JP2005055399A - 蛍光x線分析用信号処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 蛍光X線分析装置の検出器で得られる階段波状の信号の各段の高さ情報を、簡便な構成で且つ高い精度で取り出す。
【解決手段】 階段状電圧パルス信号DETを遅延部10で所定時間遅延させ、遅延前後の信号の差を減算部11で求める。差信号DIFでは、遅延時間の時間幅で各段の高さを波高値とするパルスが離散的に出現する。エッジ検出部13は差信号DIFの立ち上がりエッジを検出し、タイミング制御部14はこのエッジ検出後に所定時間間隔で所定点数の変換開始指示信号STRを生成する。A/D変換器15では変換開始指示信号STRに応じて信号レベルをサンプリングしてデジタル値に変換し、演算処理部16は各段毎の複数のデジタル値を平均して各段の高さに対応したデータを算出する。
【選択図】 図1
【解決手段】 階段状電圧パルス信号DETを遅延部10で所定時間遅延させ、遅延前後の信号の差を減算部11で求める。差信号DIFでは、遅延時間の時間幅で各段の高さを波高値とするパルスが離散的に出現する。エッジ検出部13は差信号DIFの立ち上がりエッジを検出し、タイミング制御部14はこのエッジ検出後に所定時間間隔で所定点数の変換開始指示信号STRを生成する。A/D変換器15では変換開始指示信号STRに応じて信号レベルをサンプリングしてデジタル値に変換し、演算処理部16は各段毎の複数のデジタル値を平均して各段の高さに対応したデータを算出する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、蛍光X線分析装置に利用される信号処理装置に関し、更に詳しくは、蛍光X線分析装置の検出器により得られる階段状の電圧パルス信号から各段の高さに関する情報を取り出すための信号処理装置に関する。
蛍光X線分析装置は、固体試料、粉体試料又は液体試料に1次X線を照射し、該1次X線により励起されて放出される蛍光X線を検出することによって、その試料に含まれる元素の定性又は定量分析を行うものである。この蛍光X線分析装置は、波長分散型とエネルギー分散型の2つに大別される(例えば特許文献1など参照)。前者では、分光結晶とスリットとを組み合わせたX線分光器により特定波長の蛍光X線を選別した上で検出器で検出する構成を有する。一方、後者では、こうした波長選別を行わずに直接、蛍光X線を半導体検出器などで検出し、その後に検出信号をエネルギー(つまり波長)毎に分離する処理を行うという構成を有する。蛍光X線スペクトルを作成する場合、波長分散型では波長走査を行う必要があるのに対し、エネルギー分散型では同時に多数の波長の情報が得られるため、短時間で蛍光X線スペクトルを取得できるという特徴を持っている。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、検出器として例えばリチウムドリフト型Si半導体検出器などが利用され、その検出出力は前置アンプにより波形整形されて図4に示すような階段状の電圧パルス信号となる。この信号の階段の各段の高さH1、H2、…が試料に含まれる各元素のエネルギーつまり波長に対応している。そこで、蛍光X線スペクトルの作成や定性・定量分析等の各種のデータ処理を行うためには、上記階段状の信号から各段の高さに対応したデジタルデータを算出する必要がある。
こうした信号処理の一手法として、階段状の電圧パルス信号を一定時間間隔でサンプリングしてA/D変換器によりデジタル信号に変換し、その後にデジタル的な演算処理により各段の高さに対応したデータを計算するものがある。しかしながら、こうした方法で高い精度を得るには高い分解能のA/D変換器が必要となり、コストが高くつくという問題がある。また、各段の時間方向の長さは一定ではないため、段が長い場合にはサンプリング点数が必要以上に多くなって、結果的に、不要なデータを記憶しておくためのメモリ容量が増大したりデータ処理回路に不要な負荷を掛けたりすることになる。
一方、A/D変換を行う前に、階段状電圧パルス信号の各段をその高さに比例したパルス信号に変換し、A/D変換器により各パルス毎にその波高値をデジタルデータに変換する構成も知られている(例えば特許文献2など参照)。こうした構成では、A/D変換の対象となる信号のダイナミックレンジが小さくなるので、A/D変換器の分解能を上記の場合ほど必要としないという利点がある。しかしながら、階段状の電圧パルス信号の各段の信号レベルは必ずしも安定しているとは限らないため、各段の高さに応じたパルス信号を生成する際に誤差が大きくなって分析精度を損なう可能性がある。
本発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、検出器で得られる階段状の電圧パルス信号の各段の高さを比較的低い同一の分解能で評価することができ、且つ各段の時間長に拘わらずデータ量を適宜に設定することができる蛍光X線分析用信号処理装置を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、階段状の電圧パルス信号の各段の信号レベルが安定しない場合でも、そうした要因による誤差の影響を軽減して精度の高い分析を達成することができる蛍光X線分析用信号処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、蛍光X線分析の検出手段により得られる階段状の電圧パルス信号から各段の高さに関する情報を取り出すための蛍光X線分析用信号処理装置において、
a)前記電圧パルス信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、
b)該遅延手段による遅延前後の信号の差分を算出する減算手段と、
c)該減算手段による差信号における各パルスの前側のエッジを検出するエッジ検出手段と、
d)前記差信号の各パルス期間について、前記エッジ検出時点を契機としそれぞれ所定時間間隔でn点ずつ信号レベルをデジタル信号に変換する信号変換手段と、
e)前記各パルス期間に対し、前記信号変換手段により取得されたn個のデジタル信号に基づいて対応する階段の高さに応じた値を算出する演算手段と、
を備えることを特徴としている。
a)前記電圧パルス信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、
b)該遅延手段による遅延前後の信号の差分を算出する減算手段と、
c)該減算手段による差信号における各パルスの前側のエッジを検出するエッジ検出手段と、
d)前記差信号の各パルス期間について、前記エッジ検出時点を契機としそれぞれ所定時間間隔でn点ずつ信号レベルをデジタル信号に変換する信号変換手段と、
e)前記各パルス期間に対し、前記信号変換手段により取得されたn個のデジタル信号に基づいて対応する階段の高さに応じた値を算出する演算手段と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係る蛍光X線分析用信号処理装置では、階段状の電圧パルス信号の各段の中で最も段の時間長が短いものよりもさらに短い時間が遅延手段における所定時間として設定される。したがって、減算手段により遅延前後の信号の差分をとると、上記遅延時間に相当する時間長ずつ離散的に、各段の高さに対応する振幅(波高値)情報を有するパルスが出現する。エッジ検出手段はその各パルスの前側エッジを検出する。
信号変換手段はA/D変換機能を有し、上記各パルスのエッジを契機としそれぞれ所定時間間隔でn点ずつ信号レベルをデジタル信号に変換する。ここで、変換される信号レベルの位置は各パルスの範囲内、つまり前側のエッジから上記遅延時間の範囲内としておく。またnは1以上であればよいが、1点のみの信号レベルを利用した場合、偶然、その位置の信号レベルが誤差の大きなものである可能性もある。したがって、好ましくはnは2以上とするのがよい。そして、演算手段は、各パルス期間に対し、それぞれn個のデジタル信号に基づき、対応する階段の高さに応じた値を算出する。具体的には、nが2以上である場合、その2個以上のデジタル信号の平均値を計算すればよい。
この発明に係る蛍光X線分析用信号処理装置によれば、階段状の電圧パルス信号から各段の高さに対応する情報に変換された後にA/D変換が行われるので、A/D変換の入力のダイナミックレンジが小さくて済み、分解能が比較的低く且つ同一であるA/D変換器を用いることができる。それによって、コストが比較的安価で済むとともに、変換後のデジタル信号のビット長が短いのでデータ処理における取り扱いが容易である。
また、階段状電圧パルス信号の各段の時間長とは無関係に遅延時間によって各段に対応したパルスのパルス幅が決まる。したがって、各段の時間長に拘わらず、各段に対する信号レベルのサンプリング点数(上記n)とその時間間隔とを適宜に設定することで、演算手段で処理する際のデータ量を制御することができる。
更にまた、nを2以上とすることにより、階段状電圧パルス信号の各段の信号レベルの不安定性や雑音の混入などの影響を軽減し、各段の高さ情報を高い精度で取り出すことができる。それによって、蛍光X線分析装置の定量分析、定性分析の精度を向上させることができる。
以下、本発明の一実施例である蛍光X線分析用信号処理装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は本実施例による信号処理装置の要部の構成図、図2及び図3は図1の装置の動作を説明するための波形図である。
上述したように蛍光X線分析装置の検出器(半導体検出器+前置増幅器)から送られてくる階段状の電圧パルス信号DET(図3(a)参照)は、減算部11の端子Aに入力されるとともに遅延部10に入力される。遅延部10は入力を所定の遅延時間tdだけ遅延させるもので、遅延後の電圧パルス信号DLY(図3(b))が減算部11の端子Bに入力される。減算部11は端子Aの入力から端子Bの入力を差し引いた波形を出力する。したがって、図3(a)に示す電圧パルス信号DETが与えられると、減算部11の出力は図3(c)に示すような形状の差信号DIFとなる。すなわち、上記遅延時間tdに相当する時間幅を有し、且つ階段の各段の高さ情報を有するパルスが離散的に出現する。
ここで、仮に遅延時間tdが階段の各段の時間幅の最短のものよりも長かったとすると、差信号DIFにおいては隣接する段に対応したパルスが重なり合ってしまい、段の高さ情報を得ることができなくなる。そこで、遅延部10の遅延時間tdは、階段の各段の時間幅の最短のものよりも短くなるように設定される。
差信号DIFはA/D変換器15に入力されるのと並行してアンプ12を介しエッジ検出部13に入力される。アンプ12で増幅される段階で負方向のパルス(図3(c)で右端のパルス)は除去される。エッジ検出部13は入力された信号の前側(この場合には立ち上がり)エッジのうち、外部から設定される検出レベルVref以上のもののみについて検出して幅の狭いパルス信号をエッジ検出信号EDGとして発生する(図3(d))。ここで、検出レベルVrefを設けているのは、ノイズ等による不要なエッジを検出することを回避するためである。
このエッジ検出信号EDG(図2(a))はタイミング制御部14に入力され、タイミング制御部14はクロック信号CLK(図2(b))を基準にして必要な信号を生成する。すなわち、本実施例におけるタイミング制御部14では、エッジ検出信号EDGを受けた後に最初のクロック信号CLKの立ち上がりエッジで最初の変換開始指示信号STRを生成し、その後にTad時間間隔でm−1個の変換開始指示信号STRを生成する(図2(c))。ここで、Tad=n×(クロック信号CLKの1周期)とし、図2の例ではnを3に設定している。また、mは3に設定している。但し、A/D変換器15から処理中ステータス信号BSYが入力されている場合にはA/D変換器15は処理中であるので、新規の信号のサンプリングを行うことができないため、その状態が解除されるまで待機する。
上述したようにm=3、n=3である場合には、図2(a)〜(c)に示すように、エッジ検出信号EDGの立ち上がりエッジがあってから最初のクロック信号CLKの立ち上がりエッジで1個目の変換開始指示信号STRを発生し、その後、クロック信号CLKの3周期毎に2個目及び3個目の変換開始指示信号STRを発生する。
A/D変換器15はこうした変換開始指示信号STRを受けると、そのときの信号レベルをサンプリングしてその値をデジタル値に変換する。したがって、図2(c)、(d)に例示するように、3個の変換開始指示信号STRに対してD1,D2,D3なる3点においてパルスの信号レベルを反映したデジタルデータが得られる。演算処理部16はこの3点のデータの平均値を計算する。すなわち、D1,D21,D3の各位置におけるデータ値を[D1],[D2],[D3]としたとき、次式により平均値[D]を算出する。
[D] =([D1]+[D2]+[D3])/3
最終的に、この[D]がその段の高さ情報に対応した値となる。
[D] =([D1]+[D2]+[D3])/3
最終的に、この[D]がその段の高さ情報に対応した値となる。
但し、差信号DIFの各パルスの立ち上がりエッジに近い部分での信号レベルは安定性に欠ける場合がある。そこで、次のような条件の下で[D1]を限定し、これを逸脱した場合には正確に[D]が求まらないものと判断して[D]をゼロとする。
[D1]×0.7>[D2],[D3]
[D1]×1.3<[D2],[D3]
[D1]×0.7>[D2],[D3]
[D1]×1.3<[D2],[D3]
以上のようにして、簡便な構成で以て、階段状電圧パルス信号DETの各段の高さに対応したデータを精度よく求めることができる。また、各段の時間幅とは無関係に各段のサンプリングの点数を一定にすることができるので、無駄なデータを取得することがない。
なお、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正を行うことができることは明らかである。
10…遅延部
11…減算部
12…アンプ
13…エッジ検出部
14…タイミング制御部
15…A/D変換器
16…演算処理部
11…減算部
12…アンプ
13…エッジ検出部
14…タイミング制御部
15…A/D変換器
16…演算処理部
Claims (2)
- 蛍光X線分析の検出手段により得られる階段状の電圧パルス信号から各段の高さに関する情報を取り出すための蛍光X線分析用信号処理装置において、
a)前記電圧パルス信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、
b)該遅延手段による遅延前後の信号の差分を算出する減算手段と、
c)該減算手段による差信号における各パルスの前側のエッジを検出するエッジ検出手段と、
d)前記差信号の各パルス期間について、前記エッジ検出時点を契機としそれぞれ所定時間間隔でn点ずつ信号レベルをデジタル信号に変換する信号変換手段と、
e)前記各パルス期間に対し、前記信号変換手段により取得されたn個のデジタル信号に基づいて対応する階段の高さに応じた値を算出する演算手段と、
を備えることを特徴とする蛍光X線分析用信号処理装置。 - 前記nは2以上であって、前記演算手段はそのn個以上のデジタル信号の平均値を計算することを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析用信号処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003289009A JP2005055399A (ja) | 2003-08-07 | 2003-08-07 | 蛍光x線分析用信号処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003289009A JP2005055399A (ja) | 2003-08-07 | 2003-08-07 | 蛍光x線分析用信号処理装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005055399A true JP2005055399A (ja) | 2005-03-03 |
Family
ID=34367481
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003289009A Pending JP2005055399A (ja) | 2003-08-07 | 2003-08-07 | 蛍光x線分析用信号処理装置 |
Country Status (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011503524A (ja) * | 2007-08-03 | 2011-01-27 | パルセータ,エルエルシー | エネルギー分散型放射線分光分析システムにおけるパイルアップ除去 |
KR101745433B1 (ko) * | 2016-04-07 | 2017-06-09 | 한국과학기술원 | 신호 지연 및 전압 오프셋 조절을 위한 방사선 계수 장치, 노이즈 최적화 방법, 프로그램 및 이를 저장한 기록매체 |
KR101745436B1 (ko) * | 2016-04-07 | 2017-06-09 | 한국과학기술원 | Cds 기법과 cdm을 이용한 방사선 계수 방법, 방사선 계수 장치, 프로그램 및 이를 저장한 기록매체 |
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2003
- 2003-08-07 JP JP2003289009A patent/JP2005055399A/ja active Pending
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