JP2005058950A - 多孔質筒体の支持構造および支持部材の固着方法 - Google Patents

多孔質筒体の支持構造および支持部材の固着方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多孔質膜が設けられた多孔質筒体に支持部材を密に且つ高強度で接合し得る支持構造および支持部材の固着方法を提供する。
【解決手段】封止部56でエンドキャップ16,18と多孔質円筒12とが相互に固着されると共にそれらの間が密に封止される一方、その封止部56と多孔質膜60との境界部に設けられた環状の封止部62でその多孔質円筒12の外周面が密閉される。エンドキャップ16,18と多孔質円筒12との固着強度は封止部56で確保されるので、多孔質膜60と封止部56との境界部を環状に覆う封止部62はエンドキャップ16,18と多孔質円筒12との固着に寄与しなくとも良い。そのため、前述したように多孔質膜60の形成後にその成膜温度よりも低温で焼成される封着材を用いて封止部62が形成されることから、その多孔質膜60を劣化させることなく気密性を確保できる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、外周面に多孔質膜が設けられた多孔質筒体の支持構造および支持部材の固着方法に関する。
例えば、特定のガスを選択的に透過させ得る多数の細孔(すなわち連通気孔)を周壁に有するガス分離筒体を備えたガス分離装置が知られている。このガス分離筒体は、例えばアルミナ(Al2O3)等のセラミック多孔質材料で構成された多孔質円筒の外周面に例えばアルミナ等から成る多孔質膜が設けられたものであり、例えばそのガス分離筒体の周壁の外部から内部に透過したガスをその一方の端面から取り出して回収することによってガスが分離される。このようなガス分離装置では、上記のガス分離筒体を装置内に固定すると共に、例えば複数本のガス分離筒体が径方向において相互に離隔した状態で束ねられたモジュールの形態で用いられる場合にはそれらの一端を共通の気密室内に開放し他端を閉塞する等の目的で、そのガス分離筒体の両端部すなわち多孔質円筒の両端部に緻密質材料から成る支持部材が気密に固着される(例えば特許文献1乃至3参照)。
ところで、上記のガス分離装置において多孔質膜は多孔質筒体よりも気孔径の小さいものが用いられるため、その多孔質筒体の外周面が露出していると、分離しようとする気体がその多孔質筒体の露出面を通して通過するので、所期の分離性能が得られない。そのため、多孔質筒体の外周面のうち支持部材が気密に固着されている部分の他の部分は、多孔質膜で覆われていなければならない。
このような支持部材の固着状態および多孔質膜の形成状態を得るために、例えば、上記特許文献1に記載された水素ガス分離装置では、図9に示す支持構造を採用している。この支持構造は、多孔質筒体100を支持部材102にフリットガラス等のシール材を用いて固着した後、そのシール部104から露出している外周面に多孔質膜106を形成したものである。このとき、多孔質膜106は、シール部104との間に隙間が生じて多孔質筒体100の外周面が露出することを避けるため、そのシール部104に僅かに重なるように、図示の例では、更に支持部材102の内周部も覆うように成膜される。
また、例えば上記特許文献3に記載された水素ガス分離装置では、図10に示す支持構造を採用している。この支持構造は、多孔質筒体100の両端部を除く外周面全体に多孔質膜106を形成した後、支持部材102にシール材を用いて固着したものである。このとき、シール部104は、多孔質膜106との間に隙間が生じることを避けるため、その多孔質膜106に僅かに重なるように設けられる。
特開平7−112111号公報 特開平7−163827号公報 特開平8−299768号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された支持構造では、成膜後に多孔質膜106とシール部104との熱膨張係数の相違に起因してそれらの境界部で多孔質膜106が破断し、多孔質筒体100の外周面が露出させられるシール不良が生じ易い問題があった。多孔質膜106は膜厚が例えば1〜100(μm)程度と薄いため容易に破断するのである。また、特許文献3に記載された支持構造では、シール部104が成膜後に形成されることから、その焼成温度を多孔質膜106の成膜時の温度よりも低くする必要がある。そのため、焼成温度が低いことに起因して接合強度を確保できない問題があった。なお、特許文献2および3には、支持部材102を固着する際の焼成温度を多孔質膜106の成膜温度よりも高くする態様が記載されているが、このような製造条件では多孔質膜106が劣化して製造中や使用中に破断し易くなる。また、特許文献2には、多孔質膜106を多孔質筒体100の外周面全面に設けた構造が記載されているが、このような構造では多孔質筒体100が多孔質膜106を介して接合されるので十分な接合強度は得られないのである。このような問題は、ガス分離用途に限られず、多孔質膜106が設けられた多孔質筒体100を支持部材102で支持した構造とする場合には、液体濾過等の種々の用途において同様に生じ得る。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、多孔質膜が設けられた多孔質筒体に支持部材を密に且つ高強度で接合し得る支持構造および支持部材の固着方法を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、周壁の外部から内部に連通する多数の連通気孔を備える多孔質筒体の長手方向の一部にその外周面を環状に覆う所定の支持部材が固着された支持構造であって、(a)前記多孔質筒体と前記支持部材とを相互に固着し且つそれらの間を密に封止した第1封着材から成る第1封止部と、(b)前記多孔質筒体の外周面を環状に覆って設けられ且つ前記連通気孔を外部に連通させる多孔質膜と、(c)前記多孔質膜と前記第1封止部との境界部に前記多孔質筒体の外周面が密閉されるように環状に設けられた前記多孔質膜の成膜温度よりも低軟化点の第2封着材から成る第2封止部とを、含むことにある。
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、周壁の外部から内部に連通する多数の連通気孔を備える多孔質筒体の長手方向の一部にその外周面を環状に覆う所定の支持部材を固着する方法であって、(a)前記多孔質筒体の外周面に前記支持部材を第1封着材で固着することによりその第1封着材から成る第1封止部でそれらの間を密に封止する第1封止工程と、(b)前記支持部材が固着された前記多孔質筒体の外周面を前記連通気孔を外部に連通させる多孔質膜で覆う成膜工程と、(c)前記多孔質膜と前記第1封止部との境界部を前記多孔質膜の成膜温度よりも低軟化点の第2封着材で封止することによりその境界部上においてその第2封着材から成る環状の第2封止部で前記多孔質筒体の外周面を密閉する第2封止工程とを、含むことにある。
このようにすれば、第1封止部で支持部材と多孔質筒体とが相互に固着されると共にそれらの間が密に封止される一方、その第1封止部と多孔質膜との境界部に設けられた環状の第2封止部でその多孔質筒体の外周面が密閉される。支持部材と多孔質筒体との固着強度は第1封止部で確保されるので、多孔質膜と第1封止部との境界部を環状に覆う第2封止部は支持部材と多孔質筒体との固着に寄与しなくとも良い。そのため、多孔質膜を形成した後にその成膜温度よりも低温で焼成できる第2封着材を用いて第2封止部が形成されることから、その多孔質膜を劣化させることなく気密性を確保できる。すなわち、第1封止部および第2封止部に支持部材の固着機能および封止機能と境界部における封止機能とを分担させるので、これらを両立させ得るのである。したがって、多孔質膜が設けられた多孔質筒体に支持部材を密に且つ高強度で接合し得ると共に多孔質筒体の外周面が密閉された支持構造が得られる。
なお、本願において、「多孔質膜と第1封止部との境界部」は、第1封止部と多孔質膜とが相互に離隔させられているものであっても、接しているものであっても、重ねて形成されているものであってもよい。重ねられている場合には、その重なり範囲全体が「境界部」に相当する。また、「密に」および「密閉して」とは、多孔質筒体の用途に応じた緻密性を有すること、例えば気密性や液密性を有することをいうものである。また、「環状」は多孔質筒体の外周面に沿って周方向に連続していることを意味するものであり、円環状に限られない。
ここで、好適には、前記多孔質膜および前記第1封止部は前記多孔質筒体の長手方向において所定距離だけ相互に隔てて位置するものである。すなわち、多孔質膜は多孔質筒体の長手方向において第1封止部から所定距離だけ離隔した位置に形成されるものである。このようにすれば、多孔質膜と第1封止部とが接していないため、それらの熱膨張係数の差等に起因する応力が多孔質膜に作用し、延いてはこれが破断させられることが一層抑制される。
上記所定距離すなわち隙間の大きさは、好適には10(μm)以上であり、また、好適には1(cm)以下である。また、一層好適には1(mm)以上であり、また、好適には5(mm)以下である。小さい場合には隙間に第2封着材が入り込み難くなるため、第2封止部の固着強度が多孔質筒体の外周面に接している場合に比較して低くなる。反対に大きい場合には多孔質膜の面積が隙間の大きさに応じた大きさだけ小さくなる不都合がある。
また、好適には、前記第1封止部は前記多孔質膜側の端部が前記支持部材から突き出したものであり、前記第2封止部は前記第1封止部および前記支持部材に固着されたものである。このようにすれば、第2封止部が第1封止部および支持部材に共に固着されていることから、それらの一方だけに固着されている場合に比較して多孔質筒体と支持部材との固着強度や、境界部における密閉性が高められる。
また、好適には、前記支持部材は、複数本の前記多孔質筒体を支持するものである。例えば、気体分離や液体濾過などの用途では、可及的に小さな容積で高い分離効率や濾過効率を得る目的で複数本の多孔質筒体が束ねられて(すなわちバンドル構造とされて)用いられるが、本発明の支持構造および支持部材の固着方法はこのような場合にも好適に適用される。
また、好適には、前記支持部材は前記多孔質筒体の開放された端部に固着され且つその支持部材で外壁の少なくとも一部が構成された密室内にその開放端を開放するものである。すなわち、支持部材は、単に多孔質筒体を支持するだけでなく、その開放端が開放される密室の外壁を構成しても良いのである。例えば、複数本の多孔質筒体が束ねられて用いられる場合には、それらの一端を閉塞すると共に他端を共通の密室内に開放させ、多孔質筒体の周壁を通ってその内部に入った気体や液体などをその密室に設けられた開口を通して回収するように構成することができる。
また、好適には、前記多孔質筒体は、セラミックスや金属、一層好適には、アルミナやムライト(3Al2O3-2SiO2)から成るものである。
また、好適には、前記支持部材は、セラミックスや金属、樹脂、一層好適には、アルミナやムライトから成るものである。
また、好適には、前記第1封着材および前記第2封着材は、何れもガラス・ペーストから成るものであり、一層好適には、第1封着材は、シリカ(SiO2)・アルミナ・カルシア(CaO)系ガラス等であり、第2封着材は、シリカ系ガラス、シリカ・アルミナ系ガラス、またはシリカ・アルミナ・酸化硼素(B2O3)系ガラス等であり、前記多孔質膜は、シリカまたはアルミナ等から成るものである。
また、好適には、前記第1封着材は多孔質筒体と支持部材との接合温度が例えば700〜1200(℃)の範囲内、例えば950(℃)程度であり、前記第2封着材は封止のための焼成温度が例えば200〜700(℃)の範囲内、例えば620(℃)程度であり、前記多孔質膜は成膜温度が例えば500〜900(℃)の範囲内、例えば650(℃)程度である。このように、第1封着材、多孔質膜、および第2封着材は、その形成温度がこの順に低くなっていることが好ましい。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の支持構造が適用された多孔質円筒モジュール(以下、モジュールという)10の全体を示す斜視図であり、図2は、その長手方向に沿った断面を中間部を省略して示す図である。これらの図において、モジュール10は、複数本、例えば6本の多孔質円筒12と、1本の緻密質円筒14と、それら多孔質円筒12および緻密質円筒14の両端部にそれぞれ嵌め合わされたエンドキャップ16,18とを備えて構成されている。本実施例においては、多孔質円筒12が多孔質筒体に相当する。
上記の多孔質円筒12は、例えば、外径が10(mm)程度、内径が7(mm)程度、長さ寸法が400(mm)程度の大きさを備えて断面が円環状を成し、一端20および他端22がそれぞれ開放されたものである。また、この多孔質円筒12は、例えば気孔率が30〜40(%)程度で熱膨張係数が7.7×10-6(/℃)程度の多孔質のアルミナ・セラミックスやムライト・セラミックスから成るものであって、例えば60(nm)程度の平均細孔径を備えた微細な多数の細孔がその周壁24の表面26から内面28まで連通して形成されており、その周壁24の内外面間を例えば窒素や水素のような気体が透過し得るように構成されている。
また、この多孔質円筒12の外周面には、その両端部を除く略全長に亘る範囲に多孔質膜60が設けられている。多孔質膜60は、例えばアルミナやシリカ等の多孔質セラミックスから成るものであり、例えば1〜5(μm)の範囲内、例えば3(μm)程度の膜厚を以て多孔質円筒12の外周面に強固に固着している。また、多孔質膜60は、気孔率が例えば30〜40(%)程度と多孔質円筒12と略同程度であるが、気孔径がそれよりも極めて小さい4(nm)程度とされたものである。
また、上記の緻密質円筒14は、例えば外径が10(mm)程度、内径が7(mm)程度、長さ寸法が500(mm)程度の大きさを備えて断面が円環状を成し、一端30および他端32がそれぞれ開放されたものである。また、この緻密質円筒14は、例えば気孔率が0〜5(%)程度すなわち多孔質円筒12よりも十分に緻密な緻密質のアルミナ・セラミックス或いはムライト・セラミックスから成るものであって、その周壁34は気体が透過し得ないように構成されている。
また、前記のエンドキャップ16,18は、何れも緻密質円筒14と同様な緻密質のアルミナ・セラミックス或いはムライト・セラミックスから成り、略円板状を成すものである。エンドキャップ16は、中央部に厚み方向に貫通する貫通孔36が備えられると共に、エンドキャップ18側の一面38に開口する例えば6個の有底穴40がその周囲に備えられたものである。上記貫通孔36は、エンドキャップ16の中心に位置し、有底穴40は、その周囲の一円周上に一定の間隔で、すなわち例えば60度程度の間隔で配置されている。
また、前記のエンドキャップ18は、エンドキャップ16とは反対側の一面44に環状の段付部46が形成されると共に、更にその内周に凹所48が形成されたものである。この凹所48には、一面44側から他面50に貫通する例えば7個の貫通孔52、53が備えられている。これら7個の貫通孔52、53は、1個(貫通孔53)がエンドキャップ18の中心に位置し、残る6個(貫通孔52)がその周囲の一円周上に一定の間隔で配置されている。この貫通孔52が配置されている円周の直径は、有底穴40が配置されている円周の直径と同じ大きさである。
また、上記のエンドキャップ18の一面44には、上記の凹所48を閉じる円板状のエンドカバー54が例えばシール・ガラス等の封着材から成る封止部55で気密に固着されており、それらの間に気体室58が形成されている。このエンドカバー54も、エンドキャップ18と同様に緻密質のアルミナ・セラミックス等で構成され、気体を透過させないものである。なお、上記の封着材は、例えば、シリカ・アルミナ・カルシア系ガラス等から成るものである。
前記の多孔質円筒12および緻密質円筒14は、このように構成されたエンドキャップ16,18の貫通孔36,52、53に刺し通されると共に、有底穴40に嵌め入れられており、何れもシール・ガラス等の封着材から成る封止部56で気密に固着されている。また、多孔質円筒12を固着する封止部56は、エンドキャップ16,18の一面38,50から僅かに突き出した位置まで設けられている。この突出し量は、例えば1〜10(mm)の範囲内、例えば5(mm)程度である。封止部56と多孔質膜60とは多孔質円筒12の長手方向において相互に僅かに隔てて設けられており、それらの相互間には封止部62が多孔質円筒12の周方向に沿って伸びる環状に固着されている。
図3は、エンドキャップ18と多孔質円筒12との接合部分を拡大して示す図である。封止部56と多孔質膜60との間には、例えば10(μm)〜1(cm)の範囲内、例えば5(mm)の大きさの隙間64が環状に形成されており、上記の封止部62は、この隙間64よりも僅かに広い範囲に設けられている。すなわち、封止部62は、多孔質膜60および封止部56の両者に重なるように設けられている。エンドキャップ16側においても、接合部分は同様に構成されている。そのため、多孔質円筒12の外周面のうちその隙間64内に位置する部分はその封止部62によって覆われており、外周面の残部は多孔質膜60または封止部56で覆われているので、多孔質円筒12は、その外周面が実質的に多孔質膜60で塞がれた状態にある。本実施例においては、エンドキャップ16,18が支持部材に相当し、封止部56が第1封止部を、封止部62が第2封止部をそれぞれ構成している。なお、封止部56を構成する封着材は、例えば軟化点が850(℃)程度で熱膨張係数が6.1×10-6(/℃)程度のシリカ・アルミナ・カルシア系ガラスから成るものであり、封止部62を構成する封着材は、例えば軟化点が500(℃)程度で熱膨張係数が8.0×10-6(/℃)程度のシリカ系ガラスなどから成るものである。
この結果、前記の図2から明らかなように、多孔質円筒12は、その一端20が緻密なエンドキャップ16に閉塞されると共に、他端22が緻密なエンドキャップ18とエンドカバー54との間に形成された気体室58内に開放されており、一方、緻密質円筒14は、その他端30がエンドキャップ16の他面42側に突き出して開放されると共に、一端32が上記の気体室58内に開放されている。そのため、上記の多孔質円筒12の周壁24を透過して気体がその内部に入ると、その開放された他端22から気体室58内に向かって流れ、緻密質円筒14にその一端32から流れ込んだものがその内部を他端30に向かって流れ、その開放された他端30から流れ出ることになる。本実施例においては、エンドキャップ16が閉塞封止体に相当し、エンドキャップ18およびエンドカバー54によって中空封止体が構成されている。また、緻密質円筒14が嵌め入れられた貫通孔53が気体通路に相当する。
また、上記のように封止部56,62によって封止されることにより、多孔質円筒12とエンドキャップ16、18との接合部分は気密に構成されているため、多孔質膜60および多孔質円筒12の周壁24を透過してその内側に入った気体は、途中で漏れることなくその他端22から気体室58に流れ込むことになる。
例えば、エンドキャップ16が固着され且つ封止部62で封着された状態で、窒素(N2)ガスを0.5(MPa)程度の圧力で一端22から流し入れたところ、接合部分からのリークは全く認められず、気密性が確保できていることを確認できた。
また、室温から600(℃)程度の温度範囲に亘ってモジュール10の使用を重ねたところ、エンドキャップ16,18と多孔質円筒12との固着強度や、その接合部分近傍における気密性は何ら変化せず当初の特性が保たれていることも確かめられた。
以上のように構成されたモジュール10は、よく知られたセラミック製造技術を用いて、前述したような各特性を備えたエンドキャップ16,18、エンドカバー54、多孔質円筒12、および緻密質円筒14を作製し、これらを組み合わせて固着することにより製造される。第1エンドキャップ16,18、エンドカバー54は、例えば粉末プレス成形および切削加工等によって成形され、多孔質円筒12および緻密質円筒14は、例えば押出成形や冷間静水圧加圧成形および切削加工等によって成形される。また、原料は、所望とする気孔径などに応じて焼結特性の異なるものや添加物を含むもの等が適宜用いられる。また、必要な寸法・形状精度を得るために、焼結後に適宜研削加工が施される。
そして、各部品を製造した後、例えば、図4に示される工程図に従ってエンドキャップ16,18との固着工程等が実施される。すなわち、第1封着材塗布工程R1では、エンドキャップ16,18と多孔質円筒12および緻密質円筒14とを接合するための第1封着材すなわち例えばシリカ・アルミナ・カルシア系のガラスを溶媒等に分散させたガラス分散液をそれらの接合界面に塗布し、それらを嵌め合わせる。この工程は、エンドキャップ16,18の各々について順次に実施してもよく、同時に実施しても良い。また、封着材をエンドキャップ16,18と円筒12,14との間に設ける工程は、この第1封着材塗布工程R1に代えて、封着材を構成するガラス・リングをエンドキャップ16,18と円筒12,14との間に嵌め入れる等の適宜の方法を採り得る。続く焼成工程R2では、そのガラスの焼成温度すなわち例えば950(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の封止部56を生成してエンドキャップ16、18と多孔質円筒12とを固着する。
次いで、多孔質膜材料成膜工程R3では、アルミナ等の粉末材料を溶媒等に分散させた分散液を多孔質円筒12の外周面にディッピングやローラ塗布等の適宜の方法で塗布する。このとき、分散液は封止部56との間に前記の隙間64が生じるようにその塗布範囲が設定される。続く焼成工程R4では、そのアルミナ等の焼成温度、例えば650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、多孔質膜60を生成して多孔質円筒12の外周面に固着する。この工程においては、焼成温度が封止部56の焼成処理温度よりも十分に低いため、その接合強度が処理中に不十分となることはない。
次いで、第2封着材塗布工程R5では、例えばシリカ系ガラスを溶媒等に分散させたガラス分散液を上記の隙間64上に塗布し、焼成工程R6において、そのガラスの焼成温度である例えば620(℃)程度の温度で焼成処理を施す。これにより、分散液から前記の封止部62が生成され、これが封止部56、多孔質膜60、および多孔質円筒12の外周面に固着されることにより、その外周面が気密に密閉される。このとき、焼成温度は650(℃)程度の膜形成温度よりも低いことから、先に形成されている多孔質膜60がこの工程で劣化し或いは破断等することは無い。
前記のモジュール10は、上記のようにしてエンドキャップ16,18を固着し、且つ成膜処理を施した後、エンドキャップ18にエンドカバー54を嵌め合わせて封止部55で固着することにより製造される。
なお、ガラスは軟化点よりもやや高温に設定される焼成温度よりも例えば250(℃)程度低い温度から焼成温度の間の温度に曝されると、軟化傾向が認められ、例えば封止部56等の固着強度の低下が生じる。そのため、その封止部56で接合する際の焼成温度が950(℃)程度に設定されていることから、例えば700(℃)近傍の温度になると強度が不十分となるが、室温から600(℃)程度の温度範囲では焼成温度よりも十分に低いことから、この温度範囲における使用中にその封止部56による接合強度が不足することはない。
因みに、多孔質膜60の焼成温度は前述したように例えば650(℃)程度であるため、その変質を防止するためには、膜形成後にはそれよりも低温で封着する必要がある。そのため、例えば、図10に示されるように膜形成後にエンドキャップ16,18を固着しようとすると、それよりも低温、例えば620(℃)程度の焼成温度で封止できる封着材を用いなければならないが、その場合には、その固着強度維持のために370(℃)程度が使用温度の上限になるのである。すなわち、本実施例によれば、エンドキャップ16,18との接合を多孔質膜形成前に高温で処理しているため、高温でも使用し得るモジュール10が得られるのである。
要するに、本実施例においては、封止部56でエンドキャップ16,18と多孔質円筒12とが相互に固着されると共にそれらの間が密に封止される一方、その封止部56と多孔質膜60との境界部に設けられた環状の封止部62でその多孔質円筒12の外周面が密閉される。エンドキャップ16,18と多孔質円筒12との固着強度は封止部56で確保されるので、多孔質膜60と封止部56との境界部を環状に覆う封止部62はエンドキャップ16,18と多孔質円筒12との固着に寄与しなくとも良い。そのため、前述したように多孔質膜60の形成後にその成膜温度よりも低温で焼成される封着材を用いて封止部62が形成されることから、その多孔質膜60を劣化させることなく気密性を確保できる。したがって、多孔質膜60が設けられた多孔質円筒12にエンドキャップ16,18を密に且つ高強度で接合し得ると共に多孔質円筒12の外周面が密閉された支持構造が得られる。
また、本実施例においては、前記多孔質膜60および前記封止部56は例えば10(μm)〜1(cm)程度だけ相互に隔てて位置し、それらの間には隙間64が形成されていることから、多孔質膜60と封止部56とが接していないため、それらの熱膨張係数の差等に起因する応力が多孔質膜60に作用し、延いてはこれが破断させられることが一層抑制される。
なお、上述した実施例は、多孔質円筒12とエンドキャップ16,18との気密接合構造の一例を示したものであり、これらの接合構造は、以下に説明するように種々の形態を採り得る。なお、以下の実施例において、前述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示す接合構造は、封止部66の形状が封止部62と異なる他は、図3に示すものと同様に構成されている。すなわち、前記の封止部62は、エンドキャップ18からやや離隔した位置に形成されていたが、この実施例の封止部66は、エンドキャップ18の一面50にも接して形成されている。そのため、封止部66は、封止部56に加えてエンドキャップ18にも固着されていることから、固着強度や、気密性が高められる利点がある。
また、図6に示す接合構造は、封止部68が封止部66と同様な形状に設けられているが、多孔質膜60が封止部56に接する位置まで形成されることにより、隙間64が存在しないものである。このような構造であっても、封止部68が封止部56やエンドキャップ18に強固に固着されると共に、多孔質膜60と封止部56との境界部がその封止部68で密閉されていることから、十分な固着強度および気密性を確保できる。すなわち、隙間64が存在すれば一層高い強度を得ることができるが、これは必須ではない。
また、図7に示す接合構造は、多孔質膜60が封止部56に僅かに重ねて形成され、その重ね合わせ部70をそれよりも広い範囲で、すなわち図示の向きにおいて左端が封止部56の左端よりも左方に位置し、且つ右端が多孔質膜60の右端よりも右方に位置するように、封止部72が形成されている。多孔質膜60がこのように封止部56に重なる場合にも、封止部72でその重なり部分の全体を覆うことにより、前述した各実施例と同様な固着強度や気密性を確保することができる。
また、図8に示す接合構造は、封止部56がエンドキャップ18の端面50よりも引っ込んで設けられる共に、封止部74が多孔質膜60、多孔質円筒12の外周面、およびエンドキャップ18に固着されるように形成されたものである。この例では封止部56、74間に隙間76が生じているが、その隙間76は多孔質円筒12、封止部74、およびエンドキャップ18によって密閉されていると共に、封止部74はエンドキャップ18と多孔質円筒12に強固に固着されているため、このような構成でも、前述した各実施例と同様な固着強度や気密性を確保することができるのである。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
例えば、実施例においては、多孔質円筒12はアルミナまたはムライトで構成されていたが、用途に応じた通気性や強度、耐熱性等を有するものであれば、他のセラミック材料で構成することもでき、また、使用環境に応じた金属や樹脂等の種々の他の材料で構成することもできる。
また、緻密質円筒14等の構成材料は、多孔質円筒12、エンドキャップ16,18等の構成材料と同一或いは同一系統である必要もなく、樹脂や金属材料等で構成しても良い。但し、モジュール10が例えば温度変化の生じ得る環境で用いられる場合には、他の構成材料と可及的に熱膨張係数の相違の小さい材料で構成することが望ましい。例えば、コバール等の金属が好適に用いられる。
また、実施例においては、両端の開放された多孔質円筒12が用いられ、その一端20がエンドキャップ16で閉じられていたが、これに代えて有底の多孔質円筒を用いれば、エンドキャップ16は無用である。このような場合にも、少なくとも長手方向の一箇所には装置に組込み保持する等のための支持体を固着することが必要であり、その固着部分に密閉性が求められる場合には、本発明を同様に適用し得る。また、緻密質のエンドキャップ16に代えて、多孔質円筒12の周壁24よりも十分に気孔率の小さい多孔質材料から成るエンドキャップを用いることもできる。
また、実施例においては、エンドキャップ16が多孔質円筒12の一端20を完全に閉じるものであったが、エンドキャップ18と同様に構成されることにより、複数本の多孔質円筒12内に流入した気体がその一端20側でも相互に流通し得るように構成されていても良い。
また、実施例においては、多孔質円筒12の本数が6本、緻密質円筒14の本数が1本とされると共に、何れも外径10(mm)、内径7(mm)とされていたが、これらの本数や大きさはモジュール10の用途に応じて適宜変更され、また、多孔質円筒12と緻密質円筒14とが同一の断面寸法・断面形状に形成されている必要もない。また、円筒に限られず、角筒状等の種々の断面形状の筒体も同様に用いられ得る。
また、実施例においては、モジュール10が多孔質円筒12と緻密質円筒14との組合せで構成されていたが、緻密質円筒14は、用途に応じて適宜設けられるものであり、必ずしも設けられなくとも良い。
また、実施例においては、封止部56が950(℃)程度、多孔質膜60が650(℃)程度、封止部62が620(℃)程度でそれぞれ形成されていたが、これらの温度は用途に応じて定められる材料に応じて、この順序で低温となるように適宜変更される。
また、実施例においては、気体分離に用いられるモジュール10に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、多孔質筒体の外周面に多孔質膜が設けられ且つ適宜の支持体で支持される構造体であれば、液体濾過等の他の種々の用途に用いられる多孔質筒体の支持構造に同様に適用される。
また、実施例においては、多孔質円筒12を支持するためにも機能するエンドキャップ16,18がその両端に設けられていたが、中間部で多孔質筒体を支持する場合にも、本発明は同様に適用される。
また、実施例においては、円形の有底穴40や貫通孔52等を有するエンドキャップ16,18が支持部材として用いられていたが、多孔質筒体に気密に固着されるのであれば、これが周方向において分割されたような支持部材であっても差し支えない。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の一実施例の支持構造を備えた多孔質円筒モジュールの全体を示す斜視図である。 図1の多孔質円筒モジュールの縦断面を示す図である。 図1の多孔質円筒モジュールのエンドキャップの接合構造を説明するための要部断面を拡大して示す図である。 図1の多孔質円筒モジュールの製造方法の要部を説明するための工程図である。 エンドキャップの接合構造の他の例を説明するための図3に対応する図である。 エンドキャップの接合構造の更に他の例を説明するための図3に対応する図である。 エンドキャップの接合構造の更に他の例を説明するための図3に対応する図である。 エンドキャップの接合構造の更に他の例を説明するための図3に対応する図である。 従来のエンドキャップの接合構造の一例を説明するための断面図である。 従来のエンドキャップの接合構造の他の一例を説明するための断面図である。
符号の説明
10:多孔質円筒モジュール、12:多孔質円筒、16,18:エンドキャップ、56:封止部、60:多孔質膜、62:封止部、64:隙間

Claims (7)

  1. 周壁の外部から内部に連通する多数の連通気孔を備える多孔質筒体の長手方向の一部にその外周面を環状に覆う所定の支持部材が固着された支持構造であって、
    前記多孔質筒体と前記支持部材とを相互に固着し且つそれらの間を密に封止した第1封着材から成る第1封止部と、
    前記多孔質筒体の外周面を環状に覆って設けられ且つ前記連通気孔を外部に連通させる多孔質膜と、
    前記多孔質膜と前記第1封止部との境界部に前記多孔質筒体の外周面が密閉されるように環状に設けられた前記多孔質膜の成膜温度よりも低軟化点の第2封着材から成る第2封止部と
    を、含むことを特徴とする多孔質筒体の支持構造。
  2. 前記多孔質膜および前記第1封止部は前記多孔質筒体の長手方向において所定距離だけ相互に隔てて位置するものである請求項1の多孔質筒体の支持構造。
  3. 前記第1封止部は前記多孔質膜側の端部が前記支持部材から突き出したものであり、
    前記第2封止部は前記第1封止部および前記支持部材に固着されたものである請求項1または請求項2の多孔質筒体の支持構造。
  4. 前記支持部材は、複数本の前記多孔質筒体を支持するものである請求項1乃至請求項3の何れかの多孔質筒体の支持構造。
  5. 前記支持部材は前記多孔質筒体の開放された端部に固着され且つその支持部材で外壁の少なくとも一部が構成された密室内にその開放端を開放するものである請求項1乃至請求項4の何れかの多孔質筒体の支持構造。
  6. 周壁の外部から内部に連通する多数の連通気孔を備える多孔質筒体の長手方向の一部にその外周面を環状に覆う所定の支持部材を固着する方法であって、
    前記多孔質筒体の外周面に前記支持部材を第1封着材で固着することによりその第1封着材から成る第1封止部でそれらの間を密に封止する第1封止工程と、
    前記支持部材が固着された前記多孔質筒体の外周面を前記連通気孔を外部に連通させる多孔質膜で覆う成膜工程と、
    前記多孔質膜と前記第1封止部との境界部を前記多孔質膜の成膜温度よりも低軟化点の第2封着材で封止することによりその境界部上においてその第2封着材から成る環状の第2封止部で前記多孔質筒体の外周面を密閉する第2封止工程と
    を、含むことを特徴とする多孔質筒体の支持部材の固着方法。
  7. 前記多孔質膜は前記多孔質筒体の長手方向において前記第1封止部から所定距離だけ離隔した位置に形成されるものである請求項6の多孔質筒体の支持部材の固着方法。
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