JP2005047437A - 車両の運動制御装置 - Google Patents

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    • B60VEHICLES IN GENERAL
    • B60TVEHICLE BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF; BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF, IN GENERAL; ARRANGEMENT OF BRAKING ELEMENTS ON VEHICLES IN GENERAL; PORTABLE DEVICES FOR PREVENTING UNWANTED MOVEMENT OF VEHICLES; VEHICLE MODIFICATIONS TO FACILITATE COOLING OF BRAKES
    • B60T8/00Arrangements for adjusting wheel-braking force to meet varying vehicular or ground-surface conditions, e.g. limiting or varying distribution of braking force
    • B60T8/17Using electrical or electronic regulation means to control braking
    • B60T8/1755Brake regulation specially adapted to control the stability of the vehicle, e.g. taking into account yaw rate or transverse acceleration in a curve

Abstract

【課題】 車両を効果的に減速しながら車両の旋回状態を目標の状態とするためのヨーイングモーメントを発生し得る車両の運動制御装置を提供すること。
【解決手段】 この装置は、右前輪及び左後輪のための系統と左前輪及び右後輪のための系統とから成る2系統のブレーキ配管(所謂「X配管」)を有する車両に適用される。この装置は、アンダーステア、或いはオーバーステア抑制制御時において、車体速度と路面摩擦係数とに基づいて基本制御量Gbを求め、ヨーレイトの目標値と実際値の偏差に基づいてヨー制御量Gdを求める。そして、旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一系統の2つの車輪に対して基本制御量Gbに応じた制動力を共に付与して車両を減速させるとともに、同一系統の何れか一方の車輪にヨー制御量Gdに応じた制動力を更に付与して旋回状態を目標の状態に近づけるためのヨーイングモーメントを発生させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、所定の車輪にブレーキ液圧による制動力を付与することで車両の旋回状態を目標の状態とするためのヨーイングモーメントを同車両に発生させる車両の運動制御装置に関する。
従来より、車両の旋回時において、車両の旋回状態がアンダーステアの状態、或いはオーバーステアの状態になったとき、同旋回状態が目標の状態(例えば、ニュートラルステアの状態)になるように車両の運動を制御することが要求されている。アンダーステアの状態は、車両の旋回方向と同一の方向にヨーイングモーメントが発生するように所定の車輪にブレーキ液圧による制動力を付与することで解消され得る。一方、オーバーステアの状態は、車両の旋回方向と反対の方向にヨーイングモーメントが発生するように所定の車輪にブレーキ液圧による制動力を付与することで解消され得る。
一方、4輪車両における各車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するためのブレーキ配管は、一般に、右前輪と左後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統と、左前輪と右後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統とから成る互いに独立した2系統の配管(所謂「X配管」)により構成されている。
このような構成のブレーキ配管を備えた車両において旋回状態を前記目標の状態とするため、例えば、特許文献1に開示された車両の運動制御装置は、車両の旋回状態がアンダーステアの状態になっているとき、旋回方向内側の後輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与することで同旋回方向と同一の方向にヨーイングモーメントを発生させる。一方、この装置は、車両の旋回状態がオーバーステアの状態になっているとき、旋回方向外側の前輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与することで同旋回方向と反対の方向にヨーイングモーメントを発生させるようになっている。換言すれば、この装置は、旋回状態を前記目標の状態とするため、上記2系統のうち旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統の一つの車輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与するようになっている。
特開平10−16738号公報
ところで、タイヤの進行方向においてタイヤに発生し得る最大路面摩擦力(従って、最大制動力)は、同タイヤの進行方向と垂直な方向において同タイヤに発生している路面摩擦力(即ち、コーナリングフォース)が増加するほど減少することが広く知られている。また、車両の旋回時においてタイヤの進行方向と垂直な方向において同タイヤに発生するコーナリングフォースは、一般に、車両の車体速度が速くなるほど車両に働く遠心力の増大に伴って増大する。従って、車両の旋回時においてタイヤの進行方向においてタイヤに発生し得る最大制動力は車両の車体速度が速くなるほど減少する。
以上のことから、上記開示された装置においては、例えば、車両が比較的高速で旋回しながらその旋回状態が比較的過度のアンダーステアの状態、或いはオーバーステアの状態になった場合、前記一つの系統の一つの車輪に付与されるべきブレーキ液圧による制動力の大きさが同車輪のタイヤに発生し得る前記最大制動力を超えることがある。この場合、前記一つの車輪に付与されるブレーキ液圧による制動力が前記最大制動力に制限される。この結果、車両に対して所期の大きさのヨーイングモーメントが発生し得ず、前記アンダーステアの状態、或いはオーバーステアの状態が確実に解消され得ない場合があるという問題があった。
一方、このような場合、車両を効果的に減速させることができれば(従って、車両に働く遠心力を低減することができれば)、前記最大制動力が大きくなってより大きいヨーイングモーメントが車両に発生させられ得るようになるから、かかる問題は解消され得る。
従って、本発明の目的は、車両を効果的に減速しながら車両の旋回状態を目標の状態とするためのヨーイングモーメントを発生し得る車両の運動制御装置を提供することにある。
本発明の特徴は、各車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するためのブレーキ配管が、右前輪と左後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統と、左前輪と右後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統とから成る互いに独立した2系統の配管により構成された車両に適用される車両の運動制御装置が、前記車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、前記2系統のうち何れか一方の系統に属する2つの車輪に(のみ)ブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与することで前記車両の旋回状態を目標の状態とするための所定のヨーイングモーメントを同車両に対して発生させる旋回状態制御手段とを備えたことになる。
より具体的には、前記旋回状態制御手段は、前記車両の旋回方向における外側の前輪と同旋回方向における内側の後輪の2つの車輪に対し、前記車両の旋回状態がアンダーステアの状態になっているとき前記旋回方向における外側の前輪よりも前記旋回方向における内側の後輪に付与される制動力が大きくなるようにブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与し、前記車両の旋回状態がオーバーステアの状態になっているとき前記旋回方向における内側の後輪よりも前記旋回方向における外側の前輪に付与される制動力が大きくなるようにブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与するよう構成されることが好適である。
これによれば、車両の旋回状態(アンダーステアの状態、或いはオーバーステアの状態)を前記目標の状態(例えば、ニュートラルステアの状態)とするためのヨーイングモーメントを車両に発生させるため、上記2系統のうち旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統の2つの車輪にブレーキ液圧による制動力が付与される。従って、上記従来の装置に比して車輪に付与される制動力の総和が大きくなり得る。この結果、これら2つの車輪に付与される制動力(全体)が車両を減速させる減速力として効果的に機能し得るから車両が効果的に減速させられる。よって、上述のごとく、より適切に所期のヨーイングモーメントが車両に発生し得るようになって、より確実に車両の旋回状態を目標の状態とすることができる。
この場合、前記旋回状態制御手段は、前記車両の走行状態に基づいて同車両を減速させるための基本制御量を算出する基本制御量算出手段と、前記車両の旋回状態に基づいて前記所定のヨーイングモーメントを同車両に対して発生させるためのヨー制御量を算出するヨー制御量算出手段とを備え、前記車両の旋回状態がアンダーステアの状態になっているとき、前記旋回方向における外側の前輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与するとともに前記旋回方向における内側の後輪に対しては同基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力に前記ヨー制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を加えた制動力を付与し、前記車両の旋回状態がオーバーステアの状態になっているとき、前記旋回方向における内側の後輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与するとともに前記旋回方向における外側の前輪に対しては同基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力に前記ヨー制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を加えた制動力を付与するように構成されることが好適である。
ここにおいて、前記ヨー制御量算出手段は、例えば、少なくとも車体速度及びステアリング操作量に基づいて設定される目標ヨーレイト関連量と車両に働く実際のヨーレイト関連量との偏差に基づいて前記ヨー制御量を算出することが好ましい。ここで、「ヨーレイト関連量」とは、車両の旋回の程度を示す量であって、例えば、車両のヨーレイトそのもの、或いは車両に働く車体左右方向の加速度(即ち、横加速度)である。
これによれば、車両を減速させるために前記一つの系統の2つの車輪に共に付与すべきブレーキ液圧による制動力が前記算出された基本制御量に基づいて設定され、一方、前記所定のヨーイングモーメントを車両に対して発生させるために前記2つの車輪の何れか一つに付与すべきブレーキ液圧による制動力が前記算出されたヨー制御量に基づいて設定される。即ち、付与される目的が異なる2つの制動力が個別に設定される。従って、前記2つの車輪の各々に付与すべきブレーキ液圧による制動力がより一層、正確に設定され得る。
また、前記基本制御量算出手段は、前記車両の走行状態としての、前記車両の車体速度、及び路面摩擦係数の少なくとも一つに基づいて前記基本制御量を算出するように構成されることが好適である。
車両に働く遠心力は車体速度の二乗に比例する。即ち、車体速度が高くなるほど同車体速度の増加に対する車両に働く遠心力の増加量は大きくなる。従って、車体速度が高くなるほど車体速度を低下させる要求の程度は高くなる。また、路面摩擦係数が高くなるほどタイヤに発生し得る前記最大制動力が増加するから、より効果的に車両を減速させることができる。
以上のことから、上記のように、車両の車体速度、及び路面摩擦係数の少なくとも一つに基づいて車両を減速させるために算出される前記基本制御量を算出するように構成すれば、例えば、同車体速度の増加、或いは路面摩擦係数の増加に応じて前記基本制御量を増大させることができ、この結果、より適切に車両を減速させることができる。
また、前記基本制御量算出手段は、前記車両の走行状態に応じて前記基本制御量の変化速度が制限されるように同基本制御量を算出するよう構成されることが好適である。車体に発生するピッチングの程度は車両に働く減速力の増加速度に応じて増大する傾向がある。このピッチングは車両の運動を不安定にさせる要因の一つであり、過大なピッチングの発生を防止することが要求される。
一方、車体速度が高くなるほど過大なピッチングを防止する要求の程度は一般に高くなる。また、路面摩擦係数が高くなるほどタイヤに発生し得る制動力の最大変化速度が大きくなって過大なピッチングが発生し易くなる。従って、上記のように、車両の走行状態(例えば、車体速度、路面摩擦係数等)に応じて前記基本制御量の変化速度が制限されるように構成すれば、例えば、車体速度の増加、或いは路面摩擦係数の増加に応じて前記基本制御量の変化速度の上限値(制限値)を小さくすることができ、この結果、車体に働く減速力を十分に確保しつつ過大なピッチングの発生を適切に防止することができる。
更には、前記基本制御量算出手段は、前記ヨー制御量算出手段により算出される前記ヨー制御量に応じて前記基本制御量の値が制限されるように同基本制御量を算出するよう構成されることが好適である。
先に述べたように、タイヤの進行方向においてタイヤに発生する路面摩擦力(従って、制動力)は、路面摩擦係数に応じた或る値(上限値)に制限されるから、同タイヤに同上限値を超える制動力が働くとタイヤがロック傾向となって車両が不安定になり易い。従って、例えば、前記旋回状態制御手段により前記2つの車輪に発生するブレーキ液圧による制動力の総和や、同旋回状態制御手段により前記2つの車輪のうちの一方に発生する前記基本制御量に応じた制動力と前記ヨー制御量に応じた制動力の和は、或る値に制限されるべきである。
このような場合、車両の旋回状態を目標の状態とするための前記所定のヨーイングモーメントを車両に発生させることを優先し、前記基本制御量に応じた制動力と前記ヨー制御量に応じた制動力のうち同基本制御量に応じた制動力を制限すべきである。従って、上記のように、前記ヨー制御量に応じて前記基本制御量の値が制限されるように構成すれば、より車両の安定性を確保しつつ同車両の旋回状態を目標の状態とすることができる。なお、この場合、算出されたヨー制御量そのものが大きい値であって前記或る値を超えるようなとき、ヨー制御量が同或る値に制限されるとともに、基本制御量が「0」に設定されることになる。
上記何れかの車両の運動制御装置が、前記基本制御量と前記ヨー制御量とに基づいて前記2つの車輪に付与するブレーキ液圧による制動力をそれぞれ算出するように構成されている場合、前記旋回状態制御手段は、前記2つの車輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与する代わりに、前記車両の駆動源の出力を同車両の運転状態に応じて低下せしめるとともに、同駆動源の出力低下に相当する制動力だけ前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力よりも小さいブレーキ液圧による制動力を前記2つの車輪に付与するように構成されることが好適である。
車両の駆動源(エンジン)の出力を低下させると、同車両の駆動輪には同駆動源の出力低下に相当する制動力が実質的に作用する。また、車両の駆動源の出力により車両が加速せしめられている場合等に同出力を維持しつつブレーキ液圧による制動力により車両を減速させることは消費エネルギーの増大を招くことになるから好ましくない。
従って、車両の運転状態(例えば、スロットル弁開度、エンジン回転速度等)によって駆動源の出力を低下させることができる場合においては、上記のように構成すれば、車両を確実に減速させることができるとともに消費エネルギーの増大を抑制することができる。
なお、消費エネルギーを最小限とするためには、調整すべき駆動源の出力低下量(調整出力低下量)を、その時点で調整可能な最大量(調整可能最大出力低下量)とすることが好ましい。従って、この場合において、この調整可能最大出力低下量に相当するブレーキ液圧についての制御量が前記基本制御量を超えるとき、前記調整出力低下量が同基本制御量に相当する値になるとともに、前記「駆動源の出力低下に相当する制動力だけ前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力よりも小さいブレーキ液圧による制動力」の値は「0」になる。この結果、ブレーキ液圧による制動力は、前記ヨー制御量に応じた制動力が発生する車輪(一輪)にのみ作用することになる。
以下、本発明による車両の運動制御装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置10を搭載した車両の概略構成を示している。この車両は、操舵輪であり且つ駆動輪である前2輪(左前輪FL及び右前輪FR)と、非駆動輪である後2輪(左後輪RL及び右後輪RR)を備えた前輪駆動方式の4輪車両である。
この車両の運動制御装置10は、操舵輪FL,FRを転舵するための前輪転舵機構部20と、駆動力を発生するとともに同駆動力を駆動輪FL,FRに伝達する駆動力伝達機構部30と、各車輪にブレーキ液圧によるブレーキ力を発生させるためのブレーキ液圧制御装置40と、各種センサから構成されるセンサ部50と、電気式制御装置60とを含んで構成されている。
前輪転舵機構部20は、ステアリング21と、同ステアリング21と一体的に回動可能なコラム22と、同コラム22に連結された転舵アクチュエータ23と、同転舵アクチュエータ23により車体左右方向に移動させられるタイロッドを含むとともに同タイロッドの移動により操舵輪FL,FRを転舵可能なリンクを含んだリンク機構部24とから構成されている。これにより、ステアリング21が中立位置(基準位置)から回転することで操舵輪FL,FRの転舵角が車両が直進する基準角度から変更されるようになっている。
転舵アクチュエータ23は、所謂公知の油圧式パワーステアリング装置を含んで構成されており、ステアリング21、即ちコラム22の回転トルクに応じてタイロッドを移動させる助成力を発生し、同ステアリング21の中立位置からのステアリング角度θsに比例して同助成力によりタイロッドを中立位置から車体左右方向へ変位させるものである。なお、かかる転舵アクチュエータ23の構成及び作動は周知であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
駆動力伝達機構部30は、駆動力を発生するエンジン31と、同エンジン31の吸気管31a内に配置されるとともに吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁THの開度TAを制御するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ32と、エンジン31の図示しない吸気ポート近傍に燃料を噴射するインジェクタを含む燃料噴射装置33と、エンジン31の出力軸に接続されたトランスミッション34と、同トランスミッション34から伝達される駆動力を適宜分配して前輪FR,FLに伝達するディファレンシャルギヤ35とを含んで構成されている。
ブレーキ液圧制御装置40は、その概略構成を表す図2に示すように、高圧発生部41と、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生部42と、各車輪FL,RR,FR,RLにそれぞれ配置されたホイールシリンダWfl,Wrr,Wfr,Wrlに供給するブレーキ液圧をそれぞれ調整可能なFLブレーキ液圧調整部43,RRブレーキ液圧調整部44,FRブレーキ液圧調整部45,RLブレーキ液圧調整部46とを含んで構成されている。
高圧発生部41は、電動モータMと、同電動モータMにより駆動されるとともにリザーバRS内のブレーキ液を昇圧する液圧ポンプHPと、液圧ポンプHPの吐出側にチェック弁CVHを介して接続されるとともに同液圧ポンプHPにより昇圧されたブレーキ液を貯留するアキュムレータAccとを含んで構成されている。
電動モータMは、アキュムレータAcc内の液圧が所定の下限値を下回ったとき駆動され、同アキュムレータAcc内の液圧が所定の上限値を上回ったとき停止されるようになっており、これにより、アキュムレータAcc内の液圧は常時所定の範囲内の高圧に維持されるようになっている。
また、アキュムレータAccとリザーバRSとの間にリリーフ弁RVが配設されており、アキュムレータAcc内の液圧が前記高圧より異常に高い圧力になったときに同アキュムレータAcc内のブレーキ液がリザーバRSに戻されるようになっている。これにより、高圧発生部41の液圧回路が保護されるようになっている。
ブレーキ液圧発生部42は、ブレーキペダルBPの作動により応動するハイドロブースタHBと、同ハイドロブースタHBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。ハイドロブースタHBは、液圧高圧発生部41から供給される前記高圧を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合で助勢し同助勢された操作力をマスタシリンダMCに伝達するようになっている。
マスタシリンダMCは、前記助勢された操作力に応じたマスタシリンダ液圧を発生するようになっている。また、ハイドロブースタHBは、マスタシリンダ液圧を入力することによりマスタシリンダ液圧と略同一の液圧である前記助勢された操作力に応じたレギュレータ液圧を発生するようになっている。これらマスタシリンダMC及びハイドロブースタHBの構成及び作動は周知であるので、ここではそれらの詳細な説明を省略する。このようにして、マスタシリンダMC及びハイドロブースタHBは、ブレーキペダルBPの操作力に応じたマスタシリンダ液圧及びレギュレータ液圧をそれぞれ発生するようになっている。
マスタシリンダMCとFLブレーキ液圧調整部43の上流側及びRRブレーキ液圧調整部44の上流側の各々との間には、3ポート2位置切換型の電磁弁である制御弁SA1が介装されている。同様に、ハイドロブースタHBとFRブレーキ液圧調整部45の上流側及びRLブレーキ液圧調整部46の上流側の各々との間には、3ポート2位置切換型の電磁弁である制御弁SA2が介装されている。また、高圧発生部41と制御弁SA1及び制御弁SA2の各々との間には、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である切換弁STRが介装されている。
制御弁SA1は、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときマスタシリンダMCとFLブレーキ液圧調整部43の上流部及びRRブレーキ液圧調整部44の上流部の各々とを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときマスタシリンダMCとFLブレーキ液圧調整部43の上流部及びRRブレーキ液圧調整部44の上流部の各々との連通を遮断して切換弁STRとFLブレーキ液圧調整部43の上流部及びRRブレーキ液圧調整部44の上流部の各々とを連通するようになっている。
制御弁SA2は、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときハイドロブースタHBとFRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々とを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときハイドロブースタHBとFRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々との連通を遮断して切換弁STRとFRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々とを連通するようになっている。
これにより、FLブレーキ液圧調整部43の上流部及びRRブレーキ液圧調整部44の上流部の各々には、制御弁SA1が第1の位置にあるときマスタシリンダ液圧が供給されるとともに、制御弁SA1が第2の位置にあり且つ切換弁STRが第2の位置(励磁状態における位置)にあるとき高圧発生部41が発生する高圧が供給されるようになっている。
同様に、FRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々には、制御弁SA2が第1の位置にあるときレギュレータ液圧が供給されるとともに、制御弁SA2が第2の位置にあり且つ切換弁STRが第2の位置にあるとき高圧発生部41が発生する高圧が供給されるようになっている。
換言すれば、本例におけるブレーキ配管は、車輪FLと車輪RRの各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統と、車輪FRと車輪RLの各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統とから成る互いに独立した2系統の配管により構成されている。
FLブレーキ液圧調整部43は、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁PUflと、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁PDflとから構成されており、増圧弁PUflは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときFLブレーキ液圧調整部43の上流部とホイールシリンダWflとを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときFLブレーキ液圧調整部43の上流部とホイールシリンダWflとの連通を遮断するようになっている。減圧弁PDflは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWflとリザーバRSとの連通を遮断するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWflとリザーバRSとを連通するようになっている。
これにより、ホイールシリンダWfl内のブレーキ液圧は、増圧弁PUfl及び減圧弁PDflが共に第1の位置にあるときホイールシリンダWfl内にFLブレーキ液圧調整部43の上流部の液圧が供給されることにより増圧され、増圧弁PUflが第2の位置にあり且つ減圧弁PDflが第1の位置にあるときFLブレーキ液圧調整部43の上流部の液圧に拘わらずその時点の液圧に保持されるとともに、増圧弁PUfl及び減圧弁PDflが共に第2の位置にあるときホイールシリンダWfl内のブレーキ液がリザーバRSに戻されることにより減圧されるようになっている。
また、増圧弁PUflにはブレーキ液のホイールシリンダWfl側からFLブレーキ液圧調整部43の上流部への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV1が並列に配設されており、これにより、制御弁SA1が第1の位置にある状態で操作されているブレーキペダルBPが開放されたときホイールシリンダWfl内のブレーキ液圧が迅速に減圧されるようになっている。
同様に、RRブレーキ液圧調整部44,FRブレーキ液圧調整部45及びRLブレーキ液圧調整部46は、それぞれ、増圧弁PUrr及び減圧弁PDrr,増圧弁PUfr及び減圧弁PDfr,増圧弁PUrl及び減圧弁PDrlから構成されており、これらの各増圧弁及び各減圧弁の位置が制御されることにより、ホイールシリンダWrr,ホイールシリンダWfr及びホイールシリンダWrl内のブレーキ液圧をそれぞれ増圧、保持、減圧できるようになっている。また、増圧弁PUrr,PUfr及びPUrlの各々にも、上記チェック弁CV1と同様の機能を達成し得るチェック弁CV2,CV3及びCV4がそれぞれ並列に配設されている。
また、制御弁SA1にはブレーキ液の上流側から下流側への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV5が並列に配設されており、同制御弁SA1が第2の位置にあってマスタシリンダMCとFLブレーキ液圧調整部43及びRRブレーキ液圧調整部44の各々との連通が遮断されている状態にあるときに、ブレーキペダルBPを操作することによりホイールシリンダWfl,Wrr内のブレーキ液圧が増圧され得るようになっている。また、制御弁SA2にも、上記チェック弁CV5と同様の機能を達成し得るチェック弁CV6が並列に配設されている。
以上、説明した構成により、ブレーキ液圧制御装置40は、全ての電磁弁が第1の位置にあるときブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を各ホイールシリンダに供給できるようになっている。また、この状態において、例えば、増圧弁PUrr及び減圧弁PDrrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWrr内のブレーキ液圧のみを所定量だけ減圧することができるようになっている。
また、ブレーキ液圧制御装置40は、ブレーキペダルBPが操作されていない状態(開放されている状態)において、例えば、制御弁SA1,切換弁STR及び増圧弁PUflを共に第2の位置に切換るとともに増圧弁PUrr及び減圧弁PDrrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWfl内のブレーキ液圧を保持した状態で高圧発生部41が発生する高圧を利用してホイールシリンダWrr内のブレーキ液圧のみを所定量だけ増圧することもできるようになっている。このようにして、ブレーキ液圧制御装置40は、ブレーキペダルBPの操作に拘わらず、各車輪のホイールシリンダ内のブレーキ液圧をそれぞれ独立して制御し、各車輪毎に独立して所定のブレーキ力を付与することができるようになっている。
再び図1を参照すると、センサ部50は、各車輪FL,FR,RL及びRRが所定角度回転する度にパルスを有する信号をそれぞれ出力するロータリーエンコーダから構成される車輪速度センサ51fl,51fr,51rl及び51rrと、ステアリング21の中立位置からの回転角度を検出し、ステアリング角度θsを示す信号を出力するステアリング操作量取得手段としてのステアリング角度センサ52と、運転者により操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、同アクセルペダルAPの操作量Accpを示す信号を出力するアクセル開度センサ53と、車両に働く実際の加速度の車体左右方向の成分である横加速度を検出し、横加速度Gy(m/s2)を示す信号を出力する実ヨーレイト関連量取得手段としての横加速度センサ54と、運転者によりブレーキペダルBPが操作されているか否かを検出し、ブレーキ操作の有無を示す信号を出力するブレーキスイッチ55と、車両に働く実際のヨーレイトを検出し、ヨーレイトYr(deg/sec)を示す信号を出力する実ヨーレイト関連量取得手段としてのヨーレイトセンサ56と、エンジン31の回転速度を検出し、エンジン回転速度NEを示す信号を出力する回転速度センサ57と、スロットル弁THの開度を検出し、スロットル弁開度TAを示す信号を出力するスロットル弁開度センサ58とから構成されている。
ステアリング角度θsは、ステアリング21が中立位置にあるときに「0」となり、同中立位置からステアリング21を(ドライバーから見て)反時計まわりの方向へ回転させたときに正の値、同中立位置から同ステアリング21を時計まわりの方向へ回転させたときに負の値となるように設定されている。また、横加速度Gy、及びヨーレイトYrは、車両が左方向へ旋回しているときに正の値、車両が右方向へ旋回しているときに負の値となるように設定されている。
電気式制御装置60は、互いにバスで接続されたCPU61、CPU61が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM62、CPU61が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM63、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM64、及びADコンバータを含むインターフェース65等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース65は、前記センサ51〜58と接続され、CPU61にセンサ51〜58からの信号を供給するとともに、同CPU61の指示に応じてブレーキ液圧制御装置40の各電磁弁及びモータM、スロットル弁アクチュエータ32、及び燃料噴射装置33に駆動信号を送出するようになっている。
これにより、スロットル弁アクチュエータ32は、スロットル弁THの開度TAが原則的にアクセルペダルAPの操作量Accpに応じた開度になるように同スロットル弁THを駆動するとともに、燃料噴射装置33は、スロットル弁THの開度TAに応じた吸入空気量に対して所定の目標空燃比(理論空燃比)を得るために必要な量の燃料を噴射するようになっている。
(本発明による車両の運動制御の概要)
<アンダーステアの状態、及びオーバーステアの状態の判定>
本発明による車両の運動制御装置10(以下、「本装置」と云うこともある。)は、車両の運動モデルから導かれる所定の規則としての理論式である下記(1)式に基づいて目標ヨーレイトYrt(deg/sec)を算出する。この目標ヨーレイトYrtは、車両が左方向へ旋回しているとき(ステアリング角度θs(deg)が正の値のとき)に正の値、車両が右方向へ旋回しているとき(ステアリング角度θsが負の値のとき)に負の値となるように設定される。なお、この理論式は、ステアリング角度及び車体速度が共に一定である状態で車両が旋回するとき(定常円旋回時)に車両に働くヨーレイトの理論値を算出する式である。
Yrt=(Vso・θs)/(n・l)・(1/(1+Kh・Vso2)) ・・・(1)
上記(1)式において、Vsoは後述するように算出される推定車体速度(m/s)である。また、nは操舵輪FL,FRの転舵角度の変化量に対するステアリング21の回転角度の変化量の割合であるギヤ比(一定値)であり、lは車体により決定される一定値である車両のホイールベース(m)であり、Khは車体により決定される一定値であるスタビリティファクタ(s2/m2)である。
次に、本装置は、下記(2)式に基づいて、上述したように計算した目標ヨーレイトYrtとヨーレイトセンサ56により得られる実際のヨーレイトYrとの偏差であるヨーレイト偏差ΔYr(deg/sec)を算出する。
ΔYr=Yrt−Yr ・・・(2)
そして、このヨーレイト偏差ΔYrの値が正の所定値(値Yrth)よりも大きい値であるとき、車両は目標ヨーレイトYrtが同車両に発生していると仮定したとき(従って、車両の旋回状態が目標の状態にあるとき)の旋回半径よりも同旋回半径が大きくなる状態(以下、「アンダーステア状態」と称呼する。)にあるので、本装置は、車両の旋回状態がアンダーステアの状態にあると判定し、アンダーステア状態を抑制するためのアンダーステア抑制制御を実行する。
一方、ヨーレイト偏差ΔYrの値が負の所定値(値−Yrth)以下であるとき、車両は目標ヨーレイトYrtが同車両に発生していると仮定したとき(従って、車両の旋回状態が目標の状態にあるとき)の旋回半径よりも同旋回半径が小さくなる状態(以下、「オーバーステア状態」と称呼する。)にあるので、本装置は、車両の旋回状態がオーバーステアの状態にあると判定し、オーバーステア状態を抑制するためのオーバーステア抑制制御を実行する。以上のようにして、車両の旋回状態がアンダーステアの状態にあること、或いはオーバーステアの状態にあることを取得する手段が旋回状態取得手段に相当する。
<アンダーステア抑制制御、及びオーバーステア抑制制御の概要>
一般に、アンダーステアの状態を抑制するためには、旋回方向内側の後輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与することで車両に旋回方向と同一方向のヨーイングモーメントが付与される。反対に、オーバーステアの状態を抑制するためには、旋回方向外側の前輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与することで車両に旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントが付与される。換言すれば、上記2系統のブレーキ配管のうち旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統の一つの車輪にのみブレーキ液圧による制動力が付与される。
しかしながら、一方では、先に説明したように、アンダーステア抑制制御、及びオーバーステア抑制制御を実行する際(従って、車両の旋回状態を上記目標の状態とする際)には車両を減速して車両に働く遠心力を効果的に低減することが好ましい。そこで、本装置は、前記2系統のブレーキ配管のうち旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統に属する2つの車輪に原則的にブレーキ液圧を付与する。
先ず、アンダーステア抑制制御についてより具体的に説明すると、左方向に旋回している車両の各車輪に付与されるブレーキ力(制動力)の一例を表す図3に示すように、本装置は、旋回方向外側の前輪(図3において車輪FR)に、後述するように算出される車両を減速させるための基本制御量Gbに応じたブレーキ液圧による制動力を付与する。同時に、本装置は、旋回方向内側の後輪(図3において車輪RL)に、前記基本制御量Gbに応じたブレーキ液圧による制動力に後述するように算出される車両にヨーイングモーメントを発生させるためのヨー制御量Gdに応じたブレーキ液圧による制動力を加えたブレーキ液圧による制動力を付与する。
これにより、旋回方向外側の前輪よりも旋回方向内側の後輪に付与される制動力が大きくなって車両に対して旋回方向と同一方向(図3において反時計回りの方向)のヨーイングモーメントが強制的に発生させられる。これにより、実際のヨーレイトYrの絶対値が大きくなり、実際のヨーレイトYrが目標ヨーレイトYrtに近づくように制御される。また、車輪に付与される制動力の総和(前記基本制御量Gbに応じたブレーキ液圧による制動力の2倍の制動力に前記ヨー制御量Gdに応じたブレーキ液圧による制動力を加えた制動力)が、前述した一つの系統の一つの車輪にのみブレーキ液圧による制動力を付与する場合における制動力の総和(即ち、前記ヨー制御量Gdに応じたブレーキ液圧による制動力のみ)よりも大きくなって、車両が効果的に減速させられる。
これに対し、オーバーステア抑制制御を実行する場合、本装置は、旋回方向内側の後輪に、前記基本制御量Gbに応じたブレーキ液圧による制動力を付与する。同時に、本装置は、旋回方向外側の前輪に、前記基本制御量Gbに応じたブレーキ液圧による制動力に前記ヨー制御量Gdに応じたブレーキ液圧による制動力を加えたブレーキ液圧による制動力を付与する。
これにより、旋回方向内側の後輪よりも旋回方向外側の前輪に付与される制動力が大きくなって車両に対して旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントが強制的に発生させられる。これにより、実際のヨーレイトYrの絶対値が小さくなり、実際のヨーレイトYrが目標ヨーレイトYrtに近づくように制御される。また、前述したアンダーステア抑制制御を実行する場合と同様、車輪に付与される制動力の総和が大きくなるから車両が効果的に減速させられる。
このようにして、アンダーステア抑制制御又はオーバーステア抑制制御(以下、これらを併せて「制動操舵制御」と総称する。)を実行することにより、本装置は、車両の旋回状態を上記目標の状態とするための所定のヨーイングモーメントを車両に対して発生させる。このようにして所定のヨーイングモーメントを車両に対して発生させる手段が旋回状態制御手段に相当する。
<基本制御量Gbの算出>
次に、車両を減速させるための制動力を計算するために使用される基本制御量Gbの算出について説明する。先に述べたように、車両に働く遠心力は車体速度の二乗に比例するから、車体速度の増加に応じて同増加に対する車両に働く遠心力の増加量は大きくなる。従って、車体速度の増加に応じて車体速度を低下させる要求の程度は高くなる。また、路面摩擦係数が高くなるほどタイヤに発生し得る最大制動力が増加するから、より効果的に車両を減速させることができる。
そこで、本装置は、後述するように算出される推定車体速度Vsoと、後述するように算出される路面摩擦係数μと、推定車体速度Vso及び路面摩擦係数μと基本制御量Gbとの関係を規定する図4に示したテーブルと、に基づいて同基本制御量Gbを算出する。これにより、推定車体速度Vso、或いは路面摩擦係数μが増加するほど基本制御量Gbはより大きい値に算出される。このようにして基本制御量Gbを算出する手段が基本制御量算出手段に相当する。
<ヨー制御量Gdの算出>
次に、車両にヨーイングモーメントを発生させるための制動力を計算するために使用されるヨー制御量Gdの算出について説明する。本装置は、上記(2)式に従って算出されるヨーレイト偏差ΔYrと、ヨーレイト偏差ΔYrとヨー制御量Gdとの関係を規定する図5に示したテーブルと、に基づいて同ヨー制御量Gdを算出する。
これにより、ヨー制御量Gdは、ヨーレイト偏差ΔYrが前記値Yrth以下のときには「0」になるように設定され、ヨーレイト偏差ΔYrが値Yrth以上であって値Yr1以下のときには同ヨーレイト偏差ΔYrが値Yrthから値Yr1まで増加するに従い「0」から上限値Gmaxまで線形的に増加するように設定され、ヨーレイト偏差ΔYrが値Yr1以上のときには同上限値Gmaxに維持されるように設定される。このように、ヨーレイト偏差ΔYrが前記値Yrth以上のときにはヨー制御量Gdがヨーレイト偏差ΔYrに応じて決定される。このようにしてヨー制御量Gdを算出する手段がヨー制御量算出手段に相当する。
<過大なピッチングの発生防止に基づく基本制御量Gbの制限>
一般に、車体に発生するピッチングの大きさは車両に働く減速力(従って、基本制御量Gb)の増加速度に応じて増大する傾向がある。一方、車体速度(推定車体速度Vso)が高くなるほど過大なピッチングを防止する要求の程度は一般に高くなる。また、路面摩擦係数μが高くなるほど過大なピッチングが発生し易くなる。
そこで、本装置は、前記推定車体速度Vsoと、前記路面摩擦係数μと、推定車体速度Vso及び路面摩擦係数μと基本制御量変化量制限値ΔGblimitとの関係を規定する図6に示したテーブルと、に基づいて同基本制御量変化量制限値ΔGblimitを算出する。これにより、推定車体速度Vso、或いは路面摩擦係数μが増加するほど基本制御量変化量制限値ΔGblimitはより小さい値に算出される。そして、本装置は、上述した図4に示したテーブルに基づく基本制御量(の今回値)Gbから同基本制御量の前回値Gbbを減じた値が前記基本制御量変化量制限値ΔGblimitより大きいとき、同基本制御量の今回値Gbを、前記基本制御量の前回値Gbbに同基本制御量変化量制限値ΔGblimitを加えた値に補正(制限)する。
<ブレーキ液圧による制動力の総和の上限に基づく基本制御量Gbの制限>
タイヤに発生する路面摩擦力(従って、制動力)は、路面摩擦係数に応じた或る値(上限値)に制限されるから、同タイヤに同上限値を超える制動力が働くとタイヤがロック傾向となって車両が不安定になり易い。このような観点から、ヨー制御量Gdに応じた制動力と基本制御量Gbに応じた制動力の和は或る値に制限されるべきである。
このように前記制動力の和が制限される場合、車両の旋回状態を目標の状態とするための所定のヨーイングモーメントを車両に発生させることを優先し、ヨー制御量Gdに応じた制動力よりも基本制御量Gbに応じた制動力を制限することが好ましいと考えられる。
そこで、本装置は、前記制動力の和に相当するブレーキ制御量の和、即ち、前記算出(且つ、制限)された基本制御量Gbに前記算出されたヨー制御量Gdを加えた値(Gb+Gd)が前記上限値Gmax(図5を参照。)を超えるとき、原則的に、同ブレーキ制御量の和が同上限値Gmaxと等しくなるように下記(3)式に従って、基本制御量Gbを補正(制限)する。
Gb=Gmax−Gd ・・・(3)
<エンジン出力低下の積極的利用>
エンジン31の出力を低下させると、車両の駆動輪(前2輪)にはエンジン31の出力低下に相当する制動力(減速力)が実質的に作用する。また、エンジン31の出力(従って、駆動力)により車両が加速している場合等に同出力を維持しつつブレーキ液圧による制動力により車両を減速させることは消費エネルギーの増大を招くことになる。
そこで、本装置は、回転速度センサ57により得られるエンジン回転速度NEと、運転者によるアクセルペダル操作量Accpに応じて決定される後述する暫定目標スロットル弁開度TAt0と、エンジン回転速度NE及びスロットル弁開度TAと調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxとの関係を規定する図7に示したテーブルと、に基づいて同調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxを算出する。これにより、暫定目標スロットル弁開度TAt0、及びエンジン回転速度NEが増加するほど調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxはより大きい値に算出される。
そして、本装置は、原則的に、前記算出(且つ、制限)された基本制御量Gbの値から前記調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxを減じた値を最終的な基本制御量Gbとして設定する。同時に、本装置は、前記調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxの値を調整すべきエンジン31の出力低下量(調整出力低下量Gdown)として設定し、エンジン31の出力をアクセルペダル操作量Accpに応じた値から同調整出力低下量Gdownに相当する分だけ低下させる。これにより、車両に減速させる減速力として車輪に働く制動力の総和を変更することなく、消費エネルギーの増大を防止することができる。
以上のようにして、本装置は、上記制動操舵制御を実行する際、基本制御量Gb、及びヨー制御量Gdを算出するとともに、同基本制御量Gbを適宜補正して最終的な基本制御量Gbを求め、これら最終的な基本制御量Gbの値、及びヨー制御量Gdの値に基づいて、旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統の2つの車輪にそれぞれ所定のブレーキ液圧による制動力を付与する。
また、制動操舵制御を実行する際に、後述するアンチスキッド制御、前後制動力配分制御、及びトラクション制御のうちのいずれか一つも併せて実行する必要があるとき、本装置は、同いずれか一つの制御を実行するために各車輪に付与すべき制動力をも考慮して各車輪に付与すべきブレーキ力を最終的に決定する。以上が、本発明による車両の運動制御の概要である。
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明による車両の運動制御装置10の実際の作動について、電気式制御装置60のCPU61が実行するルーチンをフローチャートにより示した図8〜図14を参照しながら説明する。なお、各種変数・フラグ・符号等の末尾に付された「**」は、同各種変数・フラグ・符号等が各車輪FR等のいずれに関するものであるかを示すために同各種変数・フラグ・符号等の末尾に付される「fl」,「fr」等の包括表記であって、例えば、車輪速度Vw**は、左前輪速度Vwfl, 右前輪速度Vwfr, 左後輪速度Vwrl, 右後輪速度Vwrrを包括的に示している。
CPU61は、図8に示した車輪速度Vw**等の計算を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで各車輪FR等の車輪速度(各車輪の外周の速度)Vw**をそれぞれ算出する。具体的には、CPU61は各車輪速度センサ51**が出力する信号が有するパルスの時間間隔に基づいて各車輪FR等の車輪速度Vw**をそれぞれ算出する。
次いで、CPU61はステップ810に進み、各車輪FR等の車輪速度Vw**のうちの最大値を推定車体速度Vsoとして算出する。なお、各車輪FR等の車輪速度Vw**の平均値を推定車体速度Vsoとして算出してもよい。
次に、CPU61はステップ815に進み、前記推定車体速度Vsoの値と、前記各車輪FR等の車輪速度Vw**の値と、ステップ815内に記載した式とに基づいて各車輪毎の実際のスリップ率Sa**を算出する。この実際のスリップ率Sa**は、後述するように、各車輪に付与すべきブレーキ力を計算する際に使用される。
次に、CPU61はステップ820に進んで、下記(4)式に基づいて推定車体速度Vsoの時間微分値である推定車体加速度DVsoを算出する。
DVso=(Vso-Vso1)/Δt ・・・(4)
上記(4)式において、Vso1は前回の本ルーチン実行時にステップ810にて算出した前回の推定車体速度であり、Δtは本ルーチンの演算周期である上記所定時間である。そして、CPU61は、ステップ825に進み、前記推定車体加速度DVsoの値と、横加速度センサ54により得られる実際の横加速度Gyの値と、ステップ825内に記載の式とに基づいて路面摩擦係数μを計算した後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
次に、ヨーレイト偏差の算出について説明すると、CPU61は図9に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで、ステアリング角度センサ52により得られるステアリング角度θsの値と、前記推定車体速度Vsoの値と、上記(1)式の右辺に対応するステップ905内に記載した式とに基づいて目標ヨーレイトYrtを算出する。
次に、CPU61はステップ910に進んで、前記目標ヨーレイトYrtと、ヨーレイトセンサ56により得られる実際のヨーレイトYrと、上記(2)式の右辺に対応するステップ910内に記載した式とに基づいてヨーレイト偏差ΔYrを算出する。そして、CPU61はステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
次に、制動操舵制御を実行する際に使用するブレーキ制御量、即ち、上記した(最終的な)基本制御量Gb、及びヨー制御量Gdの算出について説明すると、CPU61は図10に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、前記ヨーレイト偏差ΔYrの絶対値が前記値Yrthよりも大きいか否か、即ち、制動操舵制御が必要であるか否かを判定し、「No」と判定する場合にはステップ1090に進んで、(最終的な)基本制御量(の今回値)Gb、ヨー制御量Gd、(最終的な)基本制御量の前回値Gbb、及び調整出力低下量Gdownの各値を総て「0」に設定した後、ステップ1095に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、制動操舵制御が必要である場合、CPU61はステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1010に進み、前記ヨーレイト偏差ΔYrの絶対値と、前述の図5に示したテーブルに相当する関数fとに基づいてヨー制御量Gdを求める。続いて、CPU61はステップ1015に進んで、前記推定車体速度Vsoの値と、前記路面摩擦係数μの値と、図4に示したテーブルに相当する関数gとに基づいてヨー制御量Gdを求める。
次いで、CPU61はステップ1020に進み、前記推定車体速度Vsoの値と、前記路面摩擦係数μの値と、図6に示したテーブルに相当する関数hとに基づいて基本制御量変化量制限値ΔGblimitを求める。続いて、CPU61はステップ1025に進んで、ステップ1015にて求めた基本制御量(の今回値)Gbから前回の本ルーチン実行時においてステップ1090、或いは後述するステップ1085にて更新されている基本制御量の前回値Gbbを減じた値が前記基本制御量変化量制限値ΔGblimitより大きいか否かを判定し、「No」と判定する場合にはステップ1035に直ちに進む。
一方、CPU61は、ステップ1020の判定において[Yes]と判定する場合、ステップ1030に進み、前記基本制御量の前回値Gbbに前記基本制御量変化量制限値ΔGblimitを加えた値を基本制御量(の今回値)Gbとして設定し直した後、ステップ1035に進む。
ステップ1035に進むと、CPU61は、ヨー制御量Gdに応じた制動力と基本制御量Gbに応じた制動力の和に相当するブレーキ制御量の和(Gb+Gd)が前記上限値Gmax(図5を参照。)を超えるか否かを判定し、「No」と判定する場合にはステップ1055に直ちに進む。
一方、CPU61は、ステップ1035の判定において「Yes」と判定する場合、ステップ1040に進み、上記(3)式に相当するステップ1040内に記載の式に従って前記ブレーキ制御量の和が前記上限値Gmaxと等しくなるように基本制御量Gbを設定し直し、続くステップ1045にて同設定し直した基本制御量Gbの値が負の値になっている場合にはステップ1050に進んで同基本制御量Gbの値を「0」に設定した後、ステップ1055に進む。これにより、基本制御量Gbが負の値に設定されることが防止される。
CPU61はステップ1055に進むと、エンジン回転速度NEの値と、後述するルーチンにて設定されている最新の暫定目標スロットル弁開度TAt0の値と、図7に示したテーブルに相当する関数jとに基づいて調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxを求める。続いて、CPU61はステップ1060に進んで、現時点での基本制御量Gbの値が前記調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxよりも大きいか否かを判定する。
CPU61は、ステップ1060の判定において「Yes」と判定する場合、ステップ1065に進んで調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxの値をそのまま調整出力低下量Gdownとして設定し、続くステップ1070にてその時点での基本制御量Gbから同調整可能最大出力低下量相当の制御量Gdownmaxを減じた値を最終的な基本制御量Gbとして設定した後、ステップ1085に進む。
一方、CPU61は、ステップ1060の判定において「No」と判定する場合、ステップ1075に進んで現時点での基本制御量Gbの値をそのまま調整出力低下量Gdownとして設定し、続くステップ1080にて最終的な基本制御量Gbの値を「0」に設定した後、ステップ1085に進む。
そして、CPU61はステップ1085に進むと、最終的な基本制御量(の今回値)Gbの値を基本制御量の前回値Gbbとして設定・更新した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
次に、制動操舵制御のみを実行する際に各車輪に付与すべきブレーキ力を決定するために必要となる各車輪の目標スリップ率の算出について説明すると、CPU61は図11に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んで、ヨーレイトセンサ56により得られる実際のヨーレイトYrの値が「0」以上であるか否かを判定し、実際のヨーレイトYrの値が「0」以上である場合には同ステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、旋回方向表示フラグLを「1」に設定する。また、実際のヨーレイトYrの値が負の値である場合には同ステップ1105にて「No」と判定してステップ1115に進み、旋回方向表示フラグLを「0」に設定する。
ここで、旋回方向表示フラグLは、車両が左方向に旋回しているか右方向に旋回しているかを示すフラグであり、その値が「1」のときは車両が左方向に旋回していることを示し、その値が「0」のときは車両が右方向に旋回していることを示している。従って、旋回方向表示フラグLの値により車両の旋回方向が特定される。
次いで、CPU61はステップ1120に進み、図9のステップ910にて算出したヨーレイト偏差ΔYrの値が「0」以上であるか否かを判定する。ここで、ヨーレイト偏差ΔYrの値が「0」以上である場合(実際には、ヨーレイト偏差ΔYrの値が値Yrth以上である場合)には、CPU61は先に説明したように車両がアンダーステア状態にあると判定し、上記アンダーステア抑制制御を実行する際の各車輪の目標スリップ率を計算するためステップ1125に進んで、旋回方向表示フラグLの値が「1」であるか否かを判定する。
ステップ1125の判定において旋回方向表示フラグLが「1」であるとき、CPU61はステップ1130に進んで、正の一定値である係数Kfに前記最終的な基本制御量Gbを乗じた値を右前輪FRの目標スリップ率Stfrとして、正の一定値である係数Krに前記最終的な基本制御量Gbと前記ヨー制御量Gdの和の値を乗じた値を左後輪RLの目標スリップ率Strlとして、それぞれ設定するとともに、左前輪FLの目標スリップ率Stfl、及び右後輪RRの目標スリップ率Strrを共に「0」に設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップ1125の判定において旋回方向表示フラグLが「0」であるとき、CPU61はステップ1135に進んで、前記係数Kfに前記最終的な基本制御量Gbを乗じた値を左前輪FLの目標スリップ率Stflとして、前記係数Krに前記最終的な基本制御量Gbと前記ヨー制御量Gdの和の値を乗じた値を右後輪RRの目標スリップ率Strrとして、それぞれ設定するとともに、右前輪FRの目標スリップ率Stfr、及び左後輪RLの目標スリップ率Strlを共に「0」に設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、アンダーステア抑制制御を実行する際、旋回方向内側の後輪に、最終的な基本制御量Gbとヨー制御量Gdとの和の制御量に応じた目標スリップ率が設定されるとともに、旋回方向外側の前輪に、同最終的な基本制御量Gbのみに応じた目標スリップ率が設定される。
他方、ステップ1120の判定において、ヨーレイト偏差ΔYrの値が負の値である場合(実際には、ヨーレイト偏差ΔYrの値が値−Yrth以下である場合)には、CPU61は先に説明したように車両がオーバーステア状態にあると判定し、上記オーバーステア抑制制御を実行する際の各車輪の目標スリップ率を計算するためステップ1140に進んで、旋回方向表示フラグLの値が「1」であるか否かを判定する。
ステップ1140の判定において旋回方向表示フラグLが「1」であるとき、CPU61はステップ1145に進んで、前記係数Kfに前記最終的な基本制御量Gbと前記ヨー制御量Gdの和の値を乗じた値を右前輪FRの目標スリップ率Stfrとして、前記係数Krに前記最終的な基本制御量Gbを乗じた値を左後輪RLの目標スリップ率Strlとして、それぞれ設定するとともに、左前輪FLの目標スリップ率Stfl、及び右後輪RRの目標スリップ率Strrを共に「0」に設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップ1140の判定において旋回方向表示フラグLが「0」であるとき、CPU61はステップ1150に進んで、前記係数Kfに前記最終的な基本制御量Gbと前記ヨー制御量Gdの和の値を乗じた値を左前輪FLの目標スリップ率Stflとして、前記係数Krに前記最終的な基本制御量Gbを乗じた値を右後輪RRの目標スリップ率Strrとして、それぞれ設定するとともに、右前輪FRの目標スリップ率Stfr、及び左後輪RLの目標スリップ率Strlを共に「0」に設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、オーバーステア抑制制御を実行する際、旋回方向外側の前輪に、最終的な基本制御量Gbとヨー制御量Gdとの和の制御量に応じた目標スリップ率が設定されるとともに、旋回方向内側の後輪に、同最終的な基本制御量Gbのみに応じた目標スリップ率が設定される。以上のようにして、制動操舵制御のみを実行する際に各車輪に付与すべきブレーキ力を決定するために必要となる各車輪の目標スリップ率が決定される。
次に、車両の制御モードの設定について説明すると、CPU61は図12に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んで、現時点においてアンチスキッド制御が必要であるか否かを判定する。アンチスキッド制御は、ブレーキペダルBPが操作されている状態において特定の車輪がロックしている場合に、同特定の車輪のブレーキ力を減少させる制御である。アンチスキッド制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
具体的には、CPU61はステップ1205において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていることが示されている場合であって、且つ図8のステップ815にて算出した特定の車輪の実際のスリップ率Sa**の値が正の所定値以上となっている場合に、アンチスキッド制御が必要であると判定する。
ステップ1205の判定にてアンチスキッド制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1210に進んで、制動操舵制御とアンチスキッド制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「1」を設定し、続くステップ1250に進む。
一方、ステップ1205の判定にてアンチスキッド制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1215に進んで、現時点において前後制動力配分制御が必要であるか否かを判定する。前後制動力配分制御は、ブレーキペダルBPが操作されている状態において車両の前後方向の減速度の大きさに応じて前輪のブレーキ力に対する後輪のブレーキ力の比率(配分)を減少させる制御である。前後制動力配分制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
具体的には、CPU61はステップ1215において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていることが示されている場合であって、且つ図8のステップ820にて算出した推定車体加速度DVsoの値が負の値であり同推定車体加速度DVsoの絶対値が所定値以上となっている場合に、前後制動力配分制御が必要であると判定する。
ステップ1215の判定にて前後制動力配分制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1220に進んで、制動操舵制御と前後制動力配分制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「2」を設定し、続くステップ1250に進む。
ステップ1215の判定にて前後制動力配分制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1225に進んで、現時点においてトラクション制御が必要であるか否かを判定する。トラクション制御は、ブレーキペダルBPが操作されていない状態において特定の車輪がエンジン31の駆動力が発生している方向にスピンしている場合に、同特定の車輪のブレーキ力を増大させる制御又はエンジン31の駆動力を減少させる制御である。トラクション制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
具体的には、CPU61はステップ1225において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていないことが示されている場合であって、且つ図8のステップ815にて算出した特定の車輪の実際のスリップ率Sa**の値が負の値であり同実際のスリップ率Sa**の絶対値が所定値以上となっている場合に、トラクション制御が必要であると判定する。
ステップ1225の判定にてトラクション制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1230に進んで、制動操舵制御とトラクション制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「3」を設定し、続くステップ1250に進む。
ステップ1225の判定にてトラクション制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1235に進んで、現時点において上記制動操舵制御が必要であるか否かを判定する。具体的には、CPU61はステップ1235において、図9のステップ910にて算出したヨーレイト偏差ΔYrの絶対値が前記値Yrthよりも大きい場合に、図11にて設定された目標スリップ率St**の値が「0」でない特定の車輪が存在するので制動操舵制御が必要であると判定する。
ステップ1235の判定にて制動操舵制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1240に進んで、制動操舵制御のみを実行する制御モードを設定するため変数Modeに「4」を設定し、続くステップ1250に進む。一方、ステップ1235の判定にて制動操舵制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1245に進んで、車両の運動制御を実行しない非制御モードを設定するため変数Modeに「0」を設定し、続くステップ1250に進む。この場合、制御すべき特定の車輪は存在しない。
CPU61はステップ1250に進むと、制御対象車輪に対応するフラグCONT**に「1」を設定するとともに、制御対象車輪でない非制御対象車輪に対応するフラグCONT**に「0」を設定する。なお、このステップ1250における制御対象車輪は、図2に示した対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**の少なくとも一方を制御する必要がある車輪である。そして、CPU61はステップ1250を実行した後、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このようにして、制御モードが特定されるとともに、制御対象車輪が特定される。
次に、各車輪に付与すべきブレーキ力の制御について説明すると、CPU61は図13に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んで、変数Modeが「0」でないか否かを判定し、変数Modeが「0」であればステップ1305にて「No」と判定してステップ1310に進み、各車輪に対してブレーキ制御を実行する必要がないのでブレーキ液圧制御装置40における総ての電磁弁をOFF(非励磁状態)にした後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、ドライバーによるブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧が各ホイールシリンダW**に供給される。
一方、ステップ1305の判定において変数Modeが「0」でない場合、CPU61はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1315に進み変数Modeが「4」であるか否かを判定する。そして、変数Modeが「4」でない場合(即ち、制動操舵制御以外のアンチスキッド制御等が必要である場合)、CPU61はステップ1315にて「No」と判定してステップ1320に進み、図12のステップ1250にてフラグCONT**の値が「1」に設定された制御対象車輪に対して図11にて既に設定した制動操舵制御のみを実行する際に必要となる各車輪の目標スリップ率St**を補正した後ステップ1325に進む。これにより、制動操舵制御に重畳される変数Modeの値に対応する制御を実行する際に必要となる各車輪の目標スリップ率分だけ図11にて既に設定した各車輪の目標スリップ率St**が制御対象車輪毎に補正される。
ステップ1315の判定において変数Modeが「4」である場合、CPU61はステップ1315にて「Yes」と判定し、図11にて既に設定した各車輪の目標スリップ率St**を補正する必要がないので直接ステップ1325に進む。CPU61はステップ1325に進むと、前述のフラグCONT**の値が「1」に設定された制御対象車輪に対して、目標スリップ率St**の値と、図8のステップ815にて算出した実際のスリップ率Sa**の値と、ステップ1325内に記載の式とに基づいて制御対象車輪毎にスリップ率偏差ΔSt**を算出する。
次いで、CPU61はステップ1330に進み、上記制御対象車輪に対して同制御対象車輪毎に液圧制御モードを設定する。具体的には、CPU61はステップ1325にて算出した制御対象車輪毎のスリップ率偏差ΔSt**の値と、ステップ1330内に記載のテーブルとに基づいて、制御対象車輪毎に、スリップ率偏差ΔSt**の値が所定の正の基準値を超えるときは液圧制御モードを「増圧」に設定し、スリップ率偏差ΔSt**の値が所定の負の基準値以上であって前記所定の正の基準値以下であるときは液圧制御モードを「保持」に設定し、スリップ率偏差ΔSt**の値が前記所定の負の基準値を下回るときは液圧制御モードを「減圧」に設定する。
次に、CPU61はステップ1335に進み、ステップ1330にて設定した制御対象車輪毎の液圧制御モードに基づいて、図2に示した制御弁SA1,SA2、切換弁STRを制御するとともに制御対象車輪毎に同液圧制御モードに応じて増圧弁PU**及び減圧弁PD**を制御する。
具体的には、CPU61は液圧制御モードが「増圧」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**を共に第1の位置(非励磁状態における位置)に制御し、液圧制御モードが「保持」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**を第2の位置(励磁状態における位置)に制御するとともに対応する減圧弁PD**を第1の位置に制御し、液圧制御モードが「減圧」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**を共に第2の位置(励磁状態における位置)に制御する。
これにより、液圧制御モードが「増圧」となっている制御対象車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧は増大し、また、液圧制御モードが「減圧」となっている制御対象車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧は減少することで、各制御車輪の実際のスリップ率Sa**が目標スリップ率St**に近づくようにそれぞれ制御され、この結果、図12に設定した制御モードに対応する制御が達成される。
なお、図12のルーチンの実行により設定された制御モードがトラクション制御を実行する制御モード(変数Mode=3)であるときには、エンジン31の出力(駆動力)を減少させるため、CPU61は必要に応じて、スロットル弁THの開度TAがアクセルペダル操作量Accpに応じた開度よりも所定量だけ小さい開度になるようにスロットル弁アクチュエータ32を制御する。そして、CPU61はステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
最後に、スロットル弁THの制御について説明すると、CPU61は図14に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1400から処理を開始し、ステップ1405に進んでアクセル開度センサ53により検出されるアクセル操作量Accpの値と、ステップ1405内に記載のテーブルとに基づいて前述の暫定目標スロットル弁開度TAt0を求める。これにより、暫定目標スロットル弁開度TAt0は、運転者によるアクセル操作量Accpに応じた値に設定される。
次に、CPU61はステップ1410に進み、図10のステップ1065、若しくはステップ1075にて設定されている最新の調整出力低下量Gdownの値と、エンジン回転速度NEの値と、前記暫定目標スロットル弁開度TAt0の値と、これら3つの変数を引数としてスロットル弁開度調整量TAdownを求める関数kと、に基づいてスロットル弁開度調整量TAdownを求める。ここで、関数kは、調整出力低下量Gdownの値が「0」のとき「0」となるとともに、同調整出力低下量Gdownの増加に応じて増加する値を採る関数である。
次いで、CPU61はステップ1415に進んで、前記暫定目標スロットル弁開度TAt0の値から前記スロットル弁開度調整量TAdownの値を減じた値を目標スロットル弁開度TAtとして設定し、続くステップ1420にて、実際のスロットル弁開度TAが前記目標スロットル弁開度TAtになるように、スロットル弁アクチュエータ32に駆動信号を供給した後、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このようにして、実際のスロットル弁開度TAは、原則的に、アクセル操作量Accpに応じた暫定目標スロットル弁開度TAt0に制御されるとともに、前記調整出力低下量Gdownが「0」よりも大きいときには同調整出力低下量Gdownに相当する分(即ち、スロットル弁開度調整量TAdown)だけ暫定目標スロットル弁開度TAt0よりも小さい開度に制御される。
以上、説明したように、本発明による車両の運動制御装置によれば、車両の旋回状態を前記目標の状態とするためのヨーイングモーメントを車両に発生させるため、即ち、前記制動操舵制御(のみ)を実行する場合、所謂「X配管」における上記2系統のうち旋回方向外側の前輪と同旋回方向内側の後輪が属する側の一つの系統の2つの車輪にブレーキ液圧による制動力が付与される。従って、上記従来の装置のように一つの車輪にのみ制動力が付与される場合に比して車輪に付与される制動力の総和が大きくなり得る。この結果、これら2つの車輪に付与される制動力(全体)が車両を減速させる減速力として効果的に機能し得るから、車両の減速により車両に働く遠心力を効果的に低減できた。よって、より適切に所期のヨーイングモーメントが車両に発生し得るようになって、より確実に車両の旋回状態を目標の状態とすることができた。
また、制動操舵制御(のみ)を実行している間においては、「X配管」における一方の系統の2つの車輪にのみブレーキ液圧による制動力が付与されるから、制御弁SA1,SA2(図2を参照)のうち同一方の系統に対応する側の制御弁のみが励磁状態に制御され、他方の系統に対応する側の制御弁は非励磁状態に維持される。この結果、前記他方の系統におけるマスタシリンダMC(或いは、ハイドロブースタHB)と2つの車輪の各ホイールシリンダとの連通が確保されるから、上述した従来の装置に比して、ブレーキペダルの操作フィーリングの低下が発生することがなく、且つ、同一方の系統に異常が発生した場合であってもフェールセーフ機能が達成され得る。このフェールセーフ機能をより確実に達成するためには、切換弁STR(図2を参照)を系統毎に個別に設けることが好ましい。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、車両の各車輪に付与されるブレーキ力を制御するための制御目標として各車輪のスリップ率を使用しているが、例えば、各車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧等、各車輪に付与されるブレーキ力に応じて変化する物理量であればどのような物理量を制御目標としてもよい。
また、上記実施形態においては、ヨー制御量Gdに応じた制動力と基本制御量Gbに応じた制動力の和に相当するブレーキ制御量の和(Gb+Gd)が前記上限値Gmaxを超えるとき、同ブレーキ制御量の和が同上限値Gmaxと等しくなるように基本制御量Gbを制限するよう構成されているが、前記2つの車輪に付与されるブレーキ液圧による制動力の総和に相当するブレーキ制御量の総和(2・Gb+Gd)が前記上限値Gmaxを超えるとき、同ブレーキ制御量の総和が同上限値Gmaxと等しくなるように基本制御量Gbを制限するよう構成してもよい。
本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置を搭載した車両の概略構成図である。 図1に示したブレーキ液圧制御装置の概略構成図である。 アンダーステア抑制制御時において左方向に旋回している車両の各車輪に付与されるブレーキ力の一例を示した図である。 図1に示したCPUが参照する、推定車体速度及び路面摩擦係数と、車両を減速させるための基本制御量との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照する、ヨーレイト偏差と、ヨーイングモーメントを発生させるためのヨー制御量との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照する、推定車体速度及び路面摩擦係数と、基本制御量の変化速度を制限するための基本制御量変化量制限値との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照する、エンジン回転速度及びスロットル弁開度と、調整可能最大出力低下量相当の制御量との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが実行する車輪速度等を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するヨーレイト偏差を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するブレーキ制御量を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する目標スリップ率を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する制御モードを設定するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する各車輪に付与するブレーキ力を制御するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するスロットル弁開度を制御するためのルーチンを示したフローチャートである。
符号の説明
10…車両の運動制御装置、20…前輪転舵機構部、30…駆動力伝達機構部、40…ブレーキ液圧制御装置、50…センサ部、51**…車輪速度センサ、52・・・ステアリング角度センサ、53・・・アクセル開度センサ、54・・・横加速度センサ、56・・・ヨーレイトセンサ、57・・・回転速度センサ、58・・・スロットル弁開度センサ、60…電気式制御装置、61…CPU

Claims (7)

  1. 各車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するためのブレーキ配管が、右前輪と左後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統と、左前輪と右後輪の各ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給するための系統とから成る互いに独立した2系統の配管により構成された車両に適用される車両の運動制御装置であって、
    前記車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、
    前記2系統のうち何れか一方の系統に属する2つの車輪にブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与することで前記車両の旋回状態を目標の状態とするための所定のヨーイングモーメントを同車両に対して発生させる旋回状態制御手段と、
    を備えた車両の運動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の運動制御装置において、
    前記旋回状態制御手段は、
    前記車両の旋回方向における外側の前輪と同旋回方向における内側の後輪の2つの車輪に対し、
    前記車両の旋回状態がアンダーステアの状態になっているとき前記旋回方向における外側の前輪よりも前記旋回方向における内側の後輪に付与される制動力が大きくなるようにブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与し、
    前記車両の旋回状態がオーバーステアの状態になっているとき前記旋回方向における内側の後輪よりも前記旋回方向における外側の前輪に付与される制動力が大きくなるようにブレーキ液圧による制動力をそれぞれ付与するよう構成された車両の運動制御装置。
  3. 請求項2に記載の車両の運動制御装置において、
    前記旋回状態制御手段は、
    前記車両の走行状態に基づいて同車両を減速させるための基本制御量を算出する基本制御量算出手段と、
    前記車両の旋回状態に基づいて前記所定のヨーイングモーメントを同車両に対して発生させるためのヨー制御量を算出するヨー制御量算出手段と、を備え、
    前記車両の旋回状態がアンダーステアの状態になっているとき、前記旋回方向における外側の前輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与するとともに前記旋回方向における内側の後輪に対しては同基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力に前記ヨー制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を加えた制動力を付与し、
    前記車両の旋回状態がオーバーステアの状態になっているとき、前記旋回方向における内側の後輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与するとともに前記旋回方向における外側の前輪に対しては同基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力に前記ヨー制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を加えた制動力を付与するように構成された車両の運動制御装置。
  4. 請求項3に記載の車両の運動制御装置において、
    前記基本制御量算出手段は、前記車両の走行状態としての、前記車両の車体速度、及び路面摩擦係数の少なくとも一つに基づいて前記基本制御量を算出するように構成された車両の運動制御装置。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の車両の運動制御装置において、
    前記基本制御量算出手段は、前記車両の走行状態に応じて前記基本制御量の変化速度が制限されるように同基本制御量を算出するよう構成された車両の運動制御装置。
  6. 請求項3乃至請求項5の何れか一項に記載の車両の運動制御装置において、
    前記基本制御量算出手段は、前記ヨー制御量算出手段により算出される前記ヨー制御量に応じて前記基本制御量の値が制限されるように同基本制御量を算出するよう構成された車両の運動制御装置。
  7. 請求項3乃至請求項6の何れか一項に記載の車両の運動制御装置において、
    前記旋回状態制御手段は、
    前記2つの車輪に対して前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力を付与する代わりに、
    前記車両の駆動源の出力を同車両の運転状態に応じて低下せしめるとともに、同駆動源の出力低下に相当する制動力だけ前記基本制御量に応じたブレーキ液圧による制動力よりも小さいブレーキ液圧による制動力を前記2つの車輪に付与するように構成された車両の運動制御装置。
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