JP2005047781A - ルツボ及びルツボを用いた単結晶の育成方法 - Google Patents

ルツボ及びルツボを用いた単結晶の育成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 原料の溶融時に、種結晶の底部を十分に冷却することができるルツボ及びこれを用いた単結晶の育成方法を提供すること。
【解決手段】 光学部品材料を溶融して冷却することにより光学部品材料の種結晶の結晶面に沿って単結晶を育成するためのルツボであって、光学部品材料を原料として収容する原料収容部と、種結晶を収容するための種結晶収容部1Eとを有し、種結晶収容部1Eの底部が、種結晶Sの端部と合致した形状を有するルツボ1により、種結晶収容部1Eの底面1Nと種結晶Sの端面S1との間に生じる空隙が十分に小さくされ、ルツボ1を介して種結晶Sの底部を冷却しながら原料を溶融する時に、種結晶Sの底部が十分に冷却される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、フッ化カルシウム等の光学部品材料を溶融して冷却することにより単結晶を育成するためのルツボ及びルツボを用いた単結晶の製造方法に関するものである。
従来、フッ化カルシウムを溶融して冷却することにより単結晶を育成するためのルツボとして、種結晶の結晶面に沿ってフッ化カルシウムを単結晶に育成するように構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
この種のルツボは、フッ化カルシウムの原料が投入される大径の原料収容部と、フッ化カルシウムの種結晶が収容される小径の種結晶収容部とがテーパ状のコーン面を介し連続して形成されている。
上記ルツボを用いてフッ化カルシウムの単結晶を育成する場合、種結晶収容部に種結晶、原料収納部にフッ化カルシウムの原料を収容したルツボを結晶成長炉内に配置し、結晶成長炉内を真空にすると共に温度勾配を形成し、ルツボを昇降させて種結晶の一部及び原料を溶融して冷却することにより単結晶が育成される。ここで、フッ化カルシウムの原料の溶融時に、種結晶の一部のみが溶融するように温度をコントロールすることは困難であり、種結晶の全部が溶融する場合もある。ところが、種結晶の全部が溶融すると、目的の結晶方位の単結晶を得ることが困難となる。即ち目的の単結晶の歩留まりが大幅に低下する。このため、ルツボは、支持棒を介して冷却棒に接続されており、原料の溶融時に、冷却棒によって支持棒を介してルツボが冷却され、これにより種結晶の底部が冷却されるようになっている。
特開平10−265296号公報
しかし、前述した従来の単結晶の育成方法は、以下に示す課題を有していた。
即ち、上記単結晶の育成方法に使用されるルツボの種結晶収容部は、先端の尖ったドリルで形成されるのが一般的であるため、種結晶収容部の底面が円錐状となる。一方、種結晶の底面は平坦面となっているのが一般的である。このため、種結晶を種結晶収容部に収容すると、種結晶の底面と種結晶収容部の底面との間に空隙ができる。その結果、原料の溶融時に、種結晶の底部が十分に冷却されず、種結晶の全体が溶融し、目的の結晶方位の単結晶を得ることが困難になるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、原料の溶融時に、種結晶の底部を十分に冷却することができるルツボ及びこれを用いた単結晶の育成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、光学部品材料を溶融して冷却することにより光学部品材料の種結晶の結晶面に沿って単結晶を育成するためのルツボであって、光学部品材料を原料として収容する原料収容部と、種結晶を収容するための種結晶収容部とを有し、種結晶収容部の底部が、種結晶の端部と合致した形状を有することを特徴とする。
このルツボによれば、種結晶が種結晶収容部に収容されると、種結晶収容部の底部が種結晶の端部と合致した形状を有するため、種結晶収容部の底部を構成する面と種結晶の端部表面との間に生じる空隙を十分に小さくすることができる。このため、このルツボの原料収容部に更に光学部品材料を原料として収容し、ルツボを介して種結晶の底部を冷却しながら原料を溶融する時に、種結晶の底部が十分に冷却される。従って、種結晶の全体が溶融されることが十分に防止される。
具体的には、上記ルツボにおいて、種結晶の端部が、端面と、端面に連続する側面とを有し、種結晶収容部の底部が、底面と、底面に連続し種結晶の側面に合致する壁面とを有し、端面が平坦面であり、底面が平坦面である。
また本発明は、上記ルツボを用いて光学部品材料の単結晶を育成する単結晶の育成方法において、ルツボの種結晶収容部に、種結晶として、種結晶収容部の底部と合致した形状の端部を有する種結晶を収容する種結晶収容工程と、原料収容部に光学部品用材料を原料として収容する原料収容工程と、ルツボ内の原料を溶融して冷却することにより種結晶の結晶面に沿って光学部品材料の単結晶を育成する育成工程とを含むことを特徴とする。
この単結晶の育成方法によれば、ルツボの種結晶収容部に種結晶が収容されると、種結晶収容部の底部が種結晶の端部と合致した形状を有するため、種結晶収容部の底部を構成する面と種結晶の端部表面との間に生じる空隙を十分に小さくすることができる。このため、このルツボの原料収容部に更に光学部品材料を原料として収容し、ルツボを介して種結晶の底部を冷却しながら原料を溶融する時に、種結晶の底部が十分に冷却される。従って、種結晶の全体が溶融されることが十分に防止される。
本発明に係るルツボ及びルツボを用いた単結晶の育成方法によれば、種結晶収容部に種結晶を、原料収容部に原料を収容した場合において、ルツボを介して種結晶の底部を冷却しながら原料を溶融する時に、種結晶の底部が十分に冷却される。従って、種結晶の全体が溶融されることが十分に防止される。
以下、図面を参照して本発明に係るルツボの実施形態を説明する。なお、本実施形態では、種結晶として、円柱状で且つ平坦な端面を有する種結晶の使用に適したルツボについて説明する。また種結晶がフッ化カルシウムからなるものとして説明する。参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係るルツボを備えた真空VB炉の概略構造を示す模式図、図2は図1に示した一実施形態に係るルツボの構造を示す断面図、図3は、種結晶収容部の底部を示す拡大図である。
図1に示すように、本実施形態に係るルツボ1は、垂直ブリッジマン(以下、VBと略記する)法による単結晶育成装置としての真空VB炉2内において、ヒータ2Aの内側に配置され、シャフト2Bを介して極微速度で昇降されることにより、フッ化カルシウム(CaF2)の原料Mを溶融して冷却し、これをフッ化カルシウム(CaF2)の単結晶からなる種結晶(シード)Sの例えば(1,1,1)方位の結晶面に沿って単結晶に育成するためのものである。
真空VB炉2の内部は、真空ポンプ2Cによって10-4Pa以下に減圧され、ヒータ2Aによって例えば1400〜1500℃前後に加熱される。このヒータ2Aの加熱によって種結晶Sの全体が溶融するのを防止するため、真空VB炉2のシャフト2Bは、冷却水循環路を構成するように構成されている。
すなわち、シャフト2Bは、内管2B1の上端が外管2B2の上端より後退した2重管で構成されており、その上端部にはキャップ状の伝熱部材2Dが嵌合固定されている。そして、この伝熱部材2Dが後述するルツボ1の底部材1Cの中央部に接続されることにより、種結晶Sの下部を強制冷却するように構成されている。
ここで、図2に示すように、本実施形態のルツボ1は、ルツボ本体1Aと、ルツボ本体1Aの開口部を覆う蓋部材1Bと、ルツボ本体1Bの下部に固定される底部材1Cとを備えて構成されている。ルツボ本体1Aは、耐熱性があり、かつ、内面の平滑度を高められる材料として、高純度カーボン材(C)で構成されており、その内面が光沢を有するガラス状カーボン(GC)でコーティングされている。
ルツボ本体1Aには、フッ化カルシウム(CaF2)の原料M(図1参照)が収容される原料収容部1Dが形成されている。原料収容部1Dは、円柱状の壁面1Hと、壁面1Hの底部材1C側に連続して形成される凹曲面1Jと、凹曲面1Jの底部材1C側に連続して形成されるテーパ状(ロート状)のコーン面1Fとを有している。従って、コーン面1Fは原料収容部1Dの底を構成する。
また、ルツボ本体1Aから底部材1Cに亘ってその中心部には、円柱状の種結晶S(図1参照)を収容する種結晶収容部1Eが形成されている。種結晶収容部1Eは、種結晶Sと合致した形状を有する。特に、種結晶収容部1Eの底部が、種結晶Sの端部と合致した形状を有している。
種結晶収容部1Eの底部をこのように種結晶Sの端部と合致した形状とするのは、種結晶Sを種結晶収容部1Eに収容した場合に、種結晶収容部1Eの底部を構成する面と種結晶Sの端部表面との間の空隙を十分に小さくするためである。
具体的には、種結晶Sの端部表面は、平坦な端面S1と、端面S1に連続し端面S1に垂直な円柱状の側面S2とを有し、種結晶収容部1Eの底部を構成する面は、平坦な底面1Nと、底面1Nに連続し底面1Nに垂直な円柱状の壁面1Kとを有している。そして、壁面1Kの径は、種結晶Sの直径とほぼ一致している。なお、種結晶収容部の壁面1Kは、原料収容部1Dの壁面1Hよりも小径となっている。
なお、コーン面1Fと種結晶収容部1Eの壁面1Kとの境界部分には凸曲面1Lが形成され、この凸曲面1Lを介してコーン面1Fと種結晶収容部1Eの壁面1Kとが滑らかに連続している。
一方、蓋部材1Bおよび底部材1Cも耐熱性のある高純度カーボン材で構成されている。そして、底部材1Cの下面中央部には、真空VB炉2のシャフト2Bの上端部に固定された伝熱部材2D(図1参照)を嵌合固定するための接続筒部1C1が突設されている。
上記ルツボ1において、コーン面1Fのコーン角度θが小さ過ぎると、原料収容部1D内で育成されるフッ化カルシウム(CaF2)の結晶内に残留応力や歪みが発生し、これに起因して多結晶(異相)が発生し易い。一方、コーン面1Fのコーン角度θが大き過ぎると、フッ化カルシウム(CaF2)の単結晶の育成が阻害され易い。そこで、コーン面1Fのコーン角度θは、95°〜150°であることが好ましく、これらの範囲のうち120°〜130°であることがより好ましい。
また、凹曲面1Jおよび凸曲面1Lは、曲率半径が小さ過ぎて角張っていると、原料収容部1D内で溶融されたフッ化カルシウム(CaF2)が冷却により結晶化する際、角張
った凹曲面1Jおよび凸曲面1Lの部分が核となって多結晶(異相)が発生し易い。加えて、フッ化カルシウム(CaF2)が冷却により収縮する際、これらの角張った凹曲面1
Jおよび凸曲面1Lにフッ化カルシウム(CaF2)が付着して結晶内に残留応力や歪み
が発生し、これに起因して多結晶(異相)が発生し易い。
そこで、凹曲面1Jおよび凸曲面1Lの曲率半径は、原料収容部1Dの壁面1H間の内径(例えば250mm)の1/10以上の大きな曲率半径に設定されている。例えば、凹曲面1Jの曲率半径は60mm程度に設定され、凸曲面1Lの曲率半径は50mm程度に設定されている。
さらに、原料収容部1Dの壁面1Hやコーン面1Fなどの表面粗さが粗いと、原料収容部1D内で溶融されたフッ化カルシウム(CaF2)が冷却により結晶化する際、壁面1
Hやコーン面1Fなどの微小な凹凸が核となって多結晶(異相)が発生し易い。加えて、フッ化カルシウム(CaF2)が冷却により収縮する際、壁面1Hやコーン面1Fにフッ
化カルシウム(CaF2)が付着して結晶内に残留応力や歪みが発生し、これに起因して
多結晶(異相)が発生し易い。
そこで、上記ルツボ1において、ルツボ本体1Aの原料収容部1Dの壁面1Hから凹曲面1J、コーン面1F、凸曲面1Lを経て種結晶収容部1Eの壁面1Kにわたるルツボ内面は、例えば、最大高さ法による表面粗さがRmax3.2s以下に仕上げられている。すなわち、高純度カーボン材(C)からなるルツボ本体1Aの内面が例えばRmax6.4s程度に仕上げられており、その表面がガラス状カーボン(GC)によりコーティングされてRmax3.2s程度に仕上げられている。
そして、このようにRmax3.2s以下の表面粗さを有するガラス状カーボン(GC)で構成されたルツボ内面は、水滴との接触角が少なくとも100°以下の例えば90°となっている。
次に、上記ルツボ1を用いた光学部品材料の単結晶の育成方法について説明する。
まずルツボ1を用意し、蓋部材1Bを取り外して、ルツボ1の種結晶収容部1Eにフッ化カルシウムからなる種結晶Sを収容する(種結晶収容工程)。ここで、種結晶Sとしては、形状が円柱状であってその端面が平坦なものであり、その直径が種結晶収容部1Eの壁面1Kの径とほぼ一致したものを用いる。このような種結晶Sを種結晶収容部1Eに収容すると、少なくとも種結晶収容部1Eの底部が種結晶Sの端部と合致するようになる。このため、種結晶Sの側面S2と種結晶収容部1Eの壁面1Kとの間、及び、種結晶Sの端面S1と種結晶収容部1Eの底面1Nとの間に生じる空隙を十分に小さくすることができる。
種結晶Sを種結晶収容部1Eに収容した後は、フッ化カルシウムの原料Mを原料収容部1Dに収容する(原料収容工程)。
続いて、蓋部材1Bでルツボ本体1Aの原料収容部1Dを閉じる。
次に、真空VB炉2内を10-4Pa以下に減圧し、ヒータ2Aを1400〜1500℃前後に加熱する。そして、シャフト2Bにより10mm/h程度の微速度でルツボ1を上昇させ、10時間ほど上昇位置に保持する。その際、種結晶Sの全体が溶融すると、目的の結晶方位の単結晶を得ることが困難になるため、シャフト2B内を内管2B1から外管2B2へ循環する冷却水により伝熱部材2Dを介して種結晶Sの下部を強制冷却する。このとき、種結晶Sの側面S2と種結晶収容部1Eの壁面1Kとの間、及び種結晶収容部1Eの底面1Nと種結晶Sの底面S1との間に空隙ができていると、この空隙は、底部材1Cを構成するカーボンに比べて熱伝導率が低いため、種結晶収容部1Eの底部の冷却が十分に行われなくなるが、上述したように、ルツボ1においては、種結晶Sの側面S2と種結晶収容部1Eの壁面1Kとの間、及び種結晶収容部1Eの底面1Nと種結晶Sの底面S1との間の空隙が十分に小さくされている。従って、種結晶Sの底部が十分に冷却され、種結晶Sの全体が溶融することが十分に防止される。
フッ化カルシウムの原料Mを溶融した後は、ルツボ1を、シャフト2Bにより1.5mm/h以下の例えば1.0mm/h程度の極微速度で下降させ、5時間ほど真空VB炉2内の下降位置に保持する。これにより、溶融したフッ化カルシウム(CaF2)の原料Mを冷却して種結晶Sの例えば(1,1,1)方位の結晶面に沿って単結晶に育成する(育成工程)。
その後、ルツボ1内の溶融したフッ化カルシウム(CaF2)は、クエンチ(熱衝撃に
よる割れ)を防止するため、真空VB炉2のヒータ2Aをオン・オフ制御することにより、70℃/h以下の例えば30℃/h程度の冷却速度で冷却される。
ここで、ルツボ1においては、ルツボ本体1Aの原料収容部1Dの壁面1Hから凹曲面1J、コーン面1F、凸曲面1Lを経て種結晶収容部1Eの壁面1Kにわたるルツボ内面が例えばRmax3.2s程度の平滑面に仕上げられている。このため、原料収容部1D内で溶融されたフッ化カルシウム(CaF2)が冷却により種結晶Sの(1,1,1)方位の結晶面に沿って結晶化する際、多結晶の原因となる核がルツボ内面に発生するのが抑制される。
また、フッ化カルシウム(CaF2)が冷却により収縮する際にルツボ内面から容易に
離れるため、フッ化カルシウム(CaF2)の結晶内に残留応力や歪みが発生するのが抑
制される。その結果、フッ化カルシウム(CaF2)の単結晶が容易に育成される。
また、ルツボ1内の溶融したフッ化カルシウム(CaF2)は、70℃/h以下の例え
ば30℃/h程度の冷却速度で冷却されるため、クエンチ(熱衝撃による割れ)が防止されて良好な単結晶に育成される。
加えて、溶融したフッ化カルシウム(CaF2)を冷却して単結晶に育成するためにル
ツボ1を極微速度で下降させる速度、すなわち育成速度が1.5mm/h以下の例えば1.0mm/h程度とされているため、育成される単結晶の結晶方位は、図4に示すように安定する。なお、育成速度を1.5mm/h以上の2mm/hとした場合には、図5に示すように結晶方位が分散して安定しないことが判明した。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ルツボ1の種結晶収容部1Eの壁面1Kが円柱状となっているが、壁面1Kの形状は、角柱状の種結晶を収容する場合には角柱状であってもよい。
また種結晶収容部1Eの底面は平坦面となっているが、本発明の種結晶収容部の底面は平坦面に限られるものではない。種結晶Sの端面S1が円錐状の場合には、種結晶収容部1Eの底面1Nも円錐状とされる。要するに、種結晶収容部1Eの底面1Nは、種結晶Sを種結晶収容部1Eに収容した場合に、種結晶Sの端面S1と種結晶収容部1Eの底面1Nとの間の空隙を十分に小さくすることができるような形状であればよい。
更に、上記実施形態では、種結晶がフッ化カルシウムである場合について説明しているが、本発明のルツボ及びこれを用いた単結晶の育成方法は、種結晶がフッ化カルシウム以外の他の光学部品材料(例えばフッ化バリウム、フッ化マグネシウムである場合にも、適用可能である。
以下、実施例及び比較例により、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず図1に示すルツボ1を用意した。ルツボ本体1A、蓋部材1B及び底部材1Cは全て高純度カーボン(日本カーボン製高純度カーボン)で構成した。種結晶収容部1Eの壁面1Kは円柱状とし、その内径は20mmとした。また種結晶収容部1Eの底面は壁面1Kに垂直な平坦面とした。また原料収容部の壁面も円柱状とし、その内径は250mmとした。凹曲面1Jの曲率半径は60mmとし、凸曲面の曲率半径は50mmとした。更に原料収容部1Dの内面、種結晶収容部の内面には、含浸層厚さ1.0mmのガラス状カーボン(日清紡製ガラス状カーボンコート)をコーティングし、水滴との接触角が90°となるようにした。
このルツボ1において、蓋部材1Bを取り外し、ルツボ1の種結晶収容部1Eに、直径10mm、長さ10cmの円柱状の種結晶Sを収容した。ここで、用いる種結晶Sの材質はフッ化カルシウムとし、種結晶Sの形状は、その端面が平坦なものとした。
次いで、フッ化カルシウムの原料Mを原料収容部1Dに収容した。続いて、蓋部材1Bでルツボ本体1Aの原料収容部1Dを閉じた。
次に、真空VB炉2内を10-4Pa以下に減圧し、ヒータ2Aを1400〜1500℃前後に加熱し、シャフト2Bにより10mm/h程度の微速度でルツボ1を上昇させ、10時間ほど上昇位置に保持した。その際、シャフト2B内を内管2B1から外管2B2へ循環する冷却水により伝熱部材2Dを介して種結晶Sの下部を強制冷却した。
フッ化カルシウムの原料Mを溶融した後は、ルツボ1を、シャフト2Bにより1.0mm/h程度の極微速度で下降させ、5時間ほど真空VB炉2内の下降位置に保持した。こうして、溶融したフッ化カルシウム(CaF2)の原料Mを冷却して種結晶Sの(1,1,1)方位の結晶面に沿って単結晶に育成した。
その後、ルツボ1内の溶融したフッ化カルシウム(CaF2)は、真空VB炉2のヒータ2Aをオン・オフ制御することにより30℃/h程度の冷却速度で冷却した。
(比較例1)
種結晶収容部1Eの底面を円錐状とした以外は実施例1と同様のルツボを用意し、このルツボを用いて実施例1と同様にしてフッ化かルシウムを単結晶に育成した。
(結晶品質の評価)
実施例1及び比較例1で得られたフッ化カルシウムの単結晶について、Edmund Industrial Optics社製Polar Film(色:グレー、面積15インチ×8.5インチ、厚さ0.29mm)を2枚用いてフィルム面同士が平行になるように設置し、そのフィルム間に結晶を入れて、一方のフィルムの外側に光源を配置し、他方のフィルムの外側から結晶を観察し、結晶の角度や位置を変えて単結晶でない部分を多結晶体として計測した。最終的に多結晶部分の体積を計算し、結晶全体体積と多結晶体積の比率を多結晶体の発生率とした。その結果、実施例1の単結晶においては多結晶体の発生率が30%以下であったのに対し、比較例1の単結晶においては多結晶体の発生率が30%を超えていた。このことから、実施例1の単結晶の方が比較例1の単結晶よりも結晶品質が優れていることが分かった。このことから、種結晶収容部の底面と種結晶収容部の底面との間の空隙をなくすることにより、良好な結晶品質の単結晶が得られることが実証された。
本発明の一実施形態に係るルツボを備えた真空VB炉の概略構造を示す模式図である。 図1に示した一実施形態に係るルツボの構造を示す断面図である。 図2の種結晶収容部の底部を示す拡大図である。 図1に示したルツボを真空VB炉2内で極微速度で下降させる育成速度を1.0mm/hとした場合に得られた結晶中の結晶方位の分布状況を示す図である。 図1に示したルツボを真空VB炉2内で極微速度で下降させる育成速度を2.0mm/hとした場合に得られた結晶中の結晶方位の分布状況を示す図である。
符号の説明
1 ルツボ
1A ルツボ本体
1B 蓋部材
1C 底部材
1D 原料収容部
1E 種結晶収容部
1F コーン面
1H 原料収容部の壁面
1J 凹曲面
1K 種結晶収容部の壁面
1L 凸曲面
1N 底面
2 真空VB炉
2A ヒータ
2B シャフト
2C 真空ポンプ
2D 伝熱部材
M フッ化カルシウム(CaF2)の原料
S フッ化カルシウム(CaF2)の種結晶
S1 種結晶の端面

Claims (3)

  1. 光学部品材料を溶融して冷却することにより光学部品材料の種結晶の結晶面に沿って単結晶を育成するためのルツボであって、
    前記光学部品材料を原料として収容する原料収容部と、
    前記種結晶を収容するための種結晶収容部とを有し、
    前記種結晶収容部の底部が、前記種結晶の端部と合致した形状を有することを特徴とするルツボ。
  2. 前記種結晶の端部が、端面と、前記端面に連続する側面とを有し、
    前記種結晶収容部の底部が、底面と、前記底面に連続し前記種結晶の側面に合致する壁面とによって構成され、
    前記端面が平坦面であり、前記底面が平坦面であることを特徴とする請求項1に記載のルツボ。
  3. 請求項1又は2に記載のルツボを用いて光学部品材料の単結晶を育成する単結晶の育成方法であって、
    前記ルツボの前記種結晶収容部に、前記種結晶として、前記種結晶収容部の底部と合致した形状の端部を有する種結晶を収容する種結晶収容工程と、
    前記原料収容部に前記光学部品用材料を原料として収容する原料収容工程と、
    前記ルツボ内の前記原料を溶融して冷却することにより前記種結晶の結晶面に沿って前記光学部品材料の単結晶を育成する育成工程と、
    を含むことを特徴とする単結晶の育成方法。


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