JP7022266B2 - コバルト-ニッケル合金材料、それを用いた連続鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents

コバルト-ニッケル合金材料、それを用いた連続鋳造用鋳型の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コバルト-ニッケル合金材料と、それを用いた耐熱、耐摩耗性に優れかつ高強度な連続鋳造用鋳型製造方法に関するものである。
溶鋼を冷却しながら固化・成型する製鋼工程で使用される連続鋳造用鋳型用材料には、冷却効果の観点から熱伝導性に優れる銅や銅合金が使用されることが多い。しかし、銅や銅合金は硬度が低く耐摩耗性に劣ることから、鋳型の長寿命化を目的に、銅や銅合金よりなる鋳型基体の表面に、より高耐摩耗で耐熱性に優れるニッケルやコバルトのめっき層や、溶射による金属層やセラミック層を形成した連続鋳造用鋳型が知られている。
凝固・成型時の特に連続鋳造用鋳型上部においては、高熱の溶鋼と冷却された鋳型との温度差により、鋳型表面は厳しい熱衝撃にさらされる。一方、鋳型下部においては冷却され凝固した鋳片に強く擦られ鋳型の摩耗が激しくなる。そこで、耐熱疲労性、耐摩耗性、耐食性などの特性に優れるニッケルと鉄、マンガン、コバルト、クロム、タングステンなどとの合金層をめっき法や溶射法により銅または銅合金製の連続鋳造用鋳型表面に形成させることにより、鋳型を長寿命化させる方法は一般に知られている。
特許文献1では、コバルト-ニッケル系合金でニッケル含有量の異なる2層を交互に積層した層を連続鋳造用鋳型表面に被覆することにより、引張り強さおよび耐摩耗性を向上させた例が報告されている。
特許文献2では、銅または銅合金の表面にNiめっきを施し、その表面に板形状のNi基合金を仮付けした後、レーザーまたは電子ビームを用いて肉盛りし、密着強度が高くかつ耐摩耗性と耐腐食性に優れた皮膜を形成する方法が示されている。また、肉盛り用Ni基合金の板形状材には、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(23Co20Cr8.5Al0.6Y残部Ni)、NiCr(50Ni50Cr)を用いている。また、レーザーまたは電子ビームを用いて板形状材を肉盛りする際に、板形状材とNiめっき層の境界が溶融し、かつ隣接する板形状材の溶融部が重ね部を形成する方法も示している。
特開2015-166483号公報 特開平10-85972号公報
特許文献2の技術では、レーザーを用いて板形状材を肉盛りする際に、板形状材を溶かすのに十分な熱量の供給を必要とし、また、その供給された熱量の多くは板形状材を伝わって逃げるので、銅あるいは銅合金基体の被熱量が大きくなり、熱変形が少なくないという問題があった。また、下地となるNiめっきの強度、耐熱性が十分ではなかった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、連続鋳造用鋳型のさらなる長寿命化を達成するために、銅または銅合金鋳型基体の表面に、耐摩耗性、耐食性が優れ、さらに引張り強さ、耐熱衝撃性が一段と向上した、結晶構造が異なる2種類のコバルト-ニッケル合金めっき層を交互に重積することにより、連続鋳造用鋳型の長寿命化を実現する。さらに、異なる結晶構造を交互重積したコバルト-ニッケル合金めっき層表面に、金属粉末を使ったレーザー肉盛り法で耐熱、耐蝕性に優れるニッケル基合金肉盛り層を、熱効率良く、かつ熱ひずみを抑制して積層することにより、高強度であり、かつ耐熱、耐摩耗性にすぐれる連続鋳造用鋳型を実現する。
請求項1の発明は、10~20重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり六方晶の結晶構造を持つめっき層と、21~60重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり面心立方晶の結晶構造を持つめっき層が交互に積層した構造を有することを特徴とするコバルト-ニッケル合金材料である。
請求項2の発明は、銅または銅合金基体表面に、電気めっき法により、10~20重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなる層と、21~60重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなる層とを交互に積層し、各一層の膜厚が0.1~50μmであり、全膜厚の合計が50~2000μmである交互重積めっき層を形成し、200~500℃で熱処理することにより、それぞれの層を、六方晶と面心立方晶に結晶化させることを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法である。
請求項3の発明は、銅または銅合金基体表面に、ニッケルとコバルトとからなり結晶構造が六方晶と面心立方晶と異なる2種類の結晶化した電気めっき層で各膜厚が0.1~50μmを交互に重積した合計膜厚30~500μmのめっき層を形成し、その表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、粉末を溶融・固化して形成した一層または多層を肉盛りすることにより厚み0.1~10mmのニッケル基合金被覆層を形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法である。
請求項4の発明は、請求項3の連続鋳造用鋳型の製造方法において、レーザー肉盛り層を形成するニッケル基耐熱合金粉末が、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種からなることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、電気めっき層からのニッケルとコバルトの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層とすることを特徴とする。
請求項1または2の発明によれば、10~20重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり六方晶の結晶構造を持つめっき層と、21~60重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり面心立方晶の結晶構造を持つめっき層が交互に積層した構造を有しているので、熱衝撃に対する耐クラック性が優れている。特に、請求項2の発明によれば、銅または銅合金基体表面に、各一層の膜厚が0.1~50μmであり、全膜厚の合計が50~2000μmである交互重積めっき層を形成し、200~500℃で熱処理することにより、それぞれの層を、六方晶と面心立方晶に結晶化させ連続鋳造用鋳型の製造方法であるから、熱衝撃に対する耐クラック性が改善され、ヒートクラックが生じにくい連続鋳造用鋳型とすることができる。
請求項3の発明によれば、銅または銅合金よりもレーザーエネルギーの吸収が良いニッケルとコバルトとからなる電気めっき層の表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射して肉盛り層を形成しているから、板形状のニッケル基合金を仮付けした後、レーザーを用いて肉盛り溶接する従来例に比べると、供給した粉末を効率よく溶融することができ、したがって、銅あるいは銅合金基体および被覆層全体の熱ひずみを抑制することができる。また、めっき層は、各層の膜厚が0.1~50μmで結晶構造が異なる2種類の電気めっき層を交互に重積した構造を有しているので、単層のめっき層に比べると、熱衝撃に対する耐クラック性が改善される。さらに、電気めっき層は膜厚が30~500μmであるので、銅または銅合金基体からレーザー肉盛り層への銅の溶け出しを抑制でき、ニッケル基耐熱合金の本来の耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を発揮できる。
請求項4の発明によれば、耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性に優れていることが既知の合金を、その組成をほとんど変化させることなく、且つ密着性良く、銅あるいは銅合金基体表面に被覆することができるから、合金めっき法や溶射法により表面保護皮膜を形成した連続鋳造用鋳型に比べると、優れた耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を発揮することができる。
請求項5の発明によれば、レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、めっき層からのコバルトおよびニッケルの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層を形成できるから、溶鋼に接する肉盛り層の表面は、粉末で供給されたニッケル基合金の組成に近似した組成を持たせることができるという効果がある。
本発明の実施例2の断面構造を示す写真である。 本発明の実施例2の断面の拡大構造を示す写真である。
連続鋳造用鋳型では、鋳型に溶鋼を流し込むと同時に、背面を冷却水で冷やした鋳型表面で、溶鋼を抜熱し凝固させることにより連続的に鋼を鋳込み成型していく。鋳型上部のメニスカス部付近は、溶鋼と鋳型が直接接触する部分であり高い耐熱性と耐蝕性が求められる。同時に、冷却水との温度差から最も強い熱応力を受け、熱クラックも発生しやすく耐熱衝撃性と高強度が求められる。また、銅や銅合金鋳型基体表面に、耐熱性や耐蝕性に優れる被覆層を有する表面被覆鋳型では、基体と被覆層間に強い密着強度が求められる。
一方、溶鋼が冷却され凝固した状態の鋳型下部では、モールドパウダーに含まれるガラス質のセラミックパウダーの擦り摩耗や、溶鋼が凝固し体積収縮した後の密度上昇した鋼自身の重量増により鋳型面を強く擦ることによる鋳型摩耗から寿命に至ることもある。さらに、溶鋼中の硫黄成分による化学的腐食や鋳型通過後の鋼冷却用吹付け水の蒸気による鋳型下部の腐食摩耗にも対策が必要である。
連続鋳造用鋳型の寿命要因である熱負荷による熱クラック、擦り摩耗と化学的腐食のすべてに対応できる保護層として、2種類の組成を持つコバルト-ニッケル合金を交互に重積し、これをさらに異なる結晶構造に構造変化させた交互重積結晶層を本発明者らは見出した。
コバルト-ニッケル合金を異なる交互重積の結晶構造とすることにより、それが交互重積されていない非晶質の場合より化学的に安定になり、耐蝕性が向上した。また、成分比率が異なるが近似した組成でお互いに六方晶と面心立方晶に構造変化させ多数の界面を有する交互重積層では、強い結合力を維持しながら強い皮膜応力と柔軟な伸び特性を示し、特に伸び特性は非晶質よりも5倍以上向上した。さらに、膜厚が小さな交互重積層であるが故に、結晶粒サイズが小さく維持され、非晶質の場合に対して硬さが約130%向上した。交互重積層の各層一層の膜厚は、結晶粒サイズや結晶性に影響することから、各一層の膜厚が0.1~50μmが好ましく、より好ましくは0.5~20μmが良い。膜厚が0.1μm以下では、めっき時の膜厚制御が困難であり、50μm以上では交互積層数を増やすことが困難になり、結果として高強度の皮膜が得られない。
連続鋳造技術の進展とともに、異鋼種を続けて連続鋳造することや、より効率を重視した高速鋳造が望まれ、連続鋳造用鋳型は、より大きな熱負荷や摩耗および耐蝕性に耐え得ることが期待される。銅または銅合金への熱負荷を軽減するための観点からは、交互重積層全体の膜厚は厚い方が好ましい。しかし、最も熱負荷の高いメニスカス部近傍でめっき厚を厚くした場合、抜熱効果が低下するとともに、めっき皮膜への熱影響も更に大きくなり、ヒートクラックの発生を誘発し、更にはめっき剥離に至る。一方、鋳型下端部では摩耗と腐食反応が激しく、その環境に耐え得るためにはめっき皮膜の厚膜化が必須である。このことから、交互重積層全体の膜厚を50~2000μmとした。
交互重積結晶層において、六方晶構造を持つ層の合金組成は、ニッケル含有量10~20重量%で残部コバルトが好ましい。この組成を外れると六方晶構造を示しにくくなる。また、ニッケル含有量が少ない場合は、コバルト金属の特性が強くなり、皮膜が脆くなる。一方、面心立方晶構造を持つ層の合金組成は、ニッケル含有量21~60重量%で残部コバルトが好ましい。20重量%以下になると面心立方構造が形成されにくくなり、ニッケル含有量が多いと耐腐食性が向上する傾向にあるが、六方晶構造を持つ層との組成乖離が大きくなるため、交互重積結晶層の伸び特性が低下し、耐熱衝撃性が低くなる傾向がある。このことから、ニッケル含有量は、21~60重量%がより好ましい。上記コバルト-ニッケル合金めっき組成には、不可避不純物が含まれる。
めっき法により交互重積させた層の構造変化には、200~500℃で10~480分の熱処理により、六方晶(hcp)と面心立方晶(fcc)に結晶化することが好ましい。500℃より高温で熱処理すると、銅および銅合金製の鋳型基体が変形しやすくなり、できるだけ低温で行うことが好ましい。一方で、200℃以上でなければ、効率よく各層の結晶構造を変化させることができない。
このように、銅または銅合金基体表面に、それぞれ六方晶と面心立方晶に構造変化した2種類のめっき層からなる交互重積層を形成することにより、耐熱、耐蝕、耐摩耗性が向上する。さらに、その表面に耐熱性と耐腐食性に優れる保護層を密着性良く形成することで一層の長寿命化が可能となる。すなわち、耐熱性と耐腐食性に優れるニッケル基合金粉末を供給しながらエネルギーを制御したレーザーを照射し、供給した粉末を効率よく溶融するとともに、この粉末供給とレーザー照射を、めっき層表面で直線状に走査することで粉末溶融体から固化したレーザー肉盛り層を形成することにより、層間密着性に優れ、耐熱、耐蝕、耐摩耗性に優れる保護層を形成することができた。
肉盛りしたニッケル基合金層が合金本来の特性を発揮するためには、合金層内に空孔などの欠陥がなく、合金本来の密度に到達していることが必要である。合金層が空孔のない真密度を得るためには、肉盛りに寄与する合金部を一度完全に溶融することが求められる。合金部を完全溶融するためのエネルギーはレーザーにより供給するが、熱伝導性の良い銅基体などから熱伝導により逃げていく。そのため、良質な合金層を得るためには、エネルギーの供給量、金属粉末の溶融熱量、熱拡散量のすべてを制御できることが重要である。
銅基体とレーザー肉盛り層の中間層として、熱伝導率が純銅の約1/4であるコバルトおよびニッケルの電気めっき層を配することは、レーザー肉盛り時の熱制御に有利である。また、工業的にレーザー肉盛り用に使用できる波長1000nm前後のレーザーエネルギー吸収率は、ニッケルが銅の約3倍であり、銅基体表面にコバルトおよびニッケルの電気めっき層を設けることで、効率よく金属溶融プールを形成でき、熱効率および熱制御の観点から極めて有利である。
レーザーを使った金属肉盛り法には、溶接棒を使う方法や合金板を溶解していく手法があるが、これらの方法は粉末を使う方法に比較し、溶接棒や未溶解合金板から熱伝導により逃げていく熱エネルギーが大きいため、熱量の制御が困難になるだけでなく、溶接棒や合金板の厚み全体を溶融させなければ、基体との接着強度も含めて高強度を得ることが困難であり、過大なエネルギーを外部より供給する必要がある。レーザーエネルギーが過大になると、鋳型銅基体にまで大きな影響を与え、同時に大きな熱ひずみが発生する要因となっている。また、過大なエネルギーは、めっき層が薄い場合には、めっき層の全厚みが溶解し、鋳型銅基体の一部がレーザー肉盛り層に固溶するなど、肉盛り層自身の特性にも大きな影響を与える危険がある。
本発明のように、レーザー照射ノズルからレーザー光と共に、使用する合金粉末を供給しながら、基体表面にノズルを走査させレーザー肉盛りする方法では、供給する合金粉末のみの溶融目的にレーザーエネルギーを使用でき最も効率的である。具体的には、粉末の溶融によりできる溶融プールのサイズと溶融プールの温度を管理しながら、必要レーザーエネルギーを制御することが可能である。このように必要レーザーエネルギーの制御により、めっき下地層を過度に溶解することなく、めっき層の表面部の一部を上記合金粉末から生成された溶融プールに固溶させることも容易になり、下地層との間に欠陥がなく密着性に優れる強固な肉盛り層を形成することが可能となった。同時に、めっき層からの固溶量も低く抑えることが可能となり、合金肉盛り層の組成変化も0~10重量%と低くできた。
本発明では、2種類の組成を持ち、それぞれ異なった結晶構造を持つコバルト-ニッケル合金めっき層を交互重積した中間層表面に、ニッケル基耐熱合金肉盛り層を溶融・固化により形成させるものであるが、中間層のコバルトおよびニッケルめっき層成分は、ニッケル基耐熱合金にも含まれる成分であることから、めっき層成分が肉盛り層に固溶拡散しても合金組成を大きく損なうことがなく、合金の耐熱性、耐蝕性を高レベルに維持できる。さらに、肉盛り層を2層以上繰り返した場合、コバルトおよびニッケルめっき成分の固溶量は段階的傾斜的に減少し、2層目以上の表面では、使用したニッケル基合金粉末とほぼ同じ組成の肉盛り層を形成することができた。
表面にニッケル基耐熱合金肉盛り層を形成する場合には、2種類の結晶構造を持つコバルトおよびニッケル合金めっき層を交互重積しためっき中間層の合計膜厚(めっき層の全膜厚)は、上述の50~2000μmに代えて、30~500μmとすることが好ましい。
全膜厚が30μm未満では、レーザー肉盛り時に形成する溶融プールにめっき層全体が溶融する恐れがある。万一、めっき層の下すなわち銅あるいは銅合金基体の一部も固溶した場合、固溶合金の融点が大きく低下し、被覆層全体の強度が低下する。また、全膜厚が30μm未満では、レーザー肉盛り時の溶融の問題以外に強度の向上率が低く交互重積効果が十分でない。コバルトおよびニッケル電気めっき層は、銅あるいは銅合金基体とレーザー肉盛り層の中間にあり、肉盛り時の熱ひずみを緩和する役割も持っており、全膜厚は30μm以上が好ましい。一方、全膜厚を500μmより大きくすることは可能であるが、500μmより大きくしても、さらなる熱ひずみ緩和効果の向上は少なくなる。また、500μmより大きくしても、さらなる強度の向上は得にくかった。
めっき層上のレーザー肉盛り層は、1層または繰り返しによる多層化により形成し、全体の膜厚は0.1~10mmが好ましい。厚みを0.1mmより薄くする場合には、粉末粒度も小さくする必要がある。微粉末は飛散しやすくかつ空気中に長時間浮遊するので、その使用は作業環境と収率の点から好ましくない。
一方、レーザー肉盛り1層の膜厚を3mmより厚くすることはあまり好ましくない。3mmより厚くするためには、合金溶融プールサイズおよびレーザーエネルギーが大きくなり、レーザー肉盛り制御や下地層の固溶量制御が困難になる。このことから、鋳型の長寿命の目的でレーザー肉盛り層を厚膜化するためには、レーザー肉盛り層の多層化により実現する。
多層化法により全体の膜厚を10mmより大きくすることも可能であるが、厚膜化による耐摩耗性向上の効果よりもそれ以外の原因で生じる鋳型全体の寿命を考慮すると10mmより大きい厚みは現時点では特段必要でないと判断された。なお、レーザー肉盛り層は、鋳型内面下部のほか鋳型内面上部のメニスカス部付近に形成しても良い。
ニッケル基合金肉盛り層は、耐熱、耐蝕性に優れる合金組成のものを選択し、これらの合金粉末を供給しながらレーザー照射する方法で作製した。耐熱、耐蝕性に優れるニッケル基合金として、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種を選択し、いずれも市販されている合金粉末を使用した。合金粉末の組成は重量%であり、100%に満たない部分は他の成分または不可避的不純物である。
なお、使用できる合金粉末は、これらに限定されるものではなく、重量%で、Ni:30%以上93%以下、Co:1%以上、Cr:8%以上、Mo:1%以上、W:0.5%以上、Al:0.2%以上、Ti:0.4~6%、Nb:0.4~6%、Ta:0.1~4%、Y:0.1%以上の一種以上、残部、不可避的不純物からなるもの、などが使用できる。
また、鋳型基体に用いられる銅合金は、特に限定されず、従来この技術分野で使用されているものが適宜使用される。例えばクロム・ジルコニウム添加析出硬化型鋳型用銅材(好ましくはCr:0.5~1.5重量%、Zr:0.08~0.30重量%)、電磁攪拌用クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加鋳型用銅材(好ましくはCr:0.50~1.50重量%、Zr:0.08~0.30重量%、Al:0.7~1.1重量%)等が用いられる。これらの銅合金に代えて純銅を鋳型基体に用いる場合もある。
肉盛り層が厚くなると、肉盛り層表面の粗さが悪くなる。このため、レーザー肉盛り層の形成後、その表面を研磨加工し、表面粗さをRy10μm以下に平坦化することにより、肉盛り層の異常摩耗発生を抑制することができる。
以下、本発明の試験結果に基づき、本発明を詳しく説明する。
銅基材の表面に2種類の組成を持ち、それぞれ異なった結晶構造を持つCo-Ni合金の交互重積めっき層を被覆した。表1に、めっき浴の構成および条件を示す。めっき浴は硫酸浴を用い、めっき時のエア撹拌通気量の強弱でNi含有量の差異を生じさせた。まず、1種のめっき層(A層と称す)はNi含有量10~20wt%で残部Coから選び、もう1種のめっき層(B層と称す)はNi含有量21~60wt%で残部Coから選び、A層とB層のCo-Ni合金めっき層を交互に重積した皮膜を作製した。具体的には、電流密度3A/dm2 の元にエア通気量:0.1m3 /m2 と0.4m3 /m2 で強弱を付け、各通気時間を制御することで各層の厚みを変化させた。めっき後、機械加工により膜厚を調整し500μmとした。本発明範囲めっき試料と共に範囲外めっき試料も作製し表2に示した。
Figure 0007022266000001
Figure 0007022266000002
本発明の比較例として、熱処理をしない非晶質である2種類の組成を持つCo-Ni合金の交互重積めっき層および単層めっき層を被覆した。表3に本発明例1~2とそれぞれ同じ組成であるが非晶質の比較例2~3、および単層めっき層である比較例4を示す。
Figure 0007022266000003
表4では、各試料の引張強さ、破断伸びおよび皮膜硬さを示す。めっき皮膜のみでの引張り試験を行い、皮膜の引張り強さと試験片が破断した時点でのひずみ最大変位から皮膜の破断伸びを求めた。めっき層が非晶質の交互重積層(比較例2~3)や単層の比較例4に対し、2種類の結晶相を交互重積した本発明例1~3は引張り強度および破断伸びが大きい。また、めっき層断面から200gfの荷重でマイクロビッカース硬さを測定した結果も表4に示す。結晶交互重積層の積層回数が多いほど硬度が高いことがわかる。
Figure 0007022266000004
Cr-Zr-Cuの鋳型基体(サイズ230mm×900mm×50mm)の表面に表2に示す本発明例1~3と表3に示す単層の比較例4のCo-Ni合金めっきを被覆し、機械加工により膜厚を調整し200μmとした表面にNi-Cr系材(80Ni20Cr)のレーザー肉盛り層を1.0mm形成した。レーザー肉盛り条件は、Ni-Cr系材粉体の平均粒度65μm、粉末供給速度7.2g/min、ノズルスキャン速度600mm/min、半導体レーザー波長950~1070nm、レーザー出力2000Wで行った。各試料の肉盛り層組成はEPMAにより分析を行い、その結果を表5に示す。各試料の肉盛り層に固溶するめっき層成分は、ほぼ一定の割合を示した。また、本発明例2のCo-Ni合金めっき層上にレーザー肉盛りした断面を図1、図2に示す。図中、1はレーザー肉盛り層、2はCo-Ni交互重積めっき層、3は銅合金基体である。
また、各試料の熱衝撃試験を行い、その試験結果を同じく表5に示した。熱衝撃試験は、大気雰囲気中、800℃で20分間加熱し、その後水冷を1サイクルとし、拡大鏡で表面にクラックが確認されるまでの試験回数で評価を行った。めっき層が単一結晶構造の比較例4に対し、2種類の結晶構造を交互重積した本発明例1~3は熱衝撃回数が大きく伸び、熱衝撃によるクラックの発生防止に顕著な効果を示した。
Figure 0007022266000005
実施例1の本発明例1の2種類の結晶構造を交互重積させたCo-Ni合金めっき層上に、ハステロイC276の合金粉末を供給しながらレーザーを照射して肉盛り層の積層を3回行い、合計膜厚1.5mmの肉盛り層を形成した。レーザー肉盛り条件は、粒度45~125μmのハステロイC276粉末を、粉末供給速度8g/minで供給しながら、波長950~1070nmの半導体レーザーを、レーザー出力2000W、ノズルスキャン速度600mm/minで1層目を施工し、2層目以降はレーザー出力を1600W、ノズルスキャン速度1000mm/minへ変更させて施工した。各肉盛り層の組成をEPMAで分析した結果を表6に示す。肉盛り層は、外層ほど本来のハステロイC276組成(Ni59Cr15Mo16W5Fe3)に近い値を示しているが、2層目でも本来の組成に近いことが確認できた。
Figure 0007022266000006
本発明による連続鋳造用鋳型は、溶鋼からの製鋼用鋳型として、優れた耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性に加えて高強度と耐熱衝撃性を兼ね備えているが、その高温における長寿命性や高い精度維持性は、高温や腐食性環境における高品質の成形品製造金型の用途にも活用できる。
1 レーザー肉盛り層
2 Co-Ni交互重積めっき層
3 銅合金基体

Claims (5)

  1. 10~20重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり六方晶の結晶構造を持つめっき層と、21~60重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなり面心立方晶の結晶構造を持つめっき層が交互に積層した構造を有することを特徴とするコバルト-ニッケル合金材料。
  2. 銅または銅合金基体表面に、電気めっき法により、10~20重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなる層と、21~60重量%のニッケルと残部コバルト及び不可避不純物からなる層とを交互に積層し、各一層の膜厚が0.1~50μmであり、全膜厚の合計が50~2000μmである交互重積めっき層を形成し、200~500℃で熱処理することにより、それぞれの層を、六方晶と面心立方晶に結晶化させることを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法
  3. 銅または銅合金基体表面に、ニッケルとコバルトとからなり結晶構造が六方晶と面心立方晶と異なる2種類の結晶化した電気めっき層で各膜厚が0.1~50μmを交互に重積した合計膜厚30~500μmのめっき層を形成し、その表面にニッケル基耐熱合金粉末を供給しながらレーザーを照射し、粉末を溶融・固化して形成した一層または多層を肉盛りすることにより厚み0.1~10mmのニッケル基合金被覆層を形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法
  4. レーザー肉盛り層を形成するニッケル基耐熱合金粉末が、ハステロイC(53Ni19Mo17Cr)、インコネル(80Ni13Cr)、モネル(65Ni31Cu4(Fe+Mn))、NiCoCrAlY(47.9Ni23Co20Cr8.5Al0.6Y)、NiCr(80Ni20Cr)、ワスパロイ(58Ni19Cr14Co4.5Mo3Ti)の一種からなることを特徴とする請求項3記載の連続鋳造用鋳型の製造方法
  5. レーザー肉盛り層形成を2回以上の多数回繰り返すことにより、めっき層からのニッケルとコバルトの拡散を内部から表面に傾斜的に減少させた多層レーザー肉盛り層とすることを特徴とする請求項3または4記載の連続鋳造用鋳型の製造方法。
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