JP2005069769A - X線結晶方位測定装置とそれに使用する結晶試料保持装置、並びに、それに使用する結晶定方位切断方法 - Google Patents

X線結晶方位測定装置とそれに使用する結晶試料保持装置、並びに、それに使用する結晶定方位切断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 巨大結晶の結晶方位を測定して所望の方位で切り出す結晶定方位切断方法を提供し、そのためのX線結晶方位測定装置と結晶試料保持装置を提供する。
【解決手段】 測定用小孔11を備えた試料テーブル10上に配置されたサンプルホルダー20に結晶試料Sの被測定面を下面にして載置し、テーブルの下方に配置されたX線管100からのX線をコリメータ110を介して被測定面へ照射し、その回折像をCCDカメラ120で撮像し、これにより結晶定方位を測定する。なお、試料テーブル10上のサンプルホルダー20は、金枠21の裏面に透明シート22を付着してなり、その中央部に結晶試料Sを載せて自在に移動可能である。所望の結晶方位で切断する結晶体Cは、その一部が切り出され、上記のX線結晶方位測定装置によって、その切断面における結晶方位が測定され、その後、測定結果により前記結晶体の切り出し面を決定して所望の方位に沿って結晶体の切断が行なわれる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、単結晶材料などの結晶を所定の結晶方位で切断するための結晶定方位切断方法に関し、更には、かかる方法を実施するために使用する結晶試料保持装置とそれに好適なX線結晶方位測定装置に関する。
一般に、単結晶は、原子または分子が規則正しく周期的に配列したものであり、従って、結晶のどの場所でも、その結晶方位は同じであり、このような結晶は、通常、シングルドメインであると言われる。かかる単結晶では、その結晶方位により機械的、光学的、電磁気的性質が異なっており(異方性がある)、この結晶の特性を積極的に利用する場合には、その結晶方位を調べ、一定の方向に切り出して(定方位切断)利用している。そのため、結晶方位測定が必要となる。
ところで、従来技術における結晶の方位測定方法について、以下に、添付の図を参照しながら説明する。
まず、図8に第1の例(ゴニオスタットとポラロイドカセットを使用した方位測定方法)を示す。この例で定方位切断加工を施すには、次の手順を踏む。
(1)結晶を直交する3軸の回転機構が付いたゴニオスタットの上に固定する。(2)ポラロイドカセットでラウエ写真を撮影する。(3)撮影結果を解析して3軸の回転で角度補正を加え所望の格子面に方位を調整する。(4)調整後、所定の格子面が設定させているか再確認の撮影を行う。必用なら微調整を施す。(5)結晶をゴニオスタットごと外周歯カッターに移設し、結晶を切断する。
この方法は最も一般的に行なわれている方法であるが、しかしながら、取り扱うことが可能な結晶の最大径は20mm程度までであり、例えば、螢石の巨大結晶(例えば、300〜400mmの大口径の結晶)に適用することはできない。
次に、添付の図9に示す例(3軸の回転機構とポラロイドカセットを使用した方位測定方法)でも、直交する3軸の回転機構により結晶を保持することにより、結晶の方位調整が可能である。この例では、内周歯カッター用で、同様に方位調整で面出しの終わった結晶は、φ回転機構ごとカッターのバイスに移設される。その後、χ,ω角は、ゴニオメータの目盛り板で読み取り、カッター付属のχ,ω回転機構に写し取って切断する。しかしながら、この方法で取り扱える結晶の大きさも、せいぜい直径100mm程度までであり、到底、上述したような螢石巨大結晶に適用することはできない。
更に、添付の図10の例は、上記のような巨大結晶にも適用できる方法であるが、但し、結晶が巨大で重いため、χ回転機構は省かざるを得ない。そのため、もっぱらφとω回転機構で面出し調整を行うものである。ところで、結晶はゴニオメータのV溝に乗せるため、その外形を円筒研削され、かつ、両端面も棒軸に垂直に切断した状態に整備する必要がある。ω回転は、このV溝に乗った結晶を回転ノブの調整で設定でき、他方、φ回転は、プロトラクター(分度器)を利用する。
先ず、ポラロイドカセットによる撮影前に、基準のケガキ線を結晶の外周面に入れておく。その方位測定後、プロトラクターを回転修正すべき角度に設定し、設定した定規とケガキ線とが平行になるよう結晶を回転設定する。プロトラクターをゼロ位置に戻し、再び、ケガキ線を書き込み、これを切断のときの基準線とする。なお、この場合には、カッターとしては、上記の外周歯や内周歯は使えないため、帯鋸カッターで結晶の切断が行なわれる。その後、スコヤでφ回転位置基準のケガキ線と平行にセットする。端面とカッターのプレードをω角に設定して切断する。以上の手順を踏んでいた。
なお、例えば、ブリッジマン法で育成された螢石結晶(CaF,Fluorite)では、各種の応用目的を果たすために、近年では、300〜400mmの大口径の結晶が人工的に育成されており、上述したようにその結晶方位による異方性を積極的に利用する場合には、このように巨大な結晶の方位を調べ、かつ、必要な方位で切断加工することが必要となってきている。
また、結晶方位測定とは、結晶の外形に対し、その結晶軸がどのように取り付いているかを調べることであり(全3軸方位)、そのためには、一般的に、ラウエ(Laue)法が利用されている。
さらには、以下に示す特許文献1によれば、特性X線を利用してブラッグ反射が起きるX線の入射角を測定し、もって、既知のブラッグ角から求める面方位を測定する方法や装置も既に知られている。なお、かかる測定方法を採用した面方位測定装置も既に製品化されており、例えば、FSASあるいはSAMの名称により商品化されている。
また、やはり特性X線を利用してブラッグ反射が起きるX線の入射角を測定し、それと共に、回折X線が検出器のどの位置に入射したかを併せて調べることにより、結晶方位を測定する方法も既に、以下の特許文献2により知られている。
特公平4−59581号公報(特開昭57−136151号公報);第3図 特公平3−58058号公報(特開昭57−136150号公報);第4図
上記に説明した従来技術では、その一部によれば、巨大結晶が扱えるものの、しかしながら、結晶を円筒研削したり、端面を棒軸に垂直に加工するなどの前準備に手間がかかる欠点があった。特に、螢石結晶はブリッジマン法によって結晶育成がなされ、そのため、結晶成長後の形状は、通常、坩堝の形であり、所謂、円筒部と円錐部がある。なお、かかる螢石の巨大結晶は、結晶成長に大電力と長時間(約3ケ月程度)を要し、大変に高価な結晶である。そのため、その錐部も利用してなるべく無駄を出したくないという要望も強い。
加えて、特に螢石の特長として、方位の僅かに異なる結晶粒より構成される、所謂、サブグレイン構造になっていることが挙げられる。しかしながら、上述した従来技術のX線方位測定試料保持機構では、場所を数ケ所変えて測定してその平均値で定方位切断加工を行なおうとした場合、困難であるか、又は、更に複雑な機構を必要とするものであった。
そこで、本発明では、上述の従来技術における問題点を解消し、特に、螢石結晶等の巨大な結晶について、その結晶方位を測定し、所望の一定方位で切り出すための方法であり、簡単に実現することの可能な結晶定方位切断方法を提供し、更には、かかる結晶定方位切断方法において結晶方位を測定するために使用するに適したX線結晶方位測定装置を、更には、そのために使用するに好適な結晶試料保持装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明によれば、まず、その一部に測定用小孔を形成し、結晶試料の被測定面を下面にして載置可能な試料テーブルと、前記テーブルの下方に配置され、X線を前記測定用小孔を介して前記結晶試料の被測定面に照射する手段と、前記結晶試料の被測定面からの回折像を撮像する手段と、前記撮像手段により撮像された回折像に基づいて、前記結晶試料の被測定面における結晶定方位を測定するX線結晶方位測定装置が提供される。
また、本発明によれば、前記したX線結晶方位測定装置において、さらに、上記試料テーブル上に載置された前記結晶試料をその表面上に移動可能にする手段を備えてもよく、また、前記結晶試料の被測定面からの回折像を撮像する手段は、CCDカメラにより構成されていることが好ましい。
さらに、本発明によれば、やはり、上記の目的を達成するため、前記に記載したX線結晶方位測定装置によって結晶試料の結晶方位を測定するために使用する結晶試料保持装置であって、その一部に測定用小孔を形成し、かつ、円滑表面を有する試料テーブルと、前記試料テーブルの円滑表面上に配置され、かつ、所定形状の枠体の底面にX線を透過可能なシート状部材を貼り付けてなる試料ホルダー部と、前記試料ホルダー部を前記試料テーブルの円滑な表面上で移動可能にする移動手段とを備えている結晶試料保持装置が提供される。
なお、本発明では、前記の結晶試料保持装置において、前記試料テーブルの円滑表面は、エンジニアリングプラスチックで形成し、及び/又は、前記X線が透過可能なシート状部材は、PETシート又はルミラーシートから構成されていることが好ましい。加えて、前記透過可能なシート状部材の表面には、その上に載置される結晶試料の位置を決定するためのマークが形成されていることが好ましい。
更に、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するため、結晶体の結晶方位を測定して結晶体を所定の方位で切断するための結晶定方位切断方法であって、前記結晶体の一部を切り出し、前記切り出した結晶体の切断面における結晶方位を、前記に記載したX線結晶方位測定装置によって測定し、前記測定結果により前記結晶体を所定の結晶方位に沿って切断する結晶定方位切断方法が提供されている。
そして、本発明によれば、前記の結晶定方位切断方法において、前記工程を繰り返して切断面の微調整を行なってもよく、又は、前記切り出した結晶体の切断面における結晶方位を測定する際、前記切り出した結晶体を移動しながら複数点での結晶方位を測定してもよい。
本発明になる結晶試料保持装置およびX線結晶方位測定装置によれば、大口径の結晶試料の結晶方位解析が容易かつ簡単に可能となり、かつ、本発明になる結晶定方位切断方法では、これらの装置を利用することによって巨大結晶をも含む測定試料を無駄なく、かつ、正確な方位で切断することが可能となるという優れた効果を発揮することが出来る。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明になる結晶試料保持装置について、添付の図2〜図4を参照しながら説明する。なお、この結晶試料保持装置は、上記した螢石結晶等の巨大な結晶をその基準面上に載せて平面(x−y軸)上で移動可能な、所謂、試料ステージとして構成されている。
試料ステージは、以下のような構造と機能である。
まず、この試料ステージは、図2に示すように、平面板の試料テーブル10上に、サンプルホルダー20を配置し、さらに、このサンプルホルダー20を試料テーブル平面上でx軸及びy軸方向に移動可能なX,Y移動機構30、40を設けて構成されている。なお、ここでは図示しないが、この試料テーブル10の中央部(以下に述べるケガキ線の交差点)には、試料の結晶方位を測定するための小孔が形成されている。
また、その上に試料(サンプル)Sを載せるサンプルホルダー20は、図3(A)及び(B)に示すように、例えば、外形530mm×550mmで、その内部に開口を有する、所謂、「ロ」の字状の金枠21に、透明フィルム22を張った構造となっている。なお、この透明フィルム22は、例えば、PETシートやスミラーシートなど、X線を透過する透明シートであり、このシートは、例えば、上記金枠21の裏面に付着された両面テープによって取り付けられ、試料の保持面を形成している。他方、上記試料テーブル10は、その表面の摩擦の小さい高分子材料からなる、所謂、エンジニアリングプラスチックの板で構成されており、円滑面を形成している。また、図中の符号23は、サンプルホルダー20の中央部に、透明シート22上に十字に形成された基準クロスのマーク、所謂、ケガキ線である。
再び、上記の図2に戻り、上記のサンプルホルダー20は、螢石結晶等の巨大な結晶である試料(S)をその中央部に載せた状態で移動するが、上述したように、サンプルホルダー20の裏面に両面テープで取り付けられた透明フィルム(シート)22は、表面の摩擦の小さいエンジニアリングプラスチックの板の上に支持されて移動し、そのことから、破損されることなく、X,Y移動機構30、40によって自在に移動することが出来る。なお、本実施の形態では、X,Y移動機構30、40は、それぞれ、ガイドレールとネジ送りにより構成されており、図中の符号31、41は、それぞれ、そのネジ送りを回動するためのハンドルである。また、X,Y軸上の表示は、例えば、mm単位で行なわれ、LEDによる表示や、目盛り表示も可能である。さらに、上記のハンドル操作による移動機構に代えて、ステッピングモータによる電動移動機構を採用することもできる。
また、上記の構成になる試料ステージでは、試料Sは、サンプルホルダー20の透明シート22上に、その被測定面を下にして置くだけであり、クランプ等は行なわず、透明シートとの摩擦力だけで止まっているであり、そのため、被測定面での結晶定方位の測定に何等の悪影響をも及ぼすことがなく、方位測定のための結晶保持機構として好適な構造である。
上記の試料ステージに搭載される試料Sは、特に、螢石結晶等の巨大な結晶では、その試料サイズは、最大直径450mm、最大厚さ300mm、最大重量150kg程度にもなる。なお、後に説明する本発明のX線結晶方位測定装置によりその結晶方位を測定可能な試料の条件としては、上述の結晶試料保持装置である試料ステージの特徴から、以下のことが挙げられる。
(1)基準面に置くだけの保持なので、測定面は凹凸が無く平面であること。
(2)試料形状は、円筒形、円錐形、スラブ状であっても測定面が平面であれば、形状は問わない。
(3)方位解析の基準として、試料側面にアジマス線を付けて試料基準とする。
(4)測定面の仕上げは、ラウエ斑点が観察可能なこと。換言すれば、加工歪みが測定に影響のない程度であることである。通常、ダイアモンドプレードによるAsCut面で十分である。
次に、上述した結晶試料保持装置(試料ステージ)によってx−y軸方向に移動可能に保持された試料Sについて、その結晶方位を測定するX線結晶方位測定装置の構成について、添付の図4を参照しながら説明する。
この図4にも明らかなように、上述した試料テーブル10の中央部に形成された、試料の結晶方位を測定するための(測定用)小孔が符号11により示されており、この測定用の小孔11は、図示のように、その上面での開口径は小さいがその底面に向かって広がる、所謂、テーパ状に形成されている。そして、この測定用小孔11の下方には、測定用のX線を発生するX線管100、このX線管100からの測定用のX線を平行X線にすると共に、所定の径に絞るためのコリメータ110、そして、上記X線を上記試料結晶Sの下面(測定面)に照射することにより得られるラウエパターンを撮像するための装置である、所謂、CCDカメラ120とが設けられている。また、図中の符号101は、上記X線管100に所定の高電圧等を供給するための手段を備えた、所謂、X線発生装置を示している。
なお、上記のコリメータ110は、図4に示すように、上記試料結晶Sの下面(測定面)に対して所定の角度ω(例えば、約60度)で入射するように設定・配置されており、一方、ラウエパターンを撮像するCCDカメラ120も、同様に、上記試料結晶Sの下面(測定面)に対して同じ角度ωで配置されている。また、上記CCDカメラ120の前面には、照射X線により光を発生する蛍光板121が取り付けられており、CCDカメラ120は、この蛍光板121の発光により形成されるラウエパターンを撮像し、電気信号に変換する。この蛍光板121と上記試料晶Sの下面(測定面)との距離は、例えば、約35mm程度に設定されている。
また、上記CCDカメラ120には、その制御を行なうためのカメラコントロール122、さらには、上記CCDカメラ120により得られた画像信号をディジタル処理し、CPUのメモリー上に取り込む処理を行なうイメージグラバ123が接続されている。これらカメラコントロール122やイメージグラバ123は、制御装置(例えば、パーソナルコンピュータから構成される)であるCPU140に接続されており、また、このCPU140には、出力装置であるディスプレイ141、入力装置を構成するキーボード142やポインティングデバイスであるマウス143が、記憶手段であるハードディスク装置(HD)144、CD−ROM145、FD146が、そして、やはり出力装置であるプリンタ147が接続されている。
以上にその構成を説明したX線結晶方位測定装置によれば、上記した結晶試料保持装置である試料ステージ(図2を参照)に、測定結晶である試料Sをただ置くだけである。すなわち、上記結晶試料保持装置である試料ステージの上に試料Sを載せた状態で移動しながら、その下面の測定面における結晶方位を、上記X線結晶方位測定装置の働きによって測定する。すなわち、X線管100から発生されたX線は、コリメータ110で絞られ、試料Sの下面に照射される。その結果得られたラウエパターンは、蛍光板121に投影され、CCDカメラ120により撮像される。その後、CPU140に取り込まれた画像は、例えば、上記HD144内に記憶されたソフトウェアプログラムなどによる画像処理により、そのラウエ斑点の位置が計測され、全3軸方位解析が自動的に実行される。
続いて、上記にその詳細を説明したX線結晶方位測定装置及び結晶試料保持装置(試料ステージ)によって、例えば、螢石等の単結晶材料の結晶方位を測定して所定の方位で切断するための結晶定方位切断方法について、添付の図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、上述したように、最大直径450mm、その重量が200〜3000kg程度にも達し、かつ、円筒部の上に円錐部を積み重ねた、所謂、坩堝形状の螢石結晶等の巨大な結晶から、所定の方位で切り出す、定方位切断方法について説明する。
まず、図1の(A)に破線で示すように、坩堝形状の結晶体Cから錐部(先端の一部)c1を試し切りする。なお、その際、切り出された結晶体と結晶本体との関係がわかるように、切断個所に照合線rを入れておく(例えば、軸方向に対して直角な面での直交方向)。
次に、図1の(B)に示すように、切り出した錐部c1の切断面の方位測定を行なう。すなわち、定方位切断したい格子面の傾き角αと傾きの方向βを求める。必要ならば、結晶試料保持装置(試料ステージ)によって錐部c1の下面をX−Y軸方向に移動して、結晶面内で複数の点で方位を測定し、その測定結果の平均によってα、βを与えることもできる。
なお、これら傾き角αと方向βは、アジマス線aを付けるための基準とする。方位測定の結果得られたベクトルVと、xy軸(4ヶ所のアジマス線a)、そして、格子面の傾き角αと傾きの方向βの関係について、添付の図5に示す。すなわち、図5で格子面の方位を表現するために、図2に示した方位解析の基準座標(xyz)に対し、方位角α,βを定義している。角αは、格子面法線とz軸とのなす角、角βは、格子面法緑のxy平面への投影線とx軸とのなす角である。こうして、結晶の外形に対し、格子面の傾き角αと傾きの方向角βが、上記解析の結果から分かる。そして、図6にも示すように、錐部と結晶本体を照合線であわせ、アジマス線を結晶本体に写し取り、xy座標を定め、このxy座標を基準に角αと角βを設定して切断する(図1(C))。
上述した定方位切断の仕方の更に詳細を説明する。例えば、面方位を{111}に調整して切り出したい時には、方位測定の結果から{111}の中でαが一番小さな値を選ぶ。例えば、添付の図7に示した全3軸方位測定の結果の例では、アンダーラインで示した(−1−11)のαが一番小さい値を示している。なお、ここで、αの小さい値を選択するのは、切断のし易さと、材料の無駄を最小限にするためである(円筒形状に整形されることによる)。そして、この切断はアジマス線a((x,y)座標)を基準にして、添付の図6に示すように、α,β角を設定してカッターで切断する。なお、上記の説明では、定方位切断の仕方を、簡単のため円筒形の場合について述べたが、しかしながら、実際には、図1(C)に示す手順で行なうのが望ましい。
更に、上記図1(C)で切断したスラブ状結晶c2の切断面により方位測定を行ない(図1(D)を参照)、所望の方位に切断されているかどうか確認する。なお、その結果、修正が必要であれば、上記の上記図1(C)の作業を繰り返し、切断面の微調整を行なう。そして、所定の方位精度で切断されていれば、その後、その切断面を基準として、結晶体Cを必要な厚さで切断し(所謂、本切断を行なう)、所望の異方性を備えた円筒(円盤)状の結晶を得る。なお、この時、結晶試料をサンプルホルダー20の中央部に載せる際には、試料側に付けられたアジマス線を、サンプルホルダー20の透明シート22に形成された十字マーク(基準クロス)とを合わせるように配置する。または、試料を置いた後に、基準クロスに合わせてアジマス線を付けてもよい。
なお、上記図1の(B)や(D)に示した工程において方位測定を行なう場合、特に、上述したような巨大な結晶では、切り出した結晶(試料S)も大きな重量結晶となるが、上述したような結晶試料保持装置(試料ステージ)によれば、例えば、400mmφ、100mm厚さ、40kg程度の螢石結晶であれば、XY移動が可能であり、高精度で方位測定を行なうことが出来る。また、更に重量結晶を扱う場合、例えば、螢石結晶等の巨大な結晶で、その試料サイズが最大直径450mm、最大厚さ300mm、最大重量150kg程度となる試料Sでも、例えば、上記試料ステージを構成する上記試料テーブル10と透明シート22との間に、圧搾空気を導入し、試料のXY移動をエアーで浮かせて行なうことによって可能である。但し、方位の測定時にはその必要はなく、エアーによる浮上を停止する。
加えて、上記の実施の形態の例においては、上記図4にも示すように、CCDを用いた側面反射ラウエ法光学系による方式を示したが、しかしながら、本発明ではこれだけに限定されることなく、その他、例えば、ポラロイド写真による背面反射ラウエ法光学系により測定することも可能である。
以上のように、発明では、結晶方位測定を行なう試料結晶を、測定面を下面にして試料テーブルの試料ステージ上に置くだけで、試料結晶を移動しながらその結晶方位を測定することが可能となる。特に、上述した螢石等の巨大結晶では、その一部にサブグレイン構造がある場合もあり、試料面内で何点か測定することにより、測定結果の平均で定方位切断の角度を決める場合がある。かかる場合にも、上記の結晶試料保持装置(試料ステージ)によれば、試料結晶を試料ステージ上に置くだけであることから、測定毎に試料の姿勢が変わらないように移動しながら、かつ、試料にはクランプ等で応力がかからないようにすることが可能になり、良好な状態での高精度な方位計測が可能となる。
産業上の利用性
以上の詳細な説明からも明らかなように、本発明になる結晶試料保持装置およびX線結晶方位測定装置によれば、大口径の結晶試料の結晶方位解析が容易かつ簡単に可能となり、かつ、本発明になる結晶定方位切断方法では、これらの装置を利用することによって巨大結晶をも含む測定試料を無駄なく、かつ、正確な方位で切断することが可能となるという優れた効果を発揮することが出来、結晶試料保持装置およびX線結晶方位測定装置に適用できる。
本発明の一実施の形態になる結晶定方位切断方法における工程を説明する説明図である。 上記結晶定方位切断方法に使用される結晶試料保持装置(試料ステージ)の全体構成を示す上面図である。 上記結晶試料保持装置(試料ステージ)のサンプルホルダーの詳細構造を示す展開斜視図及びその裏面図である。 上記結晶定方位切断方法に使用されるX線結晶方位測定装置の全体構成を示す図である。 上記結晶定方位切断方法において、測定結晶面で格子面の傾き角αと方向β、格子面法線ベクトル、xy軸(4ヶ所のアジマス線)の関係を説明する図である。 上記結晶定方位切断方法において切断される切断面を説明する図である。 上記結晶定方位切断方法において、上記X線結晶方位測定装置による全3軸方位測定の結果の一例を示す図である。 従来技術の一例(ゴニオスタットとポラロイドカセットを使用した方位測定方法)を示す図である。 従来技術の他の例(3軸の回転機構とポラロイドカセットを使用した方位測定方法)を示す図である。 従来技術の更に他の例を示す図である。
符号の説明
10 試料テーブル
11 測定用小孔
20 サンプルホルダー
21 金枠
22 透明シート
23 基準クロスマーク(ケガキ線)
30、40 X,Y移動機構
100 X線管
110 コリメータ
120 CCDカメラ
121 蛍光板
S 試料
C 結晶体
c1 切り出し錘部
c2 切断したスラブ状結晶

Claims (10)

  1. その一部に測定用小孔を形成し、結晶試料の被測定面を下面にして載置可能な試料テーブルと、前記テーブルの下方に配置され、X線を前記測定用小孔を介して前記結晶試料の被測定面に照射する手段と、前記結晶試料の被測定面からの回折像を撮像する手段と、前記撮像手段により撮像された回折像に基づいて、前記結晶試料の被測定面における結晶定方位を測定することを特徴とするX線結晶方位測定装置。
  2. 前記請求項1に記載のX線結晶方位測定装置において、さらに、上記試料テーブル上に載置された前記結晶試料をその表面上に移動可能にする手段を備えたことを特徴とするX線結晶方位測定装置。
  3. 前記請求項1に記載のX線結晶方位測定装置において、前記結晶試料の被測定面からの回折像を撮像する手段は、CCDカメラにより構成されていることを特徴とするX線結晶方位測定装置。
  4. 前記請求項1に記載したX線結晶方位測定装置によって結晶試料の結晶方位を測定するために使用する結晶試料保持装置であって、その一部に測定用小孔を形成し、かつ、円滑表面を有する試料テーブルと、前記試料テーブルの円滑表面上に配置され、かつ、所定形状の枠体の底面にX線を透過可能なシート状部材を貼り付けてなる試料ホルダー部と、前記試料ホルダー部を前記試料テーブルの円滑な表面上で移動可能にする移動手段とを備えていることを特徴とする結晶試料保持装置。
  5. 前記請求項4に記載の結晶試料保持装置において、前記試料テーブルの円滑表面は、エンジニアリングプラスチックで形成したことを特徴とする結晶試料保持装置。
  6. 前記請求項4に記載の結晶試料保持装置において、前記透過可能なシート状部材は、PETシート又はルミラーシートから構成されていることを特徴とする結晶試料保持装置。
  7. 前記請求項6に記載の結晶試料保持装置において、前記透過可能なシート状部材の表面には、その上に載置される結晶試料の位置を決定するためのマークが形成されていることを特徴とする結晶試料保持装置。
  8. 結晶体の結晶方位を測定して結晶体を所定の方位で切断するための結晶定方位切断方法であって、前記結晶体の一部を切り出し、前記切り出した結晶体の切断面における結晶方位を、前記請求項1に記載したX線結晶方位測定装置によって測定し、前記測定結果により前記結晶体を所定の結晶方位に沿って切断することを特徴とする結晶定方位切断方法。
  9. 前記請求項8に記載の結晶定方位切断方法において、前記工程を繰り返して切断面の微調整を行なうことを特徴とする結晶定方位切断方法。
  10. 前記請求項8に記載の結晶定方位切断方法において、前記切り出した結晶体の切断面における結晶方位を測定する際には、前記切り出した結晶体を移動しながら複数点での結晶方位を測定することを特徴とする結晶定方位切断方法。
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