JP2005047979A - 多分岐ポリマーの製造方法、及び多分岐ポリマー - Google Patents
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Abstract
【課題】デンドリマーや多分岐ポリマー製造において、骨格の分解や副反応を抑制して、重合性基及び機能性官能基の導入量を自由に制御できる手法を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)の、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、メルカプト化合物を、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒とした共役付加反応により反応させる多分岐ポリマーの製造方法、及び該製造方法により製造される多分岐ポリマー。
【選択図】 なし
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)の、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、メルカプト化合物を、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒とした共役付加反応により反応させる多分岐ポリマーの製造方法、及び該製造方法により製造される多分岐ポリマー。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は塗装・コーティング材料、粘着剤、接着剤、フィルム、シート、成型品、繊維、医農薬や電子材料、医療用途等、広範な用途に有用な、重合性基及び機能的官能基を有し、高度に分岐した構造を有する多分岐ポリマーの製造方法、及び、該製造方法により得られる多分岐ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気・電子分野の発展に伴い、種々の特性や機能を有する材料の開発や、塗装やコーティング等の手段によって機能を付与する方法の開発が進んでいる。塗装やコーティング材料の一つである放射線硬化性樹脂は、優れた生産性と低い環境汚染性を有し、かつ多彩な樹脂設計が可能であることから、種々の特性や機能を付与できる材料として期待が高まっている。
【0003】
一般に、放射線硬化性樹脂に機能を付与するには、その機能を発現するユニット(以下、機能的官能基と称す)を、重合性基を有する化合物に導入すればよい。しかし、放射線硬化性樹脂が低分子化合物の場合、数多くの機能的官能基は導入できない。従って、機能的官能基を導入した重合性化合物を、例えば塗料の表界面状態の改質といった機能的官能基が集合体となって機能を発現させるような目的に使用する場合、機能的官能基を導入した重合性化合物を多量に使用しなければ、その機能を十分に発現できないといった問題があった。
【0004】
これに対し、デンドリマーや多分岐ポリマーを基本骨格とし、1分子中に数多くの機能性官能基を有する放射線硬化性樹脂が開発されている。
デンドリマーや多分岐ポリマーは、中心点に存在する分岐点から延びた分子鎖がさらに分岐点を有し、中心点から遠くなるに従って末端数が増加していく。従って、末端部位に機能性官能基と重合性基を共存させることで、機能性官能基を数多く導入でき、かつ、上記目的に使用する場合にも、少量の使用量でその機能を発現できる。さらに、機能性官能基が反応性を有する場合なども、球もしくは円形の表面もしくは周辺にこれらが位置するため、直鎖状のポリマー等を担体として用いた場合に比べ、その反応性を高く保つことができる。また、デンドリマーや多分岐ポリマーを使用することで、直鎖状ポリマーに比べて低粘度化できるという点も大きな利点となる。
【0005】
末端に機能性官能基と重合性基を共存させたデンドリマーや多分岐ポリマーについては、その末端に存在するヒドロキシル基の一部に、長鎖アルキル基を有するカルボン酸等と(メタ)アクリル酸といった2種のカルボン酸を用いた段階反応により、エステル結合を介して(メタ)アクリロイル基と長鎖アルキル基等を導入した樹枝状高分子や(例えば、特許文献1参照)、末端にアミノ基を有する多分岐ポリマーに長鎖アルキル基およびヒドロキシ基を導入した後、このヒドロキシ基に、イソシアネート基とメタクリロイル基とを有する化合物を反応させた、メタクリロイル基と長鎖アルキル基とを有する多分岐ポリマーや(例えば、特許文献2参照)、末端に不飽和酸残基を有する多分岐ポリマーに2級アミンを付加させた、重合性基と光開始剤を使用せずに硬化しうるアミノ基とを有する多分岐ポリマーが知られている(例えば、特許文献3参照)。これらの方法により、末端に重合性基およびその他の置換基を有するデンドリマーや多分岐ポリマーを得ることができる。
【0006】
しかし、2種のカルボン酸を用いた段階反応では、2段目の反応時に1段目に導入したカルボン酸誘導体が脱離することがあり、目的とする機能性官能基を目的量導入することが困難であった。また、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応により重合性基を導入する方法は、原料の制約から、実質的に反応性の低いメタクリロイル基しか導入できない。また、2級アミンを用いた付加反応では、実用的な速度で反応を進めるには比較的高い温度が必要であり、使用するアミンの塩基性による不飽和酸残基同士の反応が起こるおそれがあり、反応中にゲル化する危険がある。
従って、種々の特性が期待される重合性基と、機能性官能基となる置換基を有するデンドリマーや多分岐ポリマーであるが、置換基の導入量を自由に制御でき、骨格の分解や副反応を抑制できる満足な手法は未だ提案されていなかった。
【0007】
一方、官能基を有するメルカプタン化合物を用いた多分岐構造を有するマクロモノマー(例えば、特許文献4参照)が知られており、ヒドロキシル基等の官能基を有するメルカプタン化合物の存在下で、分子の片末端にラジカル重合性基を有する直鎖状マクロモノマーおよびその他のラジカル重合性単量体をラジカル重合させ、分子の末端に上記官能基を有する重合体を得、該重合体と、エチレン性不飽和結合および上記官能基と反応性の基を併せ有する化合物とを反応させて得られる、多分岐構造を有するマクロモノマーが知られている。しかし、この手法は、メルカプト化合物を連鎖移動剤として使用する手法であり、マクロモノマー1分子中のメルカプト化合物、すなわち重合性のエチレン性不飽和結合の導入量は1〜数個であり、これを多くできる方法ではない。
【0008】
【特許文献1】
特許第2574201号明細書
【特許文献2】
特許第2927291号明細書
【特許文献3】
WO02/22700号公報
【特許文献4】
特許3087871号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、デンドリマーや多分岐ポリマー製造において、骨格の分解や副反応を抑制して、重合性基及び機能性官能基の導入量を自由に制御できる手法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、(メタ)アクリロイル基を末端に有するデンドリマーや多分岐ポリマーに、種々の機能性官能基を置換基として有するメルカプト化合物を、フッ素アニオン系試薬の存在下、共役付加させることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)の、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、メルカプト化合物を、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒とした共役付加反応により反応させることを特徴とする、多分岐ポリマーの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記記載の製造方法により製造される多分岐ポリマーを提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
多分岐ポリマー(A)
本発明でいう多分岐ポリマーとは、図1及び図2の概念図に示すような、コア部位、分岐部位、枝部位及び末端部位から構成されており、コア部位から末端に行くに従い、その分岐点及び末端の数が増えていく樹枝状の高分子もしくはオリゴマーを示す。ここで言う多分岐ポリマーには、形状の規則性が高い、いわゆる“デンドリマー”も包含される。
本発明でいう多分岐ポリマーのコア部位および分岐部位は少なくとも3つの枝が結合した構造であり、コア部位と分岐部位の区別は多分岐ポリマー合成時の出発原料の構造から定められるものとする。また、本発明でいう多分岐ポリマーにおいて枝部位とは、コア部位と分岐部位とを結合する、あるいは、隣接する分岐部位と末端部位とを結合する結合部位の総称であり、少なくとも4個の原子から構成されているものをいう。
【0014】
本発明で用いられる(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)(以下、多分岐ポリマー(A)と略す)は、上述のコア部位、分岐部位、枝部位から構成される多分岐ポリマーであり、(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマーである。本発明においては、多分岐ポリマー(A)の末端部位に(メタ)アクリロイル基を有していれば特に構造に限定はなく、多分岐ポリマーのコア部位、分岐部位、枝部位の化学組成およびそれぞれの部位の結合様式は、後述する(メタ)アクリロイル基と、置換基を有するメルカプト化合物との共役付加反応の妨げにならない限り、いかなるものであってもよい。
【0015】
多分岐ポリマー(A)としては、例えば、特開平10―505377号公報に開示されているような末端部位が(メタ)アクリロイル基である多分岐ポリマーを使用できる。
あるいは、特許2574201号明細書、WO00−56802号公報、WO99−16810号公報、タマリア(Tamalia)氏他による「アンゲヴァンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.)」、29巻(1990年)の138〜175頁や、石津氏らによる「分岐ポリマーのナノテクノロジー」(アイピーシー社刊)の123〜153頁に記載されているような、末端にカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基等の官能基を多分岐ポリマーに、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入して使用してもよい。
【0016】
末端にカルボキシル基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入するには、一分子中にカルボキシル基と反応しうるエポキシ基等と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。また、アミノ基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入する場合は、(メタ)アクリル酸誘導体を用いたアミド化反応により直接導入できる。また、末端にヒドロキシ基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入するには、(メタ)アクリル酸を用いた直接エステル化反応や、(メタ)アクリル酸エステルを用いたエステル交換反応により、多分岐ポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基を導入すればよい。また、特許第2927291号公報や特許第3008936号公報に開示されているように、一分子中にヒドロキシ基および多分岐ポリマーの末端官能基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させて、該多分岐ポリマーの末端を、より反応しやすいヒドロキシ基へと変換した後に、前記方法により、末端に(メタ)アクリロイル基を導入してもよい。
【0017】
多分岐ポリマー(A)を得る具体的態様の一例として、多分岐ポリエステルポリオールに(メタ)アクリル酸エステルをエステル交換反応させた後、末端ヒドロキシ基の一部に(メタ)アクリロイル基を導入した、多分岐ポリエステルポリオールの製造方法について述べる。
【0018】
多分岐ポリエステルポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基と少なくとも1つのカルボキシ基とを有する化合物(a)を公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させて得られるか、又は、カルボキシ基と反応して化学結合する官能基を有し、且つヒドロキシ基とは反応しない化合物(b)に、前記化合物(a)を、公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させて得られる。この合成方法は、具体的には、米国特許第3669939号明細書、米国特許第5136014号明細書、あるいは米国特許第5418308号明細書等に記載されている方法を、そのまま適用することができる。
【0019】
前記化合物(a)は、中でも、少なくとも2個のヒドロキシ基を有し、カルボキシ基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換されているポリヒドロキシモノカルボン酸が好ましい。該構造を有するポリヒドロキシモノカルボン酸は、後述の多分岐ポリエステルポリオールに(メタ)アクリロイル基を導入する、有機錫化合物を用いたエステル交換反応においても、主鎖の分解が生じるおそれがない。具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)−酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)−プロピオン酸等が挙げられる。
【0020】
一方、カルボキシ基と反応して化学結合する官能基を有し、且つヒドロキシ基とは反応しない化合物(b)に、前記化合物(a)を、公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させると、得られる多分岐ポリエステルポリオールの分子量や分子量分布を制御することができる。
カルボキシ基と反応して化学結合する官能基としては、ヒドロキシ基、グリシジル基、アミノ基等があげられ、該基を含有する化合物としては、単官能や多官能のアルコール、エポキシ化合物やアミン等が挙げられる。中でも単官能や多官能のアルコールが好ましい。
【0021】
具体的には、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−エチル−1,3−プロパンジオール](慣用名「ジトリメチロールプロパン」)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(慣用名「トリメチロールプロパン」)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ビスフェノールAや、これらのアルキレンオキシド変性体である多官能アルコール、あるいはこれらのグリシジルエーテル体;エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2,3−トリス−(3−アミノプロポキシ)プロパン、フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン等のアミン化合物や、これらのアルキレンオキシド変性体である多官能アルコールが挙げられる。これらの化合物は単独でもあるいは複数組み合わせて使用することができる。また、これらの化合物は、前記化合物(a)と混合して使用する。
【0022】
多分岐ポリエステルポリオールは、例えば、特許2574201号明細書等に開示されている多分岐ポリエステルポリオールや、Boltorn(Perstorp社)として市販されている多分岐ポリエステルポリオールを使用できる。
【0023】
前記多分岐ポリエステルポリオールに、有機錫化合物を触媒としたエステル交換反応により(メタ)アクリル酸エステルを反応させる。
通常、直接エステル化およびエステル交換反応には酸や塩基触媒を使用するが、該触媒は、共役付加反応や(メタ)アクリロイル基の重合等の副反応が生じる場合があり、一分子中のヒドロキシ基数が20を越えるような多分岐ポリエステルポリオールの末端に(メタ)アクリロイル基を導入する場合は、顕著な高分子量化が生じるおそれがある。これに対し、ジアルキルスズオキシド、ハロゲン化ジアルキルスズ、ジアルキルスズビスカルボキシレート、あるいはスタノキサンなどの有機錫化合物を触媒として使用したエステル交換反応は、これらの高分子量化、あるいは構造の乱れの原因となる共役付加反応や重合反応を抑制できるため好ましい。
【0024】
有機錫化合物としては、例えば特開2003−190819公報に記載の化合物を使用することができる。これらの有機錫化合物を使用することで、骨格中にエステル結合を有する多分岐ポリマーであっても、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換されている場合は、実質的に骨格の分解を生じさせずに、末端に(メタ)アクリロイル基を導入できる。
【0025】
メルカプト化合物
本発明では、多分岐ポリマー(A)の少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、置換基を有するメルカプト化合物を反応させることにより、種々の置換基を導入することができる。
【0026】
メルカプト化合物の有する、多分岐ポリマー(A)に導入させたい置換基は、多分岐ポリマー(A)の末端(メタ)アクリロイル基との共役付加反応の妨げにならない限り、多分岐ポリマーとしての求められる特性に応じていかなる基であってもよい。また、メルカプト化合物との反応によって多分岐ポリマー(A)1分子に導入する置換基は、全て同じ置換基であってもよいし、複数の異なる置換基であっても良い。
また、メルカプト化合物との反応による多分岐ポリマー(A)への置換基の導入量は、最大、多分岐ポリマー(A)が有する(メタ)アクリロイル基と当量分導入することができ、目的とする機能や、塗剤やコーティング剤組成物への多分岐ポリマーの添加量等により任意である。実際には、置換基を導入した多分岐ポリマー(A)は、重合固定化して使用することが多いため、(メタ)アクリロイル基はある程度残しておくことが好ましい。
【0027】
例えば、多分岐ポリマーを塗剤やコーティング剤の1成分として用い、基材との密着性向上を図る場合、メルカプト化合物との反応によって導入する置換基は基材の表面エネルギーや基材を構成する物質との相溶化パラメータ等を指標にして決めることができる。また、基材を構成する物質との共有結合、イオン性結合、水素結合や静電的な相互作用が期待できる場合は、それに応じた置換基を導入して使用することもできる。また、塗剤やコーティング剤自体の表面滑り性等を向上させる場合は、フッ素やシロキサン結合を有する置換基を使用することができる。
【0028】
メルカプト化合物との反応によって導入する置換基の具体的な例としては、例えば、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸またはその塩、アミノ基またはその塩、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基またはアリル基、ビニルエーテル基、スチリル基といった(メタ)アクリロイル基とは反応性の異なる不飽和基を有する置換基や、炭素原子数5以上の分岐を有していてもよいアルキル基、ポリアルキレンエーテル基、ポリアルキルシロキシ基等があげられる。
【0029】
このようなメルカプト化合物の具体例としては、例えば、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、オクタデカンチオール、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプト酢酸、システイン、メルカプトスクシン酸、2−メルカプトニコチン酸、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプトエチルアミン、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトブタノール、2−メルカプトエタノール、アリルメルカプタン、ペンタフルオロベンゼンチオール、3−クロロプロパンチオール、2−クロロエチルメルカプタン、8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクチルメルカプタン、トリフルオロエタンチオール、2−トリエトキシシリルエチルメルカプタン、2―トリメトキシシリルエチルメルカプタン、3−トリエトキシシリルプロピルメルカプタン、ω−メルカプトポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリ(ポリ(ジメチルシロキシ))エチルメルカプタン等があげられる。
【0030】
置換基として、光重合開始機能を有する基、帯電防止機能を有する基、難燃機能を有する基、紫外線吸収機能を有する基や抗菌機能を有する基等を有するメルカプト化合物を使用し、多分岐ポリマー(A)に導入すれば、得られた多分岐ポリマーを、光重合開始剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤や抗菌剤等として使用することもできる。
更に、多分岐ポリマー(A)中に(メタ)アクリロイル基が残るように上記基の導入量を加減すれば、コーティング剤や塗剤中に添加後重合させ、固定化することができる。従って、通常低分子化合物として混合した場合のブリード等の問題を回避することができる。
特に光重合開始機能を有する基等、機能性官能基が反応性を有する場合などは、多分岐ポリマー分子の球もしくは円形の表面もしくは周辺にこれらが位置するため、直鎖状のポリマー等を担体として用いた場合に比べ、その反応性を高く保つことができる。従って、通常の線状ポリマーに導入したものと比べ、反応性が高くなる。このように、多分岐ポリマーの形状に由来した高い機能が発現可能となる。
【0031】
メルカプト化合物との反応によって導入する置換基として、光重合開始機能を有する基、帯電防止機能を有する基、難燃機能を有する基、紫外線吸収機能を有する基や抗菌機能を有する基等を有するメルカプト化合物としては、例えば、2−メルカプトチオキサントン、4−メルカプトチオキサントン、10−ブチル−2−メルカプトアクリドン、4−メルカプトベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メルカプトベンゾフェノン、3−メルカプトベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル―5’―メチルフェニル)―5―メルカプトベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)―5―メルカプトベンゾトリアゾール、1H−ベンゾイミダゾール―2―チオール等があげられる。
一般に容易に入手できるメルカプト化合物には限りがあるが、ヒドロキシ基等を有する化合物を原料としてソール・パタイ編 ザ・ケミストリー・オブ・ザ・チオール・グループ・パート1(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ 1974年刊)164〜269頁に記載の方法で容易にメルカプト化合物に誘導体化できる。
【0032】
フッ素アニオン系化合物(B)
本発明では、多分岐ポリマー(A)の少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、置換基を有するメルカプト化合物を反応させる際に、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒として使用することで、置換基の導入量を自由に制御でき、骨格の分解や副反応を抑制できることを見出した。
フッ素アニオン系化合物(B)とは、反応の生じる場においてフッ素アニオンとして振る舞いうるフッ素を提供しうる化合物である。
【0033】
例えば、無機塩を溶解しうるような多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合、無機フッ化物がフッ素アニオン系化合物(B)として機能する。このような無機フッ化物としては、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物やフッ化アンモニウム等があげられる。中でも、有機溶媒への溶解度が高いフッ化カリウムが好ましい。また、無機フッ化物を溶解しうる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒やジグライム等があげられる。
【0034】
また、無機塩を溶解し得ない多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合は、クラウンエーテルや四級アンモニウム塩等を助剤として使用することで反応を進めることができる。
クラウンエーテルは前記無機フッ化物と併用して使用する。クラウンエーテルとしては、例えば、12−クラウン−4(リチウム)、15−クラウン−5(ナトリウム)、18―クラウン―6(カリウム)やこれらのベンゾ類縁体などを使用することができる。これらのクラウンエーテルを使用する場合は、使用する無機フッ化物のカチオンに合わせてその環の大きさを決めることが好ましい。(上述例示の括弧内に好適な使用条件のカチオンを記載した)。
【0035】
四級アンモニウム塩を使用する場合は、アニオンとしてフッ素を有するフッ化四級アンモニウム塩を直接使用することもできるし、他のアニオンを有する四級アンモニウム塩と上述の無機フッ化物を併用することもできる。四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の低分子四級アンモニウム塩があげられる。
【0036】
また、これらの四級アンモニウム塩はポリマー型のものも使用可能であり、使用に際しての組み合わせは上述の低分子四級アンモニウムと同様である。すなわち、アニオンとしてフッ素を有する四級アンモニウム塩ポリマーを直接使用することもできるし、他のアニオンを有する四級アンモニウム塩ポリマーと無機フッ化物を併用することもできる。これらの目的に使用できる四級アンモニウム塩ポリマーとしては、例えば、ロームアンドハース社製の「アンバーリストA26」やダウケミカル社製の「ダウウェクス(Dowex)MSA−1」等の四級アンモニウム塩ポリマーがあげられる。これらの四級アンモニウム塩ポリマーは、アニオンがフッ素以外の塩素等であることが多く、通常は無機フッ化物を併用するが、「カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー」 第57巻 2629頁(1979年)に記載されているような方法でアニオンをフッ素に交換して使用してもよい。
【0037】
無機塩を溶解し得ない多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合として、その他、「ケミストリー・レター」 1979年 755頁に記載されているアルミナやシリカゲル等に無機フッ化物を吸着させ、フッ素アニオン系化合物(B)として使用することができる。
【0038】
本発明で使用するフッ素アニオン系化合物(B)は、通常、使用するメルカプト化合物に対して1〜20モル%の触媒量で機能する。しかし、カルボキシル基等の酸性の官能基やフッ素アニオン系化合物(B)と相互作用を示す官能基を有するメルカプト化合物、あるいは多分岐ポリマー(A)を使用する場合は、その相互作用を示す官能基の量に相当するフッ素アニオン系化合物(B)をさらに必要とする場合もあり、使用するメルカプト化合物、多分岐ポリマー(A)やフッ素アニオン系化合物(B)等によって、その必要量が変わる。例えば、3−メルカプトプロピオン酸をメルカプト化合物として用い、フッ素アニオン系化合物(B)としてジメチルホルムアミド溶媒・フッ化カリウム系を使用すれば、触媒量のフッ化カリウムの使用で反応が進行するが、テトラヒドロフランを溶媒として、フッ素アニオン系化合物(B)としてテトラブチルアンモニウムフロリドを用いた場合は、3−メルカプトプロピオン酸に対して当量以上(1.2当量程度)のテトラブチルアンモニウムフロリドが必要となる。
【0039】
本発明における多分岐ポリマー(A)の末端に存在する(メタ)アクリロイル基に対するメルカプト化合物の共役付加反応は、メルカプト化合物の構造やフッ素アニオン系化合物(B)の使用量にも依存するが、室温から40℃程度で数時間〜数十時間で終了する。多分岐ポリマー(A)の有する形状を保持する場合の反応温度は、反応性の高い多分岐ポリマーの末端の(メタ)アクリロイル基の高温での重合を避ける為に、室温から40℃程度までが好ましい。しかし、意図的に部分的な重合を起こさせて多分岐ポリマーの分子量の増大を図る場合はこの限りではない。
【0040】
反応により生成した多分岐ポリマーの単離および精製方法は、反応に用いられた溶媒やフッ素アニオン系化合物(B)の種類、付加反応により導入された置換基の種類や、多分岐ポリマーを構成するコア部位、分岐部位、枝部位の化学構造により、また、その後の多分岐ポリマーの使用方法に応じて任意である。
例えば、フッ素アニオン系化合物(B)に四級アンモニウム塩ポリマーを併用した場合は、濾過等でこれを除き、溶媒を留去することで、目的とする多分岐ポリマーが得られる。フッ素アニオン系化合物(B)として無機フッ化と四級アンモニウム塩を用いた場合は、生成物として、少量の四級アンモニウム塩が混在していてもかまわない場合は濾過等で無機フッ化物を除き、溶媒を留去する。一方、四級アンモニウム塩を除きたい場合は、適切な溶媒による希釈後に水洗したり、水中で沈殿させたりして、これを除去できる。
フッ素アニオン系化合物(B)として無機フッ化物を用い、ジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させた場合は、適切な溶媒による希釈後に水洗したり、水中で沈殿させたりして、生成物を得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0042】
<ゲル浸透クロマトグラフィー>
以下の実施例および比較例において、多分岐ポリエステルポリオール(A)のエステル、および生成した多分岐ポリエステルの分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)によって測定した。測定条件は下記の通りである。
装置:東ソー(株)製「HPLC8010」
カラム:Shodex KF802×2+KF803+KF804
溶離液:THF 1.0ml/min
【0043】
<核磁気共鳴スペクトル>
以下の実施例において、新規化合物である、多分岐ポリマーの構造確認の為に核磁気共鳴スペクトル(以下、「NMR」と略す。)を下記条件で測定した。
装置:日本電子製「LAMBDA300」(300MHz)
参照物質:テトラメチルシラン(0ppm)
【0044】
<合成例1>〔Cl(Sn(CH3)2O)2Sn(CH3)2Clの合成〕
「工業化学雑誌、第73巻、1010頁(1970年)」に記載のとおりに合成を行い、生成物を元素分析値により同定した。
元素分析値 Sn64.7%(64.8%)、Cl12.7%(12.9%)
(括弧内は理論値)
【0045】
<合成例2>〔アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)〕
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10部、<合成例1>で得たCl(Sn(CH3)2O)2Sn(CH3)2Cl0.25部、エチルアクリレート100部、およびヒドロキノン0.05部を加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20部となるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のエチルアクリレートを加えながら20時間反応させた。
反応終了後、エチルアクリレートを減圧下で留去し、残留物を酢酸エチル70部に溶解し、50℃の温水30部で3回洗浄して触媒を抽出した。その後、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20部で4回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液20部で1回、水20部で2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045部を加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)13部を得た。得られた多分岐ポリエステルの質量平均分子量は2570、数平均分子量は1980であり、多分岐ポリエステルポリオールへのアクリロイル基導入量は5.55mmol/gであった。
【0046】
<実施例1>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、テトラヒドロフラン250部、フッ化カリウム16部、テトラブチルアンモニウムブロミド9部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてオクタデシル基を有するオクタデカンチオール79.4部およびテトラヒドロフラン50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、オクタデカンチオールが完全に消費されるまで室温で撹拌した。反応終了後、減圧下でテトラヒドロフランを留去した後に、酢酸エチル500部で希釈し、水100部で3回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基を有する多分岐ポリエステル(C−1)155部を得た。
【0047】
得られた多分岐ポリエステル(C−1)の質量平均分子量は4860、数平均分子量は3870であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基とオクタデシル基の存在比は1:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ0.88(三重線)、δ1.26(広幅)、δ1.60(三重線)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.78(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.81(二重線)、δ6.11(多重線)、δ6.39(二重線)
【0048】
<実施例2>
<実施例1>におけるテトラブチルアンモニウムブロミドおよびオクタデカンチオール添加量を、それぞれ1.8部および15.9部に変えた以外は実施例1と同様に行った。
本実施例において得られた、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基を有する多分岐ポリエステル(C−2)は114部であった。
得られた多分岐ポリエステル(C−2)の質量平均分子量は3160、数平均分子量は2390であった。また、精製後の生成物の1H nmrによるアクリロイル基とオクタデシル基の存在比は9:1であり、仕込み比と一致した。
【0049】
<実施例3>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、ジメチルホルムアミド250部、フッ化カリウム8.5部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する3−メルカプトプロピオン酸11.8部およびジメチルホルムアミド50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、3−メルカプトプロピオン酸が完全に消費されるまで室温で撹拌した。
反応終了後、酢酸エチル1000部で希釈し、水200部で5回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する多分岐ポリエステル(C−3)100部を得た。
【0050】
得られた多分岐ポリエステル(C−3)の質量平均分子量は2730、数平均分子量は2110であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基とカルボキシプロピオニル基の存在比は4:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ1.26(広幅)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.68(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.80(二重線)、δ6.08(多重線)、δ6.37(二重線)、δ10.7(広幅)
【0051】
<実施例4>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、テトラヒドロフラン250部、テトラブチルアンモニウムフロリド18部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてオクタデシル基を有するオクタデカンチオール15.9部、置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する3−メルカプトプロピオン酸5.9部およびテトラヒドロフラン50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、オクタデカンチオールおよび3−メルカプトプロピオン酸が完全に消費されるまで室温で撹拌した。反応終了後、減圧下でテトラヒドロフランを留去した後に、酢酸エチル500部で希釈し、水100部で3回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基とカルボキシプロピオニル基を有する多分岐ポリエステル(C−4)110部を得た。
【0052】
得られた多分岐ポリエステル(C−4)の質量平均分子量は3250、数平均分子量は2510であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基、オクタデシル基およびカルボキシプロピオニル基の存在比は8:1:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ0.88(三重線)、δ1.26(広幅)、δ1.60(三重線)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.78(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.81(二重線)、δ6.11(多重線)、δ6.39(二重線)、δ10.7(広幅)
【0053】
(比較例1)
滴下ロート、窒素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10部を加え、減圧下(0.13kPa)、撹拌しながら、100℃で2時間、続いて140℃で1時間加熱した。加熱終了後、窒素で常圧まで戻し、滴下ロートから、メタンスルホン酸0.2部を加え、さらに、ステアリン酸5.3部とキシレン40部とからなる溶液を加えた。添加後、デカンターへの留出液量が1時間あたり50〜60部となるように加熱量を調節し、系内のステアリン酸が無くなるまで、加熱を続けた。
【0054】
反応終了後、減圧下、キシレンを留去した。冷却後、得られた混合物にアクリル酸20部、ヒドロキノン0.05部及びトルエン70部を加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり50〜60部となるように加熱量を調節し、デカンターへの脱水量が1.3部になるまで加熱を続けた。反応中に反応容器中にゲル物が生成した。反応終了後、混合物を冷却し、トルエン50部で希釈して濾過によりゲル物を除いた。濾液を5%水酸化ナトリウム水溶液10部で2回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液10部で1回、水10部で2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.002部を加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、ステアリル基及びアクリロイル基を有する多分岐ポリエステル5部を得た。得られた多分岐ポリエステルの質量平均分子量は15200、質量平均分子量は3330であり、ステアリル基とアクリロイル基導入比率は12:88でステアリン酸仕込量から計算される導入比率20:80から大きくずれていた。
【0055】
実施例1〜4、および比較例から明らかなように、本発明の(メタ)アクリロイル基及び種々の置換基を有する多分岐ポリマーの製法に従い、(メタ)アクリロイル基を有する多分岐ポリマーに、置換基を有するメルカプト化合物を反応させて置換基を導入する場合は、反応条件が穏和な為、ゲル化や多分岐ポリマー分子鎖の切断はほとんど起こらない。また、メルカプト化合物の共役付加反応により導入される置換基の量は、その反応が定量的に生じる為に、実用的な範囲で充分に制御できる。
【0056】
【発明の効果】
本発明においては、塗料、コーティング材料、粘接着剤等に種々の機能を付与できる(メタ)アクリロイル基と種々の置換基を有する多分岐ポリマーを合成する際に、穏和な温度条件で種々の置換基を定量的に導入することができる為に、反応性の高い(メタ)アクリロイル基の反応中の重合を抑制し、複数種の置換基を同時にも導入でき、かつ、導入量を正確にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する多分岐ポリマーを模式的に示した図である。
【図2】本発明で使用する多分岐ポリマーを模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 コア部位
2 分岐部位
3 枝部位
4 末端部位
【産業上の利用分野】
本発明は塗装・コーティング材料、粘着剤、接着剤、フィルム、シート、成型品、繊維、医農薬や電子材料、医療用途等、広範な用途に有用な、重合性基及び機能的官能基を有し、高度に分岐した構造を有する多分岐ポリマーの製造方法、及び、該製造方法により得られる多分岐ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気・電子分野の発展に伴い、種々の特性や機能を有する材料の開発や、塗装やコーティング等の手段によって機能を付与する方法の開発が進んでいる。塗装やコーティング材料の一つである放射線硬化性樹脂は、優れた生産性と低い環境汚染性を有し、かつ多彩な樹脂設計が可能であることから、種々の特性や機能を付与できる材料として期待が高まっている。
【0003】
一般に、放射線硬化性樹脂に機能を付与するには、その機能を発現するユニット(以下、機能的官能基と称す)を、重合性基を有する化合物に導入すればよい。しかし、放射線硬化性樹脂が低分子化合物の場合、数多くの機能的官能基は導入できない。従って、機能的官能基を導入した重合性化合物を、例えば塗料の表界面状態の改質といった機能的官能基が集合体となって機能を発現させるような目的に使用する場合、機能的官能基を導入した重合性化合物を多量に使用しなければ、その機能を十分に発現できないといった問題があった。
【0004】
これに対し、デンドリマーや多分岐ポリマーを基本骨格とし、1分子中に数多くの機能性官能基を有する放射線硬化性樹脂が開発されている。
デンドリマーや多分岐ポリマーは、中心点に存在する分岐点から延びた分子鎖がさらに分岐点を有し、中心点から遠くなるに従って末端数が増加していく。従って、末端部位に機能性官能基と重合性基を共存させることで、機能性官能基を数多く導入でき、かつ、上記目的に使用する場合にも、少量の使用量でその機能を発現できる。さらに、機能性官能基が反応性を有する場合なども、球もしくは円形の表面もしくは周辺にこれらが位置するため、直鎖状のポリマー等を担体として用いた場合に比べ、その反応性を高く保つことができる。また、デンドリマーや多分岐ポリマーを使用することで、直鎖状ポリマーに比べて低粘度化できるという点も大きな利点となる。
【0005】
末端に機能性官能基と重合性基を共存させたデンドリマーや多分岐ポリマーについては、その末端に存在するヒドロキシル基の一部に、長鎖アルキル基を有するカルボン酸等と(メタ)アクリル酸といった2種のカルボン酸を用いた段階反応により、エステル結合を介して(メタ)アクリロイル基と長鎖アルキル基等を導入した樹枝状高分子や(例えば、特許文献1参照)、末端にアミノ基を有する多分岐ポリマーに長鎖アルキル基およびヒドロキシ基を導入した後、このヒドロキシ基に、イソシアネート基とメタクリロイル基とを有する化合物を反応させた、メタクリロイル基と長鎖アルキル基とを有する多分岐ポリマーや(例えば、特許文献2参照)、末端に不飽和酸残基を有する多分岐ポリマーに2級アミンを付加させた、重合性基と光開始剤を使用せずに硬化しうるアミノ基とを有する多分岐ポリマーが知られている(例えば、特許文献3参照)。これらの方法により、末端に重合性基およびその他の置換基を有するデンドリマーや多分岐ポリマーを得ることができる。
【0006】
しかし、2種のカルボン酸を用いた段階反応では、2段目の反応時に1段目に導入したカルボン酸誘導体が脱離することがあり、目的とする機能性官能基を目的量導入することが困難であった。また、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応により重合性基を導入する方法は、原料の制約から、実質的に反応性の低いメタクリロイル基しか導入できない。また、2級アミンを用いた付加反応では、実用的な速度で反応を進めるには比較的高い温度が必要であり、使用するアミンの塩基性による不飽和酸残基同士の反応が起こるおそれがあり、反応中にゲル化する危険がある。
従って、種々の特性が期待される重合性基と、機能性官能基となる置換基を有するデンドリマーや多分岐ポリマーであるが、置換基の導入量を自由に制御でき、骨格の分解や副反応を抑制できる満足な手法は未だ提案されていなかった。
【0007】
一方、官能基を有するメルカプタン化合物を用いた多分岐構造を有するマクロモノマー(例えば、特許文献4参照)が知られており、ヒドロキシル基等の官能基を有するメルカプタン化合物の存在下で、分子の片末端にラジカル重合性基を有する直鎖状マクロモノマーおよびその他のラジカル重合性単量体をラジカル重合させ、分子の末端に上記官能基を有する重合体を得、該重合体と、エチレン性不飽和結合および上記官能基と反応性の基を併せ有する化合物とを反応させて得られる、多分岐構造を有するマクロモノマーが知られている。しかし、この手法は、メルカプト化合物を連鎖移動剤として使用する手法であり、マクロモノマー1分子中のメルカプト化合物、すなわち重合性のエチレン性不飽和結合の導入量は1〜数個であり、これを多くできる方法ではない。
【0008】
【特許文献1】
特許第2574201号明細書
【特許文献2】
特許第2927291号明細書
【特許文献3】
WO02/22700号公報
【特許文献4】
特許3087871号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、デンドリマーや多分岐ポリマー製造において、骨格の分解や副反応を抑制して、重合性基及び機能性官能基の導入量を自由に制御できる手法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、(メタ)アクリロイル基を末端に有するデンドリマーや多分岐ポリマーに、種々の機能性官能基を置換基として有するメルカプト化合物を、フッ素アニオン系試薬の存在下、共役付加させることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)の、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、メルカプト化合物を、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒とした共役付加反応により反応させることを特徴とする、多分岐ポリマーの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記記載の製造方法により製造される多分岐ポリマーを提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
多分岐ポリマー(A)
本発明でいう多分岐ポリマーとは、図1及び図2の概念図に示すような、コア部位、分岐部位、枝部位及び末端部位から構成されており、コア部位から末端に行くに従い、その分岐点及び末端の数が増えていく樹枝状の高分子もしくはオリゴマーを示す。ここで言う多分岐ポリマーには、形状の規則性が高い、いわゆる“デンドリマー”も包含される。
本発明でいう多分岐ポリマーのコア部位および分岐部位は少なくとも3つの枝が結合した構造であり、コア部位と分岐部位の区別は多分岐ポリマー合成時の出発原料の構造から定められるものとする。また、本発明でいう多分岐ポリマーにおいて枝部位とは、コア部位と分岐部位とを結合する、あるいは、隣接する分岐部位と末端部位とを結合する結合部位の総称であり、少なくとも4個の原子から構成されているものをいう。
【0014】
本発明で用いられる(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)(以下、多分岐ポリマー(A)と略す)は、上述のコア部位、分岐部位、枝部位から構成される多分岐ポリマーであり、(メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマーである。本発明においては、多分岐ポリマー(A)の末端部位に(メタ)アクリロイル基を有していれば特に構造に限定はなく、多分岐ポリマーのコア部位、分岐部位、枝部位の化学組成およびそれぞれの部位の結合様式は、後述する(メタ)アクリロイル基と、置換基を有するメルカプト化合物との共役付加反応の妨げにならない限り、いかなるものであってもよい。
【0015】
多分岐ポリマー(A)としては、例えば、特開平10―505377号公報に開示されているような末端部位が(メタ)アクリロイル基である多分岐ポリマーを使用できる。
あるいは、特許2574201号明細書、WO00−56802号公報、WO99−16810号公報、タマリア(Tamalia)氏他による「アンゲヴァンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.)」、29巻(1990年)の138〜175頁や、石津氏らによる「分岐ポリマーのナノテクノロジー」(アイピーシー社刊)の123〜153頁に記載されているような、末端にカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基等の官能基を多分岐ポリマーに、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入して使用してもよい。
【0016】
末端にカルボキシル基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入するには、一分子中にカルボキシル基と反応しうるエポキシ基等と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。また、アミノ基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入する場合は、(メタ)アクリル酸誘導体を用いたアミド化反応により直接導入できる。また、末端にヒドロキシ基を有する多分岐ポリマーに(メタ)アクリロイル基を導入するには、(メタ)アクリル酸を用いた直接エステル化反応や、(メタ)アクリル酸エステルを用いたエステル交換反応により、多分岐ポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基を導入すればよい。また、特許第2927291号公報や特許第3008936号公報に開示されているように、一分子中にヒドロキシ基および多分岐ポリマーの末端官能基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させて、該多分岐ポリマーの末端を、より反応しやすいヒドロキシ基へと変換した後に、前記方法により、末端に(メタ)アクリロイル基を導入してもよい。
【0017】
多分岐ポリマー(A)を得る具体的態様の一例として、多分岐ポリエステルポリオールに(メタ)アクリル酸エステルをエステル交換反応させた後、末端ヒドロキシ基の一部に(メタ)アクリロイル基を導入した、多分岐ポリエステルポリオールの製造方法について述べる。
【0018】
多分岐ポリエステルポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基と少なくとも1つのカルボキシ基とを有する化合物(a)を公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させて得られるか、又は、カルボキシ基と反応して化学結合する官能基を有し、且つヒドロキシ基とは反応しない化合物(b)に、前記化合物(a)を、公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させて得られる。この合成方法は、具体的には、米国特許第3669939号明細書、米国特許第5136014号明細書、あるいは米国特許第5418308号明細書等に記載されている方法を、そのまま適用することができる。
【0019】
前記化合物(a)は、中でも、少なくとも2個のヒドロキシ基を有し、カルボキシ基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換されているポリヒドロキシモノカルボン酸が好ましい。該構造を有するポリヒドロキシモノカルボン酸は、後述の多分岐ポリエステルポリオールに(メタ)アクリロイル基を導入する、有機錫化合物を用いたエステル交換反応においても、主鎖の分解が生じるおそれがない。具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)−酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)−プロピオン酸等が挙げられる。
【0020】
一方、カルボキシ基と反応して化学結合する官能基を有し、且つヒドロキシ基とは反応しない化合物(b)に、前記化合物(a)を、公知のエステル化触媒の存在下に脱水重縮合させると、得られる多分岐ポリエステルポリオールの分子量や分子量分布を制御することができる。
カルボキシ基と反応して化学結合する官能基としては、ヒドロキシ基、グリシジル基、アミノ基等があげられ、該基を含有する化合物としては、単官能や多官能のアルコール、エポキシ化合物やアミン等が挙げられる。中でも単官能や多官能のアルコールが好ましい。
【0021】
具体的には、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−エチル−1,3−プロパンジオール](慣用名「ジトリメチロールプロパン」)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(慣用名「トリメチロールプロパン」)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ビスフェノールAや、これらのアルキレンオキシド変性体である多官能アルコール、あるいはこれらのグリシジルエーテル体;エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2,3−トリス−(3−アミノプロポキシ)プロパン、フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン等のアミン化合物や、これらのアルキレンオキシド変性体である多官能アルコールが挙げられる。これらの化合物は単独でもあるいは複数組み合わせて使用することができる。また、これらの化合物は、前記化合物(a)と混合して使用する。
【0022】
多分岐ポリエステルポリオールは、例えば、特許2574201号明細書等に開示されている多分岐ポリエステルポリオールや、Boltorn(Perstorp社)として市販されている多分岐ポリエステルポリオールを使用できる。
【0023】
前記多分岐ポリエステルポリオールに、有機錫化合物を触媒としたエステル交換反応により(メタ)アクリル酸エステルを反応させる。
通常、直接エステル化およびエステル交換反応には酸や塩基触媒を使用するが、該触媒は、共役付加反応や(メタ)アクリロイル基の重合等の副反応が生じる場合があり、一分子中のヒドロキシ基数が20を越えるような多分岐ポリエステルポリオールの末端に(メタ)アクリロイル基を導入する場合は、顕著な高分子量化が生じるおそれがある。これに対し、ジアルキルスズオキシド、ハロゲン化ジアルキルスズ、ジアルキルスズビスカルボキシレート、あるいはスタノキサンなどの有機錫化合物を触媒として使用したエステル交換反応は、これらの高分子量化、あるいは構造の乱れの原因となる共役付加反応や重合反応を抑制できるため好ましい。
【0024】
有機錫化合物としては、例えば特開2003−190819公報に記載の化合物を使用することができる。これらの有機錫化合物を使用することで、骨格中にエステル結合を有する多分岐ポリマーであっても、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換されている場合は、実質的に骨格の分解を生じさせずに、末端に(メタ)アクリロイル基を導入できる。
【0025】
メルカプト化合物
本発明では、多分岐ポリマー(A)の少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、置換基を有するメルカプト化合物を反応させることにより、種々の置換基を導入することができる。
【0026】
メルカプト化合物の有する、多分岐ポリマー(A)に導入させたい置換基は、多分岐ポリマー(A)の末端(メタ)アクリロイル基との共役付加反応の妨げにならない限り、多分岐ポリマーとしての求められる特性に応じていかなる基であってもよい。また、メルカプト化合物との反応によって多分岐ポリマー(A)1分子に導入する置換基は、全て同じ置換基であってもよいし、複数の異なる置換基であっても良い。
また、メルカプト化合物との反応による多分岐ポリマー(A)への置換基の導入量は、最大、多分岐ポリマー(A)が有する(メタ)アクリロイル基と当量分導入することができ、目的とする機能や、塗剤やコーティング剤組成物への多分岐ポリマーの添加量等により任意である。実際には、置換基を導入した多分岐ポリマー(A)は、重合固定化して使用することが多いため、(メタ)アクリロイル基はある程度残しておくことが好ましい。
【0027】
例えば、多分岐ポリマーを塗剤やコーティング剤の1成分として用い、基材との密着性向上を図る場合、メルカプト化合物との反応によって導入する置換基は基材の表面エネルギーや基材を構成する物質との相溶化パラメータ等を指標にして決めることができる。また、基材を構成する物質との共有結合、イオン性結合、水素結合や静電的な相互作用が期待できる場合は、それに応じた置換基を導入して使用することもできる。また、塗剤やコーティング剤自体の表面滑り性等を向上させる場合は、フッ素やシロキサン結合を有する置換基を使用することができる。
【0028】
メルカプト化合物との反応によって導入する置換基の具体的な例としては、例えば、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸またはその塩、アミノ基またはその塩、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基またはアリル基、ビニルエーテル基、スチリル基といった(メタ)アクリロイル基とは反応性の異なる不飽和基を有する置換基や、炭素原子数5以上の分岐を有していてもよいアルキル基、ポリアルキレンエーテル基、ポリアルキルシロキシ基等があげられる。
【0029】
このようなメルカプト化合物の具体例としては、例えば、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、オクタデカンチオール、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプト酢酸、システイン、メルカプトスクシン酸、2−メルカプトニコチン酸、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプトエチルアミン、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトブタノール、2−メルカプトエタノール、アリルメルカプタン、ペンタフルオロベンゼンチオール、3−クロロプロパンチオール、2−クロロエチルメルカプタン、8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクチルメルカプタン、トリフルオロエタンチオール、2−トリエトキシシリルエチルメルカプタン、2―トリメトキシシリルエチルメルカプタン、3−トリエトキシシリルプロピルメルカプタン、ω−メルカプトポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリ(ポリ(ジメチルシロキシ))エチルメルカプタン等があげられる。
【0030】
置換基として、光重合開始機能を有する基、帯電防止機能を有する基、難燃機能を有する基、紫外線吸収機能を有する基や抗菌機能を有する基等を有するメルカプト化合物を使用し、多分岐ポリマー(A)に導入すれば、得られた多分岐ポリマーを、光重合開始剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤や抗菌剤等として使用することもできる。
更に、多分岐ポリマー(A)中に(メタ)アクリロイル基が残るように上記基の導入量を加減すれば、コーティング剤や塗剤中に添加後重合させ、固定化することができる。従って、通常低分子化合物として混合した場合のブリード等の問題を回避することができる。
特に光重合開始機能を有する基等、機能性官能基が反応性を有する場合などは、多分岐ポリマー分子の球もしくは円形の表面もしくは周辺にこれらが位置するため、直鎖状のポリマー等を担体として用いた場合に比べ、その反応性を高く保つことができる。従って、通常の線状ポリマーに導入したものと比べ、反応性が高くなる。このように、多分岐ポリマーの形状に由来した高い機能が発現可能となる。
【0031】
メルカプト化合物との反応によって導入する置換基として、光重合開始機能を有する基、帯電防止機能を有する基、難燃機能を有する基、紫外線吸収機能を有する基や抗菌機能を有する基等を有するメルカプト化合物としては、例えば、2−メルカプトチオキサントン、4−メルカプトチオキサントン、10−ブチル−2−メルカプトアクリドン、4−メルカプトベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メルカプトベンゾフェノン、3−メルカプトベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル―5’―メチルフェニル)―5―メルカプトベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)―5―メルカプトベンゾトリアゾール、1H−ベンゾイミダゾール―2―チオール等があげられる。
一般に容易に入手できるメルカプト化合物には限りがあるが、ヒドロキシ基等を有する化合物を原料としてソール・パタイ編 ザ・ケミストリー・オブ・ザ・チオール・グループ・パート1(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ 1974年刊)164〜269頁に記載の方法で容易にメルカプト化合物に誘導体化できる。
【0032】
フッ素アニオン系化合物(B)
本発明では、多分岐ポリマー(A)の少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、置換基を有するメルカプト化合物を反応させる際に、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒として使用することで、置換基の導入量を自由に制御でき、骨格の分解や副反応を抑制できることを見出した。
フッ素アニオン系化合物(B)とは、反応の生じる場においてフッ素アニオンとして振る舞いうるフッ素を提供しうる化合物である。
【0033】
例えば、無機塩を溶解しうるような多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合、無機フッ化物がフッ素アニオン系化合物(B)として機能する。このような無機フッ化物としては、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物やフッ化アンモニウム等があげられる。中でも、有機溶媒への溶解度が高いフッ化カリウムが好ましい。また、無機フッ化物を溶解しうる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒やジグライム等があげられる。
【0034】
また、無機塩を溶解し得ない多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合は、クラウンエーテルや四級アンモニウム塩等を助剤として使用することで反応を進めることができる。
クラウンエーテルは前記無機フッ化物と併用して使用する。クラウンエーテルとしては、例えば、12−クラウン−4(リチウム)、15−クラウン−5(ナトリウム)、18―クラウン―6(カリウム)やこれらのベンゾ類縁体などを使用することができる。これらのクラウンエーテルを使用する場合は、使用する無機フッ化物のカチオンに合わせてその環の大きさを決めることが好ましい。(上述例示の括弧内に好適な使用条件のカチオンを記載した)。
【0035】
四級アンモニウム塩を使用する場合は、アニオンとしてフッ素を有するフッ化四級アンモニウム塩を直接使用することもできるし、他のアニオンを有する四級アンモニウム塩と上述の無機フッ化物を併用することもできる。四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の低分子四級アンモニウム塩があげられる。
【0036】
また、これらの四級アンモニウム塩はポリマー型のものも使用可能であり、使用に際しての組み合わせは上述の低分子四級アンモニウムと同様である。すなわち、アニオンとしてフッ素を有する四級アンモニウム塩ポリマーを直接使用することもできるし、他のアニオンを有する四級アンモニウム塩ポリマーと無機フッ化物を併用することもできる。これらの目的に使用できる四級アンモニウム塩ポリマーとしては、例えば、ロームアンドハース社製の「アンバーリストA26」やダウケミカル社製の「ダウウェクス(Dowex)MSA−1」等の四級アンモニウム塩ポリマーがあげられる。これらの四級アンモニウム塩ポリマーは、アニオンがフッ素以外の塩素等であることが多く、通常は無機フッ化物を併用するが、「カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー」 第57巻 2629頁(1979年)に記載されているような方法でアニオンをフッ素に交換して使用してもよい。
【0037】
無機塩を溶解し得ない多分岐ポリマー(A)や溶媒を反応に使用する場合として、その他、「ケミストリー・レター」 1979年 755頁に記載されているアルミナやシリカゲル等に無機フッ化物を吸着させ、フッ素アニオン系化合物(B)として使用することができる。
【0038】
本発明で使用するフッ素アニオン系化合物(B)は、通常、使用するメルカプト化合物に対して1〜20モル%の触媒量で機能する。しかし、カルボキシル基等の酸性の官能基やフッ素アニオン系化合物(B)と相互作用を示す官能基を有するメルカプト化合物、あるいは多分岐ポリマー(A)を使用する場合は、その相互作用を示す官能基の量に相当するフッ素アニオン系化合物(B)をさらに必要とする場合もあり、使用するメルカプト化合物、多分岐ポリマー(A)やフッ素アニオン系化合物(B)等によって、その必要量が変わる。例えば、3−メルカプトプロピオン酸をメルカプト化合物として用い、フッ素アニオン系化合物(B)としてジメチルホルムアミド溶媒・フッ化カリウム系を使用すれば、触媒量のフッ化カリウムの使用で反応が進行するが、テトラヒドロフランを溶媒として、フッ素アニオン系化合物(B)としてテトラブチルアンモニウムフロリドを用いた場合は、3−メルカプトプロピオン酸に対して当量以上(1.2当量程度)のテトラブチルアンモニウムフロリドが必要となる。
【0039】
本発明における多分岐ポリマー(A)の末端に存在する(メタ)アクリロイル基に対するメルカプト化合物の共役付加反応は、メルカプト化合物の構造やフッ素アニオン系化合物(B)の使用量にも依存するが、室温から40℃程度で数時間〜数十時間で終了する。多分岐ポリマー(A)の有する形状を保持する場合の反応温度は、反応性の高い多分岐ポリマーの末端の(メタ)アクリロイル基の高温での重合を避ける為に、室温から40℃程度までが好ましい。しかし、意図的に部分的な重合を起こさせて多分岐ポリマーの分子量の増大を図る場合はこの限りではない。
【0040】
反応により生成した多分岐ポリマーの単離および精製方法は、反応に用いられた溶媒やフッ素アニオン系化合物(B)の種類、付加反応により導入された置換基の種類や、多分岐ポリマーを構成するコア部位、分岐部位、枝部位の化学構造により、また、その後の多分岐ポリマーの使用方法に応じて任意である。
例えば、フッ素アニオン系化合物(B)に四級アンモニウム塩ポリマーを併用した場合は、濾過等でこれを除き、溶媒を留去することで、目的とする多分岐ポリマーが得られる。フッ素アニオン系化合物(B)として無機フッ化と四級アンモニウム塩を用いた場合は、生成物として、少量の四級アンモニウム塩が混在していてもかまわない場合は濾過等で無機フッ化物を除き、溶媒を留去する。一方、四級アンモニウム塩を除きたい場合は、適切な溶媒による希釈後に水洗したり、水中で沈殿させたりして、これを除去できる。
フッ素アニオン系化合物(B)として無機フッ化物を用い、ジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させた場合は、適切な溶媒による希釈後に水洗したり、水中で沈殿させたりして、生成物を得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0042】
<ゲル浸透クロマトグラフィー>
以下の実施例および比較例において、多分岐ポリエステルポリオール(A)のエステル、および生成した多分岐ポリエステルの分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)によって測定した。測定条件は下記の通りである。
装置:東ソー(株)製「HPLC8010」
カラム:Shodex KF802×2+KF803+KF804
溶離液:THF 1.0ml/min
【0043】
<核磁気共鳴スペクトル>
以下の実施例において、新規化合物である、多分岐ポリマーの構造確認の為に核磁気共鳴スペクトル(以下、「NMR」と略す。)を下記条件で測定した。
装置:日本電子製「LAMBDA300」(300MHz)
参照物質:テトラメチルシラン(0ppm)
【0044】
<合成例1>〔Cl(Sn(CH3)2O)2Sn(CH3)2Clの合成〕
「工業化学雑誌、第73巻、1010頁(1970年)」に記載のとおりに合成を行い、生成物を元素分析値により同定した。
元素分析値 Sn64.7%(64.8%)、Cl12.7%(12.9%)
(括弧内は理論値)
【0045】
<合成例2>〔アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)〕
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10部、<合成例1>で得たCl(Sn(CH3)2O)2Sn(CH3)2Cl0.25部、エチルアクリレート100部、およびヒドロキノン0.05部を加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20部となるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のエチルアクリレートを加えながら20時間反応させた。
反応終了後、エチルアクリレートを減圧下で留去し、残留物を酢酸エチル70部に溶解し、50℃の温水30部で3回洗浄して触媒を抽出した。その後、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20部で4回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液20部で1回、水20部で2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045部を加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)13部を得た。得られた多分岐ポリエステルの質量平均分子量は2570、数平均分子量は1980であり、多分岐ポリエステルポリオールへのアクリロイル基導入量は5.55mmol/gであった。
【0046】
<実施例1>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、テトラヒドロフラン250部、フッ化カリウム16部、テトラブチルアンモニウムブロミド9部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてオクタデシル基を有するオクタデカンチオール79.4部およびテトラヒドロフラン50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、オクタデカンチオールが完全に消費されるまで室温で撹拌した。反応終了後、減圧下でテトラヒドロフランを留去した後に、酢酸エチル500部で希釈し、水100部で3回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基を有する多分岐ポリエステル(C−1)155部を得た。
【0047】
得られた多分岐ポリエステル(C−1)の質量平均分子量は4860、数平均分子量は3870であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基とオクタデシル基の存在比は1:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ0.88(三重線)、δ1.26(広幅)、δ1.60(三重線)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.78(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.81(二重線)、δ6.11(多重線)、δ6.39(二重線)
【0048】
<実施例2>
<実施例1>におけるテトラブチルアンモニウムブロミドおよびオクタデカンチオール添加量を、それぞれ1.8部および15.9部に変えた以外は実施例1と同様に行った。
本実施例において得られた、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基を有する多分岐ポリエステル(C−2)は114部であった。
得られた多分岐ポリエステル(C−2)の質量平均分子量は3160、数平均分子量は2390であった。また、精製後の生成物の1H nmrによるアクリロイル基とオクタデシル基の存在比は9:1であり、仕込み比と一致した。
【0049】
<実施例3>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、ジメチルホルムアミド250部、フッ化カリウム8.5部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する3−メルカプトプロピオン酸11.8部およびジメチルホルムアミド50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、3−メルカプトプロピオン酸が完全に消費されるまで室温で撹拌した。
反応終了後、酢酸エチル1000部で希釈し、水200部で5回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する多分岐ポリエステル(C−3)100部を得た。
【0050】
得られた多分岐ポリエステル(C−3)の質量平均分子量は2730、数平均分子量は2110であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基とカルボキシプロピオニル基の存在比は4:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ1.26(広幅)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.68(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.80(二重線)、δ6.08(多重線)、δ6.37(二重線)、δ10.7(広幅)
【0051】
<実施例4>
温度計、窒素導入管、滴下ロートおよび攪拌機を備えた反応容器に、<合成例2>で得られた「アクリロイル基を有する多分岐ポリエステル(A−1)」100部、テトラヒドロフラン250部、テトラブチルアンモニウムフロリド18部を仕込み、室温下、撹拌しながら、置換基としてオクタデシル基を有するオクタデカンチオール15.9部、置換基としてカルボキシプロピオニル基を有する3−メルカプトプロピオン酸5.9部およびテトラヒドロフラン50部からなる溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、ガスクロマトグラフィーで追跡しながら、オクタデカンチオールおよび3−メルカプトプロピオン酸が完全に消費されるまで室温で撹拌した。反応終了後、減圧下でテトラヒドロフランを留去した後に、酢酸エチル500部で希釈し、水100部で3回洗浄した。その後、酢酸エチルを減圧下で留去し、アクリロイル基および置換基としてオクタデシル基とカルボキシプロピオニル基を有する多分岐ポリエステル(C−4)110部を得た。
【0052】
得られた多分岐ポリエステル(C−4)の質量平均分子量は3250、数平均分子量は2510であった。また、生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、1H nmrを測定した。アクリロイル基、オクタデシル基およびカルボキシプロピオニル基の存在比は8:1:1であり、仕込み比と一致した。
1H nmr(CDCl3):δ0.88(三重線)、δ1.26(広幅)、δ1.60(三重線)、δ2.5−2.6(広幅−多重線)、δ2.78(三重線)δ3.63(広幅)、δ4.3(広幅−一重線)、δ5.81(二重線)、δ6.11(多重線)、δ6.39(二重線)、δ10.7(広幅)
【0053】
(比較例1)
滴下ロート、窒素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10部を加え、減圧下(0.13kPa)、撹拌しながら、100℃で2時間、続いて140℃で1時間加熱した。加熱終了後、窒素で常圧まで戻し、滴下ロートから、メタンスルホン酸0.2部を加え、さらに、ステアリン酸5.3部とキシレン40部とからなる溶液を加えた。添加後、デカンターへの留出液量が1時間あたり50〜60部となるように加熱量を調節し、系内のステアリン酸が無くなるまで、加熱を続けた。
【0054】
反応終了後、減圧下、キシレンを留去した。冷却後、得られた混合物にアクリル酸20部、ヒドロキノン0.05部及びトルエン70部を加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり50〜60部となるように加熱量を調節し、デカンターへの脱水量が1.3部になるまで加熱を続けた。反応中に反応容器中にゲル物が生成した。反応終了後、混合物を冷却し、トルエン50部で希釈して濾過によりゲル物を除いた。濾液を5%水酸化ナトリウム水溶液10部で2回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液10部で1回、水10部で2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.002部を加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、ステアリル基及びアクリロイル基を有する多分岐ポリエステル5部を得た。得られた多分岐ポリエステルの質量平均分子量は15200、質量平均分子量は3330であり、ステアリル基とアクリロイル基導入比率は12:88でステアリン酸仕込量から計算される導入比率20:80から大きくずれていた。
【0055】
実施例1〜4、および比較例から明らかなように、本発明の(メタ)アクリロイル基及び種々の置換基を有する多分岐ポリマーの製法に従い、(メタ)アクリロイル基を有する多分岐ポリマーに、置換基を有するメルカプト化合物を反応させて置換基を導入する場合は、反応条件が穏和な為、ゲル化や多分岐ポリマー分子鎖の切断はほとんど起こらない。また、メルカプト化合物の共役付加反応により導入される置換基の量は、その反応が定量的に生じる為に、実用的な範囲で充分に制御できる。
【0056】
【発明の効果】
本発明においては、塗料、コーティング材料、粘接着剤等に種々の機能を付与できる(メタ)アクリロイル基と種々の置換基を有する多分岐ポリマーを合成する際に、穏和な温度条件で種々の置換基を定量的に導入することができる為に、反応性の高い(メタ)アクリロイル基の反応中の重合を抑制し、複数種の置換基を同時にも導入でき、かつ、導入量を正確にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する多分岐ポリマーを模式的に示した図である。
【図2】本発明で使用する多分岐ポリマーを模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 コア部位
2 分岐部位
3 枝部位
4 末端部位
Claims (8)
- (メタ)アクリロイル基を含む少なくとも8個の末端部位を有する多分岐ポリマー(A)の、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基に、メルカプト化合物を、フッ素アニオン系化合物(B)を触媒とした共役付加反応により反応させることを特徴とする、多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記メルカプト化合物が、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸またはその塩、アミノ基またはその塩、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、アリル基、ビニルエーテル基、スチリル基、炭素原子数5〜25の分岐を有していてもよいアルキル基、ポリアルキレンエーテル基、及びポリ(アルキルシロキシ)基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有する、請求項1記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記フッ素アニオン系化合物(B)が、無機フッ化物又はフッ化4級アンモニウム塩である、請求項1記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記多分岐ポリマー(A)が、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子を置換基として持たない分子鎖からなる多分岐ポリエステルポリマーである請求項1記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記多分岐ポリマー(A)が、少なくとも2つのヒドロキシ基と少なくとも1つのカルボキシ基とを有する化合物(a)を縮重合させて得られるか、又は、カルボキシ基と反応して化学結合する官能基を有し、且つヒドロキシ基とは反応しない化合物(b)に、前記化合物(a)を縮重合させて得られる多分岐ポリエステルポリマーの末端ヒドロキシ基の一部に、(メタ)アクリロイル基を導入したものである、請求項1に記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記化合物(a)が、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)−酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−吉草酸、又はα,α−ビス(ヒドロキシ)−プロピオン酸であり、前記化合物(b)が、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジペンタエリトリトール、ペンタエリトリトール、アルコキシル化ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロパン、又は、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノールである請求項5記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 前記(メタ)アクリロイル基が、有機錫触媒を使用したエステル交換反応によって導入されたものである、請求項4又は5に記載の多分岐ポリマーの製造方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載の製造方法により製造される多分岐ポリマー。
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