JP2005076846A - 自動変速機の変速制御装置及び自動変速機の変速制御方法 - Google Patents

自動変速機の変速制御装置及び自動変速機の変速制御方法 Download PDF

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Hiroki Murata
宏樹 村田
Yoshinobu Hashimoto
佳宜 橋本
Taro Aoyama
太郎 青山
Koji Yoshizaki
康二 吉崎
Shizuo Sasaki
静夫 佐々木
Kazuhisa Inagaki
和久 稲垣
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Abstract

【課題】低μ路面走行時における駆動輪の駆動力変化を抑制すること。
【解決手段】MMT12の走行モードにSnowモードが選択され(ステップS101;Yes)、アクセルの戻し量δTAがδTA0以下である場合には(ステップS102;No)、MMT12のシフトチェンジを禁止する(ステップS103)。アクセルの戻し量δTAが所定の閾値δTA0(例えば5%)よりも大きい場合には(ステップS102;Yes)、がMMT12のシフトアップのみを許可する(ステップS104)。
【選択図】 図3

Description

この発明は、自動変速機の制御に関し、さらに詳しくは、低μ路面等のタイヤがスリップしやすい路面の走行時における駆動輪の駆動力変化を抑制できる自動変速機の変速制御装置及び自動変速機の変速制御方法に関する。
車両に搭載される自動変速機は、路面状況や運転条件等に基づいてドライバーが走行モードを切り替えることにより、路面状況等に適した変速スケジュールが選択される。特に、雪道のような滑りやすい路面を走行する場合には、いわゆるSnowモードと呼ばれる走行モードを選択して、駆動輪のスリップを最小限に抑えるように自動変速機を制御する変速スケジュールが適用される。例えば、特許文献1には、Snowモードが指示されている場合には、燃料供給停止を禁止し、変速比制御領域の最小変速比を最大変速比側に変更する無段変速機の制御装置が開示されている。
特開平11−78618号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術でも、自動変速機にしたがって変速すると、ドライバーの意図しないタイミングで変速されることに起因する駆動力変化によって、駆動輪スリップを招くおそれがあった。また、ドライバーの意図しないタイミングで変速されると、駆動輪の駆動力変化によってドライバビリティを低下させるという問題もあった。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低μ路面走行時等における駆動輪の駆動力変化を抑制すること、ドライバーの意図した駆動輪の駆動力変化を与えることのうち少なくとも一つを達成できる自動変速機の変速制御装置及び自動変速機の変速制御方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、車両に搭載される自動変速機の変速スケジュールを制御するものであって、通常の走行モードと、タイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードとを切り替える走行モード切替部と、前記走行モード切替部がタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードに切り替えた場合には、前記自動変速機の変速を禁止する変速スケジュール制御部と、を有することを特徴とする。
この自動変速機の変速制御装置では、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面(例えば雪道や泥濘路等といった低μ路面)に適した走行モードが選択された場合には、自動変速機の変速を禁止する。これにより、ドライバーが意図しないタイミングで変速されることはなくなるので、駆動力の急激な変化が抑制される。その結果、前記タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、上記自動変速機の変速制御装置において、さらに、前記変速スケジュール制御部は、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、前記自動変速機の変速をシフトアップのみ許可することを特徴とする
この自動変速機の変速制御装置では、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、自動変速機の変速を許可する。アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合は、ドライバーが自己の意思で変速(シフトアップ)を実行する場合であると推定できる。したがって、かかる場合にシフトアップを実行すれば、ドライバーが意図した通りの駆動力を得ることができるので、ドライバビリティが向上する。また、シフトアップのみを許容することにより駆動輪の駆動力が低減されるので、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、上記自動変速機の変速制御装置において、さらに、前記自動変速機の変速時には、エンジンの出力トルクを徐々に変化させるエンジン出力トルク制御部を有することを特徴とする。
この自動変速機の変速制御装置では、変速時においては、徐々にエンジンの出力トルクが変化するように制御する。これにより、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、上記自動変速機の変速制御装置において、前記変速スケジュール制御部は、前記車両が少なくとも登坂時又はカーブ走行時であるときは、前記自動変速機の変速を禁止することを特徴とする。
この自動変速機の変速制御装置では、雪道等の低μ路面の登坂中やカーブ走行中のように、駆動輪の駆動力変化に起因して駆動輪のスリップを誘発しやすい状況においては変速を禁止する。これによって、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御方法は、自動変速機を搭載した車両の走行モードを判定する走行モード判定工程と、当該走行モード判定工程によって判定された走行モードがタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードである場合には、前記自動変速機の変速を禁止する変速制限工程と、を有することを特徴とする。
この自動変速機の変速制御方法では、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面に適した走行モードが選択された場合には、自動変速機の変速を禁止するように制御する。これにより、ドライバーが意図しないタイミングで変速されることがなくなるので、駆動力の急激な変化が抑制される。その結果、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御方法は、上記自動変速機の変速制御方法において、前記車両の走行モードがタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードであっても、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、前記自動変速機の変速をシフトアップのみ許可することを特徴とする。
この自動変速機の変速制御方法では、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、自動変速機の変速を許可するように制御する。アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合は、ドライバーが自己の意思で変速(シフトアップ)を実行する場合であると推定できる。したがって、かかる場合にシフトアップを実行すれば、ドライバーが意図
した通りの駆動力を得ることができるので、ドライバビリティが向上する。また、シフトアップのみを許容することにより駆動輪の駆動力が低減されるので、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御方法は、上記自動変速機の変速制御方法において、前記自動変速機の変速時には、エンジンの出力トルクを徐々に変化させることを特徴とする。
この自動変速機の変速制御方法では、変速時においては、徐々にエンジンの出力トルクが変化するように制御する。これにより、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
以上説明したように、この発明に係る自動変速機の変速制御装置及び変速制御方法では、タイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードが選択された場合には、自動変速機の変速を禁止するようにした。これにより、タイヤのスリップが発生しやすい路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御装置及び変速制御方法では、さらに、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、自動変速機の変速を許可するようにした。これによって、ドライバーが意図した通りの駆動力を得ることができるので、ドライバビリティが向上する。また、変速によって駆動輪の駆動力が低減されるので、タイヤのスリップが発生しやすい路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
また、次の本発明に係る自動変速機の変速制御装置及び変速制御方法では、さらに、変速時においては、徐々にエンジンの出力トルクが変化するようにした。これにより、タイヤのスリップが発生しやすい路面を走行しているときでも、駆動輪のスリップを未然に防止して安定した運転を実現することができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下の説明では、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車やトラック等の車両に本発明を適用した例について説明するが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。例えば、ガソリンエンジンを搭載した車両やハイブリッド車両に対しても適用できる。
実施例1の本発明は、自動変速機の変速制御を実行するにあたり、例えば低μ路面のように、タイヤのスリップが発生しやすい状況の路面を走行する場合の走行モードが選択された場合には、原則として自動変速を禁止するとともに、アクセルの戻し量が予め定めた閾値よりも大きい場合にはシフトアップを許可する点に特徴がある。ここでタイヤのスリップが発生しやすい状況の路面には、雪道、濡れた路面、泥濘路等のような低μ路面の他、上り坂や下り坂等の坂道、あるいは前記低μ路面と前記坂道とが組み合わされた路面等が含まれ、雪道等の低μ路面に限られない。
図1は、実施例1に係る本発明を適用できる車両の概略構成を示す説明図である。前輪駆動車であるである車両10の車両前部には、走行駆動源としてディーゼルエンジン11が搭載されている。なお、前輪駆動車のみならず、後輪駆動車や全輪駆動車に対しても本発明は適用できる。このディーゼルエンジン11は、ターボ過給気を備えており、さらにディーゼルエンジン11の排気通路には、排ガス中のディーゼルパティキュレート及びNOxを浄化するために、NOx触媒を担持したパティキュレートフィルタが設けられている。
ディーゼルエンジン11で発生する駆動力は、マルチモードトランスミッション(以下MMT)12、トランスファ15及びドライブシャフト14を介して、主駆動輪としての前輪13に伝達される。後輪18は、駆動輪である前輪13に従動する。図2−1、図2−2は、実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御装置を適用した駆動部を示す説明図である。図2−1に示すように、MMT12は、走行状態に応じてギヤ段の変速操作を変速用アクチュエータ32で自動制御するものである。ディーゼルエンジン11とMMT12との間には、両者間の動力伝達を断続するためのクラッチ12aが設けられており、車両10の発進・停止時やMMT12の変速時には、クラッチ用アクチュエータ30によってクラッチ12aが断続される。このように、MMT12にトルクコンバータは使用されない。
クラッチ用アクチュエータ30及び変速用アクチュエータ32は、実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御装置20によって制御される。変速制御装置20は、処理部20aと記憶部20rとを有しており、処理部20aが実施例1の本発明に係る変速制御方法を実行する。変速制御装置20の記憶部20rには、走行条件に応じた複数の走行モードが格納されている。記憶部20rに格納される走行モードには、例えば、雪道や泥濘路等の低μ路面を走行するときの走行モードや、燃費を重視した走行モード等がある。
図2−2に示すように、処理部20aは、走行モード切替部20mと、変速スケジュール制御部20sと、エンジン出力トルク制御部20eとを有する。走行モード切替部20mは、例えばドライバーからの走行モード切替指令によって、走行モードを切り替える。変速スケジュール制御部20sは、切り替えられた走行モードに応じた変速スケジュールで、MMT12を変速する。エンジン出力トルク制御部20eは、変速時におけるディーゼルエンジン11の出力トルクの増減を制御して、滑らかに変速が実行されるように制御する。
なお、記憶部20rは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。また、処理部20aは専用のハードウエアにより実現されて、前記走行モード切替部20mや変速スケジュール制御部20s等の機能を実現するものであってもよい。さらに、この処理部20aは、メモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、前記走行モード切替部20mや変速スケジュール制御部20s等の機能を実現するためのプログラム(図示省略)をメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
ECU(Engine Control Unit)31は、アクセルポジションセンサ40からの信号に基づき、ディーゼルエンジン11の出力を制御する。このとき、ECU31はエアフローセンサ42からの空気流量に応じて燃料fの量を求める。燃料噴射弁44は、この算出された燃料噴射量に応じた燃料fをディーゼルエンジン11の各気筒内に噴射する。次に、実施例1の本発明に係る変速制御方法について説明する。
図3は、実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御方法においては、低μ路面として雪道を例にとって説明するが、低μ路面には泥濘路や雨天時の路面等も含まれる。MMTはトルクコンバータを使用せず、クラッチ12aを介してディーゼルエンジン11の出力を断続する。このため、雪道や泥濘路のような低μ路面の走行時においては、クラッチ12aの断続時における駆動輪の駆動力変化によってスリップを招くおそれがある。また、雪道や泥濘路のような低μ路面を走行しているときに、ドライバーの意図しないタイミングで変速されるとスリップするおそれがある。本発明は、かかるMMT12の問題点を解消すべく、滑りやすい路面の走行時においては駆動輪の駆動力変化を抑制し、また、ドライバーの意図した駆動輪の駆動力変化を与えるようにMMT12を制御するものである。
まず、MMT12の走行モードとして、雪道(低μ路面)に対応した走行モード、すなわちSnowモードが選択される(ステップS101;Yes)。このとき、走行モード切替部20mは、MMT12の走行モードをSnowモードに切り替え、記憶部20rからSnowモードの変速スケジュールを取得する。そして、アクセル41の戻し量δTAがδTA0以下である場合には(ステップS102;No)、変速スケジュール制御部20sがMMT12のシフトチェンジを禁止する(ステップS103)。このように制御することによって、ドライバーの予期しないタイミングでのシフトチェンジが抑制される。その結果、駆動力変化が発生せず、駆動輪のスリップを未然に防止することができる。なお、Snowモードが選択されない場合には(ステップS101;No)、本発明に係る変速制御を実行しない。
アクセル41の戻し量δTAが所定の閾値δTA0(例えば5%)よりも大きい場合には(ステップS102;Yes)、変速スケジュール制御部20sがMMT12のシフトアップのみを許可する(ステップS104)。例えば、アクセル開度が30%から20%に戻された場合、その戻し量は10%であるから、閾値δTA0(=5%)よりも大きいため、シフトアップが許可される。すなわち、アクセル41の戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、ドライバーが自己の意思によりアクセル開度を低減して駆動力低減指示を出したと判断できる。このようなタイミングであれば、シフトアップを許可しても、そのタイミングをドライバーが十分に予測できるため、クラッチ12aを切りシフトアップすることによって駆動力が変化したとしても、不測の事態に陥ることはない。このように制御することで、駆動輪の駆動力が未然に低減されて、ドライバーが意図した通りの駆動力変化を与えることが可能になるとともに、雪道等のように滑りやすい路面でのスリップを未然に抑制することができる。なお、シフトアップをするように制御するので、前記ステップS104においては、アクセル41が全閉となるまで戻される状態は含まない。
シフトアップが許可されたら(ステップS104)、変速スケジュール制御部20sは、アクセル開度、車速等から判断して、最適な変速段に変速する(ステップS105)。このとき、変速制御装置20の処理部20aに備えられるエンジン出力トルク制御部20eは、ディーゼルエンジン11の出力トルクが徐々に変化するように制御する(ステップS106)。このように制御することによって、シフトアップ時の駆動力変化が抑制されるので、雪道等のように滑りやすい路面でのスリップを未然に抑制することができる。次に、変速制御装置20の処理部20aは、車両10の運転が終了したか否かを判断し、運転が終了していない場合には(ステップS107;No)、処理手順の冒頭に戻って再び走行モードを判定してMMT12を制御する。運転が終了した場合には(ステップS107;Yes)、すべての処理手順が終了する。なお、運転の終了は、エンジンのON−OFFによって判断することができる。次に、シフトアップ時におけるディーゼルエンジン11の出力トルク制御方法について説明する。
図4は、エンジンの出力トルクを徐々に変化させるために燃料噴射量の増減代を変更し
た例を示す説明図である。図4では、通常の変速線マップに基づいた本来のエンジン出力を破線で表示するとともに、実施例1の本発明に係る変速制御方法によるシフトアップ時のエンジン出力を実線で示してある。また、説明の便宜上、グラフ上に点a、b、c、d、e、f及びgを付す。実施例1に係る本発明においては、急激な駆動力変化を抑制するため、変速前における燃料噴射量の低減代(実線a−bのマイナス勾配)を、通常の変速線マップに基づいた低減代(破線a−eのマイナス勾配)よりも小さくすることが好ましい。このようにすることで、ディーゼルエンジン11の出力を徐々に抜くことができるので、シフトアップ時における駆動力変化を低減することができる。なお、変速前における燃料噴射量の低減代(実線a−bのマイナス勾配)を、通常の変速線マップに基づいた低減代(破線a−eのマイナス勾配)と同等にすることを禁ずるものではない。
MMT12のシフトアップが完了したら、燃料噴射量を大きくしてディーゼルエンジン11の出力を上昇させる。このときには、急激な駆動力変化を抑制するため、変速後における燃料噴射量の増加代(実線c−dのプラス勾配)を、通常の変速線マップに基づいた増加代(破線f−gのプラス勾配)よりも小さくする。すなわち、通常の変速線マップに基づいた本来のディーゼルエンジン11の出力増加と比較して、ディーゼルエンジン11の出力を緩やかに立ち上げるように燃料噴射量を増加させる。これによって、ディーゼルエンジン11の出力が徐々に増加するので、駆動力変化が抑制される結果、雪道のような低μ路面においてのスリップを抑制することができる。
ここで、急激な駆動力変化が発生しないように徐々にディーゼルエンジン11の出力トルクを増加させるためには、ディーゼルエンジン11のトルク変化は50N・m/sec.〜100N・m/sec.とすることが好ましい。このため、前記燃料噴射量の増加代は約12mm3/st〜約25mm3/stとすることが好ましい。同様に、また、前記燃料噴射量の減少代は約12mm3/st〜約25mm3/stとすることが好ましい。
上記燃料噴射量の増加及び低減代の変更は、例えば、通常の変速線マップに基づいた本来のディーゼルエンジン11の出力値に、予め設定した所定の係数を乗ずることによって求めたものを利用することにより実現できる。また、当該変更は、予め専用の変速線マップを用意しておき、これを利用することによっても実現することができる。以上のエンジン出力トルクの制御は、本発明に係る変速制御装置20の処理部20aに備えられたエンジン出力トルク制御部20eが実行する。
以上、実施例1に係る本発明によれば、雪道等の滑りやすい路面を走行する走行モードが選択された場合には、原則としてシフトチェンジを禁止することによって、ドライバーの予期しないタイミングでのシフトチェンジが抑制される。その結果、駆動力変化が発生せず、滑りやすい路面の走行中において駆動輪のスリップを未然に防止することができる。また、アクセル41の戻し量が予め定めた閾値よりも大きい場合にシフトアップを許可する。これによって、駆動輪の駆動力が未然に低減されて、ドライバーが意図した通りの駆動力変化を与えることが可能になるとともに、雪道等のように滑りやすい路面でのスリップを未然に抑制することができる。なお、実施例1で開示した構成は、以下の実施の形態においても適宜適用することができる。また、実施例1で開示した構成と同様の構成を含むことにより、実施例1に係る本発明と同様の作用・効果を奏する。
実施例2では、カーブ通過中における本発明の変速制御を説明する。図5は、実施例2の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。なお、次の説明においては、適宜図1、2を参照されたい。まず、MMT12の走行モードとして、雪道(低μ路面)に対応した走行モード、すなわちSnowモードが選択されて(ステップS201;Yes)、カーブ通過中である場合には(ステップS202;Yes)、変速ス
ケジュール制御部20sによってシフトチェンジが禁止される(ステップS203)。
カーブを通過しているときには、駆動輪は車両10を前進させるとともに、カーブを曲がるための横方向の力を発生させる。このため、直進時と比較してより滑りやすい状態であり、特に雪道等の低μ路面においてはそれが顕著になる。したがって、雪道走行中(Snowモードが選択されているとき)にカーブを通過している場合は、駆動力変化が発生すると直進時と比較してよりスリップに陥りやすい。このため、雪道走行中にカーブを通過しているときには、ドライバーの意図に関係なくシフトチェンジを禁止することで駆動力変化を抑制し、スリップの発生を抑制する。
なお、所定角度以上のハンドル切れ角が所定時間以上維持された場合に、カーブ走行中であると判断することができる。ハンドルの切れ角は、ハンドル軸に取り付けた切れ角センサによって検知することができる。また、横Gセンサにより横Gを検知して、所定値以上の横Gを検出した場合にはカーブ走行中であると判断してもよい。
カーブ通過中でない場合には(ステップS202;No)、ドライバーの意図したシフトアップは許可しても不測の事態に陥ることはない。このため、アクセル41の戻し量δTAが所定の閾値δTA0よりも大きい場合には(ステップS204;Yes)、変速スケジュール制御部20sがシフトアップのみを許可する(ステップS205)。
このように制御することによって、ドライバーの意図したシフトアップにより、ドライバーの意図した通りの駆動力変化が得られるので、ドライバビリティが向上する。アクセル41の戻し量δTAがδTA0以下である場合には(ステップS204;No)、変速スケジュール制御部20sによってMMT12のシフトチェンジが禁止される(ステップS203)。これにより、ドライバーが予期しないタイミングでのシフトチェンジが抑制される。その結果、駆動力変化が発生せず、駆動輪のスリップを未然に防止することができる。以下のステップS206〜S208は実施例1と同様なので、その説明を省略する。
以上、実施例2の本発明によれば、滑りやすい路面のカーブ走行中には、ドライバーの意図に関係なくシフトチェンジが禁止される。これによって、駆動輪の駆動力変化を抑制できるので、スリップの発生を抑制して安全に走行することができる。なお、実施例2で開示した構成は、以下の実施の形態においても適宜適用することができる。また、実施例2で開示した構成と同様の構成を含むことにより、実施例2に係る本発明と同様の作用・効果を奏する。
実施例3では、登坂又は下り坂走行時における本発明の変速制御を説明する。図6は、実施例3の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。なお、次の説明においては、適宜図1、2を参照されたい。まず、MMT12の走行モードとして、雪道(低μ路面)に対応した走行モード、すなわちSnowモードが選択される(ステップS301;Yes)。次に、登坂時であるか、下り坂走行時であるかを判断する(ステップS302)。登坂時である場合には(ステップS302;登坂)、変速スケジュール制御部20sによってシフトチェンジが禁止される(ステップS303)。これにより、登坂時においては急な駆動力変化が発生しないので、安定して走行することができる。
下り坂を走行する場合には(ステップS302;下り)、ブレーキ回数を判断して(ステップS304)、所定時間内に所定回数のブレーキ操作があった場合(ステップS304;Yes)のみ、変速スケジュール制御部20sがシフトダウンを許可する(ステップ
S305)。所定時間内に複数回のブレーキ操作がある場合は、下り坂によってアクセル41を開けなくとも車両10の速度が高くなってしまう場合である。このような場合にブレーキを多用するとフェードが発生するおそれがある他、雪道のような低μの路面ではスリップを招くおそれもある。このため、下り坂においてはエンジンブレーキを使用することが好ましく、所定時間内に複数回のブレーキ操作がある場合、ドライバーはエンジンブレーキを使用したい意図があると判断できる。
このような状況であれば、シフトダウンを許可したとしても、そのタイミングをドライバーが十分に予測できるため、クラッチ12aを切りシフトダウンすることによって駆動力が変化したとしても、不測の事態に陥ることはない。このように制御することで、エンジンブレーキを使用して雪道等の滑りやすい下り坂を走行することができるので、ブレーキ操作に起因するスリップを未然に抑制することができる。また、ドライバーが意図した通りの駆動力変化を与えることが可能になる。
なお、変速スケジュール制御部20sがシフトダウンを許可する(ステップS305)場合は、雪道の下り坂という滑りやすい状況を考慮して、駆動力変化が急激に大きくならないように最適なシフト段を選択する(ステップS306)とともに、エンジン出力トルク制御部20eはディーゼルエンジン11の出力トルクを徐々に変化させる(ステップS307)。ディーゼルエンジン11の出力トルク制御方法については、実施例1で説明した方法が適用できる。また、登坂中であるか下り坂走行中であるかは、例えば、定常走行時の燃料噴射量や、車速変化又はエンジン回転数変化に対する燃料噴射量で判断することができる。
所定時間内に所定回数のブレーキ操作がない場合には(ステップS304;No)、雪道等のように低μの路面であって下り坂という走行条件から、無闇なシフトチェンジはスリップを招くため、変速スケジュール制御部20sはシフトチェンジを禁止する(ステップS303)。このように制御することで、駆動力変化を抑制できるので、滑りやすい路面であってもスリップの発生を未然に抑制して安定した運転ができる。以下のステップS308は、実施例1と同様なのでその説明を省略する。
以上、実施例3に係る本発明によれば、登坂時においてはシフトチェンジを禁止することにより急な駆動力変化を抑制できるので、安定して走行することができる。また、低μ路面の下り坂走行中におけるブレーキの回数によってシフトダウンすることにより、エンジンブレーキを使用して雪道等の滑りやすい下り坂を走行することができる。これによって、ブレーキ操作に起因するスリップを未然に抑制することができる。さらに、ドライバーが意図した通りの駆動力変化を与えることが可能になる。なお、実施例3で開示した構成と同様の構成を含むことにより、実施例3に係る本発明と同様の作用・効果を奏する。
以上のように、本発明に係る自動変速機の変速制御装置及び自動変速機の変速制御方法は、自動変速機の制御に有用であり、特に、タイヤがスリップしやすい路面の走行時における制御に適している。
実施例1に係る本発明を適用できる車両の概略構成を示す説明図である。 実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御装置を適用した駆動部を示す説明図である。 実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御装置を適用した駆動部を示す説明図である。 実施例1の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。 エンジンの出力トルクを徐々に変化させるために燃料噴射量の増減代を変更した例を示す説明図である。 実施例2の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。 実施例3の本発明に係る自動変速機の変速制御手順を示すフローチャートである。
符号の説明
10 車両
11 ディーゼルエンジン
12a クラッチ
12 マルチモードトランスミッション(MMT)
20 変速制御装置
20r 記憶部
20a 処理部
20e エンジン出力トルク制御部
20m 走行モード切替部
20s 変速スケジュール制御部

Claims (7)

  1. 車両に搭載される自動変速機の変速スケジュールを制御するものであって、
    通常の走行モードと、タイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードとを切り替える走行モード切替部と、
    前記走行モード切替部がタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードに切り替えた場合には、前記自動変速機の変速を禁止する変速スケジュール制御部と、
    を有することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
  2. さらに、前記変速スケジュール制御部は、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、前記自動変速機の変速をシフトアップのみ許可することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置。
  3. さらに、前記自動変速機の変速時には、エンジンの出力トルクを徐々に変化させるエンジン出力トルク制御部を有することを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の変速制御装置。
  4. 前記変速スケジュール制御部は、前記車両が少なくとも登坂時又はカーブ走行時であるときは、前記自動変速機の変速を禁止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置。
  5. 自動変速機を搭載した車両の走行モードを判定する走行モード判定工程と、
    当該走行モード判定工程によって判定された走行モードがタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードである場合には、前記自動変速機の変速を禁止する変速制限工程と、
    を有することを特徴とする自動変速機の変速制御方法。
  6. 前記車両の走行モードがタイヤのスリップが発生しやすい状況に適した走行モードであっても、アクセルの戻し量が所定の閾値よりも大きい場合には、前記自動変速機の変速をシフトアップのみ許可することを特徴とする請求項5に記載の自動変速機の変速制御方法。
  7. 前記自動変速機の変速時には、エンジンの出力トルクを徐々に変化させることを特徴とする請求項6に記載の自動変速機の変速制御方法。
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