JP2005075902A - 2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤、及びそれを用いた速硬化接着方法 - Google Patents

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要 吉田
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Abstract

【課題】 充分長い塗り置き時間と閉鎖堆積時間を有し優れた作業性を発揮するとともに、高い安全性を有し、且つ従来の2液分別塗布型接着剤と同等以上の初期接着強さ、これに加えて改善された耐温水接着性を有する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を提供すること。
【解決手段】 下記の(イ)、(ロ)+(ハ)の混合物、若しくは(イ)、(ロ)、(ハ)を構成要素とすることを特徴とする2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
(イ)分子内にカルボキシル基を有する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを主成分とする第1液
(ロ)水溶性高分子の水溶液を主成分とする第2液
(ハ)多価金属塩化合物の水性溶液を主成分とする第3液
【選択図】 なし

Description

本発明は一方に被着体面に第1液を塗布し、他方の被着体面に第2液と第3液の混合液を塗布、若しくは、被着体面に第2液と第3液とを重ね塗りした後、各々の被着体面同士を貼合せ、圧着して両被着材を接着するための第1液、第2液、第3液から構成される2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤に関する。
近年、木材製品工業においては生産工程がベルトコンベアーによる連続化になるに従い、接着剤の速硬化、特に充分な初期接着強さ(即ち、被着体に接着剤を塗布し、貼り合わせ圧締を行った後の、被着材の反りによってハガレが生じたり、外部からの力によってズレが生じないようにおさまっているのに必要とする、仮接着としての強度。)の発現が望まれている。この目的のために2液型の接着剤が提案されている。
例えば、分子内にイミド基-(CO)2NH構造を有する合成高分子化合物の中和物水溶液とスチレン−ブタジエンゴムラテックス、ポリ酢酸ビニルエマルジョンなどの水性ラテックス類との混合物を第1液とし、第2液をグリオキザール等のポリアルデヒド水溶液を用いる2液分別塗布型水性接着剤(特許文献1参照)が知られている。しかし、この接着剤組成物では第2液は人体に対して刺激性があり、接触してかぶれを生じさせる場合がある。
また、分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水溶液又はエマルジョンを第1液とし、アルデヒド化合物又はヒドラジン化合物を含む液を第2液とする2液分別塗布型の接着剤組成物が知られている(特許文献2〜3参照)。しかし、この接着剤組成物は、第1液の保存安定性が悪く、接着性の再現性に問題がある。
さらに、上記2液型接着剤はいずれも第1液と第2液が接触、混合することにより第1液と第2液の組成物間で化学的な反応が進行し、速やかにゲル化するため、長時間の閉鎖堆積時間(JIS K 6800)(即ち、接着剤を塗布した被着体同士を貼り合わせてから圧締するまでの時間)がとれないという欠点がある。閉鎖堆積時間が長時間になるとゲル化が進行し、その後に圧締を行うとゲル化構造を破壊してしまい、強度が発現しない。
また、第2液には第1液に対しての架橋剤成分が含有されているため、被着体に塗布された後に長時間暴露されると性能劣化を引き起こすため、第2液の塗りおき時間(即ち、第2液塗布後、被着体を貼り合わるまでの時間)が限られるという欠点がある。
そこで、本発明者らは上記従来技術が有する欠点を解決するものとして、次の2液分別塗布型水性接着剤を開発し、特願2003−306937として出願した。
「下記の(イ)と(ロ)を構成要素とすることを特徴とする2液分別塗布型速硬化水性接着剤。
(イ)ポリ酢酸ビニルエマルジョンを主成分とする第1液
(ロ)水溶性高分子を主成分とする水溶液の第2液 」
しかしながら、この接着剤は、充分長い塗り置き時間と閉鎖堆積時間を有し、安全で、しかも優れた初期接着強さを発揮するが、耐温水接着性が充分でなく、従って耐温水接着性が高度に要求される製品分野の接着剤としては性能が充分ではなかった。
特開昭56−90867号公報 特開昭60−202176号公報 特開昭61−78883号公報
本発明の課題(目的)は、上記の如き従来技術が有する欠点を除去し、充分長い塗り置き時間を有し優れた作業性を発揮するとともに、高い安全性と保存安定性を有し、且つ従来の2液分別塗布型接着剤と同等以上の初期接着強さを有する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を提供することである。
また、本発明の課題(目的)は、従来の2液分別塗布型接着剤では不可能であった、長時間の閉鎖堆積時間の確保が可能となることから、多量の接着物を1度の圧締で処理することができ、生産効率の向上を図ることができる2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を提供することである。
そして、本発明の課題(目的)は、優れた耐温水接着性を発揮する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を提供することである。
さらに、本発明の課題(目的)は、そのような優れた特性を有する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を用いる速硬化接着方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、上記特願2003−306937の発明において、さらに多価金属塩化合物の水性溶液を主成分とする第3液を用いることにより、従来の2液分別塗布型速硬化水性接着剤の欠点が悉く解消され、優れた耐温水接着性を発揮する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤を開発することができ、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次の構成からなるものである。
1.下記の(イ)、(ロ)+(ハ)の混合物、若しくは(イ)、(ロ)、(ハ)を構成要素とすることを特徴とする2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
(イ)分子内にカルボキシル基を有する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを主成分とする第1液
(ロ)水溶性高分子の水溶液を主成分とする第2液
(ハ)多価金属塩化合物の水性溶液を主成分とする第3液
2.上記多価金属塩化合物が、ジルコニウム化合物であることを特徴とする上記1.記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
3.上記ジルコニウム化合物が、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、酸塩化ジルコニウムの中から選択される1種以上であることを特徴とする上記1.又は2.記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
4.上記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。5.上記水溶性高分子が、(1)ポリビニルアルコールと(2)ポリアクリル酸、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和物、ポリ酢酸ビニルの中から選択される1種以上との混合物であることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
6.上記混合物中のポリビニルアルコールの含有量が、10質量%以上であることを特徴とする上記5.記載の2液若しくは3液分別塗布型の速硬化水性接着剤。
7.上記1.〜6.のいずれかに記載の第1〜3液を用いて、下記の(ニ)と(ホ)を貼合せることを特徴とする速硬化接着方法。
(ニ)上記第1液を塗布した被着体接着面
(ホ)上記第2液と第3液の混合物を塗布した後、乾燥させた被着体接着面
8.上記1.〜6.のいずれかに記載の第1〜3液を用いて、下記の(ニ)と(ホ)を貼合せることを特徴とする速硬化接着方法。
(ニ)上記第1液を塗布した被着体接着面
(ホ)上記第2液と第3液を重ね塗りした後、乾燥させた被着体接着面
9.上記被着体の少なくとも一方が多孔質材料であることを特徴とする上記7.又は8.記載の速硬化接着方法。
本発明によれば、充分長い塗り置き時間と閉鎖堆積時間を有し優れた作業性を発揮するとともに、高い安全性を有し、且つ従来の2液分別塗布型接着剤と同等以上の初期接着強さ、これに加えて改善された耐温水接着性を有する2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤が提供される。
以下、本発明の各構成について詳細に説明する。
第1液について
第1液の分子内にカルボキシル基を有する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを得る方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の乳化重合を採用することができる。
以下に、(1)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンにカルボキシル基を導入する方法と(2)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの乳化重合方法につき具体的に説明する。
(1)カルボキシル基の導入方法
酢酸ビニル樹脂系エマルジョンにカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、(イ)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの重合の際に、酢酸ビニルモノマーと共重合可能なカルボキシル基含有不飽和単量体を共重合させる方法、(ロ)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの保護コロイドとしてカルボキシル基を含有する重合体を用いる方法、(ハ)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンにカルボキシル基を含有する重合体を添加させる方法がある。そして、
(イ)カルボキシル基含有不飽和単量体を共重合させる場合、該単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、イタコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が挙げられる。これらの単量体は単独で又は2種以上を併用することができる。カルボキシル基含有単量体の使用量は、全単量体に対し0.1〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量%程度が好ましい。5質量%を越えると樹脂組成物の耐温水性が低下する傾向があり、好ましくない。また、
(ロ)保護コロイドとしてカルボキシル基を含有する重合体を用いる場合、該重合体としては、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アルギン酸又はその塩等の粘質性多糖類、カルボキシル基で変性されたPVA;水溶性アクリル系樹脂;水溶性スチレン系樹脂;ポリアクリル酸又はその塩;アクリルアミド−アクリル酸共重合体又はその塩などが挙げられる。中でも、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシル変性PVAが好適である。
その使用量は、単量体に対して0.5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%程度である。さらに、
(ハ)カルボキシル基を含有する重合体を添加する場合には、カルボキシル変性PVA、ポリアクリル酸が好適である。使用量は、単量体に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%程度である。
(2)酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの乳化重合方法
(イ)乳化剤について
酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを得る際の乳化剤としては、PVA、セルロース誘導体、水可溶変性澱粉等の水溶性高分子や、ノニオン系、またはカチオン系の界面活性剤等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。この中でも酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの接着性、作業性を考慮するとPVAが好適である。平均ケン化度が84〜99モル%、平均重合度は500〜2400のものが好ましい。
(ロ)モノマーについて
酢酸ビニル樹脂系エマルジョンのモノマーとしては、酢酸ビニル単独で用いられるか、もしくは酢酸ビニルと共重合可能なモノマーとが併用される。共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン;プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、イソノナン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのアルキル酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、イタコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸類;塩化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;ビニルホスホン酸およびそれらの塩;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;スルホン酸アリル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物等が挙げられる。これらの群から選ばれる1種または数種を、生成する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの物性を損なわない範囲で使用することができる。酢酸ビニル樹脂系エマルジョン中の酢酸ビニルの含有量は、70質量%〜100質量%、好ましくは80質量%〜100質量%、さらに好ましくは85質量%〜100質量%である。
(ハ)重合開始剤及び重合触媒について
乳化重合時に使用される重合開始剤及び重合触媒としては、とくに限定されず、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の過酸化物が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記過酸化物と共に、酒石酸、蟻酸、蓚酸等の還元剤が併用することができる。
(ニ)重合条件等について
重合温度は使用する反応開始剤の種類により異なるが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどを用い、反応開始剤が熱分解することにより重合を進めるような場合には70℃以上が適当である。あるいは過酸化物と還元剤の組み合わせにより重合を進める場合には70℃より低い温度が適当である。
(ホ)エマルジョンの濃度、粘度について
重合して得られるエマルジョン中に含まれる樹脂の濃度は、25〜65質量%、好ましくは30〜60質量%である。25質量%未満では接着剤とした場合に粘度が低すぎ、逆に65質量%を越えると粘度が高くなりすぎる、あるいは重合が円滑に進まなくなる。上記濃度になるよう保護コロイド、モノマー、添加剤、水の量を調整するとよい。
また、エマルジョン粘度としては、1、000〜200、000mPa・s。好ましくは10、000〜100,000mPa・sが好ましい。200,000mPa・s超となると、安定した重合が困難になる。1,000mPa・s未満となると、被着材に対し充分な塗布量が乗らなくなる。
(へ)その他の添加剤について
酢酸ビニル樹脂系エマルジョンには、必要に応じて、可塑剤、充填剤、顔料、染料、消泡剤、防腐剤等が添加されてもよい。
また、PVA水溶液やポリアクリル酸等の水溶性高分子の水溶液や他の酢酸ビニルエマルジョンやアクリルエマルジョン等のエマルジョンを、生成する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの物性を損なわない程度で1種または2種以上併用することができる。
第2液について
使用される水溶性高分子の水溶液濃度は、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。水溶液濃度が5質量%未満では多量の水分を含む為、水分の乾燥に多くのエネルギーが必要になる。また、50質量%超では高粘度となるため、塗布するのが困難になる。
上記水溶性高分子としては、その乾燥皮膜が第2液が塗布される被着体に対し接着性を有し、且つ第1液の水分を吸収してポリ酢酸ビニル皮膜を形成せしめるものであれば如何なるものでも良いが、PVA単独、PVAとポリアクリル酸、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和物(例えば、アンモニア、苛性アルカリの中和物)、ポリ酢酸ビニルの中から選択される1種以上との混合物が効果的である。
上記混合物中のPVAの含有割合は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
使用されるPVAの平均重合度としては、100〜3,500であれば特に制限はなく、使用条件によって好適な条件が選ばれる。高重合度であれば、PVAの使用量が少量で初期接着性が発現できる。また、低重合度であれば高固形分とすることができるので、短期間での乾燥が可能となる。使用されるPVAはカルボキシル基、アマイド基、アミノ基、アセトアセチル基等で変性されたPVAを用いても構わない。平均ケン化度についても特に制限はないが80〜99モル%、特に84〜99モル%の範囲が好ましい。
また、第2液には必要に応じて、消泡剤、防腐剤、増粘剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤を配合してもよい。
第3液について
使用される多価金属化合物は、遷移金属元素;マグネシウム、カルシウム、バリウム等の周期表2族元素;亜鉛等の12族元素;アルミニウム等の13族元素;スズ等の14族元素から選択される一種以上の元素を含む化合物である。これらの多価金属化合物は単独、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記遷移金属元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム等の周期表3族元素;チタン、ジルコニウム等の4族元素;バナジウム、ニオブ等の5族元素;クロム、モリブデン、タングステン等の6族元素;マンガン等の7族元素;鉄、ルテニウム等の8族元素;コバルト等の9族元素;ニッケル、パラジウム等の10族元素、銅、銀等の11族元素などが挙げられる。
これらの多価金属化合物は有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物等であり、例えば、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸ジルコニウム、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硝酸銅、硫酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムクロム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化アルミニウム等が挙げられる。
上記多価金属化合物の中でも、ジルコニウム化合物、特に硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、酸塩化ジルコニウムが効果的で好ましい。
多価金属化合物の水性溶液の濃度は0.01〜50質量%として使用するのが好ましい。
使用量としては、第1液の分子内にカルボキシル基を有する酢酸ビニル樹脂系重合体100質量部に対して多価金属化合物が0.01〜25質量部、好ましくは0.05〜10質量部である。
また、必要に応じて、消泡剤、防腐剤、増粘剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤を配合してもよい。
接着方法について
一般に水を媒体とする接着剤を用い室温で接着する場合には、かなり長時間の圧締を行わないと、充分な最終接着強度が発揮されないが、本発明の2液型若しくは3液型接着剤によれば、速硬化性のため、圧締が短時間であっても、充分な養生後の最終接着強さが発揮される。それ故、圧締時間の大幅な短縮が可能で、従って、作業性を格段に向上させることができる。
接着方法としては、一方の被着体面に第2液と第3液を塗布し、乾燥させる。もしくは第2液と第3液を混合した液を塗布し、乾燥させる。第2液と第3液とを塗布する際の順序としては、第3液の多価金属化合物の吸い込みを防止するため、第2液を先に塗布することが好ましい。次いで、もう一方の被着体面に第1液を塗布したのち、第2液と第3液の塗布面同士を貼合せ、圧締する。貼合せされることで短時間にて第2液、第3液の乾燥皮膜が第1液中の水分を吸収し、圧締されることで第1液と第2液、第3液が混合、合一化し、瞬間的に接着剤層が皮膜化し、初期接着強度が速やかに発現する。次いで、第1液中のカルボキシル基と第3液の多価金属化合物が架橋することで耐温水性が発揮される。
第2液及び第3液の塗布方法としては、ハンドローラー、ロールスプレッダ、またはスプレーにより塗布される。
塗布量は、第2液は20〜150g/m2 、好ましくは30〜120g/m2 である。第3液は10〜70g/m2 、好ましくは15〜50g/m2 である。 第2液と第3液を混合液して使用する場合には、塗布量は30〜200g/m2 、好ましくは50〜150g/m2 である。
第2液の塗布量が20g/m2 より少ないと第1液からの水分の吸水が不十分となるため、初期接着力が低下する。また、150g/m2 より多いと第2液に含有する水分が多くなるため、該塗膜の乾燥工程に時間がかかる。乾燥方法としては、外気に暴露し、自然乾燥させるか、ヒーターや乾燥炉によって強制的に水分を蒸発させても良い。
第1液の塗布方法としては、ハンドローラー、ロールスプレッダ等があり、塗布量としては50〜250g/m2 、好ましくは100〜200g/m2 である。
被着体が多孔質材料同士の接着であれば、第1液、第2液及び第3液はそのいずれに塗布しても良く、また、被着体が非多孔質材料と多孔質材料との接着であれば、第2液及び第3液を非多孔質材料に塗布することで特に効果が発揮される。
接着方法
用途について
本発明の接着剤は、木材、合板、パーティクルボード、ファイバーボードなどの木質系材料;スレート板、珪カル板のような無機質材料;メラミン樹脂化粧材、ベークライト等のプラスチックス材料;段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材料;アルミニウム板、鋼板などの金属材料を接着することができる。
従って、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材などの平面接着や縁貼り、ホゾ、ダボ、トメ、ハギ、角木、その他の組立などの作業が、迅速化、省力化され、省エネルギーにも寄与する。
以下、本発明の2液分別塗布型速硬化水性接着剤、及びそれを用いた接着方法を実施例によってさらに具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における部数及び%はすべて質量部並びに質量%である。
実施例、比較例で用いられる第1液〜第3液は、次の方法で作成されたものを用いた。
(第1液の作成)
a)酢酸ビニルエマルジョンA−不揮発分50%Em
株式会社クラレ製KL318(カルボキシル基変性PVA)50部を水475部に仕込み、撹拌分散後に80〜90℃に加熱して、これを保護コロイドとして、酢酸ビニルモノマー420部と、過硫酸アンモニウム1部と炭酸水素ナトリウム1部を水25部に溶解した重合開始剤とを、同時に3時間要して滴下して乳化重合し、室温に冷却後にジブチルフタレート30部を添加して酢酸ビニルエマルジョン(不揮発分50%)を得た。
b)酢酸ビニルエマルジョンB−不揮発分55%Em
株式会社クラレ製KL318(カルボキシル基変性PVA)40部を水423部に仕込み、撹拌分散後に80〜90℃に加熱して、これを保護コロイドとして、酢酸ビニルモノマー460部と、過硫酸アンモニウム1部と炭酸水素ナトリウム1部を水25部に溶解した重合開始剤とを、同時に3時間要して滴下して乳化重合し、室温に冷却後にジブチルフタレート50部を添加して酢酸ビニルエマルジョン(不揮発分55%)を得た。
c)酢酸ビニルエマルジョンC−不揮発分45%Em
株式会社クラレ製KL318(カルボキシル基変性PVA)50部を水523部に仕込み、撹拌分散後に80〜90℃に加熱して、これを保護コロイドとして、1−酒石酸1部を仕込んだ後、酢酸ビニルモノマー363部と、過酸化水素水1部を水25部に溶解した重合開始剤とを、同時に2時間要して滴下して乳化重合し、室温に冷却後にジブチルフタレート37部を添加して酢酸ビニルエマルジョン(不揮発分45%)を得た。
d)酢酸ビニルエマルジョンD−不揮発分35%Em
株式会社クラレ製KL318(カルボキシル基変性PVA)50部を水623部に仕込み、撹拌分散後に80〜90℃に加熱して、これを保護コロイドとして、1−酒石酸1部を仕込んだ後、酢酸ビニルモノマー278部と、過酸化水素水1部を水25部に溶解した重合開始剤とを、同時に1時間要して滴下して乳化重合し、室温に冷却後にジブチルフタレート22部を添加して酢酸ビニルエマルジョン(不揮発分35%)を得た。
(第2液の作成)
各種PVAの20〜40%の水溶液を調製して、第2液とした。
(第3液の作成)
各種多価金属塩化合物10部を水25部に溶解して、第3液とした。
(第2液と第3液の混合液の作成)
第2液75部と第3液25部を混合して作成した。
また、実施例及び比較例における初期接着強さ、及び最終接着強さは次の測定方法に拠った。
<初期接着強さの測定(図1参照)>
2枚の4cm×5cmの3mm厚の合板に第2液と第3液の混合液を塗布し、乾燥する。塗布量は150g/m2 とする。
3cm×5cmの大きさの9mm厚の合板の上下面に第1液を塗布する。塗布量は150g/m2 とする。
2枚の3mm厚合板の間に9mm厚合板を、第1液、第2液と第3液の混合液が接触するように、且つ各々の3辺が一致するように挟んで重ね、30秒間又は60秒間圧締し、直ちに2枚の3mm厚合板の突出端を外方向に拡開して引き剥がし、そのときの接着強さ(5cm当たりのkgf)を測定した。
経験上、この初期接着強さが8kgf/5cm以上であれば実用上問題がない。
測定結果を以下のように評価した。
◎:10kgf/5cm超
○:8〜10kgf/5cm
△:6〜8kgf/5cm未満
×:6kgf/5cm未満
<最終接着強さ(常態、耐温水)の測定>
JIS K6852に示された方法に準じて測定した。被着体(試験片)はカバ材で、大きさ25mm×30mm×10mmの2片の一方の試験片の接着面に第2液と第3液の混合液を150g/m2 で塗布し、乾燥させた。もう一方の試験片の接着面に150g/m2 で第1液を塗布し、先の試験片と貼合せて、直ちに圧締した。圧締圧約10kgf/cm2 で3分間圧締した。解圧後3日以上室温にて養生し、次いで室温下で圧縮せん断接着強さ(kgf/cm2 )を測定(常態試験)し、又は圧締養生した試験片を更に60℃温水中に3時間浸せき後、室温水に10分間浸せきし、濡れたままで圧縮せん断接着強さ(kgf/cm2 )を測定(耐温水試験)した。
常態試験の結果を以下のように評価した。
○:100kgf/cm2
△:50〜100kgf/cm2
×:50kgf/cm2 未満
また、耐温水試験の結果を以下のように評価した。
○:8kgf/cm2
△:8kgf/cm2 以下
×:浸せき中剥離する
[実施例1〜14の初期接着強さ及び最終接着強さの測定]
次の実施例1〜14の第1液〜第3液を用いて、上記初期接着強さ及び最終接着強さを測定した。その結果は、次の表1に示されている。
(実施例1)
第1液:上記酢酸ビニルエマルジョンA
第2液:PVA(株式会社クラレ製、商品名:PVA−217、重合度1700、ケン化度87.0〜89.0mol%)の20%水溶液
第3液:硝酸ジルコニウム水溶液
(実施例2)
第3液として、酢酸ジルコニウム水溶液を使用する以外は実施例1と同様に行った。
(実施例3)
第3液として、酸塩化ジルコニウム水溶液を使用する以外は実施例1と同様に行った。
(実施例4)
第2液として、PVA(株式会社クラレ製、商品名:PVA−117:重合度1700、ケン化度98.0〜99.0mol%)の20%水溶液を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例5)
第2液として、PVA(株式会社クラレ製、商品名:PVA−235、重合度3500、ケン化度86.5〜89.5mol%)の20%水溶液を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例6)
第2液として、PVA(株式会社クラレ製、商品名:PVA−205、重合度500、ケン化度86.5〜89.5mol%)の40%を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例7)
第2液として、PVA(株式会社クラレ製、商品名:PVA−205、重合度500、ケン化度86.5〜89.5mol%)の20%を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例8)
第2液として、アセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業株式会社製、商品名:Z−200、重合度1400、ケン化度99.0mol%以上)の20%水溶液を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例9)
第2液として、ブレンド1(株式会社クラレ製PVA−217の20%水溶液100部とポリアクリル酸(日本純薬株式会社製、商品名:ジュリマーAC−20H)の20%水溶液100部との混合液)を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例10)
第2液として、ブレンド2(株式会社クラレ製PVA−217の23%水溶液100部とイソブチレン−無水マレイン酸共重合体(株式会社クラレ製、商品名:イソバン10)を中和度α=0.88にて水酸化ナトリウムにより可溶化させた23%水溶液100部との混合液)を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例11)
第2液として、ブレンド3(株式会社クラレ製PVA−217の38%水溶液100部とEVA系エマルジョン形接着剤(住友化学工業株式会社製、商品名:スミカフレックス400HQ)100部との混合液)を使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例12)
第1液として、上記酢酸ビニルエマルジョンBを使用する以外は実施例2と同様に行った。
(実施例13)
第1液として、上記酢酸ビニルエマルジョンCを使用する以外は実施例2と同様に行った。
尚、本実施例では例外的に試験片を貼り合わせた後8分間の閉鎖堆積時間を置いた後圧締し、次いで初期接着強さ、及び圧縮せん断接着強さを測定した。
(実施例14)
第1液として、上記酢酸ビニルエマルジョンDを使用する以外は実施例2と同様に行った。
尚、本実施例では例外的に試験片を貼り合わせた後15分間の閉鎖堆積時間を置いた後圧締し、次いで初期接着強さ、及び圧縮せん断接着強さを測定した。
[比較例1〜7の初期接着強さ及び最終接着強さの測定]
次の比較例1〜7の第1液と、第2液又は第3液を用いて、上記最終接着強さ及び最終接着強さを測定した。その結果は、次の表2に示されている。
(比較例1)
第3液を使用しない以外は実施例1と同様に行った。
(比較例2)
第2液を使用しない以外は実施例1と同様に行った。
(比較例3)
第2液を使用しない以外は実施例2と同様に行った。
(比較例4)
第2液を使用しない以外は実施例3と同様に行った。
(比較例5)
第2液を使用しない以外は実施例12と同様に行った。
(比較例6)
第2液を使用しない以外は実施例13と同様に行った。
(比較例7)
第2液を使用しない以外は実施例14と同様に行った。
尚、次の表1〜2では、上記30秒間又は60秒間圧締後の初期接着強さ、及び圧縮せん断接着強さの常態試験、耐温水試験の測定値を、夫々初期強度(圧締30、60秒)、及び最終強度(常態、耐温水)と表した。
Figure 2005075902
Figure 2005075902
本発明の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤は、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材などの平面接着や縁貼り、ホゾ、ダボ、トメ、ハギ、角木等の組立に用いられると特に有効であり、作業の迅速化、省力化、省エネルギー化が図られる。
初期接着強さの測定方法を説明する概略図である。

Claims (9)

  1. 下記の(イ)、(ロ)+(ハ)の混合物、若しくは(イ)、(ロ)、(ハ)を構成要素とすることを特徴とする2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
    (イ)分子内にカルボキシル基を有する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを主成分とする第1液
    (ロ)水溶性高分子の水溶液を主成分とする第2液
    (ハ)多価金属塩化合物の水性溶液を主成分とする第3液
  2. 上記多価金属塩化合物が、ジルコニウム化合物であることを特徴とする請求項1記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
  3. 上記ジルコニウム化合物が、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、酸塩化ジルコニウムの中から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
  4. 上記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
  5. 上記水溶性高分子が、(1)ポリビニルアルコールと(2)ポリアクリル酸、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和物、ポリ酢酸ビニルの中から選択される1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液若しくは3液分別塗布型速硬化水性接着剤。
  6. 上記混合物中のポリビニルアルコールの含有量が、10質量%以上であることを特徴とする請求項5記載の2液若しくは3液分別塗布型の速硬化水性接着剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の第1〜3液を用いて、下記の(ニ)と(ホ)を貼合せることを特徴とする速硬化接着方法。
    (ニ)上記第1液を塗布した被着体接着面
    (ホ)上記第2液と第3液の混合物を塗布した後、乾燥させた被着体接着面
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の第1〜3液を用いて、下記の(ニ)と(ホ)を貼合せることを特徴とする速硬化接着方法。
    (ニ)上記第1液を塗布した被着体接着面
    (ホ)上記第2液と第3液を重ね塗りした後、乾燥させた被着体接着面
  9. 上記被着体の少なくとも一方が多孔質材料であることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の速硬化接着方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4621901B2 (ja) * 2008-12-24 2011-02-02 独立行政法人海上技術安全研究所 防汚塗料組成物および基材の防汚方法

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