しかしながら、従来の湿式法又は乾式法により形成される電極や、特許文献1に記載の有機電解液電池用正極合剤のような複合粒子を用いた電極は、主に電極活物質、導電助剤及び結着剤を構成材料としており、かかる電極では、電気化学素子の高容量化を図る上で限界があることを本発明者らは見出した。すなわち、従来の電極や上記の有機電解液電池用正極合剤のような複合粒子を構成材料とする電極を用いた電気化学素子では、十分な素子容量(静電容量又は放電容量)を得ることが困難であることを本発明者らは見出した。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電気化学素子の高容量化が可能な電極を形成することのできる電極用複合粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、電気化学素子の高容量化が可能な電極、並びに、この電極を備えており、従来のものと比較して十分に高い素子容量を有する電気化学素子を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記電極用複合粒子、電極及び電気化学素子をそれぞれ容易かつ確実に得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化還元能を有するポリマーを構成材料として含む電極用複合粒子であれば、上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、電極活物質と、電子伝導性を有する導電助剤と、酸化還元能を有するポリマーと、電極活物質と導電助剤と酸化還元能を有するポリマーとを結着させることが可能な結着剤と、を含むことを特徴とする電極用複合粒子を提供する。
また、本発明は、電極活物質と、電子伝導性を有する導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な、酸化還元能を有するポリマーと、を含むことを特徴とする電極用複合粒子を提供する。
ここで、本発明において電極用複合粒子の構成材料となる「電極活物質」とは、形成すべき電極により以下の物質を示す。すなわち、形成すべき電極が電気分解セルに使用される電極又はキャパシタ(コンデンサ)に使用される電極の場合には、「電極活物質」とは、電子伝導性を有する、金属(金属合金を含む)、金属酸化物又は炭素材料を示す。なお、本明細書において、「キャパシタ」は「コンデンサ」と同義とする。
また、形成すべき電極が一次電池のアノードとして使用される電極の場合には「電極活物質」とは還元剤を示し、一次電池のカソードの場合には「電極活物質」とは酸化剤を示す。
更に、形成すべき電極が二次電池に使用されるアノード(放電時)の場合には、「電極活物質」とは還元剤であって、その還元体及び酸化体の何れの状態においても化学的安定に存在可能な物質であり、酸化体から還元体への還元反応及び還元体から酸化体への酸化反応が可逆的に進行可能である物質を示す。また、形成すべき電極が二次電池に使用されるカソード(放電時)の場合には、「電極活物質」とは酸化剤であって、その還元体及び酸化体の何れの状態においても化学的安定に存在可能な物質であり、酸化体から還元体への還元反応及び還元体から酸化体への酸化反応が可逆的に進行可能である物質を示す。
また更に、上記以外にも、形成すべき電極が一次電池及び二次電池に使用される電極の場合、「電極活物質」は、電極反応に関与する金属イオンを吸蔵又は放出(インターカレート、又は、ドープ・脱ドープ)することが可能な材料であってもよい。この材料としては、例えば、リチウムイオン二次電池のアノード及び/又はカソードに使用される炭素材料や、金属酸化物(複合金属酸化物を含む)等が挙げられる。
また、本発明において電極用複合粒子の構成材料となる「酸化還元能を有するポリマー」(以下、場合により「レドックスポリマー」という)とは、可逆な酸化・還元能を有するポリマーである。なお、本発明において、レドックスポリマーが電極活物質と導電助剤とを十分に結着させることが可能なものである場合、かかるレドックスポリマーが結着剤としての役割を果たすため、電極用複合粒子は、上述したように、レドックスポリマー以外の結着剤を含まない構成を有していてもよい。
本発明の電極用複合粒子は、構成材料としてレドックスポリマーを含んでおり、かつ、このレドックスポリマーが電極活物質、導電助剤及び必要に応じて用いられる結着剤とともに複合粒子を形成しているため、効果的な導電ネットワークを形成することができ、上記レドックスポリマーに起因した、いわゆる酸化還元容量を効果的に付与することができる。そのため、かかる電極用複合粒子を電気化学素子の電極の構成材料として用いることによって、電気化学素子の高容量化を実現することができる。
また、本発明の電極用複合粒子において、電極活物質と導電助剤とが複合粒子中で孤立せずに電気的に結合していることが好ましく、更に、電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方と、酸化還元能を有するポリマーとが複合粒子中で物理的に接触していることが好ましい。
ここで、「電極活物質と導電助剤とが複合粒子中で孤立せずに電気的に結合していること」とは、複合粒子中において、電極活物質からなる粒子(又はその凝集体)と導電助剤からなる粒子(又はその凝集体)とが「実質的に」孤立せずに電気的に結合していることを示す。より詳しくは、電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子の全てが完全に孤立せずに電気的に結合しているのではなく、本発明の効果を得られる水準の電気抵抗を達成できる範囲で電気的に十分に結合していることを示す。
また、「電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方と、酸化還元能を有するポリマーとが複合粒子中で物理的に接触していること」とは、酸化還元能を有するポリマー(又は該ポリマーからなる粒子、若しくは、その凝集体)が「実質的に」孤立せずに、電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方と物理的に接触していることを示す。より詳しくは、酸化還元能を有するポリマーが酸化還元反応により電子移動を生じる際に、酸化還元能を有するポリマーと電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方との間で電子移動が可能となり、上述の「実質的に」孤立せずに電気的に結合した状態となることを示す。
そして、この「電極活物質と導電助剤と酸化還元能を有するポリマーとが複合粒子中で孤立せずに電気的に結合している」状態、及び、「電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方と、酸化還元能を有するポリマーとが複合粒子中で物理的に接触している」状態は、本発明の電極用複合粒子及びその断面のSEM(Scaning Electron Micro Scope:走査型電子顕微鏡)写真、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)写真及びEDX(Energy Dispersive X‐ray Fluorescence Spectrometer:エネルギー分散型X線分析装置)分析データにより確認することができる。また、本発明の電極用複合粒子は、そのSEM写真、TEM写真及びEDX分析データと、従来の複合粒子(特許文献1に記載の複合粒子)のSEM写真、TEM写真及びEDX分析データとを比較することにより、従来のものと明確に区別することができる。なお、かかる比較は、電極用複合粒子を構成材料として形成した電極の断面を、SEM写真、TEM写真及びEDX分析データにより確認することによっても明確に区別することができる。
このように、電極活物質と導電助剤とが複合粒子中で孤立せずに電気的に結合していることによって、更には、電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方と、レドックスポリマーとが複合粒子中で物理的に接触していることによって、電極用複合粒子は効果的な導電ネットワークをより十分に形成することができるため、電極の内部抵抗を十分に低減することが可能であるとともに、レドックスポリマーに起因する酸化還元容量をより効果的に付与することができ、電気化学素子の高容量化をより確実に実現することが可能となる。
更に、本発明の電極用複合粒子は、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と結着剤と酸化還元能を有するポリマーとを密着させて一体化させる造粒工程を経て形成されていることが好ましく、上記造粒工程は、重合して酸化還元能を有するポリマーを形成するモノマーと導電助剤と結着剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液と、を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に第1の原料液及び第2の原料液を噴霧して、第1の原料液及び第2の原料液を電極活物質からなる粒子に付着させ、第1の原料液中のモノマーと第2の原料液中の重合開始剤とを接触せしめることによりモノマーを重合させて酸化還元能を有するポリマーを電極活物質からなる粒子の表面で形成させるとともに、乾燥を行うことにより電極活物質からなる粒子の表面に付着した第1の原料液及び第2の原料液から第1の溶媒及び第2の溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子と酸化還元能を有するポリマーとを密着させる噴霧重合乾燥工程と、を含んでいることが好ましい。
なお、酸化還元能を有するポリマーが電極活物質と導電助剤とを十分に結着可能なものである場合、本発明の電極用複合粒子は、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と酸化還元能を有するポリマーとを密着させて一体化させる造粒工程を経て形成されていることが好ましく、上記造粒工程は、重合して酸化還元能を有するポリマーを形成するモノマーと導電助剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液と、を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に第1の原料液及び第2の原料液を噴霧して、第1の原料液及び第2の原料液を電極活物質からなる粒子に付着させ、第1の原料液中のモノマーと第2の原料液中の重合開始剤とを接触せしめることによりモノマーを重合させて酸化還元能を有するポリマーを電極活物質からなる粒子の表面で形成させるとともに、乾燥を行うことにより電極活物質からなる粒子の表面に付着した第1の原料液及び第2の原料液から第1の溶媒及び第2の溶媒を除去し、酸化還元能を有するポリマーにより電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子とを密着させる噴霧重合乾燥工程と、を含んでいることが好ましい。
ここで、「電極活物質からなる粒子」及び「導電助剤からなる粒子」中には、本発明の機能(電極活物質及び導電助剤としての機能)を損なわない程度であれば、それぞれ電極活物質以外の物質及び導電助剤以外の物質が入っていてもよい。
上記造粒工程を経て形成される本発明の電極用複合粒子は、電極活物質と導電助剤とが孤立せずに、より確実に電気的に結合した状態の粒子を形成しており、更には、電極活物質及び導電助剤のうちの少なくとも一方とレドックスポリマーとが、より確実に物理的に接触した状態の粒子を形成しており、効果的な導電ネットワークをより十分に形成することが可能であるため、内部抵抗を十分に低減することができるとともに、電気化学素子の高容量化をより確実に実現することが可能となる。
ところで、従来の電極形成方法により電極を形成した場合、電極形成の際に先に述べた電極活物質、導電助剤及び結着剤を少なくとも含む塗布液(スラリー)又は混練物を用いる方法を採用しているため、得られる電極の活物質含有層中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が効果的な導電ネットワークを構築できていない状態、例えば、この分散状態が不均一で、上記の構成材料が孤立して電気的に結合していない状態となり、そのため、得られる電極は内部抵抗が高く、また、十分な容量を有する電気化学素子を形成することが困難であった。
また、特許文献1に記載の複合粒子をはじめとする従来のスラリーを噴霧乾燥方式(spray drying)で造粒する方法では、同一のスラリー中に、正極活物質(カソードの活物質)、導電剤(導電助剤)、及び、結着剤を含ませているために、得られる造粒物(複合粒子)中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態は、スラリー中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態(特に、スラリーの液滴の乾燥が進行する過程での電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態)に依存するため、結着剤の凝集とその偏在、及び、導電助剤の凝集とその偏在が起こり、得られる造粒物(複合粒子)中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が効果的な導電ネットワークを構築できていない状態、例えば、この分散状態が不均一で、上記の構成材料が孤立して電気的に結合していない状態となり、電極活物質、導電助剤及び結着剤の三者間の密着性が十分に得られず、得られる活物質含有層中に良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が構築されていなかった。
より詳しくは、特許文献1に記載の技術では、図9に示すように、得られる塊(複合粒子)P100を構成する各正極活物質からなる粒子の中には、大きな結着剤からなる凝集体P33のみに囲まれて、該塊(複合粒子)P100中に電気的に孤立して利用されないものP11が多く存在していた。また、乾燥中に導電剤からなる粒子が凝集体となると、得られる塊(複合粒子)P100中で、導電剤からなる粒子が凝集体P22として偏在してしまい、該塊(複合粒子)P100中で十分な電子伝導パスを構築できず、十分な電子伝導性を得ることができていなかった。更に、導電剤からなる粒子の凝集体P22が大きな結着剤からなる凝集体P33のみに囲まれて電気的に孤立することもあり、この観点からも該塊(複合粒子)P100中で十分な電子伝導パスを構築できず、十分な電子伝導性を得ることができていなかった。
また、スラリーを噴霧乾燥方式で造粒する上記方法では、同一のスラリー中に電極用複合粒子の構成材料を含ませるため、例えば、本発明にかかるレドックスポリマーを、モノマーと重合開始剤の状態で供給することができなかった。
また、従来の電極では、電極の形状安定性を確保する観点から絶縁性或いは電子伝導性の低い結着剤(バインダー)を多量に電極活物質及び導電助剤とともに使用するため、この観点からも電極の内部抵抗が高くなってしまい、十分な電子伝導性を確保することができていなかった。更に、上述の特許文献1に記載された複合粒子を使用して電極を作成する場合においても結着剤を使用しているため、上記の問題が発生していた。
更に、従来の電極では、導電助剤及び結着剤を電解液に接触し、電極反応に関与できる電極活物質の表面に選択的にかつ良好に分散させることができず、反応場で発生する電子を効率よく伝導させる電子伝導ネットワークの構築に寄与しない無駄な導電助剤が存在したり、単に電気抵抗を増大させるだけの存在となる無駄な結着剤が存在していた。
また更に、特許文献1の複合粒子をはじめとする従来技術では、塗膜中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が不均一となるため、集電体に対する電極活物質及び導電助剤の密着性も十分に得られていなかった。
これに対して、上述した造粒工程を経て形成される本発明の電極用複合粒子であれば、一般的には電極の内部抵抗を増大させる原因となる結着剤を用いているにもかかわらず、比抵抗値(或いは、みかけの体積でノーマライズした場合の内部抵抗値)が電極活物質そのものの値よりも十分に低い活物質含有層を構成することが可能となる。また、レドックスポリマーが電極活物質と導電助剤とを十分に結着可能である場合には、上記結着剤を用いることなく電極用複合粒子を形成することが可能となり、この場合にも比抵抗値が十分に低い活物質含有層を構成することが可能となる。
また、本発明の噴霧重合乾燥工程においては、電極用複合粒子の構成材料となるレドックスポリマーを、重合反応により当該レドックスポリマーを形成可能なモノマー(レドックスポリマーの構成材料となるモノマー)の状態で供給する。そして、このモノマーを含む原料液(第1の原料液)と、当該モノマーの重合反応を開始させることが可能な重合開始剤を含む原料液(第2の原料液)とを別々の供給口(ノズル等)から噴霧し、これらを電極活物質からなる粒子上で接触せしめることで、電極活物質からなる粒子上でレドックスポリマーを形成する。このように、レドックスポリマーをモノマーの状態で噴霧することによって、ポリマーの状態で噴霧するよりも遥かに微細な液滴として噴霧することが可能であり、極めて良好な分散状態で電極活物質からなる粒子上に液滴を付着させることができる。そして、このように高分散した状態でモノマーの重合が進行するため、形成されるレドックスポリマーも極めて良好な分散状態を保つことができ、極めて効果的な導電ネットワークを構築することが可能となり、内部抵抗の低減と高容量化とを高い水準で達成することが可能となる。
ここで、レドックスポリマーを形成可能なモノマーを含む原料液(第1の原料液)と、重合開始剤を含む原料液(第2の原料液)とを噴霧する際、これら第1の原料液及び第2の原料液は交互に噴霧することが有効である。これにより、第1の原料液が電極活物質等に密着した後で重合開始剤が噴霧されるので、レドックスポリマーを形成可能なモノマーがより確実に電極活物質上で重合反応を起こし、レドックスポリマーと電極活物質と導電助剤等の接触性が向上する傾向がある。
なお、本発明において原料液は、上述のようにレドックスポリマーを形成可能なモノマーと導電助剤と必要に応じて用いられる結着剤とを含む第1の原料液と、重合開始剤を含む第2の原料液とに分ける場合に限定されない。すなわち、少なくとも上記モノマーと重合開始剤とを異なる原料液により供給すればよく、導電助剤や結着剤を第2の原料液に含有させたり、第1の原料液、第2の原料液の他に第3の原料液を調製し、第3の原料液中に導電助剤と必要に応じて用いられる結着剤とを含有させて供給しても良い。
上記造粒工程では、電極活物質からなる粒子に、導電助剤と重合してレドックスポリマーを形成可能なモノマーと必要に応じて用いられる結着剤とを含む原料液の微小な液滴を直接噴霧するため、先に述べた従来の複合粒子の製造方法の場合に比較して、複合粒子を構成する各構成粒子の凝集の進行を十分に防止でき、その結果、得られる複合粒子中の各構成粒子の偏在化を十分に防止できる。また、導電助剤、レドックスポリマー及び必要に応じて用いられる結着剤を電解液に接触し、電極反応に関与できる電極活物質の表面に選択的にかつ良好に分散させることができる。
このように、本発明の電極用複合粒子は、導電助剤、電極活物質、レドックスポリマー及び必要に応じて用いられる結着剤のそれぞれを極めて良好な分散状態で互いに密着せしめた粒子となる。また、本発明の電極用複合粒子は、造粒工程において、流動槽中の温度、流動槽中に噴霧する原料液の噴霧量、流動槽中に発生させる気流中に投入する電極活物質の投入量、流動槽中に発生させる気流の速度、気流の流れ(循環)の様式(層流、乱流等)等を調節することにより、その粒子サイズを調節することができる。そして、この電極用複合粒子は、電極を製造する際の塗布液又は混練物の構成材料に使用される。
この電極用複合粒子内部には、極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築されている。この電子伝導パスの構造は、この粒子を含む塗布液又は混練物を調製した後においても、調製条件を調節すること(例えば、塗布液を調製する際の分散媒又は溶媒の選択等)によりほぼ当初の状態を保持させることが容易にできる。
そのため、集電体表面に、電極用複合粒子を含む塗布液又は混練物からなる液膜を形成し、次いで、液膜を固化させる過程(例えば、液膜を乾燥させる等の過程)において、従来のような各構成材料間の密着性の低下、並びに、集電体表面に対する密着性の低下を十分に防止することができる。
その結果、本発明者らは、本発明において得られる電極の活物質含有層内には従来の電極に比較して極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築されていると推察している。
なお、(A)電極用複合粒子を形成する際に構成材料としてイオン伝導性を有する導電性高分子を更に添加するか、(B)電極形成用塗布液又は電極形成用混練物を調製する際に、イオン伝導性を有する導電性高分子を電極用複合粒子以外の構成成分として添加するか、(C)イオン伝導性を有する導電性高分子を、電極用複合粒子の構成材料、及び、電極形成用塗布液又は電極形成用混練物の構成成分として何れにも添加するかのいずれかの手法をおこなうことによっても、電極の活物質含有層内に極めて良好なイオン伝導パスを容易に構築することができる。なお、電極用複合粒子の構成材料として用いる導電性高分子と、電極形成用塗布液又は電極形成用混練物の構成成分として用いる導電性高分子とは同一のものであっても異なるものであってもよい。
また、電極用複合粒子の構成材料となる結着剤としてイオン伝導性を有する導電性高分子を使用可能な場合には、イオン伝導性を有する導電性高分子を使用してもよい。イオン伝導性を有する結着剤も活物質含有層内のイオン伝導パスの構築に寄与すると考えられる。この電極用複合粒子を用いることにより先に述べたポリマー電極を形成することができる。また、電極用複合粒子の構成材料となる結着剤として、電子伝導性を有する高分子電解質を使用してもよい。
このような構成とすることにより、本発明では、従来の電極よりも優れた電子伝導性及びイオン伝導性を有する電極を容易かつ確実に形成することができる。本発明の電極用複合粒子を用いて形成される電極は、活物質含有層内で進行する電荷移動反応の反応場となる導電助剤、電極活物質及び電解質(固体電解質又は液状電解質)との接触界面が、3次元的にかつ十分な大きさで形成されており、なおかつ、活物質含有層と集電体との電気的接触状態も極めて良好な状態にある。
また、本発明においては、導電助剤、電極活物質、レドックスポリマー及び必要に応じて用いられる結着剤のそれぞれの分散状態が極めて良好な電極用複合粒子を予め形成するため、導電助剤や結着剤の添加量を従来よりも十分に削減できる。
本発明はまた、上記本発明の電極用複合粒子を構成材料として含む導電性の活物質含有層と、活物質含有層に電気的に接触した状態で配置される導電性の集電体と、を少なくとも有することを特徴とする電極を提供する。
かかる電極によれば、上述した効果を奏する本発明の電極用複合粒子を構成材料として含む電極活物質層を備えていることにより、内部抵抗が十分に低減されており、かつ、電気化学素子の電極として用いることにより、電気化学素子の素子容量を向上させることができる。
本発明は更に、第1の電極と、第2の電極と、イオン伝導性を有する電解質層と、を少なくとも備えており、第1の電極と第2の電極とが電解質層を介して対向配置された構成を有する電気化学素子であって、上記電極が第1の電極及び第2の電極のうちの一方或いは両方の電極として備えられていることを特徴とする電気化学素子を提供する。
また、「イオン伝導性を有する電解質層」とは、(1)絶縁性材料から形成された多孔質のセパレータであって、その内部に電解質溶液(或いは電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質)が含浸されているもの、(2)固体電解質膜(固体高分子電解質からなる膜又はイオン伝導性無機材料を含む膜)、(3)電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質からなる層、(4)電解質溶液からなる層を示す。
なお、上記(1)〜(4)の構成の何れの場合にも、第1の電極及び第2の電極の内部にもそれぞれに使用される電解質が含有されている構成を有していてもよい。
また、本明細書においては、(1)〜(3)の構成において、第1の電極(アノード)、電解質層、第2の電極(カソード)からなる積層体を、必要に応じて「素体」という。更に、素体は、上記(1)〜(3)の構成のように、3層構造のものの他に、上記電極と電解質層とが交互に積層された5層以上の構成を有していてもよい。
また、上記(1)〜(4)の構成の何れの場合にも、電気化学素子は、複数の単位セルを1つのケース内に直列或いは並列に配置させたモジュールの構成を有していてもよい。
本発明の電気化学素子は、電極用複合粒子を含む電極を、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも一方、好ましくは両方として備えることにより、優れた素子容量を得ることができる。
また、本発明は、上述した電極用複合粒子、電極及び電気化学素子のそれぞれの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、酸化還元能を有するポリマーと、電極活物質と導電助剤と酸化還元能を有するポリマーとを結着させることが可能な結着剤と、を密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、酸化還元能を有するポリマーと、結着剤と、を含む複合粒子を形成する造粒工程を有しており、造粒工程は、重合して酸化還元能を有するポリマーを形成するモノマーと導電助剤と結着剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液と、を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に第1の原料液及び第2の原料液を噴霧して、第1の原料液及び第2の原料液を電極活物質からなる粒子に付着させ、第1の原料液中のモノマーと第2の原料液中の重合開始剤とを接触せしめることによりモノマーを重合させて酸化還元能を有するポリマーを電極活物質からなる粒子の表面で形成させるとともに、乾燥を行うことにより電極活物質からなる粒子の表面に付着した第1の原料液及び第2の原料液から第1の溶媒及び第2の溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子と酸化還元能を有するポリマーとを密着させる噴霧重合乾燥工程と、を含むことを特徴とする電極用複合粒子の製造方法を提供する。
また、本発明は、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な、酸化還元能を有するポリマーと、を密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、酸化還元能を有するポリマーと、を含む複合粒子を形成する造粒工程を有しており、造粒工程は、重合して酸化還元能を有するポリマーを形成するモノマーと導電助剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液と、を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に第1の原料液及び第2の原料液を噴霧して、第1の原料液及び第2の原料液を電極活物質からなる粒子に付着させ、第1の原料液中のモノマーと第2の原料液中の重合開始剤とを接触せしめることによりモノマーを重合させて酸化還元能を有するポリマーを電極活物質からなる粒子の表面で形成させるとともに、乾燥を行うことにより電極活物質からなる粒子の表面に付着した第1の原料液及び第2の原料液から第1の溶媒及び第2の溶媒を除去し、酸化還元能を有するポリマーにより電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子とを密着させる噴霧重合乾燥工程と、を含むことを特徴とする電極用複合粒子の製造方法を提供する。
上述の造粒工程を経ることにより、先に述べた構造を有する本発明の電極用複合粒子を容易かつ確実に形成することができる。そして、この製造方法により得られる電極用複合粒子を用いることにより、内部抵抗が十分に低減されているとともに、電気化学素子に用いた場合に素子の高容量化を図ることが可能な電極を容易かつ確実に形成することができ、ひいては優れた素子容量を有する電気化学素子を容易かつ確実に構成することができる。
ここで、本発明の電極用複合粒子の製造方法における造粒工程において、上述の「電極活物質からなる粒子に導電助剤と酸化還元能を有するポリマーと(結着剤と)を密着させて一体化すること」とは、電極活物質からなる粒子の表面の少なくとも一部分に、導電助剤からなる粒子と酸化還元能を有するポリマー(レドックスポリマー)と必要に応じて用いられる結着剤からなる粒子とをそれそれ接触させた状態とすることを示す。すなわち、電極活物質からなる粒子の表面は、上記構成材料によりその一部が覆われていれば十分であり、全体が覆われている必要は無い。なお、本発明の電極用複合粒子の製造方法の造粒工程において使用する「結着剤」は、これとともに使用される電極活物質とレドックスポリマーと導電助剤とを結着させることが可能なものを示すが、レドックスポリマーが電極活物質と導電助剤とを十分に結着させることが可能である場合には、結着剤は必ずしも必要ではない。
また、本発明においては、先に述べた構造を有する電極用複合粒子をより容易かつより確実に形成する観点から、造粒工程は、流動槽中の温度を50℃以上で、結着剤の融点を大幅に越えない温度に調節することが好ましく、流動槽中の温度を50℃以上で、結着剤の融点以下に調節することがより好ましい。この結着剤の融点とは、その結着剤の種類にもよるが、例えば200℃程度である。流動槽中の温度が50℃未満となると、噴霧中の溶媒の乾燥が不十分となる傾向が大きくなる。流動槽中の温度が結着剤の融点を大幅に越えると、結着剤が溶融し粒子の形成に大きな支障をきたす傾向が大きくなる。流動槽中の温度が結着剤の融点よりも若干上回る程度の温度であれば、条件により上記の問題の発生を十分に防止することができる。また、流動槽中の温度が結着剤の融点以下であれば、上記の問題は発生しない。
更に、本発明の電極用複合粒子の製造方法においては、先に述べた構造を有する電極用複合粒子をより容易かつより確実に形成する観点から、造粒工程において、流動槽中に発生させる気流は、空気、窒素ガス、又は、不活性ガスからなる気流であることが好ましい。更に、造粒工程において、流動槽中の湿度(相対湿度)は、上記の好ましい温度範囲において30%以下とすることが好ましい。なお、本発明において、「不活性ガス」とは、希ガスに属するガスを示す。
また、本発明の電極用複合粒子の製造方法においては、造粒工程において、原料液に含まれる溶媒は、レドックスポリマーを形成可能なモノマーと、結着剤を用いる場合には結着剤とを溶解可能又は分散可能であるとともに導電助剤を分散可能であることが好ましい。これによっても、得られる電極用複合粒子中の導電助剤、レドックスポリマー、電極活物質及び必要に応じて用いられる結着剤の分散性をより高めることができる。電極用複合粒子中の結着剤、導電助剤及び電極活物質の分散性をより高める観点から、原料液に含まれる溶媒は、レドックスポリマーを形成可能なモノマーと、結着剤を用いる場合には結着剤とを溶解可能であるとともに導電助剤を分散可能であることがより好ましい。
更に、本発明の電極用複合粒子の製造方法は、結着剤として導電性高分子を使用することを特徴としていてもよい。これにより、得られる電極用複合粒子には、導電性高分子が更に含有されることになる。そして、この電極用複合粒子を用いることにより先に述べたポリマー電極を形成することができる。上記の導電性高分子はイオン伝導性を有するものであってもよく、電子伝導性を有するものであってもよい。導電性高分子がイオン伝導性を有するものである場合には、電極の活物質含有層内に極めて良好なイオン伝導パス(イオン伝導ネットワーク)をより容易かつより確実に構築することができる。導電性高分子が電子伝導性を有するものである場合には、電極の活物質含有層内に極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)をより容易かつより確実に構築することができる。
また、本発明の電極用複合粒子の製造方法においては、造粒工程において、原料液には、導電性高分子が更に溶解されていてもよい。この場合にも、得られる電極用複合粒子には、導電性高分子が更に含有されることになる。そして、この電極用複合粒子を用いることにより先に述べたポリマー電極を形成することができる。上記の導電性高分子はイオン伝導性を有するものであってもよく、電子伝導性を有するものであってもよい。導電性高分子がイオン伝導性を有するものである場合には、電極の活物質含有層内に極めて良好なイオン伝導パス(イオン伝導ネットワーク)をより容易かつより確実に構築することができる。導電性高分子が電子伝導性を有するものである場合には、電極の活物質含有層内に極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)をより容易かつより確実に構築することができる。
また、本発明は、電極活物質を構成材料として含む導電性の活物質含有層と、活物質含有層に電気的に接触した状態で配置される導電性の集電体と、を少なくとも有する電極の製造方法であって、上述した電極用複合粒子の製造方法を経て複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、複合粒子を構成材料として用いて活物質含有層を形成する活物質含有層形成工程と、を有していることを特徴とする、電極の製造方法を提供する。
かかる製造方法は、上述した本発明の電極用複合粒子の製造方法により複合粒子形成工程を行っており、それにより得られる複合粒子を活物質含有層の構成材料として用いているため、内部抵抗が十分に低減されており、かつ、電気化学素子に用いた場合に素子の高容量化を図ることが可能な電極を容易かつ確実に得ることができる。
また、本発明の電極の製造方法において、活物質含有層形成工程は、複合粒子を少なくとも含む粉体に加熱処理及び加圧処理を施してシート化し、複合粒子を少なくとも含むシートを得るシート化工程と、シートを活物質含有層として集電体上に配置する活物質含有層配置工程と、を有することが好ましい。
このように、活物質含有層形成工程において、複合粒子を用いて乾式法により活物質含有層を形成することにより、内部抵抗が十分に低減されており、電気化学素子の出力密度を十分に増大させることが容易に可能な優れた電極特性を有する電極をより確実に得ることができる。
ここで、「複合粒子を少なくとも含む粉体」は、複合粒子のみからなるものであってもよい。また、「複合粒子を少なくとも含む粉体」には、レドックスポリマー、結着剤及び導電助剤のうちの一種以上が更に含まれていてもよい。このように粉体に複合粒子以外の構成成分が含まれる場合、粉体中の複合粒子の割合は、粉体の総質量を基準として、80質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の電極の製造方法においては、シート化工程を、熱ロールプレス機を用いて行うことが好ましい。熱ロールプレス機は、1対の熱ロールを有しており、この1対の熱ロールの間に「複合粒子を少なくとも含む粉体」を投入し、加熱及び加圧してシート化する構成を有するものである。これにより、活物質含有層となるシートを容易かつ確実に形成することができる。
以上のように本発明の電極の製造方法においては、活物質含有層形成工程において複合粒子を用いて乾式法により活物質含有層を形成してもよいが、以下のように湿式法により活物質含有層を形成しても先に述べた本発明の効果を得ることができる。
すなわち、活物質含有層形成工程は、複合粒子を分散又は混練可能な液体に複合粒子を添加して電極形成用塗布液を調製する塗布液調製工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、電極形成用塗布液を塗布する工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に塗布された電極形成用塗布液からなる液膜を固化させる工程と、を含むこと、を特徴としていてもよい。
この場合にも、内部抵抗が十分に低減されており、電気化学キャパシタの出力密度を十分に増大させることが容易に可能な優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に得ることができる。ここで、「複合粒子を分散可能な液体」とは、複合粒子中の結着剤やレドックスポリマーを溶解しない液体であることが好ましいが、活物質含有層を形成する過程において、複合粒子同士の電気的接触を十分に確保できて本発明の効果を得られる範囲であれば複合粒子の表面近傍の結着剤やレドックスポリマーを一部溶解させる特性を有するものであってもよい。なお、本発明の効果を得られる範囲であれば、複合粒子を分散可能な液体には複合粒子の他の成分として、結着剤、導電助剤及びレドックスポリマーのうちの一種以上が更に添加されていてもよい。この場合の他の成分として添加される結着剤は、「複合粒子を分散可能な液体」に溶解可能な結着剤であることが好ましい。
また、活物質含有層形成工程において、複合粒子を混練可能な液体を使用する場合、この液体に複合粒子を添加して複合粒子を含む電極形成用混練物を調製する混練物調製工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、電極形成用混練物を塗布する工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に塗布された電極形成用混練物からなる塗膜を固化させる工程と、を含むことを特徴としていてもよい。
この場合にも、内部抵抗が十分に低減されており、電気化学素子の出力密度を十分に増大させることが容易に可能な優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に得ることができる。
更に、本発明は、第1の電極と、第2の電極と、イオン伝導性を有する電解質層とを少なくとも備えており、第1の電極と第2の電極とが電解質層を介して対向配置された構成を有する電気化学素子の製造方法であって、第1の電極及び第2の電極のうちの一方或いは両方の電極を、上記電極の製造方法を経て形成する電極形成工程を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法を提供する。
上述した本発明の電極の製造方法により得られる電極を、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも一方、好ましくは両方として使用することにより、内部抵抗が十分に低減されており、かつ、優れた素子容量を有する電気化学素子を容易かつ確実に得ることができる。
本発明によれば、電気化学素子の高容量化が可能な電極を形成することのできる電極用複合粒子を提供することができる。また、本発明によれば、上記の電極用複合粒子を用いることにより、電気化学素子の高容量化が可能な電極、並びに、この電極を備えており、従来のものと比較して十分に高い素子容量を有する電気化学素子を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記の電極用複合粒子、電極及び電気化学素子のそれぞれを容易かつ確実に得ることのできる製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
先ず、本発明の電極用複合粒子について説明する。図1は、本発明の電極用複合粒子の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
図1に示すように、電極用複合粒子P10は、電極活物質からなる粒子P1と、導電助剤からなる粒子P2と、酸化還元能を有するポリマー(レドックスポリマー)からなる粒子P3と、結着剤からなる粒子P4とから構成されている。
電極用複合粒子P10を構成する酸化還元能を有するポリマー(レドックスポリマー)からなる粒子P3としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリブチルチオフェン、ポリフェニルチオフェン、ポリメトキシチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリインドール、ポリパラフェニレン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
このようなレドックスポリマーからなる粒子P3を電極用複合粒子P10の構成材料として用いることにより、このレドックスポリマーからなる粒子P3に起因した、いわゆる酸化還元容量を付与することができ、本発明の電極用複合粒子P10を電気化学素子の電極の構成材料として用いることによって、電気化学素子の高容量化を実現することが可能となる。
なお、本発明の電極用複合粒子を造粒工程を経て形成する場合、第1の原料液に含有させる、重合して上記レドックスポリマーを形成するモノマーとしては、先に例示したレドックスポリマーを構成するモノマーが挙げられる。また、第2の原料液に含有される重合開始剤としては、上記モノマーに適合する熱重合開始剤等が挙げられ、具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素等の過酸化物;硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等の三価の鉄;硫酸銅(II)、塩化銅(II)等の二価の銅;硫酸セリウム(IV)、フッ化セリウム(IV)、過塩素酸セリウム(IV)等の四価のセリウム;五フッ化砒素、ヨウ素等が挙げられる。
電極用複合粒子P10を構成する電極活物質としては、形成すべき電極により以下の物質が用いられる。すなわち、形成すべき電極が電気化学キャパシタに使用される電極の場合、電極活物質は、電荷の蓄電と放電に寄与する電子伝導性を有する粒子であれば特に制限されず、例えば、粒状又は繊維状の賦活処理済みの活性炭や金属酸化物等が挙げられる。また、好ましい活性炭の種類としては、例えば、ヤシガラ活性炭、ピッチ系活性炭、フェノール樹脂系活性炭等の電気二重層容量の高いものが挙げられる。
更に、電気化学キャパシタに使用される場合の電極活物質のBET比表面積は、好ましくは500〜4000m2/g、より好ましくは1000〜3000m2/gである。なお、上記比表面積を有する炭素材料を用いることが特に好ましく、かかる電極活物質を電極用複合粒子P10の構成材料として用いることによって、これを電極の構成材料に用いた電気化学キャパシタの静電容量を向上することができる。
また、形成すべき電極がリチウムイオン二次電池のアノード(放電時)である場合、電極活物質としては公知の電極活物質を特に制限なく使用することができる。例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO2、SnO2等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li3Ti5O12)等が挙げられる。
更に、形成すべき電極がリチウムイオン二次電池のカソード(放電時)である場合、電極活物質としては公知の電極活物質を特に制限なく使用することができる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixMnyCozO2(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物、V2O5、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFeを示す)、チタン酸リチウム((Li3Ti5O12)等が挙げられる。
電極用複合粒子P10を構成する導電助剤は電子伝導性を有するものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用することができる。例えば、カーボンブラック類、高結晶性の人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、上記炭素材料及び金属微粉の混合物、ITOのような導電性酸化物等が挙げられる。
電極用複合粒子P10を構成する結着剤は、上記のレドックスポリマーからなる粒子P3と電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とを結着可能なものであれば特に制限されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。また、この結着剤は、上記の電極用複合粒子P10の構成材料同士を結着するのみならず、かかる電極用複合粒子P10用いて電極を形成する際の集電体と複合粒子P10との結着に対しても寄与している。
また、上記の他に、結着剤は、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
更に、上記の他に、結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。また、導電性高分子を用いてもよい。
また、複合粒子P10には、導電性高分子からなる粒子を当該複合粒子P10の構成成分として更に添加してもよい。更に、複合粒子P10を用いて乾式法により電極を形成する際には、複合粒子を少なくとも含む粉体の構成成分として添加してもよい。また、複合粒子P10を用いて湿式法により電極を形成する際には、複合粒子P10を含む塗布液又は混練物を調製する際に、導電性高分子からなる粒子を当該塗布液又は混練物の構成材料として添加してもよい。
本発明に用いられる導電性高分子としては特に限定されないが、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセトン等のように酸化還元能と導電性の両方の機能を有する材料や、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等のポリマー中に、金属や炭素材料等を分散させて複合化した材料等が挙げられる。
なお、本発明の電気化学素子がリチウムイオン二次電池である場合、使用する導電性高分子はリチウムイオンの伝導性を有していることが好ましい。このようなリチウムイオンの伝導性を有する導電性高分子としては、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等)のモノマーと、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、LiBr、Li(CF3SO2)2N、LiN(C2F5SO2)2リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤又は熱重合開始剤が挙げられる。
このような構成材料からなる電極用複合粒子P10の平均粒子径は特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、好ましくは5〜5000μmである。また、同様の観点から、電極活物質からなる粒子P1の平均粒子径は1〜100μmであることが好ましい。
更に、本発明の効果をより確実に得る観点から、電極用複合粒子P10におけるレドックスポリマー、電極活物質、導電助剤及び結着剤の含有量は、電極用複合粒子P10の全体積を基準として、それぞれ、1〜50体積%、40〜97体積%、1〜30体積%及び1〜30体積%であることが好ましい。また、造粒工程を経て電極用複合粒子を形成する場合、第1の原料液に含有させる、重合してレドックポリマーを形成可能なモノマーの含有量、及び、第2の原料液に含有させる重合開始剤の含有量は、電極用複合粒子を形成した際に上述したレドックスポリマーの含有量となるように調製することが好ましい。なお、これらの含有量の比は、形成するレドックスポリマーに要求される特性(分子量等)によって適宜調整される。
次に、本発明の電極及び電気化学素子について説明する。図2は、本発明の電気化学素子の好適な一実施形態(電気二重層キャパシタ)の基本構成を示す模式断面図である。図2に示す電気化学素子1は、主として、第1の電極2及び第2の電極3と、第1の電極2と第2の電極3との間に配置される電解質層4とから構成されている。
図2に示す電気化学素子1の第1の電極2及び第2の電極3は、それぞれ膜状(板状)の集電体24及び34と、この集電体と電解質層4との間に配置される膜状の活物質含有層22及び32とから構成されている。なお、電気化学素子1におけるアノード及びカソードは、第1の電極2及び第2の電極3の放電時及び充電時の極性により決まるものであり、第1の電極2及び第2の電極3のいずれか一方がアノ−ド、他方がカソードとなる。
集電体24及び34は、活物質含有層22及び32への電荷の移動を十分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知の電気化学キャパシタに用いられている集電体を使用することができる。具体的には、例えば、アルミニウム等の金属箔等が挙げられる。
活物質含有層22及び32は、主として、上述した本発明の電極用複合粒子P10から構成されている。ここで、活物質含有層22及び32は、電極用複合粒子P10以外の材料を含んで構成されていてもよく、例えば、電極活物質、導電助剤、レドックスポリマー及び結着剤のうちの一種以上を電極用複合粒子P10とは別に含んでいてもよい。また、活物質含有層22及び32は、導電性高分子を更に含んでいてもよい。
なお、本発明の効果をより確実に得る観点から、活物質含有層22及び32における電極用複合粒子P10の含有量は、活物質含有層22又は32の全質量を基準として、いずれも80〜100質量%であることが好ましい。
電解質層4は、(1)絶縁性材料から形成された多孔質のセパレータであって、その内部に電解質溶液(或いは電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質)が含浸されているもの、(2)固体電解質膜(固体高分子電解質からなる膜又はイオン伝導性無機材料を含む膜)、(3)電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質からなる層、(4)電解質溶液からなる層、のうちのいずれかの構成を有する層とすることができる。
ここで、上記電解質溶液は特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられる電解質溶液を使用することができる。なお、電解質溶液は電気化学的に分解電圧が低いことによりキャパシタの耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する非水電解質溶液を用いることが好ましい。
上記非水電解質溶液の種類は特に限定されないが、一般的には溶質の溶解度、解離度、液の粘性を考慮して選択され、高導電率でかつ高電位窓(分解開始電圧が高い)の非水電解質溶液であることが望ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリルが挙げられる。また、電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(4フッ化ホウ素テトラエチルアンモニウム)のような4級アンモニウム塩が挙げられる。なお、この場合、混入水分を厳重に管理する必要がある。
上記固体高分子電解質としては、例えば、イオン伝導性を有する導電性高分子が挙げられ、先に述べた導電性高分子の中から適宜選択して用いることができる。
電解質層4にセパレータを使用する場合、その構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン類の一種又は二種以上(二種以上の場合、二層以上のフィルムの張り合わせ物等がある)、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル類、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のような熱可塑性フッ素樹脂類、セルロース類等がある。シートの形態はJIS−P8117に規定する方法で測定した通気度が5〜2000秒/100cc程度、厚さが5〜100μm程度の微多孔膜フィルム、織布、不織布等がある。なお、固体電解質のモノマーをセパレータに含浸、硬化させて高分子化して使用してもよい。また、先に述べた電解液を多孔質のセパレータ中に含有させて使用してもよい。
次に、本発明の電極用複合粒子P10の製造方法の好適な一実施形態について説明する。
複合粒子P10は、電極活物質からなる粒子P1に導電助剤とレドックスポリマーと結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、レドックスポリマーと結着剤とを含む複合粒子を形成する造粒工程を経て形成される。この造粒工程について、図3を用いてより具体的に説明する。図3は、複合粒子を製造する際の造粒工程の一例を示す説明図である。
造粒工程は、重合してレドックスポリマーを形成するモノマーと導電助剤と結着剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液と、を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に第1の原料液及び第2の原料液を噴霧して、第1の原料液及び第2の原料液を電極活物質からなる粒子に付着させ、第1の原料液中のモノマーと第2の原料液中の重合開始剤とを接触せしめることによりモノマーを重合させて酸化還元能を有するポリマーを電極活物質からなる粒子の表面で形成させるとともに、乾燥を行うことにより電極活物質からなる粒子の表面に付着した第1の原料液及び第2の原料液から第1の溶媒及び第2の溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子とレドックスポリマーとを密着させる噴霧重合乾燥工程と、を含む。
先ず、原料液調製工程における第1の原料液を調製する場合、第1の溶媒としては、結着剤を溶解可能な溶媒を用い、この溶媒中に結着剤を溶解させる。次に、得られた溶液に、レドックスポリマーを形成可能なモノマーと導電助剤とを分散させて原料液を得る。ここで、第1の溶媒は、結着剤を分散可能な溶媒(分散媒)であってもよく、また、レドックスポリマーを形成可能なモノマーを溶解可能な溶媒であってもよい。
また、原料液調製工程における第2の原料液を調製する場合、第2の溶媒としては、重合開始剤を溶解可能な溶媒を用い、この溶媒中に重合開始剤を溶解させる。ここで、第2の溶媒は、重合開始剤を分散可能な溶媒(分散媒)であってもよい。
なお、結着剤や導電助剤は、第2の原料液中に含有させてもよく、また、結着剤と導電助剤と第3の溶媒とを含む第3の原料液を更に調製してもよい。
次に、流動層化工程においては、図3に示すように、流動槽5内において、気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子P1を投入することにより、電極活物質からなる粒子を流動層化させる。
次に、噴霧重合乾燥工程では、図3に示すように、流動槽5内において、第1の原料液の液滴6及び第2の原料液の液滴66を噴霧することにより、第1の原料液の液滴6と第2の原料液の液滴66とを流動層化した電極活物質からなる粒子P1に付着させ、第1の原料液中のモノマーと、第2の原料液中の重合開始剤とを、電極活物質からなる粒子P1上で接触せしめる。そして、これにより、上記モノマーの重合反応を進行せしめ、電極活物質からなる粒子P1上でレドックスポリマーを形成せしめる。また、同時に流動槽5内において乾燥させ、電極活物質からなる粒子P1の表面に付着した第1の原料液の液滴6及び第2の原料液の液滴66から溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とレドックスポリマーからなる粒子P3とを密着させ、複合粒子P10を得る。
より具体的には、この流動槽5は、例えば、筒状の形状を有する容器であり、その底部には、温風(又は熱風)L5を外部から流入させ、流動槽5内で電極活物質からなる粒子を対流させるための開口部52が設けられている。また、この流動槽5の側面には、流動槽5内で対流させた電極活物質からなる粒子P1に対して、噴霧される第1の原料液の液滴6を流入させるための開口部(供給口)54と、噴霧される第2の原料液の液滴66を流入させるための開口部(供給口)56とが設けられている。そして、流動槽5内で対流させた電極活物質からなる粒子P1に対して、重合してレドックスポリマーを形成可能なモノマーと結着剤と導電助剤と第1の溶媒とを含む第1の原料液の液滴6と、重合開始剤と第2の溶媒とを含む第2の原料液の液滴66とを噴霧する。ここで、開口部54及び開口部56の位置については特に限定されず、開口部56が、開口部54の上方又は下方に設けられていてもよく、開口部54に対向する側の側面に設けられていてもよい。なお、上記第1及び第2の原料液を開口部54及び開口部56から噴霧する際の噴霧手段としては、例えば、ガスと液体とを噴霧する手段、具体的には流体ノズルを用いた高圧ガス噴霧法等が用いられる。
このとき、電極活物質からなる粒子P1の置かれた雰囲気の温度を、例えば温風(又は熱風)の温度を調節する等して、第1の溶媒及び第2の溶媒を速やかに除去可能であり、かつ、上記モノマーの重合を十分に進行させることが可能な所定の温度{好ましくは、50℃から結着剤の融点を大幅に超えない温度、より好ましくは50℃から結着剤の融点以下の温度(例えば、200℃)}に保持しておき、電極活物質からなる粒子P1の表面に形成される第1及び第2の原料液の液膜を、第1の原料液の液滴6及び第2の原料液の液滴66の付着及びモノマーの重合反応の進行とほぼ同時に乾燥させる。これにより、電極活物質からなる粒子の表面に結着剤と導電助剤とレドックスポリマーとを密着させ、複合粒子P10を得る。
ここで、結着剤を溶解可能な第1の溶媒は、結着剤を溶解可能であり、導電助剤を分散可能であり、かつ、レドックスポリマーを形成可能なモノマーを溶解又は分散可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。また、重合開始剤を溶解又は分散可能な第2の溶媒についても特に限定されず、例えば、上記第1の溶媒と同様のものを用いることができる。ここで、第1の溶媒と第2の溶媒とは同一のものであっても異なるものであってもよい。
また、レドックスポリマーを形成可能なモノマーを含む原料液(第1の原料液)と、重合開始剤を含む原料液(第2の原料液)とを噴霧する際、これら第1及び第2の原料液を交互に噴霧することが有効である。例えば、第1の原料液を1秒間噴霧した後に、1秒間の間隔をあけて第2の原料液を噴霧する。その後、1秒間の間隔をあけて再び第1の原料液を噴霧する。この繰り返しの間欠噴霧をすることが有効である。これにより、第1の原料液が電極活物質等に密着した後で重合開始剤が噴霧されるので、レドックスポリマーを形成可能なモノマーがより確実に電極活物質上で重合反応を起こし、レドックスポリマーと電極活物質と導電助剤等の接触性が向上する傾向がある。
次に、複合粒子P10を用いた電極の形成方法の好適な一例について説明する。
(乾式法)
先ず、上述した造粒工程を経て製造した複合粒子P10を使用し、溶媒を用いない乾式法により電極を形成する場合について説明する。
この場合、活物質含有層は以下の活物質含有層形成工程を経て形成される。この活物質含有層形成工程は、複合粒子P10を少なくとも含む粉体に加熱処理及び加圧処理を施してシート化し、複合粒子を少なくとも含むシートを得るシート化工程と、シートを活物質含有層(活物質含有層22又は活物質含有層32)として集電体上に配置する活物質含有層配置工程とを有する。
乾式法は、溶媒を用いずに電極を形成する方法であり、1)溶媒が不要で安全である、2)溶媒を使用せず粒子のみを圧延するため電極(活物質含有層)の高密度化を容易に行うことができる、3)溶媒を使用しないので、湿式法で問題となる、集電体上に塗布した電極形成用塗布液からなる液膜の乾燥過程において、電極活物質からなる粒子P1、導電性を付与するための導電助剤からなる粒子P2、レドックスポリマーからなる粒子P3、及び、結着剤からなる粒子P4の凝集及び偏在が発生しない、等の利点がある。
そして、このシート化工程は、図4に示す熱ロールプレス機を用いて好適に行うことができる。
図4は乾式法により電極を製造する際のシート化工程の一例(熱ロールプレス機を用いる場合)を示す説明図である。
この場合、図4に示すように、熱ロールプレス機(図示せず)の一対の熱ロール84及び熱ロール85の間に、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12を投入し、これらを混合して混練すると共に、熱及び圧力により圧延し、シート18に成形する。このとき、熱ロール84及び85の表面温度は60〜120℃であることが好ましく、線圧力は10〜5000kg/cmであることが好ましい。
ここで、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12には、電極活物質からなる粒子P1、導電性を付与するための導電助剤からなる粒子P2、レドックスポリマーからなる粒子P3及び結着剤からなる粒子P4のうちの少なくとも1種の粒子を更に混合してもよい。
また、熱ロールプレス機(図示せず)に投入する前に、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12をミル等の混合手段により予め混練しておいてもよい。
なお、集電体と活物質含有層とを電気的に接触させることは、活物質含有層を熱ロールプレス機で成形してから行ってもよいが、集電体と、該集電体の一方の面上に撒布された活物質含有層の構成材料とを熱ロール84及び熱ロール85に供給して、活物質含有層のシート成形及び活物質含有層と集電体との電気的な接続を同時に行うようにしてもよい。
(湿式法)
次に、上述した造粒工程を経て製造した複合粒子P10を使用し、電極形成用塗布液を調製し、これを用いて電極を形成する場合の好適な一例について説明する。先ず、電極形成用塗布液の調製方法の一例について説明する。
電極形成用塗布液は、造粒工程を経て作製した複合粒子P10と、複合粒子P10を分散又は溶解可能な液体とを混合した混合液を作製し、混合液から上記液体の一部を除去して、塗布に適した粘度に調節することにより電極形成用塗布液を得ることができる。
より具体的には、導電性高分子を用いる場合には、図5に示すように、例えば、スターラー等の所定の撹拌手段(図示せず)を有する容器8内において、複合粒子P10を分散又は溶解可能な液体中に複合粒子P10を添加して十分に撹拌することにより、電極形成用塗布液7を調製することができる。
次に、電極形成用塗布液を用いた本発明の電極の製造方法の好適な一実施形態について説明する。先ず、電極形成用塗布液を、集電体の表面に塗布し、当該表面上に、塗布液の液膜を形成する。次に、この液膜を乾燥させることにより、集電体上に活物質含有層を形成し電極の作製を完了する。ここで、電極形成用塗布液を集電体の表面に塗布する際の手法は特に限定されるものではなく、集電体の材質や形状等に応じて適宜決定すればよい。例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、電極形成用塗布液の液膜から活物質含有層を形成する際の手法としては、乾燥以外に、塗布液の液膜から活物質含有層を形成する際に、液膜中の構成成分間の硬化反応(例えば、導電性高分子等の構成材料となるモノマーの重合反応)を伴う場合があってもよい。例えば、紫外線硬化樹脂(導電性高分子)の構成材料となるモノマーを含む電極形成用塗布液を使用する場合、先ず、集電体上に、電極形成用塗布液を上述の所定の方法により塗布する。次に、塗布液の液膜に、紫外線を照射することにより活物質含有層を形成する。
この場合、導電性高分子(導電性高分子からなる粒子)を予め電極形成用塗布液に含有させておく場合に比較して、集電体上に電極形成用塗布液の液膜を形成した後、液膜中でモノマーを重合させて導電性高分子を生成させることにより、液膜中での複合粒子P10の良好な分散状態をほぼ保持したまま、複合粒子P10間の間隙に導電性高分子を生成させることができるので、得られる活物質含有層中の複合粒子P10と導電性高分子との分散状態をより良好にすることができる。
すなわち、得られる活物質含有層中に、より微細で緻密な粒子(複合粒子P10と導電性高分子からなる粒子)が一体化したイオン伝導ネットワーク及び電子伝導ネットワークを構築することができる。そのためこの場合、比較的低い作動温度領域においても電極反応を十分に進行させることが可能な優れた分極特性を有するポリマー電極をより容易かつより確実に得ることができる。
更にこの場合、紫外線硬化樹脂の構成材料となるモノマーの重合反応は、紫外線照射により進行させることができる。
更に、得られる活物質含有層を、必要に応じて、熱平板プレスや熱ロールを使用して熱処理し、シート化する等の圧延処理を施してもよい。
また、以上の説明では、複合粒子P10を用いた電極の形成方法の一例として、複合粒子P10を含む電極形成用塗布液7を調製しこれを用いて電極を形成する場合について説明したが、複合粒子P10を用いた電極の形成方法(湿式法)はこれに限定されない。
図6は、以上で説明した活物質含有層(活物質含有層22又は活物質含有層32)の内部構造を概略的に示す模式断面図である。但し、図6に示した模式図における活物質含有層は、第1の原料液及び第2の原料液のどちらにも導電助剤及び結着剤を含有させず、第3の原料液として、導電助剤及び結着剤が含有されている原料液を用い、これらを噴霧して作製した複合粒子を構成材料として形成したものである。すなわち、活物質含有層(活物質含有層22又は活物質含有層32)においては、結着剤からなる粒子P4が使用されているにもかかわらず、電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造が形成されているとともに、電極活物質からなる粒子P1及び導電助剤からなる粒子P2のうちの少なくとも一方と、レドックスポリマーからなる粒子P3とが物理的に接触した構造が形成されている。なお、第1の原料液中に導電助剤や結着剤を含有させた場合や、第2の原料液中に導電助剤や結着剤を含有させた場合は、結着剤からなる粒子P4とレドックスポリマーからなる粒子P3とが渾然一体となった状態となる。そして、いずれの場合でも、レドックスポリマーと電極活物質と導電助剤との接触性は良好に保たれる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態においては、電極用複合粒子の構成材料として結着剤を用いる場合について説明したが、本発明にかかるレドックスポリマーが、電極活物質と導電助剤とを十分に結着可能なものである場合には、結着剤を用いなくてもよい。
また、本発明の電極は、活物質含有層が本発明の電極形成用塗布液に含まれる複合粒子P10を用いて形成されるものであればよく、それ以外の構造は特に限定されない。また、電気化学素子も本発明の電極を第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも一方の電極として備えていればよく、それ以外の構成及び構造は特に限定されない。例えば、図7に示すように、単位セル(第1の電極2、第2の電極3及びセパレータを兼ねる電解質層4からなるセル)102を複数積層し、これを所定のケース9内に密閉した状態で保持させた(パッケージ化した)モジュール100の構成を有していてもよい。
更に、この場合、各単位セルを並列に接続してもよく、直列に接続してもよい。また、例えば、このモジュール100を更に直列又は並列に複数電気的に接続させた素子ユニットを構成してもよい。このユニットとしては、例えば、図8に示す素子ユニット200のように、例えば、1つのモジュール100のカソード端子104と別のモジュール100のアノード端子106とが金属片108により電気的に接続されることにより、直列接続の素子ユニット200を構成することができる。
更に、上述のモジュール100や素子ユニット200を構成する場合、必要に応じて、既存の電気化学素子に備えられているものと同様の保護回路(図示せず)やPTC(図示せず)を更に設けてもよい。
また、上述した電気化学素子の実施形態の説明では、電気化学キャパシタの中でも特に電気二重層キャパシタの構成を有するものについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、アルミ電解コンデンサ、擬似容量キャパシタ、シュードキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタであってもよい。
更に、本発明の電気化学素子は、一次電池や二次電池であってもよい。例えば、本発明の電気化学素子がリチウムイオン二次電池である場合、電極(アノード及びカソード)としては以下のような構成材料からなる電極が用いられる。すなわち、集電体としては、アノードには例えば銅箔が用いられ、カソードには例えばアルミ箔が用いられる。また、活物質含有層は、本発明の電極用複合粒子を構成材料として含んで形成される。ここで、リチウムイオン二次電池のアノード及びカソードに用いられる場合の複合粒子の構成材料となる電極活物質については先に述べた通りである。
なお、本発明の電気化学素子が金属リチウム二次電池である場合、そのアノードは、集電体を兼ねた金属リチウム又はリチウム合金のみからなる電極であってもよい。ここで、リチウム合金は特に限定されず、例えば、Li−Al、LiSi、LiSn等の合金(ここでは、LiSiも合金として取り扱うものとする)が挙げられる。この場合、カソードは本発明の電極用複合粒子を用いて構成する。
また、本発明の電気化学素子がリチウムイオン二次電池又は金属リチウム二次電池である場合、電解質層4に用いられる電解液は、リチウム含有電解質を非水溶媒に溶解して調製される。このリチウム含有電解質としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6等から適宜選択すればよく、また、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2Nのようなリチウムイミド塩や、LiB(C2O4)2等を使用することもできる。非水溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、カーボネート類等、特開昭63−121260号公報等に例示される有機溶媒から選択することができるが、本発明では特にカーボネート類を用いることが好ましい。カーボネート類のうちでは、特にエチレンカーボネートを主成分とし他の溶媒を1種類以上添加した混合溶媒を用いることが好ましい。混合比率は、通常、エチレンカーボネート:他の溶媒=5〜70:95〜30(体積比)とすることが好ましい。エチレンカーボネートは凝固点が36.4℃と高く、常温では固化しているため、エチレンカーボネート単独では電池の電解液としては使用できないが、凝固点の低い他の溶媒を1種類以上添加することにより、混合溶媒の凝固点が低くなり、使用可能となる。この場合の他の溶媒としてはエチレンカーボネートの凝固点を低くするものであれば何でもよい。例えばジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−パレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,3−ジオキソラナン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、ブチレンカーボネート、蟻酸メチル等が挙げられる。アノードの活物質として炭素質材料を用い、且つ上記混合溶媒を用いることにより、電池容量が著しく向上し、不可逆容量率を十分に低くすることができる。
更に、リチウムイオン二次電池又は金属リチウム二次電池を構成する電解質層4に、固体高分子電解質を用いる場合、固体高分子電解質は、例えば、先に述べた導電性高分子(高分子化合物のモノマーとリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩とを複合化させたもの)により構成される。また、固体高分子電解質を構成する支持塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)及びLiN(CF3CF2CO)2等の塩、又は、これらの混合物が挙げられる。
1・・・電気化学素子、2・・・第1の電極、3・・・第2の電極、4・・・電解質層、5・・・流動槽、6・・・第1の原料液の液滴、7・・・電極形成用塗布液、18・・・シート、22・・・活物質含有層、24・・・集電体、32・・・活物質含有層、34・・・集電体、52・・・開口部、54・・・開口部、56・・・開口部、66・・・第2の原料液の液滴、84,85・・・熱ロール、100・・・モジュール、200・・・素子ユニット、P1・・・電極活物質からなる粒子、P2・・・導電助剤からなる粒子、P3・・・酸化還元能を有するポリマーからなる粒子、P4・・・結着剤からなる粒子、P10・・・複合粒子、P12・・・複合粒子P10を含む粉体。