JP2005035176A - 多層構成体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温でも表面の光沢化が起こらず,かつ耐傷付性に優れた多層構成体を提供こと。
【解決手段】オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)よりなる表層2と,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)よりなる内層3とを積層してなる多層構成体1である。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は,ポリオレフィンと,ゴム4及びプロセスオイル(A)25よりなる軟質成分(A)21とからなる。オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,ポリオレフィンと,ゴム4及びプロセスオイル(B)35よりなる軟質成分(B)31とからなる。多層構成体1は,プロセスオイル(A)25の分子量をMa,プロセスオイル(B)35の分子量をMbとすると,MaとMbは,Ma≦Mbという関係式を満たす。また,軟質成分(A)21の含有量をCa(wt%),軟質成分(B)31の含有量をCb(wt%)とすると,CaとCbは,Ca<Cbという関係式を満たす。
【選択図】 図1

Description

本発明は,オレフィン系熱可塑性エラストマーよりなる表層及び内層を積層してなる多層構成体に関する。
従来より,自動車の外装材及び内装材には,複数の樹脂層を積層してなる多層構成体が用いられている。この多層構成体においては,各樹脂層を互いに異なる樹脂材料で構成することにより,多層構成体としての機能を各樹脂層に分担させることができる。そのため,多層構成体は,耐傷付性及び耐候性等の外観品質や車体等への組み付け性等の様々な特性を必要とするルーフモールやオープニングトリム等の自動車用外装材及び内装材に好適に用いられている。
このような多層構成体としては,これまで塩化ビニル等が用いられていた。これは,塩化ビニルの優れた特性を活かして,柔軟性に優れた多層構成体を形成することができ,他部材への組み付け性に優れた多層構成体を得ることができるからである。
ところが,近年,リサイクル上の問題,即ちリサイクル時に有害な物質を発生するという問題から,塩化ビニルの使用を回避することが望まれている。
そこで,塩化ビニルの代わりにオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた多層構成体が提案されている(特許文献1参照)。このように,オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることにより,柔軟性を有し,かつリサイクル性にも優れた多層構成体を得ることができる。
しかし,上記従来の多層構成体においては,高温条件下で,その表面が光沢化するという不具合が発生する。この現象は,高温条件下で樹脂成分のポリマーの分子運動が活発となったときに,樹脂成分やゴムと相溶性の低いプロセスオイルが移行し,表面へブリードしたためにおこると考えられている。
このように高温条件下でその表面に光沢を生じる多層構成体は,高温条件下に曝され易い自動車の外装材や内装材等の用途には,必ずしも適していなかった。
上記の問題を解決するために,2種類のオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる積層体中の非晶成分量及び油性軟化剤の割合を特定した積層体が提案されている(特許文献2)。このように非晶成分量及び油性軟化剤の割合を特定することにより,高温条件下においても表面変化が起りにくい積層体を得ることができる。
しかしながら,上記特許文献2に記載の積層体においても,積層体中のプロセスオイルが表面へブリードすることを充分に抑制することはできなかった。その結果,高温条件下において,積層体の表面に光沢が生じる場合があった。
特開2001−219511号公報 特開2001−138440号公報
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,高温でも表面の光沢化が起こらず,かつ耐傷付性及び組み付け性に優れた多層構成体を提供しようとするものである。
本発明は,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)よりなる表層と,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)よりなる内層とを積層してなる多層構成体において,
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は,ポリオレフィンと,ゴム及びプロセスオイル(A)よりなる軟質成分(A)とからなり,
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,ポリオレフィンと,ゴム及びプロセスオイル(B)よりなる軟質成分(B)とからなり,
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中のプロセスオイル(A)の分子量をMa,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中のプロセスオイル(B)の分子量をMbとすると,MaとMbは,Ma≦Mbという関係式を満たし,
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中の上記軟質成分(A)の含有量をCa(wt%),上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中の上記軟質成分(B)の含有量をCb(wt%)とすると,CaとCbは,Ca<Cbという関係式を満たすことを特徴とする多層構成体にある(請求項1)。
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明の多層構成体は,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)よりなる上記外層と上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)よりなる上記内層とを積層してなり,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中に含まれるプロセスオイル(A)の分子量Maと上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中に含まれるプロセスオイル(B)の分子量Mbとが,Ma≦Mbという関係にある。さらに,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中の上記軟質成分(A)の含有量Caは,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中の上記軟質成分(B)の含有量Cbよりも少なくなっている。
そのため,本発明の多層構成体は,高温においても,表面の光沢化がほとんどおこらない。
この理由は,次にように考えられる。
上記したように,多層構成体の表面の光沢化は,オレフィン系熱可塑性エラストマー中の樹脂成分やゴムと相溶性の低いプロセスオイルが表層の表面に移行することによって起こると考えられている。
本発明の多層構成体においては,上記のように,表層と内層中のプロセスオイルの分子量を同じにするか,あるいは表層のプロセスオイル(A)の分子量を内層のプロセスオイル(B)の分子量よりも小さくしている。表層及び内層のプロセスオイルの分子量を同じにした場合には,高温下におけるプロセスオイルの移行がほとんど起こらなくなる。また,表層のプロセスオイルの分子量を内層のプロセスオイルの分子量よりも大きくした場合には,高温下におけるプロセスオイルの移行は,表層から内層側へ向かっておこるようになる。
それ故,本発明の多層構成体においては,表層の表面へのプロセスオイルのブリード防ぐことができ,表面の光沢化が起こらなくなると考えられる。
また,本発明の多層構成体においては,表層は表面硬度が高く,優れた耐傷付性を示すことができる。また,内層は,上記軟質成分を有しているため,柔軟性を有し,他部材への組み付け性にも優れている。
このように,本発明によれば,高温でも表面の光沢化が起こらず,かつ耐傷付性及び組み付け性に優れた多層構成体を提供することができる。
本発明(請求項1)の多層構成体は,ポリオレフィンとゴムとプロセスオイルとを含有する表層及び内層とよりなる。上記内層は,1層よりなっていてもよいが,複数の層からなっていてもよい。
上記多層構成体は,ポリオレフィンとゴムとプロセスオイル(A)とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー(A),及びポリオレフィンとゴムとプロセスオイル(B)とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を準備し,これらを例えば2台の押出機を用いて押出成形しながら積層し,これらを熱により融着させることにより作製することができる。また,例えば2種類の樹脂材料を別々に押出成形し,冷却後これらを接着剤等により接着させて作製することもできる。
上記表層及び内層中のポリオレフィンの原料となるオレフィンとしては,例えばエチレン,プロピレン,1−ブテン,1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,2−メチル−1−プロペン,3−メチル−1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,及び5−メチル−1−ヘキセン等がある。
これらのオレフィンは,単独又は2種以上の組み合わせ又は2種以上の共重合体を用いることができる。
特に,上記のポリオレフィンとしては,ポリプロピレンが好ましい。
この場合には,上記多層構成体の強度を向上させることができる。
また,上記ゴムとしては,例えばエチレン−α−オレフィン系エラストマー又は/及びスチレン系エラストマーを用いることができる(請求項6)。
エチレン−α−オレフィン系エラストマーとしては,例えばEPR(エチレンプロピレンゴム),EPDM(エチレンプロピレン三元共重合体ゴム),EBR(エチレンブテンゴム),及びEOR(エチレンオクテンゴム)等を用いることができる。これらのエラストマーは,単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは,EPDMがよい。
また,スチレン系エラストマーとしては,例えばSBR(スチレンブタジエンゴム),SBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体),SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体),SEBS(スチレン・エチレンブテン・スチレンブロック共重合体),及びSEPS(スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体)等を用いることができる。これらのエラストマーは,単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましくは,SEBS及びSEPSが良い。
また,上記プロセスオイル(A)及び上記プロセスオイル(B)としては,例えばパラフィン系プロセスオイル,ナフテン系プロセスオイル,及び芳香族系プロセスオイル等から選ばれる一種以上を用いることができる。上記プロセスオイル(A)及び上記プロセスオイル(B)は,互いに同じものを用いても異なるものを用いても良い。
また,本発明においては,上記プロセスオイル(A)の分子量をMa,上記プロセスオイル(B)の分子量をMbとすると,Ma≦Mbである。
a>Mbの場合には,高温でプロセスオイルが表層の表面へブリードし,表面の光沢化がおこるおそれがある。
なお,上記プロセスオイル(A)及びプロセスオイル(B)として,それぞれ複数のプロセスオイルを用いる場合には,プロセスオイル(A)の平均分子量をMa,プロセスオイル(B)の平均分子量をMbとしたときに,Ma≦Mbとなるようにすることができる。
また,必要に応じて,エステル系可塑剤,パラフィン油,及び流動パラフィン等の他の油状軟化剤を併用することができる。
また,本発明においては,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中の上記軟質成分(A)の含有量をCa(wt%),上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中の上記軟質成分(B)の含有量をCb(wt%)とすると,CaとCbは,Ca<Cbという関係式を満たす。
a≧Cbの場合には,上記多層構成体の表面にプロセスオイルがブリードすることを充分に抑制できないおそれがある。また,この場合には,耐傷付性や組み付け性が低下するおそれがある。
また,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)には上記軟質成分(A)が40wt%未満で含有されており,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)には上記軟質成分(B)が40wt%以上含有されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記多層構成体の表面へのプロセスオイルのブリードが一層抑制される。そのため,上記多層構成体は,高温での光沢化がより一層発生し難いものとなる。
また,上記プロセスオイル(A)及び上記プロセスオイル(B)は,それぞれ上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中のゴム及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中のゴムに対する重量比で,0.5〜1.5の割合で含まれていることが好ましい(請求項3)。
上記プロセスオイル(A)及びプロセスオイル(B)の量がゴムに対する重量比で0.5未満の場合には,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)に柔軟性を付与して車体等への組み付け性を向上させるために多量のゴムが必要となり,製造コストが増大するおそれがある。一方,1.5を超える場合には,高温下で上記多層構成体の表面にプロセスオイルがブリードし易くなるおそれがある。
また,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中にそれぞれ含まれるプロセスオイル(A)及びプロセスオイル(B)の分子量は,400〜750であることが好ましい(請求項4)。
プロセスオイルの分子量が400未満の場合には,熱可塑性エラストマーとの相溶性が著しく低下し,ブリードを起こし易くなるおそれがある。一方,750を超える場合には,軟質化効率が低下するため,多量のプロセスオイルが必要となり製造コストが増大するおそれがある。
また,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,非架橋材又は動的架橋材よりなることが好ましい(請求項5)。
この場合には,プロセスオイルの保持性をより向上させることができるため,ブリードが一層起こり難くなる。
また,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,無機フィラーを含有していることが好ましい(請求項7)。
この場合には,上記多層構成体の強度等を向上させることができると共に,その製造コストを低くさせることができる。
無機フィラーとしては,例えばタルク,炭酸カルシウム,マイカ,硫酸バリウム,クレー,ケイ酸カルシウム,及びガラス繊維等を用いることができる。
また,上記表層は,表面硬度が40D以上であることが好ましい(請求項8)。
この場合には,その優れた表面硬度を活かして,上記多層構成体は,耐傷付性に特に優れたものとなる。そのため,この場合には,上記多層構成体を例えばルーフモールやオープニングトリム等の自動車用外装材及び内装材等に好適に用いることができる。
(実施例1)
次に,本発明の多層構成体の実施例につき,図1を用いて説明する。
本例の多層構成体1は,図1に示すごとく,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)よりなる表層2と,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)よりなる内層3とを積層してなる。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は,ポリオレフィンと,ゴム4及びプロセスオイル(A)25よりなる軟質成分(A)21とからなり,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,ポリオレフィンとゴム4及びプロセスオイル(B)35よりなる軟質成分(B)31とからなる。
また,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中のプロセスオイル(A)25の分子量をMa,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中のプロセスオイル(B)の分子量をMbとすると,MaとMbは,Ma≦Mbという関係式を満たす。
また,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中の軟質成分(A)21の含有量をCa(wt%),オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中の軟質成分(B)31の含有量をCb(wt%)とすると,CaとCbは,Ca<Cbという関係式を満たす。
次に,本例の多層構成体の製造方法につき,説明する。
まず,下記の表1及び表2に示すごとく,ポリオレフィン,ゴム及びプロセスオイルの配合量の異なる15種類のオレフィン系熱可塑性エラストマー(試料A〜試料O)を準備した。
これらの試料A〜試料Oは,いずれもポリオレフィンとしてポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製のJ105;ブロックコポリマー,MFR=13g/10分)を含有し,ゴムとしてEPDM(三井石油化学工業株式会社製のEPT3091;ムーニー粘度83ML1+4(100℃))を含有し,またプロセスオイルとしてパラフィン系プロセスオイルを含有する。
パラフィン系プロセスオイルとしては,分子量Mwの異なる3種類(Mw=400,540,750)のプロセスオイルを準備し,下記の表1及び表2に示すごとく,各試料A〜試料Oは,これらのプロセスオイルのうちのいずれかを含有する。なお,プロセスオイルとしては,具体的には,出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW−32(Mw=400),ダイアナプロセスオイルPW−90(Mw=540),又はダイアナプロセスオイルPW−380(Mw=750)を用いた。
次に,上記のポリプロピレン,プロセスオイル,ゴム,及びタルク(富士タルク工業株式会社製のLMS#100)を混合して15種類のオレフィン系熱可塑性エラストマー(試料A〜試料O)を作製した。各試料の配合組成,プロセスオイルの分子量,ゴムに対するプロセスオイルの重量比,及び成形後の表面硬度を表1及び表2に示す。
なお,各試料A〜Oの表面硬度は,以下のようにして測定した。
即ち,JIS K7215に準拠し,ショアD,ショアAとも,厚さ6mmのプレスシート1枚について測定した。値は15秒後の値を読みとった。
上記試料A〜Fについては,ショアDにて測定した。また,試料G〜OについてはショアAにて測定し,得られた値をショアDに換算した。その結果を表1及び表2に示す。表1及び表2において,各試料の表面硬度は,ショアDで測定した値またはショアDの換算値については,その測定値の直後にDを付記して表し,ショアAで測定した値については,その測定値の直後にAを付記して表した。
Figure 2005035176
Figure 2005035176
次に,上記にて準備した試料A〜Oのオレフィン系熱可塑性エラストマーから2種類を選択し,これらを成形し積層して,図1に示すごとく多層構成体1を作製する。具体的には,試料A〜Fを表層用の上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)として用い,試料A,D,及びE〜Oを内層用の上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)として用いて,合計78種類の多層構成体を作製した。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との組み合わせを,後述する表3に示す。
多層構成体の作製においては,まず,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを,2台の20mm押出機(L/D=22)を用いてシート状に成形した。このとき,成形時の熱が充分に高いうちに,2つのシートを重ね合わせると共にこれらを融着させた。続いて,冷却し,3cm×3cm×2mmの寸法に切断して,図1に示すごとく多層構成体1を作製した。
なお,成形時の成形条件は次の通りである。
成形温度:(C1−C2−C3−D1)=(80−190−190−190℃),ブレーカプレート使用,回転数:20rpm,ダイス形状:幅30mm×厚み2mm。ここで,C1,C2,C3は,それぞれシリンダーの温度を表し,ホッパー側から最も近い位置にあるシリンダーの温度をC1とし,ホッパー側から離れるにつれて順次そのシリンダー温度をC2,及びC3として表した。D1は,ダイスの温度である。
<耐熱試験>
次に,上記のようにして作製した78種類の多層構成体について,耐熱試験をおこなった。
具体的には,まず,上記にて作製した多層構成体を温度90℃のオーブン中で100時間加熱した。その後,冷却し,多層構成体の表層の表面を目視にて観察した。
多層構成体の表層の表面に,表面全体にわたって光沢化がはっきりと観察された場合を×として評価し,また,部分的に,若干光沢化が観察された場合を△として評価し,光沢化が全く観察されなかった場合を○として評価した。
その結果を表3に示す。
Figure 2005035176
表1〜表3より知られるごとく,表層のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と内層のオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)の組み合わせとして,オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中に含まれるプロセスオイル(プロセスオイル(A))の分子量をMaとし,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中に含まれるプロセスオイル(プロセスオイル(B))の分子量をMbとしたとき,Ma≦Mbという関係式を満足するような組み合わせにしたとき,多層構成体の光沢化は抑制されることがわかる。
さらに,表層側のオレフィン系熱可塑性エラストマーに含まれる軟質成分(軟質成分(A))の含有量をCa(wt%)とし,内層側のオレフィン系熱可塑性エラストマーに含まれる軟質成分(軟質成分(B))の含有量をCb(wt%)としたとき,Ca<Cbという関係式をも満足するとき,多層構成体の光沢化はさらに抑制されることがわかる。
(実施例2)
次に,本例では,実施例1にて準備したオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて,実施例1と同様にして多層構成体を作製し,その耐傷付性及び製品組み付け性(ボデー追従性)を調べた。
具体的には,実施例1にて準備した試料A,D,F,Jをそれぞれ表層用のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)として用い,試料D,J,Oをそれぞれ内層用のオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)として用いて,実施例1と同様にして,12種類の多層構成体を作製した。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との組み合わせを,後述する表4に示す。
次に,上記のようにして得られた多層構成体について,下記のようにして,その耐傷付性及び製品組み付け性を調べた。
(耐傷付性)
下記の引っ掻き試験及び学振摩耗試験を行い,光沢値の変化が試験前に比べて10%以下である場合には○として評価し,11〜24%の場合には△として評価し、25%以上の場合には×として評価した。
その結果を表4に示す。
「引っ掻き試験」
室温で表面に鉛筆の先端を接触角45°,荷重4.9Nにてあて,摺動(速度100±5mm/min)させた後,外観を目視で観察し試験前の試験片と比較する。
「学振摩耗試験」
室温で食し部分に綿帆布をセットし,垂直荷重1kgfをかけて,試料(20mm×100mm)綿上を往復30回摺動させた後,外観を目視にて観察し,試験前の試験片と比較する。
(製品組み付け性)
100mmにカットした試験片をボデー開口相当の専用治具にセットし,20±5mm/minの速度で挿入させた時の最大挿入力(F1)を測定する
最大挿入力が35N以下の時を○として評価し,35Nを越えた場合を×として評価した。
その結果を表4に示す。
Figure 2005035176
表4より知られるごとく,表層及び内層用のオレフィン系熱可塑性エラストマーの組み合わせとして,それぞれ,試料Aと試料J,試料Dと試料J,試料Fと試料J,試料Dと試料Oとを用いた場合,即ち上記した2つの関係式Ma≦Mb及びCa<Cbを満たした場合には,耐傷付性及び製品組み付け性に優れた多層構成体を得ることができた。一方,試料J同士及び試料D同士を組み合わせた場合,即ちCa<Cbを満たさない場合には,耐傷付性又は製品組み付け性が不充分であった。
以上のように,本発明にかかる多層構成体は,高温でも表面の光沢化が起こらず,かつ耐傷付性及び組み付け性に優れたものであることがわかる。
実施例1にかかる,多層構成体の断面説明図。
符号の説明
1 多層構成体
2 表層
21 軟質成分(A)
25 プロセスオイル(A)
3 内層
31 軟質成分(B)
35 プロセスオイル(B)
4 ゴム

Claims (8)

  1. オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)よりなる表層と,オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)よりなる内層とを積層してなる多層構成体において,
    上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は,ポリオレフィンと,ゴム及びプロセスオイル(A)よりなる軟質成分(A)とからなり,
    上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,ポリオレフィンと,ゴム及びプロセスオイル(B)よりなる軟質成分(B)とからなり,
    上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中のプロセスオイル(A)の分子量をMa,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中のプロセスオイル(B)の分子量をMbとすると,MaとMbは,Ma≦Mbという関係式を満たし,
    上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中の上記軟質成分(A)の含有量をCa(wt%),上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中の上記軟質成分(B)の含有量をCb(wt%)とすると,CaとCbは,Ca<Cbという関係式を満たすことを特徴とする多層構成体。
  2. 請求項1において,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)には上記軟質成分(A)が40wt%未満で含有されており,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)には上記軟質成分(B)が40wt%以上含有されていることを特徴とする多層構成体。
  3. 請求項1または2において,上記プロセスオイル(A)及び上記プロセスオイル(B)は,それぞれ上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中のゴム及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中のゴムに対する重量比で,0.5〜1.5の割合で含まれていることを特徴とする多層構成体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中にそれぞれ含まれるプロセスオイル(A)及びプロセスオイル(B)の分子量は,400〜750であることを特徴とする多層構成体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,非架橋材又は動的架橋材よりなることを特徴とする多層構成体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において,上記ゴムは,エチレン・α−オレフィン系エラストマー又は/及びスチレン系エラストマーであることを特徴とする多層構成体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において,上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)及び上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は,無機フィラーを含有していることを特徴とする多層構成体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において,上記表層は,表面硬度が40D以上であることを特徴とする多層構成体。
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