JP2005040956A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙を提供することにある。
【解決手段】不透明の支持体上に無機微粒子とバインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下であり、前記バインダーとして少なくとも紫外線により架橋する高分子化合物を含み、無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比が2以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】不透明の支持体上に無機微粒子とバインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下であり、前記バインダーとして少なくとも紫外線により架橋する高分子化合物を含み、無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比が2以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に関し、更に詳しくは、画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式においては、急速に画質向上が図られてきており、銀塩写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成するための手段として、使用する記録用紙においても、急速に技術改良が進められている。
【0003】
インクジェット記録用紙に用いられる支持体として、一般に紙等の吸水性支持体とポリエステルフィルムや樹脂被覆紙等の非吸水性支持体とが知られている。前者は、支持体自身がインクを吸収できるため、高いインク吸収能を有している利点がある反面、支持体の吸水性に起因してプリント後にシワが発生(コックリングともいう)するという問題があり、高品位なプリントが得ることが難しく、またプリント時のコックリングに伴ってヘッドによるプリント表面の擦りが起き易いなどの課題を有している。
【0004】
これに対し、非吸水性の支持体を使用する場合には、上述の問題はなく、高品位なプリントが得られる利点がある。
【0005】
例えば、高い平滑性を有する支持体上に、インク吸収層としてゼラチンやPVAなどの親水性バインダーを塗布してインク受容層とするインクジェットシートが考案されている。このタイプの記録用紙は、バインダーの膨潤性を利用してインクを吸収する方法であり、膨潤型インクジェット記録用紙と呼ばれている。この膨潤型のインク受容層は、構成するバインダーが水溶性樹脂であるが故に、プリント後のインク乾燥性に難があり、画像や皮膜が水分に対して弱いため耐水性に乏しく、更に、昨今のインクジェットプリンターにおいては、印画速度が早いため、バインダーの膨潤によるインク吸収がインクの吐出量や吐出速度に追いつかず、インク溢れやまだらとなる等、適応性に乏しく、高速印字には不適であるという問題があった。
【0006】
上記水系樹脂の膨潤性を利用してインクを吸収するタイプの膨潤型インクジェット用記録シートに対し、特開平10−119423号のように微小な空隙を有する多孔質の層をインク吸収層として設けた空隙型のインクジェット記録用紙は、高インク吸収性と高速乾燥性の両方を有しており、最も銀塩写真画質に近いものが得られる方法の一つになりつつある。
【0007】
空隙型のインクジェット記録用紙では、従来、バインダーとしてPVAを用いホウ酸で架橋することが常用されている(例えば特許文献1)が、この架橋系では塗布時に発生するひび割れや塗膜の耐水性の問題が起こっている。これらの問題点を改良することを目的として、バインダーとして電子線で架橋された重合体を用いることが検討され、例えば特許文献2や特許文献3において実施されている。しかし、電子線による架橋は雰囲気の酸素濃度が高いと効果が妨げられるという課題があり、窒素、ヘリウム等の不活性ガスにより照射ゾーンにおいて置換を行い酸素濃度を400ppm以下程度まで保つ必要があり、工程適正上好ましくない。また、電子線はエネルギーが高すぎるため、塗膜中の水分が瞬間的に蒸発して気泡となり塗膜表面を荒らしたりする等の問題がある。
【0008】
以上の問題に対し、本発明者らが検討した結果、高分子化合物を紫外線により架橋することで塗布時に発生するひび割れや耐水性が改良され、しかも電子線による架橋のような大がかりな装置を必要とせず、塗布面の荒れもないインクジェット記録用紙が得られることを見出した。
【0009】
このように、高分子化合物を紫外線により架橋することによって得られるインクジェット記録用紙は従来のインクジェット記録用紙に比べ、優れた特性を有するが、プリントのざらつき感(画像ノイズ)が目立つという問題があり、改善が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−146068号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平9−263038号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2002−160439号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.不透明の支持体上に無機微粒子とバインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下であり、かつ、前記多孔質のインク受容層が、紫外線により架橋する高分子化合物と微粒子を含有する塗工液を塗布し、紫外線を照射することにより得られるものであって、無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比が2以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0016】
2.紫外線により架橋する高分子化合物が、主鎖に複数の側鎖を有する、平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であり、側鎖間で架橋する高分子化合物である前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
本発明のインクジェット記録用紙は、不透明な支持体上に特定の機能を有する親水性バインダー、具体的には、紫外線により架橋する親水性高分子化合物をバインダーとして用い、無機微粒子を主として含有する水溶性塗布液を塗布し、電子線によらず、紫外線による架橋反応により塗膜を硬化させ、空隙を有する多孔質のインク受容層を形成したものであり、これにより、高空隙率でインク吸収効率のよい耐水性の高いインク受容層を、電子線のような大がかりな装置を必要とせず、ひび割れ、塗布面の荒れもなく、高品位にかつ高生産性で製造出来ることをみいだした。また、特に、紫外線による架橋反応によりインク受容層を反射性支持体上に形成したインクジェット記録用紙の場合、プリント後の、プリントのざらつき感が目立つという問題があったが、この点に関し鋭意検討した結果、インクジェット記録用紙に用いる不透明支持体の表面粗さRaを0.30μm以下にすることでプリント画像のざらつき感は大きく改善されることを見出した。
【0018】
これは、電子線による架橋と異なり、紫外線を用いた架橋反応の場合、インク受容層に照射された紫外線は不透明支持体の支持体面で反射されるが、支持体が平滑であると紫外線の反射時の散乱が少ないためインク受容層内での架橋(インクの吸収速度に影響を及ぼす)が均一になり、インク吸収の場所によるばらつきがなくなるためであると思われる。
【0019】
本発明のインクジェット記録用紙は、従って、該紫外線により架橋する親水性高分子化合物乃至樹脂をバインダーとして用い、これを無機微粒子と混合し、必要であれば後述する添加剤等を更に混合して、水溶性塗布液を調製し、これを不透明支持体上に塗布して、塗膜を形成した後に、塗膜に紫外線(水銀灯或いはメタルハライドランプ等)を照射して、架橋反応を生じさせ、水性塗膜の中の親水性高分子化合物を架橋し、流動化を防いで均一な塗膜を形成させ、紫外線照射後に、塗膜を乾燥させることで、不透明支持体上に均一な、親水性バインダーおよび微粒子を主として含有する空隙を有する多孔質のインク受容層を形成するものである。
【0020】
該紫外線により架橋する高分子化合物は、塗布後に、紫外線照射することにより架橋して分子量が増加することで、水溶性塗膜の粘度を上昇させ、流動化を防いで(セットさせて)均一な膜を形成させる。架橋により水不溶性の親水性高分子化合物が形成され、架橋後乾燥することで耐水性の皮膜を形成する。
【0021】
前記、紫外線により架橋する高分子化合物としては、主鎖に複数の側鎖を有する平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であることが好ましく、親水性高分子化合物の側鎖同士が架橋することで、より高分子の3次元架橋を形成して、水不溶化して、耐水性の膜(インク受容層)を形成する。架橋の形式はどの様なものでもよいが、主鎖からのびる複数の側鎖間での架橋により耐水性の膜を形成することが均一な特性のよい膜を形成する上で好ましい。耐水性とは80℃の温水に5分間浸漬した場合の質量残存率が85%以上のものである。
【0022】
前記側鎖間での架橋は、従って、バインダーを形成する線状のポリマー主鎖に結合する複数の側鎖に、別に加えた架橋性化合物と反応しうる基を導入し、これに対し、該架橋性化合物と反応しうる基と反応する多官能性の架橋性化合物、例えば、東洋合成製DAzST(51)、DAzST(4)等のビスアジド化合物、また、重合性ビニル基を複数有する架橋性化合物等を用いて紫外線により架橋を形成させてもよいし、また、線状のポリマー主鎖に光二量化また光重合等により架橋を形成する様な基(架橋基)を有する側鎖が結合する親水性高分子化合物を用い、紫外線照射により、側鎖を架橋させ、分子量を増加させてもよい。
【0023】
しかしながら、好ましいのは、紫外線により架橋する高分子化合物として、主鎖に複数の側鎖を有する平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であって、側鎖に架橋基が含有されているものであり、これら紫外線により架橋する親水性高分子化合物が水分散された状態で或いは水に溶解した状態で、無機微粒子と共にインク受容層塗布液に含有されていることが好ましい。
【0024】
これら高分子化合物の重合度については、側鎖の架橋性基を修飾する前段階の高分子溶液の粘度から粘度平均重合度を決定する。例えば、高分子化合物にポリビニルアルコールを用いる場合、JIS K−6726に示される方法に準じて重合度を決定できる。
【0025】
これにより、インク受容層塗布液形成時には均一な水分散或いは溶解した状態で塗布液を構成することが出来(特に架橋剤等を添加・溶解する為に特別の溶媒を混合したりする必要もなく)、不透明支持体上に塗布されたインク受容層組成物は、紫外線の照射により架橋した後には、3次元ネットワークの形成により水不溶化し、かつ、親水性でインク受容性の均一な膜を形成する。
【0026】
ここで前記主鎖とは、線状のポリマー鎖を指し、側鎖とはこの主鎖に結合する側鎖であり、本発明においては、この側鎖は架橋基を含んでいることが好ましい。また、これら主鎖および複数の側鎖からなる高分子化合物は、水分散性または水溶性の親水性高分子化合物であって、線状のポリマー主鎖の平均重合度が300以上の親水性高分子化合物が好ましく、更に好ましくは水溶性であって(常温(25℃)で20%程度の溶解度を有する)、均一な高分子水溶液を形成するものが好ましい。
【0027】
従って、本発明の多孔質のインク受像層のバインダーに用いられる、紫外線により架橋する前記親水性高分子化合物とは、紫外線の照射により、反応を起こして架橋する水溶性の樹脂が好ましく、架橋反応前には水溶性であるが、架橋反応後には実質的に非水溶性となる樹脂が好ましいものである。
【0028】
このような樹脂としては、前記主鎖を構成する線状ポリマーとして、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であるか(この場合は多官能性の架橋性化合物と組み合わせ用いる)、または、これらの親水性樹脂を主鎖ポリマーとして、該ポリマーの側鎖に、架橋基として、光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型などの光反応性架橋基を導入して変性したものが挙げられる。
【0029】
これらの架橋基は、紫外線のような活性放射線により、光反応してポリマー側鎖間で架橋を形成し、ポリマー間に3次元架橋を形成して水不溶化する。
【0030】
なかでも、光二量化型、光重合型の架橋基により変性した側鎖を有する樹脂が、感度または樹脂自身の安定性の観点から好ましい。
【0031】
光二量化型の架橋基(光反応性基)により変性したものとしては、具体的には、アジド基、ジアゾ基、シンナモイル基、スチリルピリジニウム基、スチリルキノリニウム基等を導入したものが好ましく挙げられ、光二量化後アニオン染料等の水溶性染料により染色される樹脂が好ましい。
【0032】
このような樹脂としては、たとえば一級アミノ基ないし4級アンモニウム基等のカチオン性基を有する樹脂、たとえば特開昭62−283339号、特開平1−198615号、特開昭60−252341号、特開昭56−67309号、特開昭60−129742号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)、アジド基のような、硬化後アミノ基になり、カチオン性になる樹脂、たとえば特開昭56−67309号等の公報に記載された様な感光性樹脂(組成物)があげられる。
【0033】
具体的には、次のようなものがあげられる。
例えば、特開昭56−67309号公報記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中に、以下の構造
【0034】
【化1】
【0035】
で表される2−アジド−5−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造又は以下の構造
【0036】
【化2】
【0037】
で表される4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造を有する樹脂組成物である。
【0038】
これら樹脂の具体例は該公報中の実施例1〜2に、樹脂の構成成分及びその使用割合は該公報第2頁に記載されている。
【0039】
また、下記構造で表されるアジド系架橋基を側鎖に有する親水性樹脂組成物も代表的である。
【0040】
【化3】
【0041】
また、更には、特開昭60−129742号公報記載の感光性樹脂が挙げられ、これはポリビニルアルコール構造体中に例えば、下記構造
【0042】
【化4】
【0043】
で表されるスチリルピリジニウム塩構造またはスチリルキノリニウム塩構造を側鎖に変性基として有する親水性高分子化合物である。
【0044】
また、光重合型の変性基を側鎖に有する親水性高分子化合物としては、例えば以下に示される特開2000−181062に記載の下記一般式(1)で表される感光性樹脂が反応性の観点から好ましい。
【0045】
【化5】
【0046】
ここにおいて、R1=H,Meを表し、nは1または2を、Xは、−(CH2)mCOO−、−O−CH2−COO−または−O−を、Yは、芳香族環または単結合を表し、m=0〜6までの整数を表す。
【0047】
本発明において前記多孔質のインク受容層を形成するために用いられる無機微粒子としては、細孔容量が大きく、平均粒径が小さい微細無機顔料が用いられる。特に、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、及びアルミナ、炭酸カルシウムなどの微細顔料が用いられる。
【0048】
本発明に用いられるシリカとは、珪酸ソーダを原料として沈降法またはゲル法により合成された湿式シリカまたは気相法シリカである。
【0049】
例えば湿式シリカでは沈降法による(株)トクヤマのファインシールが、ゲル法によるシリカとしては日本シリカ工業(株)のNIPGELが市販されている。沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの一次粒子が二次凝集体を形成したシリカ粒子として特徴づけられる。
【0050】
湿式シリカの一次粒子径に関する下限に特に制約はないが、シリカ微粒子の製造安定性の観点からは3nm以上であり、皮膜の透明性の観点からは50nm以下であることが好ましい。一般的にはゲル法により合成される湿式シリカの方が沈降法に対して一次粒径が小さい傾向にあり好ましい。
【0051】
気相法シリカとは、四塩化ケイ素と水素を原料にし燃焼法により合成されるものであり例えば日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズが市販されている。
【0052】
高空隙率のインク吸収層を得るためにはBET法により測定される比表面積が400m2/g未満であるか、または孤立シラノール基比率が0.5〜2.0である。比表面積は、好ましくは40m2/g〜100m2/gの範囲であり、比表面積の下限は写真に近い光沢が得られる観点から40m2/gである。尚、BET法とは気相吸着等温線からシリカ微粒子1g当たりの表面積を求める方法により比表面積を測定する方法である。
【0053】
この範囲の比表面積を有する気相法シリカにおいて、一次粒径分布における変動係数を0.01〜0.4にすることが空隙率の観点から好ましい。変動係数が0.4を超えると、空隙率が低下する懸念があり好ましくない。尚、湿式シリカにおいては一次粒子自身が細孔径をもつためこの限りではない。
【0054】
気相法シリカにおいては、二次凝集体は湿式シリカに対して比較的弱い相互作用により形成されているため、湿式シリカに対して低いエネルギーで分散できるという特徴を有している。
【0055】
気相法シリカの一次粒径分布における変動係数は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の一次粒子の粒径を求めてその粒径分布の標準偏差を数平均粒径値で割った値として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0056】
シリカの一次粒子及び二次粒子の平均粒径は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。二次平均粒径は300nm以下であることが好ましい。
【0057】
前記気相法シリカを湿度20〜60%で3日以上保存して気相法シリカの含水率を調整することも好ましい。
【0058】
本発明に用いられる気相法シリカにおいて、孤立シラノール基比率は0.5〜1.5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.1である。
【0059】
本発明に用いられるアルミナとは酸化アルミニウム、及びその水和物のことであり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形、球状、板状、針状の形態を有している物が使用される。特にアスペクト比が2以上で、一次粒径の平均粒径が5〜30nmの平板状アルミナ水和物、気相法アルミナが好ましい。
【0060】
無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比は、充分な空隙容量を確保するため2以上であることが好ましく、また、インク受容層の水溶性塗布液における上記無機微粒子の含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。
【0061】
無機微粒子と(前記バインダーとして用いられる)紫外線により架橋される親水性高分子化合物は、これらから形成される前記多孔質のインク受容層中の固形分濃度として5〜90%の範囲を占めるようにもちいられることが好ましい。
【0062】
前記紫外線により架橋する親水性高分子化合物は親水性であるため、これら無機微粒子および前記紫外線により架橋する親水性高分子化合物を含有する水性塗布液は、水を主体樽溶媒とするものであり、少なくとも50質量%、さらに好ましいのは70質量%以上は水である。これらの水性塗布液は、紫外線による架橋後は、水性溶媒に対して不溶化し、耐水性の皮膜を形成する。
【0063】
本発明においては、インク受容層の水溶性塗布液中に光開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は塗布液を構成する溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは前記の感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0064】
適用される光開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0065】
一例として、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類。2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、及びこれらの混合物等があげられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0066】
特に、水溶性の4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾフェノンアンモニウム塩等の水溶性開始剤が、混合性等に優れ架橋効率の観点からも好ましい。
【0067】
これらの開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる。
【0068】
紫外線照射において、照射における積算照射エネルギー(mJ/cm2)は、あるランプの照射波長における照度(mW/cm2)×時間(秒)で決まる。
【0069】
紫外線の光源として例えば数百Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられるが、光源の波長分布という観点で高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましく、比較的扱いやすい発光主波長350〜370nmのメタルハライドランプがより好ましい。また、300nm以下の波長光をカットするフィルターをもうけることが好ましい。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては10mW/cm2〜1W/cm2、照射エネルギーとしては0.1mJ/cm2〜800mJ/cm2が好ましく、1mJ/cm2〜100mJ/cm2がより好ましい。
【0070】
光源波長に300nm以下の紫外線が含まれない場合や、照射エネルギーとして500mJ/cm2以下である場合は、紫外線架橋性樹脂の母核、または共存させる各種添加剤を紫外線により分解を避けることができ、それに従い、分解物に由来する臭気などの問題を起こすおそれもなく好ましい。照射エネルギーが0.1mJ/cm2以上であれば架橋効率が充分であり、本発明の効果が十分にえらる。
【0071】
紫外線照射の際の照度は10mW/cm2以上1W/cm2以下が好ましい。照度が1W/cm2以下であれば、塗膜の表面硬化性が向上すると共に、深部まで硬化し、均質に架橋された膜が得られる。その場合は、膜の深度方向の堅さのバランスも均質であるため、カールなどが起こりにくく好ましい。
【0072】
照度が10mW/cm2以上であれば、膜中の散乱等による架橋の不均一が避けられるため、本発明の効果が得られ好ましい。
【0073】
同一積算光量(mJ/cm2)を与える場合、照度に好ましい範囲があることは、その光の透過率が変化することに起因する。紫外線の透過性により、発生した架橋反応種の濃度分布が異なり、仮に、紫外線照度が高すぎる場合、表層に高濃度の架橋反応種が発生するおそれがあり、塗膜表層に堅い緻密な膜が形成されてしまうこともある。
【0074】
照度が好ましい範囲にある場合には、表層の架橋度合いも低く、深部方向への光透過性が高いため緩やかな架橋が深部方向へ均一に形成される。
【0075】
また、仮に照度が低すぎる場合には、必要積算照度を与える場合に照射時間がかかってしまい、設備導入等の面で不利であるばかりでなく、塗膜による紫外線の散乱による絶対光線量が不足することもある。
【0076】
本発明のバインダーとして、前記紫外線により架橋する高分子化合物以外に、親水性バインダーを併用してもよい。例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0077】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、更に、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0078】
カチオン変性ポリビニルアルコールとは、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0079】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0081】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0082】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。更に、変性ポリビニルアルコールとして、シリル基で変性したポリビニルアルコールも、本発明でいうポリビニルアルコールに包含される。また、ポリビニルアルコールは、平均重合度、ケン化度や変性等の種類違いのものを2種類以上併用してもよい。
【0083】
本発明の記録用紙のインク受容層中に表面がアニオン性である微粒子を使用する場合には、画像の耐水性や耐にじみ性を改良する点から染料に定着性を有する第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有させることが好ましい。
【0084】
カチオン性ポリマーとしては公知のポリマーを使用することができ、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンの縮合物、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ジアリルジメチルアンモニウム塩の縮合物、ポリアクリル酸エステルの4級化物等が挙げられるが、特に、特開平10−193776号公報、同10−217601号公報および同11−20300号公報等に記載されているものが好ましい。特に好ましいものは、重量平均分子量が2000〜10万のものである。
【0085】
耐光性を向上させたり、滲みや耐水性を向上させる目的で多価金属化合物、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr2+、Ni2+、Al3+などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等を用いることができる。なお、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの無機ポリマー化合物も、好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性多価金属イオンは、記録用紙1m2当たり、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0086】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができる。
【0087】
上記の添加剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0088】
本発明において、不透明の支持体としては、JIS P 8138に規定される方法で測定したときに85%以上の不透明度を有する支持体であり、その表面の表面粗さによって、紫外線の反射が異なるため、架橋した塗膜の均一性に影響を与える。本発明においては、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下である。これにより前記の如く、紫外線による架橋を均一に行うことができるため、プリントのざらつき感が大きく向上する。中心線平均粗さRaは、例えば、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して測定することが出来る。
【0089】
これらの中心線平均粗さを有する反射性支持体としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらを積層したフィルム支持体等から選択することが出来る。特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0090】
本発明において特に好ましい、非吸水性支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について、以下説明する。
【0091】
本発明に係る非吸水性支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えて、ポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP、LDPの比率は、10〜70%の範囲であることが好ましい。
【0092】
上記パルプにおいては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。また、紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を、適宜添加することができる。
【0093】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長は、JIS P 8207で規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分は、20%以下であることが好ましい。
【0094】
紙の坪量は、50〜250gであることが好ましく、特に70〜200gであることが好ましい。紙の厚さは、50〜210μmであることが好ましい。
【0095】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g・cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度は、JIS P 8143に規定される条件で、20〜200gであることが好ましい。また、紙表面には、表面サイズ剤を塗布してもよい。
【0096】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0097】
次に、上記の紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明で用いることのできるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
【0098】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンとしては、主として、低密度のポリエチレン(LDPE)又は高密度のポリエチレン(HDPE)が好ましいが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0099】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0100】
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。また、蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0101】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するようにその量は選択されるが、一般には、ポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率は、インク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整するように設定されるのが好ましく、通常は表:裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3:1〜1:3である。
【0102】
更に、上記ポリエチレンで被覆した紙支持体は、以下の(1)〜(8)に記載の特性を有していることが好ましい。
【0103】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N(2〜30kg)、横方向が10〜200N(1〜20kg)であることが好ましい
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で縦方向が20〜30g、横方向が10〜250gが好ましい
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2が好ましい
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい
(7)原紙中の水分:中紙に対して4〜10%が好ましい
(8)インク受容層を設けた側の光沢度(75度鏡面光沢度):10〜90%が好ましい。
【0104】
本発明のインクジェット記録用紙には染料インク、顔料インクのどちらも適用可能である。
【0105】
(塗布方法)
本発明に係わる空隙を有する多孔質のインク受容層を形成するためには、従って、前記紫外線により架橋する高分子化合物および無機微粒子を含有する水溶性塗布液に、前記の記載の様に、必要に応じ、前記添加剤等を混合して、塗布液を調製した後、前記の不透明支持体上に塗布する。
【0106】
上記塗布液の塗布方法としては、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0107】
塗布後直ぐに、親水性溶媒が存在しているときに前記紫外線による照射を行って、架橋させて、塗膜の流動化を抑えて、均一な塗膜を形成した後、水を主体とする水性溶媒をオーブンまた、熱風等で、蒸発させ、乾燥することにより、吹き荒れのない均一な、空隙を有する多孔質のインク受容層を得ることができる。紫外線を照射する際に、水性溶媒が一部或いは大部分蒸発してもかまわない。
【0108】
本発明の記録用紙に係る多孔質のインク受容層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0109】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0110】
(実施例1)
《シリカ分散液の作製》
予め均一に分散されている、1次粒子の平均粒径が約7nmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を30%含有するシリカ水分散液(pH2.6、エタノール0.5%含有)の400gを10%のカチオン性ポリマー分散剤P−1水溶液(n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有)120gに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。その後pHを1モル/リットル−NaOH水溶液にて4.1に調整した。
【0111】
【化6】
【0112】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で仕上げて、シリカ含有量20%のほぼ透明なシリカ分散液を得た。得られた分散液をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0113】
《記録用紙の作製》
特開2000−181062号公報実施例を参照して前記一般式(1)で表される架橋基を側鎖に有する紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体水溶液を調製した。即ち、平均重合度3000、ケン化度88%のポリビニルアルコールにp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドを反応させ、一般式(1)において、Y;p−フェニレン基、X;−O−、R1;CH3、n=1で表される架橋基を、架橋基変性率1mol%で有する、固形分濃度15%の紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体(化合物−1)の水溶液を作成した。
【0114】
前記で得られたシリカ分散液100gに、上記紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体(化合物−1)の濃度を10%に調整した水溶液32gと光開始剤(日本化薬製カヤキュアQTX)0.05gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で200gに仕上げ、塗布液を得た。
【0115】
得られた塗布液をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0116】
次いで、上記調製した塗布液を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したJIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが0.15μmのポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中の8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックス性ポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、バーコーターを用いて、シリカの付き量で18g/m2となるように塗布し、その後365nmに主波長を持つメタルハライドランプで、波長365nmにおける照度が60mW/cm2の紫外線を用い、エネルギー量で30mJ/cm2の紫外線を照射した。その後80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録用紙を得た。
【0117】
(実施例2)
シリカを1次粒子の平均粒径が約15nmの湿式シリカ(トクヤマ社製;T−32)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0118】
(実施例3)
無機微粒子として1次粒子の平均粒径が約13nmの気相法アルミナ(日本アエロジル製;酸化アルミニウムC)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0119】
(実施例4)
無機微粒子として1次粒子の平均粒径が約13nmのアルミナ水和物(日産化学社製、アルミナゾル520)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0120】
(実施例5)
ポリエチレンコート紙のRaが0.22μmであるものに支持体を代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0121】
(実施例6)
ポリエチレンコート紙のRaが0.30μmであるものに代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0122】
(比較例1)
ポリエチレンコート紙のRaが0.32μmであるものに代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0123】
(比較例2)
親水性バインダーとして、化合物−1の代わりに、平均重合度3000、ケン化度88%の側鎖をもたないポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様の塗布液を作成して、バーコーターを用いて、シリカの付き量で18g/m2となるように、Raが0.20μmであるポリエチレンコート紙の支持体に塗布し、その後ESI製電子線照射装置を用いて加速電圧200kV、照射量4Mradの照射条件で電子線を照射した。その後80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録用紙を得た。
【0124】
尚、支持体の中心線平均粗さRaについては、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さを、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して測定した。
【0125】
以上のようにして得られた記録用紙について、以下の項目について評価した。
〈均質性〉
各インクジェット記録用紙をグリーンの最高濃度を一面に印画して目視評価し、ざらつき感を感じなくなる観察距離を求め、以下の基準で評価した。
【0126】
5:10cm未満
4:10cm以上、20cm未満
3:20cm以上、40cm未満
2:40cm以上、60cm未満
1:60cmを越える
〈Dm〉
セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターPM950Cを用い、黒ベタ印字を行い、光学濃度計(X−Rite社製X−Rite938)により反射濃度を測定した。
【0127】
【表1】
【0128】
本発明に係わるインクジェット記録用紙は、画像濃度が高く、また均質性がよく、印画のざらつき感が少ないことが判る。
【0129】
【発明の効果】
プリント画像のざらつき感がない画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に関し、更に詳しくは、画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式においては、急速に画質向上が図られてきており、銀塩写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成するための手段として、使用する記録用紙においても、急速に技術改良が進められている。
【0003】
インクジェット記録用紙に用いられる支持体として、一般に紙等の吸水性支持体とポリエステルフィルムや樹脂被覆紙等の非吸水性支持体とが知られている。前者は、支持体自身がインクを吸収できるため、高いインク吸収能を有している利点がある反面、支持体の吸水性に起因してプリント後にシワが発生(コックリングともいう)するという問題があり、高品位なプリントが得ることが難しく、またプリント時のコックリングに伴ってヘッドによるプリント表面の擦りが起き易いなどの課題を有している。
【0004】
これに対し、非吸水性の支持体を使用する場合には、上述の問題はなく、高品位なプリントが得られる利点がある。
【0005】
例えば、高い平滑性を有する支持体上に、インク吸収層としてゼラチンやPVAなどの親水性バインダーを塗布してインク受容層とするインクジェットシートが考案されている。このタイプの記録用紙は、バインダーの膨潤性を利用してインクを吸収する方法であり、膨潤型インクジェット記録用紙と呼ばれている。この膨潤型のインク受容層は、構成するバインダーが水溶性樹脂であるが故に、プリント後のインク乾燥性に難があり、画像や皮膜が水分に対して弱いため耐水性に乏しく、更に、昨今のインクジェットプリンターにおいては、印画速度が早いため、バインダーの膨潤によるインク吸収がインクの吐出量や吐出速度に追いつかず、インク溢れやまだらとなる等、適応性に乏しく、高速印字には不適であるという問題があった。
【0006】
上記水系樹脂の膨潤性を利用してインクを吸収するタイプの膨潤型インクジェット用記録シートに対し、特開平10−119423号のように微小な空隙を有する多孔質の層をインク吸収層として設けた空隙型のインクジェット記録用紙は、高インク吸収性と高速乾燥性の両方を有しており、最も銀塩写真画質に近いものが得られる方法の一つになりつつある。
【0007】
空隙型のインクジェット記録用紙では、従来、バインダーとしてPVAを用いホウ酸で架橋することが常用されている(例えば特許文献1)が、この架橋系では塗布時に発生するひび割れや塗膜の耐水性の問題が起こっている。これらの問題点を改良することを目的として、バインダーとして電子線で架橋された重合体を用いることが検討され、例えば特許文献2や特許文献3において実施されている。しかし、電子線による架橋は雰囲気の酸素濃度が高いと効果が妨げられるという課題があり、窒素、ヘリウム等の不活性ガスにより照射ゾーンにおいて置換を行い酸素濃度を400ppm以下程度まで保つ必要があり、工程適正上好ましくない。また、電子線はエネルギーが高すぎるため、塗膜中の水分が瞬間的に蒸発して気泡となり塗膜表面を荒らしたりする等の問題がある。
【0008】
以上の問題に対し、本発明者らが検討した結果、高分子化合物を紫外線により架橋することで塗布時に発生するひび割れや耐水性が改良され、しかも電子線による架橋のような大がかりな装置を必要とせず、塗布面の荒れもないインクジェット記録用紙が得られることを見出した。
【0009】
このように、高分子化合物を紫外線により架橋することによって得られるインクジェット記録用紙は従来のインクジェット記録用紙に比べ、優れた特性を有するが、プリントのざらつき感(画像ノイズ)が目立つという問題があり、改善が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−146068号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平9−263038号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2002−160439号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.不透明の支持体上に無機微粒子とバインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下であり、かつ、前記多孔質のインク受容層が、紫外線により架橋する高分子化合物と微粒子を含有する塗工液を塗布し、紫外線を照射することにより得られるものであって、無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比が2以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0016】
2.紫外線により架橋する高分子化合物が、主鎖に複数の側鎖を有する、平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であり、側鎖間で架橋する高分子化合物である前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
本発明のインクジェット記録用紙は、不透明な支持体上に特定の機能を有する親水性バインダー、具体的には、紫外線により架橋する親水性高分子化合物をバインダーとして用い、無機微粒子を主として含有する水溶性塗布液を塗布し、電子線によらず、紫外線による架橋反応により塗膜を硬化させ、空隙を有する多孔質のインク受容層を形成したものであり、これにより、高空隙率でインク吸収効率のよい耐水性の高いインク受容層を、電子線のような大がかりな装置を必要とせず、ひび割れ、塗布面の荒れもなく、高品位にかつ高生産性で製造出来ることをみいだした。また、特に、紫外線による架橋反応によりインク受容層を反射性支持体上に形成したインクジェット記録用紙の場合、プリント後の、プリントのざらつき感が目立つという問題があったが、この点に関し鋭意検討した結果、インクジェット記録用紙に用いる不透明支持体の表面粗さRaを0.30μm以下にすることでプリント画像のざらつき感は大きく改善されることを見出した。
【0018】
これは、電子線による架橋と異なり、紫外線を用いた架橋反応の場合、インク受容層に照射された紫外線は不透明支持体の支持体面で反射されるが、支持体が平滑であると紫外線の反射時の散乱が少ないためインク受容層内での架橋(インクの吸収速度に影響を及ぼす)が均一になり、インク吸収の場所によるばらつきがなくなるためであると思われる。
【0019】
本発明のインクジェット記録用紙は、従って、該紫外線により架橋する親水性高分子化合物乃至樹脂をバインダーとして用い、これを無機微粒子と混合し、必要であれば後述する添加剤等を更に混合して、水溶性塗布液を調製し、これを不透明支持体上に塗布して、塗膜を形成した後に、塗膜に紫外線(水銀灯或いはメタルハライドランプ等)を照射して、架橋反応を生じさせ、水性塗膜の中の親水性高分子化合物を架橋し、流動化を防いで均一な塗膜を形成させ、紫外線照射後に、塗膜を乾燥させることで、不透明支持体上に均一な、親水性バインダーおよび微粒子を主として含有する空隙を有する多孔質のインク受容層を形成するものである。
【0020】
該紫外線により架橋する高分子化合物は、塗布後に、紫外線照射することにより架橋して分子量が増加することで、水溶性塗膜の粘度を上昇させ、流動化を防いで(セットさせて)均一な膜を形成させる。架橋により水不溶性の親水性高分子化合物が形成され、架橋後乾燥することで耐水性の皮膜を形成する。
【0021】
前記、紫外線により架橋する高分子化合物としては、主鎖に複数の側鎖を有する平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であることが好ましく、親水性高分子化合物の側鎖同士が架橋することで、より高分子の3次元架橋を形成して、水不溶化して、耐水性の膜(インク受容層)を形成する。架橋の形式はどの様なものでもよいが、主鎖からのびる複数の側鎖間での架橋により耐水性の膜を形成することが均一な特性のよい膜を形成する上で好ましい。耐水性とは80℃の温水に5分間浸漬した場合の質量残存率が85%以上のものである。
【0022】
前記側鎖間での架橋は、従って、バインダーを形成する線状のポリマー主鎖に結合する複数の側鎖に、別に加えた架橋性化合物と反応しうる基を導入し、これに対し、該架橋性化合物と反応しうる基と反応する多官能性の架橋性化合物、例えば、東洋合成製DAzST(51)、DAzST(4)等のビスアジド化合物、また、重合性ビニル基を複数有する架橋性化合物等を用いて紫外線により架橋を形成させてもよいし、また、線状のポリマー主鎖に光二量化また光重合等により架橋を形成する様な基(架橋基)を有する側鎖が結合する親水性高分子化合物を用い、紫外線照射により、側鎖を架橋させ、分子量を増加させてもよい。
【0023】
しかしながら、好ましいのは、紫外線により架橋する高分子化合物として、主鎖に複数の側鎖を有する平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であって、側鎖に架橋基が含有されているものであり、これら紫外線により架橋する親水性高分子化合物が水分散された状態で或いは水に溶解した状態で、無機微粒子と共にインク受容層塗布液に含有されていることが好ましい。
【0024】
これら高分子化合物の重合度については、側鎖の架橋性基を修飾する前段階の高分子溶液の粘度から粘度平均重合度を決定する。例えば、高分子化合物にポリビニルアルコールを用いる場合、JIS K−6726に示される方法に準じて重合度を決定できる。
【0025】
これにより、インク受容層塗布液形成時には均一な水分散或いは溶解した状態で塗布液を構成することが出来(特に架橋剤等を添加・溶解する為に特別の溶媒を混合したりする必要もなく)、不透明支持体上に塗布されたインク受容層組成物は、紫外線の照射により架橋した後には、3次元ネットワークの形成により水不溶化し、かつ、親水性でインク受容性の均一な膜を形成する。
【0026】
ここで前記主鎖とは、線状のポリマー鎖を指し、側鎖とはこの主鎖に結合する側鎖であり、本発明においては、この側鎖は架橋基を含んでいることが好ましい。また、これら主鎖および複数の側鎖からなる高分子化合物は、水分散性または水溶性の親水性高分子化合物であって、線状のポリマー主鎖の平均重合度が300以上の親水性高分子化合物が好ましく、更に好ましくは水溶性であって(常温(25℃)で20%程度の溶解度を有する)、均一な高分子水溶液を形成するものが好ましい。
【0027】
従って、本発明の多孔質のインク受像層のバインダーに用いられる、紫外線により架橋する前記親水性高分子化合物とは、紫外線の照射により、反応を起こして架橋する水溶性の樹脂が好ましく、架橋反応前には水溶性であるが、架橋反応後には実質的に非水溶性となる樹脂が好ましいものである。
【0028】
このような樹脂としては、前記主鎖を構成する線状ポリマーとして、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であるか(この場合は多官能性の架橋性化合物と組み合わせ用いる)、または、これらの親水性樹脂を主鎖ポリマーとして、該ポリマーの側鎖に、架橋基として、光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型などの光反応性架橋基を導入して変性したものが挙げられる。
【0029】
これらの架橋基は、紫外線のような活性放射線により、光反応してポリマー側鎖間で架橋を形成し、ポリマー間に3次元架橋を形成して水不溶化する。
【0030】
なかでも、光二量化型、光重合型の架橋基により変性した側鎖を有する樹脂が、感度または樹脂自身の安定性の観点から好ましい。
【0031】
光二量化型の架橋基(光反応性基)により変性したものとしては、具体的には、アジド基、ジアゾ基、シンナモイル基、スチリルピリジニウム基、スチリルキノリニウム基等を導入したものが好ましく挙げられ、光二量化後アニオン染料等の水溶性染料により染色される樹脂が好ましい。
【0032】
このような樹脂としては、たとえば一級アミノ基ないし4級アンモニウム基等のカチオン性基を有する樹脂、たとえば特開昭62−283339号、特開平1−198615号、特開昭60−252341号、特開昭56−67309号、特開昭60−129742号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)、アジド基のような、硬化後アミノ基になり、カチオン性になる樹脂、たとえば特開昭56−67309号等の公報に記載された様な感光性樹脂(組成物)があげられる。
【0033】
具体的には、次のようなものがあげられる。
例えば、特開昭56−67309号公報記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中に、以下の構造
【0034】
【化1】
【0035】
で表される2−アジド−5−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造又は以下の構造
【0036】
【化2】
【0037】
で表される4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造を有する樹脂組成物である。
【0038】
これら樹脂の具体例は該公報中の実施例1〜2に、樹脂の構成成分及びその使用割合は該公報第2頁に記載されている。
【0039】
また、下記構造で表されるアジド系架橋基を側鎖に有する親水性樹脂組成物も代表的である。
【0040】
【化3】
【0041】
また、更には、特開昭60−129742号公報記載の感光性樹脂が挙げられ、これはポリビニルアルコール構造体中に例えば、下記構造
【0042】
【化4】
【0043】
で表されるスチリルピリジニウム塩構造またはスチリルキノリニウム塩構造を側鎖に変性基として有する親水性高分子化合物である。
【0044】
また、光重合型の変性基を側鎖に有する親水性高分子化合物としては、例えば以下に示される特開2000−181062に記載の下記一般式(1)で表される感光性樹脂が反応性の観点から好ましい。
【0045】
【化5】
【0046】
ここにおいて、R1=H,Meを表し、nは1または2を、Xは、−(CH2)mCOO−、−O−CH2−COO−または−O−を、Yは、芳香族環または単結合を表し、m=0〜6までの整数を表す。
【0047】
本発明において前記多孔質のインク受容層を形成するために用いられる無機微粒子としては、細孔容量が大きく、平均粒径が小さい微細無機顔料が用いられる。特に、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、及びアルミナ、炭酸カルシウムなどの微細顔料が用いられる。
【0048】
本発明に用いられるシリカとは、珪酸ソーダを原料として沈降法またはゲル法により合成された湿式シリカまたは気相法シリカである。
【0049】
例えば湿式シリカでは沈降法による(株)トクヤマのファインシールが、ゲル法によるシリカとしては日本シリカ工業(株)のNIPGELが市販されている。沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの一次粒子が二次凝集体を形成したシリカ粒子として特徴づけられる。
【0050】
湿式シリカの一次粒子径に関する下限に特に制約はないが、シリカ微粒子の製造安定性の観点からは3nm以上であり、皮膜の透明性の観点からは50nm以下であることが好ましい。一般的にはゲル法により合成される湿式シリカの方が沈降法に対して一次粒径が小さい傾向にあり好ましい。
【0051】
気相法シリカとは、四塩化ケイ素と水素を原料にし燃焼法により合成されるものであり例えば日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズが市販されている。
【0052】
高空隙率のインク吸収層を得るためにはBET法により測定される比表面積が400m2/g未満であるか、または孤立シラノール基比率が0.5〜2.0である。比表面積は、好ましくは40m2/g〜100m2/gの範囲であり、比表面積の下限は写真に近い光沢が得られる観点から40m2/gである。尚、BET法とは気相吸着等温線からシリカ微粒子1g当たりの表面積を求める方法により比表面積を測定する方法である。
【0053】
この範囲の比表面積を有する気相法シリカにおいて、一次粒径分布における変動係数を0.01〜0.4にすることが空隙率の観点から好ましい。変動係数が0.4を超えると、空隙率が低下する懸念があり好ましくない。尚、湿式シリカにおいては一次粒子自身が細孔径をもつためこの限りではない。
【0054】
気相法シリカにおいては、二次凝集体は湿式シリカに対して比較的弱い相互作用により形成されているため、湿式シリカに対して低いエネルギーで分散できるという特徴を有している。
【0055】
気相法シリカの一次粒径分布における変動係数は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の一次粒子の粒径を求めてその粒径分布の標準偏差を数平均粒径値で割った値として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0056】
シリカの一次粒子及び二次粒子の平均粒径は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。二次平均粒径は300nm以下であることが好ましい。
【0057】
前記気相法シリカを湿度20〜60%で3日以上保存して気相法シリカの含水率を調整することも好ましい。
【0058】
本発明に用いられる気相法シリカにおいて、孤立シラノール基比率は0.5〜1.5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.1である。
【0059】
本発明に用いられるアルミナとは酸化アルミニウム、及びその水和物のことであり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形、球状、板状、針状の形態を有している物が使用される。特にアスペクト比が2以上で、一次粒径の平均粒径が5〜30nmの平板状アルミナ水和物、気相法アルミナが好ましい。
【0060】
無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比は、充分な空隙容量を確保するため2以上であることが好ましく、また、インク受容層の水溶性塗布液における上記無機微粒子の含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。
【0061】
無機微粒子と(前記バインダーとして用いられる)紫外線により架橋される親水性高分子化合物は、これらから形成される前記多孔質のインク受容層中の固形分濃度として5〜90%の範囲を占めるようにもちいられることが好ましい。
【0062】
前記紫外線により架橋する親水性高分子化合物は親水性であるため、これら無機微粒子および前記紫外線により架橋する親水性高分子化合物を含有する水性塗布液は、水を主体樽溶媒とするものであり、少なくとも50質量%、さらに好ましいのは70質量%以上は水である。これらの水性塗布液は、紫外線による架橋後は、水性溶媒に対して不溶化し、耐水性の皮膜を形成する。
【0063】
本発明においては、インク受容層の水溶性塗布液中に光開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は塗布液を構成する溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは前記の感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0064】
適用される光開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0065】
一例として、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類。2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、及びこれらの混合物等があげられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0066】
特に、水溶性の4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾフェノンアンモニウム塩等の水溶性開始剤が、混合性等に優れ架橋効率の観点からも好ましい。
【0067】
これらの開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる。
【0068】
紫外線照射において、照射における積算照射エネルギー(mJ/cm2)は、あるランプの照射波長における照度(mW/cm2)×時間(秒)で決まる。
【0069】
紫外線の光源として例えば数百Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられるが、光源の波長分布という観点で高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましく、比較的扱いやすい発光主波長350〜370nmのメタルハライドランプがより好ましい。また、300nm以下の波長光をカットするフィルターをもうけることが好ましい。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては10mW/cm2〜1W/cm2、照射エネルギーとしては0.1mJ/cm2〜800mJ/cm2が好ましく、1mJ/cm2〜100mJ/cm2がより好ましい。
【0070】
光源波長に300nm以下の紫外線が含まれない場合や、照射エネルギーとして500mJ/cm2以下である場合は、紫外線架橋性樹脂の母核、または共存させる各種添加剤を紫外線により分解を避けることができ、それに従い、分解物に由来する臭気などの問題を起こすおそれもなく好ましい。照射エネルギーが0.1mJ/cm2以上であれば架橋効率が充分であり、本発明の効果が十分にえらる。
【0071】
紫外線照射の際の照度は10mW/cm2以上1W/cm2以下が好ましい。照度が1W/cm2以下であれば、塗膜の表面硬化性が向上すると共に、深部まで硬化し、均質に架橋された膜が得られる。その場合は、膜の深度方向の堅さのバランスも均質であるため、カールなどが起こりにくく好ましい。
【0072】
照度が10mW/cm2以上であれば、膜中の散乱等による架橋の不均一が避けられるため、本発明の効果が得られ好ましい。
【0073】
同一積算光量(mJ/cm2)を与える場合、照度に好ましい範囲があることは、その光の透過率が変化することに起因する。紫外線の透過性により、発生した架橋反応種の濃度分布が異なり、仮に、紫外線照度が高すぎる場合、表層に高濃度の架橋反応種が発生するおそれがあり、塗膜表層に堅い緻密な膜が形成されてしまうこともある。
【0074】
照度が好ましい範囲にある場合には、表層の架橋度合いも低く、深部方向への光透過性が高いため緩やかな架橋が深部方向へ均一に形成される。
【0075】
また、仮に照度が低すぎる場合には、必要積算照度を与える場合に照射時間がかかってしまい、設備導入等の面で不利であるばかりでなく、塗膜による紫外線の散乱による絶対光線量が不足することもある。
【0076】
本発明のバインダーとして、前記紫外線により架橋する高分子化合物以外に、親水性バインダーを併用してもよい。例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0077】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、更に、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0078】
カチオン変性ポリビニルアルコールとは、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0079】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0081】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0082】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。更に、変性ポリビニルアルコールとして、シリル基で変性したポリビニルアルコールも、本発明でいうポリビニルアルコールに包含される。また、ポリビニルアルコールは、平均重合度、ケン化度や変性等の種類違いのものを2種類以上併用してもよい。
【0083】
本発明の記録用紙のインク受容層中に表面がアニオン性である微粒子を使用する場合には、画像の耐水性や耐にじみ性を改良する点から染料に定着性を有する第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有させることが好ましい。
【0084】
カチオン性ポリマーとしては公知のポリマーを使用することができ、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンの縮合物、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ジアリルジメチルアンモニウム塩の縮合物、ポリアクリル酸エステルの4級化物等が挙げられるが、特に、特開平10−193776号公報、同10−217601号公報および同11−20300号公報等に記載されているものが好ましい。特に好ましいものは、重量平均分子量が2000〜10万のものである。
【0085】
耐光性を向上させたり、滲みや耐水性を向上させる目的で多価金属化合物、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr2+、Ni2+、Al3+などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等を用いることができる。なお、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの無機ポリマー化合物も、好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性多価金属イオンは、記録用紙1m2当たり、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0086】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができる。
【0087】
上記の添加剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0088】
本発明において、不透明の支持体としては、JIS P 8138に規定される方法で測定したときに85%以上の不透明度を有する支持体であり、その表面の表面粗さによって、紫外線の反射が異なるため、架橋した塗膜の均一性に影響を与える。本発明においては、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下である。これにより前記の如く、紫外線による架橋を均一に行うことができるため、プリントのざらつき感が大きく向上する。中心線平均粗さRaは、例えば、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して測定することが出来る。
【0089】
これらの中心線平均粗さを有する反射性支持体としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらを積層したフィルム支持体等から選択することが出来る。特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0090】
本発明において特に好ましい、非吸水性支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について、以下説明する。
【0091】
本発明に係る非吸水性支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えて、ポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP、LDPの比率は、10〜70%の範囲であることが好ましい。
【0092】
上記パルプにおいては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。また、紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を、適宜添加することができる。
【0093】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長は、JIS P 8207で規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分は、20%以下であることが好ましい。
【0094】
紙の坪量は、50〜250gであることが好ましく、特に70〜200gであることが好ましい。紙の厚さは、50〜210μmであることが好ましい。
【0095】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g・cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度は、JIS P 8143に規定される条件で、20〜200gであることが好ましい。また、紙表面には、表面サイズ剤を塗布してもよい。
【0096】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0097】
次に、上記の紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明で用いることのできるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
【0098】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンとしては、主として、低密度のポリエチレン(LDPE)又は高密度のポリエチレン(HDPE)が好ましいが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0099】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0100】
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。また、蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0101】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するようにその量は選択されるが、一般には、ポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率は、インク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整するように設定されるのが好ましく、通常は表:裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3:1〜1:3である。
【0102】
更に、上記ポリエチレンで被覆した紙支持体は、以下の(1)〜(8)に記載の特性を有していることが好ましい。
【0103】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N(2〜30kg)、横方向が10〜200N(1〜20kg)であることが好ましい
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で縦方向が20〜30g、横方向が10〜250gが好ましい
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2が好ましい
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい
(7)原紙中の水分:中紙に対して4〜10%が好ましい
(8)インク受容層を設けた側の光沢度(75度鏡面光沢度):10〜90%が好ましい。
【0104】
本発明のインクジェット記録用紙には染料インク、顔料インクのどちらも適用可能である。
【0105】
(塗布方法)
本発明に係わる空隙を有する多孔質のインク受容層を形成するためには、従って、前記紫外線により架橋する高分子化合物および無機微粒子を含有する水溶性塗布液に、前記の記載の様に、必要に応じ、前記添加剤等を混合して、塗布液を調製した後、前記の不透明支持体上に塗布する。
【0106】
上記塗布液の塗布方法としては、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0107】
塗布後直ぐに、親水性溶媒が存在しているときに前記紫外線による照射を行って、架橋させて、塗膜の流動化を抑えて、均一な塗膜を形成した後、水を主体とする水性溶媒をオーブンまた、熱風等で、蒸発させ、乾燥することにより、吹き荒れのない均一な、空隙を有する多孔質のインク受容層を得ることができる。紫外線を照射する際に、水性溶媒が一部或いは大部分蒸発してもかまわない。
【0108】
本発明の記録用紙に係る多孔質のインク受容層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0109】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0110】
(実施例1)
《シリカ分散液の作製》
予め均一に分散されている、1次粒子の平均粒径が約7nmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を30%含有するシリカ水分散液(pH2.6、エタノール0.5%含有)の400gを10%のカチオン性ポリマー分散剤P−1水溶液(n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有)120gに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。その後pHを1モル/リットル−NaOH水溶液にて4.1に調整した。
【0111】
【化6】
【0112】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で仕上げて、シリカ含有量20%のほぼ透明なシリカ分散液を得た。得られた分散液をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0113】
《記録用紙の作製》
特開2000−181062号公報実施例を参照して前記一般式(1)で表される架橋基を側鎖に有する紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体水溶液を調製した。即ち、平均重合度3000、ケン化度88%のポリビニルアルコールにp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドを反応させ、一般式(1)において、Y;p−フェニレン基、X;−O−、R1;CH3、n=1で表される架橋基を、架橋基変性率1mol%で有する、固形分濃度15%の紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体(化合物−1)の水溶液を作成した。
【0114】
前記で得られたシリカ分散液100gに、上記紫外線架橋型ポリビニルアルコール誘導体(化合物−1)の濃度を10%に調整した水溶液32gと光開始剤(日本化薬製カヤキュアQTX)0.05gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で200gに仕上げ、塗布液を得た。
【0115】
得られた塗布液をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0116】
次いで、上記調製した塗布液を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したJIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが0.15μmのポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中の8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックス性ポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、バーコーターを用いて、シリカの付き量で18g/m2となるように塗布し、その後365nmに主波長を持つメタルハライドランプで、波長365nmにおける照度が60mW/cm2の紫外線を用い、エネルギー量で30mJ/cm2の紫外線を照射した。その後80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録用紙を得た。
【0117】
(実施例2)
シリカを1次粒子の平均粒径が約15nmの湿式シリカ(トクヤマ社製;T−32)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0118】
(実施例3)
無機微粒子として1次粒子の平均粒径が約13nmの気相法アルミナ(日本アエロジル製;酸化アルミニウムC)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0119】
(実施例4)
無機微粒子として1次粒子の平均粒径が約13nmのアルミナ水和物(日産化学社製、アルミナゾル520)に代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0120】
(実施例5)
ポリエチレンコート紙のRaが0.22μmであるものに支持体を代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0121】
(実施例6)
ポリエチレンコート紙のRaが0.30μmであるものに代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0122】
(比較例1)
ポリエチレンコート紙のRaが0.32μmであるものに代えた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0123】
(比較例2)
親水性バインダーとして、化合物−1の代わりに、平均重合度3000、ケン化度88%の側鎖をもたないポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様の塗布液を作成して、バーコーターを用いて、シリカの付き量で18g/m2となるように、Raが0.20μmであるポリエチレンコート紙の支持体に塗布し、その後ESI製電子線照射装置を用いて加速電圧200kV、照射量4Mradの照射条件で電子線を照射した。その後80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録用紙を得た。
【0124】
尚、支持体の中心線平均粗さRaについては、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さを、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して測定した。
【0125】
以上のようにして得られた記録用紙について、以下の項目について評価した。
〈均質性〉
各インクジェット記録用紙をグリーンの最高濃度を一面に印画して目視評価し、ざらつき感を感じなくなる観察距離を求め、以下の基準で評価した。
【0126】
5:10cm未満
4:10cm以上、20cm未満
3:20cm以上、40cm未満
2:40cm以上、60cm未満
1:60cmを越える
〈Dm〉
セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターPM950Cを用い、黒ベタ印字を行い、光学濃度計(X−Rite社製X−Rite938)により反射濃度を測定した。
【0127】
【表1】
【0128】
本発明に係わるインクジェット記録用紙は、画像濃度が高く、また均質性がよく、印画のざらつき感が少ないことが判る。
【0129】
【発明の効果】
プリント画像のざらつき感がない画像ノイズを向上させた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙が得られる。
Claims (2)
- 不透明の支持体上に無機微粒子とバインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、支持体の、JIS−B−0601に規定される基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定したときの中心線平均粗さRaが、0.30μm以下であり、かつ、前記多孔質のインク受容層が、紫外線により架橋する高分子化合物と微粒子を含有する塗工液を塗布し、紫外線を照射することにより得られるものであって、無機微粒子の紫外線により架橋する高分子化合物に対する質量比が2以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 紫外線により架橋する高分子化合物が、主鎖に複数の側鎖を有する、平均重合度が300以上の親水性高分子化合物であり、側鎖間で架橋する高分子化合物である請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
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- 2003-07-22 JP JP2003199564A patent/JP2005040956A/ja not_active Withdrawn
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