JP7020147B2 - 連続鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱、耐摩耗性に優れかつ高強度な連続鋳造用鋳型製造方法に関するものである。
溶鋼を冷却しながら固化・成型する製鋼工程で使用される連続鋳造用鋳型用材料には、冷却効果の観点から熱伝導性に優れる銅や銅合金が使用されることが多い。しかし、銅や銅合金は硬度が低く耐摩耗性に劣ることから、鋳型の長寿命化を目的に、銅や銅合金よりなる鋳型基体の表面に、より高耐摩耗で耐熱性に優れるニッケルやコバルトのめっき層や、溶射による金属層やセラミック層を形成した連続鋳造用鋳型が知られている。
凝固・成型時の特に連続鋳造用鋳型上部においては、高熱の溶鋼と冷却された鋳型との温度差により、鋳型表面は厳しい熱衝撃にさらされる。一方、鋳型下部においては冷却され凝固した鋳片に強く擦られ鋳型の摩耗が激しくなる。そこで、耐熱疲労性、耐摩耗性、耐食性などの特性に優れるニッケルと鉄、マンガン、コバルト、クロム、タングステンなどとの合金層をめっき法や溶射法により銅または銅合金製の連続鋳造用鋳型表面に形成させることにより、鋳型を長寿命化させる方法は一般に知られている。
特許文献1では、さらに連続鋳造用鋳型の寿命延長と鋳片品質向上の目的で、銅または銅合金基体の溶鋼との接触面に、ニッケルめっきを施し、さらにその上にニッケル-リンめっきとクロムめっきとを三層に被覆して、鋳型の耐摩耗性と耐熱性を向上することが提案されている。また、特許文献2では、コバルト-ニッケル系合金でニッケル含有量の異なる2層を交互に積層した層を連続鋳造用鋳型表面に被覆することにより、引張り強さおよび耐摩耗性を向上させた例が報告されている。
特許文献3では、銅または銅合金の表面にNiめっきを施し、その表面に板形状のNi基合金を仮付けした後、レーザーまたは電子ビームを用いて肉盛りし、密着強度が高くかつ耐摩耗性と耐腐食性に優れた皮膜を形成する方法が示されている。また、肉盛り用Ni基合金の板形状材には、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(23Co20Cr8.5Al0.6Y残部Ni)、NiCr(50Ni50Cr)を用いている。また、レーザーまたは電子ビームを用いて板形状材を肉盛りする際に、板形状材とNiめっき層の境界が溶融し、かつ隣接する板形状材の溶融部が重ね部を形成する方法も示している。
特公昭52-50734号公報 特開2015-166483号公報 特開平10-85972号公報
特許文献3の技術では、レーザーを用いて板形状材を肉盛りする際に、板形状材を溶かすのに十分な熱量の供給を必要とし、また、その供給された熱量の多くは板形状材を伝わって逃げるので、銅あるいは銅合金基体の被熱量が大きくなり、熱変形が少なくないという問題があった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、連続鋳造用鋳型のさらなる長寿命化を達成するために、耐熱、耐摩耗かつ高強度の被覆層を銅または銅合金基体表面に形成するべく、耐熱、耐蝕性に優れるニッケル基合金をレーザー肉盛りするに際して、エネルギー効率が良く、また高強度のめっき層として、組成の異なる2種のめっき層を交互重積した高強度めっき層をあらかじめ基体表面に形成するとともに、ニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、粉末を溶融・固化して肉盛り形成することにより、肉盛りに要する熱エネルギーを小さくし、銅あるいは銅合金基体および被覆層全体の熱ひずみを抑制することを課題とする。
請求項1の発明は、銅または銅合金基体表面に、膜厚が0.1~50μmでニッケルとコバルトとからなり組成比の異なる2種類の電気めっき層を交互に重積した合計膜厚30~500μmのめっき層を形成し、その表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、粉末を溶融・固化し厚み0.1~10mmのニッケル基合金被覆層を肉盛り形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1の連続鋳造用鋳型の製造方法において、2種類の電気めっき層は、ニッケル1~99重量%、残部コバルトの組成を有し、ニッケル含有率の差が1~20重量%であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2の連続鋳造用鋳型の製造方法において、ニッケル基耐熱合金粉末が、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種からなることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、ニッケル基合金被覆層のレーザー肉盛りにおいて、金属粉末の供給量と照射レーザーエネルギーを制御することにより、ニッケルとコバルトとからなる電気めっき層の表面部が肉盛り溶融層中に一部固溶したレーザー肉盛り層とすることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4の連続鋳造用鋳型の製造方法において、レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、電気めっき層からのニッケルとコバルトの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層とすることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、銅または銅合金よりもレーザーエネルギーの吸収が良いニッケルとコバルトとからなる電気めっき層の表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射して肉盛り層を形成しているから、板形状のニッケル基合金を仮付けした後、レーザーを用いて肉盛り溶接する従来例に比べると、供給した粉末を効率よく溶融することができ、したがって、銅あるいは銅合金基体および被覆層全体の熱ひずみを抑制することができる。また、めっき層は、各層の膜厚が0.1~50μmで組成比の異なる2種類の電気めっき層を交互に重積した構造を有しているので、単層のめっき層に比べると、熱衝撃に対する耐クラック性が改善される。さらに、電気めっき層は膜厚が30~500μmであるので、銅または銅合金基体からレーザー肉盛り層への銅の溶け出しを抑制でき、ニッケル基耐熱合金の本来の耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を発揮できる。
請求項2の発明によれば、2種類の電気めっき層は、ニッケル1~99重量%、残部コバルトの組成を有し、ニッケル含有率の差が1~20重量%であることにより、熱衝撃に対する耐クラック性が優れている。
請求項3の発明によれば、耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性に優れていることが既知の合金を、その組成をほとんど変化させることなく、且つ密着性良く、銅あるいは銅合金基体表面に被覆することができるから、合金めっき法や溶射法により表面保護皮膜を形成した連続鋳造用鋳型に比べると、優れた耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を発揮することができる。
請求項4の発明によれば、ニッケル基合金のレーザー肉盛りにおいて、金属粉末の供給量と照射レーザーエネルギーを制御することにより、めっき層と肉盛り層の界面に空孔を生じさせることが無く、高強度の積層構造を得ることができる。また、レーザー肉盛り層に電気めっき層の表面の一部が溶け出して固溶するほど強固に密着性よく電気めっき層の表面に肉盛り層を接合することができる。
請求項5の発明によれば、レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、めっき層からのニッケルおよびコバルトの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層を形成できるから、溶鋼に接する肉盛り層の表面は、粉末で供給されたニッケル基合金の組成に近似した組成を持たせることができるという効果がある。
連続鋳造用鋳型では、鋳型に溶鋼を流し込むと同時に、背面を冷却水で冷やした鋳型表面で、溶鋼を抜熱し凝固させることにより連続的に鋼を鋳込み成型していく。鋳型上部のメニスカス部付近は、溶鋼と鋳型が直接接触する部分であり高い耐熱性と耐蝕性が求められる。同時に、冷却水との温度差から最も強い熱応力を受け、熱クラックも発生しやすく耐熱衝撃性と高強度が求められる。また、銅や銅合金鋳型基体表面に、耐熱性や耐蝕性に優れる被覆層を有する表面被覆鋳型では、基体と被覆層間に強い密着強度が求められる。
一方、溶鋼が冷却され凝固した状態の鋳型下部では、モールドパウダーに含まれるガラス質のセラミックパウダーの擦り摩耗や、溶鋼が凝固し体積収縮した後の密度上昇した鋼自身の重量増により鋳型面を強く擦ることによる鋳型摩耗から寿命に至ることもある。さらに、溶鋼中の硫黄成分による化学的腐食や鋳型通過後の鋼冷却用吹付け水の蒸気による鋳型下部の腐食摩耗にも対策が必要である。
連続鋳造用鋳型の寿命要因である熱負荷による熱衝撃、こすり摩耗と化学的腐食などに対して、優れた耐性を発揮する鋳型が必要である。鋳型基体には、熱伝導性に優れ冷却効果の高い銅あるいは銅合金が使用されるが、耐熱、耐蝕、耐摩耗性と強度を併せ持つ基体保護層が不可欠である。本発明者らは、その基体保護層としてニッケルおよびコバルトめっき層表面に、ニッケル基合金粉末の供給量と照射レーザーエネルギーを制御したレーザー肉盛り法によるニッケル基溶融合金層を形成することによって、課題の解決ができることを見出した。すなわち、本発明の連続鋳造用鋳型では、銅または銅合金基体表面に、膜厚が0.1~50μmでニッケルとコバルトとからなり、組成の異なる2種類の電気めっき層を交互に重積し、合計膜厚30~500μmを形成し、そのめっき層表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、供給した粉末を効率よく溶融するとともに、この粉末供給とレーザー照射をめっき層表面で直線状に走査することで肉盛り層を形成する。粉末溶融体から固化したレーザー肉盛り層を一層または多層に肉盛りすることにより厚み0.1~10mmのニッケル基合金被覆層を持つ連続鋳造用鋳型とすることで、耐熱、耐摩耗性に優れかつ高強度な連続鋳造用鋳型を実現できる。
肉盛りしたニッケル基合金層が合金本来の特性を発揮するためには、合金層内に空孔などの欠陥がなく、合金本来の密度に到達していることが必要である。合金層が空孔のない真密度を得るためには、肉盛りに寄与する合金部を一度完全に溶融することが求められる。合金部を完全溶融するためのエネルギーは外部から供給するが、熱伝導性の良い銅基体などから熱伝導により逃げていく。そのため、良質な合金層を得るためには、エネルギーの供給量、金属粉末の溶融熱量、熱拡散量のすべてを制御できることが重要である。
銅基体とレーザー肉盛り層の中間層として、熱伝導率が純銅の約1/4であるニッケルおよびコバルトの電気めっき層を配することは、レーザー肉盛り時の熱制御に有利である。また、工業的にレーザー肉盛り用に使用できる波長1000nm前後のレーザーエネルギー吸収率は、ニッケルが銅の約3倍であり、銅基体表面にニッケルおよびコバルトの電気めっき層を設けることで、効率よく金属溶融プールを形成でき、熱効率および熱制御の観点から極めて有利である。
レーザーを使った金属肉盛り法には、溶接棒を使う方法や合金板を溶解していく手法があるが、これらの方法は粉末を使う方法に比較し、溶接棒や未溶解合金板から熱伝導により逃げていく熱エネルギーが大きいため、熱量の制御が困難になるだけでなく、溶接棒や合金板の厚み全体を溶融させなければ、基体との接着強度も含めて高強度を得ることが困難であり、過大なエネルギーを外部より供給する必要がある。レーザーエネルギーが過大になると、鋳型銅基体にまで大きな影響を与え、同時に大きな熱ひずみが発生する要因となっている。また、過大なエネルギーは、めっき層が薄い場合には、めっき層の全厚みが溶解し、鋳型銅基体の一部がレーザー肉盛り層に固溶するなど、肉盛り層自身の特性にも大きな影響を与える危険がある。
本発明のように、レーザー照射ノズルからレーザー光と共に、使用する合金粉末を供給しながら、基体表面にノズルを走査させレーザー肉盛りする方法では、供給する合金粉末のみの溶融目的にレーザーエネルギーを使用でき最も効率的である。具体的には、粉末の溶融によりできる溶融プールのサイズと溶融プールの温度を管理しながら、必要レーザーエネルギーを制御することが可能である。このように必要レーザーエネルギーの制御により、めっき下地層を過度に溶解することなく、めっき層の表面部の一部を上記合金粉末から生成された溶融プールに固溶させることも容易になり、下地層との間に欠陥がなく密着性に優れる強固な肉盛り層を形成することが可能となった。同時に、めっき層からの固溶量も低く抑えることが可能となり、合金肉盛り層の組成変化も0~10重量%と低くできた。
また、鋳型の熱負荷や熱衝撃についての課題は、基体表面に保護層を形成することにより基体金属と肉盛り層の熱膨張係数の違いなどにより生じる熱ひずみも加わり、より効果のある対策が必要であった。本発明者らは、基体表面に被覆するニッケルおよびコバルトからなるめっき中間層を、膜厚が0.1~50μmと薄く、組成の異なる電気めっき層を交互に重積することで、レーザー肉盛り保護層を持つ連続鋳造用鋳型が強い引張強さや耐熱衝撃性も兼ね備えることを見出した。
すなわち、本発明では、組成の異なるニッケルおよびコバルト合金めっき層を交互重積した中間層表面に、ニッケル基耐熱合金肉盛り層を溶融・固化により形成させる。ニッケルおよびコバルトめっき層成分は、ニッケル基耐熱合金にも含まれる成分であることから、めっき層成分が肉盛り層に固溶拡散しても合金組成を大きく損なうことがなく、合金の耐熱性、耐蝕性を高レベルに維持できる。さらに、肉盛り層を2層以上繰り返した場合、ニッケルおよびコバルトめっき成分の固溶量は段階的傾斜的に減少し、2層目以上の表面では、使用したニッケル基合金粉末とほぼ同じ組成の肉盛り層を形成することができた。
組成の異なるニッケルおよびコバルト合金めっき層を交互重積しためっき中間層において、1層の膜厚は0.1~50μmが良く、より好ましくは0.5μm~20μmが良い。膜厚が0.1μm以下では、めっき時の膜厚制御が困難であり、50μm以上では交互積層数を増やすことが困難になり、結果として高強度の皮膜が得られない。また、組成の異なるニッケルおよびコバルト合金めっき層を交互重積しためっき中間層の合計膜厚(めっき層の全膜厚)は30~500μmが好ましい。
全膜厚が30μm未満では、レーザー肉盛り時に形成する溶融プールにめっき層全体が溶融する恐れがある。万一、めっき層の下すなわち銅あるいは銅合金基体の一部も固溶した場合、固溶合金の融点が大きく低下し、被覆層全体の強度が低下する。また、全膜厚が30μm未満では、レーザー肉盛り時の溶融の問題以外に強度の向上率が低く交互重積効果が十分でない。ニッケルおよびコバルト電気めっき層は、銅あるいは銅合金基体とレーザー肉盛り層の中間にあり、肉盛り時の熱ひずみを緩和する役割も持っており、全膜厚は30μm以上が好ましい。一方、全膜厚を500μmより大きくすることは可能であるが、500μmより大きくしても、さらなる熱ひずみ緩和効果の向上は少なくなる。また、500μmより大きくしても、さらなる強度の向上は得にくかった。
2種類の電気めっき交互重積層の組成は、ニッケル1~99重量%、残部コバルトからなり、2種類のめっき層間でのニッケル含有率の差が1~20重量%であるのが良い。ニッケル含有率の差が1重量%未満では交互重積効果が見られなかった。一方、ニッケル含有率の差が20重量%より大きい場合には、交互重積層を電気めっき法で連続的かつ効率的に製造するのが困難であったため20重量%を上限としたが、効率的な製造方法が開発できれば上限値を高くすることも好ましい。なお、電気めっきのプロセスに付随して不可避的不純物が含まれる場合があることは言うまでもない。
電気めっき交互重積層は、非晶質および/または結晶質から構成されている。結晶性の度合いは、めっき条件や組成により異なる。すなわちコバルト含有量が多い場合には六方晶(hcp)が出現しやすく、ニッケル含有量が多い場合には面心立方晶(fcc)が現れやすい。
めっき層上のレーザー肉盛り層は、1層または繰り返しによる多層化により形成し、全体の膜厚は0.1~10mmが好ましい。厚みを0.1mmより薄くする場合には、粉末粒度も小さくする必要がある。微粉末は飛散しやすくかつ空気中に長時間浮遊するので、その使用は作業環境と収率の点から好ましくない。
一方、レーザー肉盛り1層の膜厚を3mmより厚くすることはあまり好ましくない。3mmより厚くするためには、合金溶融プールサイズおよびレーザーエネルギーが大きくなり、レーザー肉盛り制御や下地層の固溶量制御が困難になる。このことから、鋳型の長寿命の目的でレーザー肉盛り層を厚膜化するためには、レーザー肉盛り層の多層化により実現する。
多層化法により全体の膜厚を10mmより大きくすることも可能であるが、厚膜化による耐摩耗性向上の効果よりもそれ以外の原因で生じる鋳型全体の寿命を考慮すると10mmより大きい厚みは現時点では特段必要でないと判断された。なお、レーザー肉盛り層は、鋳型内面下部のほか鋳型内面上部のメニスカス部付近に形成しても良い。
ニッケル基合金肉盛り層は、耐熱、耐蝕性に優れる合金組成のものを選択し、これらの合金粉末を供給しながらレーザー照射する方法で作製した。耐熱、耐蝕性に優れるニッケル基合金として、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種を選択し、いずれも市販されている合金粉末を使用した。合金粉末の組成は重量%であり、100%に満たない部分は他の成分または不可避的不純物である。
なお、使用できる合金粉末は、これらに限定されるものではなく、重量%で、Ni:30%以上93%以下、Co:1%以上、Cr:8%以上、Mo:1%以上、W:0.5%以上、Al:0.2%以上、Ti:0.4~6%、Nb:0.4~6%、Ta:0.1~4%、Y:0.1%以上の一種以上、残部、不可避的不純物からなるもの、などが使用できる。
また、鋳型基体に用いられる銅合金は、特に限定されず、従来この技術分野で使用されているものが適宜使用される。例えばクロム・ジルコニウム添加析出硬化型鋳型用銅材(好ましくはCr:0.5~1.5重量%、Zr:0.08~0.30重量%)、電磁攪拌用クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加鋳型用銅材(好ましくはCr:0.50~1.50重量%、Zr:0.08~0.30重量%、Al:0.7~1.1重量%)等が用いられる。これらの銅合金に代えて純銅を鋳型基体に用いる場合もある。
肉盛り層が厚くなると、肉盛り層表面の粗さが悪くなる。このため、レーザー肉盛り層の形成後、その表面を研磨加工し、表面粗さをRy10μm以下に平坦化することにより、肉盛り層の異常摩耗発生を抑制することができる。
以下、本発明の試験結果に基づき、本発明を詳しく説明する。
Cr-Zr-Cuの金型基体(サイズ230mm×900mm×50mm)の表面に2種類の組成を持つCo-Ni合金の交互重積めっき層を被覆した。表1に、めっき浴の構成および条件を示す。めっき浴は硫酸浴を用い、めっき時のエア撹拌通気量の強弱でNi含有量比の差異を生じさせた。まず、1種のめっき層(A層と称す)はNi含有量10~20wt%で残部Coから選び、もう1種のめっき層(B層と称す)はNi含有量21~40wt%で残部Coから選び、A層とB層のCo-Ni合金めっき層を交互に重積した皮膜を作製した。具体的には、電流密度3A/dm2 の元にエア通気量:0.1m3 /m2 と0.4m3 /m2 で強弱を付け、各通気時間を制御することで各層の厚みを変化させた。めっき後、機械加工により膜厚を調整し200μmとした。本発明のめっき試料と共に、単層で組成Ni:16重量%、残部コバルト、200μmのめっき試料も比較例として作製し表2に示した。
Figure 0007020147000001
Figure 0007020147000002
表2に示すCo-Ni合金を交互重積しためっき層を表面に有したCu基体にNi-Cr系材(80Ni20Cr)のレーザー肉盛り層を1.0mm形成した。レーザー肉盛り条件は、Ni-Cr系材粉体の平均粒度65μm、粉末供給速度7.2g/min、ノズルスキャン速度600mm/min、半導体レーザー波長950~1070nm、レーザー出力2000Wで行った。各試料の肉盛り層組成はEPMAにより分析を行い、その結果を表3に示す。各試料の肉盛り層に固溶するめっき層成分は、ほぼ一定の割合を示した。
また、各試料の熱衝撃試験を行い、その試験結果を同じく表3に示した。熱衝撃試験は、大気雰囲気中、800℃で20分間加熱し、その後水冷を1サイクルとし、拡大鏡で表面にクラックが確認されるまでの試験回数で評価を行った。めっき層が単層の比較例に対し、交互重積した本発明例は熱衝撃回数が改善されており、熱衝撃によるクラックの発生防止に顕著な効果を示した。
Figure 0007020147000003
Niが16重量%で残部Coの組成からなる単層のNi-Co合金めっき層を有する試料(比較例)では、Ni-Cr系合金レーザー肉盛り層は欠陥もなく緻密な組織であり、熱衝撃試験は10回を示した。一方、Niが約18重量%で残部Coの組成からなるA層と、Ni含有量がA層よりも約10~12重量%多く残部Coの組成からなるB層とを交互に重積しためっき層を有する試料(本発明例1~3)でも、Ni-Cr系合金レーザー肉盛り層は欠陥もなく緻密な組織であり、なおかつ、熱衝撃試験は12回~13回を示した。
実施例1の本発明例1のCo-Ni交互重積めっき層上に、ハステロイC22(組成:Ni56Cr23Mo14W3Fe4)の合金粉末を供給しながらレーザーを照射して肉盛り層(膜厚:0.5mm)の積層を3回行い、合計膜厚1.5mmの肉盛り層を形成した。レーザー肉盛り条件は、粒度53~180μmのハステロイC22粉末を、粉末供給速度8g/minで供給しながら、波長950~1070nmの半導体レーザーを、レーザー出力2000W、ノズルスキャン速度600mm/minで1層目を施工し、2層目以降はレーザー出力を1600W、ノズルスキャン速度1000mm/minへ変更させて施工した。各肉盛り層の組成をEPMAで分析した結果を表4に示す。肉盛り層は、外層ほど本来のハステロイC22組成(Ni56Cr23Mo14W3Fe4)に近い値を示しているが、2層目でも本来の組成に近いことが確認できた。
Figure 0007020147000004
本発明による連続鋳造用鋳型は、溶鋼からの製鋼用鋳型として、優れた耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を有しているが、その高温における長寿命性や高い精度維持性は、高温や腐食性環境における高品質の成形品製造金型の用途にも活用できる。

Claims (5)

  1. 銅または銅合金基体表面に、膜厚が0.1~50μmでニッケルとコバルトとからなり組成比の異なる2種類の電気めっき層を交互に重積した合計膜厚30~500μmのめっき層を形成し、その表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、粉末を溶融・固化し厚み0.1~10mmのニッケル基合金被覆層を肉盛り形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法
  2. 2種類の電気めっき層は、ニッケル1~99重量%、残部コバルトの組成を有し、ニッケル含有率の差が1~20重量%であることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用鋳型の製造方法
  3. ニッケル基耐熱合金粉末が、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種からなることを特徴とする請求項1または2記載の連続鋳造用鋳型の製造方法
  4. ニッケル基合金被覆層のレーザー肉盛りにおいて、金属粉末の供給量と照射レーザーエネルギーを制御することにより、ニッケルとコバルトとからなる電気めっき層の表面部が肉盛り溶融層中に一部固溶したレーザー肉盛り層とすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型の製造方法。
  5. レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、電気めっき層からのニッケルとコバルトの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層とすることを特徴とする請求項4記載の連続鋳造用鋳型の製造方法。
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