建設機械の運転室干渉防止装置として、従来、油圧ショベルに備えられたものが知られている。この従来技術は、ブーム、アーム、バケットを含むフロント作業機を、本体を構成する旋回体に回動可能に装着した油圧ショベルに備えられるものであり、フロント作業機の駆動に伴って、このフロント作業機が旋回体上に備えられる運転室に干渉しないように、フロント作業機の駆動を制御するものである(例えば、特許文献1参照。)。
この従来技術は、フロント作業機を駆動する油圧アクチュエータ、例えばブームシリンダに供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁と、このブーム用方向制御弁を切り換えるパイロット圧を供給するパイロット弁と、このパイロット弁とブーム用方向制御弁の制御室とを連絡するパイロット管路とを含むパイロット圧制御回路に関連して備えられている。
すなわち、パイロット管路に、このパイロット管路を断接する電磁弁を備えている。また、フロント作業機が運転室に干渉する危険領域に至ったことを検出する干渉検出手段、例えばブームの動きを監視するブーム角度センサ等の角度検出手段と、これらのブーム角度センサ等によってフロント作業機が上述の危険領域に至ったことが検出されたとき、ブーム用方向制御弁の制御室とパイロット弁とを連絡するパイロット管路を遮断する制御信号を電磁弁に出力するコントローラとを備えている。
このように構成される従来技術は、フロント作業機の駆動に際して、このフロント作業機が運転室に干渉する危険領域に至ったことがブーム角度センサ等によって検出されると、これらのブーム角度センサ等から出力される信号に応じてコントローラから電磁弁に制御信号が出力され、この電磁弁が上述のパイロット管路を遮断するように作動する。これにより、例えばブーム用方向制御弁がそれまでのブーム上げ切換え位置から中立位置に戻され、メインポンプからブーム用方向制御弁を介してのブームシリンダへの圧油の供給が停止し、それ以上のブーム上げ動作が阻止される。したがって、フロント作業機が運転室に干渉することが防止される。
ところで、このような運転室干渉防止装置にあって、例えばブームシリンダの駆動の安定性を確保するためなどに、すなわちブーム用方向制御弁のハンチング動作を防ぐなどのために、ブーム用方向制御弁の制御室とパイロット弁とを連絡するパイロット管路に、絞り弁等の抵抗手段を装備させたい、という要望がある。
また、このような従来の運転室干渉防止装置が備えられる油圧ショベルが、寒冷地における厳しい低温環境に配置されることを考慮して、例えばブーム用方向制御弁、電磁弁、パイロット管路を暖機するヒート回路を装備させたいという要望もある。
以下に、上述した従来技術にあって、上述した2つの要望を考慮した場合に考えられる技術構成について、図5,6に基づいて説明する。
図5は建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図、図6は従来の運転室干渉防止装置においてヒート回路を備えた場合に考えられる要部構成を示す油圧回路図である。
図5に一例として示す油圧ショベルは、側溝掘が可能な油圧ショベルであって、走行体1と、この走行体1上に旋回可能に配置される旋回体2と、この旋回体2に固設される運転室3とを備えている。また、旋回体2に上下方向の回動可能に連結される第1ブーム4と、この第1ブーム4に左右方向の揺動可能に連結される第2ブーム5と、この第2ブーム5に上下方向の回動可能に連結されるアーム6と、このアーム6に上下方向の回動可能に連結されるバケット7とを備えている。これらの第1ブーム4、第2ブーム5、アーム6、バケット7によってフロント作業機が構成されている。さらに、フロント作業機が運転室3に干渉する危険領域10に至ったことを検出する干渉検出手段、例えば第1ブーム4の回動角を検出するブーム角度センサ9が備えられている。例えば他にも、アーム角度センサ、バケット角度センサが備えられるが、以下においては説明を簡単にするために、これらのアーム角度センサ、バケット角度センサについては図示、及び説明を省略する。
上述した図5に示す油圧ショベルは、図6に示すように、第1ブーム4を駆動する第1ブームシリンダ8に圧油を供給するメインポンプ11と、このメインポンプ11の吐出圧を規定するメインリリーフ弁12と、メインポンプ11から第1ブームシリンダ8に供給される圧油の流れを制御する第1ブーム用方向制御弁13と、タンク29とを備えている。
また、第1ブーム用方向制御弁13の駆動を制御するパイロット圧制御回路は、第1ブーム用方向制御弁13を制御するパイロット弁14と、このパイロット弁14を操作する操作レバー14aと、パイロット弁14と第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室とを連絡するパイロット管路17,18と、パイロット弁14の油圧源であるパイロットポンプ15と、このパイロットポンプ15の吐出圧を規定するパイロットリリーフ弁16とを含んでいる。
上述したパイロット管路17にパイロット圧が供給されると、第1ブーム用方向制御弁13は同図6の左位置に切り換えられ、メインポンプ11の圧油がこの第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に供給され、第1ブームシリンダ8が伸長してブーム上げが実施されるようになっている。また、パイロット管路18にパイロット圧が供給されると、第1ブーム用方向制御弁13は右位置に切り換えられ、メインポンプ11の圧油がこの第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のロッド室に供給され、第1ブームシリンダ8が収縮してブーム下げが実施されるようになっている。
上述したパイロット管路17には、このパイロット管路17を断接するとともに、パイロット管路17を遮断した際に第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室をタンク29に接続させる電磁弁19を介設してあり、パイロット管路18には、このパイロット管路18を断接可能であるとともに、パイロット管路18を遮断した際に第1ブーム用方向制御弁13の他方の制御室をタンク29に接続させる電磁弁20を介設してある。
また、ブーム角度センサ9等から出力される信号に応じて、電磁弁19,20に制御信号を出力するコントローラ28を備えている。
上述した第1ブーム用方向制御弁13の駆動を制御するパイロット圧制御回路と、ブーム角度センサ9等と、電磁弁19,20と、コントローラ28とによって、従来技術における運転室干渉防止装置の基本構成が形成されている。
このような基本構成を有する従来の運転室干渉防止装置において、上述の要望に応えるために、抵抗手段として例えば第1ブーム用方向制御弁13の動作を安定させる絞り弁21をパイロット管路17に介設し、絞り弁22をパイロット管路18に介設する。
なお、パイロットポンプ15と、パイロット弁14とを連絡する管路15aには、ゲートロック弁25が介設されている。このゲートロック弁25はレバー26の操作により、管路15aを断接する。レバー26は運転室3内の運転席の近くの出入口付近に配置され、オペレータが運転席から離れて外に出る際にレバー26がゲートロック弁25を閉位置にするように操作される。このようにゲートロック弁25が閉位置に切り換えられると、管路15aが遮断される。したがって、何らかの理由によってパイロット弁14の操作レバー14aが動いても第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれに圧油が供給されることがない。すなわち、オペレータが意図していない第1ブーム用方向制御弁13の切り換え動作の発生が防止される。
また同図6に示すように、上述の要望に応えるために、ヒート回路を接続してある。このヒート回路は、電磁弁19と絞り弁21との間に位置するパイロット管路17部分に接続され、パイロット管路17への油の流れを許容し、パイロット管路17からの油の流れを阻止する逆止弁23と、電磁弁20と絞り弁22との間に位置するパイロット管路18部分に接続され、パイロット管路18への油の流れを許容し、パイロット管路18からの油の流れを阻止する逆止弁24と、これらの逆止弁23,24とパイロットリリーフ弁16とを連絡する管路15bに介設され、ゲートロック弁25と連動して、パイロットリリーフ弁16と逆止弁23,24間を断接する切換弁27とを含んでいる。
なお逆止弁23,24は、電磁弁19,20の円滑な作動のための暖機を考慮して、例えば電磁弁19,20の付近に配置される。また、逆止弁23,24、及び電磁弁19,20は、第1ブーム用方向制御弁13の円滑な作動のための暖機を考慮して、第1ブーム用方向制御弁13に付設させるように配置される。
このようなヒート回路を備えたものは、上述したフロント作業機による作業の開始等に際して、ゲートロック弁25が、パイロット弁14による第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作が可能となる開位置に切り換えられた状態では、ゲートロック弁25と連動して切換弁27が同図6の右位置に保持され、パイロットリリーフ弁16と逆止弁23,24間が遮断され、パイロットリリーフ弁16はタンク29に連通する。すなわち、ヒート回路は停止状態に保持される。
また、上述したフロント作業機による作業の停止に伴って、ゲートロック弁25が、パイロット弁14による第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作が不能となる閉位置に切り換えられた状態では、ゲートロック弁25と連動して切換弁25が同図6の左位置に保持され、パイロットリリーフ弁16と逆止弁23,24間が接続され、ヒート回路が作動する。
このとき、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油は、パイロットリリーフ弁16、管路15b、切換弁27、逆止弁23,24、パイロット管路17,18、パイロット弁14を経てタンク29に戻される。この間、パイロット圧油はパイロットリリーフ弁16等において抵抗を受け、発熱する。この発熱によって暖められたパイロット圧油により、逆止弁23,24の近くに配置された電磁弁19,20、第1ブーム用方向制御弁13、パイロット管路17,18等が暖機される。この暖機により、寒冷地などの低温環境におけるフロント作業機による作業に際して、電磁弁19,20及び第1ブーム用方向制御弁13の切り換え動作が円滑におこなわれ、このフロント作業機による作業性を向上させることができる。
特開平7−109745号公報
しかしながら、上述したように従来の運転室干渉防止装置において、パイロット管路17,18に抵抗手段を構成する例えば絞り弁21,22を介設し、ヒート回路に含まれる逆止弁23を電磁弁19、絞り弁21間に配置し、逆止弁24を電磁弁20、絞り弁22間に配置することを考慮したものでは、以下に述べる問題がある。
フロント作業機の駆動に際し、図5に示す第1ブーム4の上げ動作等が実施されるときには、コントローラ28から出力される制御信号(ON)により、図6に示す電磁弁19,20のそれぞれが同図6の下段位置に切り換えられ、パイロット弁14と第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室とを接続するパイロット管路17,18は、接続状態に保持される。この状態において、第1ブーム4の上げ動作を実施しようとして操作レバー14aを操作し、パイロット弁14を作動させると、パイロットポンプ15から吐出されるパイロット圧油がパイロット弁14で減圧されてパイロット管路17に供給される。このときパイロット管路18は、パイロット弁14を介してタンク29に連通した状態に維持される。これにより、第1ブーム用方向制御弁13が同図6の左位置に切り換えられ、メインポンプ11から吐出される圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に供給される。したがって、第1ブームシリンダ8が伸長し、第1ブーム4の上げ動作が実施される。
このような第1ブーム4の上げ動作が実施されているときに、ブーム角度センサ9からの信号がコントローラ28に入力され、このコントローラ28でブーム角度センサ9からの信号の値が、フロント作業機が図5に示す危険領域10に至ったときに相当する値となったと判断されると、コントローラ28から電度弁19に制御信号(OFF)が出力され、この電磁弁19はばねの力により図6の上段位置に切り換えられる。このとき電磁弁20は、図6の下段位置に切り換えられた状態に維持されている。
これにより、パイロット管路17が遮断され、このパイロット管路17が接続される第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室も電磁弁19を介してタンク29に連通し、第1ブーム用方向制御弁13は中立位置に戻される。したがって、第1ブームシリンダ8のボトム室へのメインポンプ11の圧油の供給が停止し、第1ブームシリンダ8の伸長動作が停止し、第1ブーム4の上げ動作が停止し、フロント作業機が運転室3に干渉することが防止される。
例えば、このような状態において運転室3内の運転席に座っていたオペレータが運転室3外に出るために、レバー26を操作するとゲートロック弁25が図6の閉位置となり、このゲートロック弁25に連動して切換弁27が左位置に切り換えられ、ヒート回路が作動する。したがって、パイロットポンプ15のパイロット圧油がパイロットリリーフ弁16、管路15b、切換弁27、逆止弁23,24に供給される。このとき、電磁弁20は図6の下段位置に保持されていることから、逆止弁24からパイロット管路18に供給されたパイロット圧油により、第1方向制御弁13の他方の制御室と絞り弁22との間に位置するパイロット管路18部分に圧が立ち、第1ブーム用方向制御弁13は同図6の右位置に切り換えられる傾向となる。これに伴って、メインポンプ11から吐出される圧油が、第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のロッド室に供給される。このため第1ブーム4は下げ方向に動いてしまう。
このように、従来技術において、パイロット管路17,18に絞り弁21,22等の抵抗手段を装備させるとともに、第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室と絞り弁21,22等の抵抗手段との間に接続されるヒート回路を装備させるように考慮したものでは、ヒート回路の作動時に、第1ブーム用方向制御弁13が動いて、第1ブームシリンダ8が誤動作し、この第1ブームシリンダ8によって駆動する第1ブーム4の不測の動きを生じる懸念があり、装置の信頼性が低下する虞がある。
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、従来からの要望に応えるために、パイロット弁と電磁弁との間に位置するパイロット管路部分に接続されるヒート回路を備えるとともに、このヒート回路のパイロット管路との接続点と、パイロット弁との間に位置するパイロット管路部分に配置される抵抗手段を備えた場合であっても、パイロット管路に供給されるパイロット圧油で切り換えられる方向制御弁によって制御される油圧アクチュエータの、ヒート回路の作動に伴う誤動作を確実に防止できる建設機械の運転室干渉防止装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、作業機を駆動する油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向制御弁と、この方向制御弁を切り換えるパイロット圧を供給するパイロット弁と、このパイロット弁と上記方向制御弁の制御室とを連絡するパイロット管路とを含むパイロット圧制御回路と、上記作業機が運転室に干渉する危険領域に至ったことを検出する干渉検出手段と、上記パイロット管路に配置され、上記パイロット管路を断接可能にする電磁弁と、上記干渉検出手段から上記作業機が上記危険領域に至ったことが検出されたとき、上記パイロット管路を遮断する制御信号を上記電磁弁に出力するコントローラとを備えた建設機械の運転室干渉防止装置において、上記パイロット弁と上記電磁弁との間に位置する上記パイロット管路部分に接続されるヒート回路と、このヒート回路の上記パイロット管路部分への接続点と、上記パイロット弁との間に位置する上記パイロット管路部分に配置される抵抗手段とを備えるとともに、上記ヒート回路の作動を検出する作動検出手段と、この作動検出手段で上記ヒート回路の作動が検出されたとき、上記方向制御弁を中立状態にする制御手段を備えたことを特徴としている。
このように構成した本発明は、作業機が運転室に干渉する危険領域に至ったことが干渉検出手段で検出されると、コントローラから電磁弁に制御信号が出力され、これによってパイロット管路が遮断され、方向制御弁が中立に戻される。これにより油圧アクチュエータの作動が停止し、作業機が運転室に干渉しないように制御される。
また、パイロット管路部分に配置された抵抗手段により、例えば方向制御弁の安定した切り換え操作などを実施できる。
さらに、ヒート回路を作動させることにより、このヒート回路で暖められたパイロット圧油がパイロット管路に供給される。これによって、電磁弁、方向制御弁、パイロット管路が暖機され、低温環境における良好な信頼性を確保できる。
そして特に本発明は、ヒート回路が作動し、その作動が作動検出手段で検出されると、制御手段が作動し、方向制御弁が中立となるように保持される。すなわち、ヒート回路の作動時に方向制御弁が切り換え操作されてしまう事態を生じることがなく、この方向制御弁から油圧アクチュエータへ圧油が供給されることがなく、このようなヒート回路の作動時における油圧アクチュエータの誤動作を確実に防止できる。
また本発明は、上記発明において、上記制御手段が、上記方向制御弁の両端に形成される制御室のそれぞれの圧力を同圧にする圧力調整手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記圧力調整手段が、上記方向制御弁の上記制御室のそれぞれの圧力をタンク圧に調整する手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記圧力調整手段が、上記方向制御弁の上記制御室のそれぞれの圧力をタンク圧より大きい保持圧に調整する手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記作動検出手段が、上記ヒート回路の圧力を検出し、検出信号を上記コントローラに出力する圧力検出手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記ヒート回路の開閉を制御する回路開閉機構を備えるとともに、上記作動検出手段が、上記回路開閉機構の動きを検出し、検出信号を上記コントローラに出力する手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記抵抗手段が、絞り弁から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記抵抗手段が、上記方向制御弁に対する操作パターンを切り換え可能な操作パターン切換弁から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記ヒート回路の作動中は、上記パイロット弁による上記方向制御弁の切り換え操作を不能にさせ、上記ヒート回路の停止中は、上記パイロット弁による上記方向制御弁の切り換え操作を可能にさせる選択手段を備えたことを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記選択手段が、上記運転室の出入口付近に配置されるゲートロック弁から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記干渉検出手段が、上記作業機の角度を検出する角度検出手段から成ることを特徴としている。
また本発明は、上記発明において、上記建設機械が油圧ショベルから成り、上記作業機がブームを含むフロント作業機から成り、上記油圧アクチュエータが上記ブームを駆動するブームシリンダを含み、上記方向制御弁が上記ブームシリンダを制御するブーム用方向制御弁を含むことを特徴とすることを特徴としている。
本発明は、パイロット弁と電磁弁との間に位置するパイロット管路部分に接続されるヒート回路を備えるとともに、このヒート回路のパイロット管路との接続点と、パイロット弁との間に位置するパイロット管路部分に配置される抵抗手段を備えた場合であっても、パイロット管路に供給されるパイロット圧油で切り換えられる方向制御弁によって制御される油圧アクチュエータの、ヒート回路の作動に伴う誤動作を確実に防止でき、装置の信頼性を向上させることができる。
以下,本発明に係る建設機械の運転室干渉防止装置の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の要部構成を示す油圧回路図である。この第1実施形態及び後述の第2〜第4実施形態が備えられる建設機械は、例えば前述した図5に示すような油圧ショベルである。したがって以下においては、必要に応じて図5に示した符号を用いて説明をおこなう。
図1及び後述の図2〜4において、前述した図6に示すものと同等のものは同じ符号で示してある。
すなわち、説明が重複するがこの第1実施形態も、図5に示す第1ブーム4を駆動する第1ブームシリンダ8に圧油を供給するメインポンプ11と、このメインポンプ11の吐出圧を規定するメインリリーフ弁12と、メインポンプ11から第1ブームシリンダ8に供給される圧油の流れを制御する第1ブーム用方向制御弁13と、タンク29とを備えている。
また、第1ブーム用方向制御弁13を切り換え制御するパイロット圧制御回路が、第1ブーム用方向制御弁13の駆動を制御するパイロット弁14と、このパイロット弁14を操作する操作レバー14aと、パイロット弁14と第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室とを連絡するパイロット管路17,18と、パイロット弁14の油圧源であるパイロットポンプ15と、このパイロットポンプ15の吐出圧を規定するパイロットリリーフ弁16とを含んでいる。
パイロット管路17には、このパイロット管路17を断接するとともに、パイロット管路17を遮断した際に第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室をタンク29に接続させる電磁弁19を介設してあり、パイロット管路18には、このパイロット管路18を断接するとともに、パイロット管路18を遮断した際に第1ブーム用方向制御弁13の他方の制御室をタンク29に接続させる電磁弁20を介設してある。
また、図5に示す第1ブーム4の回動角を検出するブーム角度センサ9等から出力される信号に応じて、電磁弁19,20に制御信号を出力するコントローラ28を備えている。
前述したように、例えばブーム角度センサ9は、図5に示す第1ブーム4、第2ブーム5、アーム6、バケット7を含むフロント作業機が、運転室3に干渉する危険領域10に至ったことを検出する干渉検出手段を構成している。
上述したように、第1ブーム用方向制御弁13を切り換え制御するパイロット圧制御回路と、ブーム角度センサ9等と、電磁弁19,20と、コントローラ28とによって、運転室干渉防止装置の基本構成が形成されている。
さらに、この第1実施形態も、前述した図6に示したものと同様に、抵抗手段として例えば、第1ブーム用方向制御弁13の動作を安定させる絞り弁21をパイット管路17に介設し、絞り弁22をパイロット管路18に介設させてある。
パイロットポンプ15と、パイロット弁14とを連絡する管路15aには、ゲートロック弁30を介設してある。このゲートロック弁30はレバー31の操作により管路15aを断接する。レバー31は図5による運転室3内の運転席の近くの出入口付近に配置され、オペレータが運転席から離れて外に出る際にレバー31がゲートロック弁30を閉位置にするように操作される。このレバー31は、ゲートロック弁30を介してヒート回路の開閉を制御する回路開閉機構を構成している。
また、この第1実施形態も、ヒート回路を備えている。このヒート回路は、電磁弁19と絞り弁21との間に位置するパイロット管路17部分に接続され、パイロット管路17への油の流れを許容し、パイロット管路17からの油の流れを阻止する逆止弁23と、電磁弁20と絞り弁22との間に位置するパイロット管路18部分に接続され、パイロット管路18への油の流れを許容し、パイロット管路18からの油の流れを阻止する逆止弁24と、これらの逆止弁23,24とゲートロック弁30とを連絡する管路32に介設される絞り弁33とを含んでいる。
なお、逆止弁23,24は、電磁弁19,20の円滑な作動のための暖機を考慮して、例えば電磁弁19,20の付近に配置してある。また、逆止弁23,24、及び電磁弁19,20は、第1ブーム用方向制御弁13の円滑な作動のための暖機を考慮して、第1ブーム用方向制御弁13に付設させるように配置してある。
特に、この第1実施形態は、上述したヒート回路の作動を検出する作動検出手段、例えばヒート回路に含まれる管路32の圧力を検出し、検出信号をコントローラ28に出力する圧力検出手段、すなわち圧力センサ34を備えている。
またコントローラ28は、ブーム角度センサ9から出力される信号の値が、フロント作業機が図5に示す危険領域10に至ったときに相当する値となったと判断したときに、電磁弁19,20の双方に制御信号(OFF)を出力し、これらの電磁弁19,20を内蔵されるばねの力によって図1の上段位置に切り換える。
上述した電磁弁19,20、及びコントローラ28は、圧力センサ34でヒート回路の作動が検出されたとき、第1ブーム用方向制御弁13を中立状態にする制御手段を構成している。
また、この制御手段は、例えば第1ブーム用方向制御弁13の両端に形成される制御室のそれぞれの圧力を同圧にする圧力調整手段を含んでいる。この圧力調整手段は、例えば第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれの圧力をタンク圧に調整する手段から成っている。
また、上述したゲートロック弁30は、ヒート回路の作動中は、パイロット弁14による第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作を不能にさせ、ヒート回路の停止中は、パイロット弁14による第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作を可能にさせる選択手段を構成している。
このように構成した第1実施形態は、フロント作業機の駆動に際し、図5に示す第1ブーム4の上げ動作等が実施されるときには、コントローラ28から出力される制御信号(ON)により、図6に示す電磁弁19,20のそれぞれが同図6の下段位置に切り換えられ、パイロット弁14と第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室とを接続するパイロット管路17,18は、接続状態に保持される。この状態において、第1ブーム4の上げ動作を実施しようとして操作レバー14aを操作し、パイロット弁14を作動させると、パイロットポンプ15から吐出されるパイロット圧油がパイロット弁14で減圧されてパイロット管路17に供給される。このときパイロット管路18は、パイロット弁14を介してタンク29に連通した状態に維持される。これにより、第1ブーム用方向制御弁13が同図1の左位置に切り換えられ、メインポンプ11から吐出される圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に供給される。したがって、第1ブームシリンダ8が伸長し、第1ブーム4の上げ動作が実施される。
このような第1ブーム4の上げ動作が実施されているときに、ブーム角度センサ9からの信号がコントローラ28に入力され、このコントローラ28でブーム角度センサ9からの信号の値が、フロント作業機が図5に示す危険領域10に至ったときに相当する値となったと判断されると、コントローラ28から電磁弁19に制御信号(OFF)が出力され、この電磁弁19は図1の上段位置に切り換えられる。このとき電磁弁20は、図1の下段位置に切り換えられた状態に維持されている。
これにより、パイロット管路17が遮断され、このパイロット管路17が接続される第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室も電磁弁19を介してタンク29に連通し、第1ブーム用方向制御弁13は中立位置に戻される。したがって、第1ブームシリンダ8のボトム室へのメインポンプ11の圧油の供給が停止し、第1ブームシリンダ8が伸長動作を停止し、第1ブーム4の上げ動作が停止し、フロント作業機が運転室3に干渉することが防止される。
このとき、例えば操作レバー14aをそれまでと逆方向に操作し、パイロット弁14を介してパイロット管路18にパイロット圧を供給すると、このパイロット圧が電磁弁20の下段位置を介して第1ブーム用方向制御弁13の他方の制御室に与えられ、この第1ブーム用方向制御弁13が右位置に切り換えられる。これによりメインポンプ11の圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のロッド室に供給され、ボトム室からの戻り油がタンク29に導かれ、第1ブームシリンダ8が収縮し、第1ブーム4は下げ動作をおこなう。これにより、フロント作業機が危険領域10から離れるとともに、第1ブーム4の回動角が小さくなり、ブーム角度センサ9からの信号の値が小さくなって、コントローラ28から電磁弁19に制御信号(ON)が出力され、この電磁弁19は再び下段位置に切り換えられる。すなわち、電磁弁19,20の双方が再び下段位置となるように保持される。
また、パイロットポンプ15とパイロット弁14とを連絡する管路15aに、ゲートロック弁30が介設されているが、上述したように、オペレータが運転席から離れて外に出る際に、レバー31がゲートロック弁30を閉位置にするように操作される。このようにゲートロック弁30が閉位置に切り換えられると、何らかの理由によってパイロット弁14の操作レバー14aが動いても第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれに圧油が供給されることがない。すなわち、オペレータが意図していない第1ブーム用方向制御弁13の切り換え動作の発生が防止される。
また、上述したフロント作業機による作業の開始等に際して、ゲートロック弁30が、パイロット弁14による第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作が可能となる同図1に示す開位置に切り換えられた状態では、管路32が遮断される。すなわち、パイロットポンプ15と逆止弁23,24間が遮断され、ヒート回路は停止状態に保持される。
また、上述したフロント作業機による作業の停止に伴って、ゲートロック弁30が同図1の左位置、すなわち閉位置に切り換えられた状態では、管路32が連通する。これにより、パイロットポンプ15と逆止弁23,24間が連通し、ヒート回路が作動する。
このとき、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油は、管路32、絞り弁33、逆止弁23,24、パイロット管路17,18、パイロット弁14を介してタンク29に戻される。この間、パイロット圧油は絞り弁33等において抵抗を受け、発熱する。この発熱によって暖められたパイロット圧油により、逆止弁23,24の近くに配置された電磁弁19,20、第1ブーム用方向制御弁13、パイロット管路17,18等が暖機される。この暖機により、寒冷地などの低温環境におけるフロント作業機による作業に際して、電磁弁19,20及び第1ブーム用方向制御弁13の切り換え操作が円滑におこなわれ、このフロント作業機による作業性を向上させることができる。
そして特に、上述のようにヒート回路が動作し、管路32にパイロット圧油が供給されると、このパイロット圧油の圧力が圧力センサ34で検出され、その検出信号がコントローラ28に出力される。この圧力センサ34からの検出信号に応じて、コントローラ28から電磁弁19,20の双方に制御信号(OFF)が出力される。これによって、ばねの力により電磁弁19,20の双方が同図1に示すように上段位置に切り換えられ、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれが、電磁弁19,20の該当するものを介してタンク29に連通する。したがって、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれはタンク圧となる。すなわち、同圧となり、第1ブーム用方向制御弁13は中立状態となる。ヒート回路の作動の間、この第1ブーム用方向制御弁13は中立に維持される。したがって、メインポンプ11の圧油が第1ブームシリンダ8に供給されることがなく、第1ブームシリンダ8は停止状態となる。
例えば、上述のように干渉防止機能が働いて電磁弁19が上段位置に切り換えられ、電磁弁20が下段位置に保持されている状態のときに、運転室3内のオペレータがレバー31を操作してゲートロック弁30を同図1の左位置、すなわち管路15aを閉じる位置とし、運転室3の外に出たときには、上述のようにヒート回路が作動するとともに、コントローラ28から電磁弁19,20の双方に制御信号(OFF)が出力される。したがって、電磁弁20も上段位置に切り換えられ、上述のように、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれがタンク圧となり、この第1ブーム用方向制御弁13が中立状態となる。したがって、干渉防止機能が働いている状態において、ヒート回路が作動した場合でも、第1ブーム用方向制御弁13を確実に中立状態とすることができる。
このように構成した第1実施形態によれば、フロント作業機が運転室3に干渉しないように確実に制御でき、パイロット管路17,18に介設した絞り弁21,22によって、第1ブーム用方向制御弁13の安定した切り換え操作を実現でき、さらに、ヒート回路を作動させることにより低温環境における良好な信頼性を確保することができるとともに、ヒート回路の作動時に第1ブーム用方向制御弁13が切り換え操作されてしまう事態を生じることがなく、この第1ブーム用方向制御弁13から第1ブームシリンダ8へ圧油が供給されることがない。したがって、ヒート回路の作動時における第1ブームシリンダ8の誤動作を確実に防止でき、第1ブーム4の不測の動きを防止でき、装置の信頼性を向上させることができる。
図2は本発明の第2実施形態の要部構成を示す油圧回路図である。この第2実施形態は、パイロット弁14と第1ブーム用方向制御弁13の制御室とを連絡するパイロット管路17,18に介設する抵抗手段として、前述した第1実施形態におけるような絞り弁21,22の代わりに、第1ブーム用方向制御弁13に対する操作パターンを切り換え可能な操作パターン切換弁35を介設した構成にしてある。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同様である。
操作パターン切換弁35は、図2に示すように最上段の切り換え位置に保持されているときは、パイロット弁14の操作レバー14aを同図2において右方向に傾けるように操作すると、このパイロット弁14で発生したパイロット圧がパイロット管路17に供給され、このパイロット圧が第1ブーム用方向制御弁13の左側に位置する一方の制御室に与えられる。このとき、この第1ブーム用方向制御弁13の右側に位置する他方の制御室は、パイロット管路18を介してタンク29に連通する状態に維持されている。したがって、第1ブーム用方向制御弁13が同図2の左位置に切り換えられ、メインポンプ11から吐出される圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に位置される。これにより、第1ブームシリンダ8が伸長し、第1ブーム4が上げ動作を実施する。
また、操作パターン切換弁35が同図2の最下段の切り換え位置に切り換えられた場合には、パイロット弁14の操作レバー14aを同図2において左方向に傾けるように操作すると、パイロット弁14で発生したパイロット圧がパイロット管路18を経てパイロット管路17に供給され、このパイロット圧が第1ブーム用方向制御弁13の左側に位置する一方の制御室に与えられる。このとき、この第1ブーム用方向制御弁13の右側に位置する他方の制御室は、パイロット管路18,17を介してタンク29に連通する状態に維持される。したがって、第1ブーム用方向制御弁13が同図2の左位置に切り換えられ、メインポンプ11から吐出される圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に供給される。これにより、第1ブームシリンダ8が伸長し、第1ブーム4が上げ動作を実施する。
すなわち、操作パターン切換弁35が最上段の切り換え位置に切り換えられた状態で、操作レバー14aを同図2の右方向に傾けると、第1ブーム4の上げ動作を実施でき、操作パターン切換弁35が最下段の切り換え位置に切り換えられた状態で、操作レバー14aを同図2の左方向に傾けると、第1ブーム4の上げ動作を実施できる。このように、操作パターン切換弁35を適宜切り換えることにより、第1ブーム用方向制御弁13に対する操作パターンをオペレータが望むパターンに変更することができる。
また、操作パターン切換弁35を中立に戻すと、パイロット管路17,18は遮断される。すなわち、操作パターン切換弁35と第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれとの間に位置するパイロット管路17,18部分は閉じられる。
今仮に、操作パターン切換弁35が最上段の切り換え位置に切り換えられ、第1ブーム用方向制御弁13が同図2の左位置に切り換えられた状態で、第1ブーム4の上げ動作が実施されているときに、フロント作業機が図5の危険領域10に至り、干渉防止機能が働いたものとする。このとき、電磁弁19,20のうちの電磁弁19だけが上段位置に切り換えられ、第1ブーム用方向制御弁13が中立に戻され、第1ブームシリンダ8が停止し、第1ブーム4の上げ動作が停止する。このような状態にあるときに、オペレータがレバー31を操作してゲートロック弁30を図2の左位置に切り換え、運転室3の外に出たものとする。このとき、ゲートロック弁30の図2の左位置への切り換えにより管路32にパイロット圧油が供給され、ヒート回路が作動する。
その後、フロント作業機による作業が再び実施される際に、例えば別のオペレータが操作パターン切換弁35を図2の最下段の切り換え位置に切り換えたものとする。このとき、操作パターン切換弁35は、一旦中立位置となってから最下段の切り換え位置に切り換えられる。
この操作パターン切換弁35の切り換え時、一旦中立位置となったとき、パイロット管路17,18は上述したように一時的に遮断される。したがって、前述した図6に示す構成のものだと、このとき操作パターン切換弁35の中立位置と第1ブーム用方向制御弁13の同図2の右側に位置する制御室との間のパイロット管路18部分が閉じられた状態となり、この閉じられたパイロット管路18部分にヒート回路を構成する逆止弁24を介してパイロット圧油が供給され、第1ブーム用方向制御弁13が右位置に切り換えられてしまい、第1ブームシリンダ8が収縮し、第1ブーム4が下げ方向に動いてしまうことになる。
これに対して本発明の第2実施形態では、ヒート回路が作動すると圧力センサ34がこれを検出してコントローラ28に検出信号が出力され、電磁弁19,20の双方が上段位置に切り換えられ、第1ブーム用方向制御弁13のそれぞれの制御室がタンク圧となり、中立状態となる。したがって、ヒート回路の作動時に第1ブーム用方向制御弁13が切り換え操作されてしまう事態を生じることがなく、この第1ブーム用方向制御弁13から第1ブームシリンダ8へ圧油が供給されることがない。すなわち、前述した第1実施形態におけるのと同様に、ヒート回路の作動時における第1ブームシリンダ8の誤動作を確実に防止でき、第1ブーム4の不測の動きを防止でき、装置の信頼性を向上させることができる。
図3は本発明の第3実施形態の要部構成を示す油圧回路図である。この第3実施形態は、ヒート回路の作動を検出する作動検出手段として、第1,第2実施形態における圧力センサ34の代わりに、ヒート回路の開閉を制御する回路開閉制御機構、すなわちゲートロック弁30のレバー31の動きを検出し、検出信号をコントローラ28に出力する手段、例えばリミットスイッチ36を備えた構成にしてある。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同様である。
このように構成した第3実施形態も、前述した第1実施形態におけるのと同様に、干渉防止機能が働いて電磁弁19が上段位置に切り換えられ、電磁弁20が下段位置に保持されている状態のときに、運転室3内のオペレータがレバー31を操作してゲートロック弁30を同図1の左位置、すなわち管路15aを閉じる位置として運転室3の外に出たときには、ヒート回路が作動する。このとき、上述したゲートロック弁30のレバー31の操作がリミットスイッチ36で検出され、このリミットスイッチ36の信号がコントローラ28に出力される。したがって、コントローラ28から電磁弁19,20の双方に制御信号(OFF)が出力され、電磁弁20も上段位置に切り換えられ、第1ブーム用方向制御弁13が中立状態となる。すなわち、干渉防止機能が働いている状態において、ヒート回路が作動した場合でも、第1ブーム用方向制御弁13を確実に中立状態とすることができる。
これにより、前述した第1実施形態におけるのと同様に、ヒート回路の作動時における第1ブーム4の不測の動きを防止でき、装置の信頼性を向上させることができる。
図4は本発明の第4実施形態の要部構成を示す油圧回路図である。第1ブーム用方向制御弁13を中立にする制御手段を構成する圧力調整手段、すなわち第1ブーム用方向制御弁13の両端に形成される制御室のそれぞれの圧力を同圧にする圧力調整手段が、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれの圧力をタンク圧より大きい保持圧に調整する手段から成っている。
すなわち、図4に示すように、第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室に連絡されるパイロット管路17に、開閉機能のみを有する電磁弁37を介設してあり、第1ブーム用方向制御弁13の他方の制御室に連絡されるパイロット管路18にも開閉機能のみを有する電磁弁38を介設してある。また、第1ブーム用方向制御弁13の一方の制御室と電磁弁37とを結ぶパイロット管路17部分と、第1ブーム用方向制御弁13の他方の制御室と電磁弁38とを結ぶパイロット管路18部分とを連絡する連絡路39を備えるとともに、この連絡路39に開閉機能のみを有する電磁弁40を介設してある。
上述した電磁弁37,38,40、及び管路39によって、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれの圧力をタンク圧より大きい保持圧に調整する手段が構成されている。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同様である。
このように構成した第4実施形態は、フロント作業機の駆動時には、コントローラ28から出力される制御信号(ON)により、電磁弁37,38が開位置に、電磁弁40が閉位置にそれぞれ切り換えられる。これにより、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれと、図1に示すパイロット弁14とが接続されるとともに、パイロット管路17とパイロット管路18とを連絡する管路39は遮断される。この状態で、例えばパイロット管路17にパイロット圧が供給されると、このパイロット圧が第1ブーム用方向制御弁13の同図4の左側に位置する一方の制御室に与えられる。第1ブーム用方向制御弁13の同図4の右側に位置する他方の制御室は、パイロット管路18、電磁弁38、パイロット弁14を介してタンク29に接続された状態に維持されている。したがって、第1ブーム用方向制御弁13が左位置に切り換えられ、メインポンプ11の圧油が第1ブーム用方向制御弁13を介して第1ブームシリンダ8のボトム室に供給され、この第1ブームシリンダ8が伸長して第1ブーム4の上げ動作が実施される。
このような第1ブーム4の上げ動作を介して実施されるフロント作業機の駆動時に、このフロント作業機が図5に示す危険領域10に至ったことがブーム角度センサ9によって検出されると、コントローラ28から出力される制御信号(OFF)により、電磁弁37,38が閉位置に、電磁弁40が開位置にそれぞれ切り換えられる。これにより、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれと、パイロット弁14間が遮断されるとともに、連絡路39が連通する。したがって、それまでパイロット管路17に供給されていたパイロット圧が電磁弁40、管路39を介してパイロット管路18に導かれ、第1ブーム用方向制御弁13の制御室のそれぞれの圧はタンク圧よりも大きい保持圧で同圧となる。これにより、第1ブーム用方向制御弁13は中立状態となって、第1ブームシリンダ8への圧力の供給が停止する。すなわち、第1ブームシリンダ8が停止し、これに伴って第1ブーム4が停止し、運転室3へのフロント作業機の干渉が防止される。
このような状態において、オペレータが図1に示すレバー31を操作してゲートロック弁30を図1の左位置に切り換え、運転室3から外に出たときには、前述したようにヒート回路が作動する。このヒート回路の作動が圧力センサ34によって検出され、コントローラ28から電磁弁37,38,40のそれぞれに制御信号(OFF)が出力される。すなわち、上述した電磁弁37,38が閉位置、電磁弁40が開位置の状態が維持される。
このように構成した第4実施形態も、前述した第1実施形態におけるのと同様に、干渉防止機能が働いている状態において、ヒート回路が作動しても、第1ブーム用方向制御弁13を中立状態にすることができ、このようなヒート回路の作動時における第1ブームシリンダ8の誤動作を確実に防止でき、第1ブーム4の不測の動きを防止でき、装置の信頼性を向上させることができる。