JP2005085967A - 複合磁性粒子および複合磁性材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高周波領域における高透磁率と高抵抗率とを両立可能な複合磁性材料を提供すること。
【解決手段】 金属磁性粒子31の表面に金属材料被膜32を被覆し、さらにその表面を酸化物磁性被膜であるフェライト被膜33で被覆した。フェライト被膜33と金属磁性粒子31との間に金属材料被膜32を設けることで、複合磁性粒子の焼結時において生じるフェライト被膜33から金属磁性粒子31への酸素の拡散を抑制することを可能とし、従来では400℃以上の高温焼結時に生じていたフェライト被膜33の酸素欠損に起因するフェライト被膜33の抵抗率の低下と複合磁性粒子間での絶縁性の低下を回避することができる。また、焼結後の複合粒子同士は、広い接触面積を有するフェライト結合領域35を介して結合するために高い透磁率を維持することが可能である。
【選択図】 図3

Description

本発明は複合磁性材料に関し、より詳細には、高周波領域における高透磁率と高抵抗率とを両立可能な複合磁性材料に関する。
近年の各種電子機器の小型化・軽量化に伴い、これらの電子機器に搭載されるスイッチング電源などの各種部品についても小型化・軽量化が要求されている。このような小型化・軽量化は、薄型化が求められるノート型パソコン、小型携帯機器、薄型CRTあるいはフラットパネルディスプレイなどに用いられるスイッチング電源において特に強く要求されている。しかしながら、従来のスイッチング電源は、その主要な構成部品であるトランスやリアクトルなどの磁気部品が大きな体積を占めざるを得ず、小型化・軽量化・薄型化には限界があった。
このようなスイッチング電源に使用されるトランスやリアクトルなどの磁気部品用部材には、従来、センダストやパーマロイなどの金属磁性材料や、フェライトなどの酸化物磁性材料が使用されていた。金属磁性材料は高い飽和磁束密度と透磁率とを有する反面、電気抵抗率が低いために、特に高周波帯域における渦電流損失が大きくなってしまい、高速動作や高周波駆動が求められる近年の磁気部品の小型化への障害となる。一方、酸化物磁性材料は、金属磁性材料に比べて電気抵抗率が高いために高周波帯域で生じる渦電流損失が小さいものの、飽和磁束密度が小さいためにその体積を小さくすることが困難である。磁気部品用部材として金属磁性材料または酸化物磁性材料のいずれの磁性材料を用いる場合も、磁性体コアの体積がインダクタンス値を決定づける主要因であり、磁性材料そのものの磁気特性を向上させない限り、磁気部品の小型化・軽量化・薄型化は困難となっていた。
このような問題に鑑みて、最近では、高い飽和磁束密度と透磁率とを有する金属磁性粒子の表面に、電気抵抗率の高い酸化物磁性材料の被膜を形成した複合磁性材料が提案されるようになってきた。このような複合磁性材料では、酸化物磁性被膜の厚さを厚くしすぎると透磁率や飽和磁束密度などの磁気特性の低下が生じるため、金属磁性粒子相互間の絶縁が得られる範囲で、被膜を均一に薄く形成させることが重要とされる。
例えば、特許文献1には、金属磁性材料の表面に高透磁率の金属酸化物の被膜を形成した高透磁率磁性材料が提案されている。また、特許文献2には、1〜10μmの金属磁性粒子の表面をM−Fe(ただし、MはNi、Mn、Znの何れかであり、xは2以下である)で組成表記されるスピネル組成の金属酸化物磁性材料で被覆した高密度焼結磁性体が提案されており、このような高密度焼結磁性体を得るために、金属磁性材料の磁気特性を損なわない温度で熱処理を施した後に熱間静水圧焼成するとの製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、金属または金属間化合物の磁性体微粒子粉末の表面をソフトフェライト層で被覆してこの微粒子粉末を高周波誘導加熱法や放電プラズマ法により圧縮成形し、磁性体微粒子相互間の磁路をソフトフェライト層を介して形成した複合磁性材料の発明が開示されている。
特許文献4には、軟磁性金属粒子に高抵抗の軟磁性物質を被覆し、これをプラズマ活性化焼結して複合軟磁性材料製の磁性コアを製造する方法が開示されており、この方法で得られた磁性コアは、高抵抗軟磁性物質被覆の厚さを適正に設定することでコアロスを所望の値とすることができるとされている。また、特許文献5には、軟磁性の金属粒子と、その表面に被覆された高抵抗物質と、この高抵抗物質の表面に被覆されたリン酸系化成処理被膜とからなる軟磁性粒子を用いて、高比抵抗の軟磁性成形体を高密度で得る方法が開示されている。
各種の金属アルコキシドまたは金属塩を複合磁性材料に適用することも可能である。例えば、特許文献6には、磁気ヘッドコアにおいて磁性フェライトと非磁性フェライトの接合箇所に、Ti、Zr、Ta、Fe、Al及びSiの金属アルコキシドまたはZrの金属塩からなる溶液を用いて接合することが提案されており、これにより、従来の複合磁性材料の製造方法に比較して低温接合が可能で、熱間等方圧プレス処理(HIP)での気孔が戻らない温度での接合が可能になるとされている。
また、金属アルコキシドを用いることで、極低温でのフェライト製造が可能となる。例えば、特許文献7では、金属アルコキシドを用いて約80℃で加水分解および還流を実行し、400℃で仮焼することでNiフェライト結晶が得られること、および、示差熱分析の結果330℃でフェライトとして結晶化することが開示されている。
さらに、特許文献8には、拡散防止材としてのシランモノマーを溶剤に溶かし、FeNi系軟磁性粉末を拡散防止材で表面処理し、このFeNi系軟磁性粉末と、FeSi系合金、FeAl系合金もしくはFeAlSi系合金の軟磁性粉末と、を混合して成形・熱処理して得られた複合磁性材料が開示されている。
特開昭53−91397号公報 特開昭56−38402号公報 特開2003−86415号公報 特開平5−47541号公報 特開2001−85211号公報 特開平7−130526号公報 特開平5−299226号公報 特開2001−015320号公報
従来の酸化物磁性材料被膜を有する金属磁性材料の成形は、特許文献1および特許文献2に記載されている方法を含め、圧縮成形法や真空焼結法あるいは還元雰囲気焼結法などによる常圧焼結や、ホットプレス焼結法やHIP焼結法などによる加圧焼結により行われていた。
図1(a)〜(c)は軟磁性金属粒子が酸化物磁性材料被膜で被覆された複合磁性粒子同士の結合状態を説明するための図で、これらの図中、11は軟磁性金属粒子、12は酸化物磁性材料被膜である。圧縮成形を行うと、図1(a)に示すように、複合磁性粒子表面の曲面のために粒子同士の接触は点接触となり、複合磁性粒子の磁気的結合部分が極端に小さくなってしまい透磁率が低くなってしまう。複合磁性粒子を塑性変形させることで、図1(b)に示すように、粒子同士の接触面積を大きくすることで透磁率を高めることも可能であるが、複合磁性粒子の塑性変形時に酸化物磁性材料被膜12が破壊され易くなり、図1(c)に示すように、酸化物磁性材料被膜13を突き破って軟磁性金属粒子11同士が直接接触してしまい、電気抵抗率が低下し、その結果、磁気部品の渦電流損失が大きくなってしまうなどの弊害が生じる。そこで、焼結することで複合磁性粒子間の熱拡散反応を促進させ、これにより粒子同士を結合させる手法が提案されている。
図2は、焼結成形法で成形した際の複合磁性粒子同士の接触状態の例を説明するための図で、この図において、11は軟磁性金属粒子、12は酸化物磁性材料被膜、そして、13は複合磁性粒子同士の反応部である。この図に示すように焼結成形法によれば、焼結により複合磁性粒子の酸化物磁性材料被膜12相互間で熱拡散反応が生じて軟磁性金属粒子11が破壊されることなく反応し、複合磁性粒子間での磁気的結合を損なうことなく粒子同士を物理的に結合することが可能となる。
しかしながら、このような焼結に要する温度は900〜1200℃と高温であり、また、焼結時間も1時間以上が必要とされる。一方、少なくとも500℃以上の温度で焼結することで、粒子間の磁気的結合は完全ではないまでも熱処理による効果が認められるが、約400℃を超える温度で1時間以上保持すると、酸化物磁性材料被膜12中の酸素が軟磁性金属粒子11側に拡散し、酸化物磁性材料被膜12が還元されてしまう。
このような還元が生じると、酸化物磁性材料被膜12の酸素欠損により電気抵抗率が低下し、その結果、渦電流損失が大きくなって1MHz以上の高周波領域での透磁率が低下してしまう。また、600℃以上の高温処理を施すと、上記の酸素欠損に加え、軟磁性金属粒子11の結晶成長によって酸化物磁性材料被膜12を突き破るかたちで軟磁性金属粒子11同士が反応してしまい、電気抵抗率が低下して高周波領域での使用ができなくなってしまう。
特許文献4に記載されている発明のようにプラズマ活性化焼結法を用いることとすれば、600〜1200℃の温度範囲において1〜10分間程度の短時間で焼結させることができ、酸化物磁性材料被膜12から軟磁性金属粒子11への酸素拡散を低減させることが可能となる。しかしながら、この酸素拡散の低減効果は焼結時間の短縮化に起因するものに過ぎず、構造的に酸素拡散の防止と結晶成長の抑制を実現しているものではない。このため、本質的には、焼結成形を施した場合と同様の現象が生じていることになる。
また、特許文献5に記載のような、軟磁性金属粒子とその表面を被覆する高抵抗物質とこの高抵抗物質の表面を被覆するリン酸系化成処理皮膜とからなる複合磁性粒子の場合には、軟磁性金属粒子と高抵抗物質との界面に拡散バリア層があるわけではないため、酸素拡散を防止することはできない。
このように、酸化物磁性材料被膜で被覆された軟磁性金属粒子からなる複合磁性粒子は、焼結なしでは粒子間の充分な磁気的結合が得られずに透磁率が向上しない一方、焼結を施すと、酸化物磁性材料被膜中の酸素が軟磁性金属粒子に拡散して酸化物磁性材料被膜が還元されたり、軟磁性金属粒子の結晶成長によって軟磁性金属粒子同士が直接結合してしまうことにより抵抗率の低下を招く、という問題があり、高い飽和磁束密度を有する磁性材料を用いて、高周波領域での高透磁率と高抵抗率とを両立させることはできなかった。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、焼結時における酸化物磁性材料被膜からの軟磁性金属粒子への酸素拡散を抑制することにより軟磁性粒子間の絶縁性を高め、これにより高周波領域における高透磁率と高抵抗率とを両立可能な複合磁性材料を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、第1の発明は、金属磁性粒子の表面が金属材料被膜により被覆されており、当該金属材料被膜は酸化物磁性被膜により被覆されていることを特徴とする複合磁性粒子である。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記金属材料被膜は第1および第2の金属材料被膜の2層からなり、前記金属磁性粒子の表面が前記第1の金属材料被膜により被覆され、当該第1の金属材料被膜の表面が前記第2の金属材料被膜により被覆されていることを特徴とする複合磁性粒子である。
これらの発明における金属磁性粒子は、好ましくは、パーマロイ、Fe、CoまたはFeCo合金からなる。また、好ましくは、金属磁性粒子の表面を直接被覆する前記金属材料被覆は、Ni、Au、CrまたはPdからなり、前記第2の金属材料被膜は、Feを含む組成の金属からなる。さらに、好ましくは、前記酸化物磁性被膜が、NiZnなどのフェライトからなる。
第3の発明は、本発明の複合磁性粒子の粉末をプレス成形後熱処理した複合磁性材料であって、前記複合磁性粒子同士が前記酸化物磁性被膜を介してネック形成されて物理的に結合するとともに、前記金属磁性粒子同士が磁気的に結合していることを特徴とする複合磁性材料である。
本発明により、焼結時における酸化物磁性材料被膜からの軟磁性金属粒子への酸素拡散が抑制され、高周波領域における高透磁率と高抵抗率とを両立可能な複合磁性材料の提供が可能となる。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施例においては、主として、金属磁性粒子がパーマロイ粒子であり、酸化物磁性被膜がフェライト被膜であるものとして説明するが、これは説明の具体化のためであってこれらの材料を限定するものと解釈されるべきではない。
図3(a)は本実施例の単体の複合磁性粒子の断面概略図、図3(b)は図3(a)に示した複合磁性粒子を焼結させた後の焼結粒子の断面概略図である。本実施例の複合磁性粒子は、金属磁性粒子31の表面に金属材料被膜32を被覆し、さらにその表面を酸化物磁性被膜であるフェライト被膜33で被覆したものである。フェライト被膜33と金属磁性粒子31との間に金属材料被膜32を設けることで、複合磁性粒子の焼結時において生じるフェライト被膜33から金属磁性粒子31への酸素の拡散を抑制することを可能とし、従来では400℃以上の高温焼結時に生じていたフェライト被膜33の酸素欠損に起因するフェライト被膜33の抵抗率の低下と複合磁性粒子間での絶縁性の低下を回避することができる。また、焼結後の複合粒子同士は、図3(b)で示すように、大きな接触面積を有するフェライト結合領域35を介して結合するために高い透磁率を維持することが可能である。
図4は、図3に示した本実施例の複合磁性粒子およびその焼結体の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。先ず、金属磁性粒子31を製造する(ステップS41)。金属磁性粒子31の製造方法としては、金属磁性体の粉砕法、水アトマイズ法、不活性ガス中での気相生成法などいずれの方法でもよいが、粒子形状の安定性と量産性を考慮すると、水アトマイズ法が望ましい。金属磁性材質としては、パーマロイ粒子(47パーマロイや78パーマロイ)、CoFe粒子(Co30Fe70、Co50Fe50)、Fe単一粒子、Co単一粒子など、磁性を有する材料であれば適用可能である。粒子径は材質にもよるが、磁性部品として用いる際の周波数帯域での表皮深さが粒子半径以上となることが望ましい。なお、後工程である焼結工程やプレス工程などにおいて十分な体積充填率が得られるように、粒子径が均一となるように制御する必要がある。
次に、金属磁性粒子31の表面に金属材料被膜32を被覆する(ステップS42)。金属材料被膜32で被覆された状態の粒子を、便宜上、以下では1次複合磁性粒子と呼ぶ。金属材料の被覆方法としては、真空蒸着、CVD、スパッタリングなどの乾式方法や、化学的生成方法を用いた湿式方法の、いずれの方法も適用可能である。なお、本実施例では湿式方法を採用し、一般的に化学メッキや無電解メッキなどと呼ばれる化学的生成法で被覆を行っている。金属材料被膜32の厚みは複合磁性粒子間に作用する磁気的結合に大きく影響するため、金属磁性粒子31の材質や粒子径、あるいは、後に形成することとなるフェライト被膜33の特性および膜厚などによって最適な厚さに制御する必要がある。この膜厚は、金属磁性粒子31間の磁気的結合を低減させないためにはなるべく薄いことが要求されるが、金属材料被膜32が酸素拡散防止の役割を果たすことを考慮すると、膜厚を1nm〜50nmの範囲で制御するとよい。湿式形成が可能な金属材料としては、Cu、Ni、Au、Fe、Cr、Pd、Snなどがあるが、金属材料自体が酸化しやすいと酸素拡散防止効果が小さくなるため、Cu、Fe、Snは避けることが好ましい。
これに続いて、1次複合磁性粒子の表面に酸化物磁性材料であるフェライト被膜33を形成する(ステップS43)。このフェライト被膜による被覆は、特許文献3に記載されている超音波励起フェライトメッキ法により実行する。具体的には、ステップS42で得られた1次複合磁性粒子を、FeCl、NiClおよびZnClの混合水溶液中に浸潰させ、酸化剤であるNaNOおよびpHコントロール剤であるNHOHを所定量供給させながらpHを9.5に保つ。この時、反応溶液の温度を熱浴により60℃に保持し、周波数19.5kHzの超音波ホーンにより超音波を反応液中に与える。この状態で規定時間保持した後、粒子粉末を水洗し、大気中で60℃で1時間乾燥させ採取する。これにより、1次複合粒子の表面にNiZnフェライト被膜を形成させることができる。なお、この状態の粒子を、便宜上、以下では2次複合磁性粒子と呼ぶ。このようにして得られた2次複合磁性粒子をプレス成形して焼結し、所望の磁気コア形状に成形する。
先ず、2次複合磁性粒子を金型に充填して一軸プレスでプレス成型を行い圧粉体とする(ステップS44)。この状態では粒子同士は未だ結合しておらず、粒子接触部34で点接触しているに過ぎない。
得られた圧粉体を300〜900℃程度の温度で焼結する(ステップS45)。この焼結によりフェライト結合領域35が形成されて複合磁性粒子同士が結合する。なお、焼結時の雰囲気は大気でもよいが、炉内が還元雰囲気にならないように十分大きな容器中で行うか、あるいは、酸素濃度の制御を行う。このようにして本発明の複合磁性材料が得られる。
本実施例では、実施例1における金属材料被膜としてAuを用いた例について説明する。金属磁性粒子31としては、水アトマイズ法で作製した平均粒子径8μmのパーマロイ粒子(47パーマロイ粒子)を用いた。
先ず、パーマロイ粒子に被膜形成の前処理である希塩酸処理および希硫酸処理を施し、化学メッキの核形成のために、塩化パラジウム(0.1g/リットル)と塩酸(35vol%を2ml/リットル)を主成分とする前処理液に1分浸漬した。次に、金シアン化カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化アンモニウムおよび次亜リン酸ナトリウムを主成分としたAuの化学メッキ液(pH7)を温度60℃に保持し、攪拌しながら1分間浸潰した。この化学メッキ液は、通常は90℃程度で使用するものであるが、金属材料被膜32の膜厚を厚くしないために、液温を60℃に下げ、Au被膜の厚さが5nm程度となるように制御した。
これに続いて、実施例1で説明した手順によりフェライト被膜33を形成する。本実施例では、フェライトメッキ液(FeCl、NiCl、ZnClの混合水溶液)に、超音波を与えながら60分間浸潰した。この処理後に水洗および乾燥を行って、パーマロイ粒子をAu被膜とフェライト被膜とが2重に被覆した複合磁性粒子が形成される。
この複合磁性粒子約1gを金型に充填して10ton/cmの圧力で一軸プレス成形し、得られた圧粉体を焼結温度200、400または600℃の各温度で5分間、大気雰囲気の電気炉で焼結反応させた。このようにして、外径8mm、内径Φ3mm、厚さ3mmのリング型のコア(体積0.13cm)を作製した。
このコアの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、複合磁性粒子のフェライト被膜の接触状態は、焼結なし及び200℃焼結では点接触状態(図1(a)に相当する状態)になっており、400℃焼結では僅かに面接触状態(図1(b)に相当する状態)になっていたのに対し、600℃焼結では図3(b)に示したようにフェライト被膜33同士がくびれるように結合する、ネック形成を示す状態になっていた。すなわち、複合磁性粒子同士が酸化物磁性被膜たるフェライト被膜33を介してネック形成されて物理的に結合するとともに、金属磁性粒子であるパーマロイ粒子31同士が磁気的に結合している。なお、フェライト被膜33を突き破ってパーマロイ31同士が直接反応・結合している箇所は殆ど確認されなかった。
本実施例では、実施例1における金属材料被膜としてPdを用いた例について説明する。パーマロイ粒子31を、塩化パラジウム(0.1g/リットル)と塩酸(35vol%を2ml/リットル)を主成分とする処理液に5分間浸漬し、パーマロイ粒子31の表面にPd被膜を形成した。この後、乾燥させることなくフェライト被膜33形成を実施した。フェライトメッキ液への浸潰時間は実施例2と同様に60分である。この処理の後に水洗と乾燥を行い、パーマロイ粒子をPd被膜とフェライト被膜とが2重に被覆した複合磁性粒子が形成される。
この複合磁性粒子約1gを金型に充填して10ton/cmの圧力で一軸プレス成形し、得られた圧粉体を焼結温度200、400または600℃の各温度で5分間、大気雰囲気の電気炉で焼結反応させた。このようにして、外径8mm、内径Φ3mm、厚さ3mmのリング型のコア(体積0.13cm)を作製した。
これらのコアの断面状態は実施例2で説明した状態と同様であった。
上述した実施例2および実施例3では、磁性を有しない金属材料を酸素拡散防止膜として用いたが、粒子間の磁気的結合を低下させないためには、酸素拡散防止膜も磁性を有する方が都合がよい。本発明の目的に適し、かつ、磁性を帯びている金属材料としては、NiとCr(反強磁性体)がある。そこで、本実施例では、金属材料としてNiを用いることとした。なお、実施例2で説明した製造工程との相違は金属材料被膜32の形成工程のみであるため、以下ではNi被膜の形成プロセスのみを説明する。
Ni被膜形成のための前処理としては、実施例2と同様に、希塩酸処理と希硫酸処理とを行った。化学メッキのための核形成処理は必要に応じて実施すればよいが、本実施例では実行していない。
これらの前処理に続いて、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウムおよび乳酸を主成分としたNiの化学メッキ液(pH4.5)を温度50℃に保ち、この化学メッキ液を攪拌しながらパーマロイ粒子31を1分間浸漬した。Au被膜の形成と同様に、被膜厚を厚くしないため、液温を50℃と低く設定してNiの厚さを約5nmに制御している。このNi被膜形成後は、粒子を乾燥させることなくフェライト被膜形成を実施した。乾燥工程を設けない理由は、粒子が乾燥することで生じるNiの酸化を防止するためである。フェライトメッキ液に浸潰した時間は、実施例2および実施例3と同様に60分である。この処理の後、水洗および乾燥工程を経て、パーマロイ粒子をNi被膜とフェライト被膜とが2重に被覆した複合磁性粒子が形成される。
この複合磁性粒子約1gを金型に充填して10ton/cmの圧力で一軸プレス成形し、得られた圧粉体を焼結温度200、400または600℃の各温度で5分間、大気雰囲気の電気炉で焼結反応させた。このようにして、外径8mm、内径Φ3mm、厚さ3mmのリング型のコア(体積0.13cm)を作製した。
これらのコアの断面状態は実施例2で説明した状態と同様であった。
[比較例1]
比較例として、酸素拡散防止膜となる金属材料被膜32を形成することなく、パーマロイ粒子31表面上にフェライト被膜33のみを形成した。パーマロイ粒子およびフェライト被膜33は実施例1〜3で説明したものと同様であり、プレス成形および焼結の条件も実施例と同様である。
得られたコアの断面をTEM観察したところ、フェライト結合領域は、図2の模式図と同様の状態で、フェライト被膜で被覆された金属磁性粒子同士がネック形成されているのが確認された。なお、フェライト被膜33を突き破ってパーマロイ粒子31同士が直接反応・結合している箇所は殆ど認められなかった。
図5は、実施例2〜4および比較例1で得られたリング型コアに絶縁被覆された導体線を巻きつけてインダクタを作製し、交流のB−Hアナライザーを用いて周波数1MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図である。この図に示した測定結果から明らかなように、金属材料被膜32を設けなかった比較例1の複合磁性粒子で成形したコアでは、熱処理温度が高くなるにつれて比透磁率が低下しているのに対して、金属材料被膜32を設けた本発明の複合磁性粒子で成形したコアは何れも、熱処理温度が高くなるにつれて高い比透磁率を示している。このような比透磁率の低下は、渦電流の発生により磁界を打ち消す方向への磁界が発生するためである。図5に示した結果は、金属材料被膜32を設けることにより高温領域での酸素拡散が抑制され、高周波領域においても低損失の磁気部品を得ることができることを意味している。
これまで説明してきた実施例1〜4においては、本実施例の複合磁性粒子の構成を、金属磁性粒子31の表面に金属材料被膜32を被覆し、さらにその表面をフェライト被膜33で被覆したものとした。これに対して、本実施例を含む以下の実施例においては、金属材料被膜32を2層とし、第1の金属材料被膜32aにより酸素拡散防止を実現するとともに、第2の金属材料被膜32bによりフェライト被膜33をメッキする際の「つきまわり」を良好としてフェライト被膜33の結晶性を高めることとしている。ここで、「つきまわり」とは、被膜形成の均一性を意味し、「つきまわりが良い」とは、均一な被膜形成が実現される結果、得られた被膜の結晶性が高いことを意味し、逆に、「つきまわりが悪い」とは、均一な被膜形成がなされずに形成された被膜の結晶性が低いことを意味する。
図6(a)は本実施例の単体の複合磁性粒子の断面概略図、図6(b)は図6(a)に示した複合磁性粒子を焼結させた後の焼結粒子の断面概略図である。本実施例の複合磁性粒子は、金属磁性粒子31の表面に第1の金属材料被膜32aと第2の金属材料被膜32bとを被覆し、さらにその表面をフェライト被膜33で被覆したものである。
フェライト被膜33と金属磁性粒子31との間に第1の金属材料被膜32aを設けることで、複合磁性粒子の焼結時において生じるフェライト被膜33から金属磁性粒子31への酸素の拡散を抑制することを可能とし、従来では400℃以上の高温焼結時に生じていたフェライト被膜33の酸素欠損に起因するフェライト被膜33の抵抗率の低下と複合磁性粒子間での絶縁性の低下を回避することができる。また、焼結後の複合粒子同士は、図6(b)で示すように、大きな接触面積を有するフェライト結合領域35を介して結合するために高い透磁率を維持することが可能である。また、第1の金属材料被膜32aの表面を第2の金属材料被膜32bで被覆することにより、フェライト被膜33をメッキする際の「つきまわり」が良好となって形成されるフェライト被膜33の結晶性を高めることが可能となる。
図7は、図6に示した本実施例の複合磁性粒子およびその焼結体の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。先ず、金属磁性粒子31を製造する(ステップS71)。金属磁性粒子31の製造方法としては、金属磁性体の粉砕法、水アトマイズ法、不活性ガス中での気相生成法などいずれの方法でもよいが、粒子形状の安定性と量産性を考慮すると、水アトマイズ法が望ましい。金属磁性材質としては、パーマロイ粒子(47パーマロイや78パーマロイ)、CoFe粒子(Co30Fe70、Co50Fe50)、Fe単一粒子、Co単一粒子など、磁性を有する材料であれば適用可能である。粒子径は材質にもよるが、磁性部品として用いる際の周波数帯域での表皮深さが粒子半径以上となることが望ましい。なお、後工程である焼結工程やプレス工程などにおいて十分な体積充填率が得られるように、粒子径が均一となるように制御する必要がある。
次に、金属磁性粒子31の表面に第1の金属材料被膜32aおよび第2の金属材料被膜32bを被覆する(ステップS72)。これら2層の金属材料被膜(32aおよび32b)からなる金属材料被膜32で被覆された状態の粒子を、便宜上、以下では1次複合磁性粒子と呼ぶ。金属材料の被覆方法としては、真空蒸着、CVD、スパッタリングなどの乾式方法や、化学的生成方法を用いた湿式方法の、いずれの方法も適用可能である。なお、本実施例では湿式方法を採用し、一般的に化学メッキや無電解メッキなどと呼ばれる化学的生成法で被覆を行っている。金属材料被膜32の厚みは複合磁性粒子間に作用する磁気的結合に大きく影響するため、金属磁性粒子31の材質や粒子径、あるいは、後に形成することとなるフェライト被膜33の特性および膜厚などによって最適な厚さに制御する必要がある。この膜厚は、金属磁性粒子31間の磁気的結合を低減させないためにはなるべく薄いことが要求されるが、金属材料被膜32が酸素拡散防止の役割を果たすことを考慮すると、膜厚を1nm〜50nmの範囲で制御するとよい。
湿式形成が可能な金属材料としては、Cu、Ni、Au、Fe、Cr、Pd、Snなどがあるが、金属材料自体が酸化しやすいと酸素拡散防止効果が小さくなるため、第1の金属材料被膜32aの材質としてCu、Fe、Snを用いることは避けることが好ましい。一方、第2の金属材料被膜32bにはフェライト被膜33形成時における「つきまわり」を良くする材料が選択され、Feを含む材料とすることが好ましく、Fe単体とすることで「つきまわり」を最も高めることができる。
第2の金属材料被膜32bがFeを含むことが好ましい理由は、フェライトメッキ法の反応機構として、メッキされる素地(すなわち第2の金属材料被膜32bの表面)に存在するOH基とフェライトとが反応することでメッキが進行することによるものと考えられる。Feの表面には比較的多数のOH基が存在し、このOH基上にフェライトが成長する。フェライトの表面には多数のOH基が存在するため、このOH基の上にフェライトが成長する。このような反応の繰返しにより、フェライト被膜が形成されることとなる。したがって、Feを含む組成の材料で第2の金属材料被膜32bを形成しておけば、フェライト被膜の付き始め段階において第2の金属材料被膜32b表面に満遍なくフェライトが付着して「つきまわり」が良くなり、その結果、得られるフェライト被膜33の結晶性も高くなることとなる。
これに続いて、1次複合磁性粒子の表面に酸化物磁性材料であるフェライト被膜33を形成する(ステップS73)。このフェライト被膜による被覆は、特許文献3に記載されている超音波励起フェライトメッキ法により実行する。具体的には、ステップS72で得られた1次複合磁性粒子を、FeCl、NiClおよびZnClの混合水溶液中に浸潰させ、酸化剤であるNaNOおよびpHコントロール剤であるNHOHを所定量供給させながらpHを9.5に保つ。この時、反応溶液の温度を熱浴により60℃に保持し、周波数19.5kHzの超音波ホーンにより超音波を反応液中に与える。この状態で規定時間保持した後、粒子粉末を水洗し、大気中で60℃で1時間乾燥させ採取する。これにより、1次複合粒子の表面にNiZnフェライト被膜を形成させることができる。なお、この状態の粒子を、便宜上、以下では2次複合磁性粒子と呼ぶ。このようにして得られた2次複合磁性粒子をプレス成形して焼結し、所望の磁気コア形状に成形する。
先ず、2次複合磁性粒子を金型に充填して一軸プレスでプレス成型を行い圧粉体とする(ステップS74)。この状態では粒子同士は未だ結合しておらず、粒子接触部34で点接触しているに過ぎない。
得られた圧粉体を300〜900℃程度の温度で焼結する(ステップS75)。この焼結によりフェライト結合領域35が形成されて複合磁性粒子同士が結合する。なお、焼結時の雰囲気は大気でもよいが、炉内が還元雰囲気にならないように十分大きな容器中で行うか、あるいは、酸素濃度の制御を行う。このようにして本発明の複合磁性材料が得られる。
本実施例では、実施例5における第1の金属材料被膜32aとしてPdを用いた例について説明する。金属磁性粒子31としては、水アトマイズ法で作製した平均粒子径8μmのパーマロイ粒子(47パーマロイ粒子)を用いた。
先ず、パーマロイ粒子に被膜形成の前処理である希塩酸処理および希硫酸処理を施し、化学メッキの核形成のために、塩化パラジウム(0.1g/リットル)と塩酸(35vol%を2ml/リットル)を主成分とする前処理液に5分浸漬した。
この後、乾燥させることなく連続して第2の金属材料被膜32bを形成した。具体的には、第2の金属材料被膜32b形成後の粒子を、硫酸第一鉄、ロッセル塩、次亜リン酸ナトリウムを主成分とする、温度700℃に保ったFeの化学メッキ液(pH9)中で1分間攪拌しながら浸漬した。なお、この化学メッキ液は、通常は900℃程度の温度で使用するものであるが、被膜を必要以上に厚くしないために、液温を700℃に下げ、Fe被膜の厚さが約1nmとなるように制御した。
これに続いて、実施例5で説明した手順によりフェライト被膜33を形成する。本実施例では、フェライトメッキ液(FeCl、NiCl、ZnClの混合水溶液)に、超音波を与えながら60分間浸潰した。この処理後に水洗および乾燥を行って、パーマロイ粒子をPd被膜とFe被膜およびフェライト被膜が被覆した複合磁性粒子が形成される。
この複合磁性粒子約1gを金型に充填して10ton/cmの圧力で一軸プレス成形し、得られた圧粉体を焼結温度200、400または600℃の各温度で5分間、大気雰囲気の電気炉で焼結反応させた。このようにして、外径8mm、内径Φ3mm、厚さ3mmのリング型のコア(体積0.13cm)を作製した。
このコアの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、複合磁性粒子のフェライト被膜の接触状態は、焼結なし及び200℃焼結では点接触状態(図1(a)に相当する状態)になっており、400℃焼結では僅かに面接触状態(図1(b)に相当する状態)になっていたのに対し、600℃焼結では図3(b)に示したようにネック形成を示す状態になっていた。なお、フェライト被膜33を突き破って金属磁性粒子31同士が直接反応・結合している箇所は殆ど確認されなかった。また、第2の金属材料被膜32bを設けたことにより、結晶性の高いフェライト被膜33が得られていることが確認された。
上述した実施例6では、磁性を有しない金属材料を酸素拡散防止膜として用いたが、粒子間の磁気的結合を低下させないためには、酸素拡散防止膜も磁性を有する方が都合がよい。本発明の目的に適し、かつ、磁性を帯びている金属材料としては、NiとCrがある。そこで、本実施例では、金属材料としてNiを用いることとした。なお、実施例6で説明した製造工程との相違は第1の金属材料被膜32aの形成工程のみであるため、以下ではNi被膜の形成プロセスのみを説明する。
Ni被膜形成のための前処理としては、実施例6と同様に、希塩酸処理と希硫酸処理とを行った。化学メッキのための核形成処理は必要に応じて実施すればよいが、本実施例では実行していない。
これらの前処理に続いて、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウムおよび乳酸を主成分としたNiの化学メッキ液(pH4.5)を温度50℃に保ち、この化学メッキ液を攪拌しながらパーマロイ粒子31を1分間浸漬した。Au被膜の形成と同様に、被膜厚を厚くしないため、液温を50℃と低く設定してNiの厚さを約10nmに制御している。このNi被膜形成後は、粒子を乾燥させることなく第2の金属材料被膜32bおよびフェライト被膜33形成を実施した。乾燥工程を設けない理由は、粒子が乾燥することで生じるNiの酸化を防止するためである。このようにして、パーマロイ粒子をNi被膜とFe被膜およびフェライト被膜が被覆した複合磁性粒子が形成される。
この複合磁性粒子約1gを金型に充填して10ton/cmの圧力で一軸プレス成形し、得られた圧粉体を焼結温度200、400または600℃の各温度で5分間、大気雰囲気の電気炉で焼結反応させた。このようにして、外径8mm、内径Φ3mm、厚さ3mmのリング型のコア(体積0.13cm)を作製した。これらのコアの断面状態は実施例6で説明した状態と同様であった。
図8は、実施例6および実施例7で得られたリング型コアに絶縁被覆された導体線を巻きつけてインダクタを作製し、交流のB−Hアナライザーを用いて周波数1MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図で、比較のため、比較例1で得られたコアについての測定結果も同時に示してある。この図に示した測定結果から明らかなように、金属材料被膜32を設けなかった比較例1の複合磁性粒子で成形したコアでは、熱処理温度が高くなるにつれて比透磁率が低下しているのに対して、金属材料被膜32を設けた本発明の複合磁性粒子で成形したコアは何れも、熱処理温度が高くなるにつれて高い比透磁率を示している。このような比透磁率の低下は、渦電流の発生により磁界を打ち消す方向への磁界が発生するためである。図8に示した結果は、図5で説明したのと同様に、金属材料被膜32を設けることにより高温領域での酸素拡散が抑制され、高周波領域においても低損失の磁気部品を得ることができることを意味している。
図9は、実施例7および実施例4で得られたリングコアの周波数5MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図である。実施例4は金属被膜32がNi単層の場合の実施例であり、実施例7はNiとFeの2重構造にした場合の実施例である。この図から明らかなように、NiとFeの2重構造にした実施例7のリングコアの高周波特性は、金属被膜32がNi単層の実施例4のリングコアの特性に比較してはるかに優れていることが分かる。この結果は、金属材料被膜を2重としてフェライト被膜の結晶性を向上させることにより、パーマロイ粒子31相互間の絶縁性が向上して磁気部品の電気抵抗の低下が回避されることにより、高周波領域でも比透磁率μsの低下がなく、高周波特性を高めることが可能であることによる。
なお、これまでの実施例1〜7では、複合磁性粒子を通常の熱焼結することとしたが、プラズマ活性化焼結などを用いると、高透磁率化と高抵抗率化という本発明の効果はさらに大きくなる。また、ネック形成を促進させるために金属アルコキシドを添加して焼結することとすれば、低温焼結でもネック形成が可能となる。
本発明は、高周波領域における高透磁率と高抵抗率とを両立可能な複合磁性材料の提供を可能とする。
軟磁性金属粒子が酸化物磁性材料被膜で被覆された複合磁性粒子同士の結合状態を説明するための図である。 焼結成形法で成形した際の複合磁性粒子同士の接触状態の例を説明するための図である。 実施例1の複合磁性粒子の様子を説明するための図で、(a)は単体の複合磁性粒子の断面概略図、(b)は複合磁性粒子を焼結させた後の焼結粒子の断面概略図である。 図3に示した実施例1の複合磁性粒子およびその焼結体の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。 実施例2〜4および比較例1で得られたリング型コアに絶縁被覆された導体線を巻きつけてインダクタを作製し、交流のB−Hアナライザーを用いて周波数1MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図である。 実施例5の複合磁性粒子の様子を説明するための図で、(a)は単体の複合磁性粒子の断面概略図、(b)は複合磁性粒子を焼結させた後の焼結粒子の断面概略図である。 図6に示した実施例5の複合磁性粒子およびその焼結体の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。 実施例6および実施例7で得られたリング型コアに絶縁被覆された導体線を巻きつけてインダクタを作製し、交流のB−Hアナライザーを用いて周波数1MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図である。 実施例7および実施例4で得られたリングコアの周波数5MHzでの比透磁率μsを測定した結果を説明するための図である。
符号の説明
11 軟磁性金属粒子
12 酸化物磁性材料被膜
13 複合磁性粒子同士の反応部
31 金属磁性粒子
32 金属材料被膜
32a 第1の金属材料被膜
32b 第2の金属材料被膜
33 フェライト被膜
34 粒子接触部
35 フェライト結合領域

Claims (8)

  1. 金属磁性粒子の表面が金属材料被膜により被覆されており、当該金属材料被膜は酸化物磁性被膜により被覆されていることを特徴とする複合磁性粒子。
  2. 前記金属材料被膜は第1および第2の金属材料被膜の2層からなり、前記金属磁性粒子の表面が前記第1の金属材料被膜により被覆され、当該第1の金属材料被膜の表面が前記第2の金属材料被膜により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の複合磁性粒子。
  3. 前記金属磁性粒子は、パーマロイ、Fe、CoまたはFeCo合金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合磁性粒子。
  4. 前記金属磁性粒子の表面を直接被覆する前記金属材料被覆は、Ni、Au、CrまたはPdからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の複合磁性粒子。
  5. 前記第2の金属材料被膜は、Feを含む組成の金属からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の複合磁性粒子。
  6. 前記酸化物磁性被膜が、フェライトからなることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の複合磁性粒子。
  7. 前記フェライトが、NiZnフェライトであることを特徴とする請求項6に記載の複合磁性粒子。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の複合磁性粒子の粉末をプレス成形後熱処理した複合磁性材料であって、
    前記複合磁性粒子同士が前記酸化物磁性被膜を介してネック形成されて物理的に結合するとともに、前記金属磁性粒子同士が磁気的に結合していることを特徴とする複合磁性材料。
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