の温度分布を均一にするために、各誘導コイル内におけるコイルターン間隔と隣接する一対の誘導コイル間の間隔とを等しくなるように構成していた。
特開2000−215974号公報 特開昭59−33787号公報 特開2002−222688号広報
加熱ローラの1つの加熱領域に対して許容される最大サイズの被定着用紙よりサイズの小さい被定着用紙を通過させる場合、被定着用紙を通過させた領域は、被定着用紙に熱を奪われるので温度が低下する。ところが、当該加熱領域内の被定着用紙が通過しない残余の領域は、高温の状態のままになる。そこで、当該加熱領域全体を当初の状態に戻そうとして誘導コイルを経由して高周波電力を投入して加熱すると、被定着用紙が通過しない残余の領域はさらに高温になってしまい、温度分布を改善できないばかりか、場合によっては発煙発火につながったりする危険がある。そのため、従来の誘導加熱ローラ装置は、許容される最大サイズの被定着用紙よりサイズの小さい被定着用紙を通過させるような利用態様には不向きであった。
本発明は、加熱ローラの軸方向に複数の加熱領域を選択的に設定可能であるとともに、加熱ローラの1つの加熱領域に対して許容される最大サイズのよりサイズの小さい被加熱体を通過させる際の温度分布を改善した誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイル装置に磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、被加熱体のサイズに応じて複数の加熱領域に切り換えることができる加熱ローラと;加熱ローラの軸方向に分散しているとともに、加熱ローラの各加熱領域にそれぞれ対向して配設された複数の誘導コイルを含み、各誘導コイルのコイルターン間が2mm以下の等間隔で、かつ、隣接する誘導コイル間の間隔が2mm超〜30mmになっている誘導コイル装置と;誘導コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と;を具備していることを特徴としている。
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
<加熱ローラについて> 加熱ローラは、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、後述するように複数の加熱領域に切り換えられるように構成されている。そして、加熱ローラは、閉回路を形成した2次コイルを備えていて、この2次コイルが誘導コイルと磁気結合、例えば空芯トランス結合する。後者の場合、閉回路の2次側抵抗値は、2次コイルの2次リアクタンスとほぼ等しい値を有している。なお、2次側抵抗値と2次リアクタンスとが「ほぼ等しい」とは、2次側抵抗値をRaとし、2次リアクタンスをXaとし、かつ、α=Ra/Xaとしたとき、数式1を満足する範囲とする。なお、数式条件を規定する理由については特許文献3に開示されている。また、2次側抵抗値は、測定により求めることが可能である。2次リアクタンスは、計算により求めることが可能である。さらに、αは、好適には0.25〜4倍の範囲、最適には0.5〜2倍の範囲である。
(数式1)
0.1<α<10
また、加熱ローラは、2次コイルを単一または複数配設することができる。複数の2次コイルを配設する場合、それらを加熱ローラの軸方向に分散して配設することが望ましい。2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。そして、ローラ基体の外面、内面またはローラ基体の内部に2次コイルを配設することができる。
さらに、加熱ローラは、その利用上被加熱体のサイズに応じて軸方向に沿って複数の加熱領域に区分される。すなわち、トナー画像を形成した定着用紙の定着など被加熱体を加熱する目的で加熱ローラを使用する場合、被加熱体の幅サイズに応じて適切な加熱領域を選択できるように構成されている。これらの加熱領域は、見かけ上識別できなくてもよいが、後述する誘導コイルとの協働によって加熱が区分される。トナー画像定着の場合を例として加熱領域を説明する。例えば、トナー画像が形成されたA4サイズの定着用紙からなる被定着体を定着する場合、被定着体を縦置きにして定着させるのと、横置きにするのとでは、必要な加熱領域の長さが異なる。また、例えばA4サイズの被定着体を定着する場合と、B4サイズの被定着体を定着する場合とでも必要な加熱領域幅が異なる。一方、定着に必要な加熱領域以外の領域まで一様に発熱させるのでは電力の無駄であるとともに、前述したように加熱ローラの軸方向の温度分布が不均一になるので、回避しなければならない。他方、必要な加熱領域内においては、なるべく均一な発熱が必要になる。また、2つの異なる加熱領域であっても、いずれの領域に対しても共通に寄与する共通加熱部位と、それぞれの加熱領域に対してのみ寄与する単独加熱部位とがあり得る。さらに、共通加熱部位と単独加熱部位との配置の態様は、共通加熱部位を左右いずれか一方に片寄せして、単独加熱部位をいずれか他方に寄せて配置する態様と、共通加熱部位を中央に配置して、その左右に単独加熱部位を配置する態様とがあるが、本発明においては、以上のいずれか一または全部に対応可能になっていることを許容する。
さらにまた、2次コイルを導体層、導電線および導電板などの導体により形成することができる。導体層は、所望の2次側抵抗値を得るために、以下の材料および製造方法を採用することができる。厚膜形成法(塗布+焼成)により形成する場合には、Ag、Ag+Pd、Au、Pt、RuOおよびCからなるグループから選択した材料を用いるのがよい。塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法およびスプレー法などを用いることができる。これに対して、めっき、蒸着またはスパッタリング法により形成する場合には、Au、Ag、NiおよびCu+(Au、Ag)のグループから選択した材料を用いるのがよい。導電線および導電板は、Cu、Alなどを用いることができる。なお、Cu、Alの場合は、酸化を防止するために、防錆被膜を表面に形成するのが好ましい。また、ローラ基体をFeやSUS(ステンレス鋼)で構成する場合、ローラ基体の表面層が高周波の表皮効果によって2次コイルとして作用する。したがって、上記のような格別の2次コイルを配設しなくてもよい。しかし、この場合であっても、要すればローラ基体とは別に2次コイルを配設することができる。なお、FeやSUSからなるローラ基体においても、表面に亜鉛被膜などの防錆皮膜を形成することができる。
次に、より一層実際的な加熱ローラを得るために、必要に応じて以下の構成を付加することが許容される。
1.(ローラ基体について) 2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。この場合、2次コイルは、ローラ基体の外面、内面または内部に配設することができる。絶縁性のローラ基体は、セラミックスまたはガラスを用いて形成することができる。そして、ローラ基体の耐熱性、強い衝撃性および機械的強度などを考慮して、例えば以下の材料を用いることができる。セラミックスとしては、例えばアルミナ、ムライト、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素などである。ガラスとしては、例えば結晶化ガラス、石英ガラスおよびパイレックス(登録商標)などである。
2.(熱拡散層について) 熱拡散層は、加熱ローラの軸方向における温度の均整度を向上するための手段として、必要に応じて導体層の上側に配設することができる。このために、熱拡散層は、加熱ローラの軸方向への熱伝導が良好な物質を用いるのがよい。熱伝導率の高い物質は、Cu、Al、Au、AgおよびPtなど導電率の高い金属に多く見られる。しかし、熱拡散層は、導体層の材料に対して同等以上の熱伝導率を有していればよい。したがって、熱拡散層は、導体層と同一材料であってもよい。
また、熱拡散層が導電性物質からなる場合、導体層と導電的に接触していてもよいが、絶縁膜を介して配設することにより、放射ノイズの輻射を遮断する作用をも奏する。なお、高周波磁界は、熱拡散層まで作用しないので、熱拡散層には発熱に寄与するほどの2次電流は誘起されない。
3.(保護層について) 保護層は、加熱ローラの機械的保護および電気絶縁、あるいは弾性接触性またはトナー離れ性向上のために、必要に応じて配設することができる。前者のための保護層の構成材料としては、ガラスを、また後者のための保護層の構成材料としては合成樹脂を、それぞれ用いることができる。ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸系ガラスおよびアルミノシリケート系ガラスからなるグループの中から選択して用いることができる。また、後者としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂からなるグループの中から選択して用いることができる。なお、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂の場合、フッ素樹脂が外側に配設される。
4.(加熱ローラの形状について) 所望により加熱ローラにクラウンを形成することができる。クラウンとしては、鼓形および樽形のいずれであってもよい。
5.(加熱ローラの回転機構について) 加熱ローラを回転するための機構は、既知の構成を適宜選択して採用することができる。なお、トナー画像を熱定着する場合には、加熱ローラと正対して加圧ローラを配設して、両ローラの間をトナー画像が形成された記録媒体が通過する際に加熱されてトナーが記録媒体に融着するように構成することができる。
<誘導コイル装置について> 本発明において、「誘導コイル」は、その発生磁束を加熱ローラに鎖交させて加熱ローラに2次電流を誘起させ、かつ、抵抗発熱を発生させることで加熱ローラを所要に加熱するための手段であり、その複数が加熱ローラの軸方向に分散して配設されている。そして、上記複数の誘導コイルをまとめて誘導コイル装置という。
また、複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散しているとともに、加熱ローラの各加熱領域にそれぞれ対向して配設されていて、それぞれの誘導コイルのコイルターン間が2mm以下の等間隔に設定されている。加えて、隣接する誘導コイルは、それらの間隔が2mm超〜30mmに設定されている。要するに、複数の誘導コイルは、それらのコイルターン間の距離より隣接する誘導コイル間の距離の方が大きく設定されている。後者の距離が上記のようにコイルターン間ターンのそれより大きいことにより、隣接する対をなす誘導コイルの一方を使用して被加熱体の加熱を行うときに、誘導コイル間のこの間隙に対向する加熱ローラの部位に低温部を形成することができる。このため、特定の誘導コイルが対向する加熱領域が被定着体の加熱のために加熱されるにもかかわらず当該加熱領域の端部を被加熱体が通過しないために、上記端部の熱が被加熱体に奪われないでいるときには、その残留した熱が隣接する低温部に拡散して温度の平準化が行われる。しかし、隣接する誘導コイル間の間隔が2mm以下であると、誘導コイル間の間隔に対向する実効的な低温部を形成できない。また、隣接する誘導コイル間の間隔が30mm以上であると、誘導コイル間の間隔に対向する低温部の温度低下が顕著になって加熱ローラの温度分布の不均一が大きくなりすぎる。したがって、隣接する誘導コイル間の間隔は、2mm超〜30mmであれば、加熱ローラの加熱領域間に実効的であるとともに加熱ローラの温度分布の不均一が大きくなりすぎない低温部を形成することができる。なお、隣接する誘導コイル間の間隔は、好ましくは3〜15mmである。また、隣接する誘導コイル間の間隔が上記の範囲内にあっても、対向する加熱ローラの低温部の温度が所望の程度より低下するときには、被定着体を通過させる加熱領域に隣接する他の加熱領域に対向する誘導コイルに対して投入する高周波電力を通常より多くすることによって、冷却領域の温度の底上げを図ることもできる。
一方、複数の誘導コイルにおいて、そのコイルターン間の距離が2mm以下であれば、対向する加熱ローラの加熱領域内における温度分布の均整化を図ることができる。コイルターン間の距離が2mmを超えると、当該誘導コイルが対向する加熱領域内の温度分布の変動が大きくなりすぎる。なお、コイルターン間の距離は、好ましくは1.5mm以下である。誘導コイルを形成する導電線は、フッ素樹脂のような耐熱性合成樹脂の絶縁皮膜で被覆された絶縁導体を用いるのが一般的であり、この場合、コイルターン間の距離は、隣接するコイルターンの絶縁皮膜の上から測定される。
誘導コイル装置は、後述する高周波電源から直接または整合回路およびまたは高周波伝送路を経由して付勢すなわち励磁されるとともに、加熱ローラに磁気結合例えば空芯トランス結合するが、回転する加熱コイルに対して静止していてもよいし、加熱ローラと一緒に、または別に回転してもよい。なお、回転する場合には、周波数可変高周波電源と誘導コイルとの間に回転集電機構を介在すればよい。なお、「空芯トランス結合」とは、完全な空芯のトランス結合だけでなく、実質的に空芯とみなせるトランス結合の場合を含む意味である。しかし、要すれば、渦電流損加熱方式の電磁結合であってもよい。
また、誘導コイル装置は、その誘導コイルを支持するために後述するコイルボビンを備えていることができる。コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する高周波伝送路を通線するように構成することができる。しかし、コイルボビンに代えて合成樹脂やガラス質材により誘導コイルを直接成形ないし接着することによって、複数の誘導コイルを所定形状に維持するように構成することもできる。
さらに、誘導コイル装置の複数の誘導コイルは、共通の高周波電源に対して並列接続することができる。しかし、要すれば、複数の誘導コイルを直列接続するようにしてもよい。また、誘導コイルは、個々にまたはグループ分けされて個別の高周波電源に接続してもよい。いずれの態様であっても、誘導コイルに対して高周波電源から高周波電力を給電するための給電リード線は、誘導コイルの内面または外面に接近した位置に配置するのがよい。給電リード線を誘導コイルの内部に通線する場合、給電リード線が誘導コイルの中心軸に近いと、給電リード線と鎖交する磁束が多くなるために、内部に渦流損が生じて電力伝達効率が低下するので、好ましくない。これに対して、上記のように構成することにより、給電リード線と鎖交する磁束が少なくなるので、電力伝達効率の低下が相対的に抑制される。
さらにまた、複数の誘導コイルは、軸長およびターン数が一定であってもよいし、相違してもよい。好ましくは各加熱領域に対向する誘導コイルを次のように構成するのがよい。すなわち、加熱領域の軸方向の長さに応じて一または複数の単位誘導コイルを高周波電源に対して直接または間接的に並列接続して加熱領域に対向する誘導コイルを構成する構成である。この構成によれば、加熱ローラの各加熱領域に対して投入する高周波電力を所望に制御しやすくなる。なお、本発明において「単位誘導コイル」とは、加熱ローラの所定の軸長、ターン数およびコイル径を備えていて、所定の高周波電圧を印加したときに所定の高周波電力が一単位として投入されるように構成されている。したがって、一単位誘導コイルに投入される高周波電力に単位誘導コイルの数を乗じた値の高周波電力を対向する加熱領域に投入することができる。
一方、誘導コイルに供給される高周波電力は、高周波電源を共通にしている場合、誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間に概ね比例的になる。したがって、例えば所望によってPWM制御などにより複数の加熱領域に対向する複数の誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間を制御すれば、高周波電力の値を個別に制御することが可能になる。
<高周波電源について> 高周波電源は、加熱ローラの複数の加熱領域を所要に加熱するために、複数の加熱領域に対向するそれぞれの誘導コイルを付勢するために、高周波電力を発生して、所定の誘導コイルにこれを供給する。また、高周波電源は、その出力周波数(またはその範囲)が基本的に限定されるものではないが、トランス方式の場合は1MHz以上の高周波を出力するように構成されていると効果的である。なぜなら、1MHz以上の高周波にすることにより、導誘コイルのQを大きくして電力伝達効率をより一層高くすることが可能になるからである。電力伝達効率が高くなると、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。しかし、実際には15MHz以下の周波数にすることにより、放射ノイズの問題をなるべく回避しやすくすることができる。なお、適合する能動素子(たとえば、後述するようにMOSFETを用いることができる。)の経済性および高周波ノイズ抑制の容易性などの観点からは、好適には1〜4MHzである。さらに、本発明は、渦電流結合方式(渦電流加熱方式)であってもよいが、その場合には、20〜100kHzの範囲の周波数が好適である。
また、高周波を発生させるには、直流または低周波交流を直接または間接的に半導体スイッチ素子などの能動素子を用いて高周波に変換するのが実際的である。低周波交流から高周波電力を得るには、整流手段を用いていったん低周波交流を直流に変換するのがよい。直流は、平滑回路を用いて形成した平滑化直流でもよいし、非平滑直流であってもよい。直流を高周波に変換するには、増幅器およびインバータなどの回路要素を用いることができる。増幅器としては、例えば電力変換効率の高いE級増幅器などを用いることができる。また、ハーフブリッジ形インバータなどを用いることもできる。さらに、能動素子としては、高周波特性に優れているMOSFETが好適である。複数の高周波電源回路を並列的に接続して、各高周波電源回路の高周波出力を合成してから誘導コイルに印加するように構成することができる。これにより、所望の電力でありながら各高周波電源回路の出力を小さくてよいから、能動素子にMOSFETを用いて、廉価に効率よく高周波を発生することができる。
さらに、高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通に配設することができる。しかし、要すれば、高周波電源を複数の誘導コイルに対してそれぞれ個別に、またはグループ化して複数の高周波電源を配設することも許容される。
さらにまた、高周波電源の出力周波数は、一定であってもよいし、可変であってもよい。後述する誘導コイル選択手段がフィルタ手段または共振回路からなる場合、高周波電源の出力周波数を可変にする必要がある。高周波電源の出力周波数を可変にするには、例えば励振回路の発振周波数を可変にするなど既知の周波数可変手段を用いることができる。なお、要すれば、例えば起動時の投入電力を通常運転時のそれより大きくして、急速加熱を行うように構成することができる。
<本発明の作用について> 本発明においては、加熱ローラの複数の加熱領域に対向して配設された複数の誘導コイルを選択して付勢することにより、特定の加熱領域を加熱しておき、当該加熱領域に被加熱体を通過させれば、所要の程度に加熱できる。したがって、本発明によれば、例えばトナー画像を形成した定着用紙を定着するのに好都合である。また、加熱ローラの一の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときに、当該加熱領域に許容される最大サイズより小さい被加熱体を通過させると、当該加熱領域の被加熱体が通過しない残余の部位の熱が残留する。ところが、隣接する誘導コイルの間に対向する当該加熱領域に隣接する部位には、低温部が形成されているので、残留した熱は低音部へ拡散する。その結果、加熱ローラにおける一の加熱領域の温度は、最大サイズより小さい被加熱体を通過させたにもかかわらず、平準化して、局部的な温度過昇を防止する。
<その他の構成について>
本発明の必須構成要素ではないが、所望により以下の構成を選択的に実施することにより、さらに効果的な誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
1.(高周波電力振分手段について) 高周波電力振分手段は、加熱ローラの一の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときには、当該加熱領域に対向する誘導コイルに対して高周波電源から投入される高周波電力の誘導コイル装置の全体に投入される高周波電力に対する高周波電力比を所定割合にすると同時に、残余の誘導コイルに対しては残余の高周波電力を振り分けることによって残余の加熱領域を一の加熱領域の温度とほぼ同一温度に保温するように制御する手段である。なお、本発明において、「所定割合」とは、加熱ローラの一の加熱領域と残余の加熱領域との間におけるそれぞれ単位軸長に対する割合として表現されているものであると同時に、複数の加熱領域の一部が被加熱体の加熱のために使用されている場合において、加熱ローラの軸方向に実用上ほぼ均一な温度分布が得られる限界値およびそれ以上の範囲として表現されている。例えば、加熱ローラに中間部および両端部からなる3つの加熱領域を設定する場合には、中間部の加熱領域を使用して加熱するときに、対向する誘導コイルに0.7以上の割合で高周波電力を投入し、残余の加熱領域に0.3未満の割合で高周波電力を振り分けるのがよい。また、全部の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときには、両端部の加熱領域に0.5以上の割合で高周波電力を振り分けるのがよい。しかし、被加熱体を加熱する一の加熱領域の全高周波電力に対する割合は、0.95を上限とするのが実際的である。なお、このとき残余の加熱領域の同様割合は0.05以下になる。また、所定割合が一定であっても、加熱領域の軸長に応じて当該加熱領域に投入される高周波電力の総量が変化することになる。
ところで、誘導コイルが記述のように単位誘導コイルの適数を用いて構成されている場合には、一の加熱領域と残余の加熱領域とにおけるそれぞれの単位誘導コイル当たりに投入される高周波電力の割合に等しい。したがって、加熱ローラおよび誘導コイルの構成の如何にかかわらず、上記所定割合以上の範囲内において加熱ローラの軸方向にほぼ均一な温度分布が得ることが可能になる。
次に、高周波電力振分手段の具体的な構成の一例について説明する。以下、PWM制御方式、フィルタ方式および共振回路方式について説明する。なお、これらの例は、単独で実施するばかりでなく、適宜組み合わせて実施することが許容され、また組み合わせによってより一層高周波電力の割り振り可能な範囲が拡大したり、きめ細かく調整したりできるようになる。特にPWM制御方式とフィルタ方式または共振回路方式との組み合わせが好適である。
(1)(PWM制御方式について) PWM制御方式は、加熱ローラの各加熱領域に対向する複数の誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間をPWM制御により変化させることにより、各誘導コイルに供給される高周波電力を所望の割合で変化させる方式である。なお、PWM制御は、高周波の各半サイクルごとに行うようにしてもよいし、高周波電源の高周波出力を相対的に低周波、例えば1〜100Hz程度で変調してもよい。
(2)(フィルタ方式について) フィルタ方式は、周波数可変形の高周波電源と誘導コイルとの間にフィルタ手段を介在させるとともに、高周波電源の周波数を変化させることによってフィルタ手段が応動して、高周波電力の通過度を変化させる。フィルタ手段の備えているべきフィルタ特性としては、帯域通過形、帯域阻止形、低域通過形および広域通過形のいずれであってもよい。また、フィルタ手段の構成としては、アナログ形、アクティブ形およびディジタル形のいずれであってもよい。さらに、フィルタ手段は、誘導コイルに対して直列または並列に接続することができる。
次に、フィルタ手段のフィルタ特性と誘導コイルの選択的付勢との関係について説明する。フィルタ特性が帯域通過形である場合、可変高周波電源が当該通過帯域の周波数を出力するように可変高周波電源を制御すれば、フィルタ手段に接続する誘導コイルは、フィルタ手段を通過した高周波電力によって付勢されるので、当該誘導コイルが対向する加熱ローラの領域を選択的にまたは所定比率で加熱することができる。したがって、例えば2つの誘導コイルの付勢割合を周波数により選択的に変更するには、通過帯域の互いに異なる2つのフィルタ手段を用意して、その一方を一方の誘導コイルに接続し、他方を他方の誘導コイルに接続して、周波数可変高周波電源の出力周波数をそれぞれの通過帯域内になるように切り換えるとともに、それぞれの通過帯域が所定の割合で一部オーバーラップするように設定すればよい。
そうして、フィルタ手段は、そこに入力する高周波の周波数に対して選択的に、かつ、所定割合で応動して当該フィルタ手段を通過する高周波電力を所定割合に応じて制御する。したがって、電源周波数を変化することにより、所望の誘導コイルに対する高周波電力の投入割合を制御することができる。
また、各誘導コイルと周波数可変高周波電源との間に介在して誘導コイルに供給される高周波電力を制御する部分がフィルタ手段により構成されているので、誘導コイルの構成の如何に影響を受けることなく、安定した制御を行うことができる。
(3)(共振回路について) 共振回路は、誘導コイルを共振回路要素として構成されている。誘導コイルは、2次抵抗に加えて主としてインダクタンスを含んでいるので、一般的にはコンデンサを追加することにより共振回路を構成することができる。共振回路は、周波数可変形の高周波電源に対して直列共振回路および並列共振回路のいずれであってもよい。前者は、周波数可変形の高周波電源に対して誘導コイルおよびコンデンサの直列接続回路を接続する。後者は、周波数可変形の高周波電源に対して誘導コイルおよびコンデンサの並列回路を接続する。しかし、要すれば、誘導コイルの他にインダクタンスを追加することができる。そして、第1および第2の誘導コイルを共振回路構成部品として含む複数の共振回路を構成する場合は、それらの共振周波数を少なくとも2種類以上に相違させるとともに、共振特性曲線が一部オーバーラップするように設定する。
さらに、要すれば複数の共振回路の間において、選択度であるQの大きさを共振周波数とともに、少なくとも2つの異なった値を有するように構成することができる。すなわち、一方の共振回路のQ値の大きさを、他方のそれより相対的に小さくなるように構成する。
そうして、共振回路を用いて複数の誘導コイルに投入される高周波電力を所要の割合で振り分けるには、それぞれの誘導コイルを共振要素とする複数の共振回路に対して、ともに適度に共振するような周波数の高周波電力を出力するように高周波電源の周波数を設定すればよい。
2.(ウオームアップ制御について) 起動すなわち給電開始後のウオームアップ期間中、加熱ローラが通常運転時におけるより低い回転数で回転するように制御することができる。
3.(加熱ローラの温度制御について) 加熱ローラの温度を所定範囲内で一定、例えば200℃に維持にするために、加熱ローラの表面に感熱素子を導熱的に接触させることができる。そして、感熱素子を温度制御回路に接続する。感熱素子としては、負温度特性を有するサーミスタや正温度特性を有する非直線抵抗素子を用いることができる。
4.(搬送シートについて) 加熱ローラを用いて被加熱体を加熱する際に、加熱ローラが直接被加熱体に当接するように構成することができるが、要すれば両者の間に搬送シートが介在するように構成することができる。この場合、搬送シートは、無端状またはロール状の形態をとることが許容される。搬送シートを用いることにより、被加熱体の加熱と搬送をスムースに行うことが可能になる。
請求項2の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイル装置に磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、被加熱体のサイズに応じて複数の加熱領域に切り換えることができる加熱ローラと;加熱ローラの軸方向に分散し、かつ、加熱ローラの各加熱領域にそれぞれ対向する複数の誘導コイルを含むとともに、隣接する複数の誘導コイル間がコイルターン間の間隔より大きな間隔が形成されるように配設された誘導コイル装置と;誘導コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と;加熱ローラの一の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときに当該加熱領域に対向する誘導コイルに主たる高周波電力を投入するとともに、残余の加熱ローラの誘導コイルに残余の高周波電力を投入して保温させる高周波電力振分手段と;を具備していることを特徴としている。
本発明は、被加熱体を加熱するのに一の加熱領域を使用するときには、高周波電力振分手段により上記加熱領域に対向して配置された誘導コイルに主たる高周波電力を投入し、残余の加熱領域には全高周波電力から主たる高周波電力を差し引いた残余の高周波電力を投入して保温するように構成されている。ここで、「主たる高周波電力」とは、全体の0.5倍以上であり、例えば加熱領域が中間部および両端部の3つに区分されている場合は、0.7倍以上である。なお、高周波電力の投入割合は、請求項1において定義したのと定義が同じである。
これに対して、加熱ローラの全部の加熱領域を使用して被加熱体を加熱する場合は、高周波電力振分手段により各加熱領域に対して高周波電力を等分して投入すればよい。しかし、加熱ローラの両端部に位置する加熱領域は冷却されやすいので、中間部に位置する加熱領域に投入するのより多くするのがよい。
本発明において、高周波電力振分手段は、請求項1において説明したのと同じ構成を採用することができる。
そうして、本発明においては、被加熱体を加熱するのに一の加熱領域を使用するときには、一の加熱領域に対向する誘導コイルと隣接する加熱領域に対向する誘導コイルとの間の間隔が誘導コイルのコイルターン間の間隔より大きいので、上記誘導コイル間間隔の部位に対向する加熱ローラの部位に相対的な低温部が形成される。この低温部は、一の加熱領域に許容される最大サイズより小さい被加熱体を加熱する際に加熱領域の端部に生じる残留熱を拡散しやすくする。その結果、加熱ローラ全体の温度分布が均整化する。
本発明によれば、一の加熱領域を使用して被加熱体の加熱を行うときであっても、加熱ローラ全体の温度が均整化され、温度むらを一般的には30℃以下、好ましくは15℃以下にすることができる。
これに対して、全部の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときには、前記一の加熱領域に隣接する加熱領域に対向する誘導コイルに対して等分またはそれ以上の高周波電力が投入されるので、誘導コイル間に対する加熱ローラに形成される低温部が減少するか消滅する。その結果、加熱ローラの軸方向の全体がほぼ均一に加熱され、被加熱体の加熱を良好に行うことができる。
請求項3の発明の誘導加熱ローラ装置は、請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置において、誘導コイル装置は、複数の誘導コイルが隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性になるような関係に設定されていることを特徴としている。
本発明は、複数の誘導コイルの隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性とになるような関係に設定されていることによって、隣接する誘導コイル間の電位差がなくなるか、小さくなるので、隣接する誘導コイル間の絶縁が容易になる。このため、隣接する誘導コイル間の距離を小さく設定することが可能になる。このことは、隣接する誘導コイルが異なる高周波電源に接続する場合であっても、基本的に同様である。
また、複数の誘導コイルから発生する磁束の極性が同じなので、隣接する誘導コイル間の磁界の変化が少なくなる。なお、複数の単位誘導コイルを並列接続することによって単一の誘導コイルを構成する場合に、単位誘導コイル間に本発明の構成を採用することができる。そうすれば、上述したのと同様の作用を奏するものである。
以上の構成により、隣接する誘導コイル間の距離を小さくしても、絶縁上の問題がなくなるので、被加熱体を加熱するのに必要な値まで小さくすることが可能になる。その結果、加熱ローラの温度分布の均整度が良好になる。
請求項4の発明の誘導加熱ローラ装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置において、誘導コイル装置および高周波電源の間を接続するツイストペア構造の絶縁導体からなる高周波供給線路を具備していることを特徴としている。
本発明は、誘導加熱ローラ装置の加熱効率や信頼性がこれを組み込む画像形成装置などの機器内における配置に影響されないようにするのに好適な構成を規定している。
高周波供給線路の数は誘導コイルの構成および高周波電源に対する接続の態様に応じて多様な態様を採用することができる。例えば、誘導コイルが単一である場合、高周波供給線路は誘導コイルの両端から導出され一対の給電リード線かなる単一組でよいが、請求項1ないし3の構成である場合、高周波電力振分手段の構成にもよるが、複数組の高周波供給線路が用いられる。
また、高周波供給線路が加熱ローラから導出される態様は、加熱ローラの一端および両端のいずれであってもよい。対をなす高周波供給線路が加熱ローラの両端から分離して導出される場合、導出後にツイストペア構造になっていればよい。
ところで、誘導加熱ローラ装置は、電磁誘導を利用して高周波電力により加熱ローラを加熱するので、高周波供給線路の引き回しが変化しただけで浮遊静電容量や寄生インダクタンスなどの常数が変化してしまい高周波電源から見た負荷インピーダンスが変化するという問題がある。例えば、ある負荷条件で高周波電源側が最大効率になるように設計してあっても、高周波供給線路の引き回しを変更しただけで、高周波電源の最適動作点を確保できなくなり、その結果、高周波電源の損失が増加してしまう。
そうして、本発明においては、上記のように誘導コイル装置および高周波電源の間を接続する高周波供給線路がツイストペア構造の絶縁導体によって構成されているので、高周波電源から見た負荷インピーダンスが高周波供給線路の引き回しによって変化しなくなる。このため、機器内における高周波供給線路の引き回しの如何にかかわらず高い加熱効率と信頼性を確保することができる。
請求項5の発明の誘導加熱ローラ装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置において、加熱ローラは、隔壁によって仕切られた両端に開口する一対の中空部を備えており;誘導コイル装置は、加熱ローラの一対の中空部内に配置される少なくとも一対の誘導コイルを含んでいる;ことを特徴としている。
本発明は、被加熱体のサイズに応じて加熱領域を切り換えるとともに加熱ローラの強度を向上するのに好適なとともに、省スペースが可能で、しかも加熱領域の切り換えが可能なのに好適な誘導加熱ローラ装置の構成を規定している。
加熱ローラは、その軸方向が隔壁によって複数の中空部に仕切られている。加熱ローラの少なくとも両端側の一対に位置する一対の中空部には少なくとも一対の誘導コイルが配置される関係で、隔壁は、加熱ローラの軸方向の中間部に1つだけ形成するのが実際的である。しかし、隔壁の位置は、中央部だけでなく、いずれか一方の端部側へ偏った位置にすることができる。
誘導コイルは、加熱ローラの両端から中空部内に挿入されるので、静止形にする場合には、片持ち構造にするのがよい。また、1つの中空部に対して1つまたは複数の誘導コイルを配置することができる。
そうして、本発明においては、加熱ローラの中間部に隔壁が形成されていることによって加熱ローラが加熱時の温度で熱変形しにくくなるので、加熱ローラの機械的強度が向上する。このため、加熱ローラをアルミニウムなどの比較的軽量で剛性の小さい金属を用いることにより、加熱ローラの熱容量を小さくして温度上昇を早めるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
また、複数の加熱領域の境界部に隔壁が位置するので、いずれか一方の加熱領域のみを使用して被加熱体を加熱する場合において、当該加熱領域に対して許容される最大サイズより小さい被加熱体を通過させて加熱する際に、加熱領域の端部に熱が残留するが、隔壁が存在することによって熱容量が大きくなるので、当該熱が隔壁に拡散しやすくなる。その結果、加熱ローラの軸方向における温度分布の均整化に効果的である。
請求項6の発明の定着装置は、加圧ローラを備えた定着装置本体と;定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項1ないし5のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置と;を具備していることを特徴としている。
本発明において、「定着装置本体」とは、定着装置から誘導加熱ローラ装置を除いた残余の部分をいう。
加圧ローラと加熱ローラとは、直接圧接してもよいが、要すれば搬送シートなどを介して間接的に圧接してもよい。なお、搬送シートは、無端またはロール状であってもよい。
請求項7の発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;画像形成装置本体に配設されて記録媒体のトナー画像を定着する請求項6記載の定着装置と;を具備していることを特徴としている。
本発明において、「画像形成装置本体」とは、画像形成装置から定着装置を除いた残余の部分をいう。また、画像形成手段は、記録媒体に間接方式または直接方式により画像情報を形成する画像を形成する手段である。なお、「間接方式」とは、転写によって画像を形成する方式をいう。
画像形成装置としては、例えば電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリなどが該当する。
記録媒体としては、例えば転写材シート、印刷紙、エレクトロファックスシート、静電記録シートなどが該当する。
請求項1によれば、加熱ローラの軸方向に複数の加熱領域を選択的に設定可能であるとともに、加熱ローラの1つの加熱領域に対して許容される最大サイズの被定着用紙などの被加熱体よりサイズの小さい被定着体を通過させる際の温度分布を改善した誘導過熱ローラ装置を提供することができる。
請求項2によれば、被加熱体を加熱するのに一の加熱領域を使用するときに、誘導コイル間間隔の部位に対向する加熱ローラの部位に相対的な低温部が形成さ、一の加熱領域に許容される最大サイズより小さい被加熱体を加熱する際に加熱領域の端部に生じる残留熱を拡散しやすくする結果、加熱ローラ全体の温度分布が均整化する。
請求項3によれば、加えて隣接する誘導コイル間の距離を小さくしても、絶縁上の問題がなくなるので、隣接する誘導コイル間の距離を被加熱体を加熱するのに必要な値まで小さく設定することが可能になり、加熱ローラの温度分布の均整度が良好な誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
請求項4によれば、加えて高周波電源から見た負荷インピーダンスが高周波供給線路の引き回しによって変化しなくなるため、機器内における高周波供給線路の引き回しの如何にかかわらず高い加熱効率と信頼性を確保した誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
請求項5によれば、加えて機械的強度が向上するので、加熱ローラをアルミニウムなどの比較的軽量で剛性の小さい金属を用いることが可能になり、加熱ローラの熱容量を小さくして温度上昇を早めるとともに、省エネルギー化を図ることができ、また加熱領域に対して許容される最大サイズより小さい被加熱体を通過させて加熱する際に、加熱領域の端部に熱が残留するが、隔壁が存在することによって熱容量が大きくなるので、当該熱が隔壁に拡散しやすくなり、加熱ローラの軸方向における温度分布の均整化に効果的な誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
請求項6によれば、請求項1ないし5の効果を有するとともに、トナー画像を高速で定着する定着装置を提供することができる。
請求項7によれば、請求項1ないし5の効果を有するとともに、加熱ローラのウオームアップが誘導加熱により早くなるので、高速タイプに好適な画像形成装置にすることができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図1ないし図8は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第1の形態を示し、図1は装置全体の概要を示す回路ブロック図、図2は誘導コイル装置および加熱ローラの一部切欠中央断面正面図、図3は誘導コイル装置および加熱ローラの横断面図、図4は加熱ローラおよび誘導コイル装置の位置、加熱ローラの温度分布、ならびに被加熱体の関係を説明する概念図、図5は誘導コイル装置の接続態様を示す回路図、図6は高周波電源の電源主回路部および周波数制御部を示す回路図、図7は出力回路および高周波電力割振手段の回路図、図8は第1および第2の誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性を示すグラフである。本実施の形態は、請求項1ないし3に準拠している。そして、誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHR、誘導コイル装置IC、高周波電源HFS、および高周波電力割振手段PAMを備えて構成されている。また、加熱ローラHRは、図2に示すように、回転機構RMを備え、これにより駆動されて回転する。以下、上記の構成要素ごとにその構成を詳細に説明する。
<加熱ローラHR> 加熱ローラHRは、ローラ基体1、2次コイルwsおよび保護層2を備えて構成されているとともに、回転機構RMにより回転駆動される。ローラ基体1は、アルミナセラミックス製の円筒体からなり、例えば長さ300mm、厚み3mmである。2次コイルwsは、Cuの蒸着膜からなるフィルム状をなした円筒状の1ターンコイルからなり、ローラ基体1の外面において、軸方向の有効長のほぼ全体にわたって配設されている。そして、2次コイルwsの厚みは、加熱ローラHRの周回方向の2次側抵抗Rの値が2次リアクタンスとほぼ同じ値の1Ωになるように設定されている。保護層2は、フッ素樹脂からなり、2次コイルwsの外面を被覆して形成されている。
回転機構RMは、加熱ローラHRを回転させるための機構であって、以下のように構成されている。すなわち、図2に示すように、第1の端部部材3A、第2の端部部材3B、一対の軸受4、4、ベベルギア5、スプラインギア6およびモータ7を備えて構成されている。第1の端部部材3Aは、キャップ部3a、駆動軸3bおよび尖端部3cからなる。キャップ部3aは、加熱ローラHRの図2において左端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの左端を支持している。駆動軸3bは、キャップ部3aの外面の中央部から外方へ突出している。尖端部3cは、キャップ部3aの内面の中央部からキャップ部3aの内方へ突出している。第2の端部部材3Bは、リング部3dからなる。リング部3dは、加熱ローラHRの図2において右端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの右端を支持している。一対の軸受4、4の一方は、第1の端部部材3Aにおけるキャップ部3aの外面を回転自在に支持する。また、他方は、第2の端部部材3Bの外面を回転自在に支持する。したがって、加熱ローラHRは、その両端に固定した第1および第2の端部部材3A、3Bと、一対の軸受4、4とにより回転自在に支持されている。ベベルギア5は、第1の端板3Aの駆動軸3bに装着されている。スプラインギア6は、ベベルギア5に噛合している。モータ7は、そのロータ軸がスプラインギア5に直結している。
<誘導コイル装置IC> 誘導コイル装置ICは、第1および第2の誘導コイルIC1、IC2からなる。第1の誘導コイルIC1は、図4および図5に示すように、加熱ローラHRの中間部の加熱領域Aに対向して配設されている。これに対して、第2の誘導コイルIC2は、図1では集合されているように示しているが、実際には図4および図5に示すように、第1の誘導コイルIC1の両端に若干の絶縁距離を存して隣接するとともに、加熱ローラHRの両端部に分散した加熱領域Bに対向して配設されている。したがって、第2の誘導コイルIC2は、加熱ローラHRの両端部に分散して配設されている。
また、第1および第2の誘導コイルIC1およびIC2は、図4および図5に示すように、それぞれ複数の単位誘導コイルICを並列接続して構成され、加熱ローラHRの2次コイルwsにそれぞれ磁気結合している。そして、図5に示すように、第1および第2の誘導コイルIC1およびIC2、ならびに各単位誘導コイルICのそれぞれにおいて、隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性になるような関係に設定されている。単位誘導コイルICは、そのコイルターン間の間隔が例えば1mmに設定されている。これに対して、第1の誘導コイルIC1と第2の誘導コイルIC2との間の間隔sは、単位誘導コイルICのコイルターン間の間隔より広い例えば4mmに設定されている。
さらに、第1および第2の誘導コイルIC1およびIC2は、図2および図3に示すように、コイルボビン8に巻装されて、加熱ローラHRの軸方向に分散して配置されている。また、第1の誘導コイルIC1は、給電リード線9a、9d間に接続され、第2の誘導コイルIC2は、2分割されていて、その一方が給電線9b、9d間に、他方が9c、9d間に、それぞれ接続している。4本の給電リード線9a〜9dは、高周波電力割振手段PAMを経由して後述する高周波電源HFSの出力端に接続する。
コイルボビン8は、例えばフッ素樹脂製の円柱体からなり、凹部8a、支持部8bおよび通線溝8cを有している。凹部8aは、コイルボビン8の先端中央に形成されていて、回転機構RMに相対的に回転自在に係止している。支持部8bは、コイルボビン8の基端に形成されていて、図示しない固定部に固定される。通線溝8cは、コイルボビン8の外面の一部に軸方向に沿って樋状に形成されていて、内部に給電リード線9a〜9dを収納する。なお、給電リード線9a〜9dは、図3に示すように、通線溝1c内に収納されて、コイルボビン8の基端側から外部へ導出されている。
そうして、第1および第2の誘導コイルIC1およびIC2は、静止状態で使用され、給電リード線9a〜9dは通線溝1c内に収納されて各誘導コイルIC1IC2に接近しているので、磁束の鎖交が殆どないため、給電リード線9内には殆ど渦電流損が発生しない。
一方、第1および第2の誘導コイルIC1およびIC2は、第2の端部部材3Bのリング部3dから加熱ローラHRの内部に挿入されていて、コイルボビン1の先端に形成された凹部1aが第1の端板3Aの尖端部3cに係合し、かつ、前述したように基端に形成した支持部1bが固定部に固定されることによって、加熱ローラHRと同軸関係に支持されるとともに、加熱ローラHRが回転しても静止状態を維持する。
<高周波電源HFS> 高周波電源HFSは、図1および図6に示すように、電源主回路部MC、出力回路OCおよび周波数制御部FCからなる。
(電源主回路部MC) 電源主回路部MCは、図6に示すように、低周波電源AS、直流電源RDCおよび高周波発生部HFIから構成されている。低周波交流電源ASは、例えば100V商用交流電源からなる。直流電源RDCは、整流回路からなり、入力端が低周波交流電源ASに接続し、低周波交流電圧を非平滑直流電圧に変換して、その直流出力端から出力する。高周波発生部HFIは、高周波フィルタHFFおよびハーフブリッジ形インバータ主回路HBIからなる。高周波フィルタHFFは、両線路にそれぞれ直列の一対のインダクタL1、L2および一対のインダクタL1、L2の前後で両線路間に接続された一対のコンデンサC1、C2からなり、直流電源RDCおよび後述するハーフブリッジ形インバータ主回路HBIの間に介在して、高周波が低周波交流電源AS側へ流出するのを阻止する。ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIは、直流電源RDC出力端間に直列接続され、駆動回路DCの駆動信号により励振されて交互にスイッチングする一対のMOSFETQ1、Q2および一対のMOSFETQ1、Q2に並列接続されたコンデンサC3、C4からなる。コンデンサC3、C4は、インバータ動作中に高周波バイパス作用を行う。
(出力回路OC) 出力回路OCは、異なる出力周波数のそれぞれにおいて、高周波電源HFSを効率が高い状態で作動させるために、高周波電源HFSに対する負荷として異なる周波数においてインピーダンス変換を行うことにより、ほぼ等しいインピーダンスおよび位相差を呈するように作用して、高周波電力を効率よく出力するための手段である。そして、図5に示すように、線路に直列に挿入されたコンデンサCssおよびインダクタLssの直列回路と、この直列回路の後段において線路に並列接続されたインダクタLppおよびコンデンサCppの並列回路とからなる。
また、出力回路OCは、高周波電源HFSがスイッチング手段としてMOSFETを用いた直列共振方式のハーフブリッジ形インバータ主回路HBI含んで構成されているので、MOSFETの出力容量Cossの充放電電圧が0Vになるスイッチング手段のデッドタイムdt中に出力電流Iを転流する負荷条件を異なる周波数で実現する定数をそれぞれの回路部品に設定して構成されている。
さらに、出力回路は、その周波数−インピーダンス特性が周波数f1、f2のところに現れている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。要するに、第1および第2の出力周波数f1、f2のときに出力回路OCは、並列共振状態となる。
さらにまた、出力回路OCは、その周波数−位相特性が位相0°の通過点が3つある。周波数f1、f2のところが所定位相角になっている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。
(周波数制御部FC) 周波数制御部FCは、図4に示すように、発振器OSCおよび駆動信号発生回路DCからなる。高周波発振器OSCは、発振周波数可変形であり、図示しない外部信号源により制御されて可変周波数の高周波励振信号を発生して、駆動回路DCに入力する。駆動回路DCは、プリアンプからなり、高周波発振器OSCから送出された高周波信号を増幅して駆動信号を出力する。
<高周波電力割振手段PAM> 高周波電力割振手段PAMは、図7に示すように、第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2からなる。第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、それぞれ接続する第1の誘導コイルIC1に対して予め設定された周波数の高周波電力を選択的に通過させるためのフィルタ手段である。第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、線路に直列接続したコンデンサCC1、CC2と、線路に並列接続したコンデンサCpp1、Cpp2と、第1および第2の誘導コイルIC1、IC2から見た誘導コイルIC1、IC2および加熱ローラHRの等価インダクタンスLc1、Lc2との直並列共振回路からなる。なお、誘導コイル側から見た誘導コイルIC1、IC2および加熱ローラHRの等価回路は、図7に示すように、インダクタンスLc1、Lc2と、抵抗Rc1、Rc2との並列回路からなる。実際には、さらに分布容量が並列接続しているが、この分布容量は小さいので、コンデンサCpp1、Cpp2の静電容量を分布容量より1桁以上大きい値にすれば、実際上無視して差し支えない。
そうして、高周波電力割振手段PAMの周波数−高周波電力特性は、例えば図8に示すようになる。図において、曲線F1は第1の周波数弁別フィルタ手段F1の特性を示し、曲線F2は第2の周波数弁別フィルタ手段F2の特性を示している。したがって、周波数f1のときには、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、Wa1の高周波電力を通過させ、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、Wb1の高周波電力を通過させる。また、周波数f2のときには、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、Wa2の高周波電力を通過させ、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、Wb2の高周波電力を通過させる。
<誘導加熱ローラ装置の動作> 低周波交流電源ASの低周波交流電圧は、高周波電源HFSの電源主回路部MC内において、直流電源部RDCにより直流電圧に変換され、さらに高周波発生部HFIで高周波電圧に変換されて高周波電圧として出力される。この高周波出力電圧は、さらに出力回路OCと、高周波電力割振手段PAMとを経由して、静止状態の第1および第2の誘導コイルIC1、IC2に印加される。
加熱ローラHRの第1の加熱領域Aを使用して標準的なサイズの被加熱体aを加熱する場合、図8に示すように、図示しない外部信号源を操作して高周波電源HFSの高周波出力の出力周波数が第1の周波数f1に設定されて高周波電源HFSが作動する。このとき、図7に示すように、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、その周波数−高周波電力特性が第1の周波数f1の高周波を所定割合で通過させるように予め設定されているので、第1の周波数f1の全高周波電力Wの所定割合0.7以上に相当する高周波電力Wa1が通過し、第1の誘導コイルIC1がWa1の高周波電力で付勢されて加熱ローラHRの第1の加熱領域Aが発熱して温度上昇する。したがって、加熱領域Aを使用して被加熱体aを良好に加熱することができる。
一方、上記動作と同時に、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、その周波数特性が第2の周波数f1の高周波を所定割合0.3未満で通過させるように予め設定されているので、第2の周波数f2の全高周波電力Wが所定割合0.3未満に相当する高周波電力Wb1が通過し、第2の誘導コイルIC2がWb1の高周波電力で付勢されて加熱ローラHRの第2の加熱領域Bが適度に発熱して温度上昇するので、加熱領域Bは保温される。その結果、加熱ローラHRの温度分布は、図4に示すように、加熱ローラHRの加熱領域AおよびBのそれぞれの全体にわたってほぼ均一に保持される。しかし、加熱領域AとBとの間には、間隔sが単位誘導コイルICのターン間の間隔より大きくなっているため、低温部Tが形成されている。
そうして、図4に示すように、加熱領域Aにその最大許容サイズより小さい幅のトナー画像を形成した定着用紙からなる被加熱体aを通過させて、これを加熱すると、加熱ローラHRの被加熱体aが通過した部位は、熱が被加熱体aに奪われるため、図中点線で示す温度分布曲線のように、その温度が低下する。しかし、加熱領域Aの両端部は、点線で示すように、熱が残留する。そこで、さらに継続して加熱を続行すると、加熱領域Aの両端部は、点線で示す加熱領域Aの温度分布曲線のように温度が上昇しようとするが、加熱領域Aに隣接して低温部Tが存在するため、残留熱は温度勾配にしたがって低音部Tに向け矢印方向へ拡散する。その結果、加熱ローラHRの軸方向に沿った温度分布は、平準化される。これに対して、図17に示す従来技術においては、加熱領域領Aに熱が残留してしまう。
図17は、従来技術における加熱ローラおよび誘導コイル装置の位置、加熱ローラの温度分布、ならびに被加熱体の関係を説明する概念図である。この従来技術は、誘導コイル装置がその第1および第2の誘導コイルIC1、IC2の間の間隔の大きさを除けば、図4に示す本発明を実施するための第1の形態と同じである。そのため、図4と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。そして、第1および第2の誘導コイルIC1、IC2の間の間隔は、単位誘導コイルICのコイルターン間の間隔に等しくなっている。
そうして、図17に示す従来技術おいて、被加熱体aの加熱以前には、(a)のグラフの温度分布曲線に示すように、加熱ローラHRの温度分布が均整化されているが、図4におけるのと同様の被加熱体aを矢印のように加熱領域Aに通過させると、加熱領域Aの中央部は、(b)のグラフの点線で示す温度分布曲線に示すように、熱が被加熱体aに奪われて温度が低下する。そこで、被加熱体aの加熱後に加熱ローラHRの加熱を継続すると、加熱領域Aの中央部の温度は、図(b)の実線で示す中央部の温度分布曲線に示すように、上昇して元へ復帰していくが、残留した熱が拡散していないので、両端部が過昇して高温部Tが生じてしまう。
次に、加熱ローラHRの第1および第2の加熱領域AおよびBを同時に使用してサイズが大きい被加熱体を加熱する場合には、外部信号源を操作して高周波電源HFSの高周波出力の出力周波数が第2の周波数f2に設定される。すると、図8に示すように、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、その周波数特性が第2の周波数f2を所定割合0.5以上で通過させるように予め設定されているので、第2の周波数f2の全高周波電力Wが所定割合の高周波電力Wb2で通過し、第2の誘導コイルIC2がWb2の高周波電力で付勢されて加熱ローラHRの両端部に分散して位置する第2の加熱領域Bが発熱して温度上昇する。これと同時に、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、その周波数特性が第1の周波数f2を0.5未満の割合で通過させるように予め設定されているので、W−Wb2=Wa2の高周波電力で付勢されて加熱ローラHRの中間部に位置する第1の加熱領域Aが発熱して温度上昇する。
上記のような加熱の態様においては、加熱領域Bが強く加熱されるので、第1および第2の誘導コイルIC1、IC2の間の間隔sに対向する加熱ローラHRの部位は、加熱領域AおよびBの両方から熱が拡散してくるため、低温部Tがほぼ消滅ないし加熱に支障ない程度まで縮小するので、加熱ローラHRの加熱領域AおよびBを通してほぼ均一な温度になる。その結果、加熱領域AおよびBを同時に使用してサイズの大きい被加熱体を良好に加熱することができる。
以下、図9ないし図14を参照して本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するためのその他の形態について説明する。なお、図1および図4と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
図9および図10は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第2の形態を示し、図9は装置全体の概要を示す回路ブロック図、図10はツイストペア構造の絶縁導体の要部拡大正面図である。本形態は、誘導コイル装置ICと電源装置ESとの間をそれぞれがツイストペア構造の絶縁導体tpwからなる3組の高周波供給線路HFLを用いて接続している。
誘導コイル装置ICは、図4および図5に示す第1の形態におけるのと同様の構成である。また、電源装置ESは、図1における高周波電源HFSおよび高周波電力割振手段PAMを包含している。
図11は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第3の形態を示す回路ブロック図である。本形態は、加熱ローラHRの両端から単線の高周波供給線路HFLを導出し、それらが途中で撚り合わされてツイストペア構造の絶縁導体tpwを構成している。なお、誘導コイル装置ICは、単一および複数のいずれであってもよい。
図12は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第4の形態を示す回路ブロック図である。本形態は、加熱ローラHRの一端から1組のツイストペア構造の絶縁導体tpwからなる高周波供給線路HFLを導出して、電源装置ESに接続している。なお、誘導コイル装置ICは、単一および複数のいずれであってもよい。
図13は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第5の形態を示す加熱ローラおよび誘導コイル装置の断面図である。本形態においては、加熱ローラHRは、その軸方向の中央部に隔壁PWが配設されていて、隔壁PWによって仕切られた両端に開口する一対の中空部B1、B2を備えている。なお、加熱ローラHRは、両端支持構造により回転される。誘導コイル装置ICは、第1および第2の誘導コイルIC1、IC2からなる。そして、第1の誘導コイルIC1が中空部B1内に挿入され、第2の誘導コイルIC2が中空部B2内に挿入されている。
図14は、本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第6の形態を示す加熱ローラおよび誘導コイル装置の断面図である。なお、図13と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態においては、加熱ローラHRの隔壁PWが軸方向の中央部から一端に偏った位置に配設され、これに伴って第1の誘導コイルIC1の軸長が短くなり、第2の誘導コイルIC2の軸長が長くなっている。本形態によれば、第2の誘導コイルIC2に対向する加熱領域を所望の長さに設定することができる。
図15は、本発明の定着装置を実施するための一形態を示す縦断面図である。図において、21は誘導加熱ローラ装置、22は加圧ローラ、23は記録媒体、24はトナー、25は架台、ICは誘導コイルである。なお、誘導加熱ローラ装置21は、図1ないし図14に示す各形態の誘導加熱ローラ装置を用いることができる。
加圧ローラ22は、誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと圧接関係を有して配設されており、両者の間に記録媒体23を狭圧しながら搬送する。
記録媒体23は、その表面にトナー24が付着することにより、画像が形成される。
架台25は、以上の各構成要素(記録媒体23を除く。)を所定の位置関係に装架している。
そうして、定着装置は、トナー24が付着して画像を形成している記録媒体23が誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと加圧ローラ22との間に挿入されて搬送されるとともに、加熱ローラHRの熱を受けてトナー24が加熱されて溶融し、熱定着が行われる。
図16は、本発明の画像形成装置を実施するための一形態としての複写機の概念的断面図である。図において、31は読取装置、32は画像形成手段、33は定着装置、34は画像形成装置ケースである。
読取装置31は、原紙を光学的に読み取って画像信号を形成する。
画像形成手段32は、画像信号に基づいて感光ドラム32a上に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて反転画像を形成し、これを紙などの記録媒体に転写して画像を形成する。
定着装置33は、図15に示した構造を有し、記録媒体に付着したトナーを加熱溶融して熱定着する。
画像形成装置ケース34は、以上の各装置および手段31ないし33を収納するとともに、搬送装置、電源装置および制御装置などを備えている。
本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第1の形態を示す装置全体の概要を示す回路ブロック図 同じく誘導コイル装置および加熱ローラの一部切欠中央断面正面 同じく誘導コイル装置および加熱ローラの横断面図 同じく加熱ローラおよび誘導コイル装置の位置、加熱ローラの温度分布、 同じく誘導コイル装置の接続態様を示す回路図 同じく高周波電源の電源主回路部および周波数制御部を示す回路図 同じく出力回路および高周波電力割振手段の回路図 同じく第1および第2の誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性を示すグラフ 本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第2の形態を示す回路ブロック図 同じくツイストペア構造の絶縁導体の要部拡大正面図 本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第3の形態を示す回路ブロック図 本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第4の形態を示す回路ブロック図 本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第5の形態を示す加熱ローラおよび誘導コイル装置の断面図 本発明の誘導加熱ローラ装置を実施するための第6の形態を示す加熱ローラおよび誘導コイル装置の断面図 本発明の定着装置を実施するための一形態を示す縦断面図 本発明の画像形成装置を実施するための一形態としての複写機の概念的断面図 従来技術における加熱ローラおよび誘導コイル装置の位置、加熱ローラの温度分布、ならびに被加熱体の関係を説明する概念図
符号の説明
a…被加熱体、A、B…加熱領域、HR…加熱ローラ、IC…誘導コイル装置、IC1…第1の誘導コイル、IC2…第2の誘導コイル、T…低温部、s…間隔

Claims (7)

  1. 後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、被加熱体のサイズに応じて複数の加熱領域に切り換えることができる加熱ローラと;
    加熱ローラの軸方向に分散しているとともに、加熱ローラの各加熱領域にそれぞれ対向して配設された複数の誘導コイルを含み、各誘導コイルのコイルターン間が2mm以下の等間隔で、かつ、隣接する誘導コイル間の間隔が2mm超〜30mmになっている誘導コイル装置と;
    誘導コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と;
    を具備していることを特徴とする誘導加熱ローラ装置。
  2. 後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱するとともに、被加熱体のサイズに応じて複数の加熱領域に切り換えることができる加熱ローラと;
    加熱ローラの軸方向に分散し、かつ、加熱ローラの各加熱領域にそれぞれ対向する複数の誘導コイルを含むとともに、隣接する複数の誘導コイル間がコイルターン間の間隔より大きな間隔になっているように配設された誘導コイル装置と;
    誘導コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と;
    加熱ローラの一の加熱領域を使用して被加熱体を加熱するときに当該加熱領域に対向する誘導コイルに主たる高周波電力を投入するとともに、残余の加熱ローラの誘導コイルに残余の高周波電力を投入して保温させる高周波電力振分手段と;
    を具備していることを特徴とする誘導加熱ローラ装置。
  3. 誘導コイル装置は、複数の誘導コイルが隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性になるような関係に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置。
  4. 誘導コイル装置および高周波電源の間を接続するツイストペア構造の絶縁導体からなる高周波供給線路を具備していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置。
  5. 加熱ローラは、隔壁によって仕切られた両端に開口する一対の中空部を備えており;
    誘導コイル装置は、加熱ローラの一対の中空部内に配置される少なくとも一対の誘導コイルを含んでいる;
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置。
  6. 加圧ローラを備えた定着装置本体と;
    定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項1ないし5のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置と;
    を具備していることを特徴とする定着装置。
  7. 記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;
    画像形成装置本体に配設されて記録媒体のトナー画像を定着する請求項6記載の定着装置と;
    を具備していることを特徴とする画像形成装置。
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