しかし、ダイクロイックプリズムを用いて光を分離すると、光はほぼ直角に分離されることになる。また、一般に、波長ごとに分離されたあとの光は、さらに偏光ビームスプリッタで直角に光路が分けられる。
これらの光学素子は、光が干渉しないように配置する必要がある。また、光信号を正しく検出できるように、レーザ光源や受光素子は、位置調整可能に取り付ける必要があり、調整し易さを考えると、光ピックアップの外壁に取り付けることが望ましい。
ところが、複数の光学素子でそれぞれ直角に光路を分け、かつ干渉させないようにするのは難しい。さらに、レーザ光源や受光素子を光ピックアップの外壁に取り付けるように構成すると、光ピックアップが大型化し、結果として、光ディスクドライブ装置も大型化してしまうという問題がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、3つの波長の光に対応でき、しかも小型化が図れる光ピックアップおよび光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する請求項1に係る発明は、記録媒体に集光するための1個の対物レンズと、レンズアクチュエータを備えて記録媒体のトラックを横切る方向に移動可能に支持されたキャリッジと、上記対物レンズを経て記録媒体に照射する波長の異なる3つの光を発光する3個の発光素子とを有する光ピックアップにおいて、上記波長の異なる3つの光を波長の短い方から第1の光、第2の光、第3の光として、上記第1の光と上記第2の光および上記第3の光とを合致および/または分離するダイクロイックプリズムと、上記第2の光と上記第3の光とを波長の違いによる屈折率の違いを利用して合致および/または分離する屈折光学手段とを有することを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光ピックアップにおいて、上記屈折光学手段はビーム整形プリズムを含むことを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光は波長400nm付近であり、上記第2の光は波長660nm付近であり、上記第3の光は波長780nm付近であることを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記第2の光を発光する発光素子と、上記第3の光を発光する発光素子とが、1つのパッケージに納められていることを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記記録媒体はディスク状であり、上記屈折光学手段によって曲げられる光路の180度より小さい角が、上記ディスク状の記録媒体の中心側に位置するように構成したことを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の光ピックアップにおいて、上記屈折光学手段は複数の屈折光学素子を有し、その先頭の屈折光学素子に入射する光路と、最後の屈折光学素子から出射する光路とのなす角の180度より小さい角が、上記ディスク状の記録媒体の中心側に位置するように構成したことを特徴とするものである。
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光を発光する発光素子と上記ダイクロイックプリズムとを含む平面を第1の平面とし、上記第2の光および上記第3の光をそれぞれ発光する発光素子と上記屈折光学手段とを含む平面を第2の平面としたとき、上記第1の平面と上記第2の平面とは一致しないことを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の平面と上記第2の平面とが直交することを特徴とするものである。
請求項9に係る発明は、請求項7または8に記載の光ピックアップにおいて、上記第2の平面が記録媒体に平行であることを特徴とするものである。
請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光を発光する発光素子と上記第1の光を整形あるいは分離する光学素子とを含む光学系を、上記キャリッジと異なるハウジングに取り付けて、該ハウジングを上記キャリッジに取り付けたことを特徴とするものである。
請求項11に係る発明は、記録媒体に集光するための1個の対物レンズと、レンズアクチュエータを備えて記録媒体のトラックを横切る方向に移動可能に支持されたキャリッジと、上記対物レンズを経て記録媒体に照射する波長の異なる3つの光を発光する3個の発光素子とを有する光ピックアップにおいて、上記波長の異なる3つの光を波長の短い方から第1の光、第2の光、第3の光として、上記第1の光と上記第2の光および上記第3の光とを合致および/または分離するダイクロイックプリズムと、上記第2の光と上記第3の光とを波長の違いによる回折の違いを利用して合致および/または分離する回折光学素子とを有することを特徴とするものである。
請求項12に係る発明は、請求項11に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光は波長400nm付近であり、上記第2の光は波長660nm付近であり、上記第3の光は波長780nm付近であることを特徴とするものである。
請求項13に係る発明は、請求項11または12に記載の光ピックアップにおいて、上記第2の光を発光する発光素子と、上記第3の光を発光する発光素子とが、1つのパッケージに納められていることを特徴とするものである。
請求項14に係る発明は、請求項11〜13のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記記録媒体はディスク状であり、上記回折光学素子によって曲げられる光路の180度より小さい角が、上記ディスク状の記録媒体の中心側に位置するように構成したことを特徴とするものである。
請求項15に係る発明は、請求項11〜14のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光を発光する発光素子と上記ダイクロイックプリズムとを含む平面を第1の平面とし、上記第2の光および上記第3の光をそれぞれ発光する発光素子と上記回折光学素子とを含む平面を第2の平面としたとき、上記第1の平面と上記第2の平面とは一致しないことを特徴とするものである。
請求項16に係る発明は、請求項15に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の平面と上記第2の平面とが直交することを特徴とするものである。
請求項17に係る発明は、請求項15または16に記載の光ピックアップにおいて、上記第2の平面が記録媒体に平行であることを特徴とするものである。
請求項18に係る発明は、請求項11〜17のいずれか一項に記載の光ピックアップにおいて、上記第1の光を発光する発光素子と上記第1の光を整形あるいは分離する光学素子とを含む光学系を、上記キャリッジと異なるハウジングに取り付けて、該ハウジングを上記キャリッジに取り付けたことを特徴とするものである。
請求項19に係る発明は、波長の異なる3つの光ディスクに対応する光ディスクドライブ装置において、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップを搭載したことを特徴とするものである。
請求項1の発明によると、一番波長の短い第1の光と、それよりも波長の長い第2の光および第3の光との合致/分離をダイクロイックプリズムで行い、第2の光と第3の光との合致/分離を波長の違いによる屈折率の違いを利用した屈折光学手段で行うようにしたので、3つの波長の光に対応する光ピックアップを小型化することができる。
請求項2の発明によると、屈折光学手段がビーム整形プリズムを含んでなるので、部品点数を少なくでき、安価にできる。
請求項3の発明によると、望ましい3つの波長に対応する光ピックアップを実現することができる。
請求項4の発明によると、第2の光の発光素子と第3の光の発光素子とが1つのパッケージに納められているので、より小型化が可能になる。
請求項5の発明によると、光ピックアップを、ディスク状記録媒体を回転させるモータに巻き付くような形状とすることができるので、光ディスクドライブ装置内のスペースを有効に利用でき、光ディスクドライブ装置の小型化が図れる。
請求項6の発明によると、屈折光学手段を複数の屈折光学素子で構成するので、その光学特性を良好にできる。
請求項7および請求項8の各発明によると、第1の光に関する光学系を配置する第1の平面と、第2の光および第3の光に関する光学系を配置する第2の平面とが一致していないので、組立性を向上することができる。
請求項9の発明によると、さらに第2の平面が記録媒体に平行となっているので、組立性を向上できると共に、より小型化が可能になる。
請求項10の発明によると、第1の光に関する光学系をキャリッジと異なるハウジングに取り付け、これをキャリッジに取り付けるので、組立性を向上できると共に、部品の製作も容易になり、歩留まりも向上することができる。
請求項11の発明によると、一番波長の短い第1の光と、それよりも波長の長い第2の光および第3の光との合致/分離をダイクロイックプリズムで行い、第2の光と第3の光との合致/分離を波長の違いによる回折の違いを利用した回折光学素子で行うようにしたので、3つの波長の光に対応する光ピックアップを小型化することができる。
請求項12の発明によると、請求項3の発明と同様に、望ましい3つの波長に対応する光ピックアップを実現することができる。
請求項13の発明によると、請求項4の発明と同様に、光ピックアップをより小型化することができる。
請求項14の発明によると、請求項5の発明と同様に、光ディスクドライブ装置の小型化が図れる。
請求項15および請求項16の各発明によると、請求項7および請求項8の各発明と同様に、組立性を向上することができる。
請求項17の発明によると、請求項9の発明と同様に、組立性を向上できると共に、より小型化が可能になる。
請求項18の発明によると、請求項10の発明と同様に、組立性を向上できると共に、部品の製作も容易になり、歩留まりも向上することができる。
請求項19の発明によると、光ディスクドライブ装置を小型化することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、説明に不要な部品等は省略していると共に、ハッチングについても図が煩雑なるため一部省略している。
(第1実施の形態)
図1〜図3は本発明による光ピックアップの第1実施の形態を示すもので、図1は要部断面図、図2は上面図、図3は光学系説明図である。
図1において、対物レンズ1はホルダ2に装着され、このホルダ2にフォーカスコイル3、トラッキングコイル4a、4bが接着されている。また、ホルダ2には、ベリリウム銅製の4本のワイヤバネ5a〜5d(5c、5dは図示せず)の一端が装着され、これらワイヤバネ5a〜5dにフォーカスコイル3、トラッキングコイル4a、4bの端末が接続されている。ワイヤバネ5a〜5dの他端はバネウケ6に接着され、これによりホルダ2はワイヤバネ5a〜5dを介して図示しないディスク状の記録媒体の垂直方向(Z方向)および半径方向(X方向)に移動可能に支持されている。ワイヤバネ5a〜5dは、図示しないフレキシブル基板を介して、さらに外部の電気回路に接続される。バネウケ6は、鉄製のベース7に固定されている。ベース7の曲げ立ち上げ部8a、8bには、磁界を発生させる磁石9a、9bも固定されている。以上のベース7上に組み立てられた対物レンズ1を駆動するための機構をレンズアクチュエータ10と呼ぶ。
レンズアクチュエータ10は、キャリッジ21に固定されている。キャリッジ21は、軸受部22a、22b、22cを介して軸23a、23bに支持されている。これにより、キャリッジ21は、図示しない記録媒体の半径方向(X方向)に移動可能に支持されていることになる。キャリッジ21は、図示しない記録媒体の最内周に移動したときに、記録媒体を回転させるモータ24(2点鎖線で外形を示す)に干渉しないように、X(−)端に円弧状形状25を有している。
キャリッジ21には、波長405nmのレーザ光を発光するレーザダイオード31が、イタ32を介して取り付けられている。イタ32を介するのは、イタ32の平面内(光軸に垂直な平面内)でレーザダイオード31を位置調整可能とするためである。イタ32は、ネジ33a,33bによってキャリッジ21に固定される。
レーザダイオード31から対物レンズ1までの光路には、図3に明瞭に示すように、ビーム整形レンズ34、回折格子36、偏光ビームスプリッタ38、1/4波長板39、コリメータレンズ40、反射ミラー42、ダイクロイックプリズム11、収差補正素子12および反射ミラー14がこの順序で配置されている。
図1に示すように、ビーム整形レンズ34は鏡筒35を介してキャリッジ21に固定され、回折格子36はホルダ37を介してキャリッジ21に固定され、偏光ビームスプリッタ38、反射ミラー42、ダイクロイックプリズム11および反射ミラー14はそれぞれキャリッジ21に直接固定され、1/4波長板39は偏光ビームスプリッタ38に接合され、コリメータレンズ40は鏡筒41を介してキャリッジ21に固定され、収差補正素子12はホルダ13を介してキャリッジ21に固定されている。なお、反射ミラー14は、対物レンズ1のZ(−)方向の位置に配置されている。
レーザダイオード31から出射される波長405nmのレーザ光は、ビーム整形レンズ34および回折格子36を経て偏光ビームスプリッタ38に入射し、ここで一部が反射され、その透過光が、1/4波長板39、コリメータレンズ40および反射ミラー42を経てダイクロイックプリズム11に入射する。ダイクロイックプリズム11は、波長405nmの光は反射し、その他は透過とするように構成されており、このダイクロイックプリズム11で反射されたレーザ光が収差補正素子12および反射ミラー14を経て対物レンズ1により図示しない記録媒体に照射されるようになっている。なお、偏光ビームスプリッタ38で反射される反射光の光路には、キャリッジ21に固定されてフォトディテクタ43が配置されている。
また、記録媒体で反射される波長405nmのレーザ光の戻り光は、往路とは逆の経路を辿って偏光ビームスプリッタ38で反射される。この偏光ビームスプリッタ38で反射される戻り光の光路には、集光レンズ44が鏡筒45を介してキャリッジ21に固定されていると共に、フォトディテクタ46がイタ47を介してキャリッジ21に固定されている。なお、フォトディテクタ46は、イタ47の平面内(光軸に垂直な平面内)で位置調整可能となっており、調整後に、イタ47がキャリッジ21に接着固定される。
ここで、ビーム整形レンズ34を保持する鏡筒35は、外形円筒状に形成されて、キャリッジ21に形成された円筒状穴部に光軸方向にスライド可能に装填され、これによりビーム整形レンズ34は光軸方向に位置調整可能となっている。また、回折格子36を保持するホルダ37は、外形円筒状に形成されて、キャリッジ21に形成された円筒状穴部に光軸を中心に回転可能に装填され、これにより回折格子36は光軸に対して回転調整可能となっている。
また、コリメータレンズ40を保持する鏡筒41および集光レンズ44を保持する鏡筒45は、図2に示すように、キャリッジ21にネジ49で固定されたイタ48によって、キャリッジ21の異なる壁面に光軸方向にスライド可能に押し付けられるような形で固定され、これによりコリメータレンズ40および集光レンズ44は光軸方向に位置調整可能となっている。これらの調整機能により、フォトディテクタ46において所定の信号が得られるように、各光学素子の位置調整がなされる。
さらに、キャリッジ21には、波長660nmのレーザ光と波長780nmのレーザ光とを発光するレーザダイオード51が、イタ52を介して取り付けられている。レーザダイオード51は、図3に明瞭に示すように、1つのパッケージ内に、波長780nmのレーザ光を発光する発光素子101と、波長660nmのレーザ光とを発光する発光素子102とを有しており、それらの発光点(位置)は、一致しておらず、若干ずれている。イタ52は、イタ32と同様に、レーザダイオード51の位置調整をするためのもので、ネジ53a,53bによってキャリッジ21に固定される。
レーザダイオード51から対物レンズ1までの光路には、図3に明瞭に示すように、回折格子56、コリメータレンズ60、屈折光学手段を構成するプリズム54、偏光ビームスプリッタ58、1/4波長板59、ダイクロイックプリズム11、収差補正素子12および反射ミラー14がこの順序で配置されており、ダイクロイックプリズム11から対物レンズ1に至る光路は、レーザダイオード31の光路と共通となっている。
図1に示すように、回折格子56はホルダ57を介してキャリッジ21に固定され、コリメータレンズ60は鏡筒61を介してキャリッジ21に固定され、プリズム54および偏光ビームスプリッタ58は、それぞれキャリッジ21に直接固定され、1/4波長板59は偏光ビームスプリッタ58に接合されている。
レーザダイオード51から出射されるレーザ光は、回折格子56、コリメータレンズ60およびプリズム54を経て偏光ビームスプリッタ58に入射し、ここで一部が反射され、その透過光が、1/4波長板59、ダイクロイックプリズム11、収差補正素子12および反射ミラー14を経て対物レンズ1により図示しない記録媒体に照射されるようになっている。なお、偏光ビームスプリッタ58で反射される反射光の光路には、キャリッジ21に固定されてフォトディテクタ63が配置されている。
また、レーザダイオード51から出射されたレーザ光の記録媒体からの戻り光は、往路とは逆の経路を辿って偏光ビームスプリッタ58で反射される。この偏光ビームスプリッタ58で反射される戻り光の光路には、集光レンズ64が鏡筒65を介してキャリッジ21に固定されていると共に、フォトディテクタ66がイタ67を介してキャリッジ21に固定されている。なお、イタ67は、イタ47と同様に、フォトディテクタ66の調整用のもので、調整後はキャリッジ21に接着固定される。
ここで、回折格子56を保持するホルダ57は、外形円筒状に形成されて、キャリッジ21に形成された円筒状穴部に光軸を中心に回転可能に装填され、これにより回折格子56は光軸に対して回転調整可能となっている。また、コリメータレンズ60を保持する鏡筒61は、図2に示すように、キャリッジ21にネジ69aで固定されたイタ68aによって、キャリッジ21の壁面に光軸方向にスライド可能に押し付けられるような形で固定され、これによりコリメータレンズ60は光軸方向に位置調整可能となっている。同様に、集光レンズ64を保持する鏡筒65も、キャリッジ21にネジ69bで固定されたイタ68bによって、キャリッジ21の異なる壁面に光軸方向にスライド可能に押し付けられるような形で固定され、これにより集光レンズ64は光軸方向に位置調整可能となっている。これらの調整機能により、フォトディテクタ66において所定の信号が得られるように、各光学素子の位置調整がなされる。
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
波長405nmのレーザ光に対応した記録媒体が装置にセットされた場合は、レーザダイオード31を発光させる。レーザダイオード31より発せられたレーザ光は、ビーム整形レンズ34でビーム整形が行われ、さらに、回折格子36に入射して、トラッキング信号検出をディファレンスプッシュプル方式で行うために、0次光と±1次光とに分けられる。次に、偏光ビームスプリッタ38をP偏光で透過して、1/4波長板39を経由してコリメータレンズ40により平行光にされる。平行光となった光は、反射ミラー42で光路の向きを変えられ、ダイクロイックプリズム11で反射されて、球面収差補正板12で球面収差補正が行われ、反射ミラー14で光路をZ方向に向けられて、対物レンズ1により記録媒体上に照射されてスポットを形成する。
また、偏光ビームスプリッタ38に入射した光の一部は反射されて、フォトディテクタ43で受光され、その出力に基づいてレーザダイオード31の発光量の調整が行われる。
一方、記録媒体で反射される戻り光は、再び対物レンズ1を通り、往路とは逆の経路を辿ってダイクロイックプリズム11で反射されて偏光ビームスプリッタ38に到達する。ここで、戻り光は、往路および復路で1/4波長板39を透過するので、その偏光方向が往路と直交し、偏光ビームスプリッタ38で反射される。この偏光ビームスプリッタ38で反射された戻り光は、集光レンズ44を経てフォトディテクタ46で受光され、その出力に基づいてフォーカスエラー、トラッキングエラーおよび記録信号の検出が行われる。
フォーカスエラーが検出された場合は、フォーカスコイル3に電流を流すことによって、ホルダ2を記録媒体に垂直な方向に駆動する。トラッキングエラーが検出された場合は、トラッキングコイル4a、4bに電流を流すことによって、ホルダ2を記録媒体の半径方向に駆動する。異なるトラックにアクセスする場合は、図示していない駆動手段によって、キャリッジ21ごとホルダ2を記録媒体の半径方向に駆動する。以上のようにして、ホルダ2およびそれに固定された対物レンズ1はフォーカス制御、トラッキング制御、アクセス制御される。
波長660nmあるいは波長780nmのレーザ光に対応した記録媒体が装置にセットされた場合は、レーザダイオード51を駆動して、波長780nmの媒体の場合は発光素子101を発光させ、波長660nmの媒体の場合は発光素子102を発光させる。発光素子101から発光される波長780nmのレーザ光は、光路71を通って回折格子56に入射し、ここでトラッキング信号検出をデリファレンスプッシュプル方式あるいは3ビーム方式で行うために0次光と±1次光とに分けられ、さらにコリメータレンズ60で平行光にされて、屈折光学手段であるプリズム54に入射する。また、発光素子102から発光される波長660nmのレーザ光は、光路72を通って、同様に回折格子56に入射して0次光と±1次光とに分けられ、さらにコリメータレンズ60で平行光にされて、プリズム54に入射する。
プリズム54では、入射光のビーム形状を整形すると同時に、波長による屈折率の違いを用いて、波長780nmの光路71と波長660nmの光路72とを一つの光路73に合成する。ここで、プリズム54に対する光路71,72と光路73とがなす角度の内、180度より小さい角度74(図1参照)が、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側となっている。
プリズム54を出た光は、偏光ビームスプリッタ58をP偏光で透過して、1/4波長板59を経由してダイクロイックプリズム11に入射する。ダイクロイックプリズム11は、波長405nmの光のみ反射するものなので、波長660nmあるいは波長780nmの光は透過して球面収差補正板12で球面収差補正が行われ、さらに反射ミラー14で光路をZ方向に向けられて、対物レンズ1により記録媒体上に照射されてスポットを形成する。
また、偏光ビームスプリッタ58に入射した光の一部は反射されて、フォトディテクタ63で受光され、その出力に基づいてレーザダイオード51の発光量の調整が行われる。
一方、記録媒体で反射される戻り光は、再び対物レンズ1を通り、往路とは逆の経路を辿ってダイクロイックプリズム11を透過し、さらに1/4波長板59を透過して偏光ビームスプリッタ58に到達する。ここで、戻り光は、往路および復路で1/4波長板59を透過するので、その偏光方向が往路と直交し、偏光ビームスプリッタ58で反射される。この偏光ビームスプリッタ58で反射された戻り光は、集光レンズ64を経てフォトディテクタ66で受光される。すなわち、波長660nmあるいは波長780nmのレーザ光に対応した記録媒体の場合には、フォトディテクタ66が共用され、その出力に基づいてフォーカスエラー、トラッキングエラーおよび記録信号の検出が行われる。なお、フォーカスエラー、トラッキングエラーが検出された場合の動作などは、上述した波長405nmの場合のときと同じである。
本実施の形態によれば、一番波長の短い光と他の光との合致、分離をダイクロイックプリズム11で行い、残り2つの光の合致、分離を波長の違いによる屈折率の違いを利用したプリズム54で行うようにしたので、光ピックアップを小型化することができる。また、屈折率の違いを利用したプリズム54で曲げられる光路の角度の内、180度より小さい角度74を、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側にして、光ピックアップをモータ24に巻き付くような形状としたので、光ディスクドライブ装置内のスペースを有効に利用でき、より小型化が図れる。さらに、本実施の形態では、光を合成、分離するプリズム54にビーム整形機能も持たせたので、部品点数を削減でき、安価にすることができる。
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態を示す光ピックアップの要部断面図である。
本実施の形態では、第1実施の形態と異なり、図4に示すように、屈折光学手段を2つのプリズム54および55をもって構成して、コリメータレンズ60から出射した光を、2つのプリズム54および55を経て合成して偏光ビームスプリッタ58に入射させる。なお、図4では、図面を明瞭とするために、レーザダイオード51から1本の光路71のみを示しているが、レーザダイオード51からは第1実施の形態と同様に2本の光路がある。すなわち、本実施の形態では、レーザダイオード51からの波長の異なる2つの光を、2つのプリズム54および55で屈折率の違いを利用して合成、分離する。ここで、2つのプリズム54,55に入射する前の光路71と、2つのプリズム54,55から出射する光路73とのなす角度の内、180度より小さい角度74が、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側となっている。その他の構成および動作については、第1実施の形態とほぼ同じである。
このように、本実施の形態では、屈折率の違いを用いて2つの波長の光を合成、分離する屈折光学手段を、2個のプリズム54,55の組み合わせとして構成したので、光学特性の悪い部分をキャンセルすることができ、良好な光学特性を得ることができる。
(第3実施の形態)
図5は、本発明の第3実施の形態を示す光ピックアップの要部断面図である。
本実施の形態は、第1実施の形態に対して、波長405nmの光学系と、波長660nmおよび波長780nmの光学系との位置が異なるもので、図5では第1実施の形態と同じ光学素子には同一参照符号を付してある。
すなわち、第1実施の形態では、波長405nmの光学系をX(+)、Y(+)方向に配置したが、本実施の形態では、これをY(−)に配置して、レーザダイオード31からの光を、ビーム整形レンズ34および回折格子36を経て偏光ビームスプリッタ38に入射させる。偏光ビームスプリッタ38は、第1実施の形態とは異なり、往路では光を反射させて、1/4波長板39を経てコリメータレンズ40で平行光にしてダイクロイックプリズム11に入射させる。デイクロイックプリズム11は、第1実施の形態とは異なり、波長405nmの光のみを透過するように構成して、その透過した波長405nmの光を、球面収差補正板12および反射ミラー14を経て対物レンズ1により記録媒体上に照射してスポットを形成する。また、偏光ビームスプリッタ38に入射した光の一部は透過させて、その透過光をフォトディテクタ43で受光する。
記録媒体で反射される波長405nmの戻り光は、ダイクロイックプリズム11および偏光ビームスプリッタ38を透過するという点が第1実施の形態と異なるが、その他は第1実施の形態と同様にして、フォトディテクタ46で受光される。
また、第1実施の形態では、波長660nmおよび波長780nmの光学系をY(−)方向に配置したが、本実施の形態は、これをX(+)、Y(+)方向に配置して、偏光ビームスプリッタ58および1/4波長板59を経て出射される光束を、反射ミラー62を経てダイクロイックプリズム11で反射させて対物レンズ1側に向かわせる。ここでも、プリズム54に入射する光路71(第1実施の形態と同じく光路72もあるが、図示していない)と出射する光路73とのなす角度の内、180度より小さい角度74を、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側としている。
記録媒体で反射される波長660nmおよび波長780nmの戻り光は、ダイクロイックプリズム11および反射ミラー62で順次反射させて1/4波長板59を経て偏光ビームスプリッタ58に入射させることにより、第1実施の形態と同様にしてフォトディテクタ66で受光する。なお、光学部品の固定法や、その他の構成および動作は第1実施の形態とほぼ同じである。
本実施の形態のような配置であっても、一番波長の短い光と他の光との合致、分離をダイクロイックプリズム11で行い、残り2つの光の合致、分離を波長の違いによる屈折率の違いを利用したプリズム54で行うことにより、光ピックアップの小型化を図ることができる。また、屈折率の違いを利用したプリズム54で曲げられる光路の角度の内、180度より小さい角度74を、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側として、光ピックアップをモータ24に巻き付くような形状とすることにより、光ディスクドライブ装置内のスペースを有効に利用して、より小型化が図れる。
(第4実施の形態)
図6乃至図8は、本発明による光ピックアップの第4実施の形態を示すもので、図6は上面図、図7は図8の線80の位置でZ(+)方向から見た断面図、図8は要部側面断面図である。
本実施の形態において、レンズアクチュエータ10は、フォーカスコイル3a,3b、トラッキングコイル4a〜4dを有して構成され、対物レンズ1はホルダを介して第1実施の形態と同様に、図示しない記録媒体の垂直方向(Z方向)および半径方向(X方向)に移動可能に支持されている。このレンズアクチュエータ10は、図8に示すようにキャリッジ21に固定されている。
レンズアクチュエータ10のZ(−)方向には、収差補正素子12がホルダ13を介してキャリッジ21に固定されており、さらにZ(−)方向にダイクロイックプリズム11がキャリッジ21に直接固定されている。第1実施の形態とは異なり、対物レンズ1と収差補正素子12との間に反射ミラーは存在しない。
ダイクロイックプリズム11は、波長405nmの光を透過し、波長660nmおよび波長780nmの光は反射するように構成されている。ダイクロイックプリズム11を含む図示しない記録媒体と平行なXY平面内には、波長660nmおよび波長780nmのレーザ光を発光するレーザダイオード51、回折格子56、コリメータレンズ60、プリズム54、偏光ビームスプリッタ58、1/4波長板59、フォトディテクタ63、集光レンズ64、フォトディテクタ66からなる第1実施の形態とほぼ同じ、波長660nmおよび波長780nmに対応する光学系がキャリッジ21に固定されている。なお、プリズム54に入射する光路71,72と出射する光路73のなす角度の内、180度より小さい角度74が、第1実施の形態と同様に、記録媒体を回転させるモータ24の中心26側に位置している。
キャリッジ21には、さらに光学ハウジング82がネジ(図示せず)によって固定されている。この光学ハウジング82には、波長405nmのレーザ光を発光するレーザダイオード31、回折格子36、ビーム整形レンズ34、偏光ビームスプリッタ38、1/4波長板39、コリメータレンズ40、フォトディテクタ43、集光レンズ44およびフォトディテクタ46からなる第1実施の形態とほぼ同じ、波長405nmに対応する光学系が固定されている。
ここで、ビーム整形レンズ34を保持する鏡筒35は、イタにより取り付けられ、コリメータレンズ40を保持する鏡筒41は、光学ハウジング82に設けた円筒状穴部に装填されており、それらの固定方法が第1実施の形態の場合とは逆になっているが、その他は第1実施の形態とほぼ同じである。
光学ハウジング82は、コリメータレンズ40がダイクロイックプリズム11のZ(−)方向に位置するように、キャリッジ21に固定されている。ダイクロイックプリズム11は、波長405nmの光を透過するので、コリメータレンズ40を出射した光は、ダイクロイックプリズム11を透過して対物レンズ1へ到達する。ダイクロイックプリズム11および光学ハウジング82内の波長405nmに対応する光学系は、波長660nmおよび波長780nmに対応する光学系が展開される平面と平行でないYZ平面内に展開される形となる。その他の構成および動作については、第1実施の形態とほぼ同じである。
本実施の形態によれば、第1実施の形態と比較して、Z方向から見た投影面積を小さくできる。また、波長405nmに対応する光学系と、波長660nmおよび波長780nmに対応する光学系とを、互いに交わらない別の平面内に展開することで、光学部品の重なりを少なくでき、外部から光学部品へのアクセスがし易くなる。したがって、光学部品の取り付けや位置調整が容易になり、組立性を向上することができる。特に、本実施の形態のように波長405nmに対応する光学系と、波長660nmおよび波長780nmに対応する光学系とを直交させると、治具で固定し易くなるなど、組立性がさらに向上する。また、本実施の形態のように、波長660nmおよび波長780nmに対応する光学系を記録媒体と平行にすれば、より小型化し易くなる。
さらに、波長405nmに対応する光学系を、光学ハウジング82を介してキャリッジ21に固定することで、キャリッジ21および光学ハウジング82を小型で単純な形状にすることができ、これにより部品自体の製作が容易になると共に、光学部品などを取り付ける際のキャリッジ21および光学ハウジング82の固定等を簡単にでき、組立性をより向上することができる。
また、波長が短くなればなるほど光学系への要求が厳しくなり、光ピックアップの性能をだすのが難しくなるが、光学系と対物レンズや、対物レンズの取り付け時の傾きなどの組み合わせで、同じ光学系でも違う対物レンズおよびそれを備えるレンズアクチュエータと組み合わせると、悪い特性がキャンセルして光ピックアップの特性が良好になることがある。本実施の形態では、特性が悪かった場合、キャリッジ21から光学ハウジング82を交換し、対物レンズ1およびレンズアクチュエータ10との組み合わせを変更することで、特性を良好にできることがあり、光ピックアップの歩留まりを向上させることができる。
さらに、それでも特性が悪かった場合、光学ハウジング82を取り外し、波長660nmおよび波長780nm用の光ピックアップとすることができる。これにより、キャリッジ21の部分を廃棄する必要がなくなり、総合的な歩留まりを向上させることができる。
(第5実施の形態)
図9は、本発明の第5実施の形態を示す光ピックアップの要部断面図である。
本実施の形態は、第1実施の形態の波長660nmおよび波長780nmのレーザ光を発光するレーザダイオード51の光が通るコリメータレンズ60と偏光ビームスプリッタ58との間にあったプリズムの代わりに、回折光学素子である回折格子91をホルダ92に保持して設け、この回折格子91により波長780nmの光を直進させて光路71と光路73とを合致させ、波長660nmの光は回折させて光路72を光路73に合致させるようにしたものである。なお、回折格子91の前後の光路で角度(180度でない)を持つ光路72と光路73との180度より小さい角度74が、図示しない記録媒体を回転させるモータ24の中心26側となっている。その他の構成および動作については、第1実施の形態とほぼ同じである。
本実施の形態においても、光ピックアップを小型化することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、種々の変形または変更が可能である。例えば、波長405nmの光学系として、1つのケース内に光学素子を集積させたいわゆる集積光学系を用いることもできる。また、波長も、上記以外の波長とすることもできる。
さらに、ダイクロイックプリズム11で、波長405nmの光と、波長660nmおよび波長780nmの光とを分離、合成するようにしたが、記録媒体からの例えば波長405nmの戻り光の一部を、波長660nmおよび波長780nm側の光学系に導いてサーボ信号などを検出するように構成することもできる。
また、各光学系内に、収差補正などの光学素子をさらに加えることもできる。さらに、第2〜4実施の形態において、波長660nmと波長780nmとの光を合成するプリズムに代えて第5実施の形態と同様に回折格子を用いることもできる。
さらにまた、上記実施の形態の光ピックアップを光ディスクドライブ装置に備えることで、光ディスクドライブ装置を小型化することができると共に、光ディスクドライブ装置の歩留まりを向上でき、コストダウンを図ることができる。