JP2005066824A - ガラス用親水性被覆材 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温雰囲気下でも曇らない冷蔵ショウケ−スの窓ガラスを与える。また、晴天・雨天や昼夜間にも拘わらず、防曇性、自己洗浄性、耐磨耗性に優れるアウトサイドミラ−、洗面台鏡を提供する。
【解決手段】三酢酸セルロ−スフィルム基材3の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4が設けられている、ガラス5基材に貼着されて使用される親水性被覆材A。(1)コ−ト層の鉛筆硬度は2H以上と硬い。(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4に付着した雨滴は瞬時に薄い水膜となって広がるので、視界が遮られることはない。また、呼気や温泉の水蒸気により鏡が曇ることはない。
【選択図】 図1
【解決手段】三酢酸セルロ−スフィルム基材3の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4が設けられている、ガラス5基材に貼着されて使用される親水性被覆材A。(1)コ−ト層の鉛筆硬度は2H以上と硬い。(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4に付着した雨滴は瞬時に薄い水膜となって広がるので、視界が遮られることはない。また、呼気や温泉の水蒸気により鏡が曇ることはない。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵ショウケ−ス(断熱函体)の窓ガラスの親水性被覆材、並びに、車輛用のアウトサイドミラ−、サイドガラス、リアガラスおよびル−ムミラ−、建築構造物の窓ガラス、浴室用鏡、洗面鏡、温室栽培用ハウス材、光学レンズなどに使用されるガラス基材の表面に親水性アクリル樹脂系被覆膜をポリアセチルセルロ−ス表面に設けた積層体を含むガラス用親水性被覆材に関する。本発明のガラス用親水性被覆材は、−5℃から+10℃の寒冷地域もしくは雰囲気下においても優れた耐磨耗性、防曇性、透明性、水滴付着防止性、水洗浄性、親水性に優れた物性を有する。
ここで親水性とは、物質の表面上に付着した水を弾かずに馴染んだ状態にする性質のことで、物質表面と水滴の接触角が10度以下と小さいと水は一様の膜状に広がる。弾く場合は接触角が大きく、物質表面上の水は水滴のままに留まる。
【0002】
【従来の技術】
ガラス製品の基材表面に防曇性を付与する手段として次の1)から4)の手段が提案され、実用化されている。
1)界面活性剤水溶液を塗布、乾燥してガラス製品の基材表面に界面活性剤膜を形成する。
【0003】
2)ガラス製品の基材表面にポバ−ル、ビニルシラン変性ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のホットメルト接着フィルムを加熱・圧着して保護フィルム層を形成し、この保護フィルム層上に、(A)アクリル酸カリウム水溶液10〜50重量%、(B)親水性のモノエチレン性不飽和単量体(例えばN−ビニル−2−ピロリドン)20〜60重量%、および(C)官能基を3個以上有するアクリル系単量体(例えば、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト)10〜50重量%の混合物100重量部に、光増感剤を0.5〜2重量部配合し、これを必要によりイソプロピルアルコ−ル(有機溶剤)に溶解した光硬化性コ−ト剤を塗布し、ついで電子線または紫外線を照射してガラス基材の表面に数ミクロン厚みの鉛筆硬度2Hから3Hの光硬化アクリル系樹脂コ−ト層を設ける(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
3)例えばナノ酸化チタン結晶粒子や酸化亜鉛結晶粒子などの光半導体粒子(光触媒)を含有するコ−ト層をガラス基材表面に設ける(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
4)中間にコロイダルシリカを含有する熱可塑性樹脂フィルムをガラス板でサンドイッチした2重ガラス構造の窓を備える−1.8℃から+8.8℃の庫内温度で使用される冷蔵ショウケ−ス(断熱函体)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−48148号公報
【特許文献2】
特開2002−69361号公報
【0007】
前者1)の界面活性剤膜層を形成する手段は安価で、かつ、水接触角が0度と小さく、防曇効果が優れるものであるが、持久力が弱く、また、水により容易に流し落され、防曇性を失う欠点がある。
【0008】
前者2)の光硬化親水性アクリル系樹脂膜は、鉛筆硬度がH〜2Hと耐磨耗性に優れるが、水接触角が30〜34度と大きく、防曇性効果は呈するが、水滴を一様の水膜状にすばやく広げる効果は小さく、かつ、セルフ洗浄性に欠ける。また、水に湿潤した時、耐磨耗性が低下し、布で擦ったときに傷がつきやすい欠点がある。
【0009】
前者3)の光半導体粒子(光触媒)を含有する親水性コ−ト層を設けた窓ガラス、洗面鏡、車輛用ミラ−の親水性コ−ト層は、太陽光、蛍光灯、室内電球などから光半導体結晶粒子の伝導電子帯と価電子帯との間のエネルギ−ギャップよりも大きいエネルギ−(すなわち短い波長)の光照射を受けて価電子帯中の電子の励起が生じて伝導電子と正孔を生成して初めて滑走面を形成している膜に親水性を発揮できる。この光半導体結晶粒子を含有する親水性層は、一様の水膜となるので視界確保でき、また、冬の寒い時期でもサイドウインドウガラス、リアウインドウガラスが曇らない利点を有する。しかし、光触媒は光の照射を受けなければ親水性を発揮しない。それゆえ、夜間自動車運転時においては光エネルギ−が供給される量は極めて少量で、水接触角が10度以下となった際は親水性を発揮できなく、アウトサイドミラ−、ウインドウグラスに水滴が付着、あるいは吐く息でウインドガラスが曇って運転手の視界が遮られる。また、光触媒含有焼き付け層は、暫時磨耗して親水性機能が低下していく。アウトサイドミラ−では、半年も経過すれば親水性効果が発揮できなくなる。
【0010】
4)の生鮮野菜、肉トレイ、アイスクリ−ム、飲料水ボトル等を−1.8℃から+8.8℃の温度で氷温冷蔵する冷蔵ショウケ−スにおいては、窓ガラスの開閉時に窓ガラスがが曇らないようにするためガラス板を2重構造とし、間に透明性と断熱性を有するシリカ粒子を分散させた樹脂フィルムを介在させているが、完全な防曇のためにガラス板の厚みを相当厚くしており、透明な窓ガラスの重量は重くなり、窓ガラス扉の開閉に子女は力が要る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基材としてポリアセチル(三酢酸)セルロ−スフィルムを用い、その表面にコ−トした親水性膜の素材として、耐磨耗性、水接触角が10度以下の親水性、優れた透明性(霞み度が低い)を与えるシリカ含有光硬化性アクリル系樹脂コ−ト剤を使用したガラス用親水性被覆材により、冷蔵ショウケ−スの窓ガラスが1重構造であっても窓ガラスに水滴の付着がなく、曇らない透明性を示すガラス用親水性被覆材を提供することにある。本発明の他の目的は、3年以上の親水性、耐磨耗性を保持できるガラス積層体や鏡面フィルムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が設けられていることを特徴とする、ガラス用親水性被覆材を提供するものである。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。
【0013】
少なくとも3年の防曇性、耐磨耗性を有し、水滴をすばやく一様の水膜にして視界を確保でき、さらに吐く息や温泉、浴室、湯沸し器の水蒸気も一瞬にして一様の水膜にして視界を確保でき、表面に付着した石鹸や汚れも水や雨で簡単に流し落すことができるセルフ洗浄性の親水性膜積層体であり、冷蔵ショウケ−スの窓ガラス、自動車のウインドウや建築物の窓ガラスの親水性被覆材として有用である。基材フィルムとして親水基の多い三酢酸セルロ−スフィルムを用いるので、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ナイロン6,10等の他の透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いた親水性被覆材よりも透明性に優れ、かつ、常温域(+10〜+40℃)での使用は勿論のこと低温域でも防曇性が十分に発揮される。
【0014】
請求項2の発明は、上記ガラス用親水性被覆材において三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に光反射コ−ト層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この親水性被覆材の光反射コ−ト層側を接着剤または粘着剤を用いてガラスに貼着した鏡面積層体は、アクリル系樹脂コ−ト層が少なくとも3年の耐磨耗性に優れ、水滴をすばやく一様の水膜にして視界を確保でき、さらに吐く息や温泉、浴室の水蒸気も一瞬にして一様の水膜にして視界を確保でき、表面に付着した石鹸や汚れも水や雨で簡単に流し落すことができるセルフ洗浄性の親水性膜積層体であり、自動車のアウトサイドミラ−、ル−ムミラ−、浴室や洗面台の鏡として有用である。
【0016】
請求項3の発明は、前記ガラス用親水性被覆材において、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体 25〜50重量%と、b)その他のビニル単量体 75〜50重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする。
【0017】
膜形成原料のビニル単量体として三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体を用いるので、光照射により三次元網目構造の硬化膜が形成され、耐熱性、耐磨耗性に優れた膜を形成する。
水性コロイダルシリカ粒子の親水性基、および前記多官能アクリル系ビニル単量体として親水性の水酸基を有するペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−トなどの多官能アクリル系ビニル単量体を用いた際はこの水酸基も膜の表面に現れるので、親水性の良好な膜が得られる。膜中の水性コロイダルシリカ粒子の存在により水と接触した場合でも膜の耐磨耗性の低下は小さい。
【0018】
請求項4の発明は、前記ガラス用親水性被覆材において、シリカ粒子含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、A)二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体 50〜100重量%と、B)その他のビニル単量体 50〜0重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする。
【0019】
膜形成原料のビニル単量体として二官能のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する二官能アクリル系ビニル単量体を用いるので、光照射により硬化して形成された硬化膜は、耐熱性、耐磨耗性に優れる。
また、水性コロイダルシリカ粒子の親水性基、および前記二官能アクリル系ビニル単量体の親水性基が膜の表面に現れるので、親水性の良好な膜が得られる。および、膜中の水性コロイダルシリカ粒子の存在により水と接触した場合でも膜の耐磨耗性の低下は小さい。
【0020】
請求項5の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材面に粘着剤または接着剤を用いてガラスに貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、冷蔵ショウケ−ス用ガラス窓を提供するものである。
【0021】
粘着剤または接着剤を用いてガラス用親水性被覆材をガラスの表面に貼着でき、ガラス窓への張り替えを利用者自ら容易になすことができる。また、親水性被覆材の基材フィルムとして親水基の多い三酢酸セルロ−スフィルムを用いるので、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ナイロン6,10等の他の透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いた親水性被覆材よりも透明性に優れ、かつ、冷蔵ショウケ−スの使用温度域(−1.8℃から+8.8℃)での防曇性が1重の窓ガラスであっても十分に発揮される。
【0022】
請求項6の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層を粘着剤または接着剤を用いてガラス面に貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、鏡面を有する親水性膜積層体を提供するものである。
【0023】
鏡面を有する親水性膜積層体が自動車のサイドミラ−や浴室用鏡、洗面鏡として用いられた場合、曇天や雨天、夜間の場合でも、あるいは予め光エネルギ−の照射がなくても親水性、防曇性が発揮できる鏡であり、視界が良好である。
【0024】
請求項7の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層の面を保護膜で被覆したことを特徴とする、防曇性鏡面フィルムを提供するものである。
【0025】
鏡基材面やガラス基材面に粘着剤を用いて貼着することにより防曇性、耐磨耗性に富んだ鏡が得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明の自動車のアウトサイドミラ−の一例を示す部分断面図、図2は建造物用親水性窓ガラス積層体、図3は冷蔵ショウケ−スの斜視図である。
図中、1はアウトサイドミラ−本体、2は粘着剤または接着剤、3は三酢酸セルロ−スフィルム基材、4、4’はシリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト膜、5はガラス基材、6は光反射コ−ト層、7は冷蔵ショウケ−ス、8は断熱性ケ−シング、11は上段窓ガラス扉、21は前面窓ガラス扉である。
【0027】
本発明のガラス用親水性被覆材は、三酢酸セルロ−スフィルム基材3の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4が設けられていることを特徴とし、ガラス基材5に貼着されて使用されるものである。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度(JIS K−5400)は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度(JIS K−7105)は2%以下。
【0028】
シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト剤は、ガラス基材5の表面に直接、ロ−ルコ−ト、スプレ−塗りまたは刷毛塗りし、紫外線や電子線を照射して親水性シリカ含有アクリル系樹脂膜4を形成させてもよいが、ガラス基材5が剛体で長いことから塗布および光硬化の作業面積を広くとるので、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム3の表面に、シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4を熱可塑性樹脂フィルム3表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材3の裏面をガラス基材5表面に粘着剤または接着剤2を用いて貼着することによりガラス基材表面に親水性のシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層よりなる親水性層を設ける後付工程を採ることが好ましい。
【0029】
三酢酸セルロ−スフィルム基材3の厚みは20〜150μm、好ましくは50〜150μm、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4の厚みは1〜10μm、好ましくは2〜4μm、粘着剤または接着剤2の厚みは0.1〜10μm、好ましくは0.5〜2μmである。
【0030】
三酢酸アセテ−トフィルムは、ロンザフォ−リエン社の溶液流延製膜法により製造され、液晶表示器の偏光板用透明フィルム、カメラ用フィルム、OHP用フィルム、アニメ−ションセル等に使用されている霞み度が0.7%以下、光線透過率が91%以上の透明性の優れたもので、軟化温度が120〜140℃の物性を示す。具体的には、15〜30重量%の濃度の酢化度59〜62%の三酢酸セルロ−スを塩化メチレンもしくは塩化メチレンとメタノ−ルの混合溶媒に溶解した三酢酸セルロ−ス 100重量部と、80%塩化メチレンと20%メタノ−ルの混合溶媒よりなる凝固液15〜20重量部を混合してドレ−プとなし、このドレ−プをタンクに入れ、バンドキャスティング機のバンド上にフィルム状に垂下させ、35〜50℃のガス雰囲気下で加熱して乾燥させ、ついで大気中のロ−ル群を通過させてフィルム状になしたもので、必要により135℃前後の温度で延伸してもよい。三酢酸アセテ−トフィルムは、ロンザフォ−リエン社よりトリファンの商品名で、富士フィルム株式会社よりフジタックの商品名で入手できる。
【0031】
粘着剤または接着剤2としては、石油樹脂、テルペン・フェノ−ル共重合体、アビエチン酸ロジン、塩素化ポリエチレン、ミルセン・マレイン化物、オシメン・マレイン化物、液状ブタジエンなどの粘着剤:ポリエ−テルポリオ−ル・ポリイソシアネ−ト、ポリエステルポリオ−ル・ポリイソシアネ−ト、エポキシ樹脂、酢酸ビニル重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸付加エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、無水マレイン酸付加ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、などの接着剤が挙げられる。イソプレンラバ−やブタジエンラバ−に粘着剤や低融点の熱可塑性樹脂を配合した感圧接着剤も使用できる。
【0032】
親水性のシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト膜4は、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有(乾燥固形分)したものである。
このコ−ト剤は、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、好ましくは45〜55重量部、光重合開始剤 0〜5重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤である。
【0033】
水性コロイダルシリカ粒子は、粒径が10〜100nmの微細シリカ粒子を水に分散させたもので、シリカ粒子は表面に水酸基やアミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、ニトロ基、クロロ基、N−メチロ−ルアミド基等の親水性基を導入したものであってもよい。
水性コロイダルシリカは、日産化学工業株式会社よりスノ−テックスの商品名を付してPS、CXS−9、ST20、#0のグレ−ド名で入手できる。また、米国ヂュポン社よりルドックスAM、ルドックスLMの商品名で入手できる。
【0034】
樹脂膜100重量部に対し、水性コロイダルシリカ粒子の使用量が固型分で30重量部未満のときは、かかる使用量でコ−ト膜の水接触角を10度以下とするためには一官能の親水性ビニル単量体であるヒドロキシエチルメタクリレ−ト、Nビニル−2−ピロリドン、アクリル酸ソ−ダ等を多量に用いる必要を生じ、コ−ト膜が水分で膨順しやすく、汚れを布で擦る時の耐磨耗性が低下する。
樹脂膜100重量部に対し、水性コロイダルシリカ粒子の使用量が固型分で65重量部を越えるときは、コ−ト剤の粘度が高くなり、塗布性を容易とするために膜形成に寄与しない有機溶剤の使用量を多くする必要があり、光重合させる前の有機溶剤を飛散させる乾燥時間が長くなる。
【0035】
コ−ト膜のマトリックスである樹脂膜を形成するアクリル系樹脂単量体を主成分とするビニル単量体としては、例えば(1)a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体 25〜50重量%と、b)その他のビニル単量体 75〜50重量%を含有するビニル単量体、または、(2)A)二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体 50〜100重量%と、B)その他のビニル単量体 50〜0重量%の重合性ビニル単量体を含有するビニル単量体の組成が挙げられる。
【0036】
a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体としては、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルテトラアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、エチレンオキシド変性トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、およびこれらのメタクリレ−ト相当物が単独で、または2種以上併用して用いられる。
【0037】
(b)成分のその他のビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル等の一官能の疎水性のアクリル系単量体やスチレン、メチルスチレン等の疎水性のビニル単量体:エポキシアクリレ−トオリゴマ−、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ヒドロキシイソプロピルメタクリレ−ト、ヒドロキシブチルメタクリレ−ト、Nビニル−2−ピロリドン、ジエチルアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、ジメチルアミノメタクリレ−ト、帯電防止機能を有するアルキルフェノキシポリエチレングリコ−ルアクリレ−ト、紫外線吸収機能を有する2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−(2”−メタクリロイルオキシエチル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−−5’−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、光安定性機能を有する1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、2,2,6,6−テトラメチル−4−4−ピペリジルメタクリレ−トなどの親水性単量体が挙げられる。
【0038】
前記A)成分の二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体としては、ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−トモノメタクリレ−ト、プルオランジアクリレ−ト等が挙げられる。
【0039】
前記B)成分のその他のビニル単量体としては、前述のb)成分のその他のビニル単量体で挙げたビニル単量体が使用できる。
【0040】
光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインブチルエ−テル、フジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタ−ル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノ−1−プロパンオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラ−ズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が使用できる。
【0041】
光重合開始剤は、コ−ト剤に照射する光エネルギ−が電子線のように高いときは必ずしも配合する必要はない。紫外線照射(水銀灯照射)やX線、ガンマ−線照射による光重合のときは1〜10重量部配合するのが好ましい。
光のコ−ト剤面への照射は、電子線を用いるときは大気中でもよいが、酸素濃度が低い雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気下で150〜300kVの加速電圧で、吸収線量が1〜10Mrad程度となるように照射する。
【0042】
コ−ト剤の塗布性を向上させるために希釈剤として用いる親水性有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、ヘキサノ−ル、オクタノ−ル等が挙げられる。これらの中でも、コ−ト剤の乾燥性の面からはエタノ−ル、イソプロピルアルコ−ルが好ましい。親水性有機溶媒は、ビニル単量体100重量部に対し、15〜200重量部の割合で使用される。
【0043】
親水性コロイダルシリカを含有するアクリル系樹脂組成物よりなるコ−ト剤は、ルチル型酸化チタン結晶粒子、アナタ−ゼ型酸化チタン結晶粒子等の親水性向上剤を1〜30重量%の割合で含有していてもよい。また、耐候性改良剤、帯電防止剤を0.5〜2重量%の割合で含有していてもよい。
【0044】
このようにして得られたシリカ粒子含有光重合アクリル系樹脂コ−ト層は、記述した次の物性を満たす。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度(JIS K−5400)は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。
この親水性に富んだシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム表面に備えるガラス用親水性被覆材を貼着した鏡や窓ガラスは耐磨耗性、防曇性、透明性、自己洗浄性に富む。
【0045】
シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムの裏面に粘着剤層を設け、これを洗面台鏡やお風呂場の洗面鏡に貼着した鏡は、湯気や呼気で曇ることなく、付着した水蒸気や水滴は常に水の薄膜となり、視野が損なわれない。
また、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムの裏面に粘着剤層を設け、これを自動車のサイドウインドウや建造物の窓ガラスに貼着した場合、冬の寒いときの呼気による曇りが防止され、また、梅雨時期の車内、室内の湿度の過激的な変化の場合でも水滴は凝結することなく、水膜となり視野は損なわれない。
【0046】
シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムは、裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層の面を保護膜で被覆した防曇性鏡面フィルムとすることができる。反射コ−ト層としては、クロム、亜鉛、錫、アルミニウム、銀等の金属の蒸着膜が挙げられる。保護膜としては、前述の粘着剤層、ポリウレタンプライマ−膜、ポリビニルアルコ−ル膜、アクリル系プライマ−膜等が使用される。
この鏡面フィルムを自動車のアウトサイドミラ−やル−ムミラ−に貼着させれば雨天にも拘わらずサイドミラ−やル−ムミラ−に常時、防曇性を付与させることができる。また、歯科内視鏡に貼着させれば呼気にて曇ることがなく、歯のチェックが容易である。
【0047】
【実施例】
実施例1
窒素雰囲気下、肉厚125μmの三酢酸セルロ−スフィルム トリファン125(ロンザフォ−リエン社の商品名、JIS K−7105の霞み度0.5%)の表面に、次の組成のコ−ト剤をグラビアコ−タで塗布し、有機溶剤および水を乾燥させて乾燥厚みが5μmの光重合性コ−ト膜を形成させ、120W/cmの高圧水銀灯で紫外線量300mj/cm2照射して光重合性コ−ト膜を光硬化させた。
【0048】
コ−ト剤組成:
a)ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドDPHA) 40重量部
b)エポキシアクリレ−ト系オリゴマ−(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドR167) 60重量部
c)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 150重量部
d)光重合開始剤(チバガイギ−社の商品名はイルガキュア−184)
5重量部
e)エチルアルコ−ル 30重量部。
【0049】
得られたコ−トフィルムについて、次の測定をした。
▲1▼コ−ト膜の鉛筆硬度:乾燥時の膜と水中に1時間浸漬後取り出した膜についてJIS K−JIS K−5400に準拠して測定。
▲2▼コ−ト膜の密着性:K−JIS K−5400に準拠し、コ−ト膜に100個の碁盤目をカッタ−ナイフで切り刻み、その面にニチバン社の粘着テ−プ セロテ−プ(商品名)を押さえつけて貼着し、ついで勢いよくテ−プを引き剥がした際のフィルム面に残ったコ−ト膜桝目数を数えた。
▲3▼霞度(入射角60度):JISK−7105
▲4▼耐磨耗性:磨耗輪CS−10F、荷重500gr、回転数100回のテ−パ−磨耗試験を行い、開始前の霞度H0と耐磨耗テスト終了後の霞度HEの差の割合である 100x(HE−H0)/H0 を示す。
▲5▼水接触角:コ−ト膜上にスポイドで水滴を滴下し、協和界面科学株式会社の接触角測定器 CAX−150(商品名)を用い、30秒後の接触角を測定。
▲6▼蒸気防曇性:50℃の恒温水槽上の温水面から1cmの位置にコ−トフィルムのコ−ト面を下向きにして固定し、10分後の曇り状態を目視し、以下の基準で判定。
○ 水滴全くなし。 △ 径5mm以下の水滴が散在。 X 全面に水滴。▲7▼吸気防曇性:温度20℃、相対湿度50%の恒温室内でコ−トフィルムのコ−ト面に息を吹きかけ、曇り状態を目視し、以下の基準で判定。
○ 全く曇りなし。 △ やや曇りある。 X 全面に曇りある。
測定結果を表1に示す。
【0050】
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、お風呂場の洗面鏡表面に貼着し、防曇性を付与した。洗面鏡は湯気で曇ることはなかった。また、洗面鏡に付着した石鹸も水で容易に洗い流すことができた。
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面にクロム蒸着を施して反射面を設け、この反射面にポリウレタンプライマ−を塗布し、自動車のアウトサイドミラ−に貼着し、防曇性を付与した。サイドミラ−は夜間でも雨天の日でも防曇性を発揮し、付着した雨滴は直ぐに水膜となるので見ずらいということはなかった。また、サイドミラ−面を布で100回擦ったが、傷が付くということはなかった。
【0051】
実施例2
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられた三酢酸セルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。なお、この親水性被覆材のアクリル系樹脂コ−ト膜表面に1ポンドの荷重を加え、#0000スチ−ルで擦り、傷が付くまでに擦った回数を測定したところ、40回であった。また、コ−トフィルムの全光線透過率(JIS
K−7105)は92%であった。
コ−ト剤組成:
a)平均数重合度13のポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト100重量部b)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 130重量部
c)光重合開始剤(イルガキュア−184) 5重量部
d)イソプロピルアルコ−ル 160重量部。
【0052】
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、お風呂場の洗面鏡表面に貼着し、防曇性を付与した。洗面鏡は湯気で曇ることはなかった。また、洗面鏡に付着した石鹸も水で容易に洗い流すことができた。
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面にクロム蒸着を施して反射面を設け、この反射面にポリウレタンプライマ−を塗布し、自動車のアウトサイドミラ−に貼着し、防曇性を付与した。サイドミラ−は夜間でも雨天の日でも防曇性を発揮し、付着した雨滴は直ぐに水膜となるので見ずらいということはなかった。また、サイドミラ−面を布で100回擦ったが、傷が付くということはなかった。
【0053】
比較例1
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられた三酢酸セルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)分子量1000のポリエチレングリコ−ルのジアクリレ−ト 30重量部b)ジエチルアクリルアミド 70重量部c)光重合開始剤(イルガキュア−184) 5重量部。
【0054】
比較例2
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用い、三酢酸セルロ−スフィルムの代わりに厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム(霞み度1.3%)を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられたPETフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)ペンタエリスリト−ル(トリ/テトラ)アクリレ−ト(共栄社化学化株式会社の商品名はビスコ−ト300) 100重量部
b)光重合開始剤(イルガキュア−184) 3重量部。
【0055】
実施例3
実施例2において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられたポリアセチルセルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドDPHA) 40重量部
b)エポキシアクリレ−ト系オリゴマ−(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドR167) 55重量部
c)ヒドロキシエチルメタクリレ−ト 5重量部
d)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 160重量部
e)光重合開始剤(チバガイギ−社の商品名はイルガキュア−184)
5重量部
f)エチルアルコ−ル 30重量部。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例4
実施例2で製造したアクリル系樹脂コ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、厚み3mmの1重窓ガラス板に貼着し、親水性被覆材で被覆した窓ガラス板を得た。この窓ガラス板を三洋電機株式会社の冷蔵ショウケ−スSSR−165BN(商品名)に嵌められている2重窓ガラスと交換し、この冷蔵ショウケ−スを温度23℃、相対湿度65%の恒温室に搬入し、冷蔵ショウケ−ス内の温度を−1.8℃、0℃、または+8.8℃に保ち、1分後、1時間後および5時間経過後、窓ガラスの曇りの有無を調べたところ、窓ガラスにはどの温度の保管でも全く曇りが見受けられなかった。
【0058】
比較例3
実施例4において、厚み3mmの1重窓ガラス板に親水性被覆材フィルムを貼着しない外は同様にして冷蔵ショウケ−スの窓ガラスの曇り性を調査したところ、どの保管温度においてもどの調査時間においても窓ガラスは真っ白に曇った。
【0059】
比較例5
実施例4において、厚み125μmの三酢酸セルロ−スフィルムに代えて厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを用いる外は同様にして冷蔵ショウケ−スの窓ガラスの曇り性を調査したところ、保管時間1分後ではどの保管温度でも若干窓ガラスに曇りが見受けられ、保管時間1時間後および5時間後はどの保管温度においても窓ガラスは真っ白に曇った。
【0060】
【発明の効果】
本発明の親水性被覆材を貼着した鏡やウインドウガラスは、表面に親水性、耐磨耗性、自己洗浄性に優れたシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を有しているので、水蒸気や呼気により曇ることがない。また、晴天・雨天、昼夜の区別なく常時、防曇性を発揮できるので、サイドミラ−に水滴が付着しても瞬時に水膜となり、視野が損なわれることがない。さらに、常温は勿論のこと、低温においても防曇性は発揮されるので、冷蔵ショウケ−スの窓ガラス被覆材としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車のアウトサイドミラ−の一例を示す部分断面図である。
【図2】建造物用親水性窓ガラス積層体である。
【図3】冷蔵ショウケ−スの斜視図である。
【符号の説明】
1 アウトサイドミラ−本体
2 粘着剤または接着剤
3 三酢酸セルロ−スフィルム
4 シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト膜
5 ガラス基材
6 光反射コ−ト層
7 冷蔵ショウケ−ス
11 窓ガラス
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵ショウケ−ス(断熱函体)の窓ガラスの親水性被覆材、並びに、車輛用のアウトサイドミラ−、サイドガラス、リアガラスおよびル−ムミラ−、建築構造物の窓ガラス、浴室用鏡、洗面鏡、温室栽培用ハウス材、光学レンズなどに使用されるガラス基材の表面に親水性アクリル樹脂系被覆膜をポリアセチルセルロ−ス表面に設けた積層体を含むガラス用親水性被覆材に関する。本発明のガラス用親水性被覆材は、−5℃から+10℃の寒冷地域もしくは雰囲気下においても優れた耐磨耗性、防曇性、透明性、水滴付着防止性、水洗浄性、親水性に優れた物性を有する。
ここで親水性とは、物質の表面上に付着した水を弾かずに馴染んだ状態にする性質のことで、物質表面と水滴の接触角が10度以下と小さいと水は一様の膜状に広がる。弾く場合は接触角が大きく、物質表面上の水は水滴のままに留まる。
【0002】
【従来の技術】
ガラス製品の基材表面に防曇性を付与する手段として次の1)から4)の手段が提案され、実用化されている。
1)界面活性剤水溶液を塗布、乾燥してガラス製品の基材表面に界面活性剤膜を形成する。
【0003】
2)ガラス製品の基材表面にポバ−ル、ビニルシラン変性ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のホットメルト接着フィルムを加熱・圧着して保護フィルム層を形成し、この保護フィルム層上に、(A)アクリル酸カリウム水溶液10〜50重量%、(B)親水性のモノエチレン性不飽和単量体(例えばN−ビニル−2−ピロリドン)20〜60重量%、および(C)官能基を3個以上有するアクリル系単量体(例えば、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト)10〜50重量%の混合物100重量部に、光増感剤を0.5〜2重量部配合し、これを必要によりイソプロピルアルコ−ル(有機溶剤)に溶解した光硬化性コ−ト剤を塗布し、ついで電子線または紫外線を照射してガラス基材の表面に数ミクロン厚みの鉛筆硬度2Hから3Hの光硬化アクリル系樹脂コ−ト層を設ける(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
3)例えばナノ酸化チタン結晶粒子や酸化亜鉛結晶粒子などの光半導体粒子(光触媒)を含有するコ−ト層をガラス基材表面に設ける(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
4)中間にコロイダルシリカを含有する熱可塑性樹脂フィルムをガラス板でサンドイッチした2重ガラス構造の窓を備える−1.8℃から+8.8℃の庫内温度で使用される冷蔵ショウケ−ス(断熱函体)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−48148号公報
【特許文献2】
特開2002−69361号公報
【0007】
前者1)の界面活性剤膜層を形成する手段は安価で、かつ、水接触角が0度と小さく、防曇効果が優れるものであるが、持久力が弱く、また、水により容易に流し落され、防曇性を失う欠点がある。
【0008】
前者2)の光硬化親水性アクリル系樹脂膜は、鉛筆硬度がH〜2Hと耐磨耗性に優れるが、水接触角が30〜34度と大きく、防曇性効果は呈するが、水滴を一様の水膜状にすばやく広げる効果は小さく、かつ、セルフ洗浄性に欠ける。また、水に湿潤した時、耐磨耗性が低下し、布で擦ったときに傷がつきやすい欠点がある。
【0009】
前者3)の光半導体粒子(光触媒)を含有する親水性コ−ト層を設けた窓ガラス、洗面鏡、車輛用ミラ−の親水性コ−ト層は、太陽光、蛍光灯、室内電球などから光半導体結晶粒子の伝導電子帯と価電子帯との間のエネルギ−ギャップよりも大きいエネルギ−(すなわち短い波長)の光照射を受けて価電子帯中の電子の励起が生じて伝導電子と正孔を生成して初めて滑走面を形成している膜に親水性を発揮できる。この光半導体結晶粒子を含有する親水性層は、一様の水膜となるので視界確保でき、また、冬の寒い時期でもサイドウインドウガラス、リアウインドウガラスが曇らない利点を有する。しかし、光触媒は光の照射を受けなければ親水性を発揮しない。それゆえ、夜間自動車運転時においては光エネルギ−が供給される量は極めて少量で、水接触角が10度以下となった際は親水性を発揮できなく、アウトサイドミラ−、ウインドウグラスに水滴が付着、あるいは吐く息でウインドガラスが曇って運転手の視界が遮られる。また、光触媒含有焼き付け層は、暫時磨耗して親水性機能が低下していく。アウトサイドミラ−では、半年も経過すれば親水性効果が発揮できなくなる。
【0010】
4)の生鮮野菜、肉トレイ、アイスクリ−ム、飲料水ボトル等を−1.8℃から+8.8℃の温度で氷温冷蔵する冷蔵ショウケ−スにおいては、窓ガラスの開閉時に窓ガラスがが曇らないようにするためガラス板を2重構造とし、間に透明性と断熱性を有するシリカ粒子を分散させた樹脂フィルムを介在させているが、完全な防曇のためにガラス板の厚みを相当厚くしており、透明な窓ガラスの重量は重くなり、窓ガラス扉の開閉に子女は力が要る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基材としてポリアセチル(三酢酸)セルロ−スフィルムを用い、その表面にコ−トした親水性膜の素材として、耐磨耗性、水接触角が10度以下の親水性、優れた透明性(霞み度が低い)を与えるシリカ含有光硬化性アクリル系樹脂コ−ト剤を使用したガラス用親水性被覆材により、冷蔵ショウケ−スの窓ガラスが1重構造であっても窓ガラスに水滴の付着がなく、曇らない透明性を示すガラス用親水性被覆材を提供することにある。本発明の他の目的は、3年以上の親水性、耐磨耗性を保持できるガラス積層体や鏡面フィルムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が設けられていることを特徴とする、ガラス用親水性被覆材を提供するものである。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。
【0013】
少なくとも3年の防曇性、耐磨耗性を有し、水滴をすばやく一様の水膜にして視界を確保でき、さらに吐く息や温泉、浴室、湯沸し器の水蒸気も一瞬にして一様の水膜にして視界を確保でき、表面に付着した石鹸や汚れも水や雨で簡単に流し落すことができるセルフ洗浄性の親水性膜積層体であり、冷蔵ショウケ−スの窓ガラス、自動車のウインドウや建築物の窓ガラスの親水性被覆材として有用である。基材フィルムとして親水基の多い三酢酸セルロ−スフィルムを用いるので、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ナイロン6,10等の他の透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いた親水性被覆材よりも透明性に優れ、かつ、常温域(+10〜+40℃)での使用は勿論のこと低温域でも防曇性が十分に発揮される。
【0014】
請求項2の発明は、上記ガラス用親水性被覆材において三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に光反射コ−ト層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この親水性被覆材の光反射コ−ト層側を接着剤または粘着剤を用いてガラスに貼着した鏡面積層体は、アクリル系樹脂コ−ト層が少なくとも3年の耐磨耗性に優れ、水滴をすばやく一様の水膜にして視界を確保でき、さらに吐く息や温泉、浴室の水蒸気も一瞬にして一様の水膜にして視界を確保でき、表面に付着した石鹸や汚れも水や雨で簡単に流し落すことができるセルフ洗浄性の親水性膜積層体であり、自動車のアウトサイドミラ−、ル−ムミラ−、浴室や洗面台の鏡として有用である。
【0016】
請求項3の発明は、前記ガラス用親水性被覆材において、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体 25〜50重量%と、b)その他のビニル単量体 75〜50重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする。
【0017】
膜形成原料のビニル単量体として三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体を用いるので、光照射により三次元網目構造の硬化膜が形成され、耐熱性、耐磨耗性に優れた膜を形成する。
水性コロイダルシリカ粒子の親水性基、および前記多官能アクリル系ビニル単量体として親水性の水酸基を有するペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−トなどの多官能アクリル系ビニル単量体を用いた際はこの水酸基も膜の表面に現れるので、親水性の良好な膜が得られる。膜中の水性コロイダルシリカ粒子の存在により水と接触した場合でも膜の耐磨耗性の低下は小さい。
【0018】
請求項4の発明は、前記ガラス用親水性被覆材において、シリカ粒子含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、A)二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体 50〜100重量%と、B)その他のビニル単量体 50〜0重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする。
【0019】
膜形成原料のビニル単量体として二官能のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する二官能アクリル系ビニル単量体を用いるので、光照射により硬化して形成された硬化膜は、耐熱性、耐磨耗性に優れる。
また、水性コロイダルシリカ粒子の親水性基、および前記二官能アクリル系ビニル単量体の親水性基が膜の表面に現れるので、親水性の良好な膜が得られる。および、膜中の水性コロイダルシリカ粒子の存在により水と接触した場合でも膜の耐磨耗性の低下は小さい。
【0020】
請求項5の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材面に粘着剤または接着剤を用いてガラスに貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、冷蔵ショウケ−ス用ガラス窓を提供するものである。
【0021】
粘着剤または接着剤を用いてガラス用親水性被覆材をガラスの表面に貼着でき、ガラス窓への張り替えを利用者自ら容易になすことができる。また、親水性被覆材の基材フィルムとして親水基の多い三酢酸セルロ−スフィルムを用いるので、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ナイロン6,10等の他の透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いた親水性被覆材よりも透明性に優れ、かつ、冷蔵ショウケ−スの使用温度域(−1.8℃から+8.8℃)での防曇性が1重の窓ガラスであっても十分に発揮される。
【0022】
請求項6の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層を粘着剤または接着剤を用いてガラス面に貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、鏡面を有する親水性膜積層体を提供するものである。
【0023】
鏡面を有する親水性膜積層体が自動車のサイドミラ−や浴室用鏡、洗面鏡として用いられた場合、曇天や雨天、夜間の場合でも、あるいは予め光エネルギ−の照射がなくても親水性、防曇性が発揮できる鏡であり、視界が良好である。
【0024】
請求項7の発明は、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層の面を保護膜で被覆したことを特徴とする、防曇性鏡面フィルムを提供するものである。
【0025】
鏡基材面やガラス基材面に粘着剤を用いて貼着することにより防曇性、耐磨耗性に富んだ鏡が得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明の自動車のアウトサイドミラ−の一例を示す部分断面図、図2は建造物用親水性窓ガラス積層体、図3は冷蔵ショウケ−スの斜視図である。
図中、1はアウトサイドミラ−本体、2は粘着剤または接着剤、3は三酢酸セルロ−スフィルム基材、4、4’はシリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト膜、5はガラス基材、6は光反射コ−ト層、7は冷蔵ショウケ−ス、8は断熱性ケ−シング、11は上段窓ガラス扉、21は前面窓ガラス扉である。
【0027】
本発明のガラス用親水性被覆材は、三酢酸セルロ−スフィルム基材3の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4が設けられていることを特徴とし、ガラス基材5に貼着されて使用されるものである。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度(JIS K−5400)は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度(JIS K−7105)は2%以下。
【0028】
シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト剤は、ガラス基材5の表面に直接、ロ−ルコ−ト、スプレ−塗りまたは刷毛塗りし、紫外線や電子線を照射して親水性シリカ含有アクリル系樹脂膜4を形成させてもよいが、ガラス基材5が剛体で長いことから塗布および光硬化の作業面積を広くとるので、厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム3の表面に、シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4を熱可塑性樹脂フィルム3表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材3の裏面をガラス基材5表面に粘着剤または接着剤2を用いて貼着することによりガラス基材表面に親水性のシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層よりなる親水性層を設ける後付工程を採ることが好ましい。
【0029】
三酢酸セルロ−スフィルム基材3の厚みは20〜150μm、好ましくは50〜150μm、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層4の厚みは1〜10μm、好ましくは2〜4μm、粘着剤または接着剤2の厚みは0.1〜10μm、好ましくは0.5〜2μmである。
【0030】
三酢酸アセテ−トフィルムは、ロンザフォ−リエン社の溶液流延製膜法により製造され、液晶表示器の偏光板用透明フィルム、カメラ用フィルム、OHP用フィルム、アニメ−ションセル等に使用されている霞み度が0.7%以下、光線透過率が91%以上の透明性の優れたもので、軟化温度が120〜140℃の物性を示す。具体的には、15〜30重量%の濃度の酢化度59〜62%の三酢酸セルロ−スを塩化メチレンもしくは塩化メチレンとメタノ−ルの混合溶媒に溶解した三酢酸セルロ−ス 100重量部と、80%塩化メチレンと20%メタノ−ルの混合溶媒よりなる凝固液15〜20重量部を混合してドレ−プとなし、このドレ−プをタンクに入れ、バンドキャスティング機のバンド上にフィルム状に垂下させ、35〜50℃のガス雰囲気下で加熱して乾燥させ、ついで大気中のロ−ル群を通過させてフィルム状になしたもので、必要により135℃前後の温度で延伸してもよい。三酢酸アセテ−トフィルムは、ロンザフォ−リエン社よりトリファンの商品名で、富士フィルム株式会社よりフジタックの商品名で入手できる。
【0031】
粘着剤または接着剤2としては、石油樹脂、テルペン・フェノ−ル共重合体、アビエチン酸ロジン、塩素化ポリエチレン、ミルセン・マレイン化物、オシメン・マレイン化物、液状ブタジエンなどの粘着剤:ポリエ−テルポリオ−ル・ポリイソシアネ−ト、ポリエステルポリオ−ル・ポリイソシアネ−ト、エポキシ樹脂、酢酸ビニル重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸付加エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、無水マレイン酸付加ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、などの接着剤が挙げられる。イソプレンラバ−やブタジエンラバ−に粘着剤や低融点の熱可塑性樹脂を配合した感圧接着剤も使用できる。
【0032】
親水性のシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト膜4は、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有(乾燥固形分)したものである。
このコ−ト剤は、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、好ましくは45〜55重量部、光重合開始剤 0〜5重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤である。
【0033】
水性コロイダルシリカ粒子は、粒径が10〜100nmの微細シリカ粒子を水に分散させたもので、シリカ粒子は表面に水酸基やアミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、ニトロ基、クロロ基、N−メチロ−ルアミド基等の親水性基を導入したものであってもよい。
水性コロイダルシリカは、日産化学工業株式会社よりスノ−テックスの商品名を付してPS、CXS−9、ST20、#0のグレ−ド名で入手できる。また、米国ヂュポン社よりルドックスAM、ルドックスLMの商品名で入手できる。
【0034】
樹脂膜100重量部に対し、水性コロイダルシリカ粒子の使用量が固型分で30重量部未満のときは、かかる使用量でコ−ト膜の水接触角を10度以下とするためには一官能の親水性ビニル単量体であるヒドロキシエチルメタクリレ−ト、Nビニル−2−ピロリドン、アクリル酸ソ−ダ等を多量に用いる必要を生じ、コ−ト膜が水分で膨順しやすく、汚れを布で擦る時の耐磨耗性が低下する。
樹脂膜100重量部に対し、水性コロイダルシリカ粒子の使用量が固型分で65重量部を越えるときは、コ−ト剤の粘度が高くなり、塗布性を容易とするために膜形成に寄与しない有機溶剤の使用量を多くする必要があり、光重合させる前の有機溶剤を飛散させる乾燥時間が長くなる。
【0035】
コ−ト膜のマトリックスである樹脂膜を形成するアクリル系樹脂単量体を主成分とするビニル単量体としては、例えば(1)a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体 25〜50重量%と、b)その他のビニル単量体 75〜50重量%を含有するビニル単量体、または、(2)A)二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体 50〜100重量%と、B)その他のビニル単量体 50〜0重量%の重合性ビニル単量体を含有するビニル単量体の組成が挙げられる。
【0036】
a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体としては、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルテトラアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、エチレンオキシド変性トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、およびこれらのメタクリレ−ト相当物が単独で、または2種以上併用して用いられる。
【0037】
(b)成分のその他のビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル等の一官能の疎水性のアクリル系単量体やスチレン、メチルスチレン等の疎水性のビニル単量体:エポキシアクリレ−トオリゴマ−、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ヒドロキシイソプロピルメタクリレ−ト、ヒドロキシブチルメタクリレ−ト、Nビニル−2−ピロリドン、ジエチルアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、ジメチルアミノメタクリレ−ト、帯電防止機能を有するアルキルフェノキシポリエチレングリコ−ルアクリレ−ト、紫外線吸収機能を有する2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−(2”−メタクリロイルオキシエチル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−−5’−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、光安定性機能を有する1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、2,2,6,6−テトラメチル−4−4−ピペリジルメタクリレ−トなどの親水性単量体が挙げられる。
【0038】
前記A)成分の二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体としては、ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−トモノメタクリレ−ト、プルオランジアクリレ−ト等が挙げられる。
【0039】
前記B)成分のその他のビニル単量体としては、前述のb)成分のその他のビニル単量体で挙げたビニル単量体が使用できる。
【0040】
光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインブチルエ−テル、フジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタ−ル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノ−1−プロパンオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラ−ズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が使用できる。
【0041】
光重合開始剤は、コ−ト剤に照射する光エネルギ−が電子線のように高いときは必ずしも配合する必要はない。紫外線照射(水銀灯照射)やX線、ガンマ−線照射による光重合のときは1〜10重量部配合するのが好ましい。
光のコ−ト剤面への照射は、電子線を用いるときは大気中でもよいが、酸素濃度が低い雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気下で150〜300kVの加速電圧で、吸収線量が1〜10Mrad程度となるように照射する。
【0042】
コ−ト剤の塗布性を向上させるために希釈剤として用いる親水性有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、ヘキサノ−ル、オクタノ−ル等が挙げられる。これらの中でも、コ−ト剤の乾燥性の面からはエタノ−ル、イソプロピルアルコ−ルが好ましい。親水性有機溶媒は、ビニル単量体100重量部に対し、15〜200重量部の割合で使用される。
【0043】
親水性コロイダルシリカを含有するアクリル系樹脂組成物よりなるコ−ト剤は、ルチル型酸化チタン結晶粒子、アナタ−ゼ型酸化チタン結晶粒子等の親水性向上剤を1〜30重量%の割合で含有していてもよい。また、耐候性改良剤、帯電防止剤を0.5〜2重量%の割合で含有していてもよい。
【0044】
このようにして得られたシリカ粒子含有光重合アクリル系樹脂コ−ト層は、記述した次の物性を満たす。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度(JIS K−5400)は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。
この親水性に富んだシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム表面に備えるガラス用親水性被覆材を貼着した鏡や窓ガラスは耐磨耗性、防曇性、透明性、自己洗浄性に富む。
【0045】
シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムの裏面に粘着剤層を設け、これを洗面台鏡やお風呂場の洗面鏡に貼着した鏡は、湯気や呼気で曇ることなく、付着した水蒸気や水滴は常に水の薄膜となり、視野が損なわれない。
また、シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムの裏面に粘着剤層を設け、これを自動車のサイドウインドウや建造物の窓ガラスに貼着した場合、冬の寒いときの呼気による曇りが防止され、また、梅雨時期の車内、室内の湿度の過激的な変化の場合でも水滴は凝結することなく、水膜となり視野は損なわれない。
【0046】
シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を表面に備える三酢酸セルロ−スフィルムは、裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層の面を保護膜で被覆した防曇性鏡面フィルムとすることができる。反射コ−ト層としては、クロム、亜鉛、錫、アルミニウム、銀等の金属の蒸着膜が挙げられる。保護膜としては、前述の粘着剤層、ポリウレタンプライマ−膜、ポリビニルアルコ−ル膜、アクリル系プライマ−膜等が使用される。
この鏡面フィルムを自動車のアウトサイドミラ−やル−ムミラ−に貼着させれば雨天にも拘わらずサイドミラ−やル−ムミラ−に常時、防曇性を付与させることができる。また、歯科内視鏡に貼着させれば呼気にて曇ることがなく、歯のチェックが容易である。
【0047】
【実施例】
実施例1
窒素雰囲気下、肉厚125μmの三酢酸セルロ−スフィルム トリファン125(ロンザフォ−リエン社の商品名、JIS K−7105の霞み度0.5%)の表面に、次の組成のコ−ト剤をグラビアコ−タで塗布し、有機溶剤および水を乾燥させて乾燥厚みが5μmの光重合性コ−ト膜を形成させ、120W/cmの高圧水銀灯で紫外線量300mj/cm2照射して光重合性コ−ト膜を光硬化させた。
【0048】
コ−ト剤組成:
a)ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドDPHA) 40重量部
b)エポキシアクリレ−ト系オリゴマ−(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドR167) 60重量部
c)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 150重量部
d)光重合開始剤(チバガイギ−社の商品名はイルガキュア−184)
5重量部
e)エチルアルコ−ル 30重量部。
【0049】
得られたコ−トフィルムについて、次の測定をした。
▲1▼コ−ト膜の鉛筆硬度:乾燥時の膜と水中に1時間浸漬後取り出した膜についてJIS K−JIS K−5400に準拠して測定。
▲2▼コ−ト膜の密着性:K−JIS K−5400に準拠し、コ−ト膜に100個の碁盤目をカッタ−ナイフで切り刻み、その面にニチバン社の粘着テ−プ セロテ−プ(商品名)を押さえつけて貼着し、ついで勢いよくテ−プを引き剥がした際のフィルム面に残ったコ−ト膜桝目数を数えた。
▲3▼霞度(入射角60度):JISK−7105
▲4▼耐磨耗性:磨耗輪CS−10F、荷重500gr、回転数100回のテ−パ−磨耗試験を行い、開始前の霞度H0と耐磨耗テスト終了後の霞度HEの差の割合である 100x(HE−H0)/H0 を示す。
▲5▼水接触角:コ−ト膜上にスポイドで水滴を滴下し、協和界面科学株式会社の接触角測定器 CAX−150(商品名)を用い、30秒後の接触角を測定。
▲6▼蒸気防曇性:50℃の恒温水槽上の温水面から1cmの位置にコ−トフィルムのコ−ト面を下向きにして固定し、10分後の曇り状態を目視し、以下の基準で判定。
○ 水滴全くなし。 △ 径5mm以下の水滴が散在。 X 全面に水滴。▲7▼吸気防曇性:温度20℃、相対湿度50%の恒温室内でコ−トフィルムのコ−ト面に息を吹きかけ、曇り状態を目視し、以下の基準で判定。
○ 全く曇りなし。 △ やや曇りある。 X 全面に曇りある。
測定結果を表1に示す。
【0050】
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、お風呂場の洗面鏡表面に貼着し、防曇性を付与した。洗面鏡は湯気で曇ることはなかった。また、洗面鏡に付着した石鹸も水で容易に洗い流すことができた。
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面にクロム蒸着を施して反射面を設け、この反射面にポリウレタンプライマ−を塗布し、自動車のアウトサイドミラ−に貼着し、防曇性を付与した。サイドミラ−は夜間でも雨天の日でも防曇性を発揮し、付着した雨滴は直ぐに水膜となるので見ずらいということはなかった。また、サイドミラ−面を布で100回擦ったが、傷が付くということはなかった。
【0051】
実施例2
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられた三酢酸セルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。なお、この親水性被覆材のアクリル系樹脂コ−ト膜表面に1ポンドの荷重を加え、#0000スチ−ルで擦り、傷が付くまでに擦った回数を測定したところ、40回であった。また、コ−トフィルムの全光線透過率(JIS
K−7105)は92%であった。
コ−ト剤組成:
a)平均数重合度13のポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト100重量部b)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 130重量部
c)光重合開始剤(イルガキュア−184) 5重量部
d)イソプロピルアルコ−ル 160重量部。
【0052】
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、お風呂場の洗面鏡表面に貼着し、防曇性を付与した。洗面鏡は湯気で曇ることはなかった。また、洗面鏡に付着した石鹸も水で容易に洗い流すことができた。
このコ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面にクロム蒸着を施して反射面を設け、この反射面にポリウレタンプライマ−を塗布し、自動車のアウトサイドミラ−に貼着し、防曇性を付与した。サイドミラ−は夜間でも雨天の日でも防曇性を発揮し、付着した雨滴は直ぐに水膜となるので見ずらいということはなかった。また、サイドミラ−面を布で100回擦ったが、傷が付くということはなかった。
【0053】
比較例1
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられた三酢酸セルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)分子量1000のポリエチレングリコ−ルのジアクリレ−ト 30重量部b)ジエチルアクリルアミド 70重量部c)光重合開始剤(イルガキュア−184) 5重量部。
【0054】
比較例2
実施例1において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用い、三酢酸セルロ−スフィルムの代わりに厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム(霞み度1.3%)を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられたPETフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)ペンタエリスリト−ル(トリ/テトラ)アクリレ−ト(共栄社化学化株式会社の商品名はビスコ−ト300) 100重量部
b)光重合開始剤(イルガキュア−184) 3重量部。
【0055】
実施例3
実施例2において、光重合性コ−ト剤として次に示す組成のコ−ト剤を用いる外は同様にしてコ−ト層が設けられたポリアセチルセルロ−スフィルムを得た。測定結果を表1に示す。
コ−ト剤組成:
a)ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドDPHA) 40重量部
b)エポキシアクリレ−ト系オリゴマ−(日本火薬株式会社製商品名はカヤラッドR167) 55重量部
c)ヒドロキシエチルメタクリレ−ト 5重量部
d)水性コロイダルシリカ水分散液(34重量%濃度、平均粒径10〜60nmシリカ粒子含有) 160重量部
e)光重合開始剤(チバガイギ−社の商品名はイルガキュア−184)
5重量部
f)エチルアルコ−ル 30重量部。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例4
実施例2で製造したアクリル系樹脂コ−トフィルムの三酢酸セルロ−スフィルム面に粘着剤を塗布し、厚み3mmの1重窓ガラス板に貼着し、親水性被覆材で被覆した窓ガラス板を得た。この窓ガラス板を三洋電機株式会社の冷蔵ショウケ−スSSR−165BN(商品名)に嵌められている2重窓ガラスと交換し、この冷蔵ショウケ−スを温度23℃、相対湿度65%の恒温室に搬入し、冷蔵ショウケ−ス内の温度を−1.8℃、0℃、または+8.8℃に保ち、1分後、1時間後および5時間経過後、窓ガラスの曇りの有無を調べたところ、窓ガラスにはどの温度の保管でも全く曇りが見受けられなかった。
【0058】
比較例3
実施例4において、厚み3mmの1重窓ガラス板に親水性被覆材フィルムを貼着しない外は同様にして冷蔵ショウケ−スの窓ガラスの曇り性を調査したところ、どの保管温度においてもどの調査時間においても窓ガラスは真っ白に曇った。
【0059】
比較例5
実施例4において、厚み125μmの三酢酸セルロ−スフィルムに代えて厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを用いる外は同様にして冷蔵ショウケ−スの窓ガラスの曇り性を調査したところ、保管時間1分後ではどの保管温度でも若干窓ガラスに曇りが見受けられ、保管時間1時間後および5時間後はどの保管温度においても窓ガラスは真っ白に曇った。
【0060】
【発明の効果】
本発明の親水性被覆材を貼着した鏡やウインドウガラスは、表面に親水性、耐磨耗性、自己洗浄性に優れたシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を有しているので、水蒸気や呼気により曇ることがない。また、晴天・雨天、昼夜の区別なく常時、防曇性を発揮できるので、サイドミラ−に水滴が付着しても瞬時に水膜となり、視野が損なわれることがない。さらに、常温は勿論のこと、低温においても防曇性は発揮されるので、冷蔵ショウケ−スの窓ガラス被覆材としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車のアウトサイドミラ−の一例を示す部分断面図である。
【図2】建造物用親水性窓ガラス積層体である。
【図3】冷蔵ショウケ−スの斜視図である。
【符号の説明】
1 アウトサイドミラ−本体
2 粘着剤または接着剤
3 三酢酸セルロ−スフィルム
4 シリカ含有親水性アクリル系樹脂コ−ト膜
5 ガラス基材
6 光反射コ−ト層
7 冷蔵ショウケ−ス
11 窓ガラス
Claims (7)
- 三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に次の物性を満たすシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が設けられていることを特徴とする、ガラス用親水性被覆材。
(1)コ−ト層の鉛筆硬度は2H以上と硬い。
(2)コ−ト層の水との接触角が10度以下である親水性を有する。
(3)コ−ト層の霞み度は2%以下。 - 三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に光反射コ−ト層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガラス用親水性被覆材。
- シリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、a)三官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系ビニル単量体 25〜50重量%と、b)その他のビニル単量体 75〜50重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載のガラス用親水性被覆材。
- シリカ粒子含有アクリル系樹脂コ−ト層が、アクリル系樹脂膜100重量部に対して水性コロイダルシリカ粒子 30〜60重量部を分散して含有したものであり、アクリル系樹脂膜は、A)二官能以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する親水性多官能アクリル系ビニル単量体 50〜100重量%と、B)その他のビニル単量体 50〜0重量%の重合性ビニル単量体を光重合させて得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載のガラス用親水性被覆材。
- 厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材の表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材面に粘着剤または接着剤を用いてガラスに貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、冷蔵ショウケ−ス用ガラス窓。
- 厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材の裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層を粘着剤または接着剤を用いてガラス面に貼着することによりガラス表面にシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けたことを特徴とする、鏡面を有する親水性膜積層体。
- 厚み20〜150μmの三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に、アクリル系樹脂膜を形成するビニル単量体 100重量部と、水性コロイダルシリカ粒子を固型分量で30〜60重量部、光重合開始剤 0〜10重量部、および親水性有機溶媒 適当量の割合で配合したコ−ト剤を塗布し、光照射してコ−ト剤を重合硬化させてコロイダルシリカ粒子をアクリル樹脂膜に分散したシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を三酢酸セルロ−スフィルム基材表面に形成し、このシリカ含有アクリル系樹脂コ−ト層を設けた三酢酸セルロ−スフィルム基材裏面に反射コ−ト層を設け、この反射コ−ト層の面を保護膜で被覆したことを特徴とする、防曇性鏡面フィルム。
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