JP2005059034A - 機能性を有する連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋳型本体の各部位毎に要求される機能を有する材料を用いて鋳型本体に表面処理を施し、鋳型本体の各種損傷を抑制して長寿命化を図る機能性を有する連続鋳造用鋳型を提供する。
【解決手段】 鋳型本体17の内側表面に溶射皮膜18、19が形成された連続鋳造用鋳型10において、溶射皮膜18、19は、溶射皮膜18、19の上部の耐クラック性を高める上皮膜部21と、溶射皮膜18の中央部の耐溶着性を高める中央皮膜部22と、溶射皮膜18の下部の耐摩耗性を高める下皮膜部23とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 鋳型本体17の内側表面に溶射皮膜18、19が形成された連続鋳造用鋳型10において、溶射皮膜18、19は、溶射皮膜18、19の上部の耐クラック性を高める上皮膜部21と、溶射皮膜18の中央部の耐溶着性を高める中央皮膜部22と、溶射皮膜18の下部の耐摩耗性を高める下皮膜部23とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鋳型本体の内側表面に溶射皮膜を形成し、例えば、耐溶着性、耐クラック(亀裂)性、耐摩耗性等を改善可能な機能性を有する連続鋳造用鋳型に関する。
従来、連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型とも言う)は、一対の幅狭冷却部材である短辺部材と、この短辺部材を挟み込むように配置される一対の幅広冷却部材である長辺部材とを備え、この向い合う長辺部材の両端部にそれぞれボルトを取付け、長辺部材をバネを介してナットで固定した構成となっている。
この短辺部材は鏡面対称で同じ構成となっており、それぞれ裏面側(外側)の上下方向に多数の導水溝が設けられた短辺銅板(以下、単に銅板ともいう)と、この短辺銅板の裏面側にボルトによって固定されたバックプレート(冷却箱、水箱とも言う)とを有している。そして、バックプレートの上端部及び下端部にそれぞれ設けられた排水部及び給水部を介して導水溝に冷却水を流すことで、短辺銅板の冷却を行っている。また、長辺部材も短辺部材と略同様の構成となっており、短辺部材の短辺銅板と、長辺部材の長辺銅板とで、鋳型本体が構成されている。
この短辺部材は鏡面対称で同じ構成となっており、それぞれ裏面側(外側)の上下方向に多数の導水溝が設けられた短辺銅板(以下、単に銅板ともいう)と、この短辺銅板の裏面側にボルトによって固定されたバックプレート(冷却箱、水箱とも言う)とを有している。そして、バックプレートの上端部及び下端部にそれぞれ設けられた排水部及び給水部を介して導水溝に冷却水を流すことで、短辺銅板の冷却を行っている。また、長辺部材も短辺部材と略同様の構成となっており、短辺部材の短辺銅板と、長辺部材の長辺銅板とで、鋳型本体が構成されている。
この短辺銅板の内側表面には、その全面にわたって1種類の組成で構成された溶射皮膜が形成されている。例えば、図4(A)に示すように、短辺銅板91の内側表面に耐摩耗性に優れた材料のみを被覆して溶射皮膜92を形成したり(例えば、特許文献1参照)、また、図4(B)に示すように、短辺銅板93の内側表面に耐溶着性に優れた材料のみを被覆して溶射皮膜94を形成したりしている(例えば、特許文献2参照)。これにより、溶鋼の連続鋳造時に短辺銅板91、93の表面で生じる摩耗等の損傷を抑制し、鋳型の長寿命化を図っている。なお、長辺銅板についても同様である。
しかしながら、上記した銅板91、93の内側表面では、その高さ方向の各部分で損傷形態が異なるため、上記したように、1種類の材料を使用して溶射皮膜92、94を形成した場合、各損傷形態に個別に対応できない。例えば、特許文献1に記載された耐摩耗性に優れた材料のみを使用して溶射皮膜92を形成した場合、耐摩耗性は改善できるが銅板91の中央部で溶着損傷95が発生し(図4(A)参照)、また特許文献2に記載された耐溶着性に優れた材料のみを使用して溶射皮膜94を形成した場合、耐溶着性は改善できるが特許文献1の材料より耐摩耗性が劣るため、銅板93の下部で早期に摩耗96が発生していた(図4(B)参照)。
このように、1種類の材料を使用して表面処理を行った場合、銅板91、93の損傷を部分的に改善できるが、その全面にわたって改善することができず、銅板91、93の更なる長寿命化を図ることが困難であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋳型本体の各部位毎に要求される機能を有する材料を用いて鋳型本体に表面処理を施し、鋳型本体の各種損傷を抑制して長寿命化を図る機能性を有する連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
このように、1種類の材料を使用して表面処理を行った場合、銅板91、93の損傷を部分的に改善できるが、その全面にわたって改善することができず、銅板91、93の更なる長寿命化を図ることが困難であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋳型本体の各部位毎に要求される機能を有する材料を用いて鋳型本体に表面処理を施し、鋳型本体の各種損傷を抑制して長寿命化を図る機能性を有する連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、鋳型本体の内側表面に溶射皮膜が形成された連続鋳造用鋳型において、
前記溶射皮膜は、該溶射皮膜の上部の耐クラック性を高める上皮膜部と、前記溶射皮膜の中央部の耐溶着性を高める中央皮膜部と、前記溶射皮膜の下部の耐摩耗性を高める下皮膜部とを有する。
これにより、溶射皮膜の上部においては、連続鋳造用鋳型に溶鋼を鋳込んでも、靱性低下に伴うクラックの発生を抑制できる。また、溶射皮膜の中央部においては、例えば操業異常(例えば、ブレークアウト、パウダー切れ等)で溶鋼が直接溶射皮膜に接触しても、溶射皮膜の熱伝導率低下に伴う溶鋼と溶射皮膜との溶着を抑制できる。そして、溶射皮膜の下部においては、例えば溶鋼を鋳型本体で冷却して形成される高温でしかも半凝固状態にある凝固シェルが、鋳型本体と機械的に接触しながら引き抜かれても、硬度低下に伴う摩耗損傷を抑制できる。
前記溶射皮膜は、該溶射皮膜の上部の耐クラック性を高める上皮膜部と、前記溶射皮膜の中央部の耐溶着性を高める中央皮膜部と、前記溶射皮膜の下部の耐摩耗性を高める下皮膜部とを有する。
これにより、溶射皮膜の上部においては、連続鋳造用鋳型に溶鋼を鋳込んでも、靱性低下に伴うクラックの発生を抑制できる。また、溶射皮膜の中央部においては、例えば操業異常(例えば、ブレークアウト、パウダー切れ等)で溶鋼が直接溶射皮膜に接触しても、溶射皮膜の熱伝導率低下に伴う溶鋼と溶射皮膜との溶着を抑制できる。そして、溶射皮膜の下部においては、例えば溶鋼を鋳型本体で冷却して形成される高温でしかも半凝固状態にある凝固シェルが、鋳型本体と機械的に接触しながら引き抜かれても、硬度低下に伴う摩耗損傷を抑制できる。
前記目的に沿う第2の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第1の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記上皮膜部を形成する微粉末が、Cr:0又は0を超え8質量%以下、B:1.0〜4.5質量%、Si:1.5〜5.0質量%、C:1.1質量%以下、Fe:5.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、残部Ni及び不可避的不純物からなる第1のニッケル基自溶性合金で構成され、
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末である硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成される。
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末である硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成される。
このように、上皮膜部に上記した組成の第1のニッケル基自溶性合金を使用することで、上被腹部の靱性を向上できるため、連続鋳造用鋳型に鋳込まれる溶鋼に対する上皮膜部の耐クラック性を改善できる。また、中央皮膜部に上記した組成の第2のニッケル基自溶性合金を使用することで、中央皮膜部の熱伝導率を向上できるため、連続鋳造用鋳型に鋳込まれる溶鋼に対する中央皮膜部の耐溶着性を改善できる。なお、中央皮膜部に耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末である硬質材料を使用することで、中央皮膜部の耐摩耗性を向上させることができる。そして、下皮膜部に上記した組成の第3のニッケル基自溶性合金を使用することで、下皮膜部の硬度を向上できるため、溶鋼から形成される凝固シェルに対する下皮膜部の耐摩耗性を改善できる。
前記目的に沿う第3の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第1の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記上皮膜部を形成する微粉末が、Cr:0又は0を超え8質量%以下、B:1.0〜4.5質量%、Si:1.5〜5.0質量%、C:1.1質量%以下、Fe:5.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、残部Ni及び不可避的不純物からなる第1のニッケル基自溶性合金で構成され、
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、Co、Ni、Cr、Fe、及びこれらの合金のいずれか一種以上と耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを含む硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成される。
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、Co、Ni、Cr、Fe、及びこれらの合金のいずれか一種以上と耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを含む硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成される。
このように、上皮膜部に上記した組成の第1のニッケル基自溶性合金を使用することで、上被腹部の靱性を向上できるため、連続鋳造用鋳型に鋳込まれる溶鋼に対する上皮膜部の耐クラック性を改善できる。また、中央皮膜部に上記した組成の第2のニッケル基自溶性合金を使用することで、中央皮膜部の熱伝導率を向上できるため、連続鋳造用鋳型に鋳込まれる溶鋼に対する中央皮膜部の耐溶着性を改善できる。なお、中央皮膜部に、Co、Ni、Cr、Fe、及びこれらの合金のいずれか一種以上と耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを含む硬質材料を使用するので、例えば市販の硬質材料を使用して中央皮膜部の耐摩耗性を向上させることができる。そして、下皮膜部に上記した組成の第3のニッケル基自溶性合金を使用することで、下皮膜部の硬度を向上できるため、溶鋼から形成される凝固シェルに対する下皮膜部の耐摩耗性を改善できる。
前記目的に沿う第4の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第2及び第3の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記中央皮膜部と前記下皮膜部との間には、前記第2のニッケル基自溶性合金(前記第2のニッケル基自溶性合金と実質同一の組成のニッケル基自溶性合金をいう)と前記第3のニッケル基自溶性合金(前記第3のニッケル基自溶性合金と実質同一の組成のニッケル基自溶性合金をいう)とを有し前記第2のニッケル基自溶性合金を0又は0を超え50質量%以下含む金属マトリックスと、前記硬質材料(前記硬質材料と実質同一組成の硬質材料をいう)とを有し、該硬質材料を10〜50質量%含む中間層が設けられている。このように、中央皮膜部と下皮膜部との間に、中央皮膜部と下皮膜部の各組成を考慮した上記組成の中間層を設けるので、隣り合う皮膜部の間で溶射作業時に生じる引けの程度を、中間層を設けない場合と比較して小さくできる。なお、中間層を形成する硬質材料量は、中央皮膜部を形成する硬質材料量の増減に対応させて増減させる。
前記目的に沿う第5の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第2〜第4の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記耐摩耗性硬質セラミックスは、炭化物、酸化物、硼化物、窒化物、及びケイ化物のいずれか1又は2以上である。これにより、溶射皮膜の耐摩耗性を更に向上させることが可能となる。
前記目的に沿う第6の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第1〜第5の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記溶射皮膜は、Ni又はNiを80質量%以上含む合金のめっき層を介して、前記鋳型本体の内側表面に形成されている。このように、溶射皮膜及びめっき層共にNiを含んでいるため、鋳型本体の内側表層部の酸化を防止することが可能となり、例えば900〜1100℃で熱処理するときに、溶射皮膜とめっき層との間で相互拡散が生じ易くなるので、鋳型本体に対する溶射皮膜の密着強度を安定させることが可能となる。
前記目的に沿う第7の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型は、第1〜第6の発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記鋳型本体の内側表面に前記溶射皮膜を形成した後、該溶射皮膜を900〜1100℃で熱処理する。このように、熱処理を900℃以上で実施することで、溶射皮膜と鋳型本体の内側表層部との境界面近傍の拡散が開始し、鋳型本体に対する溶射皮膜の密着力を向上させることができる。また、中央皮膜部では、例えば、ニッケル基自溶性合金と硬質材料とが互いに拡散して、溶射皮膜の強度を向上させることが可能となる。一方、熱処理を1100℃以下としたのは、鋳型本体の融点が約1100℃程度であることに起因する。
従って、鋳型本体の強度の低下を生じさせることなく、溶射皮膜と鋳型本体の内側表層部との境界面近傍の拡散、また溶射皮膜内の微粉末の拡散を効率良く行うため、熱処理を950〜1100℃、更には1000〜1050℃で実施することが好ましい。
従って、鋳型本体の強度の低下を生じさせることなく、溶射皮膜と鋳型本体の内側表層部との境界面近傍の拡散、また溶射皮膜内の微粉末の拡散を効率良く行うため、熱処理を950〜1100℃、更には1000〜1050℃で実施することが好ましい。
なお、上記した発明において、溶射皮膜を構成する上皮膜部はクラックが発生するメニスカス部を含む部分、中央皮膜部は溶鋼との接触が生じ易い場所を含む部分、及び下皮膜部は摩耗が発生し易い場所を含む部分をそれぞれ示すものであり、例えば、鋳型本体を高さ方向に三等分した場合の上部、中央部、及び下部にそれぞれ相当する。
また、溶射皮膜は、鋳型本体を構成する短辺銅板のみに形成することも、また短辺銅板及び長辺銅板にそれぞれ形成することも可能である。
また、溶射皮膜は、鋳型本体を構成する短辺銅板のみに形成することも、また短辺銅板及び長辺銅板にそれぞれ形成することも可能である。
請求項1〜7記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、組成が異なる皮膜部を鋳型本体の内側表面の各損傷現象に対応した位置に形成して、溶射皮膜を形成するので、連続鋳造用鋳型の長寿命化を図ることができる。
特に、請求項2、3記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、上皮膜部の耐クラック性を改善でき、中央皮膜部の耐溶着性を改善でき、更に下皮膜部の耐摩耗性を改善できるので、鋳型の品質を良好な状態に維持して更なる長寿命化を図ることができると共に、溶射皮膜を摩耗させることなく凝固シェルが形成された溶鋼を容易に鋳型から引抜くことが可能となる。
請求項3記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、例えば市販の硬質材料を使用できるので、この硬質材料を新たに製造して使用する必要がなく、作業性が良好である。
特に、請求項2、3記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、上皮膜部の耐クラック性を改善でき、中央皮膜部の耐溶着性を改善でき、更に下皮膜部の耐摩耗性を改善できるので、鋳型の品質を良好な状態に維持して更なる長寿命化を図ることができると共に、溶射皮膜を摩耗させることなく凝固シェルが形成された溶鋼を容易に鋳型から引抜くことが可能となる。
請求項3記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、例えば市販の硬質材料を使用できるので、この硬質材料を新たに製造して使用する必要がなく、作業性が良好である。
請求項4記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、中央皮膜部と下皮膜部との間に中間層を設けるので、隣り合う皮膜部の間で生じる引けの程度を、中間層を設けない場合と比較して小さくでき、良好な品質を備える連続鋳造用鋳型を提供できる。
請求項5記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、溶射皮膜の耐摩耗性を更に向上させることが可能となるので、鋳型の寿命を更に伸ばすことが可能となる。
請求項5記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、溶射皮膜の耐摩耗性を更に向上させることが可能となるので、鋳型の寿命を更に伸ばすことが可能となる。
請求項6記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、鋳型本体に対する溶射皮膜の密着強度を安定させることが可能となるので、鋳型本体の内側表面から溶射皮膜が剥離しにくくなり、安定した品質を有する連続鋳造用鋳型を提供できる。
請求項7記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、溶射皮膜と鋳型本体の内側表層部との拡散が開始し、鋳型本体に対する溶射皮膜の密着力を向上させることができ、また、中央皮膜部では、例えば、ニッケル基自溶性合金と硬質材料とが互いに拡散して、溶射皮膜の強度を向上させることができるので、より安定した品質を有する連続鋳造用鋳型を製造できる。
請求項7記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型においては、溶射皮膜と鋳型本体の内側表層部との拡散が開始し、鋳型本体に対する溶射皮膜の密着力を向上させることができ、また、中央皮膜部では、例えば、ニッケル基自溶性合金と硬質材料とが互いに拡散して、溶射皮膜の強度を向上させることができるので、より安定した品質を有する連続鋳造用鋳型を製造できる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型の一部省略斜視図、図2(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造用鋳型の短辺銅板の斜視図、部分拡大側面図、図3(A)、(B)は同短辺銅板に形成される中央皮膜部と下皮膜部の説明図である。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型の一部省略斜視図、図2(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造用鋳型の短辺銅板の斜視図、部分拡大側面図、図3(A)、(B)は同短辺銅板に形成される中央皮膜部と下皮膜部の説明図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)10は、一対の幅狭冷却部材である短辺部材11と、この短辺部材11を挟み込むように配置される一対の幅広冷却部材である長辺部材12とを、例えば4つ組みして製造されたものである。この短辺部材11及び長辺部材12は、銅又は銅合金で製造された短辺銅板13及び長辺銅板14と、この短辺銅板13及び長辺銅板14をそれぞれ冷却するためその裏面側に設けられたバックプレート(水箱)15、16とを備えており、この一対の短辺銅板13及び長辺銅板14で鋳型本体17が構成されている。なお、短辺銅板13及び長辺銅板14の内側表面には溶射皮膜18、19がそれぞれ形成されている。以下、詳しく説明する。
図1、図2(A)、(B)に示すように、短辺銅板13は、その内側表面が全体にわたって均等に研削されている。なお、短辺銅板の下側から上側に向かって(沿って)溶射皮膜を薄くできるよう(傾斜皮膜)に、或いは短辺銅板の下側が銅板の上側よりも厚い溶射皮膜を形成するように、短辺銅板の下側、例えば全体の高さの1/3〜2/3に相当する範囲を部分的(部分皮膜)にそれぞれ前加工することも可能である。
この短辺銅板13の表面に対し、例えば0を超え0.2mm以下程度のNi又はNiを80質量%以上含む合金のめっきが施され、短辺銅板13の内側表面にめっき層20が形成されている。これにより、短辺銅板13の内側表面(表層部)の酸化を防止することが可能となるため、引き続き行われる短辺銅板13に対する溶射皮膜18の密着強度を安定に高めることが可能となる。
この短辺銅板13の表面に対し、例えば0を超え0.2mm以下程度のNi又はNiを80質量%以上含む合金のめっきが施され、短辺銅板13の内側表面にめっき層20が形成されている。これにより、短辺銅板13の内側表面(表層部)の酸化を防止することが可能となるため、引き続き行われる短辺銅板13に対する溶射皮膜18の密着強度を安定に高めることが可能となる。
このめっき層20の表面には、上部の上皮膜部21、中央部の中央皮膜部22、下部の下皮膜部23、及び中央皮膜部22と下皮膜部23との間に形成される中間層24を有する溶射皮膜18が形成されている。
ここで、上記した各皮膜部を形成する微粉末の化学成分及びその数値範囲は、表1に示すニッケル基性(JISH8303に規定されているニッケル基自溶性合金の1〜5種(SFNi1〜SFNi5))の靱性や熱伝導率等の諸条件を考慮し決定した。
ここで、上記した各皮膜部を形成する微粉末の化学成分及びその数値範囲は、表1に示すニッケル基性(JISH8303に規定されているニッケル基自溶性合金の1〜5種(SFNi1〜SFNi5))の靱性や熱伝導率等の諸条件を考慮し決定した。
上皮膜部21を形成する微粉末は、Cr:0又は0を超え8質量%以下、B:1.0〜4.5質量%、Si:1.5〜5.0質量%、C:1.1質量%以下、Fe:5.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、残部Ni及び不可避的不純物からなる第1のニッケル基自溶性合金で構成され、図1に仮想線で示すようなクラックが発生するメニスカス部を含む溶射皮膜18の上部の靱性(耐クラック性)を高めるものであり、例えば特開2002−86248号公報に記載されたニッケル基自溶性合金の金属マトリックスを使用できる。
中央皮膜部22を形成する微粉末は、耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末である硬質材料と、第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、硬質材料を5〜50質量%含むもので構成され、図1に仮想線で示すような溶鋼との溶着が生じ易い場所を含む溶射皮膜18の中央部の熱伝導率(耐溶着性)を高めるものであり、例えば特開2002−86248号公報に記載されたニッケル基自溶性合金の金属マトリックスと耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを混合したものを使用できる。この耐摩耗性硬質セラミックスには、例えばWC、CrC、NbC、TiC、ZrC、HfC、VC、MoC等の炭化物、例えばアルミナ(Al2 O3 )、ジルコニア(ZrO2 )、チタニア(TiO2 )等の酸化物、例えば超高圧法によって合成されたBN(立方晶窒化ほう素)等の硼化物、例えばSi3 N4 、AlN、TiN等のように窒素を非金属構成元素として含む化合物である窒化物、更にはケイ化物のいずれか1を使用することも、また2以上を組み合わせて使用することも可能である。
ここで、中央皮膜部22を形成する微粉末中の硬質材料の含有割合を5〜50質量%としたのは、5質量%未満では、中央皮膜部22が耐摩耗性を発揮するために充分な量でなく、一方、50質量%を超えると、中央皮膜部22の硬度が高くなり過ぎ、鋳型10を繰返し使用することで中央皮膜部22にクラックが入る可能性があるためである。
従って、中央皮膜部22にクラックが入ることなく、中央皮膜部22が耐摩耗性を発揮し、しかも必要な硬度を得るには、10〜40質量%、更には15〜40質量%とすることが好ましい。
従って、中央皮膜部22にクラックが入ることなく、中央皮膜部22が耐摩耗性を発揮し、しかも必要な硬度を得るには、10〜40質量%、更には15〜40質量%とすることが好ましい。
なお、中央皮膜部を形成する硬質材料には、サーメット(硬質材料の一例)と、第2のニッケル基自溶性合金とを有し、サーメットを5〜50質量%含むもので構成することも可能である。このサーメットは、Co、Ni、Cr、Fe、及びこれらの合金のいずれか一種以上のマトリックスと耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを含むものである。また、このサーメットは、耐摩耗性硬質セラミックスが10〜90質量%、残部がマトリックスとなっているものを使用することが好ましい。ここで、サーメット中のマトリックス量が10質量%未満であれば、耐摩耗性硬質セラミックスとの接合性が悪くなり、一方、90質量%を超えるとマトリックス内の耐摩耗性硬質セラミックス(骨材)が不足し、充分な強度が得られないからである。
なお、中央皮膜部を形成する微粉末中のサーメットの含有割合を5〜50質量%としたのは、5質量%未満では、中央皮膜部が耐摩耗性を発揮するために充分な量でなく、一方、50質量%を超えると、中央皮膜部の硬度が高くなり過ぎ、鋳型を繰返し使用することで中央皮膜部にクラックが入る可能性があるためである。
従って、中央皮膜部にクラックが入ることなく、中央皮膜部がより耐摩耗性を発揮し、しかも必要な硬度を得るには、10〜40質量%、更には15〜40質量%とすることが好ましい。
従って、中央皮膜部にクラックが入ることなく、中央皮膜部がより耐摩耗性を発揮し、しかも必要な硬度を得るには、10〜40質量%、更には15〜40質量%とすることが好ましい。
下皮膜部23を形成する微粉末は、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成され、図1に仮想線で示すような摩耗が発生し易い溶射皮膜18の下部の硬度(耐摩耗性)を高めるものであり、例えば特公平1−53144号公報に記載されたニッケル基自溶性合金を使用できる。
そして、中間層24は、金属マトリックスと硬質材料とを有し、この硬質材料を10〜50質量%含むものである。なお、金属マトリックスは、第3のニッケル基自溶性合金のみで構成することも、また第2のニッケル基自溶性合金と第3のニッケル基自溶性合金とを有し、第2のニッケル基自溶性合金を0を超え50質量%以下含むもので構成することも可能である。
そして、中間層24は、金属マトリックスと硬質材料とを有し、この硬質材料を10〜50質量%含むものである。なお、金属マトリックスは、第3のニッケル基自溶性合金のみで構成することも、また第2のニッケル基自溶性合金と第3のニッケル基自溶性合金とを有し、第2のニッケル基自溶性合金を0を超え50質量%以下含むもので構成することも可能である。
なお、上記した各ニッケル基自溶性合金及び耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末の粒径は、10〜100μmの範囲で選定することが好ましい。
微粉末の粒径が10μm未満の場合には、製造価格が高騰すると共に、溶射時に微粉末が受ける運動量が小さくなって微粉末が気流に流され易く、一方、粒径が100μmを超えると溶射皮膜が粗くなって溶射皮膜の実質的強度が落ちるからである。
微粉末の粒径が10μm未満の場合には、製造価格が高騰すると共に、溶射時に微粉末が受ける運動量が小さくなって微粉末が気流に流され易く、一方、粒径が100μmを超えると溶射皮膜が粗くなって溶射皮膜の実質的強度が落ちるからである。
前記した微粉末は、前記しためっき層20の上面に、従来公知のプラズマ溶射、フレーム溶射、高速フレーム溶射(フレームの速度が例えば、2000〜2700m/秒程度)等の方法を用いて厚みが例えば1〜2.5mm程度になるように溶射され、更にこの表面を研削して厚みが例えば0.3〜1.5mmの溶射皮膜18になるように仕上げられている。なお、微粉末の溶射は、下皮膜部23(短辺銅板13の下端から短辺銅板13の高さ方向1/3程度までの範囲)、中間層24(下皮膜部23の上端部から20〜100mmの範囲)、中央皮膜部22(中間層24の上端部から短辺銅板13の高さ方向2/3程度までの範囲)、及び上皮膜部21(中央皮膜部22の上端部から短辺銅板13の上端までの範囲)の順番で順次行われている。
また、短辺銅板の加工形状を変えて、その表面に傾斜皮膜を形成する場合、短辺銅板の上端で0.1〜1.0mm、下部側となるにつれ連続的に溶射皮膜を厚くし、短辺銅板の下端で1.0〜2.0mmとすることが好ましい。また、部分皮膜を形成する場合、短辺銅板の上部の厚みを0.1〜1.0mm、短辺銅板の下部の厚みを0.5〜2.0mmとすることが好ましい。
また、短辺銅板の加工形状を変えて、その表面に傾斜皮膜を形成する場合、短辺銅板の上端で0.1〜1.0mm、下部側となるにつれ連続的に溶射皮膜を厚くし、短辺銅板の下端で1.0〜2.0mmとすることが好ましい。また、部分皮膜を形成する場合、短辺銅板の上部の厚みを0.1〜1.0mm、短辺銅板の下部の厚みを0.5〜2.0mmとすることが好ましい。
なお、中央皮膜部22と下皮膜部23との間に中間層24を形成しない場合、表面処理時おいて、図3(A)に示す状態の溶射皮膜を形成できず、図3(B)に示すように、中央皮膜部22を形成する微粉末(融点が例えば1150℃程度)と下皮膜部23を形成する微粉末(融点が例えば1035℃程度)との融点の差に起因すると考えられる引け25が、その重なり合う部分に最大50%(適切に形成される溶射皮膜の厚みの50%)程度生じる。しかし、上記したように、中央皮膜部22と下皮膜部23との間に、中央皮膜部22と下皮膜部23との間の組成となる中間層24を形成することで、中央皮膜部22と中間層24との接合性、中間層24と下皮膜部23との接合性をそれぞれ向上でき、その引け25の程度を5〜15%程度に縮小でき、大幅な改善を図ることができる。
上記のように、短辺銅板13の内側表面に溶射皮膜18を形成した後、鋳型10の使用環境や使用頻度等を考慮して、溶射皮膜18を900〜1100℃で熱処理(フュージング)しておく。なお、この熱処理は無酸素雰囲気中、又は例えば窒素ガスを充満させた不活性雰囲気中で、例えば10〜30分程度行うことが好ましい。このとき、溶射皮膜18及びめっき層20は、共にNiを含んでいるため、熱処理時(例えば、900〜1100℃)に溶射皮膜18とめっき層20との間で相互拡散が生じ易くなる。従って、短辺銅板13に対する溶射皮膜18の密着強度を安定させることが可能となる。
なお、この熱処理は、品質の安定化を考慮するということから、加熱炉を用いて炉内で行うことが好ましい。しかし、溶射皮膜18とめっき層20との境界面からめっき層20側、また溶射皮膜18と短辺銅板13との境界面から短辺銅板13側に0.2mm程度の位置が900〜1100℃の温度になるように熱処理できるのであれば、例えばバーナーやレーザー等を用いて熱処理することも可能である。
前記したようにして、短辺銅板13に溶射皮膜18を形成しているが、短辺銅板13と同様に、長辺銅板14に上皮膜部、中央皮膜部、下皮膜部、及び中央皮膜部と下皮膜部との間に形成される中間層を有する溶射皮膜19(図1参照)を形成することも、また、長辺銅板14のみ1種類の組成からなる溶射皮膜を、その全面にわたって形成することも可能である。
前記したようにして、短辺銅板13に溶射皮膜18を形成しているが、短辺銅板13と同様に、長辺銅板14に上皮膜部、中央皮膜部、下皮膜部、及び中央皮膜部と下皮膜部との間に形成される中間層を有する溶射皮膜19(図1参照)を形成することも、また、長辺銅板14のみ1種類の組成からなる溶射皮膜を、その全面にわたって形成することも可能である。
本発明に係る機能性を有する連続鋳造用鋳型10を使用し、試験を行った結果について説明する。
まず、溶射皮膜18を構成する上皮膜部21、中央皮膜部22、下皮膜部23、及び中間層24を形成する微粉末を、前記した実施の形態の範囲でそれぞれ調整し作製する。なお、中間層24の微粉末は、サーメット:30質量%、第2のニッケル基自溶性合金:20質量%、及び第3のニッケル基自溶性合金:50質量%で構成されている。このとき、第2のニッケル基自溶性合金及び第3のニッケル基自溶性合金で金属マトリックスが構成されるが、金属マトリックス中の第2のニッケル基自溶性合金量は28.6質量%、金属マトリックス中の第3のニッケル基自溶性合金量は71.4質量%であり、その組成は前記した範囲内にある。
まず、溶射皮膜18を構成する上皮膜部21、中央皮膜部22、下皮膜部23、及び中間層24を形成する微粉末を、前記した実施の形態の範囲でそれぞれ調整し作製する。なお、中間層24の微粉末は、サーメット:30質量%、第2のニッケル基自溶性合金:20質量%、及び第3のニッケル基自溶性合金:50質量%で構成されている。このとき、第2のニッケル基自溶性合金及び第3のニッケル基自溶性合金で金属マトリックスが構成されるが、金属マトリックス中の第2のニッケル基自溶性合金量は28.6質量%、金属マトリックス中の第3のニッケル基自溶性合金量は71.4質量%であり、その組成は前記した範囲内にある。
この条件の微粉末を使用し、短辺銅板13の内側表面に溶射皮膜18を形成した場合、中央皮膜部22と下皮膜部23との間で発生した引けは5%であり、中間層24を設けない場合と比較して、大幅な改善ができることを確認できた。
このようにして製造された連続鋳造用鋳型10は、耐クラック性、耐溶着性、耐摩耗性等の各種機能を兼ね備えており、連続鋳造に使用した際においても、従来生じていた短辺銅板13の各種損傷を抑制し、鋳型10の更なる長寿命化を図ることを確認できた。
このようにして製造された連続鋳造用鋳型10は、耐クラック性、耐溶着性、耐摩耗性等の各種機能を兼ね備えており、連続鋳造に使用した際においても、従来生じていた短辺銅板13の各種損傷を抑制し、鋳型10の更なる長寿命化を図ることを確認できた。
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の機能性を有する連続鋳造用鋳型を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、短辺銅板を高さ方向に三等分し、その各部分の全面にわたって上皮膜部、中央皮膜部、及び下皮膜部をそれぞれ形成した場合について説明したが、各部分の全面にわたって各皮膜部を形成することなく、損傷が顕著に生じる部分のみ各皮膜部を部分的に形成することも可能である。なお、各皮膜部の境界部分について、直線状とすることなく、損傷形態に対応させてその境界線を上方又は下方へ湾曲させることも可能である。
そして、前記実施の形態においては、短辺銅板の内側表面(加工面)にNi又はNi合金のめっき層を施した場合について示したが、めっき層を介することなく、上記した方法で溶射皮膜を短辺銅板の内側表面にそれぞれ形成することも可能である。このように、めっき層を形成することなく、短辺銅板の内側表面に溶射皮膜を形成した場合、熱処理時において、溶射皮膜と短辺銅板との境界面近傍の拡散が開始する。
また、前記実施の形態においては、短辺銅板を高さ方向に三等分し、その各部分の全面にわたって上皮膜部、中央皮膜部、及び下皮膜部をそれぞれ形成した場合について説明したが、各部分の全面にわたって各皮膜部を形成することなく、損傷が顕著に生じる部分のみ各皮膜部を部分的に形成することも可能である。なお、各皮膜部の境界部分について、直線状とすることなく、損傷形態に対応させてその境界線を上方又は下方へ湾曲させることも可能である。
そして、前記実施の形態においては、短辺銅板の内側表面(加工面)にNi又はNi合金のめっき層を施した場合について示したが、めっき層を介することなく、上記した方法で溶射皮膜を短辺銅板の内側表面にそれぞれ形成することも可能である。このように、めっき層を形成することなく、短辺銅板の内側表面に溶射皮膜を形成した場合、熱処理時において、溶射皮膜と短辺銅板との境界面近傍の拡散が開始する。
10:連続鋳造用鋳型、11:短辺部材、12:長辺部材、13:短辺銅板、14:長辺銅板、15、16:バックプレート、17:鋳型本体、18、19:溶射皮膜、20:めっき層、21:上皮膜部、22:中央皮膜部、23:下皮膜部、24:中間層、25:引け
Claims (7)
- 鋳型本体の内側表面に溶射皮膜が形成された連続鋳造用鋳型において、
前記溶射皮膜は、該溶射皮膜の上部の耐クラック性を高める上皮膜部と、前記溶射皮膜の中央部の耐溶着性を高める中央皮膜部と、前記溶射皮膜の下部の耐摩耗性を高める下皮膜部とを有することを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。 - 請求項1記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記上皮膜部を形成する微粉末が、Cr:0又は0を超え8質量%以下、B:1.0〜4.5質量%、Si:1.5〜5.0質量%、C:1.1質量%以下、Fe:5.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、残部Ni及び不可避的不純物からなる第1のニッケル基自溶性合金で構成され、
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末である硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成されることを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。 - 請求項1記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記上皮膜部を形成する微粉末が、Cr:0又は0を超え8質量%以下、B:1.0〜4.5質量%、Si:1.5〜5.0質量%、C:1.1質量%以下、Fe:5.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、残部Ni及び不可避的不純物からなる第1のニッケル基自溶性合金で構成され、
前記中央皮膜部を形成する微粉末が、Co、Ni、Cr、Fe、及びこれらの合金のいずれか一種以上と耐摩耗性硬質セラミックスの微粉末とを含む硬質材料と、前記第1のニッケル基自溶性合金と実質的に同一組成の第2のニッケル基自溶性合金とを有し、前記硬質材料を5〜50質量%含み、
前記下皮膜部を形成する微粉末が、Cr:12〜16質量%、B:2.8〜3.2質量%、Si:4.0〜5.0質量%、C:0.5〜0.7質量%、Fe:3.5〜5.0質量%、残部Ni及び不可避的不純物からなる第3のニッケル基自溶性合金で構成されることを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。 - 請求項2及び3のいずれか1項に記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記中央皮膜部と前記下皮膜部との間には、前記第2のニッケル基自溶性合金と前記第3のニッケル基自溶性合金とを有し前記第2のニッケル基自溶性合金を0又は0を超え50質量%以下含む金属マトリックスと、前記硬質材料とを有し、該硬質材料を10〜50質量%含む中間層が設けられていることを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。
- 請求項2〜4のいずれか1項に記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記耐摩耗性硬質セラミックスは、炭化物、酸化物、硼化物、窒化物、及びケイ化物のいずれか1又は2以上であることを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記溶射皮膜は、Ni又はNiを80質量%以上含む合金のめっき層を介して、前記鋳型本体の内側表面に形成されていることを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性を有する連続鋳造用鋳型において、前記鋳型本体の内側表面に前記溶射皮膜を形成した後、該溶射皮膜を900〜1100℃で熱処理することを特徴とする機能性を有する連続鋳造用鋳型。
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JP2003290425A JP2005059034A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | 機能性を有する連続鋳造用鋳型 |
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JP2003290425A Pending JP2005059034A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | 機能性を有する連続鋳造用鋳型 |
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-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003290425A patent/JP2005059034A/ja active Pending
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