JP2005042772A - ノックピン、位置決め構造、及びノックピンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノックピン、或いはノックピンを用いた位置決め構造において、生産性を保持しつつ、位置決め精度を向上する。
【解決手段】略円筒形状に形成された金属製のノックピン20にあって、断面円形状をなすノックピン本体21の外周面には、その一部を切り欠くように形成された3つの逃げ溝22が設けられている。各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面に対する砥石の当たりが連続当たりとなるように螺旋状に延伸されており、ノックピン本体21の外周面へのセンタレス研削が可能となっている。
【選択図】 図3
【解決手段】略円筒形状に形成された金属製のノックピン20にあって、断面円形状をなすノックピン本体21の外周面には、その一部を切り欠くように形成された3つの逃げ溝22が設けられている。各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面に対する砥石の当たりが連続当たりとなるように螺旋状に延伸されており、ノックピン本体21の外周面へのセンタレス研削が可能となっている。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノックピン、位置決め構造、及びノックピンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、2つの部材の対向する位置にそれぞれ断面円形状に形成された位置決め用のピン穴を設け、略円筒形状のノックピンをそれらのピン穴を跨いで挿入して、それら2つの部材の位置決めを行う位置決め構造が広く採用されている。
【0003】
一般に、そうした位置決め構造では、中実円柱形状のノックピン、いわゆるソリッドノックピンが使用されている。ソリッドノックピンは、挿入可能なピン穴との嵌め合いの限界のため、ピン穴との間に一定のクリアランスを設けた状態で使用されている。またそのクリアランスには、ピン穴加工時の穴径の誤差や形成位置のずれを吸収可能なように、十分な余裕が設けてある。そのため、ピン穴内でノックピンが径方向にがたついてしまい、金属部品間の組付け位置にずれが生じてしまうことがある。
【0004】
ピン穴への挿入性を保持しつつ、そうしたがたつきを抑えるには、ノックピンを、圧入されるピン穴の内径に追従して柔軟に縮径可能な弾性変形し易い形状とする必要がある。そうしたノックピン形状としては例えば特許文献1に記載の家具の仮止め用の樹脂製又は木製の弾性ピンと同様の形状断面円形状をなすノックピン本体の外周面に軸方向に延びる3つの突起を設けた形状や、特許文献2に見られるようなノックピン中央部を軸方向に貫通する孔を有する中空円筒状の形状が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
実開平4−44511号公報
【特許文献2】
実開平5−38409号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの形状によれば、上記弾性変形のし易さは、ある程度は改善されるものの、下記のように未だ改善の余地がある。
【0007】
すなわち、上記特許文献2に記載のような中空円筒形状のノックピンは、上記ソリッドノックピンと比べれば、確かに弾性変形し易い形状であるとはいえ、縮径に伴う外周面の周方向への変形が制限されているため、ピン穴内径への追従性は限られたものとなり、上記問題を十分には解決し得ないものとなっている。
【0008】
また上記特許文献1のような外周に突起の設けられたノックピンでは、突起の先端部のみでピン穴に当接されているため、外力の作用等に応じて突起が容易に弾性変形してしまい、ノックピンがピン穴内でがたついてしまう虞があり、高い位置決め精度の確保は困難である。
【0009】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、ノックピン、或いはノックピンを用いた位置決め構造において、生産性を保持しつつ、位置決め精度を向上することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、略円筒形状に形成されて、2つの部材の位置決めに用いられる金属製のノックピンにおいて、断面円形状をなすノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノックピンにおいて、前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、当該ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成したものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、2つの部材の対向する位置にそれぞれ形成されたピン穴と、略円筒形状に形成されるとともに前記2つの部材のピン穴を跨いで挿入される金属製のノックピンとを有して、前記2つの部材の位置決めを行う位置決め構造において、前記ピン穴の内径と略同径の断面円形状に形成されたノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のノックピンにおいて、前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、前記ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成したものである。
【0014】
請求項1、3に記載の構成では、ノックピン本体の外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝によって、ピン穴への圧入時に、そのピン穴内周と当接する外周側面の周方向への弾性変形が許容されるため、圧入されるピン穴の内径に追従してノックピンが容易に縮径されるようになる。そのため、ノックピンをピン穴に対して、がたつきを生じさせることなく、容易に圧入することができる。また逃げ溝の切り欠かれた部分以外の外周面が、断面円形状に形成されたピン穴の内周面に当接した状態でノックピンをピン穴に圧入させることができるため、ピン穴の中心軸とノックピンの中心軸とを容易に一致させることができる。
【0015】
更に上記逃げ溝は螺旋状に延伸されているため、ノックピン本体の外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとすることができ、ノックピン本体の外周面をセンタレス研削にて加工することができる。そのため、ピン穴と当接するノックピン本体の外周面を、比較的容易に、高い真円度に仕上げることができる。したがって、高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0016】
特に請求項2、4に記載のように逃げ溝を形成した場合には、ピン穴に圧入されたノックピンの外周面への面圧の作用に応じた力が、ノックピンの何れの断面においても釣り合いを保つようになる。そのため、圧入されたピン穴内において、ノックピンの中心軸は、ピン穴の中心軸と一致されるようになり、位置決め精度の更なる向上が可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、研削加工された外周面を有する断面円形状のノックピン本体と、そのノックピン本体の前記外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝と、を有する金属製のノックピンを製造する方法であって、丸棒材の外周面に、螺旋状に延伸するように前記逃げ溝を形成する工程と、前記逃げ溝の形成された前記丸棒材の外周面にセンタレス研削を施す工程と、前記丸棒材を、前記ノックピンの長さに加工する工程とを有することを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のノックピンの製造方法において、前記逃げ溝の前記丸棒材の軸方向における幅は、前記研削加工に用いられる砥石の前記丸棒材への当たり幅に比して小さくなるように形成されるものである。
【0019】
外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝を備え、且つその外周面が研削加工によって高い真円度に仕上げられたノックピンを用いれば、がたつきを生じさせることなく容易にノックピンをピン穴に圧入させることができるため、位置決め精度を向上することができる。請求項5に記載の製造方法では、上記逃げ溝を螺旋状に形成することで、ノックピンの外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとした上で、その外周面をセンタレス研削しているため、上記のようなノックピンの外周面を容易に、高い真円度に仕上げることができる。したがって、位置決め精度の高いノックピンを、高精度且つ高い生産性で製造することができる。更に請求項6に記載のように、逃げ溝の形成を行えば、センタレス加工における外周面に対する砥石の当たりを確実に連続当たりとすることができる。
【0020】
ちなみに、上記丸棒材をノックピンの長さに加工する工程は、丸棒材への逃げ溝の形成の前、その逃げ溝の形成とセンタレス研削の間、及びセンタレス研削の後、のいずれに行うようにしても良い。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るノックピン及び位置決め構造が、製造時の2つの部材に位置決めに適用される内燃機関のシリンダブロックのクランクシャフト軸受部について説明する。
【0022】
図1に示すように、クランクシャフト11の軸受部は、シリンダブロックに一体形成されたベアリング部10bと、そのベアリング部10b上に取り付けられるベアリングキャップ10aとの2つの部材によって構成されている。ベアリングキャップ10a及びベアリング部10bには、半円弧形状に切り欠かれた軸受溝12a、12bがそれぞれ形成されており、それら軸受溝12a、12bの間に狭持することで、クランクシャフト11を回転可能に軸支されるようになっている。
【0023】
ベアリングキャップ10a及びベアリング部10bには、それぞれ2つの位置決め用のピン穴13a、14a、13b、14bが形成されている。ベアリングキャップ10aに形成される2つのピン穴13a、14aの間隔と、ベアリング部10bに形成される2つのピン穴13b、14bの間隔とは、等しくなるように形成されている。そしてベアリングキャップ10aがベアリング部10b上の適正な位置に配置されたときに、ベアリングキャップ10aのピン穴13a、14aは、ベアリング部10bのピン穴13b、14bとそれぞれ同位置に位置されるようになっている。
【0024】
これらベアリングキャップ10a及びベアリング部10bは、2本のノックピン20を用いて、所定の位置に位置決め固定されている。一本のノックピン20は、ベアリングキャップ10aのピン穴13aとベアリング部10bのピン穴13bとを跨ぐように圧入され、もう一本のノックピン20は、ベアリングキャップ10aのピン穴14aとベアリング部10bのピン穴14bとを跨ぐように圧入される。
【0025】
こうしたクランクシャフト11の軸受部は、次の手順で製造される。
まず、図2(a)に示すように、クランクシャフト11を間に組み入れることなく、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを、上記2本のノックピン20によって位置決め固定する。そしてその状態で、ベアリングキャップ10aの軸受溝12a、及びベアリング部10bの軸受溝12bの周面を一体に加工して、両軸受溝12a、12bによって形成されるクランクシャフト11の軸受を高い真円度に仕上げる。
【0026】
その後、図2(b)に示すように、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを一旦分離する。その状態で両軸受溝12a、12bの間にクランクシャフト11を組み入れる。そして再び、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを、上記2本のノックピン20によって位置決め固定することで、図1に示した軸受部が製造される。すなわち、以上の軸受部の製造に際しては、軸受の仕上げ加工時のベアリングキャップ10aとベアリング部10bとの位置関係が、クランクシャフト11の組付け時に再現されるように、ノックピン20による位置決めが行われている。
【0027】
次に、上記ノックピン20の詳細を説明する。図3(a)は、本実施形態に係るノックピン20の側面構造を、同図(b)はその正面構造をそれぞれ示している。
【0028】
ノックピン20にあって、略円柱形状に形成された金属製のノックピン本体21の外周面には、3つの逃げ溝22が形成されている。各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面において螺旋状に延伸されている。すなわち、各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面において、同ノックピン20の中心軸方向に対して所定の角度にて交差する方向に延伸されている。また図3(b)に示すように、各逃げ溝22は、ノックピン本体21の周方向において等間隔にそれぞれ形成されている。
【0029】
ノックピン本体21の外周面において逃げ溝22の形成されていない部分は、圧入時に上記位置決め用の穴の内周に当接される接触部23となっている。ノックピン20周方向における各接触部23の幅は、それぞれ等しくなるように形成されている。ノックピン20の接触部23の外径は、それが挿入される上記ピン穴13a、13b、14a、14bの内径に比して、若干大きい寸法に形成されている。
【0030】
次に、こうしたノックピン20の製造手順を説明する。
まず、上記逃げ溝22となる螺旋状の溝25が外周面に形成された、図4に示すような丸棒材24を製造する。こうした螺旋状の溝25の形成は、押出加工や転造等によって行われる。
【0031】
続いて、丸棒材24の外周面にあって上記溝25以外の部分26に研削加工を施す。ここで研削加工の施される部分26は、上記ノックピン20の接触部23となる。ここでの研削加工は、下記のようなセンタレス研削盤を用いて行われる。
【0032】
図5(a)に示すように、センタレス研削盤は、上記丸棒材24がその上面に載置される支持刃62、及びその支持刃62上に載置された丸棒材24を挟んでその両側にそれぞれ配設される2つの砥石車、すなわち研削砥石車60及び調整車61を備えて構成されている。
【0033】
研削砥石車60及び調整車61は、円盤形状に形成された砥石であり、モータ等の動力でそれぞれ回転されるようになっている。図5(b)に示すように、研削砥石車60は、その回転軸L1が、上記支持刃62上に載置された丸棒材24の中心軸L0と平行となるように配設されている。一方、調整車61は、その回転軸L2が、上記丸棒材24の中心軸L0に平行な方向に対して僅かに傾いた状態で配設されている。
【0034】
支持刃62上に載置された丸棒材24は、支持刃62、研削砥石車60及び調整車61によって3点支持され、その中心軸L0の位置が保持される。その状態で研削砥石車60及び調整車61が回転すると、それらの外周面に当接した丸棒材24の外周面が研削される。このとき、研削砥石車60の外周面の送り出し速度と調整車61の外周面の送り出し速度との速度差によって、丸棒材24はその中心軸L0回りに回転される。また上記調整車61の回転軸L2の傾きのため、調整車61の回転に応じて丸棒材24は、図5(b)に矢印で示す方向に、順次送り出される。これにより、丸棒材24の外周面のすべてに順次研削が施される。
【0035】
こうしたセンタレス研削では、加工物をセンタやチャック等で固定してセンタ出しを行う必要がないため、たとえ加工物が長尺であっても、短時間且つ容易に研削することができる。すなわち、ノックピン20一本当たりの研削加工時間を短くすることができる。
【0036】
なお上記螺旋状の溝25は、こうしたセンタレス研削において、丸棒材24の外周面に対する研削砥石車60及び調整車61の当たりが連続当たりとなるように、すなわち丸棒材24が如何に回転しても、丸棒材24の外周面の溝25以外の部分26にそれら砥石車が当接するように形成されている。こうした砥石車の連続当たりを確保するには、溝25の丸棒材24の軸方向における幅W0を、研削砥石車60及び調整車61の当たり幅W1、W2に比して小さくなるように形成すれば良い。
【0037】
こうした研削の後、丸棒材24は必要な長さに切り出される。そして切り出された丸棒材24の両端に面取り加工を施すことで、一本の丸棒材24から複数の上記ノックピン20が製造されている。
【0038】
次に、以上説明したノックピン20の作用について説明する。
図6に、ノックピン20がその接触部23の外径よりも内径の小さいピン穴13aに圧入されたときの状態を示す。同図に示すように、ピン穴13a内にノックピン20が圧入されると、接触部23はピン穴13aの内周と当接される。そしてそれらの当接面に作用する面圧pのため、接触部23の外周面は、同図に矢印で示されるように、ピン穴13aの内周面に沿って、周方向に広がるように変形する。このとき、接触部23の両側には、ノックピン本体21の外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝22が設けられているため、そうした接触部23外周面の変形を許容することができる。そのため、上記ノックピン20では、ノックピン本体21の外径を、圧入されるピン穴の内径に追従して自在に縮径させることができる。
【0039】
こうしたノックピン20を用いれば、ピン穴の径やその形成位置の誤差を、上記のようなノックピン20の弾性変形で吸収することができる。またそうした弾性変形によって、ノックピン20のピン穴への円滑な着脱を許容しながら、ノックピン20のピン穴内でのがたつきを防止することができる。更に、上記ノックピン20では、その周方向において3つの逃げ溝22が等間隔で形成されており、且つ接触部23の外周面が高い真円度に仕上げられているため、上記面圧pに基づく力は、ノックピン20の何れの断面においても釣り合いを保つようになる。そのため、ノックピン20の中心軸L0は、圧入されたピン穴の中心軸に自律的に一致されるようになる。
【0040】
したがって、こうしたノックピン20を用いれば、上記軸受部の製造に際してのベアリングキャップ10a及びベアリング部10bの位置決めを高精度で行うことができる。すなわち、軸受内周面の仕上げ加工時のベアリングキャップ10a及びベアリング部10bの位置関係を、クランクシャフト11組付け時に高い精度で再現することができ、軸受内周面を高い真円度に形成することができる。
【0041】
もっとも、図7(a)、(b)に示すノックピン50のように、外周面に逃げ溝51を軸方向に延伸するように形成しても、上記のような位置決め精度の向上は可能である。しかしながら、同図のような逃げ溝51の形成されたノックピン50の外周面は、センタレスでは、研削することができないようになっている。すなわち、このようなノックピン50は、図8(a)、(b)に示すように、砥石車等の支持面とノックピン50の中心軸L3との距離Hがノックピン50の回転に応じて変化してしまい、砥石車に対するノックピン50の外周面の当たりを連続当たりとすることはできないようになっている。したがって、このようなノックピン50では、チャックやセンタ等を用いたセンタ出しを行わなければその外周面を研削することができず、生産性の低下を招いてしまう。
【0042】
その点、逃げ溝22が螺旋状に形成された本実施形態のノックピン20では、図9(a)、(b)に示すように、砥石車等の支持面上でノックピン20が如何に回転しようとも、その支持面とノックピン20の中心軸L0との距離Hは一定に保たれる。そのため、砥石車に対するノックピン20の外周面の当たりが連続当たりとなり、センタレスによる外周面の研削を容易に行うことができる。そのため、本実施形態のノックピン20によれば、外周面のセンタレス研削による高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0043】
以上、説明した実施の形態を以下のように変更してもよい。
・複数のノックピンを用いる位置決め構造において、上記のような逃げ溝22の形成されたノックピン20を、複数のノックピンの一部のみに採用するようにしてもよい。例えば上記軸受部の位置決め構造において、図10に示すように、ピン穴13a、13bには、上記ノックピン20を挿入し、ピン穴14a、14bには、逃げ溝の無いソリッドノックピン29を挿入するようにして良い。この場合にも、ピン穴13a、14a内でのノックピン20のがたつきを防止でき、ノックピンを双方共に上記ソリッドノックピン29とした場合に比して、位置決め精度は向上される。
【0044】
・逃げ溝22をノックピン20の周方向に対して必ずしも等間隔に形成しなくてもよい。例えばノックピンの任意横断面の断面形状が、中心軸に垂直な面に対して対称となるように逃げ溝が形成されていれば、圧入時の接触部の面圧の作用に応じた力の釣り合いを保ち、ピン穴内でのノックピン中心軸の位置を保持できる。
【0045】
・上記実施の形態では、ノックピン本体21の外周面に3つの逃げ溝22を形成するようにしているが、そうした逃げ溝22を4つ以上設けるようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。もっとも、逃げ溝22を3つとすれば、上記実施形態の作用効果を奏しつつ、逃げ溝の形成に伴うノックピン形状の複雑化を必要最小限とすることができる。
【0046】
・更に逃げ溝22を2つ以下としても良い。その場合にも、ノックピン外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとなっていれば、高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0047】
・上記実施形態では、丸棒材24に対してセンタレス研削を行った後、その丸棒材24をノックピン20の長さに切断加工するようにしているが、そうした長さの加工を、丸棒材24に螺旋状の溝25を形成する前に行うようにしても、或いは溝25の形成とセンタレス研削の間に行うようにしても良い。もっとも、上記実施形態のように外周面のセンタレス研削後に、そうした長さの加工を行うようにすれば、複数のノックピン20に対する逃げ溝22の形成、及びその外周面の研削を、一括して行なえるため、より高い生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るノックピン及び位置決め構造の適用されるクランクシャフト軸受部の断面図。
【図2】(a)、(b)同クランクシャフト軸受部の製造手順を示す図。
【図3】上記実施形態に適用されるノックピンの(a)側面図、及び(b)正面図。
【図4】同ノックピンの製造に用いられる丸棒材の側面図。
【図5】同ノックピンの製造に用いられるセンタレス研削盤の(a)正面図、及び(b)側面図。
【図6】同ノックピンのピン穴圧入時の弾性変形態様を示す断面図。
【図7】同ノックピンの比較例の(a)正面図、及び(b)側面図。
【図8】(a)、(b)同比較例の研削時の状態を各示す図。
【図9】(a)、(b)上記実施形態に適用されるノックピンの研削時の状態を各示す図。
【図10】クランクシャフト軸受部に適用される位置決め構造の変形例の断面図。
【符号の説明】
10a…ベアリングキャップ、10b…ベアリング部、11…クランクシャフト、12a,12b…軸受溝、13a,13b,14a,14b…ピン穴、20、50…ノックピン、21…ノックピン本体、22、51…逃げ溝、23…接触部、24…丸棒材、25…溝、60…研削砥石車、61…調整車、62…支持刃。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノックピン、位置決め構造、及びノックピンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、2つの部材の対向する位置にそれぞれ断面円形状に形成された位置決め用のピン穴を設け、略円筒形状のノックピンをそれらのピン穴を跨いで挿入して、それら2つの部材の位置決めを行う位置決め構造が広く採用されている。
【0003】
一般に、そうした位置決め構造では、中実円柱形状のノックピン、いわゆるソリッドノックピンが使用されている。ソリッドノックピンは、挿入可能なピン穴との嵌め合いの限界のため、ピン穴との間に一定のクリアランスを設けた状態で使用されている。またそのクリアランスには、ピン穴加工時の穴径の誤差や形成位置のずれを吸収可能なように、十分な余裕が設けてある。そのため、ピン穴内でノックピンが径方向にがたついてしまい、金属部品間の組付け位置にずれが生じてしまうことがある。
【0004】
ピン穴への挿入性を保持しつつ、そうしたがたつきを抑えるには、ノックピンを、圧入されるピン穴の内径に追従して柔軟に縮径可能な弾性変形し易い形状とする必要がある。そうしたノックピン形状としては例えば特許文献1に記載の家具の仮止め用の樹脂製又は木製の弾性ピンと同様の形状断面円形状をなすノックピン本体の外周面に軸方向に延びる3つの突起を設けた形状や、特許文献2に見られるようなノックピン中央部を軸方向に貫通する孔を有する中空円筒状の形状が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
実開平4−44511号公報
【特許文献2】
実開平5−38409号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの形状によれば、上記弾性変形のし易さは、ある程度は改善されるものの、下記のように未だ改善の余地がある。
【0007】
すなわち、上記特許文献2に記載のような中空円筒形状のノックピンは、上記ソリッドノックピンと比べれば、確かに弾性変形し易い形状であるとはいえ、縮径に伴う外周面の周方向への変形が制限されているため、ピン穴内径への追従性は限られたものとなり、上記問題を十分には解決し得ないものとなっている。
【0008】
また上記特許文献1のような外周に突起の設けられたノックピンでは、突起の先端部のみでピン穴に当接されているため、外力の作用等に応じて突起が容易に弾性変形してしまい、ノックピンがピン穴内でがたついてしまう虞があり、高い位置決め精度の確保は困難である。
【0009】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、ノックピン、或いはノックピンを用いた位置決め構造において、生産性を保持しつつ、位置決め精度を向上することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、略円筒形状に形成されて、2つの部材の位置決めに用いられる金属製のノックピンにおいて、断面円形状をなすノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノックピンにおいて、前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、当該ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成したものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、2つの部材の対向する位置にそれぞれ形成されたピン穴と、略円筒形状に形成されるとともに前記2つの部材のピン穴を跨いで挿入される金属製のノックピンとを有して、前記2つの部材の位置決めを行う位置決め構造において、前記ピン穴の内径と略同径の断面円形状に形成されたノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のノックピンにおいて、前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、前記ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成したものである。
【0014】
請求項1、3に記載の構成では、ノックピン本体の外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝によって、ピン穴への圧入時に、そのピン穴内周と当接する外周側面の周方向への弾性変形が許容されるため、圧入されるピン穴の内径に追従してノックピンが容易に縮径されるようになる。そのため、ノックピンをピン穴に対して、がたつきを生じさせることなく、容易に圧入することができる。また逃げ溝の切り欠かれた部分以外の外周面が、断面円形状に形成されたピン穴の内周面に当接した状態でノックピンをピン穴に圧入させることができるため、ピン穴の中心軸とノックピンの中心軸とを容易に一致させることができる。
【0015】
更に上記逃げ溝は螺旋状に延伸されているため、ノックピン本体の外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとすることができ、ノックピン本体の外周面をセンタレス研削にて加工することができる。そのため、ピン穴と当接するノックピン本体の外周面を、比較的容易に、高い真円度に仕上げることができる。したがって、高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0016】
特に請求項2、4に記載のように逃げ溝を形成した場合には、ピン穴に圧入されたノックピンの外周面への面圧の作用に応じた力が、ノックピンの何れの断面においても釣り合いを保つようになる。そのため、圧入されたピン穴内において、ノックピンの中心軸は、ピン穴の中心軸と一致されるようになり、位置決め精度の更なる向上が可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、研削加工された外周面を有する断面円形状のノックピン本体と、そのノックピン本体の前記外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝と、を有する金属製のノックピンを製造する方法であって、丸棒材の外周面に、螺旋状に延伸するように前記逃げ溝を形成する工程と、前記逃げ溝の形成された前記丸棒材の外周面にセンタレス研削を施す工程と、前記丸棒材を、前記ノックピンの長さに加工する工程とを有することを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のノックピンの製造方法において、前記逃げ溝の前記丸棒材の軸方向における幅は、前記研削加工に用いられる砥石の前記丸棒材への当たり幅に比して小さくなるように形成されるものである。
【0019】
外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝を備え、且つその外周面が研削加工によって高い真円度に仕上げられたノックピンを用いれば、がたつきを生じさせることなく容易にノックピンをピン穴に圧入させることができるため、位置決め精度を向上することができる。請求項5に記載の製造方法では、上記逃げ溝を螺旋状に形成することで、ノックピンの外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとした上で、その外周面をセンタレス研削しているため、上記のようなノックピンの外周面を容易に、高い真円度に仕上げることができる。したがって、位置決め精度の高いノックピンを、高精度且つ高い生産性で製造することができる。更に請求項6に記載のように、逃げ溝の形成を行えば、センタレス加工における外周面に対する砥石の当たりを確実に連続当たりとすることができる。
【0020】
ちなみに、上記丸棒材をノックピンの長さに加工する工程は、丸棒材への逃げ溝の形成の前、その逃げ溝の形成とセンタレス研削の間、及びセンタレス研削の後、のいずれに行うようにしても良い。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るノックピン及び位置決め構造が、製造時の2つの部材に位置決めに適用される内燃機関のシリンダブロックのクランクシャフト軸受部について説明する。
【0022】
図1に示すように、クランクシャフト11の軸受部は、シリンダブロックに一体形成されたベアリング部10bと、そのベアリング部10b上に取り付けられるベアリングキャップ10aとの2つの部材によって構成されている。ベアリングキャップ10a及びベアリング部10bには、半円弧形状に切り欠かれた軸受溝12a、12bがそれぞれ形成されており、それら軸受溝12a、12bの間に狭持することで、クランクシャフト11を回転可能に軸支されるようになっている。
【0023】
ベアリングキャップ10a及びベアリング部10bには、それぞれ2つの位置決め用のピン穴13a、14a、13b、14bが形成されている。ベアリングキャップ10aに形成される2つのピン穴13a、14aの間隔と、ベアリング部10bに形成される2つのピン穴13b、14bの間隔とは、等しくなるように形成されている。そしてベアリングキャップ10aがベアリング部10b上の適正な位置に配置されたときに、ベアリングキャップ10aのピン穴13a、14aは、ベアリング部10bのピン穴13b、14bとそれぞれ同位置に位置されるようになっている。
【0024】
これらベアリングキャップ10a及びベアリング部10bは、2本のノックピン20を用いて、所定の位置に位置決め固定されている。一本のノックピン20は、ベアリングキャップ10aのピン穴13aとベアリング部10bのピン穴13bとを跨ぐように圧入され、もう一本のノックピン20は、ベアリングキャップ10aのピン穴14aとベアリング部10bのピン穴14bとを跨ぐように圧入される。
【0025】
こうしたクランクシャフト11の軸受部は、次の手順で製造される。
まず、図2(a)に示すように、クランクシャフト11を間に組み入れることなく、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを、上記2本のノックピン20によって位置決め固定する。そしてその状態で、ベアリングキャップ10aの軸受溝12a、及びベアリング部10bの軸受溝12bの周面を一体に加工して、両軸受溝12a、12bによって形成されるクランクシャフト11の軸受を高い真円度に仕上げる。
【0026】
その後、図2(b)に示すように、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを一旦分離する。その状態で両軸受溝12a、12bの間にクランクシャフト11を組み入れる。そして再び、ベアリングキャップ10aとベアリング部10bとを、上記2本のノックピン20によって位置決め固定することで、図1に示した軸受部が製造される。すなわち、以上の軸受部の製造に際しては、軸受の仕上げ加工時のベアリングキャップ10aとベアリング部10bとの位置関係が、クランクシャフト11の組付け時に再現されるように、ノックピン20による位置決めが行われている。
【0027】
次に、上記ノックピン20の詳細を説明する。図3(a)は、本実施形態に係るノックピン20の側面構造を、同図(b)はその正面構造をそれぞれ示している。
【0028】
ノックピン20にあって、略円柱形状に形成された金属製のノックピン本体21の外周面には、3つの逃げ溝22が形成されている。各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面において螺旋状に延伸されている。すなわち、各逃げ溝22は、ノックピン本体21の外周面において、同ノックピン20の中心軸方向に対して所定の角度にて交差する方向に延伸されている。また図3(b)に示すように、各逃げ溝22は、ノックピン本体21の周方向において等間隔にそれぞれ形成されている。
【0029】
ノックピン本体21の外周面において逃げ溝22の形成されていない部分は、圧入時に上記位置決め用の穴の内周に当接される接触部23となっている。ノックピン20周方向における各接触部23の幅は、それぞれ等しくなるように形成されている。ノックピン20の接触部23の外径は、それが挿入される上記ピン穴13a、13b、14a、14bの内径に比して、若干大きい寸法に形成されている。
【0030】
次に、こうしたノックピン20の製造手順を説明する。
まず、上記逃げ溝22となる螺旋状の溝25が外周面に形成された、図4に示すような丸棒材24を製造する。こうした螺旋状の溝25の形成は、押出加工や転造等によって行われる。
【0031】
続いて、丸棒材24の外周面にあって上記溝25以外の部分26に研削加工を施す。ここで研削加工の施される部分26は、上記ノックピン20の接触部23となる。ここでの研削加工は、下記のようなセンタレス研削盤を用いて行われる。
【0032】
図5(a)に示すように、センタレス研削盤は、上記丸棒材24がその上面に載置される支持刃62、及びその支持刃62上に載置された丸棒材24を挟んでその両側にそれぞれ配設される2つの砥石車、すなわち研削砥石車60及び調整車61を備えて構成されている。
【0033】
研削砥石車60及び調整車61は、円盤形状に形成された砥石であり、モータ等の動力でそれぞれ回転されるようになっている。図5(b)に示すように、研削砥石車60は、その回転軸L1が、上記支持刃62上に載置された丸棒材24の中心軸L0と平行となるように配設されている。一方、調整車61は、その回転軸L2が、上記丸棒材24の中心軸L0に平行な方向に対して僅かに傾いた状態で配設されている。
【0034】
支持刃62上に載置された丸棒材24は、支持刃62、研削砥石車60及び調整車61によって3点支持され、その中心軸L0の位置が保持される。その状態で研削砥石車60及び調整車61が回転すると、それらの外周面に当接した丸棒材24の外周面が研削される。このとき、研削砥石車60の外周面の送り出し速度と調整車61の外周面の送り出し速度との速度差によって、丸棒材24はその中心軸L0回りに回転される。また上記調整車61の回転軸L2の傾きのため、調整車61の回転に応じて丸棒材24は、図5(b)に矢印で示す方向に、順次送り出される。これにより、丸棒材24の外周面のすべてに順次研削が施される。
【0035】
こうしたセンタレス研削では、加工物をセンタやチャック等で固定してセンタ出しを行う必要がないため、たとえ加工物が長尺であっても、短時間且つ容易に研削することができる。すなわち、ノックピン20一本当たりの研削加工時間を短くすることができる。
【0036】
なお上記螺旋状の溝25は、こうしたセンタレス研削において、丸棒材24の外周面に対する研削砥石車60及び調整車61の当たりが連続当たりとなるように、すなわち丸棒材24が如何に回転しても、丸棒材24の外周面の溝25以外の部分26にそれら砥石車が当接するように形成されている。こうした砥石車の連続当たりを確保するには、溝25の丸棒材24の軸方向における幅W0を、研削砥石車60及び調整車61の当たり幅W1、W2に比して小さくなるように形成すれば良い。
【0037】
こうした研削の後、丸棒材24は必要な長さに切り出される。そして切り出された丸棒材24の両端に面取り加工を施すことで、一本の丸棒材24から複数の上記ノックピン20が製造されている。
【0038】
次に、以上説明したノックピン20の作用について説明する。
図6に、ノックピン20がその接触部23の外径よりも内径の小さいピン穴13aに圧入されたときの状態を示す。同図に示すように、ピン穴13a内にノックピン20が圧入されると、接触部23はピン穴13aの内周と当接される。そしてそれらの当接面に作用する面圧pのため、接触部23の外周面は、同図に矢印で示されるように、ピン穴13aの内周面に沿って、周方向に広がるように変形する。このとき、接触部23の両側には、ノックピン本体21の外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝22が設けられているため、そうした接触部23外周面の変形を許容することができる。そのため、上記ノックピン20では、ノックピン本体21の外径を、圧入されるピン穴の内径に追従して自在に縮径させることができる。
【0039】
こうしたノックピン20を用いれば、ピン穴の径やその形成位置の誤差を、上記のようなノックピン20の弾性変形で吸収することができる。またそうした弾性変形によって、ノックピン20のピン穴への円滑な着脱を許容しながら、ノックピン20のピン穴内でのがたつきを防止することができる。更に、上記ノックピン20では、その周方向において3つの逃げ溝22が等間隔で形成されており、且つ接触部23の外周面が高い真円度に仕上げられているため、上記面圧pに基づく力は、ノックピン20の何れの断面においても釣り合いを保つようになる。そのため、ノックピン20の中心軸L0は、圧入されたピン穴の中心軸に自律的に一致されるようになる。
【0040】
したがって、こうしたノックピン20を用いれば、上記軸受部の製造に際してのベアリングキャップ10a及びベアリング部10bの位置決めを高精度で行うことができる。すなわち、軸受内周面の仕上げ加工時のベアリングキャップ10a及びベアリング部10bの位置関係を、クランクシャフト11組付け時に高い精度で再現することができ、軸受内周面を高い真円度に形成することができる。
【0041】
もっとも、図7(a)、(b)に示すノックピン50のように、外周面に逃げ溝51を軸方向に延伸するように形成しても、上記のような位置決め精度の向上は可能である。しかしながら、同図のような逃げ溝51の形成されたノックピン50の外周面は、センタレスでは、研削することができないようになっている。すなわち、このようなノックピン50は、図8(a)、(b)に示すように、砥石車等の支持面とノックピン50の中心軸L3との距離Hがノックピン50の回転に応じて変化してしまい、砥石車に対するノックピン50の外周面の当たりを連続当たりとすることはできないようになっている。したがって、このようなノックピン50では、チャックやセンタ等を用いたセンタ出しを行わなければその外周面を研削することができず、生産性の低下を招いてしまう。
【0042】
その点、逃げ溝22が螺旋状に形成された本実施形態のノックピン20では、図9(a)、(b)に示すように、砥石車等の支持面上でノックピン20が如何に回転しようとも、その支持面とノックピン20の中心軸L0との距離Hは一定に保たれる。そのため、砥石車に対するノックピン20の外周面の当たりが連続当たりとなり、センタレスによる外周面の研削を容易に行うことができる。そのため、本実施形態のノックピン20によれば、外周面のセンタレス研削による高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0043】
以上、説明した実施の形態を以下のように変更してもよい。
・複数のノックピンを用いる位置決め構造において、上記のような逃げ溝22の形成されたノックピン20を、複数のノックピンの一部のみに採用するようにしてもよい。例えば上記軸受部の位置決め構造において、図10に示すように、ピン穴13a、13bには、上記ノックピン20を挿入し、ピン穴14a、14bには、逃げ溝の無いソリッドノックピン29を挿入するようにして良い。この場合にも、ピン穴13a、14a内でのノックピン20のがたつきを防止でき、ノックピンを双方共に上記ソリッドノックピン29とした場合に比して、位置決め精度は向上される。
【0044】
・逃げ溝22をノックピン20の周方向に対して必ずしも等間隔に形成しなくてもよい。例えばノックピンの任意横断面の断面形状が、中心軸に垂直な面に対して対称となるように逃げ溝が形成されていれば、圧入時の接触部の面圧の作用に応じた力の釣り合いを保ち、ピン穴内でのノックピン中心軸の位置を保持できる。
【0045】
・上記実施の形態では、ノックピン本体21の外周面に3つの逃げ溝22を形成するようにしているが、そうした逃げ溝22を4つ以上設けるようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。もっとも、逃げ溝22を3つとすれば、上記実施形態の作用効果を奏しつつ、逃げ溝の形成に伴うノックピン形状の複雑化を必要最小限とすることができる。
【0046】
・更に逃げ溝22を2つ以下としても良い。その場合にも、ノックピン外周面に対する砥石の当たりを連続当たりとなっていれば、高い生産性を維持しつつ、位置決め精度を向上することができる。
【0047】
・上記実施形態では、丸棒材24に対してセンタレス研削を行った後、その丸棒材24をノックピン20の長さに切断加工するようにしているが、そうした長さの加工を、丸棒材24に螺旋状の溝25を形成する前に行うようにしても、或いは溝25の形成とセンタレス研削の間に行うようにしても良い。もっとも、上記実施形態のように外周面のセンタレス研削後に、そうした長さの加工を行うようにすれば、複数のノックピン20に対する逃げ溝22の形成、及びその外周面の研削を、一括して行なえるため、より高い生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るノックピン及び位置決め構造の適用されるクランクシャフト軸受部の断面図。
【図2】(a)、(b)同クランクシャフト軸受部の製造手順を示す図。
【図3】上記実施形態に適用されるノックピンの(a)側面図、及び(b)正面図。
【図4】同ノックピンの製造に用いられる丸棒材の側面図。
【図5】同ノックピンの製造に用いられるセンタレス研削盤の(a)正面図、及び(b)側面図。
【図6】同ノックピンのピン穴圧入時の弾性変形態様を示す断面図。
【図7】同ノックピンの比較例の(a)正面図、及び(b)側面図。
【図8】(a)、(b)同比較例の研削時の状態を各示す図。
【図9】(a)、(b)上記実施形態に適用されるノックピンの研削時の状態を各示す図。
【図10】クランクシャフト軸受部に適用される位置決め構造の変形例の断面図。
【符号の説明】
10a…ベアリングキャップ、10b…ベアリング部、11…クランクシャフト、12a,12b…軸受溝、13a,13b,14a,14b…ピン穴、20、50…ノックピン、21…ノックピン本体、22、51…逃げ溝、23…接触部、24…丸棒材、25…溝、60…研削砥石車、61…調整車、62…支持刃。
Claims (6)
- 略円筒形状に形成されて、2つの部材の位置決めに用いられる金属製のノックピンにおいて、
断面円形状をなすノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とするノックピン。 - 前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、当該ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成した請求項1に記載のノックピン。
- 2つの部材の対向する位置にそれぞれ形成されたピン穴と、略円筒形状に形成されるとともに前記2つの部材のピン穴を跨いで挿入される金属製のノックピンとを有して、前記2つの部材の位置決めを行う位置決め構造において、
前記ピン穴の内径と略同径の断面円形状に形成されたノックピン本体の外周面に、その一部を切り欠くように形成され、且つ螺旋状に延伸された逃げ溝を備えることを特徴とする位置決め構造。 - 前記逃げ溝を3つ以上形成するとともに、それら逃げ溝を、前記ノックピンの周方向にそれぞれ等間隔に形成した請求項3に記載のノックピン。
- 研削加工された外周面を有する断面円形状のノックピン本体と、そのノックピン本体の前記外周面の一部を切り欠くように形成された逃げ溝と、を有する金属製のノックピンを製造する方法であって、
丸棒材の外周面に、螺旋状に延伸するように前記逃げ溝を形成する工程と、
前記逃げ溝の形成された前記丸棒材の外周面にセンタレス研削を施す工程と、
前記丸棒材を、前記ノックピンの長さに加工する工程と、を有することを特徴とするノックピンの製造方法。 - 前記逃げ溝の前記丸棒材の軸方向における幅は、前記研削加工に用いられる砥石の前記丸棒材への当たり幅に比して小さくなるように形成される請求項5に記載のノックピンの製造方法。
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JP2003201228A JP2005042772A (ja) | 2003-07-24 | 2003-07-24 | ノックピン、位置決め構造、及びノックピンの製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103963178A (zh) * | 2013-01-29 | 2014-08-06 | 三星钻石工业股份有限公司 | 刻划轮用销、保持具单元及刻划装置 |
JP2015048778A (ja) * | 2013-09-02 | 2015-03-16 | パナソニック株式会社 | 密閉型圧縮機 |
-
2003
- 2003-07-24 JP JP2003201228A patent/JP2005042772A/ja active Pending
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