JP2005082879A - 無電解めっきの前処理用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価で触媒活性の低い銀化合物を触媒として用いた場合であっても、未析出部分や外観むらのない良好な無電解めっき皮膜を形成できる方法を提供する。
【解決手段】四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、並びにニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する水溶液からなる無電解めっきの前処理用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、無電解めっきの前処理用組成物、無電解めっきの前処理方法及び無電解めっき方法に関する。
プラスチック、セラミックス、ガラスなどの非導電性物質に対して無電解めっきを行う場合には、通常、めっき反応を開始させるために触媒物質を被めっき物に付与する必要がある。
現在、無電解めっき用触媒金属としてはパラジウムが広く用いられており、触媒付与方法としては、被めっき物をセンシタイザー溶液(塩化スズ(II)の塩酸溶液)に浸漬した後、アクチベーター溶液(塩化パラジウムの塩酸溶液)に浸漬する方法(センシタイザー−アクチベーター法)、スズ−パラジウム混合コロイド溶液に浸漬して触媒を付与した後、硫酸などの酸性溶液からなるアクセレーター溶液に浸漬して、過剰のスズイオンを溶解させて触媒活性を向上させる方法(キャタリスト-アクセレーター法)等が主として実施されている。
しかしながら、これらの方法では、触媒金属として高価な貴金属であるパラジウムを使用しており、無電解めっき処理において触媒化処理工程に要する費用の割合が非常に大きくなっている。
このため、パラジウム以外の金属を触媒として使用する方法について古くから種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、銀塩を触媒として用いる方法が記載されている。この方法は、銀塩と界面活性剤を含有する水溶液に、銀塩に対して2〜4倍モルの還元剤を添加して銀ヒドロゾルを形成し、これを被めっき物と接触させて、銀コロイドを付与し、その後無電解めっきを行う方法である。
また、特許文献2には、銀塩0.01〜100mmol/l、陰イオン界面活性剤0.01〜0.5wt%、及び銀塩に対して0.1〜0.8倍モルの還元剤を含む無電解めっき用触媒液が記載されており、この触媒液は、銀塩に対して0.01〜0.8倍モルの還元剤を含むことにより、安定性が良好であるとされている。
しかしながら、上記した特許文献1及び2に記載された触媒液を用いる場合には、触媒金属である銀の触媒活性がパラジウムと比較して低いために、無電解めっきにおいて、未析出部分が生じ易く、更に、めっき皮膜の外観ムラが発生し易いという問題がある。
特開平1−68478号公報 特開平10−30188号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、安価で触媒活性の低い銀化合物を触媒として用いた場合であっても、未析出部分や外観むらのない良好な無電解めっき皮膜を形成できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の高分子化合物と特定のアミノ酸類又はアミノスルホン酸類を含む組成物を用いて被めっき物を前処理した後、触媒を付与して無電解めっきを行う場合には、銀化合物を触媒成分として用いる場合であっても無電解めっきの析出性を大きく向上させることができることを見出した。更に、該前処理用組成物を用いて前処理を行うことにより、パラジウム触媒等、他の触媒成分を用いる場合にも、無電解めっきの析出性を大きく改善できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の無電解めっきの前処理用組成物、無電解めっきの前処理方法及び無電解めっき方法を提供するものである。
1. 四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、並びにニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する水溶液からなる無電解めっきの前処理用組成物。
2. 四級化ポリビニルイミダゾールが、四級化されたN−ビニルイミダゾールを構成モノマーとして含む重合体であり、ポリジアリルアンモニウム塩が、下記式(1)
Figure 2005082879
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、ベンジル基又はシクロアルキル基である。A-は一価のアニオンである。)で表されるジアリルアンモニウム塩を構成モノマーとして含む重合体である請求項1に記載の無電解めっきの前処理用組成物。
3. 四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物を0.1g/l〜20g/lと、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を1ミリモル/l〜500ミリモル/l含有する水溶液である上記項1又は2に記載の無電解めっきの前処理用組成物。
4. 被めっき物を上記項1〜3のいずれかに記載の前処理用組成物に接触させることを特徴とする無電解めっきの前処理方法。
5. 被めっき物を上記項1〜3のいずれかに記載の前処理用組成物に接触させた後、該被めっき物に無電解めっき用触媒を付与し、次いで無電解めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法。
6. 無電解めっき用触媒を付与する方法が、銀を触媒金属として含む溶液を被めっき物に接触させる工程を含む方法である上記項5に記載の無電解めっき方法。
前処理用組成物
本発明の前処理用組成物は、四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、並びにニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する水溶液である。
被めっき物に無電解めっき用触媒を付与する前に、本発明の前処理用組成物を用いて被めっき物を処理することによって、無電解めっきの析出性を大きく向上させることができる。特に、従来、パラジウム化合物と比較して触媒活性が劣るとされていた銀化合物を触媒物質として用いる場合であっても、本発明の前処理用組成物を用いることによって無電解めっきの析出性を大きく向上させることができる。
本発明の前処理用組成物の有効成分の内で、四級化ポリビニルイミダゾールは、四級化されたN−ビニルイミダゾールを構成モノマーとして含む重合体であり、ポリジアリルアンモニウム塩は、下記式(1)
Figure 2005082879
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、ベンジル基又はシクロアルキル基である。A-は一価のアニオンである。)で表されるジアリルアンモニウム塩を構成モノマーとして含む重合体である。該ポリジアリルアンモニウム塩におけるアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を例示でき、アリール基としては、フェニル基を例示でき、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基を例示できる。
式(1)で表されるジアリルアンモニウム塩の具体例としては、ジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルメチルエチルアンモニウム塩、ジアリルメチルプロピルアンモニウム塩、ジアリルメチルイソプロピルアンモニウム塩、ジアリルメチルフェニルアンモニウム塩、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジアリルメチルシクロヘキシルアンモニウム塩等を挙げることができる。該アンモニウム塩を構成するアニオンは、1価であることを除いて特に限定はないが、具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンアニオン、酢酸など低級脂肪酸イオン、スルホン酸ソーダ、スルホン酸カリウムなど多価の無機酸のアルカリ金属塩イオンなどを挙げることができる。
四級化ポリビニルイミダゾールの具体例としては、例えば、下記式(2):
Figure 2005082879
(式中、R3は、アルキル基、アリール基、ベンジル基又はシクロアルキル基であり、A-は一価のアニオンである。)で表される繰り返し単位を有する重合体を挙げることができる。尚、上記式(2)におけるアルキル基、アリール基、ベンジル基、シクロアルキル基、及び一価アニオンの具体例としては、上記した式(1)の各基と同様のものを挙げることができる。
また、ポリジアリルアンモニウム塩としては、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位を含む重合体、下記式(4)で表される繰り返し単位を含む重合体などを例示できる。
Figure 2005082879
Figure 2005082879
(上記式(3)及び(4)において、R1、R2及びA-は上記に同じ)。
四級化されたN−ビニルイミダゾールを構成モノマーとして含む重合体及びジアリルアンモニウム塩を構成モノマーとして含む重合体は、四級化されたN−ビニルイミダゾール又は上記式(2)で表されるジアリルアンモニウム塩の他に、他のモノマー成分として、二酸化硫黄、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアリルアミン、メチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン、トリメチルアンモニウムクロライドエチルアクリルアミド、トリメチルアンモニウムクロライドエチルメタクリルアミド、トリメチルアンモニウムクロライドプロピルアクリルアミド、トリメチルアンモニウムクロライドプロピルメタクリルアミドなどを含む共重合体であっても良い。この場合、四級化されたN−ビニルイミダゾール又は一般式(2)で表されるジアリルアンモニウム塩は、全モノマー成分中、40モル%程度以上含まれることが好ましく、50モル%程度以上で含まれることがより好ましく、70モル%程度以上含まれることが更に好ましい。
四級化されたポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物の分子量は、特に限定的ではないが、通常、重量平均分子量が2,000〜500,000程度の範囲にあることが好ましく、10,000〜200,000程度の範囲にあることがより好ましい。
本発明の前処理用組成物における四級化されたポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物の濃度は、0.1g/l〜20g/l程度とすることが好ましく、0.5g/l〜10g/l程度とすることがより好ましい。
本発明では、上記した高分子化合物を、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と組み合わせて用いることが必要である。この様な化合物を用いることによって、上記した高分子化合物を単独で用いる場合と比較して、無電解めっきの析出性を大きく向上させることができる。尚、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸及びタウリンの塩としては、いずれも可溶性塩であれば特に限定無く使用できる。具体例として、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の濃度は、1ミリモル/l〜500ミリモル/l程度とすることが好ましく、5ミリモル/l〜300ミリモル/l程度とすることがより好ましい。
本発明の前処理用組成物には、更に、必要に応じて、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤;酒石酸(塩)、エチレンジアミン4酢酸(塩)、エチレンジアミンテトラ−2−プロパノール、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、グルコン酸ナトリウム、クエン酸などのキレート剤;含フッ素界面活性剤;リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどを添加しても良い。
本発明の前処理用組成物を用いる前処理は、従来のコンディショニング処理と同様に、必要に応じて脱脂などの処理を行った後、被めっき物を該前処理用組成物に接触させることによって行うことができる。具体的な方法については、特に限定的ではなく、例えば、該前処理用組成物を被めっき物に噴霧する方法、該前処理用組成物に被めっき物を浸漬する方法などを適宜適用することができる。特に、該前処理用組成物に浸漬する方法によれば、簡単な操作で均一な処理が可能となる。
処理条件については特に限定的ではないが、該前処理用組成物に浸漬する方法では、通常、5〜80℃程度、好ましくは25〜65℃程度の処理液中に被めっき物を浸漬すればよい。該前処理用組成物のpHについては、特に限定的ではないが、通常、pH4程度以上とすることが好ましく、pH8程度以上とすることがより好ましい。pHの上限については、特に限定的ではないが、通常、12程度以下とすればよい。浸漬時間については特に限定的ではなく、処理温度や素材などに応じて適宜決めればよいが、通常、30秒〜10分程度の範囲とすればよい。
本発明の前処理用組成物を用いて被めっき物を処理することによって、被めっき物表面のゼータ電位が正の値になる。通常、電気浸透効果を利用した方法でゼータ電位を想定した場合に、被めっき物のゼータ電位は35mV程度以上という高い値となる。この様に高いゼータ電位となることによって、触媒物質の吸着量が増大して、無電解めっきの析出性が大きく向上するものと思われる。
触媒付与方法
本発明の前処理用組成物による処理を行った後、無電解めっき用触媒を付与する。この場合の触媒の種類としては、特に限定はなく、無電解めっき用触媒として知られている公知の各種触媒を用いることができる。例えば、銀、パラジウム、金、ルテニウム、銅、ニッケル及び白金からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を触媒物質として含む公知の触媒付与用の組成物を用いればよい。具体的な触媒付与用組成物の種類、触媒付与方法については、特に限定的ではなく、公知の組成物、公知の触媒付与方法から適宜選択すればよい。例えば、パラジウム触媒を付与する場合には、被めっき物をセンシタイザー溶液(塩化スズ(II)の塩酸溶液)に浸漬した後、アクチベーター溶液(塩化パラジウムの塩酸溶液)に浸漬する方法(センシタイザー−アクチベーター法)、スズ−パラジウム混合コロイド溶液に浸漬して触媒を付与した後、硫酸などの酸性溶液からなるアクセレーター溶液に浸漬して、過剰のスズイオンを溶解させて触媒活性を向上させる方法(キャタリスト-アクセレーター法)等を適宜適用できる。
尚、無電解めっき用の触媒を付与する前に、必要に応じて、常法に従って、ソフトエッチング、酸洗、プリディップ等の処理を行っても良い。
本発明の前処理用組成物は、触媒物質として銀化合物を用いる場合にも、無電解めっきの析出性が良好となる点において、非常に有用性が高い前処理剤である。即ち、安価な触媒物質である銀化合物を用いる場合であっても、無電解めっきの析出性を大きく向上させて、未析出部分やめっき皮膜の外観ムラの発生を抑制できるので、無電解めっきに要する処理コストを大きく低減できる点で非常に有利である。
以下、被めっき物に銀触媒を付与する方法について、より詳細に説明する。
触媒液としては、銀を触媒金属として含む溶液であれば特に限定なく使用できる。この様な触媒液としては、例えば、特開平1−68478号公報に記載されている銀ヒドロゾル、特開平10−30188号公報に記載されている無電解めっき用触媒液などを例示できる。また、特開2000−8180号公報に記載されている2価のスズイオンを含むセンシタイジング溶液でセンシタイジング処理した後、銀イオンを含有する溶液で触媒化処理する方法によっても銀触媒を付与することができる。更に、下記触媒付与法4として示す新規な銀触媒付与方法を採用することもできる。これらの方法は、いずれも、銀を触媒金属として含む溶液を被めっき物に接触させる工程を含む方法である。以下、これらの方法について、より具体的に説明する。
(1)銀触媒付与法1
まず、特開平1−68478号公報に記載されている銀ヒドロゾルを用いる方法について説明する。該銀ヒドロゾルは、銀塩の水溶液を界面活性剤及び/又は水溶性高分子の存在下に還元する方法によって得ることができる。
銀塩の水溶液としては、銀(I)塩の水溶液、例えば、硝酸銀(I)、シアン化銀(I)カリウム等の水溶液を用いることができる。水溶液中での銀塩の濃度は、0.1〜5ミリモル/l程度が好ましい。
銀塩の還元処理は、還元剤を用いる公知の方法によって行うことができる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどのアルカリ金属水素化ホウ素塩、ジメチルアミンボラン等のホウ素系還元剤の他、次亜リン酸ナトリウムなどのリン系還元剤、ホルムアルデヒド、ヒドラジンなどを用いることができる。還元剤の使用量は、原料の銀塩に対して、等モル以上、好ましくは2〜4倍モル程度とすればよい。
界面活性剤及び水溶性高分子としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン性界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ−p−ノニルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子等を使用できる。これらの界面活性剤及び水溶性高分子は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、その濃度は、0.005〜0.1g/l程度とすることが好ましい。
上記した方法で得られる銀ヒドロゾルを用いて触媒を付与するには、被めっき物を該銀ヒドロゾルに接触させればよい。通常は、触媒付与方法として一般に使用されている方法、例えば、被めっき物を該銀ヒドロゾルに浸漬する方法、該銀ヒドロゾルを被めっき物に塗布した後、乾燥する方法等を適宜採用することができる。具体的な処理条件については、特に限定的ではなく、例えば、後述する触媒付与法2と同様の条件を採用できる。
(2)銀触媒付与法2
特開平10−30188号公報に記載されている無電解めっき用触媒液は、銀塩0.01〜100ミリモル/l、陰イオン界面活性剤0.01〜0.5重量%、及び銀塩に対して0.1〜0.8倍モルの還元剤を含有する水溶液である。
該触媒液では、銀塩としては、水溶性の銀化合物を用いることができ、例えば、硝酸銀、シアン酸銀、過塩素酸銀、亜硫酸銀などの無機銀塩、酢酸銀、クエン酸銀、サリチル酸銀、酒石酸銀などの有機銀塩等を用いることができる。
銀塩の水溶液中の濃度は、0.01〜100ミリモル/l程度の範囲とし、好ましくは、0.5〜50ミリモル/l程度の範囲とすればよい。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン(P.O.E)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレン(P.O.E)ステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(P.O.E)アルキルフェニルエーテルリン酸等のリン酸エステル型、タウリン誘導体、サルコシン誘導体等を用いることができる。
陰イオン界面活性剤の濃度は、触媒液中に0.01〜0.5重量%程度とし、好ましくは0.05〜0.1重量%程度とする。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン等のホウ素系還元剤の他、次亜リン酸ナトリウム等のリン系還元剤、ホルムアルヒド、グリオキシル酸等のアルデヒド化合物、アスコルビン酸、ヒドラジン等を用いることができる。
還元剤の使用量は、銀塩に対して0.1〜0.8倍モルの範囲とし、好ましくは0.1〜0.5倍モル程度とする。
該触媒液は、上記した銀塩、陰イオン界面活性剤、及び還元剤を含有する水溶液であり、各成分を配合した後、均一に攪拌することによって得ることができる。通常、銀塩及び陰イオン界面活性剤を含有する水溶液に還元剤を添加して混合攪拌する方法によって調製することが好ましい。この様にして調製した触媒液は、銀塩の一部が還元して銀微粒子となり、これが水溶液中に安定に分散したものとなる。触媒液のpHについては、1〜7程度とすることが好ましく、2〜5程度とすることがより好ましい。
上記した触媒液を用いて触媒を付与するには、被めっき物を該触媒液に接触させればよい。通常は、一般に被めっき物に無電解めっき用触媒を付与する際に行われている方法、例えば、被めっき物を触媒液に浸漬する方法、触媒液を被めっき物に塗布した後乾燥する方法等を適宜適用すればよい。特に、触媒液に浸漬する方法が好ましく、この方法によれば、被めっき物に対して簡単な操作で銀触媒を均一に付着させることができる。触媒液に浸漬する場合には、その条件については特に限定的ではないが、通常、触媒液の液温を0〜80℃程度、好ましくは15〜50℃程度として、これに被めっき物を浸漬すればよい。浸漬時間については、長時間浸漬すると、銀微粒子の吸着量が増加して無電解めっきの析出性が良好になるので、使用する無電解めっき液の種類、被めっき物の種類などに応じて、適宜必要な浸漬時間を決めればよい。通常は、30秒〜10分程度の範囲の浸漬時間とすればよい。
(3)銀触媒付与法3
特開2000−8180号公報に記載されている方法によれば、被めっき物を2価の錫イオンを含むセンシタイジング溶液と接触させてセンシタイジング処理を行った後、銀イオンを含有する溶液と接触させることによって銀触媒を付与することができる。
上記センシタイジング処理に用いるセンシタイジング溶液としては、SnCl2、SnSO4等の2価の錫塩を塩酸、硫酸等の酸溶液に溶解した、2価の錫イオンを1〜50g/l含有し、pHが1〜3程度である溶液を使用することが好ましい。この溶液による処理方法としては、通常、被めっき物を該センシタイジング溶液に接触させればよく、例えば、10〜60℃程度の溶液中に、1〜10分間程度浸漬処理することが好ましい。
銀イオンを含有する溶液としては、銀イオン濃度0.0001〜0.5モル/l程度の水溶液が好ましく、0.001〜0.1モル/l程度の水溶液がより好ましい。この場合、銀イオンを与える銀塩の例としては、硫酸銀、亜硫酸銀、チオ硫酸銀、過塩素酸銀、メタンスルホン酸銀などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上記銀イオンを主成分とする溶液には、2価の金属イオンを混合することで活性化の性能を向上させることができる。この例としては、Niイオン、Coイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、銅イオンなどを好適に使用できる。これらの使用濃度は上記銀イオンと同様である。なお、上記金属イオンに対する対アニオンとしては、硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、メタンスルホン酸イオン等が好適に使用されるが、これらに限定されるものではない。
銀イオンを含有する溶液による処理方法としては、この溶液に被めっき物を接触させればよく、通常は、該溶液中に被めっき物を浸漬すればよい。銀イオンを含有する溶液のpHは5〜11程度が適当であり、その液温は広い範囲で設定できるが、通常は15〜60℃程度とすることが好ましい。処理時間については、適宜選択できるが、通常、数秒〜数分間程度が好適である。
(4)銀触媒付与法4
本発明では、銀触媒の付与方法として、下記(i)〜(iii)の成分を水に溶解したpH2〜9の溶液からなる触媒液を用いる方法も採用できる。
(i)1価の銀化合物、
(ii)銀より卑な酸化還元電位を有し、且つ複数の原子価を取ることができ、低原子価の状態にある金属成分を含む化合物(以下、「還元剤」という場合がある)、
(iii)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、縮合リン酸、アミノカルボン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物(以下、「錯化剤」という場合がある)。
この触媒液は、従来知られていない新規な触媒液であり、安定性が良好であって、被めっき物に対する吸着性が良好であり、各種の被めっき物に優れた触媒活性を付与することができる。
該触媒では、錯化剤を配合することによって、pH2〜9という弱酸性〜中性付近の溶液中で還元剤を安定に存在させることができる。そして、該還元剤の存在によって、1価の銀化合物が還元されて銀コロイドが形成され、形成された銀コロイドは、弱酸性〜中性付近の溶液中では安定に存在するために、安定性に優れたコロイド溶液となる。また、形成される銀コロイドは、被めっき物に対する吸着性が良好であり、各種の被めっき物に対して優れた触媒活性を付与できる。
該触媒液で用いる1価の銀化合物としては、特に限定はなく、1価の銀を含む水溶性の銀化合物であればよい。この様な銀化合物としては、例えば、硝酸銀、シアン酸銀、過塩素酸銀、亜硫酸銀などの無機銀塩;酢酸銀、クエン酸銀、酒石酸銀、サリチル酸銀などの有機銀塩などを挙げることができる。
銀化合物の濃度は、0.001〜0.1モル/l程度であることが好ましく、0.01〜0.05モル/l程度であることがより好ましい。
該触媒液では、銀化合物を還元する成分として、銀より卑な酸化還元電位を有し、且つ複数の原子価を取ることができ、低原子価の状態にある金属成分を含む化合物を用いる。この様な金属成分を含む化合物を用いることによって、溶液中で金属成分が高原子価の状態となり、銀イオンが還元されて銀コロイドを形成することができる。
上記した還元剤としては、2価のスズを含む化合物、2価の鉄を含む化合物、2価のコバルトを含む化合物、3価のセリウムを含む化合物、3価のチタンを含む化合物などを用いることが好ましい。これらの化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
2価のスズを含む化合物の具体例としては、硫酸スズ、塩化スズ、蓚酸スズ、ピロリン酸スズ、酢酸スズ、ホウフッ化スズなどを挙げることができる。2価の鉄を含む化合物としては、塩化鉄、乳酸鉄、硫酸鉄、硫化鉄、蓚酸鉄、フマル酸鉄などを例示できる。2価のコバルトを含む化合物としては、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、硫化コバルト、臭化コバルト、リン酸コバルト、グルコン酸コバルト、ヨウ化コバルトなどを例示できる。3価のセリウムを含む化合物としては、硝酸セリウム、炭酸セリウム、塩化セリウム、フッ化セリウム、酢酸セリウムなどを例示できる。3価のチタンを含む化合物としては、三塩化チタン等を例示できる。
上記した還元剤の添加量は、金属分の濃度として、0.01〜3モル/l程度の範囲内であって、銀化合物に対して10〜30倍モル程度とすることが好ましい。特に、金属分の濃度として、0.1〜0.3モル/l程度であることがより好ましい。
上記触媒液には、更に、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、縮合リン酸、アミノカルボン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分(錯化剤)を配合する。これらの成分を配合することによって、銀がコロイド状態で安定に存在できる弱酸性〜中性付近の領域において、還元剤を可溶化することができ、該還元剤の還元作用による銀コロイドの形成が可能となる。
上記した錯化剤の内で、脂肪族モノカルボン酸としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸を例示できる。脂肪族ジカルボン酸としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸を例示できる。オキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸を例示できる。縮合リン酸としてはピロリン酸、トリポリリン酸などを例示できる。アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸などを例示できる。また、これらの成分の塩としては、可溶性の塩であれば特に限定なく使用でき、具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
上記した錯化剤の内で、特に、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、ピロリン酸などの縮合リン酸等が好ましい。
錯化剤の濃度は、還元剤成分に含まれる金属分に対して1〜10倍モル程度とすることが好ましく、2〜5倍モル程度とすることがより好ましい。錯化剤の濃度が低すぎる場合には、還元剤を安定に溶解することが困難となり、良好な銀コロイドが形成され難いので好ましくない。
該触媒液は、上記した各成分を水に溶解してなるpH2〜9程度の溶液である。pHがこの範囲内にあることによって、溶液中において銀が安定なコロイド状態で存在することができる。これに対して、pHが低すぎる場合には、銀が溶解し易く、コロイド状態で安定に存在することは困難である。一方、pHが高すぎると、水酸化物が形成され易くなるので好ましくない。特に、銀コロイドの安定性が良好である点で、pHは、2〜7程度であることが好ましく、4〜6程度であることがより好ましい。
上記触媒液を調製する方法については特に限定はなく、上記した銀化合物、還元剤及び錯化剤を含むpH2〜9の範囲の溶液を形成できる方法であれば良い。
例えば、まず、錯化剤を溶解した水溶液中に、還元剤を添加し、所定のpH範囲に調整する。pH調整には、例えば、NaOH、KOH等のアルカリ等を使用できる。次いで、この溶液を撹拌しながら、1価の銀化合物を徐々に添加する。この際、還元剤に含まれる金属イオンが還元剤として作用することにより銀イオンが還元されて、銀コロイド溶液が形成される。触媒液調製時の温度範囲は特に限定されないが、20〜80℃程度とすることが好ましい。この温度範囲において、攪拌、混合しながら銀コロイド溶液を調製することにより、銀コロイド粒子が微細化して吸着性が向上し、触媒液の安定性も向上する。
該触媒液には、さらに必要に応じて触媒液の性質に悪影響を与えない範囲で界面活性剤などを添加してもよい。
また、上記した方法で銀コロイド溶液を調製した後、透析法によって、該銀コロイド溶液中に含まれる金属イオン量を減少させることによって、触媒液の安定性を向上させることができる。例えば透析膜としてセルロース膜を用い、銀コロイド溶液と純水とを該透析膜を介して接触させることによって、銀コロイド溶液中に含まれる金属イオンが純水中に移動して、銀コロイド溶液中の金属イオン量を減少させることができる。透析処理に使用する透析膜(半透膜)は特に限定されず、例えば、セルロース膜、コロジオン膜、硫酸紙、セロハン紙、ゼラチンを布に浸して凝固させた膜などを使用することができる。透析方法としては、通常の透析法以外に限外ろ過法、電気透析法、これらを組み合わせた電気限外ろ過法等を適宜適用できる。
前述した方法によって銀コロイド溶液を調製した後、透析法によって金属イオン量を減少させる方法によれば、銀コロイド溶液の形成時には、銀イオンを還元するために必要十分な量の金属イオンが溶液中に存在して十分な還元作用を発揮でき、微細で安定性に優れた銀コロイドすることが可能となり、銀コロイドが生成した後は、不要な金属イオン量を減少させることによって、コロイド溶液の安定性を向上させることができる。
透析後のコロイド溶液では、コロイド溶液の安定性を向上させるためには、還元剤に基づく金属イオン量は、銀化合物に対して25倍モル程度以下とすることが好ましく、20倍モル程度以下とすることがより好ましい。透析後のコロイド溶液における金属イオンの下限値は特に限定的ではなく、金属イオンが完全に除去されるまで透析を行っても良いが、銀コロイドの吸着性を良好にするためには、銀化合物に対して5倍モル程度以上の金属イオンがコロイド溶液中に存在することが好ましい。従って、銀コロイド溶液の安定性と吸着性を両立するためには、透析後の金属イオン量は、銀化合物に対して5〜25倍モル程度とすることが好ましく、5〜20倍モル程度とすることがより好ましい。
透析後のコロイド溶液では、pHが上昇する傾向があり、pH2〜9程度の範囲において良好な安定性を有するものとなる。特に、透析後のコロイド溶液では、pH4〜9程度において、良好な安定性を発揮できる。
該触媒液を用いて無電解めっき用触媒を付与するには、被めっき物を該触媒液に接触させれば良い。通常は、被めっき物に無電解めっき用触媒を付与する際に一般的に行われている方法、例えば、触媒液に浸漬する方法、触媒液を被めっき物に塗布した後乾燥する方法等を適宜適用すればよい。特に、触媒液に浸漬する方法が好ましく、この方法によれば、被めっき物に対して簡単な操作で触媒を均一に付与することができる。
該触媒液に浸漬する場合の条件については特に限定的ではないが、通常、触媒液の温度を10〜80℃程度、好ましくは20〜50℃程度として、これに被めっき物を浸漬すればよい。
浸漬時間については、無電解めっき液の種類などに応じて、適宜必要な浸漬時間を設定すればよい。通常は2〜10分間程度の範囲の浸漬時間とすればよい。
無電解めっき
上記した方法で無電解めっき用触媒を付与した後、常法に従って、無電解めっきを行うことにより、均一で良好な外観の無電解めっき皮膜を形成することができる。
無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液をいずれも使用できる。この様な無電解めっき液としては、例えば、無電解ニッケルめっき液、無電解銅めっき液等の他、Au、Ag、Pd、Rh等の貴金属の無電解めっき液を挙げることができる。
被めっき物の種類についても特に限定されず、例えば、プリント基板などの金属−非導電性物質複合材料、プラスチック、セラミックス、ガラスなどの非導電性物質、紙、布などの繊維状物質、金属、金属酸化物等を用いることができる。
本発明の前処理剤を用いて被めっき物の前処理を行った後、触媒を付与する方法によれば、無電解めっきの析出性を大きく向上させることができる。特に、安価な触媒物質である銀化合物を用いる場合であっても、無電解めっきの析出性を大きく向上させて、未析出部分の発生やめっき皮膜の外観ムラを抑制できるので、無電解めっきに要する処理コストを大きく低減できる点で非常に有利である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
製造例1
下記の方法によって、前処理用組成物、触媒液及び活性化液を調製した。
前処理用組成物1の調製
下記式
Figure 2005082879
で表される繰り返し単位からなるジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物(日東紡績(株)製、商標名:PAS−H−5L、重量平均分子量約40,000)1gを純水800ミリリットルに溶解し、更に、ニトリロ三酢酸3ナトリウム塩20ミリモルとノニオン界面活性剤である高級アルコールのアルキレンオキシド付加物1gを溶解し、純水で全量を1リットルとした。これを前処理用組成物1とする。
前処理用組成物2の調製
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物に代えて、下記式
Figure 2005082879
で表される繰り返し単位を含むジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物(日東紡績(株)製、商標名:PAS−J−81、重量平均分子量約200,000)を1g用い、それ以外は前処理用組成物1と同様にして前処理用組成物2を調製した。
前処理用組成物3(比較用)の調製
ニトリロ三酢酸3ナトリウム塩に代えてモノエタノールアミンを20ミリモル用い、それ以外は、前処理用組成物1と同様にして前処理用組成物3を調製した。
銀触媒液1の調製
ピロリン酸カリウム0.3モルを純水800mlに溶解し、これに硫酸スズ0.2モルを加えて攪拌し溶解させて、液温50℃に保持した。この溶液中に、硝酸銀0.01モルを純水200mlに溶解した溶液を攪拌しながら加え、50℃で30分間加熱、攪拌を行った。硝酸銀水溶液を添加すると直ちにスズ溶液は黒色を示した。これを銀触媒液1とする。
銀触媒液2の調製
硝酸銀0.02モルを純水800mlに溶解し、これにドデシル硫酸ナトリウム100mgを純水100mlに溶解した溶液を攪拌しながら加えた。この溶液中に、水素化ホウ素ナトリウム0.008モルを純水100mlに溶解した溶液を攪拌しながら加えた。溶液の色が赤褐色に急変したところで攪拌を終了した。これを銀触媒液2とする。
銀触媒用活性化液の調製
炭酸ナトリウム0.5モルを純水1リットルに溶解した。これを銀触媒用活性化液とする。
実施例1及び2
両面銅張りガラスエポキシ基板にスルーホールを形成したスルーホール基板(穴径0.8mm、板厚1.6mm、2.5×5cm)とエポキシ板(2.5×5cm)をそれぞれ被めっき物として用い、下記表1に示す前処理用組成物及び触媒液を用いて、次の工程で無電解めっきを行った。各処理液の液量は500mlとした。各処理の間には水洗を行った。
1.表面調整(コンディショニング)
60℃の前処理用組成物中に5分間浸漬した。
2.銀触媒付与:
30℃の触媒液中に5分間浸漬して触媒を付与した。
3.活性化処理:
40℃の活性化液中に5分間浸漬した。
4.無電解めっき:
無電解銅めっき液(商標名:TSP-810、奥野製薬工業(株)製)を用いて、pH12.5のめっき浴中に45℃で5分間浸漬した。
上記した方法で形成された各無電解めっき皮膜について、被覆率(%)の測定結果を下記表1に示す。エポキシ板を被めっき物とした場合については、エポキシ板の表面積を基準としてめっき皮膜が形成された面積の割合を被覆率とした。スルーホール基板を被めっき物とした場合については、スルーホールの断面積を基準として、めっき皮膜が形成された面積の割合を被覆率とした。
実施例3
触媒液としてパラジウム触媒液(奥野製薬工業(株)製、商標名:OPC−80キャタリストM)を用い、活性化液としてパラジウム触媒用活性化液(奥野製薬工業(株)製、商標名:OPC−505アクセレーター)を用いて、これ以外は、実施例1と同様の工程により無電解めっきを行った。めっき皮膜の被覆率(%)を下記表1に示す。
比較例1
実施例1で用いた前処理用組成物1に代えて、製造例1で作製した前処理用組成物3を用い、これ以外は、実施例1と同様の工程により無電解めっきを行い、皮膜被覆率を測定した。結果を下記表1に示す。
比較例2
製造例1で作製した前処理用組成物3、パラジウム触媒液(奥野製薬工業製(株)製、商標名:OPC−80キャタリスト)、パラジウム触媒用活性化液(奥野製薬工業製(株)製、商標名:OPC−505アクセレーター)を用い、実施例1と同様の工程により無電解めっきを行い、皮膜被覆率を評価した。結果を下記表1に示す。
Figure 2005082879
以上の結果から明らかなように、本発明の前処理用組成物である前処理用組成物1又は2を用いる場合には、銀触媒を用いる場合であっても、無電解めっきの析出性が非常に良好となることが判る。

Claims (6)

  1. 四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、並びにニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する水溶液からなる無電解めっきの前処理用組成物。
  2. 四級化ポリビニルイミダゾールが、四級化されたN−ビニルイミダゾールを構成モノマーとして含む重合体であり、ポリジアリルアンモニウム塩が、下記式(1)
    Figure 2005082879
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、ベンジル基又はシクロアルキル基である。A-は一価のアニオンである。)で表されるジアリルアンモニウム塩を構成モノマーとして含む重合体である請求項1に記載の無電解めっきの前処理用組成物。
  3. 四級化ポリビニルイミダゾール及びポリジアリルアンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物を0.1g/l〜20g/lと、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、グリシン、スルファミン酸、アミノメチルスルホン酸、タウリン及びこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を1ミリモル/l〜500ミリモル/l含有する水溶液である請求項1又は2に記載の無電解めっきの前処理用組成物。
  4. 被めっき物を請求項1〜3のいずれかに記載の前処理用組成物に接触させることを特徴とする無電解めっきの前処理方法。
  5. 被めっき物を請求項1〜3のいずれかに記載の前処理用組成物に接触させた後、該被めっき物に無電解めっき用触媒を付与し、次いで無電解めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法。
  6. 無電解めっき用触媒を付与する方法が、銀を触媒金属として含む溶液を被めっき物に接触させる工程を含む方法である請求項5に記載の無電解めっき方法。
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