JP2005047718A - 半導体素子用単結晶サファイア基板とその製造方法及び半導体発光素子 - Google Patents
半導体素子用単結晶サファイア基板とその製造方法及び半導体発光素子 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】熱リン酸等でウェットエッチングことによりエッチピット付きの単結晶サファイア基板を作製する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子用単結晶サファイア基板とその製造方法及び半導体発光素子に関する物であり、特にその半導体発光素子が青色LED、紫外LED、白色LED等のLED素子を含むGaN系半導体結晶からなるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
LEDにおいては、発光層で生じた光をどれだけ効率良く外界に取り出せるか(所謂、光取り出し効率)は重要な問題である。そのために従来は、発光層から上方に向かった光については、外界へ障害物とならないよう、上部電極を透明電極としたり、発光層から下方に向かった光については、反射層を設けて上方に返すなど、種々の工夫が施されている。
【0003】
発光層から上下の方向に発せられた光については、上記のように電極の透明化や反射層を設けることによって、外界への光取り出し効率を向上させることが可能であるが、発光層から横方向に向かって生じた光の内、屈折率差で規定される全反射角以内で側壁に達する光は外部に放射され得るが、その他の多くの光は、例えば側壁で反射を繰り返すなどして、素子内で吸収され減衰し消滅するのみである。このような横方向の光は、上下のクラッド層あるいは基板(サファイア基板)と上側のクラッド層、あるいは基板と上部電極(更には素子外部のコーティング物質など)によって閉じ込められ、横方向に伝播する光である。該横方向に伝播する光は、発光層で生じる全光量のうちの多くを占めており、全体の60%に達する場合もある。
【0004】
この様な横方向に伝搬する光を効率良く外界に取り出す手段として、半導体層を成長させるための第一の結晶層表面に凹凸が加工され、その上に、前記結晶層とは異なる屈折率を有する半導体材料からなる第二の結晶層が、バッファ層を介してまたは直接的に、該凹凸を埋め込んで成長しており、その上に、発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造とする半導体発光素子が提案されている
(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0005】
同様の目的のために、発光領域層から基板に入射する光を散乱させる光散乱層を設け、発光領域層から基板に入射する光が全反射する割合を減少させる半導体発光素子も提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、上記の方法で横方向に伝搬し、発光素子の側面から出た光を有効に利用して、高効率の白色LEDを作成する方法として半導体発光素子を囲んでリフレクター部を透明樹脂で作製し、そのリフレクター部には半導体発光素子からの発光によって励起されて発光する蛍光物質を分散する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−280611
【0008】
【特許文献2】
特開2003−60227
【0009】
【特許文献3】
特開2003−142737
【0010】
【非特許文献1】
日経エレクトロニクス2003年3月31日号p128〜P133
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記凹凸の形成方法はサファイア基板の主面にフォトレジストを形成し、フォトリソグラフィによってフォトレジストに開口を形成し、フォトレジストをマスクとしてその下側のサファイア基板本体を選択的にエッチングして凹凸を形成した後、フォトレジストを除去する方法であり、このエッチングはイオンビームエッチングあるいは、反応性イオンエッチングのようなドライエッチングによる方法が主であった。
【0012】
しかし、イオンビームエッチングあるいは、反応性イオンエッチングは加工速度が非常に遅く、さらに一度に処理できる枚数にも限りがあるという問題があり量産には適さなかった。また、マスクを使ってドライエッチングを行うため、エッチング中にマスク自体もエッチングされるため、マスクの端部が不規則に波打ち、ドライエツチングによって形成された凹凸の端部も波打つ結果となり、その後の窒化物半導体のエピ成長に悪影響を与えるという問題が有った。
【0013】
本発明の課題は、上記問題を解決するため、サファイア基板の主面に効率良く量産に適した方法で凹凸を作製した半導体発光素子用サファイア基板およびその製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、EFG法で作成した単結晶サファイア基板を熱リン酸等でウェットエッチングすることにより、基板の主面上に複数のエッチピットを作成して半導体素子用単結晶サファイア基板を構成したものである。このようにウェットエッチングにより結晶本来の性質によって出来るエッチピットを利用することにより、端面が波打つという不具合の無い凹凸を形成することができ、この基板を用いてLED等の半導体発光素子を作製することにより、エッチピットによって基板側に向かう光を散乱させ、光取り出し効率の良い半導体発光素子を作製することができる。
【0015】
また、前記エッチピットの一辺の長さは300μm以下であり、その形状は角錐状であることが好ましい。また、エッチピットの密度は103個/cm2以上、1010個/cm2以下であることが好ましい。さらに、前記エッチピットを主面に垂直な方向から見た時の底辺の少なくとも一辺がA軸に平行であるかまたはA軸に垂直あるいは、少なくとも一辺がM軸に平行であるかまたはM軸に垂直であることが好ましい。
【0016】
前記主面はC面±2°以内、A面±2°以内、R面±2°以内、M面±2°以内またはM面から30°±2°以内のいずれかを満たすことが好ましい。
【0017】
前記エッチピットは、熱リン酸または熱リン酸と熱硫酸の混酸または熱溶融水酸化カリウムを用いて形成することが好ましい。このように、熱リン酸等によるウェットエッチングを行うことでまとめて処理することが可能であり、量産にも適している。
【0018】
また本発明は、以上のようにして作製されたエッチピットを有する単結晶サファイア基板の主面上に、単結晶サファイア基板とは異なる屈折率を有する半導体材料からなる第二の結晶層が成長しており、その中に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有する半導体発光素子であることを特徴とする。上記の第二の結晶層が、GaNのバッファ層と、その上のGaN系半導体結晶層で形成するか、あるいはAlNのバッファ層と、その上のGaN系半導体結晶層で形成しても良い。
【0019】
さらに、上記サファイア基板のエッチピットを有する主面から、第二の結晶層が実質的にファセット構造を形成しながら成長したものであり、半導体発光素子の発光層から発せられる光の波長における、単結晶サファイア基板の屈折率と第二の結晶層の屈折率との差が、0.05以上であることが好ましい。
【0020】
また、上記単結晶サファイア基板の主面上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピットを覆って凹凸をなすように成長しており、該凹凸の少なくとも一部を覆って、第一のGaN系半導体結晶とは異なる屈折率を有する第二のGaN系半導体結晶が成長しており、さらに、第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長しており、その上に、発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有する半導体発光素子としても良い。
【0021】
さらに、上記単結晶サファイア基板の主面上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピットを覆って凹凸をなすように成長しており、該凹凸の少なくとも凸部を膜状に覆って第二のGaN系半導体結晶が成長しており、さらに、これを覆って第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長しており、その上に、発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有し、第二のGaN系半導体結晶が多層膜構造を有するもので有っても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、GaN系材料を用いたLED(GaN系LED)を例として挙げ、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように本発明の単結晶サファイア基板1は主面1a上に、角錐状のエッチピット1bを複数形成したものである。この様な単結晶サファイア基板1は、初めにEFG法によって面方位、軸方位の定まったサファイア素材を引き上げ、次に、この素材を適宜切断、研削加工、研磨加工、洗浄を施し、窒化物半導体を成膜するための基板を作製し、引き続き、当該基板を熱リン酸中等でウェットエッチング処理を行うと、条件により上記エッチピット1bを形成できる。このエッチング処理は、適切な治具を用いることにより、一度に多数枚を処理できるため、非常に生産性が高く、量産に適している。
【0024】
従来のエッチング方法では、マスクを使ってドライエッチングを行うため、生産性が悪いだけでなく、エッチング中にマスク自体もエッチングされるため、マスクの端部が不規則に波打ち、ドライエツチングによって形成された凹凸の端部も波打つ結果となり、その後の窒化物半導体のエピ成長に悪影響を与えるという問題が有った。これに対して、本発明のエッチピット1bは、ウェットエッチングにより結晶本来の性質によって出来る凹部であり、このエッチピット1bを利用することで、ドライエッチングに依る場合のように端面が波打つという不具合が無い。
【0025】
この時に出来るエッチピット1bの形状は、角錐状であることが特徴であり、条件によって変わるが、通常は三角錐である。この角錐状の形状は、この単結晶サファイア基板1を利用して作製するLED等の発光素子の光取り出し効率を高めるために有効である。
【0026】
このエッチピット1bの大きさは一辺が300μm以下となるように温度と時間の条件を調整することが好ましい。これは、LED素子の大きさが通常300μm×300μm程度であり、横方向の光を効率よく取り出すためにはエッチピットの大きさが少なくともこのサイズ以下に成るようにコントロールする必要が有るためである。ここでエッチピットの深さの好ましい範囲は、幾何学的な考察から250μm以下が好ましく、また、LEDの製造工程で、一般的にダイシング工程の前に基板をバックグラインドを行い、厚みを薄くすることからもエッチピットの深さは250μm以下が好ましい。
【0027】
また、エッチピット1bの数も同様に横方向の光を効率よく取り出すために、103個/cm2以上、1010個/cm2以下であることが好ましい。なお、エッチピットの数をコントロールするために、単結晶サファイア基板1に熱や圧力を加えて故意に結晶欠陥を導入した後、エッチング処理を行っても良い。例えば、1200℃〜1400℃で20気圧を加えた後、更に熱処理を行う等の処理を行っても良い。
【0028】
また、エッチピット1bを主面1aに垂直な方向から見た時の底辺の少なくとも1辺がサファイアのA軸に平行または垂直であるか、もしくはM軸に平行または垂直であることにより、当該基板の上に成長させるGaNなどの欠陥の低減に有効である。これはサファイア基板1を適切な条件でエッチングを行うことにより達成できる。
【0029】
エッチピット1bの数と大きさは熱リン酸等の温度と処理時間に依って決まる。また、エッチピット1bの向きは単結晶サファイア基板1の結晶方位と軸方位とによって決まる。このエッチピット1bの向きと形状を一定にするために前記主面1aはC面±2°以内、A面±2°以内、R面±2°以内、M面±2°以内またはM面から30°±2°以内のいずれかを満たす必要がある。
【0030】
また、以上の説明ではウェットエッチングに熱リン酸を用いたが、エッチング液はこれに限定されず、熱リン酸と熱硫酸の混酸でも良く、また、熱溶融水酸化カリウムなどその他の薬品を用いても良い。
【0031】
なお、熱リン酸によるサファイアのエッチングレートは各温度で図3のようになった。本発明に於いて、熱リン酸または熱リン酸と熱硫酸の混酸または熱溶融水酸化カリウムを用いるのは、例えば図3の様にエッチングレートが温度によって正確にコントロールできるため、エッチピット1bの作製に最も適しているためである。
【0032】
また、本発明にEFG法によって作製したサファイア基板1を用いるのは、EFG法はサファイアの製造方法の内、最も成長スピードを速くすることが出来るため、エッチピットを有効に利用するのに適した条件を作り出すことが可能であるためである。
【0033】
以上のように本発明の製造方法によれば、サファイア基板に特別なマスクの形成を必要とせず、200℃〜400℃の熱リン酸等でウェットエッチングを行うという比較的簡単な工程でエッチピット1bを備えたサファイア基板1を比較的安価に量産することが出来る。即ち、適切な治具を用いることにより、一度に多数枚を処理できるため、従来の反応性イオンエッチングによる方法に比べて非常に生産性が高く、量産に適している。
【0034】
次に本発明のエッチピット1bを備えたサファイア基板1を用いた半導体発光素子について説明する。
【0035】
上記サファイア基板1の主面1aに窒化物半導体をエピタキシャル成長させると、窒化物半導体の縦方向の成長と横方向の成長が合体して平坦な表面を有する窒化物半導体膜が形成される。この窒化物半導体を成膜した基板を用いて発光素子を作製する。この時、角錐状のエッチピット1bは窒化物半導体で完全に埋まっていても良く、あるいはエッチピットと窒化物半導体の間に空洞が有っても構わないが、好ましくは完全に埋まっている方が良い。
【0036】
このようにして作製されたLEDの例を図2に示す。
【0037】
単結晶サファイア基板1のエッチピット1bを形成した主面1a上に、AlGaN低温バッファ層2を介してn型GaNコンタクト層3、n型AlGaNクラッド層4、GaN系半導体発光層(MQW構造)5、p型AlGaNクラッド層6、p型GaNコンタクト層7を形成し、この上に上部電極(通常はp型電極)8を、上記n型GaNコンタクト層3上に下部電極(通常はn型電極)9を形成したものである。
【0038】
上記エッチピット1bを有する主面1aは光散乱層を成し、これにより、GaN系半導体発光層5から出た光の内、下方に向かう光は主面1aの光散乱層で散乱され、図2の矢印で示す横方向に光を取り出すことが出来る。これにより、GaN系半導体発光層5から出た光はGaN層内で反射を繰り返して減衰することが無く、LED全体の光取り出し効率の改善が出来る。
【0039】
なお、前記単結晶サファイア基板1の主面1bから、第二の結晶層であるAlGaN低温バッファ層2等が実質的にファセット構造を形成しながら成長していることが好ましい。
【0040】
また、前記GaN系半導体発光層5から発せられる光の波長における、単結晶サファイア基板1の屈折率と第二の結晶層であるAlGaN低温バッファ層2等の屈折率との差が0.05以上であることが好ましい。
【0041】
なお、上記バッファ層としてはGaN系またはAlN系のいずれを用いてもよく、その上に形成する半導体結晶層としてはGaN系を用いる。
【0042】
さらに他の実施形態として、図示していないが、前記単結晶サファイア基板1の主面1a上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピット1bを覆って凹凸をなすように成長し、該凹凸の少なくとも一部を覆って、第一のGaN系半導体結晶とは異なる屈折率を有する第二のGaN系半導体結晶が成長し、さらに第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長し、その上に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造とすることもできる。
【0043】
あるいは、単結晶サファイア基板1の主面1a上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピット1bを覆って凹凸をなすように成長し、該凹凸の少なくとも凸部を膜状に覆って第二のGaN系半導体結晶が成長し、さらにこれを覆って第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長し、その上に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有し、前記第二のGaN系半導体結晶が多層膜構造を有するようにしても良い。
【0044】
なお、通常はこの半導体発光素子は上記エッチピット1bを有するサファイア基板1上に作製され、サファイア基板1と共にダイシングなどの切断を行い、パッケージングを行い半導体発光素子としての機能を果たす。しかし、場合によっては半導体発光素子部分をサファイア基板1から剥離してさらに高効率のLEDとする方法も提案されている。その様な場合にも当該エッチピット1bを有するサファイア基板1は、エッチピット1bと窒化物半導体膜との間に空洞を有する構造とすることにより、半導体発光素子をサファイア基板から剥離することが容易であるという効果を有する。
【0045】
さらに、本発明のエッチピット1bを有するサファイア基板1は、半導体発光素子の製造以外の用途として、当該エッチピット1bを有するサファイア基板1上に低転転位の窒化物半導体層を形成した後、サファイア基板から低転位の窒化物半導体を剥離して独立した窒化物半導体基板を作製する場合にも剥離が容易であるという効果も有する。
【0046】
さらに、本発明のエッチピット1bを有するサファイア基板1は、半導体発光素子用の基板としてだけでなく、窒化物半導体を用いた電子デバイス用の基板として用いることも出来る。
【0047】
【実施例】
実施例1
本実施例では半導体素子用のエッチピットを有するサファイア基板の製造方法を説明する。
【0048】
初めにEFG法によって面方位、軸方位の定まったサファイア素材を引き上げた。本実施例では特にサファイア基板1の主面1aがC面となるようにしたが、主面1aの面方位はC面だけでなく、A面、M面、R面、M面から30度回転した面などにも適応できる。また、これらの面から±2°以内でオフアングルしていても良い。なお、引き上げ方法は様々な方法を用いことが出来るが、特にEFG法で引き上げたサファイア基板は本発明に適している。
【0049】
次に、この素材を適宜切断、研削加工、研磨加工、洗浄を施し、窒化物半導体を成膜するための基板を作製した。引き続き、当該基板を熱リン酸中300℃で30分間エッチング処理を行ったところ、当該基板の主面1aに多数のエッチピット1bが形成された。この時、サファイア基板1の主面1a上に形成されたエッチピット1bの形状は三角錐であった。
【0050】
尚、この時エッチピットの大きさは一辺が300μm以下となるように温度と時間の条件を調整した。これは、LED素子の大きさが通常300μm×300μm程度であり、横方向の光を効率よく取り出すためにはエッチピットの大きさが少なくともこのサイズ以下に成るようにコントロールする必要が有るためである。また、エッチピットの数も同様に横方向の光を効率よく取り出すために、103個/cm2以上、1010個/cm2以下とした。
【0051】
なお、エッチピットの数をコントロールするために、サファイア基板に熱や圧力を加えて故意に結晶欠陥を導入した後、エッチング処理を行っても良い。例えば、1200℃〜1400℃で20気圧を加えた後、更に熱処理を行う等の処理を行っても良い。
【0052】
また、当該エッチピットを主面に垂直な方向から見た時の底辺の少なくとも1辺がA軸に平行または垂直とすることが、当該基板の上に成長させる窒化ガリウムの欠陥の低減に有効であるが、これはサファイア基板を適切な条件でエッチングを行うことにより達成できた。
【0053】
この製造工程に於いて、サファイア基板に特別なマスクの形成を必要とせず、200℃〜400℃の熱リン酸でウェットエッチングを行うという比較的簡単な工程でエッチピット付きの基板を比較的安価に量産することが出来ることができた。即ち、適切な治具を用いることにより、一度に多数枚を処理できるため、従来の反応性イオンエッチングによる方法に比べて非常に生産性が高く、量産に適している。
【0054】
実施例2
本実施例では、図2に示すように、ファセット成長法によってサファイア基板1のエッチピット1bを埋め込んで凹凸状の光散乱面とし、GaN系LEDを製作した。
【0055】
先ず、実施例1の工程により、C面サファイア基板上にエッチピットを形成した。当該基板を洗浄後、MOVPE装置に基板を装着し、窒素ガス主成分雰囲気下で1100℃まで昇温し、サーマルクリーニングを行った。温度を500℃まで下げ、周期率表第3族原料としてトリメチルガリウム(以下TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、厚さ30nmのAlGaN低温バッファ層2を成長させた。
【0056】
続いて温度を1000℃に昇温し原料としてTMG、アンモニアを、ドーパントとしてシランを流しn型GaN層(コンタクト層)3を成長させた。このときのGaN層の成長は、凸部の上面、凹部の底面から、断面山形でファセット面を含む尾根状の結晶として発生した後、凹部内に空洞を形成することなく、全体を埋め込む成長であった。
【0057】
ファセット構造成長において、GaN結晶のC面が完全に消滅し頂部が尖った凸状となった時点で、成長条件を横方向成長が優勢になる条件(成長温度を上昇させるなど)に切り替え、サファイア基板の上面から厚さ5μmまでGaN結晶を成長させた。上面が平坦な埋め込み層を得るためには5μmの厚膜成長が必要であった。
【0058】
続いて、n型AlGaNクラッド層4、InGaN発光層(MQW構造)5、p型AlGaNクラッド層6、p型GaNコンタクト層7を順に形成し、発光波長370nmの紫外線LED用エピ基板とし、さらに、n型コンタクト層を表出させるためのエッチング加工、電極(8,9)形成、素子分離を行い、LED素子とした。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サファイア基板の主面に効率良く量産に適した方法で凹凸を作製することが出来る。また、ウェットエッチングにより結晶本来の性質によって出来るエッチピットを利用することにより、端面が波打つという不具合の無い凹凸を形成することが出来る。さらに、この方法で作成されたサファイア基板を用いて作製されたLEDは横方向に向かう光を効率よく取り出すことが出来るので、従来よりも外部量子効率の高いLEDを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の単結晶サファイア基板の斜視図、(b)は(a)中のA部の拡大図、(c)はA部の断面図である。
【図2】本発明の半導体発光素子の構成を示す断面図である。
【図3】サファイアのエッチングレートの温度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1:サファイア基板
1a:主面
1b:エッチピット
2:AlGaN低温バッファ層
3:n型GaNコンタクト層
4:n型AlGaNクラッド層
5:GaN系半導体発光層(MQW構造)
6:p型AlGaNクラッド層
7:p型GaNコンタクト層
8:上部電極
9:下部電極
Claims (15)
- 主面上に複数のエッチピットを有することを特徴とする半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記エッチピットの一辺の長さが300μm以下であることを特徴とする半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記エッチピットが角錐状であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記エッチピットの密度が103個/cm2以上、1010個/cm2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記エッチピットが角錐状であり主面に垂直な方向から見た時の底辺の少なくとも一辺が、サファイアのA軸に平行であるかまたはA軸に垂直であるか、もしくはサファイアのM軸に平行であるかまたはM軸に垂直であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記主面は、サファイアのC面±2°以内、A面±2°以内、R面±2°以内、M面±2°以内またはM面から30°±2°以内のいずれかを満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体素子用単結晶サファイア基板。
- 前記エッチピットを、熱リン酸または熱リン酸と熱硫酸の混酸または熱溶融水酸化カリウムを用いたウェットエッチングにより形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体素子用単結晶サファイア基板の製造方法。
- 前記単結晶サファイア基板をEFG法で作製することを特徴とする請求項7記載の半導体素子用単結晶サファイア基板の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の単結晶サファイア基板のエッチピットを有する主面上に、単結晶サファイア基板とは異なる屈折率を有する半導体材料からなる第二の結晶層が成長しており、その中に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有することを特徴とする半導体発光素子。
- 前記第二の結晶層がGaNのバッファ層と、その上のGaNの半導体結晶層からなることを特徴とする請求項9記載の半導体発光素子。
- 前記第二の結晶層がAlNのバッファ層と、その上のGaNの半導体結晶層からなることを特徴とする請求項9記載の半導体発光素子。
- 前記単結晶サファイア基板のエッチピットを有する主面から、第二の結晶層が実質的にファセット構造を形成しながら成長していることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の半導体発光素子。
- 前記発光層から発せられる光の波長における、単結晶サファイア基板の屈折率と第二の結晶層の屈折率との差が、0.05以上であることを特徴とする請求項9〜12に記載の半導体発光素子。
- 前記単結晶サファイア基板の主面上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピットを覆って凹凸をなすように成長し、該凹凸の少なくとも一部を覆って、第一のGaN系半導体結晶とは異なる屈折率を有する第二のGaN系半導体結晶が成長し、さらに第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長し、その上に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有することを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子。
- 前記単結晶サファイア基板の主面上に、第一のGaN系半導体結晶がエッチピットを覆って凹凸をなすように成長し、該凹凸の少なくとも凸部を膜状に覆って第二のGaN系半導体結晶が成長し、さらにこれを覆って第三のGaN系半導体結晶が前記凹凸を平坦化するまで成長し、その上に発光層を含む半導体結晶層が積層された素子構造を有し、前記第二のGaN系半導体結晶が多層膜構造を有することを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子。
Priority Applications (1)
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