JP2005087149A - D−キロ−イノシトールの製造方法 - Google Patents

D−キロ−イノシトールの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005087149A
JP2005087149A JP2003327703A JP2003327703A JP2005087149A JP 2005087149 A JP2005087149 A JP 2005087149A JP 2003327703 A JP2003327703 A JP 2003327703A JP 2003327703 A JP2003327703 A JP 2003327703A JP 2005087149 A JP2005087149 A JP 2005087149A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
inositol
myo
kilo
reaction
inosose
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003327703A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4344572B2 (ja
Inventor
Masanori Yamaguchi
将憲 山口
Yuichi Kita
雄一 北
Atsushi Takahashi
篤 高橋
Kenji Kanbe
健司 神辺
Akihiro Tomota
明宏 友田
Tetsuya Mori
哲也 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hokko Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Hokko Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hokko Chemical Industry Co Ltd filed Critical Hokko Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP2003327703A priority Critical patent/JP4344572B2/ja
Publication of JP2005087149A publication Critical patent/JP2005087149A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4344572B2 publication Critical patent/JP4344572B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】 医薬として有用であるD−キロ−イノシトールを簡易に且つ効率よく製造できる新しい方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 D−キロ−1−イノソースまたはミオ−イノシトールから出発して、酵素反応だけによりD−キロ−イノシトールを製造できる方法が提供された。前記のD−キロ−イノシトール製造方法で利用できる酵素としてのミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの新しい製造方法が提供された。
【選択図】 なし

Description

第1の本発明は、D−キロ−イノソースにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとNADHとを反応させてD−キロ−イノシトールへ変換することを含む、D−キロ−イノシトールの製造方法に関する。
また、第2の本発明は、ミオ−イノシトールから出発して、ミオ−イノシトールにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとNAD+とを反応させ、生成したシロ−イノソースにシロ−イノソース イソメラーゼを反応させ、生成したD−キロ−1−イノソースにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとNADHとを反応させてD−キロ−イノシトールを生成することを含む、D−キロ−イノシトールの製造方法に関する。
第3の本発明は、ミオ−イノシトールとミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびNAD+との酵素反応と、シロ−イノソースとシロ−イノソース イソメラーゼの酵素反応と、D−キロ−1−イノソースとミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびNADHの酵素反応とを1つの水性反応媒質中で順次進行させることによってD−キロ−イノシトールを効率よく製造できるD−キロ−イノシトールの製造方法に関する。
さらに、第4の本発明は、第2または第3の本発明方法で得られるようなミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの混合物の水溶液において、酵素反応で生じたD−キロ−イノシトールから、混在するミオ−イノシトールを、効率良く分離できる、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含有する混合物からミオ−イノシトールの分離方法に関する。
第5の本発明は、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールをある比率で含む混合物からクロマトグラフィーによりD−キロ−イノシトールを分離する方法に関する。
また、第6の本発明は、バチルス属細菌からのミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの製造方法に関する。
D−キロ−イノシトールは、経口的または非経口的に投与されると、細胞内情報伝達を活性化するイノシトールリン脂質系に作用して、II型糖尿病に改善効果をもたらすこと(特許文献1:特表平4−505218号公報)、および、多嚢胞生卵巣症候群に改善効果をもたらすこと(特許文献2:USP5906979号明細書参照、非特許文献1:「The New England Journal of Medicine 」、J. E. Nestler et al.、1999年、340巻、p.1314参照)が提唱されている治療剤である。D−キロ−イノシトールは機能的には、広範な代謝系疾患に関与すると考えられ、今後その適応が拡大する可能性が期待される物質である。
D−キロ−イノシトール(DCIと略すことがある)は、9種類あるイノシトール立体異性体の一つである。DCIの製造方法としては、これまで、抗生物質であるカスガマイシンの加水分解によりDCIを製造する方法(特許文献3:USP5091596号明細書参照、特許文献4:USP5463142号明細書参照、特許文献5:USP5714643号明細書参照、特許文献6:USP6342645号明細書参照)、マメ科植物に含有されるD−ビニトールを加水分解してD−キロ−イノシトールを製造する方法(特許文献7:USP5827896号明細書参照、特許文献8:PCT/US01/15353号明細書参照、特許文献9:特開平13−261600号公報参照)、有機合成によりD−キロ−イノシトールを製造する方法(特許文献10:USP5406005号明細書参照、特許文献11:WO96/25381号パンフレット参照、特許文献12:特表平8−502255号公報参照、特許文献13:特開平11−280068号公報参照)、微生物をミオ−イノシトールに作用させることにより、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへ変換させるD−キロ−イノシトールの製造方法(特許文献14:特開平9−140388号公報参照)などが知られる。
しかしながら、カスガマイシンやD−ビニトールを出発原料とする場合、これらの物質が高価であり、また、有機合成により製造する場合も収率および光学純度が低く、最終産物であるD−キロ−イノシトールは高価なものになる。さらに、ミオ−イノシトールに微生物を作用させてD−キロ−イノシトールへ変換させる反応は、変換の制御が困難であり、微生物により、他の代謝産物も同時に生産されるため、目的生成物の分離と精製が困難である。
また、近年、アグロバクテリウム属に属し且つミオ−イノシトールをD−キロ−イノシトールに変換できる構成酵素としてのD−ミオ−イノシトール 1−エピメラーゼを生産できる能力を有する細菌を利用して、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールを製造する方法が知られている(特許文献15:特開2001−8694号公報及び、特許文献16:WO 02/055715号パンフレット参照)。しかしながら、その細菌を培養しながらミオ−イノシトールに作用させて、D−キロ−イノシトールに変換する方法では、高い基質濃度で細菌を作用させることが困難であり、そのため、膨大な培地の量を取り扱わなくてはならない。
さらに、バチルス ズブチリス(枯草菌)の染色体DNAの全塩基配列が公開されている(非特許文献2:「Microbiology」、140巻、p.2289〜2298(1994年)参照)。この染色体DNAの塩基配列の中のイノシトール代謝オペロン中に存在する12種類のオープンリーディングフレーム(ORF)の中に存在する、ミオ−イノシトールをシロ−イノソースへ酸化するミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの塩基配列ならびに該D−ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列が知られている(特許文献17:特開平05−192163号公報参照、非特許文献3:「Journal of Biological Chemistry」、254巻、p.7684〜7690(1979年)参照)。また、前記のイノシトール代謝オペロン中に存在するiolI遺伝子の塩基配列が知られる(前記の非特許文献2および非特許文献3参照)。
ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、良く知られており、古くは1956年に存在が確認されている酵素(EC,1.1.1.18)であり、その一例としてエアロバクター エアロゲネス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼが知られる(非特許文献4:「Archives of Biochemistry and Biophysics」、J. Larner et al.、60巻、p.352〜363(1956年)参照)。ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは原核生物、酵母、動植物に広く存在し、例えばバチルス ズブチリス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は特許文献17(特開平05−192163号公報)に示され、バチルスsp. No.3すなわちバチルス ハロデュランス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は特許文献18(特開平06−007158号公報参照)に記載される。また、これらミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列がインターネット上で公開されている。本酵素の至適pHは8〜9とされる。
ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼをNAD+と共にミオ−イノシトールに作用させると、ミオ−イノソースが生成し且つNAD+がNADHになることが知られる(特許文献18:特開平06−007158号公報および特許文献19:特許第3251978号明細書参照)。ミオ−イノソースはシロ−イノソースとも言われる物質である。
また、D−キロ−1−イノソースは既知の物質であり(非特許文献5:「Carbohydrate Research」、79巻、p.121〜130(1979年))、D−キロ−1−イノソースを化学還元剤でに還元すると、D−キロ−イノシトールが生成されることがを先に本発明者らは知見した(特願2003-128065号)。
特表平4−505218号公報(全文:II型糖尿病に対するD−キロ−イノシトールの効果)、 USP5906979号明細書(全文:多嚢胞生卵巣症候群に対するD−キロ−イノシトールの効果) USP5091596号明細書(全文:カスガマイシンの加水分解によりD−キロ−イノシトールを得る方法) USP5463142号明細書(全文:カスガマイシンのアセチル化分解によりD−キロ−イノシトールを得る方法) USP5714643号明細書(全文:カスガマイシンの加水分解によりD−キロ−イノシトールを得る方法) USP6342645号明細書(全文:カスガマイシンの加水分解によりD−キロ−イノシトールを得る方法) USP5827896号明細書(全文:ビニトールを加水分解してD−キロ−イノシトールを得る方法) PCT/US01/15353号明細書(全文:大豆種子から得られるビニトールを加水分解してD−キロ−イノシトールを得る方法) 特開平13−261600号公報(全文:食用資源から得られるビニトールを加水分解してD−キロ−イノシトールを得る方法) USP5406005号明細書(全文:グルクロン酸から10工程でD−キロ−イノシトールを合成する方法) WO96/25381号パンフレット(全文:ジアルドースから有機合成によりD−キロ−イノシトールを得る方法) 特表平8−502255号公報(アセトアニリドから有機合成によりD−キロ−イノシトールを得る方法) 特開平11−280068号公報(ミオ−イノシトールから有機合成によりD−キロ−イノシトールを得る方法) 特開平9−140388号公報(全文:ミオ−イノシトールにアグロバクテリウム属細菌を培養しながら作用させることによりD−キロ−イノシトールを製造する方法) 特開2001−8694号公報(全文:ミオ−イノシトールにアグロバクテリウムsp. AB10121株を培養しながら作用させることによりD−キロ−イノシトールを得る方法) WO 02/055715号パンフレット(全文:ミオ−イノシトールに遺伝子組換えでエピメラーゼを発現させた微生物(大腸菌)を培養しながら作用させることによりD−キロ−イノシトールを製造する方法) 特開平05−192163号公報(全文:バチルス ズブチリス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとそのアミノ酸配列) 特開平06−007158号公報(全文:バチルス ハロデュランス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとそのアミノ酸配列) 特許第3251976号公報(全文:バチルス ハロデュランス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ) 「The New England Journal of Medicine 」、J. E. Nestler et al.、1999年、340巻、p.1314(全文:多嚢胞生卵巣症候群に対するD−キロ−イノシトールの効果) 「Microbiology」、140巻、p.2289〜2298(1994年)(全文:バチルス ズブチリスの染色体の全DNA中のイノシトール代謝オペロン中の遺伝子に関する論文) 「Journal of Biological Chemistry」、254巻、p.7684〜7690(1979年)(全文:バチルス ズブチリス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼに関する論文) 「Archives of Biochemistry and Biophysics」、J. Larner et al.、60巻、p.352〜363(1956年)(全文:エアロバクター エアロゲネス由来のイノシトール 2−デヒドロゲナーゼに関する論文) 「Carbohydrate Research」 Stephan J. et al., 79巻,p.121〜130(1979年) 先に、本発明者らは、ミオ−イノシトールに細菌を作用させて生成できるシロ−イノソースを出発原料として用いて、しかもシロ−イノソースから酵素との反応および化学還元剤との反応を介してD−キロ−イノシトールを製造できる新しい方法を開発する研究を行っていた。
この研究の過程において、バチルス ズブチリス染色体中から分離された既知のiolI遺伝子をプラスミドに組込み、該遺伝子を含有するプラスミドで大腸菌を形質転換し、その形質転換した大腸菌を培養する方法によって該iolI遺伝子を発現させる一連の実験を行った。この一連の実験において、その形質転換大腸菌の培養した細胞から、該iolI遺伝子によりコードされる酵素を単離することに成功した。そしてこの酵素の性質を調べて、この単離された酵素がシロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースへの異性化反応と、D−キロ−1−イノソースからシロ−イノソースへの異性化反応とからなる相互変換の平衡的反応を触媒する作用を有することを見出した。この新しい酵素をシロ−イノソース イソメラーゼと命名した(本出願人の2003年5月6日出願に係る特願2003−128065号明細書参照)。
前記のiolI遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼは、pH5〜pH9の至適pHを有し且つ活性化因子としてMn2+、Zn2+またはCo2+によって活性化される性質をもつことが判明し、また後記で示す配列表の配列番号1に記載される278個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列をもつ酵素(分子量31.6kダルトン)であることが判明している(前記の特願2003−128065号明細書参照)。
さらに、前記の新しい酵素、シロ−イノソース イソメラーゼは、これをシロ−イノソース水溶液中でシロ−イノソースに作用させると、D−キロ−1−イノソースを生成できることが確認され、またD−キロ−1−イノソースをNaBH4で化学的に還元すると、D−キロ−イノシトールを製造できることが確認された(前記の特願2003−128065号明細書参照)。
安価な原料を用いてD−キロ−イノシトールを製造する方法において、効率的にD−キロ−イノシトールを生成でき、しかも生成されたD−キロ−イノシトールの単離と精製を容易に行い得るD−キロ−イノシトール製造の新しい方法が望まれていた。
本発明者らは、原料に酵素を作用させる反応だけを用いることにより、高い基質濃度でミオ−イノシトールに数種の酵素を作用させて、最終生成物としてのD−キロ−イノシトールを効率的に製造することが可能であると考えた。そこで、ミオ−イノシトールから出発して、各種の酵素との反応によりD−キロ−イノシトールを製造する新しい方法を開発することを目的として研究を重ねた。
その研究過程中に本発明者らは、バチルス ズブチリスの既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼに先づ着目した。この酵素は、ミオ−イノシトールのアキシャル水酸基を認識することができ、補酵素NAD+の存在下にミオ−イノシトールの酸化反応を触媒し、ミオ−イノシトールから相当するケトン(すなわちシロ−イノソース)を生成できる酵素であることが判っている。さらに、本発明者らはエンテロバクター エアロゲネシス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ(Sigma社市販品)を用いて基礎的実験を行ったところ、このエンテロバクター由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、従来知られているとおりNAD+の存在下でミオ−イノシトールからシロ−イノソースへの酸化反応を触媒するばかりでなく、NADHの存在下にD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールへの還元反応も触媒することを、本発明者らは今回、見出した。
さらに、本発明者らは、バチルス ズブチリスを培養し、その培養細胞の破砕液から直接に、バチルス ズブチリスのiolG遺伝子のコードする酵素、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを分離することに今回成功した(後記の実施例1参照)。このように本発明者らが後記の実施例1で得たバチルス ズブチリス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、特許文献17に示す式(I)のアミノ酸配列をもつミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと同じ酵素であると推定した。
本発明者らは、今回、後記の実施例1で得られたバチルス ズブチリス由来ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを、NADHと共にD−キロ−1−イノソースに作用させると、D−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールへの還元反応を触媒できることを今回、見出した。
従って、第1の本発明においては、次式
Figure 2005087149
のD−キロ−1−イノソースにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと補酵素として還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とを反応させて次式(IV)
Figure 2005087149
のD−キロ−イノシトールを生成させ、得られた反応液からD−キロ−イノシトールを回収することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。
第1の本発明方法の反応は、反応媒質として水を用いて行うことができる。この反応で使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、バチルス ズブチリス由来またはエンテロバクター エアロゲネシス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ、であることができ、好ましくはバチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼであることができる。
第1の本発明方法において、使用する原料基質はD−キロ−1−イノソースであり、36℃の水に約40%で溶解できるケトースまたは環状糖ケトンである。生成するD−キロ−イノシトールは、36℃の水に、約60%の濃度まで溶解できる環状糖アルコールである。しかし、本方法での酵素反応における水中の基質(D−キロ−1−イノソース)濃度は、反応温度が36℃の場合、最高のD−キロ−1−イノソース濃度として3%である。反応剤として必要なNADHは36℃で水に対して10%の溶解度をもつものであり、D−キロ−1−イノソース濃度はそれの約1/3であるからである。
本方法での反応温度は、酵素反応が進行すれば、特に限定されない。基質の溶解度、NADHの安定性、使用酵素の耐熱性を考慮すると、20℃〜50℃、好ましくは36℃の温度で反応させる方が望ましい。また、均一系の水溶液での反応なので、攪拌する必要は無いが、反応混合物内の温度を均一化するため攪拌した方が望ましい。
本酵素反応では、反応剤としてNADHが必要であり、反応液中でNADHは還元作用を果した後にNAD+に変換される。NADとNADHは、水溶液中のpH安定性が異なり、NADはpH8.0以下で安定であり、NADHはpH8.0以上で安定である。従って、反応媒質のpHは約pH8.0に保つのがよいと推定される。また、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、至適pHが約pH8.0にあるため、本反応はpH8.0で進行させるのが適当であり、これを実験的に確認した。
ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、所期の反応を所望の反応時間内に終わらせるのに必要な量で使用される。通常、25℃でpH9.0にて、1分間あたり、1μモルのミオ−イノシトールとNADを、1μモルのシロ−イノソースとNADHにする活性の量を1ユニット(単位)とする。
さらに、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、Mg2+イオンで活性化されることから、この金属イオンを添加することで、反応速度は増大することを実験的に確認した。
従って、第1の本発明方法においては、酵素反応を行う反応媒質にNADHを0.0001%〜10%好ましくは0.004%〜0.1%添加すること、及びMg2+イオンが0.001mM〜10mM、好ましくは1mMになるようにMg塩を添加すること、及び反応媒質のpHを好ましくはpH7.7〜8.3に保つことによって、D−キロ−イノシトールの生成が効率よく行われる。
第1の本発明方法の酵素反応に使用する反応剤は、NADHであるが、NADPHも利用することもできる。安定性を考慮すると、NADHが望ましく、そのNADH濃度は、0.0001%から10%、好ましくは0.04%〜0.1%の濃度であることが望ましい。
酵素反応液のpHは、pH7.7〜pH8.3の範囲に調整して反応させるが、好ましくは、pH8.0が望ましい。また、反応中に、このpHを反応中に保つために、必要があれば、緩衝液を加えることもできる。加える緩衝液の種類は特に限定されないが、pH8.0を保つ緩衝能力のある緩衝液が望ましく、さらに好ましくは、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などが例示される。
なお、第1の本発明方法における酵素反応では、D−キロ−1−イノソースから一旦、生成したD−キロ−イノシトールがNADHから生じたNAD+の存在下にミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの作用により酸化されてD−キロ−1−イノソースになる逆反応も起り、このようにD−キロ−イノシトールが生成する還元反応とD−キロ−イノシトールからD−キロ−1−イノソースが生成する逆向きの酸化反応とが平衡状態に達することが実験的に認められている。
さらに、使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは固定化酵素としても使用可能であり、酵素固定化方法としてはゲル抱埋法、イオン交換樹脂吸着法など、一般的な酵素固定化方法が適用できる。
本酵素反応の停止は、加熱による酵素の失活、pHの変化、タンパク質変性剤の添加などにより達成できる。しかしながら、次工程のD−キロ−イノシトールの回収と精製を考慮すると、加熱により酵素を失活させるのが望ましい。例えば、酵素反応液を70℃〜120℃、好ましくは80℃〜90℃で10〜20分間加熱することによって酵素を失活できる。
また、本酵素反応の停止のためには、反応液から酵素を分離、回収することにより、反応を停止させることもできる。このような酵素回収は、イオン交換樹脂カラムに反応液を通過させることにより酵素を分離することで行われる。固定化酵素を使用した場合は、反応液を遠心分離、あるいはろ過操作することによって、固定化酵素を回収することができる。
第1の発明方法において、加熱による反応停止処理を行った後の酵素反応液は、これからタンパク質変性で生じた不溶物を除去するために、遠心分離またはろ過する必要がある。さらに、不溶物が除去された反応液は、液中に存在するD−キロ−イノシトール以外のイオン性の物質すなわちNAD+、金属イオンなど、ならびに残留のD−キロ−1−イノソースおよび疎水性物質を除去する目的で、イオン交換樹脂カラムに通過される。この際に使用されるイオン交換樹脂カラムは、強塩基性イオン交換樹脂および弱塩基性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、両方の混合物のカラムと、強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、両方の混合物のカラムであることができる。前記のように、イオン交換樹脂カラムに反応溶液を通す方法も使用できるが、不溶物を除去した反応液をイオン交換樹脂粒とバッチ式に攪拌混合し、ろ過することで脱イオンすることも可能である。
イオン交換樹脂カラムから最終的に出た溶出液は、D−キロ−イノシトールを含む水溶液である。
さらに、得られたろ液または遠心分離上清は、D−キロ−イノシトールの水溶液であり、これを必要があれば、活性炭を用いて脱色させることが可能である。活性炭処理法は、カラム状に詰めた活性炭中に溶液を通す方法であることができるが、バッチ式で攪拌混合し、ろ過することで脱色することも可能である。脱色処理されたD−キロ−イノシトール水溶液を濃縮乾固すると、高純度のD−キロ−イノシトール固体が得られる。
更に、本発明者らは研究を進めた。すなわち、前記のとおり、本出願人の先の出願に係る特願2003−128065号に記載の発明において、バチルス ズブチリスの既知のiolI遺伝子を組込んだプラスミドで形質転換された大腸菌を作成し、その形質転換された大腸菌を培養し、その培養細胞の破砕液から、iolI遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼ(後記の配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質)を収得することに成功した。この際に得られた経験と知識を利用して、バチルス ズブチリスを培養し、バチルス ズブチリス培養細胞を破砕し、得られたバチルス ズブチリス細胞破砕液から直接にシロ−イノソース イソメラーゼを分離、収得する実験を試みた。
この実験の結果に基づいて、前記のシロ−イノソース イソメラーゼをバチルス ズブチリスから直接に製造して分離することに今回成功した(後記される第6の本発明の説明および後記の実施例1、参照)。
バチルス ズブチリスから後記の実施例1の方法により直接に製造して分離されたシロ−イノソース イソメラーゼも、後記の配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有し且つ特願2003−128065号の発明で得られたものと一致する酵素学的性質を有することを、本発明者らは確認した。そして、後記の実施例1で得られたバチルス ズブチリス由来のシロ−イノソース イソメラーゼをシロ−イノソースに作用させると、D−キロ−1−イノソースを生成できることが確認された。
上記の本発明者らの知見に基づいて、本発明者らは、ミオ−イノシトールからシロ−イノソースを製造する既知の酵素的方法に従って、先づ次式(I)
Figure 2005087149
のミオ−イノシトールにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、補酵素として知られる酸化型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とを水性反応媒質中で反応させて次式(II)
Figure 2005087149
のシロ−イノソースを生成させる第1の反応ステップを行った。続いて、得られた式(II)のシロ−イノソースに、バチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolI遺伝子のコードする酵素、すなわちシロ−イノソース イソメラーゼを水性反応媒質中で反応させて次式(III)
Figure 2005087149
のD−キロ−1−イノソースを生成させる第2の反応ステップを実験し、さらに得られた式(III)のD−キロ−1−イノソースに、第1の反応ステップで使用したものと同じミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、を還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とを水性反応媒質中で反応させて次式(IV)
Figure 2005087149
のD−キロ−イノシトールを生成させる第3の反応ステップを実験したところ、第3の反応ステップの反応溶液中に式(IV)のD−キロ−イノシトールが生成できることを知見した。
従って、第2の本発明においては、次式(I)
Figure 2005087149
のミオ−イノシトールにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと酸化型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とを水性反応媒質中で反応させて次式(II)
Figure 2005087149
のシロ−イノソースを生成させる第1の反応ステップを行い、式(II)のシロ−イノソースに、バチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolI遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼを水性反応媒質中で反応させて次式(III)
Figure 2005087149
のD−キロ−1−イノソースを生成させる第2の反応ステップを行い、式(III)のD−キロ−1−イノソースに、第1の反応ステップで使用したものと同じミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とを水性反応媒質中で反応させて次式(IV)
Figure 2005087149
のD−キロ−イノシトールを生成させる第3の反応ステップを行い、第3の反応ステップの反応溶液から式(IV)のD−キロ−イノシトールを回収する工程を行うことから成る、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。
第2の本発明方法の第1反応ステップと第3反応ステップで使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼはバチルス ズブチリス由来またはエンテロバクター エアロゲネシス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼであることができ、好ましくはバチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼである。
第2の本発明方法において、第1反応ステップで得られた反応液、すなわち前記の2−デヒドロゲナーゼと、NAD+から変換されたNADHと生成したシロ−イノソースと残存するミオ−イノシトールとを含有する反応液を、そのまま直ちに第2反応ステップに用いることができ、そして該反応液にシロ−イノソース イソメラーゼを添加して第2反応ステップを進行できる。また、第2反応ステップで得られた反応液、すなわちNADHと、生成されたD−キロ−1−イノソースと、残存するシロ−イノソース イソメラーゼおよび前記2−デヒドロゲナーゼならびにミオ−イノシトールとを含有する反応液を、そのまま直ちに第3反応ステップに用いることができ、そして該反応液に必要に応じてNADHおよび(または)ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを添加または補足して第3反応ステップを進行できる。このようにして、第3反応ステップの反応液中には、D−キロ−イノシトールが生成でき且つ未反応のD−キロ−1−イノソースの多少が残留し、しかもNADHから変換したNAD+ならびに残留したシロ−イノソース イソメラーゼおよびミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびミオ−イノシトールが含有される。
前記の第3反応ステップで得た反応液からD−キロ−イノシトールを回収するためには、先ず残留する酵素を加熱変性させて沈殿させ、その沈殿を除去し、残りの上清からイオン性物質ならびにイノソース類を強塩基性イオン交換樹脂処理で除去し、こうして得られるD−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの混合物の水溶液から濃縮法などによりD−キロ−イノシトールを採取することができる。
第2の本発明方法の第1反応ステップに使用する基質はミオ−イノシトールであり、36℃の水に21%まで溶解できる環状糖アルコールである。第3反応ステップで生成するD−キロ−イノシトールは、36℃の水に、約60%まで溶解できる環状糖アルコールである。36℃の反応温度を用いる時に、第1反応ステップでミオ−イノシトールを21%まで添加できるが、さらに温度を上げることにより、21%以上の濃度で反応させることもできる。
第2の本発明方法における第1、第2および第3の反応ステップでの反応温度は、反応が進行すれば、特に限定されない。基質の溶解度、NAD+およびNADHの安定性、使用される酵素の耐熱性を考慮すると、20℃〜50℃、好ましくは36℃の温度で反応させる方が望ましい。また、水に酵素を溶解して用いるときには均一系の溶液での反応なので、反応液を攪拌する必要は無いが、温度を均一化するため攪拌した方が望ましい。
各々の反応ステップにおける酵素反応液のpHは、pH7.0〜pH9.0の範囲に調整して反応を進行させるが、NAD+およびNADHの安定性、シロ−イノソースの安定性を考慮して、好ましくはpH7.7〜pH8.3、さらに好ましくは、pH8.0が望ましい。また、反応中に、適当なpHを反応中に保つために、必要があれば、緩衝液を加えることもできる。加える緩衝液の種類は特に限定されないが、pH8.0を保つ緩衝能力のある緩衝液が望ましく、さらに好ましくは、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などが例示される。
第2の本発明方法の第1反応ステップにおいて、ミオ−イノシトールにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとNAD+とを反応させて、酸化によりシロ−イノソース(すなわちミオ−イノソース)を生成する反応系では、反応剤としてのNAD+の存在が必要であり、その反応液中で反応の進行につれてNAD+はNADHに変換される。NAD+とNADHは、水溶液中のpH安定性が異なり、NAD+はpH8.0以下で安定であり、NADHはpH8.0以上で安定である。従って、第1反応ステップで反応媒質のpHは約8.0に保つのがよい。
さらに、この第1反応ステップでは、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、Mg2+イオンで活性化されることから、この金属イオンを添加することで、反応速度は増大することを実験的に確認した。
従って、第2の本発明方法の第1反応ステップにおいては、ミオ−イノシトール水溶液に反応剤としてNAD+を0.0001%〜10%、好ましくは0.004%の濃度で添加すること、及び、Mg2+イオンが0.001mM〜10mM、好ましくは1mMになるようにMg塩を添加すること、及び、反応媒質のpHをpH7.0〜9.0、好ましくはpH7.7〜8.3に保つことによってシロ−イノソースの生成が効率よく行われる。
第1反応ステップでは、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用により、NAD+の作用下に、ミオ−イノシトールの2位水酸基が酸化され、シロ−イノソースを生成する酸化反応が起り、この時、同時にNAD+からNADHが生成する。また、一旦生成したシロ−イノソースがNADHの作用下に該2−デヒドロゲナーゼの触媒作用でミオ−イノシトールを生成する逆向きの還元反応も起る。従って、ミオ−イノシトールからシロ−イノソースが生成する酸化反応と、シロ−イノソースからミオ−イノシトールが生成する逆向きの還元反応とが平衡状態に達することが実験的に認められた。
第2の本発明方法の第2反応ステップにおいて、シロ−イノソースにシロ−イノソース イソメラーゼを作用させてD−キロ−1−イノソースを生成する反応を行うのに当っては、第1反応ステップで得たシロ−イノソースを含有する水溶液に対して、シロ−イノソース イソメラーゼを添加する。そのシロ−イノソースの水溶液では、反応開始時にシロ−イノソース濃度が1%〜15%、好ましくは10%であるのが望ましい。
このシロ−イノソースの水溶液に作用させるシロ−イノソース イソメラーゼは、単離されたシロ−イノソース イソメラーゼであることもでき、またこれを含む粗酵素液であることもできる。さらに、使用されるシロ−イノソース イソメラーゼは固定化酵素としても使用可能である。酵素固定化方法としては、ゲル抱埋法、イオン交換樹脂吸着法など、一般の酵素固定化方法が適用できる。
使用されるシロ−イノソース水溶液のpHは、シロ−イノソース イソメラーゼの至適pHであるpH5〜9、好ましくはpH5〜9、さらに好ましくはpH7.5に調整されてあるのが望ましい。また、活性化因子として、Mn2+とZn2+イオンを最終濃度0.01mM〜10mM、好ましくは0.5mMになるようにMn塩とZn塩を添加、存在させることが望ましい。使用されるMn塩、Zn塩は水溶性の塩であれば使用することができる。また、反応温度は、バチルス由来のシロ−イノソース イソメラーゼを使用する場合、20℃〜50℃、好ましくは40℃が望ましい。
シロ−イノソース水溶液に前記シロ−イノソース イソメラーゼ水溶液を加えてなる反応混合物は均一溶液になるために撹拌する必要は無いが、温度を均一化するため攪拌した方が好ましい。この第2反応ステップの反応はシロ−イノソース濃度とD−キロ−1−イノソース濃度が70:30の平衡値に達するまで進行させることができる。
第2反応ステップの反応終了後に、酵素を反応液から回収することもできる。該イソメラーゼ酵素水溶液を使用した場合に得られる反応液を、イオン交換樹脂カラムに通過させることにより酵素を分離、回収することができる。固定化された酵素を使用した場合は、反応液を遠心分離あるいはろ過することによって、固定化酵素を回収できる。
このようにして、酵素を除いた後の残液である反応液は、未反応のシロ−イノソースと生成されたD−キロ−1−イノソースを含み且つ場合によっては金属イオン、NADHおよびNAD+を含んでいる。次にこの残液から金属イオンとNADHとNAD+のようなイオン性物質を除去するためには、イオン交換樹脂カラムに残液を通す。得られたカラム流出液を濃縮しその濃縮液を室温で静置すると、シロ−イノソースは、選択的に結晶化するからこれを分別し水で結晶を洗浄する。この操作により、未反応のシロ−イノソースが回収できる。結晶分別後の母液には、反応で生成したD−キロ−1−イノソースが溶解して居り、その母液を濃縮乾固すると、D−キロ−1−イノソースの粉末を回収できる。
第2の本発明方法の第2反応ステップでは、シロ−イノソース イソメラーゼの触媒作用により、シロ−イノソースのケトン基が位置特異的に、隣接のアルコール基に移動させられて、D−キロ−1−イノソースを生成する異性化反応が起る。また、一旦生成したD−キロ−1−イノソースが該イソメラーゼの作用によりシロ−イノソースに戻る逆向きの異性化反応も起るので、シロ−イノソースからのD−キロ−1−イノソースの生成反応と、D−キロ−1−イノソースからのシロ−イノソースの生成反応とが平衡状態に達することが認められている。
第2の本発明方法の第3反応ステップでは、第2反応ステップで得たD−キロ−1−イノソースを含有する水溶液(前記の第2反応ステップの反応終了後の反応液そのままも使用できる)中のD−キロ−1−イノソースに対して、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびNADHを必要に応じて添加または補足した後に反応させ、D−キロ−1−イノソースから還元的にD−キロ−イノシトールを生成させる。この第3の反応ステップでは、第1の本発明方法と同じ要領で実施できる。すなわち、反応温度が20℃〜50℃、好ましくは36℃の温度で、反応媒質のpHをpH7.7〜8.3に保って、反応を行うことができる。反応の開始に先立ち、または反応の途中で必要に応じて、NADHおよびMg2+イオンを補給することができる。
この第3反応ステップでは、第1反応ステップで使用した酵素と同じであるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用により、NADHの反応でD−キロ−1−イノソースの1位ケトン基が還元され、D−キロ−イノシトールを生成する還元反応が行われる。この時、同時にNADHからNAD+が生成する。
この第3の反応ステップでは、該2−デヒドロゲナーゼの作用によりD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールを生成する還元反応が起るが、一旦生成したD−キロ−イノシトールからD−キロ−1−イノソースを生成する逆向きの酸化反応も起り、両方の反応が平衡状態に達することが認められる。
この第3反応ステップの反応終了後には、生成したD−キロ−イノシトールと、残留するD−キロ−1−イノソースと、NAD+と、NADHと、残留する酵素とを含有し且つ場合によっては残留するシロ−イノソースも含有する水溶液が最終の反応液として得られる。
この最終の反応液からは、先づ、酵素を回収し、次いで酵素回収後の反応液から所望のD−キロ−イノシトールを回収する。反応液からのD−キロ−イノシトールの回収は、第1の本発明方法について説明したと同じ要領で行なうことができる。
第2の本発明方法の第1〜第3反応ステップで起る一連の反応を反応チャート(A)として示すと、次のとおりである。
Figure 2005087149
第2の本発明方法は、その第1、第2および第3の各々の反応ステップをそれぞれ別々の反応容器中で行うことによりバッチ方式でも実施できるものであるけれども、第2の本発明方法を、単一の反応容器中でワン・ポット(one-pot)方式で実施できるように改変できるのではないかと本発明者らは考えた。
すなわち、第2の本発明方法を研究した結果を参照すると、ミオ−イノシトール水溶液にミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびNAD+を添加して、成る反応混合物中でシロ−イノソース生成の第1反応ステップを行うのに先立ち、ミオ−イノシトール、該2−デヒドロゲナーゼおよびNAD+を含有する水溶液(すなわち反応混合物)中に、シロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースへの異性化反応を触媒する前記のシロ−イノソース イソメラーゼも添加して共存させる場合には、前記の反応混合物の中で、ミオ−イノシトールからシロ−イノソースへの変換と、シロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースへの変換とを経由してD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールへの変換を行うことができ、その得られた反応液中にD−キロ−イノシトールが最終生成物として生成して、これを収得できると考えた。
そこで、シロ−イノソース イソメラーゼと、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとを同時にミオ−イノシトール水溶液に添加し、しかも補酵素NAD+も添加して共存させてミオ−イノシトールに作用させて一連の酵素反応を進めたところ、反応液中に最終段階でD−キロ−イノシトールが生成されており検出できることを見出した。従って、第2の本発明方法について、ミオ−イノシトールの水溶液に対して当初からミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの両者ならびに補酵素としてNAD+を添加して、これにより得られた反応混合物中で第1の反応ステップ、第2の反応ステップおよび第3の反応ステップを順次に進行させて行うことから成るように方法を改変する場合にも、反応液中に最終的にD−キロ−イノシトールを生成できることを本発明者らは知見した。
それ故、第2の本発明方法の改変法として、第3の本発明においては、ミオ−イノシトール水溶液に対してミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよび酸化型もしくは還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+もしくはNADH)ならびに前記のシロ−イノソース イソメラーゼを添加し、得られた反応混合物中で、NAD+の作用とミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用によってミオ−イノシトールからシロ−イノソースを生成させる第1の反応と、NAD+からNADHへの変換反応と、シロ−イノソース イソメラーゼの触媒作用によってシロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースを生成させる第2の反応と、生成したNADHの作用とミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用によりD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールを生成させる第3の反応と、NADHからNAD+への変換反応とを行わせ、さらにそれら反応の終了後に、得られた反応液からD−キロ−イノシトールを回収することから成る、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。
第3の本発明方法において、使用されるミオ−イノシトール水溶液中には、20〜50℃の温度でミオ−イノシトールを10〜21%(重量)の濃度で添加できるが、さらに温度を上げることにより、21%以上の濃度で添加することもできる。
更に、そのミオ−イノシトール水溶液に対して、反応中間体であるシロ−イノソースあるいはD−キロ−1−イノソースの少量を添加することにより、シロ−イノソース イソメラーゼの反応速度が増大することも実験的に確認した。ミオ−イノシトール水溶液に添加される反応中間体のシロ−イノソースは、D−キロ−1−イノソースとの混合物としても添加できるが、安定性を考慮すると、シロ−イノソース単独の添加が望ましく、ミオ−イノシトール水溶液へのそのシロ−イノソースの濃度は0.0001%〜10%、好ましくは0.3%(重量)であることが望ましい。
ミオ−イノシトール水溶液に添加される反応剤または補酵素は、NAD+であるが、その代りにNADHも利用することができる。安定性を考慮すると、NAD+が望ましく、そのNAD+の添加濃度は、0.0001%から0.2%、好ましくは0.004%〜0.1%であることが望ましい。
一連の酵素反応の進行中の反応媒質のpHは、pH7.0〜pH9.0の範囲に調整する。NAD+およびNADHの安定性、シロ−イノソースの安定性を考慮して、pH7.7〜pH8.3、さらに好ましくは、pH8.0に調整するのが望ましい。また、反応中に、このpHを保つために、必要があれば、緩衝液を加えることもできる。加える緩衝液の種類は特に限定されないが、pH8.0を保つ緩衝能力のある緩衝液が望ましく、さらに好ましくは、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などが例示される。
さらに、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、Mg2+イオンで活性化され、シロ−イノソース イソメラーゼは、Mn2+イオンで活性化されることから、これらの金属イオンを添加することで、反応速度は増大することを実験的に確認した。
従って、第3の本発明方法においては、ミオ−イノシトール水溶液にNAD+を0.0001%〜0.2%、好ましくは0.004%〜0.1%の濃度で添加すること、及び、シロ−イノソースを0.0001%〜10%、好ましくは0.3%の濃度で添加すること、及び、Mg2+イオンが0.001mM〜10mM、好ましくは1mMになるようにMg塩を添加すること、及び、Mn2+イオンが0.0001mM〜1mM、好ましくは0.1mMになるようにMn塩を添加すること、及び、反応混合物のpHをpH7.0〜9.0、好ましくはpH7.7〜8.3に保つことが好ましく、これによってD−キロ−イノシトールの生成が効率よく行われる。
ミオ−イノシトール水溶液に添加されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼとは、単離されたミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼと単離されたシロ−イノソース イソメラーゼとであることもでき、またはこれらを含む粗酵素液であることもできる。
さらに、使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼとは固定化酵素であることも可能であり、酵素固定化方法としてはゲル抱埋法、イオン交換樹脂吸着法など、一般的な酵素固定化方法が適用できる。
反応温度は、反応が進行すれば、特に限定されない。基質の溶解度、NAD+およびNADHの安定性、酵素の耐熱性を考慮すると、20℃〜50℃、好ましくは36℃の温度で反応させる方が望ましい。
本法で起る酵素反応は平衡に達する反応であり、そのため、反応途中にミオ−イノシトールが析出しない程度に、ミオ−イノシトールを追加することもできる。
第3の本発明方法では、一連の酵素反応により生成した反応生成物が平衡に達した段階で酵素反応を停止することができる。酵素反応は得られる反応液中のミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの濃度比が88:12の平衡値に達するまで進行させるのが望ましい。それらの濃度値の測定は、各種分析機器で、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールのどちらか一方、もしくは、両方を定量できる方法で行うことができる。具体的には、旋光度測定器またはHPLCによる分析で測定することができる。
酵素反応の停止は、加熱による酵素の失活、pHの変化、タンパク質変性剤の添加などにより達成できる。しかしながら、次工程のD−キロ−イノシトールの回収と精製を考慮すると、加熱により酵素を失活させるのが望ましい。例えば、酵素反応終了後の反応液を70℃〜120℃、好ましくは80℃〜90℃で10〜20分間加熱することによって酵素を失活させ沈殿させることができる。
また、酵素反応の停止のためには、反応液から酵素を回収することにより、反応を停止させることもできる。このような酵素回収は、イオン交換樹脂カラムに反応液を通過させることにより酵素を分離することで行われる。固定化酵素を使用した場合は、反応液を遠心分離、あるいはろ過操作することによって、固定化酵素を回収することができる。
第3の発明方法において、反応停止処理を行った後の酵素反応液は、これからタンパク質変性で生じたタンパク質不溶物を除去するために、遠心分離またはろ過する必要がある。さらに、タンパク質不溶物が除去された除タンパク液は、液中に溶解するD−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールを含み、しかも残留するD−キロ−1−イノソースおよびシロ−イノソースならびにイオン性物質および疎水性物質を含んでいる。タンパク質不溶物が除去された除タンパク液中に残留するD−キロ−1−イノソースおよびシロ−イノソース、ならびにNAD+、NADH、金属イオンなどのイオン性の物質および疎水性物質を除去する目的で、イオン交換樹脂カラムに除タンパク液を通過させる。この際に使用されるイオン交換樹脂カラムは、強塩基性イオン交換樹脂および弱塩基性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、両方の混合物のカラムと、強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、両方の混合物のカラムとから成るものであることができる。前記のように、イオン交換樹脂カラムに除タンパク液を通す方法も使用できるが、タンパク質不溶物を除去した除タンパク液をイオン交換樹脂粒子とバッチ式に攪拌混合し、ろ過することでイノソース化合物の除去と脱イオンすることも可能である。
イオン交換樹脂カラムから最終的に出た溶出液は、D−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールを含む水溶液であり、これを濃縮すると、D−キロ−イノシトールは溶解したままであるがミオ−イノシトールが析出するので、これを濾取して回収できる。
イオン交換樹脂カラムから最終的に出た前記の溶出液が普通はD−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールを含む水溶液であることは前述のとおりであるが、残留するシロ−イノソースおよび(または)D−キロ−1−イノソースの相当な量を未だ含有する場合もある。この場合には、前記の溶出液として出たところの、D−キロ−イノシトール、ミオ−イノシトール、シロ−イノソースおよびD−キロ−1−イノソースを含む水溶液を、強塩基性イオン交換樹脂、例えばデュオラインA116(OH-タイプ)のカラムに通過させると、シロ−イノソースおよびD−キロ−1−イノソースはカラム樹脂に吸着、除去でき、そして最後尾の樹脂カラムから最終的に収得できる溶出液は、D−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールのみを含む水溶液である。
さらに、必要があれば、前記の溶出液を脱色のため、また中性脂質、糖脂質の除去のため活性炭で処理することが可能である。活性炭処理の仕方は、カラム状に詰めた活性炭中に溶出液を通す方法も使用できるが、バッチ式で攪拌混合し、ろ過することで脱色することも可能である。
第3の本発明方法において、一連の酵素反応を停止または終了した後に、得られた反応液から前述した方法により酵素を加熱法などにより変性させ、沈殿させ、沈殿を遠心分離またはろ過により除去し、得られた上清を強酸性イオン交換樹脂カラムおよび強塩基性樹脂カラムに通して処理すると、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールをほぼ9:1の重量比で含む水溶液が得られるのが普通である。
そこで、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含む水溶液から別々にミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを回収できる新しい方法を開発すべく研究した。
その研究では、はじめに9:1の重量比のミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの固体混合物を、1:1の容量比の水と各種の水溶性有機溶媒との混合溶媒に溶解させることを試みる一連の試験を行った。これら試験の結果として、前記の固体混合物を溶解のために、水とイソプロパノールまたはn−プロパノール(水溶性有機溶媒)との1:1混合溶媒に混合して溶解させようとする時に、該混合溶媒へのミオ−イノシトールの溶解度がかなり小さく且つD−キロ−イノシトールの溶解度が大きいことが見出された。前記の固体混合物を水とほかの水溶性有機溶媒との1:1混合溶媒に混合して溶解させようとする時には、該混合溶媒に対するミオ−イノシトールの溶解度とD−キロ−イノシトールの溶解度との間に有意な差があるとは認められなかった。そして、それら試験の結果として、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを80:20〜90:10の重量比で含有する水溶液に、適当な割合のイソプロパノールまたはn−プロパノールもしくはその両者を加えて混合すると、ミオ−イノシトールが優先的に析出できること、およびD−キロ−イノシトールが溶液中に残留でき且つミオ−イノシトールの少量が溶液中に溶解したまま残ることが発見できた。
従って、第4の本発明においては、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを80:20〜90:10の重量比で含有する水溶液に、イソプロパノールまたはn−プロパノールもしくはそれら両者を混合し、得られた混合物からミオ−イノシトールを優先的に析出させ、しかしD−キロ−イノシトールを水溶液中に溶解したまま残すことから成る、D−キロ−イノシトールからミオ−イノシトールを分離する方法が提供される。
第4の本発明方法に用いられるミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含有する水溶液は、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを80:20〜90:10の重量比で含有し且つミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの合計の濃度が40〜60重量%であって水含量が60〜40重量%である水溶液であるのがよい。該水溶液に30%〜100%(容量)の量のイソプロパノールまたはn−プロパノールを攪拌下に混合することによって、その混合物からミオ−イノシトールが析出して分離できる。但し、前記の析出したミオ−イノシトールを含有する前記混合物を一晩放置し、その後に、析出しているミオ−イノシトール結晶をろ別または遠心分離すると、ミオ−イノシトール結晶が採取でき且つミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを40:60〜20:80の重量比で含有する水溶液が母液または上清として得られることが見出だされた。
さらに、上記のろ液または上清として得られた40:60〜20:80の重量比でミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを含有する水溶液を次に濃縮すると、イソプロパノールまたはn−プロパノールは、共沸により濃縮液から除去される。この濃縮操作によって、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを40:60〜20:80の重量比で含有する粉末またはシロップを収得できる。このようにして得た粉末またはシロップの30〜90重量部を70〜10重量部の水に溶かして水溶液を作り、この水溶液を次に強塩基性イオン交換樹脂カラムに通すクロマトグラフィーによって、ミオ−イノシトールの画分とD−キロ−イノシトールの画分とを相互に分離して回収できることが見出された。
ここでミオ−イノシトール画分からD−キロ−イノシトール画分として分離されて最終的に得られたD−キロ−イノシトールの水溶液は、濃縮乾固して粉末化することができる。水と混和性の有機溶媒を添加して溶解させ、D−キロ−イノシトールを再結晶化させることもできる。ここで加えられる水混和性有機溶媒は、特に限定されないが、好ましくは、エタノールである。
上記の第4の本発明方法の研究に際して、一般的には、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを20:80〜30:70の重量比で含有し且つミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの合計の濃度が30〜80%(重量)であるミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの水溶液を、強塩基性イオン交換樹脂カラムに通すクロマトグラフィーにかけることによって、ミオ−イノシトールのみを含む溶出液画分と、D−キロ−イノシトールのみを含む溶出液画分とを別々に分離して収得できることが知見された。
従って、第5の本発明においては、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを20:80〜30:70の重量比で含有し且つミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの合計の濃度が30〜80%(重量)であるミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの水溶液を調製し、そして該水溶液を強塩基性イオン交換樹脂カラムによるクロマトグラフィーにかけてミオ−イノシトールのみを含む溶出液画分と、D−キロ−イノシトールのみを含む溶出液画分とを別々に収得し、後者の画分を濃縮し、その濃縮液からD−キロ−イノシトールを単離することから成る、ミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールを含む水溶液からD−キロ−イノシトールの分離方法が提供される。
第1の本発明、第2の本発明および第3本発明方法で用いられるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、バチルス ズブチリス染色体に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼであることができる。iolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、特許文献17(特開平05−192163号公報)の配列表の配列−1に示される344個のアミノ酸残基からなる分子量38.3 kダルトンの酵素である(特許文献17の7頁右欄参照)。
さらに、第2および第3の本発明方法で用いられるシロ−イノソース イソメラーゼは、後記の配列番号1に示される278個のアミノ酸残基からなる分子量約31.6 kダルトンの酵素であることができる。このシロ−イノソース イソメラーゼは、前記で説明したとおり、バチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolI遺伝子のコードする酵素であり、この酵素は、本出願人の先の出願に係る特願2003−128065号に記載の発明によりiolI遺伝子を導入した形質転換大腸菌から遺伝子工学的手法で単離できたものである。
今回、本発明者らは更に研究を行い、その結果、バチルス ズブチリスを培養し、その培養菌体から、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼとをそれぞれ別々に単離することに成功した。すなわち、バチルス ズブチリスを、ミオ−イノシトールを含有する既知の細菌培養用液体培地中で、30℃〜55℃の培養温度で培養し、得られた培養液から、培養された細菌の菌体を集菌し、集菌されたペレット状の菌体を水で洗浄後、遠心分離し、洗浄菌体を集め、さらにこの洗浄菌体を0.6%トライトンX-100を含む100mMトリス緩衝液(pH7.5)に懸濁させ、超音波によって菌体を破砕した。菌体の破砕後、遠心分離し、上清として粗酵素抽出液を集め、その後に、粗酵素抽出液に50%になるように硫酸アンモニウムを加えて、タンパク質を塩析させた。
このようにして分離したタンパク質を水または100mMトリス緩衝液(pH7.5)にとかした溶液を、これから不溶分の除去のためさらに遠心分離し、上清を得た。この上清として得た粗酵素溶液を4℃でゲル濾過のためSephadex G100カラム(直径12cm高さ50cm)に加えて20mMトリス緩衝液(pH7.0)で溶出し、カラムクロマトを行なった。溶出液をフラクション別に分画すると、分子量100kダルトン以上の物質を含むフラクションとして、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを含む画分が得られ、また分子量20〜50kダルトンの物質を含むフラクションとしてシロ−イノソース イソメラーゼを含む画分が得られた。
次に、前記の分子量100kダルトン以上の物質を含むフラクションを集めて、これをDEAEトヨパールカラムに加えて通液した後に、20mMトリス緩衝液(pH7.0)にNaClの直線濃度勾配にかけた溶離液を溶出剤を用いてカラムクロマトを行なった。溶出液をフラクション別に分画すると、約250mM NaClで溶出されたフラクションに、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ活性が検出された。このフラクションを集めて、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの溶液を得た。溶液から硫安沈殿法により酵素を析出できる。
更に、前記の分子量20〜50kダルトンの物質を含むフラクションを集めて、これをDEAEトヨパールカラムに加えて通液した後に、20mMトリス緩衝液(pH7.0)にNaClの直線濃度勾配にかけた溶離液を用いて、カラムクロマトを行なった。溶出液をフラクション別に分画すると、約30mM NaClで溶出されたフラクションにシロ−イノソース イソメラーゼ活性が検出された。このフラクションを集めて、シロ−イノソース イソメラーゼの溶液を得た。この溶液から硫安沈殿法により酵素を析出できる。タンパク質沈殿として得られた目的の酵素は100mMトリス緩衝液(pH7.5)に溶解して保存できる。
以上の説明において、前記の粗酵素液から硫安塩析で得たタンパク質沈殿を、20mMトリス緩衝液(pH7.0)に溶解し、透析後、イオン交換樹脂に吸着させ、塩濃度による直線濃度勾配を利用したカラムクロマトグラフィーにかけて分離し、精製を行なったが、ゲルろ過による分子量分画による精製も可能である。また、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼはNADを補酵素とするため、ブルートヨパールなどのアフィニティカラムによる精製も可能である。
従って、第6の本発明においては、バチルス ズブチリスの染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、該染色体中に存在する既知のiolI遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼとの両者を生産する能力をもつバチルス属細菌、特にバチルス ズブチリスを、ミオ−イノシトールを添加された細菌培養用液体培地中で培養し、培養された細胞内に前記2つの酵素を蓄積させ、次いで、培養された細胞を集菌し、集菌した菌体を緩衝液中で破砕し、得られた細胞破砕液を遠心分離し、上清として得られた粗酵素抽出液から前記の2つの酵素を別々に採取することを特徴とする、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの製造法が提供される。
第6の本発明方法において、培養されるバチルス ズブチリスとしては既知の菌株、例えばATCC寄託株を使用できる。用いる液体培地は既知の組成のものが用いられ、遺伝子発現の誘導のためにミオ−イノシトールが1〜10%(重量)添加するのがよい。培養温度は30〜55℃の範囲であるのがよい。培養後に集菌した菌体を破砕するのには菌体を緩衝液、例えば100mMトリス緩衝液(pH7.5)に懸濁した後に超音波照射が便利である。得られた細胞破砕液を遠心分離するが、ここで上清として得た粗酵素抽出液から、目的の2つの酵素を採取するためには種々な酵素分離手段を利用できる。
例えば、上記の上清として得た粗酵素抽出液に50%濃度の硫安を加えて、タンパク質を塩析し、沈殿したタンパク質を集め、水に溶解し、その水溶液を遠心分離して沈殿を捨て、得られたタンパク質含有の上清液(粗酵素溶液)をSephadex G100カラムでゲル分画クロマトグラフィーにかける。これによってミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを含む画分と、シロ−イノソース イソメラーゼを含む画分とが別々に分離して得ることができる。それぞれの画分を、それぞれに、DEAEトヨパールカラムに通液した後に、NaClの直線濃度勾配下に20mMトリス緩衝液(pH7.0)で溶出するカラムクロマトグラフィーを行うと、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼのみを含む画分と、シロ−イノソース イソメラーゼのみを含む画分とがそれぞれ別々の酵素溶液として得られる。これら酵素溶液の各々から、硫安沈殿法によって酵素タンパク質を析出させて固体として分離できる。
第1の本発明によれば、ミオ−イノシトールから酵素反応で調製できるD−キロ−1−イノソースを基質として用い、またD−キロ−1−イノソースにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびNADHを作用させることにより、簡易に且つ迅速にD−キロ−イノシトールを生成でき、さらに純度の高いD−キロ−イノシトールを容易に回収できる。
また、第2の本発明方法および第3の本発明方法によれば、安価なミオ−イノシトールから出発して、高い基質濃度で一連の酵素反応を行うことによって、簡易に且つ迅速にD−キロ−イノシトールを生成でき、さらに、最終の酵素反応液から純度の高いD−キロ−イノシトールを簡便な方法により回収できる。
さらに、第4の本発明方法および第5の本発明方法によれば、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含む水溶液から、ミオ−イノシトールまたはD−キロ−イノシトールを簡易に且つ効率よく分離でき、回収できる。
第6の本発明方法によれば、遺伝子工学的手法を用いずに、バチルス属細菌、特にバチルス ズブチリスの培養された菌体から、種々な分野で有用な酵素であるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼを効率よく製造できる。
以下に、先づ第6の本発明を実施例1について具体的に説明する。
バチルス ズブチリス菌体からミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼの調製
(a) 粗酵素抽出液の調製
トリプトン 1.0%、酵母抽出物 1.5%、KH2PO4 0.23%、K2HPO4 1.25%、MgCl2 0.1%を含み且つミオ−イノシトール2%を添加された液体培地(pH7.0)の100mlづつを10本の坂口フラスコに入れ、121℃、15分間、オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却した。フラスコ10本の中の培地に、それぞれバチルス ズブチリスATCC6633株のスラント培養物から1白金耳加えて、接種した。その後、接種された培地(計1000ml)をレシプロシェーカー上で36℃で16時間振とう培養した。得られた培養液は、次に、ジャーファメンター中で上記と同じ組成をもち且つオートクレーブ滅菌された100リットルの培地に、無菌的に加えた。このように接種された培地をジャーファーメンター中で200rpmの攪拌下、通気量1vvmにて、36℃で7時間好気的に培養した。得られた培養液は、遠心分離して、菌体を集め、集菌した菌体(湿重量約400g)を400mlの水に懸濁した。この菌体懸濁液を10℃以下の温度で、超音波破砕装置(出力600W・冷却水循環型)に流速50ml/分の流速でポンプで送り、菌体を破砕した。破砕装置の洗浄に100mlの水を使用して、その洗液を菌体破砕液に加えた。得られた菌体破砕液を、遠心分離して不溶固体を捨て且つ500mlの上清を取り出した。この上清は、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとシロ−イノソース イソメラーゼを含有する粗酵素抽出液(500ml)である。
(b) 粗酵素抽出液からのミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ粗酵素溶液の調製およびシロ−イノソース イソメラーゼ粗酵素溶液の調製
次に、上記の粗酵素抽出液に、4℃で、450gの硫酸アンモニウムを加えて、タンパク質を塩析させた。得られた混合物を遠心分離して、タンパク質沈殿を得た。上清は捨てた。得られたタンパク質沈殿を300mlの水に溶解し、得られた水溶液中に生じる不溶物を遠心分離により除去した。ここで得られた上清を4℃でゲル濾過のためSephadex G100カラム(直径12cm 高さ50cm)を通して通過させ、次にカラムを20mMトリス緩衝液(pH7.0)で溶出することにより、カラムクロマトを行なった。カラム溶出液を10ml−フラクション別に分画すると、分子量100kダルトン以上の物質を含むフラクションとしてミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの粗酵素溶液が得られ、また分子量20〜50kダルトンの物質を含むフラクションとしてシロ−イノソース イソメラーゼの粗酵素溶液が得られた。
(c) ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ酵素の分離
分子量100kダルトン以上の上記フラクションを集めて得られた粗酵素溶液を、DEAEヨバールカラム(直径5cm高さ25cm)に通し、次に該カラムを20mMトリス緩衝液(pH7.0)でNaClの直線濃度勾配下に溶出することによって、カラムクロマトを行なった。カラム溶出液を10ml−フラクション別に分画すると、約250mM NaClの濃度で溶出したフラクションにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ活性が検出された。これらのフラクションを集めてミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼを含む精製酵素溶液の100mlを得た。この酵素溶液に50%濃度で硫安を加えると、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの100mgが沈殿した。
(d) シロ−イノソース イソメラーゼ酵素の分離
分子量20〜50kダルトンの上記フラクションを集めて得られた粗酵素溶液をDEAEヨバールカラム(直径5cm高さ25cm)に通し、次に該カラムを20mMトリス緩衝液(pH7.0)でNaClの直線濃度勾配下に溶出することによって、カラムクロマトを行なった。カラム溶出液を10ml−フラクション別に分画すると、約300mM NaClの濃度で溶出されたフラクションにシロ−イノソース イソメラーゼ活性が検出された。これらのフラクションを集めて、シロ−イノソース イソメラーゼ酵素溶液100mlを得た。この酵素溶液に50%濃度で硫安を加えると、シロ−イノソース イソメラーゼ100mgが沈殿した。
なお、上記した2つの酵素の酵素活性の検定には以下の方法を用いた。
ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ活性の検定は次のように行う。すなわち、酵素を含むフラクション溶液100μlと10%ミオ−イノシトール水溶液100μlと1Mトリス緩衝液(pH8.0)100μlと100mM MgSO4水溶液10μlと1%NAD+水溶液10μlとジアホラーゼ 5Uと1%NTB溶液2μlとの混合物に水を加えて全量1mlになるようにした反応混合物溶液を調製した。この反応混合物溶液を27℃、10分間保持して酵素反応させた。反応後、還元型NTBに由来する565nmの光における吸光度を測定することにより、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ活性を検定できる。
シロ−イノソース イソメラーゼ活性の検定は次のように行う。すなわち、酵素を含むフラクション溶液100μlと10%シロ−イノソース溶液100μlと1Mトリス緩衝液(pH7.5)100μlと100mM MnCl2溶液10μlと100mM ZnCl2溶液10μlとの混合物に水を加えて全量1mlとなるようにした反応混合物溶液を調製した。このように作った基本反応混合物を27℃、16時間保持して酵素反応させた。反応後、1Mリン酸(pH2.0)10μlを加えて、酵素反応を停止させた。さらに、得られた混合物を70℃、10分加熱して、タンパク質の変性と沈殿を行い、遠心分離した。得られた上清をHPLC分析にかけて、D−キロ−1−イノソースの生成量を検定すると、シロ−イノソース イソメラーゼ活性を検定できた。この際のHPLCの操作は、WakosilNH2カラム(内径4.6mm×25cm)を用い、移動相は80%アセトニトリル水溶液、カラム温度20℃、流速2ml/min、検出器はUV検出器、OR検出器を用いて行った。この条件でのHPLCでは、D−キロ−1−イノソースを溶出時間18分で検出できる。
次に、第1の本発明を実施例2について具体的に説明する。
ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとNADHとの作用によるD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールの生成
100ml容の三角フラスコに、ミオ−イノシトール デヒドロゲナーゼ(Sigma社製、エンテロバクター由来)20ユニット、D−キロ−1−イノソース2g(純度97%、3%のシロ−イノソースを含む)、NADH(オリエンタル酵母社製)9g、100mM塩化マグネシウム溶液1mlおよび1Mトリス塩酸バッファー溶液(pH8.0)5mlを入れ、さらに100mlになるように水を加えて反応混合物溶液を調製した。この溶液を、36℃、16時間、静置にて酵素反応させた。
反応終了後、得られた酵素反応液100mlを、50mlの強酸性イオン交換樹脂(デュオライトC20 H+タイプ)カラムと、50mlの強塩基性イオン交換樹脂(デュオライトA1160OH-タイプ)カラムと、20mlの活性炭カラムとに順次、流速2ml/分で通液した。最後に、イオン交換水80mlで各カラムを洗浄し、それら水洗液を合して総量180mlの通過溶液を得た。この溶液をエバポレーターで濃縮乾固させ、0.82gの固体を得た。
この固体をHPLCにより分析すると、D−キロ−イノシトール:ミオ−イノシトール(シロ−イノソースの還元体)=97:3からなる組成のD−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの混合物であった。
次に、500mlの強塩基性イオン交換樹脂(デュオライトA1160 OH-タイプ)カラムを調製し、このカラムに上記の固体0.82gを水で溶解して4mlとした溶液を通液してクロマト分離を行った。未反応のD−キロ−1−イノソースは強塩基性イオン交換樹脂により吸着されて除去できた。4ml−フラクション毎に分画し、先に溶出するミオ−イノシトール画分と、後から溶出するD−キロ−イノシトール画分とが分離して得られた。各分画した溶液のHPLC分析から、D−キロ−イノシトールのみを含む画分を集め、エバポレーターで濃縮し、D−キロ−イノシトールの白色粉末0.74gを得た。
この白色粉末は、HPLC分析の結果とNMR解析の結果とから見て99.5%以上の純度のD−キロ−イノシトールであった。2gのD−キロ−1−イノソースから、0.74gのD−キロ−イノシトールが得られたことになり、収率は37%であった。
さらに、第2の本発明を、実施例3(バッチ方式)について具体的に説明する。
ミオ−イノシトールからシロ−イノソースの生成反応、シロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースの生成反応およびD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールの生成反応の各ステップを含む方法によるD−キロ−イノシトールの製造
(1) 第1の反応ステップとしては、1リットル容の三角フラスコに、ミオ−イノシトール デヒドロゲナーゼ(Sigma社製、エンテロバクター由来)200ユニット、ミオ−イノシトール20g、NAD+(オリエンタル酵母社製)90g、100mM塩化マグネシウム溶液100mlおよび1Mトリス塩酸バッファー溶液(pH8.0)50 mlを入れて、1リットルになるように水を加えて反応混合物溶液を調製した。この調製された溶液を、36℃、16時間、静置にて酵素反応させた。
反応終了後、得られた酵素反応液1リットルを、500mlの強酸性イオン交換樹脂(デュオライトC20 H+タイプ)カラムと、500mlの弱塩基性イオン交換樹脂(デュオライト368S OH-タイプ)カラムと、200mlの活性炭カラムとに順次、流速10ml/分で通液した。最後に、イオン交換水800mlで各カラムを洗浄し、水洗液を合して総量1.8リットルの通過溶液を得た。この溶液をエバポレーターで濃縮乾固させ、19.3gの固体を得た。
この固体をHPLCにより分析すると、シロ−イノソース:ミオ−イノシトール=56:44からなる組成のシロ−イノソースとミオ−イノシトールとの混合物であった。
(2) 第2反応ステップとしては、500ml容の三角フラスコに、実施例1(c)で、調製したシロイノソース イソメラーゼ酵素溶液(バチルス ズブチリス培養液1リットル相当から精製した酵素液)20ml、上記の反応ステップで得られた固体19.3g、100mM塩化マンガン溶液0.2mlおよび1Mトリス塩酸バッファー溶液(pH7.5)10mlを入れて、200mlになるように水を加えて反応混合物溶液を調製した。この調製された溶液を、36℃、16時間、静置にて酵素反応させてシロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースを生成させた。
反応終了後、得られた酵素反応液200mlを、100mlの強酸性イオン交換樹脂(デュオライトC20 H+タイプ)カラムと、100mlの弱塩基性イオン交換樹脂(デュオライト368S OH-タイプ)カラムと、40mlの活性炭カラムとに順次、流速2Aml/分で通液した。最後に、イオン交換水160mlで各カラムを洗浄し、水洗液を合せて、総量360mlの通過溶液を得た。この溶液をエバポレーターで濃縮乾固させ、17.9gの固体を得た。
この固体をHPLCにより分析すると、D−キロ−1−イノソース:シロ−イノソース:ミオ−イノシトール=15:36:49からなる組成の混合物であった。
(3) 第3の反応ステップとしては、1リットル容の三角フラスコに、ミオ−イノシトール デヒドロゲナーゼ(Sigma社製、エンテロバクター由来)100ユニット、第2の反応ステップで得られた固体17.9g、NADH(オリエンタル酵母社製)41g、100mM塩化マグネシウム溶液5ml、1Mトリス塩酸バッファー溶液(pH8.0)25mlを入れて、500mlになるように水を加えて反応混合物溶液を調製した。この調製された溶液を、36℃、16時間、静置にて酵素反応させた。D−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールが生成された。
反応終了後、得られ酵素反応液500mlを、250mlの強酸性イオン交換樹脂(デュオライトC20 H+タイプ)カラムと、250mlの強塩基性イオン交換樹脂(デュオライトA1160 OH-タイプ)カラムと、100mlの活性炭カラムを順次、流速5ml/分で通液させた。最後に、イオン交換水150mlでカラムを洗浄し、水洗液を合して、総量650mlの通過溶液を得た。この溶液をエバポレーターで濃縮乾固させ、14.0gの固体を得た。
この固体をHPLCにより分析すると、D−キロ−イノシトール:ミオ−イノシトール=11:89からなるD−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの混合物であった。
次に、3リットルの強塩基性イオン交換樹脂(デュオライトA1160 OH-タイプ)カラムを調製し、このカラムに上記の固体14.0gを水で溶解した。30mlの溶液を通液してクロマト分離を行った。15ml−フラクション毎に分画し、先に溶出するミオ−イノシトール画分と、後から溶出するD−キロ−イノシトール画分とが分離して得られた。各分画した溶液のHPLC分析から、D−キロ−イノシトールのみを含む画分を集め、エバポレーターで濃縮し、白色粉末1.22gを得た。
この白色粉末は、HPLC分析の結果とNMR解析の結果とから見て99.5%以上の純度のD−キロ−イノシトールであった。20gのミオ−イノシトールから、第1、第2、及び第3の反応ステップを通じて、1.22gのD−キロ−イノシトールが得られたことになり、収率は6.1%であった。
次に、第3の本発明を実施例4(ワン・ポット方式)および実施例5について具体的に説明する。
ミオ−イノシトールならびにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ、NAD+およびシロ−イノソース イソメラーゼを含む反応混合物中で一連の酵素反応を行うことによるD−キロ−イノシトールの製造
(a) ジャーファーメンター内で70℃の水1.7リットルにミオ−イノシトール1.0kg、硫酸マグネシウム・7水和物1.2g、塩化マンガン・4水和物0.1gを加えて溶解し、さらに総量が4.5リットルになるように水を加えて水溶液を作った。この水溶液を40℃まで冷却し、5%シロ−イノソース水溶液0.3リットルを加えた。得られた混合物溶液をさらに、36℃に冷却し、1NのNaOH水溶液の添加によりpHを8.0に調整した。次に、実施例1(c)および(d)で調製した2つの精製酵素溶液の各0.1リットル、すなわち、実施例1(c)で調製したミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの精製酵素溶液0.1リットルと実施例1(d)で調製したシロ−イノソース イソメラーゼの精製酵素溶液0.1リットルとを前記の混合物溶液に加えた。上記の酵素溶液を入れた容器を0.02リットルの水で洗い、その洗液も加えた。酵素溶液の添加された上記の混合物溶液がpH8.0を示した段階で、NAD+(オリエンタル酵母社製)の粉末の0.2gを加え、溶解させた。ここで得られた反応混合物5.0リットル中のミオ−イノシトールの当初濃度は20%(重量)に相当した。
上記で得られた反応混合物を、36℃に攪拌下に保持することによりインキュベートし、これにより酵素反応を進めた。酵素反応の進行中は、反応混合物のpH値を、0.05NのNaOH水溶液と0.05Nの塩酸水溶液の適当な添加によりpH8.0に調整した。このようにして酵素反応を36℃で10時間続けた。
酵素反応10時間行った後、得られた酵素反応液をジャーファーメンター中に入れたまま85℃、25分間の加熱することにより、酵素を変性させて、酵素反応を停止した。その後、反応液を、60℃に冷却して反応液から変性タンパク質を沈殿させ且つ遠心分離により上清5.1リットルを得た。ジャーファーメンターの洗浄に0.1リットルの水を使用して、その洗液を上記の上清に加えてある。
上記の実験で10時間酵素反応後に反応停止させた酵素反応液は、加熱により酵素タンパク質の変性を受けたものであり、これから変性タンパク質の除去のための遠心分離にかけると、上記の上清が得られた。この上清をHPLC分析すると、目的のD−キロ−イノシトールを含み、それに加えてD−キロ−1−イノソース、シロ−イノソースおよびミオ−イノシトールを含有することが認められた。
上記の上清から、D−キロ−イノシトールを回収するため、またミオ−イノシトールを分離するために、該上清を後記の実施例5に示す方法により処理した。
(b) なお、上記の反応混合物を36℃でpH8.0にて13時間にわたって酵素反応させ続ける別の実験を行った。この別の実験では、13時間の反応時間中に、反応液から反応液の20μlを、1時間間隔でサンプリングし、直ちにサンプル液を80℃、10分間加熱し、水300μlを加え、混合し、さらに遠心分離して沈殿を捨て且つ上清を得た。この上清をHPLC分析した。
上記のサンプル上清のHPLC分析は、WakosilNH2カラム(φ4.6mm×250mm)にサンプル上清を通液し、その後に移動相として80%アセトニトリル水溶液(流速2ml/分)を流し、検出器はRI検出器を用い、カラム温度40℃の条件下で行った。
このHPLC分析により、定時的に採取した一連のサンプル上清中のD−キロ−イノシトール濃度、ミオ−イノシトールの濃度、D−キロ−1−イノソースの濃度、シロ−イノソースの濃度を測定した。反応時間1時間ごとに採取したサンプル上清中のD−キロ−イノシトール濃度とミオ−イノシトール濃度から、D−キロ−イノシトール変換率(%)を次の計算式で算定した。
D−キロ−イノシトール変換率(%)=〔(D−キロ−イノシトール濃度)/反応開始時のミオ−イノシトール濃度〕〕×100
測定されたD−キロ−イノシトール(DCI)の変換率(%)と反応時間との関係を次表に示す。
Figure 2005087149
算定されたDCI変換率(%)と反応時間(h)との関係曲線を添付図面の図1に示す。図1に示すように、反応時間が8時間目で反応液中のミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへの変換率(%)が12%になって、ほぼこの点で平衡に達したことが判る。
次に、第4の本発明および第5の本発明を下記の実施例5について具体的に説明する。
酵素反応液からのD−キロ−イノシトールの回収と精製およびミオ−イノシトールの分離
実施例4(a)で10時間酵素反応して得た反応液から、酵素を沈殿させ且つ遠心分離により除去して得られた上清5.1リットルを本例では使用した。
(a) 酵素反応液上清からのD−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの水溶液の分離
上記の上清(5.1L)は、目的生成物であるD−キロ−イノシトールを含み、これに加えてミオ−イノシトール、D−キロ−1−イノソースおよびシロ−イノソースを含み、さらに金属イオン、NAD+およびNADHおよび疎水性物質を含む水溶液である。この上清から先ずD−キロ−1−イノソースおよびシロ−イノソースならびにイオン性物質および疎水性物質を除去するために、該上清(5.1L)を0.3リットルの強酸性イオン交換樹脂(デュオライトC20、H+タイプ)カラムと、0.4リットルの強塩基性イオン交換樹脂(デュオライトA116、OH-タイプ)カラムに流速5ml/分で順次通液し、また0.1リットルの活性炭カラムに順次、流速5ml/分で通液させた。活性炭カラムからの通過液(5.0リットル)を貯めた。
次いで、上記の3つのカラムに1.0リットルの脱イオン交換水を順次に流してカラムを洗浄し、得られた洗液を上記の活性炭カラム通過液に合した。これにより、D−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの水溶液(総量6.0リットル)を得た。
D−キロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの上記水溶液(6.0リットル)をエバポレーターに入れ、該水溶液を2.0kg(約1.6リットル)になるまで濃縮した。得られた濃縮液はミオ−イノシトールの一部が結晶化したのでスラリー状を呈した。このスラリー状濃縮液を遠心分離にかけ、結晶化ミオ−イノシトールを分離し且つ上清を得た。ここで上清として得られたミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液をHPLC分析すると、その中のミオ−イノシトール:D−キロ−イノシトールの濃度比は69:31であった。
(b) ミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液からミオ−イノシトール固体の分離(第4の本発明による)
上記の(a)で得た上清として得たミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液に0.3リットルのイソプロパノールを攪拌しながら加えていった。イソプロパノールの混合に伴って、ミオ−イノシトール固体が析出した。この固体は遠心分離により分離できた。固体を含むその混合物全体を静置し、その上清をHPLC分析すると、上澄液中のミオ−イノシトール:D−キロ−イノシトール濃度比は46:54であった。
析出したミオ−イノシトール固体と該上清とから成る前記の混合物を室温で一晩放置すると、ミオ−イノシトールの固体析出が進み、上清部分中のミオ−イノシトール:D−キロ−イノシトール濃度比は30:70になった。
室温で一晩放置した上記の混合物を攪拌すると、結晶を含み且つスラリー状を呈するミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの水溶液を得た。このスラリー状水溶液をろ過し、これによりミオ−イノシトールを含む結晶と、ろ液としてミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液(1.34リットル)を得た。その結晶は50%イソプロパノール水溶液(0.2リットル)で洗浄し、結晶(820g)を得た。この結晶に含まれたミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールの重量比は99:1であった。ろ液に含まれるミオ−イノシトール:D−キロ−イノシトールの濃度比は29:71であった。
上記のろ液として得たミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液を、次にエバポレーターで濃縮すると、146gの結晶を得た。この結晶はミオ−イノシトール42gとD−キロ−イノシトール104gを含むものである。
(c) ミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液からD−キロ−イノシトールのクロマトグラフィー的分離(第5の本発明による)
上記の(b)で得たところの、ミオ−イノシトール42gおよびD−キロ−イノシトール104gを含む結晶(146g)を、水に溶解して水溶液(0.3リットル)を調製した。
この調製されたミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトール水溶液(ミオ−イノシトール:D−キロ−イノシトールの濃度比が約12:15)を、6.0リットルの強塩基性イオン交換樹脂、デュオライトA116(OH-タイプ)カラムに通液して、クロマト分離を行った。200ml−フラクションでカラム溶出液を分画し、先に溶出するミオ−イノシトール画分を得ると共に、これと別に後から溶出するD−キロ−イノシトール画分とを得て、分離した。各フラクションの分画した溶液のHPLC分析から、D−キロ−イノシトールのみを含む画分を選別し、そしてこれらを集めた。集めた水溶液をエバポレーターで濃縮し、白色粉末の201gを得た。
この白色粉末は、HPLC分析の結果とNMR解析の結果とから、99.5%より高い純度のD−キロ−イノシトールであることが明らかにされた。実施例4と実施例5の結果を綜合すると1.0kgのミオ−イノシトールから、101gのD−キロ−イノシトールが得られたことになり、ミオ−イノシトールからの収率が10.1%であった。
また、回収段階で得られるミオ−イノシトール(少量のD−キロ−イノシトールを含む)としては、結晶化段階とクロマト分画段階とで合計888gのミオ−イノシトールが回収された。これは再度、酵素反応に利用できる。
以上の説明から明らかなように、第1〜第6の本発明の方法の何れもが医薬として有用であるD−キロ−イノシトールの製造に利用できるものであり、よって産業上で有用である。
実施例4で行われた一連の酵素反応の反応液中に生成したD−キロ−イノシトールの変換率(%)と反応時間との関係を示す曲線グラフである。
Figure 2005087149
Figure 2005087149

Claims (14)

  1. 次式
    Figure 2005087149
    のD−キロ−1−イノソースにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とを反応させて次式(IV)
    Figure 2005087149
    のD−キロ−イノシトールを生成させ、得られた反応液からD−キロ−イノシトールを回収することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  2. 反応は水性反応媒質中で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼはバチルス ズブチリス由来またはエンテロバクター エアロゲネシス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼであり、好ましくはバチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼである、請求項1に記載の方法。
  4. 次式(I)
    Figure 2005087149
    のミオ−イノシトールにミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと酸化型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とを水性反応媒質中で反応させて次式(II)
    Figure 2005087149
    のシロ−イノソースを生成させる第1の反応ステップを行い、式(II)のシロ−イノソースに、バチルス ズブチリス染色体中に存在する既知のiolI遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼを水性反応媒質中で反応させて次式(III)
    Figure 2005087149
    のD−キロ−1−イノソースを生成させる第2の反応ステップを行い、式(III)のD−キロ−1−イノソースに、第1の反応ステップで使用したものと同じミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とを水性反応媒質中で反応させて次式(IV)
    Figure 2005087149
    のD−キロ−イノシトールを生成させる第3の反応ステップを行い、第3の反応ステップの反応溶液から式(IV)のD−キロ−イノシトールを回収する工程を行うことから成る、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  5. 使用されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼはバチルス ズブチリス由来またはエンテロバクター エアロゲネシス由来のミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼであり、好ましくはバチルス ズブチリス染色体中に存在する既知iolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼである、請求項4に記載の方法。
  6. ミオ−イノシトール水溶液に対してミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよび酸化型もしくは還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+もしくはNADH)ならびにシロ−イノソース イソメラーゼを添加し、得られた反応混合物中で、NAD+の作用とミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用によってミオ−イノシトールからシロ−イノソースを生成させる第1の反応と、NAD+からNADHへの変換反応と、シロ−イノソース イソメラーゼの触媒作用によってシロ−イノソースからD−キロ−1−イノソースを生成させる第2の反応と、生成したNADHの作用とミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼの触媒作用によりD−キロ−1−イノソースからD−キロ−イノシトールを生成させる第3の反応と、NADHからNAD+への変換反応とを行わせ、さらにそれら反応の終了後に、得られた反応液からD−キロ−イノシトールを回収することから成る、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  7. ミオ−イノシトール水溶液に当初から(1)NAD+もしくはNADHを0.0001%〜0.2%の濃度で、好ましくは0.004%の濃度で添加すること、(2)Mg2+イオンが0.001mM〜10mM、好ましくは1mMの濃度になるようにMg塩を添加すること、(3)Mn2+イオンが0.0001mM〜1mM、好ましくは0.1mMの濃度になるようにMn塩を添加すること、及び(4)反応混合物のpHをpH7.0〜9.0、好ましくはpH7.7〜8.3に保つことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. ミオ−イノシトール水溶液に、当初からシロ−イノソースを0.0001%〜10%(重量)、好ましくは0.3%(重量)の濃度で添加する、請求項6に記載の方法。
  9. ミオ−イノシトールの水溶液に当初に添加されるミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼは、これら2つの酵素を共に生産する能力を有する細菌としてのバチルス ズブチリスを培養して該細菌の細胞内に前記2つの酵素を蓄積させ、前記の培養された細胞を破砕し、得られた細胞破砕液から抽出することにより得られた前記2つの酵素を含む粗酵素液の形であるか、もしくは前記の細胞破砕液から、既知の酵素分離法および酵素精製法でそれぞれに単離され精製したミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと精製したシロ−イノソース イソメラーゼの形である、請求項6に記載の方法。
  10. ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを80:20〜90:10の重量比で含有する水溶液に、イソプロパノールまたはn−プロパノールもしくはそれら両者を混合し、得られた混合物からミオ−イノシトールを優先的に析出させ、D−キロ−イノシトールを水溶液中に溶解したまま残すことから成る、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含有する混合物からミオ−イノシトールを分離する方法。
  11. 用いられるミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含有する水溶液は、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを80:20〜90:10の重量比で含有し且つミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの合計の濃度が40〜60重量%であって水含量が60〜40重量%である水溶液であり、該水溶液に30%〜100%(容量)の量のイソプロパノールまたはn−プロパノールを攪拌下に添加する、請求項10に記載の分離方法。
  12. 用いられるミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを含有する水溶液は、ミオ−イノシトールの水溶液に当初からミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの両者ならびにNAD+もしくはNADHを添加して、これにより請求項6に記載の第1、第2および第3の反応ステップを順次進行させて行うことから成る請求項6に記載の方法の実施により得られた最終の反応液から、酵素を除き且つイオン性物質およびイノソース化合物ならびに疎水性物質を除いた残りの溶液であるところの、請求項10に記載の分離方法。
  13. ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを20:80〜30:70の重量比で含有し且つミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの合計の濃度が30〜80%(重量)であるミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールの水溶液を調製し、そして該水溶液を強塩基性イオン交換樹脂カラムによるクロマトグラフィーにかけてミオ−イノシトールのみを含む溶出液画分と、D−キロ−イノシトールのみを含む溶出液画分とを別々に収得し、後者の画分を濃縮し、その濃縮液からD−キロ−イノシトールを単離することから成る、ミオ−イノシトールおよびD−キロ−イノシトールを含む水溶液からD−キロ−イノシトールの分離方法。
  14. バチルス ズブチリスの染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードするミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼと、該染色体中に存在する既知のiolG遺伝子のコードする酵素、シロ−イノソース イソメラーゼとの両者を生産する能力をもつバチルス属細菌、特にバチルス ズブチリスを培養し、培養された細胞内に前記2つの酵素を蓄積させ、次いで、培養された細胞を集菌し、集菌した菌体を緩衝液中で破砕し、得られ細胞破砕液を遠心分離し、上清として得られた粗酵素抽出液から前記の2つの酵素を別々に採取することを特徴とする、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼおよびシロ−イノソース イソメラーゼの製造法。
JP2003327703A 2003-09-19 2003-09-19 D−キロ−イノシトールの製造方法 Expired - Fee Related JP4344572B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003327703A JP4344572B2 (ja) 2003-09-19 2003-09-19 D−キロ−イノシトールの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003327703A JP4344572B2 (ja) 2003-09-19 2003-09-19 D−キロ−イノシトールの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005087149A true JP2005087149A (ja) 2005-04-07
JP4344572B2 JP4344572B2 (ja) 2009-10-14

Family

ID=34457496

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003327703A Expired - Fee Related JP4344572B2 (ja) 2003-09-19 2003-09-19 D−キロ−イノシトールの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4344572B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20140078381A (ko) * 2012-12-17 2014-06-25 주식회사 디와이내츄럴 휴면 세포 전환법을 이용한 d-카이로 이노시톨의 생산 방법
WO2014098454A1 (ko) * 2012-12-17 2014-06-26 솔젠트(주) 마이오-이노시톨 및 d-카이로-이노시톨이 포함된 용액으로부터 d-카이로-이노시톨을 정제하는 방법
KR20140096632A (ko) * 2013-01-28 2014-08-06 주식회사 디와이내츄럴 효소 반응법을 이용한 마이오-이노시톨로부터 d-카이로-이노시톨을 생산하는 방법

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20140078381A (ko) * 2012-12-17 2014-06-25 주식회사 디와이내츄럴 휴면 세포 전환법을 이용한 d-카이로 이노시톨의 생산 방법
WO2014098454A1 (ko) * 2012-12-17 2014-06-26 솔젠트(주) 마이오-이노시톨 및 d-카이로-이노시톨이 포함된 용액으로부터 d-카이로-이노시톨을 정제하는 방법
KR101546674B1 (ko) 2012-12-17 2015-08-24 주식회사 디와이내츄럴 마이오-이노시톨 및 d-카이로-이노시톨이 포함된 용액으로부터 d-카이로-이노시톨을 정제하는 방법
KR102017776B1 (ko) 2012-12-17 2019-09-03 주식회사 디와이내츄럴 휴면 세포 전환법을 이용한 d-카이로 이노시톨의 생산 방법
KR20140096632A (ko) * 2013-01-28 2014-08-06 주식회사 디와이내츄럴 효소 반응법을 이용한 마이오-이노시톨로부터 d-카이로-이노시톨을 생산하는 방법
KR101971931B1 (ko) 2013-01-28 2019-04-25 주식회사 디와이내츄럴 효소 반응법을 이용한 마이오-이노시톨로부터 d-카이로-이노시톨을 생산하는 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP4344572B2 (ja) 2009-10-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107267578B (zh) 微生物发酵生产n-乙酰-d-氨基葡萄糖和/或d-氨基葡萄糖盐的方法
CN108315316B (zh) 球形节杆菌生产的酮糖3-差向异构酶
JP5997693B2 (ja) アルスロバクターグロビホルミスの生産する酵素
CN108866028B (zh) 一种氨基裂解酶突变体蛋白及其编码基因与应用
CN105026548A (zh) D-葡萄糖二酸生产菌及d-葡萄糖二酸的制造方法
JP6416867B2 (ja) たんぱく質精製の新規な方法
JP6893000B2 (ja) 酸性ホスファターゼ突然変異体及びニコチンアミドリボシドの調製方法
Murooka et al. Production of tetrapyrrole compounds and vitamin B12 using genetically engineering of Propionibacterium freudenreichii. An overview
JP4344572B2 (ja) D−キロ−イノシトールの製造方法
US8962287B2 (en) Scyllo-inositol-producing cell and scyllo-inositol production method using said cells
EP2094840B1 (en) Novel n-acetylglucosamine-2-epimerase and method for producing cmp-neuraminic acid using the same
CN110607335B (zh) 一种烟酰胺腺嘌呤二核苷酸类化合物生物合成方法
JP2022089821A (ja) 新規ラクトナーゼ
CN105821090B (zh) 嗜热共生杆菌meso-二氨基庚二酸脱氢酶突变体应用
US20100041106A1 (en) Recombinant gras strains expressing thermophilic arabinose isomerase as an active form and method of preparing food grade tagatose by using the same
JP4272377B2 (ja) ウリジン二リン酸グルコース4−エピメラーゼの新用途
JP4513967B2 (ja) D−アミノアシラーゼの活性向上方法
WO2013065901A1 (ko) 이중 조효소 특이성을 갖는 리비톨 탈수소화효소 및 그의 용도
JP2001292792A (ja) N−アセチルグルコサミンの回収方法
JP2004298033A (ja) 固定化細胞、強固に固定化された細胞の製造法及びカダベリンの製造方法
EP1291417B1 (en) Novel (r)-2-hydroxy-3-phenylpropionate (d-phenyllactate) dehydrogenase and gene encoding the same
JP4011496B2 (ja) L−グルコースの製造方法
JP4276886B2 (ja) シロ−イノソースとd−キロ−1−イノソースとの相互変換作用を有する酵素とその製造および応用
JP2004041146A (ja) ホモグルタチオンの製造方法
JP5954539B2 (ja) 1−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−ピペリジンカルボン酸アルキルエステルの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090225

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090413

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090617

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090713

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120717

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130717

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees