JP2005079993A - 薄膜圧電共振器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 良好な共振動作を可能にし、さらには、Si基板上への直接的な実装を可能にして薄膜プロセスでの形成を可能にした、薄膜圧電共振器を提供する。
【解決手段】 基体31上に共振子33を有してなる薄膜圧電共振器30である。共振子33の圧電薄膜5が、ロンボヘドラル構造でありかつ擬立方晶(100)に配向したチタン酸ジルコン酸鉛によって形成されている。基体上にイオンビームアシスト法で形成されたバッファ層3と、バッファ層3上に形成されたペロブスカイト型の下部電極4と、下部電極4上に形成された圧電薄膜5と、圧電薄膜5上に形成された上部電極6とを有して構成されているのが好ましい。
【選択図】 図1
Description
従来、このような薄膜圧電共振器においては、その共振子を構成する圧電薄膜として、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)が用いられていた。一方、チタン酸鉛(PbTiO3)やチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)は、酸化亜鉛や窒化アルミニウムより大きな電気機械結合係数(k2)を有することが、圧電セラミックスの分野では知られている。
このような背景から、圧電薄膜としてチタン酸鉛を用いた薄膜圧電共振器の研究もなされている(例えば、非特許文献1参照)。
三須他,圧電材料・デバイスシンポジウム 2003.,p.35−p.38
しかしながら、前記の研究においては、特に圧電薄膜の結晶構造については特に言及されておらず、したがって圧電薄膜の電気機械結合係数についても何等考慮がなされていない。
この薄膜圧電共振器によれば、共振子の圧電薄膜として、ロンボヘドラル構造でありかつ擬立方晶(100)に配向したチタン酸ジルコン酸鉛を用いているので、このような結晶構造を有することでこのチタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電薄膜が高い電気機械結合係数を有するものとなり、したがって例えばGHz帯で良好に動作するものとなる。
このようにすれば、基体としてSi基板を用いた場合にも、イオンビームアシスト法で形成されたバッファ層を介して前記下部電極、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電薄膜が積層されるので、このチタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電薄膜がSi基板の自然酸化膜上に直接的に作り込まれるようになり、したがってその加工等において薄膜プロセスが採用可能となり、薄膜圧電共振器の小型化などが容易になる。
このようにすれば、この下部電極上にロンボヘドラル構造でありかつ擬立方晶(100)配向のチタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電薄膜が、エピタキシャル成長で良好に形成されるようになる。
このようにすれば、この下部電極上にロンボヘドラル構造でありかつ擬立方晶(100)配向のチタン酸ジルコン酸鉛をより良好に形成することが可能になる。
ペロブスカイト型結晶構造のチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)では、そのAサイトに位置するPbが蒸発して結晶構造中から抜け、結晶欠陥が生じやすくなっている。Pbが結晶構造中から抜けて結晶欠陥が生じると、この結晶は電気的に中性でなくなり、絶縁性が損なわれて電流リークが生じ易くなってしまう。そこで、ZrまたはTiより価数の高い金属元素をBサイトのZrまたはTiと置換させることで、結晶構造全体としての中性を保持することができ、これにより絶縁性を高めて電流リークを防止することができる。
1%未満では、添加による電流リーク防止効果が良好とならず、35%を越えても、それ以上は電流リーク防止効果の向上があまり期待できないからである。
このようにすれば、ダイアフラム型の薄膜圧電共振器となり、より良好な共振動作をなすものとなる。
このようにすれば、エアギャップ型の薄膜圧電共振器となり、より良好な共振動作をなすものとなる。
図1は本発明の薄膜圧電共振器の一実施形態を示す図であり、図1中符号30は薄膜圧電共振器である。この薄膜圧電共振器30は、特に通信用素子や通信用フィルタとして用いられるダイアフラム型のもので、単結晶シリコン基板からなる基体31上に、弾性板32を介して共振子33を形成したものである。
基体31は、(110)配向した厚さ200μm程度の単結晶シリコン基板からなるもので、その底面側(共振子32と反対の側)には、該基体31の底面側から上面側にまで貫通するビアホール34が形成されている。
第1バッファ層7は、特に本発明においてイオンビームアシスト法で形成されたバッファ層となるものであって、本実施形態では立方晶(100)配向のイットリア安定化ジルコニア(以下、YSZ)からなり、厚さが例えば1μm程度に厚く形成されたものである。ただし、YSZとしては、以下の式で表されるものが任意に用いられる。
Zr1−xLnxOy 0≦x≦1.0
(Ln;Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)
第2バッファ層8は、立方晶(100)配向のCeO2からなるもので、第1バッファ層7上にエピタキシャル成長させられて厚さが例えば100nm程度に形成されたものである。
また、このようなバッファ層3からなる弾性板32としては、例えば基体31上に窒化シリコン(SiN)を厚さ200nm程度に形成し、さらにその上に二酸化シリコン(SiO2)を厚さ400nm〜3μm程度に形成しておき、これらの上に前記バッファ層3を形成して、これら窒化シリコンと二酸化シリコンとバッファ層3との積層膜を弾性板32としてもよい。
ペロブスカイト型結晶構造のPb(Zr,Ti)O3では、そのAサイトに位置するPbが蒸発して結晶構造中から抜け、結晶欠陥が生じやすくなっている。Pbが結晶構造中から抜けて結晶欠陥が生じると、この結晶は電気的に中性でなくなり、絶縁性が損なわれて電流リークが生じ易くなってしまう。そこで、ZrやTiより価数の高い金属元素をBサイトのZrまたはTiと置換させることで、結晶構造全体としての中性を保持することができ、これにより絶縁性を高めて電流リークを防止することができる。
また、前記弾性板32上には図1に示したように電極35が形成されており、この電極35上には、パッド36を介して金等からなる配線37が設けられている。この配線37は上部電極6上に形成されたパッド38に接続されている。このような構成のもとに上部電極6および下部電極4は、いずれも弾性板32上に形成された配線(図示せず)を介して、電源(図示せず)に接続するようになっている。
続いて、この基体31を基板ホルダーに装填し、真空装置(図示せず)内に設置する。この真空装置内には、基体31に対向して、前記バッファ層7、8、9の構成元素を含む各ターゲット(バッファ層用ターゲット)、および下部電極4、圧電薄膜5、上部電極6の構成元素を含む各ターゲット、を所定距離、離間して配置しておく。ここで、各ターゲットとしては、目的とする第1バッファ層7、第2バッファ層8、第3バッファ層9、下部電極4、圧電薄膜5、上部電極6の各組成と同一または近似した組成のものがそれぞれ好適に用いられる。
また、これとほぼ同時に、基体31の表面に対して、イオンビームを後述する所定角度で照射(入射)し、イオンビームアシストを行う。すると、基体31表面に自然酸化膜が形成されているにもかかわらず、該基体31上に、立方晶(100)配向のYSZがエピタキシャル成長によって形成される。
レーザー光の周波数としては、30Hz以下とするのが好ましく、15Hz以下とするのがより好ましい。
レーザー光のエネルギー密度としては、0.5J/cm2以上とするのが好ましく、2J/cm2以上とするのがより好ましい。
また、イオンビームの照射量としては、1〜30mA程度とするのが好ましく、5〜15mA程度とするのがより好ましい。
また、基体31とターゲットとの距離としては、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
真空装置内の雰囲気としては、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
第1バッファ層7の形成条件をそれぞれ前記範囲とすれば、第1バッファ層7をエピタキシャル成長によってより効率よく形成することができる。
なお、この第2バッファ層8を形成するための、レーザーアブレーション法等の条件については、前記の第1バッファ層7形成の際の、レーザーアブレーション法等の条件と同様とする。
レーザー光のエネルギー密度としては、0.5J/cm2以上とするのが好ましく、2J/cm2以上とするのがより好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、この温度を、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのが好ましい。
第2バッファ層8が形成された基体31とターゲットとの距離としては、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、真空装置内の圧力を、133×10−1Pa(1×10−1Torr)以下とするのが好ましく、133×10−3Pa(1×10−3Torr)以下とするのがより好ましい。また、この場合、真空装置内の雰囲気としては、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
また、このとき、レーザー光およびイオンビームの照射時間を適宜設定することにより、第3バッファ層9の平均厚さを前記厚さ、すなわち30nm程度に調整することができる。このレーザー光の照射時間は、前記各条件によっても異なるものの、通常、3〜90分程度とするのが好ましく、15〜45分程度とするのがより好ましい。
なお、この下部電極4の形成においても、前記第3バッファ層9の形成工程と同様に、必要に応じてイオンビームアシストを用いるようにしてもよい。すなわち、第3バッファ層9の表面にイオンビームを照射しつつ、これの上に下部電極4を形成するようにしてもよい。イオンビームアシストを用いることで、より効率よく下部電極4を形成することができる。
なお、この圧電薄膜5の形成においても、前記第3バッファ層9の形成工程と同様に、必要に応じてイオンビームアシストを用いるようにしてもよい。すなわち、下部電極4の表面にイオンビームを照射しつつ、これの上に圧電薄膜5を形成するようにしてもよい。イオンビームアシストを用いることで、より効率よく圧電薄膜5を形成することができる。
なお、この上部電極6の形成においても、前記第3バッファ層9の形成工程と同様に、必要に応じてイオンビームアシストを用いるようにしてもよい。すなわち、圧電薄膜5の表面にイオンビームを照射しつつ、これの上に上部電極6を形成するようにしてもよい。イオンビームアシストを用いることで、より効率よく上部電極6を形成することができる。
具体的には、ビアホール34を形成すべき位置に合せてマスク層を形成し、その後、例えば平行平板型反応性イオンエッチング、誘導結合型方式、エレクトロンサイクロトロン共鳴方式、ヘリコン波励起方式、マグネトロン方式、プラズマエッチング方式、イオンビームエッチング方式等のドライエッチング、または、5重量%〜40重量%程度の水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の高濃度アルカリ水溶液によるウエットエッチングを行う。
その後、上部電極6と電極35との間を接続するパッド36及び配線37を形成し、薄膜圧電共振器30を得る。
さらに、単結晶シリコン基板からなる基体31に弾性板32(バッファ層3)や共振子33を直接作り込むことができ、したがってこれらの加工等を薄膜プロセスで行うことができることから、小型化、微細化への対応が可能になる。また、他の半導体素子とともに同一基板上に実装することなどによって高密度化が可能になり、したがって特に携帯電話などの小型化が要求される無線通信機器に用いる場合に有利なものとなる。
すなわち、この薄膜圧電共振器40は、(110)配向した単結晶シリコン基板からなる基体41上に、共振子42を形成したものである。この共振子42は、前述した下部電極4、圧電薄膜5、上部電極6と同じ材質からなる下部電極44、圧電薄膜45、上部電極46によって形成されたもので、特にエアギャップ43上にてこれら下部電極44、圧電薄膜45、上部電極46が積層されたことにより、形成されたものである。
次に、この犠牲層を覆ってバッファ層3、すなわち前述した第1のバッファ層と第2のバッファ層と第3のバッファ層とをこの順に形成する。なお、これに先だって窒化シリコンと二酸化シリコンとを形成しておき、あるいは二酸化シリコンのみを形成しておいてもよい。続いて、これらバッファ層を所望形状にパターニングする。
次いで、下部電極44を覆って圧電薄膜45となる層を形成し、さらにこれをドライエッチング等でパターニングすることにより、圧電薄膜45を形成する。
次いで、圧電薄膜45を覆って上部電極46となる層を形成し、さらにこれをドライエッチング等でパターニングすることにより、上部電極46を形成する。なお、このようにして犠牲層の上に、バッファ層3、下部電極44、圧電薄膜45、上部電極46をそれぞれパターニングして形成することにより、犠牲層はその一部が外側露出したものとなる。
その後、前記犠牲層を例えば過酸化水素水(H2O2)でエッチングするで基体41上から除去し、これによってエアギャップ43を形成することにより、薄膜圧電共振器40を得る。
なお、本実施形態においても、下部電極44としてペロブスカイト型の電極に代えてPt(白金)を用いることもでき、その場合に、下部電極4の下地としてバッファ層3に代えて窒化シリコンと二酸化シリコンとを用いてもよい。
さらに、単結晶シリコン基板からなる基体41に弾性板47(バッファ層3)や共振子42を直接作り込むことができ、したがってこれらの加工等を薄膜プロセスで行うことができることから、小型化、微細化への対応が可能になる。また、他の半導体素子とともに同一基板上に実装することなどによって高密度化が可能になり、したがって特に携帯電話などの小型化が要求される無線通信機器に用いる場合に有利なものとなる。
7…第1バッファ層、8…第2バッファ層、9…第3バッファ層、
30、40…薄膜圧電共振器、31、41…基体、32、47…弾性板、
33、42…共振子、34…ビアホール、43…エアギャップ
Claims (11)
- 基体上に共振子を有してなる薄膜圧電共振器であって、
前記共振子の圧電薄膜が、ロンボヘドラル構造でありかつ擬立方晶(100)に配向したチタン酸ジルコン酸鉛によって形成されていることを特徴とする薄膜圧電共振器。 - 基体上にイオンビームアシスト法で形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成されたペロブスカイト型の下部電極と、前記下部電極上に形成された前記圧電薄膜と、前記圧電薄膜上に形成された上部電極とを有してなることを特徴とする請求項1記載の薄膜圧電共振器。
- 前記ペロブスカイト型の下部電極は、(100)配向でエピタキシャル成長したものであることを特徴とする請求項2記載の薄膜圧電共振器。
- 前記ペロブスカイト型の下部電極は、SrRuO3、Nb−SrTiO3、La−SrTiO3、(La,Sr)CoO3のうちから選択された少なくとも一種からなることを特徴とする請求項2又は3記載の薄膜圧電共振器。
- 前記チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電薄膜の結晶構造がペロブスカイト型になっており、この結晶構造中のBサイトに位置する金属として、ZrまたはTiに置換してこれらより価数の高い金属元素が添加されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜圧電共振器。
- 前記ZrまたはTiより価数の高い金属元素が、V、Nb、Ta、Wのうちから選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項5記載の薄膜圧電共振器。
- 前記ZrまたはTiより価数の高い金属元素が、Pb(Zr,Ti)O3からなる圧電薄膜を構成する結晶構造中の全Bサイトに対して、1〜35%の割合を占めて置換されるよう添加されていることを特徴とする請求項5又は6記載の薄膜圧電共振器。
- 前記基体には、前記共振子が形成された側と反対の側にビアホールが形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜圧電共振器。
- 前記基体と共振子との間に弾性板が形成されていることを特徴とする請求項8記載の薄膜圧電共振器。
- 前記基体と共振子との間にエアギャップが形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜圧電共振器。
- 前記基体と共振子との間に弾性板が形成されていることを特徴とする請求項10記載の薄膜圧電共振器。
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