JP2005030232A - ロータリ圧縮機とそのシリンダの加工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベーンとベーン溝との摩擦や焼き付けを効果的に低減し、ベーンの信頼性を高めることができるようにする。
【解決手段】ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを、シリンダ1の外周側Gに向かってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状に設定するとともに、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lを、シリンダ1の内周側Hに向かってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状に設定する。弧のようにベーン溝の側面2H,2Lの形状を設定することにより、ベーン16が動作ガスの圧力によってベーン溝2内で傾いても、ベーン16とベーン溝2の側面2H,2Lとの接触が面接触となり、ベーン16とベーン溝2との摺動信頼性が向上する。
【選択図】 図2
【解決手段】ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを、シリンダ1の外周側Gに向かってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状に設定するとともに、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lを、シリンダ1の内周側Hに向かってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状に設定する。弧のようにベーン溝の側面2H,2Lの形状を設定することにより、ベーン16が動作ガスの圧力によってベーン溝2内で傾いても、ベーン16とベーン溝2の側面2H,2Lとの接触が面接触となり、ベーン16とベーン溝2との摺動信頼性が向上する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、空調装置及び冷凍装置に使用されるロータリ圧縮機に係り、特に、ベーン溝部分の信頼性を高めるようにしたロータリ圧縮機とそのシリンダの加工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図15は従来のロータリ圧縮機の代表的な構造例を示す縦断面図である。
【0003】
同図において、従来のロータリ圧縮機は、ケース10内にモータ11と圧縮機構部12とが格納され、モータ11のステータ11Bとの作用によるロータ11Aの回転運動がクランクシャフト13によって伝達されて圧縮機構部12を駆動する構成をなしている。
【0004】
圧縮機構部12には、シリンダ1が設けられており、このシリンダ1の上下両側に主軸受け14と副軸受け15とがボルト20によって締結され、クランクシャフト13がこれら主軸受け14,副軸受け15によって回動可能に支持されている。モータ11によるクランクシャフト13の回転により、シリンダ1内でローラ17が旋回する。また、このシリンダ1内では、ベーン16が、バネ21により、ロータ17に押し付けられている。
【0005】
図16は図15の圧縮機構部12での分断線A−Aに沿う横断面であって、シリンダ1での圧縮室の構造を示している。
【0006】
同図において、クランクシャフト13の偏心部13Aとローラ17とは隙間嵌めで嵌合されており、ローラ17が、シリンダ内周面3との間は微小な間隙が形成されて、シリンダ内周面3に沿って移動可能なシール部を成している。また、ベーン16は、シリンダ1に設けられたベーン溝2内に隙間嵌めで嵌合されて摺動可能に設けられており、ベーン溝穴6のバネ21によってローラ17に押し付けられている。
【0007】
圧縮室は、シリンダ1の内周面3とローラ17によって形成される三日月形状の領域がベーン16により2分されて区画されることで形成される。この区画のうち、動作ガスの吸入口4に連通する側が低圧室9となり、動作ガスの吐出口5に連通する側が高圧室8となる。
【0008】
かかる構成において、モータ11の回転運動がクランクシャフト13に伝導されると、クランクシャフト13の矢印P方向の回転に伴ってローラ17がシリンダ内をその内周面3に沿って旋回する。このローラ17の旋回に伴って、ベーン16がベーン溝2内でQ方向の直線的な往復運動を行ない、高圧室8と低圧室9とを常時仕切る機能を果たしている。
【0009】
ローラ17のこの旋回運動により、吸入口4から動作ガスが吸入される。図16に示す状態では、低圧室9は拡大している過程にあり、動作ガスが吸入されている。一方、高圧室8はローラ17の旋回に伴って体積を縮小し、動作ガスを圧縮する過程にある。かかる状態から、さらに、ローラ17が矢印P方向に旋回して圧縮が完了すると、動作ガスは吐出口5からシリンダ1の外部に排気される。
【0010】
このように、動作ガスの吸入と圧縮とを並行して進行させることにより、ロータリ圧縮機は連続的に動作ガスの吸入・圧縮動作を行ない、圧縮機としての機能を果たしている。
【0011】
圧縮完了して吐出口5からシリンダ1の外部に排気された動作ガスは、図15において、ケース10の内部を通過し、吐出パイプ23を経由してこのロータリ圧縮機に連結された機構(図示せず)に供給される。例えば、冷凍機の場合、圧縮された動作ガス(冷媒)は凝縮器,膨張弁,放熱器などを経由するが、その過程で放熱と吸熱を行なって冷媒としての機能を果たし、その後、再びロータリ圧縮機の吸込口22(図16)に戻ってくるサイクルを繰り返す。
【0012】
なお、圧縮機構部12には、摺動部分が複数存在しているが、ケース10の下部に貯留した潤滑油24によってこれらの摺動部分は潤滑されている。潤滑油は、クランクシャフト13の下方内部に配置される給油ポンプ19により、クランクシャフト13の回転を動力源として、ケース10の下部から吸い上げられる。吸い上げられた潤滑油24はクランクシャフト13の内部を上昇し、その上昇過程でクランクシャフト13に設けられた横穴(図示せず)から副軸受け15やローラ17(図16),主軸受け14の内部に供給される。また、ローラ17の内部を通過した潤滑油24は、主軸受け14の端面とローラ17の端面との間や副軸受け15とローラ17の端面との間を潤滑する。さらに、図16に示すローラ17とベーン16との間やベーン溝2とベーン16との間を潤滑する。この潤滑油24は、摺動部分の摩擦抵抗の低減や摩耗の防止などを担っている。
【0013】
以上のように機能するロータリ圧縮機において、摺動部分の焼き付きや摩耗に対する耐久性は運転信頼性を確保する上で重要であるが、クランクシャフト13の給油機構から直接給油されないベーン16とベーン溝2との間の摺動部は、潤滑油確保に不利な部分であった。
【0014】
即ち、図17に示すように、ベーン16は高圧室8から圧力Pdを受け、低圧室9から圧力Psを受けており、低圧室9側の圧力Psよりも高圧室8側の圧力Pdの方が高い。また、ベーン溝2の中、例えば、ベーン溝2の高圧室側面2Hとベーン16の高圧室側面16Hとの間は油膜でシールされており、圧力Pdが伝播しにくい。このため、ベーン16はベーン溝2の中で傾斜し、ベーン溝2の一方の端部での接触部C1とベーン溝2の他方の端部での接触部C2で支持する形態となる。この状態でベーン溝2に沿ってQ方向にベーン16が摺動するが、ベーン16はこれら接触部C1,C2に線状に接触した状態にあり、局部荷重を受けることになる。この局部荷重が生じている部分では、潤滑油24の油膜厚さが薄くなる。この状態で、ロータリ圧縮機が高速回転するなどの負荷の高い運転条件となる場合には、ベーン16と接触部C1,C2とがこすり合いして接触部C1,C2の油膜破壊が生じ易くなり、ベーン16とベーン溝2の側面との間で金属同士が接触する状態になり、早期摩耗を起こす原因となる。よって、この線状の形態で接触するベーン16とベーン溝2とでは、摺動部分の耐久性が乏しくなる問題があった。
【0015】
ロータリ圧縮機のベーン部のかかる不具合点を改善させる方法が種々提案されているが、その一例として、ベーンの形状によってこの不具合を解決するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
これは、図18(a)に示すように、ベーン16の高圧室側面16Hにテーパ部16aを設け、このテーパ部16aが、図17に示すように、ベーン溝2の高圧室側面2Hを往復運動する際に動圧Paを発生させるものである。油膜が介在するベーン溝2の高圧室側面2Hに対して、テーパ部16aが移動することにより、動圧軸受けと同様の作用で動圧Paが発生する。この動圧Paがベーン16の傾斜を解消するような力となるため、ベーン16はベーン溝2の低圧室側面2Lに面接触するようになる。これにより、ベーン16とベーン溝2の側面との間の接触形態が線接触から面接触に転換し、このため、摺動部分の面積が増大して摺動部の信頼性が向上する。
【0017】
このように、この従来技術は、ベーン16にテーパ部16aを設けることにより、ベーン溝2とベーン16の摺動信頼性を向上させるものである。
【0018】
また、ベーンポンプに関するものであるが、ベーンの摩擦を防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
この技術は、図18(b)に示されるように、ポンプケーシング100の内部にロータ101が偏心回転し、このロータ101に設けられたベーン102(ここでは、1つのみを示しているが、複数個設けられている)により、ロータ101の矢印K方向の回転とともに、ベーン102により、ポンプケーシング100内の流体を矢印K方向に移動させるものである。
【0020】
ベーン102は、ロータ101に設けられているベーン溝103内を移動可能に設けられており、偏心回転により、ロータ101がポンプケーシング100の内面のカムリング100aから離れると、ベーン102がベーン溝103から出る方向にスライドし、また、ロータ101がカムリング100aに近づくと、ベーン102がベーン溝103内に押し込まれる方向にスライドする。
【0021】
かかる構成において、ベーン102の両側面102a,102bはそのスライド方向にクラウニングが施されて、全体として、このスライド方向にわん曲をなしている。このため、ロータ101が回転することによる流体の作用により、ベーン102がベーン溝103に対して傾いた状態となっても、ベーン102のわん曲した側面102bがベーン溝103の先端のエッジ103aに当接することになり、この側面102bが平面であるときよりも、これら側面102bとエッジ103bとの間の摩擦が小さくなるし、また、ベーン102のわん曲した側面102aがベーン溝103の側面103bに当接するから、これら側面102a,103bとの摩擦が小さくなる、というものである。
【0022】
ベーンとベーン溝との摩擦を低減するさらに他の例が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0023】
これは、図18(c)に示すように、ベーン201が摺動するベーン溝202のローラ200側の端部、即ち、高圧側圧縮室203a側の端部に油溜め用の高圧側C面取り204aを、低圧側圧縮室203b側の端部に油溜め用の低圧側C面取り204bを夫々設けたものであり、これら高圧側C面取り204aと低圧側C面取り204bとの面取り量の比率を所定の範囲に設定することにより、ベーン溝202への給油が効果的に行なわれるようにして、ベーン201とベン溝202の側面との摩擦を低減するものである。
【0024】
次に、シリンダ1にベーン溝2を形成する従来の加工技術の例について説明する。ベーン溝2の加工法の一従来例として、ブローチ加工が採用されたものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0025】
ブローチ加工を図19(a)によって説明すると、ブローチ刃50が固定ネジ52によってホルダ51に固定されており、加工機(図示せず)により、シリンダ1の面に対して垂直なU1方向(下方向)に直進運動する。ブローチ刃50には、U1方向とは反対方向の上方に向かって幅が拡大していくように、切れ刃53が形成されており、ベーン溝2内をU1方向に進行させるに伴って、ベーン溝2の両側面を同時に切削加工して溝幅を拡大していく。U1方向にブローチ刃50が進み、最後の切れ刃53がベーン溝2を通過すると、加工が終了する。
【0026】
ここで説明したブローチ加工は、荒加工などで既に形成されたベーン溝2にブローチ刃50を通過させるものであるが、溝が全くない部分に直接ブローチ加工でベーン溝2を加工することも、ブローチ刃51の構造を選択することにより、可能であり、一般的に行なわれてきた。
【0027】
また、ベーン溝2の別の加工法として、砥石板を用いた方法も提案されており、近年用いられるようになってきている(例えば、特許文献5参照)。
【0028】
これは、図19(b)に示すように、シリンダ1に荒加工状態の溝をブローチ加工,メタルソー加工あるいはエンドミル加工などにより形成し、荒加工で形成された溝に円盤砥石40を通過させ、この溝の側面を研削することにより、ベーン溝2を仕上げる方法である。砥石を高速で回転させる技術が進歩したことにより、近年実用化された手法である。この円盤砥石40による加工法は、研削加工であるため、切削加工であるブローチ加工に比較して、表面粗さが小さく、良好な加工面が得られる特徴がある。
【0029】
以上のブローチ加工や円盤砥石加工のいずれの加工法でも、従来の加工法では、ベーン溝2の両側面を平面に仕上げることを目的とした加工法であった。これらの技術の開発過程では、寸法や表面粗さ,並行度,平面度に関わる精度をいかに良好にするかが主眼になっていた。
【0030】
【特許文献1】
特開平7−189924号公報
【0031】
【特許文献2】
特開平6ー129365号公報
【0032】
【特許文献3】
特開平6ー81783号公報
【0033】
【特許文献4】
特公平7−24971号公報
【0034】
【特許文献5】
特開平10−109260号公報
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のロータリ圧縮機のベーン溝2とベーン16とでは、次のような問題があった。
【0036】
特許文献1に記載の図18(a)に示すベーン16を用いたロータリ圧縮機では、図17において、ベーン16に動圧Paを発生させるために、ベーン16の高圧室側面16Hにテーパ16a(図18(a))を設ける構成をなすものであるが、ベーン溝2の高圧室側面2Hに穴または溝(図示せず)が形成されていると、動圧を発生させる油膜がこの穴または溝から漏洩してしまい、適切な動圧Paを得ることが困難であった。ベーン16をローラ17に押し付けるためにバネ21を用いることが多いが、ベーン溝穴6をベーン溝2の一部に至るように形成すると、この穴6がベーン溝2にくぼみを形成することになる。従って、ベーン溝穴6が形成されたベーン溝2では、ベーン16に設けたテーパ16aによって適切な動圧Paを得ることが困難であった。このように、適切な動圧Paを得ることが困難になると、ベーン16とベーン溝2とが上記の線接触で接触することになり、これらの摺動部分での早期摩耗や異常摩耗,焼き付けといった問題が生じ、ベーン16が正常な動作を行なうことができなくなるといった信頼性の点で問題があった。
【0037】
また、上記特許文献2に記載の技術では、ベーンの側面をわん曲にするものであるが、図18(b)において、ベーン102の側面102bは、わん曲をなしているとしても、やはりベーン溝103のエッジ103aに当接するものであるから、線状に接触して摺動することになり、その摺動部で早期摩耗や異常摩耗,焼き付けが発生することになる。
【0038】
ロータリ圧縮機などにおいては、一般に、ベーンは高精度な部品であり、特許文献2では、ベーン102の製法として、研磨などの機械加工法,プレスなどの塑性加工法,バレルによる加工法,線引による方法などが挙げられているが、これら加工法による適した量産方法がない。このため、特許文献2に記載のベーン102を作成しようとすると、一品毎に手作りするような加工方法を採らざるを得ず、非常に高価なものとなってしまう。
【0039】
さらに、上記特許文献3に記載の発明では、図18(c)に示すように、C面取り204a,204bを設けたことにより、ベーン溝202への給油が円滑に行なわれるようになるが、この場合でも、特に、低圧側C面取り204bのベーン溝202側の縁部では、エッジが生ずるものであり、ベーン201が低圧側圧縮室203b側に傾いたとき、ベーン201の側面がこの低圧側C面取り204bの縁部のエッジと線状に当接して摺動することになる。このため、このエッジとベーン201の側面との間で早期摩耗や異常摩耗,焼き付けが生ずる可能性が残ることになる。
【0040】
ところで、近年、冷凍・空調用圧縮機では、オゾン層破壊を防止するフロン規制に対応するために、冷媒がHCFC(ハイドロ クロロ フルオロ カーボン)からHFC(ハイドロ フルオロ カーボン)に転換されている。従来のHCFC冷媒は分子内に塩素基を含有していたため、塩素基が極圧剤としての効果を備え、冷媒自体に潤滑性があったが、転換後のHFC冷媒には、この塩素基が存在しないため、冷媒の潤滑性が乏しいという課題がベーン溝に加わった。
【0041】
さらに、HFC冷媒は地球温暖化係数が高いため、オゾン層破壊や地球温暖化のいずれに対しても問題とならない自然冷媒である炭化水素冷媒(一例としてイソブタンなど)に転換する検討がなされている。炭化水素冷媒は、潤滑油である鉱油やアルキルベンゼン油との相溶性が高く、冷媒中に潤滑油が多量に溶解するため、潤滑油の粘度が低下して潤滑不良を起こすという問題がある。このため、炭化水素冷媒の使用も、ベーン溝2の潤滑に課題を与えることになる。
【0042】
このように、フロン規制による冷媒の転換により、摺動部の潤滑に対する課題が増大している状況にあるが、摺動部の中でも、線状の接触形態を成すベーン16とベーン溝2にとって、この潤滑の問題は重要な課題となっている。
【0043】
次に、ベーン溝の加工法についてみると、ベーン溝2の加工法として採用されてきた図19(a)に示すブローチ加工では、切れ刃53の稜線が直線であった。従って、この切れ刃53を直線的に移動させて加工して得られるベーン溝2の側面は平面である。このことを、図20を参照して詳細に説明する。
【0044】
図20は図19に示したブローチ刃50の切れ刃53を成形する方法の例を示している。
【0045】
図20(a)は切れ刃53の逃げ面53Aを円盤形状の平形砥石54で成形している状態を模式的に示している。これは、得ようとする切れ刃53の稜線に平行に平形砥石54を回転させながら移動させて、逃げ面53Aを加工する方法である。この方法では、平形砥石54の外周が残す痕跡が逃げ面53Aに形成され、平形砥石54の移動方向に平行な状痕が形成される。この状痕は、平形砥石54の移動方向のB1方向から観察すると、図20(b)に示すように、B1方向に垂直なB3方向のうねり53Aとなる。このうねり53Aにより、切れ刃53の稜線(先端)の形状が変化する。図20(b)は誇張して示しているが、うねり53Aの位置によっては、図20(b)のように、切れ刃53の稜線が非常に薄くなる。切れ刃53は、工具として使用する際には、B3方向に移動しながら切削を行なうので、切れ刃53の稜線部分が薄くなることは、切れ刃53の強度が低下することを意味しており、切削中に切れ刃53が欠損し易くなる。また、その逆に、うねり53Aの位置によって切れ刃53の稜線が厚くなると、これは工具の逃げ角が鈍角に変化することになり、切削抵抗が増大して正常な加工が困難となる。
【0046】
以上により、図20(a)に示すような平形砥石54によるブローチ刃50の成形は、一般には、行われていない。
【0047】
ブローチ刃50の成形は、通例、図21(a)に示すカップ形砥石55を用いる方法によって行なわれている。カップ形砥石55の円環形状の端面を切れ刃53の逃げ面53Aに当接し、この逃げ面53Aに平行なV2方向に移動させて成形を行なう。
【0048】
この方法では、カップ形砥石55によって形成される状痕53Cは、概略的に図示するように、概略円弧形状を呈し、切れ刃53の稜線に向かう方向に形成される。この方法で形成された切れ刃53の稜線近傍A1では、図21(b)に示すように、切れ刃53には切れ刃53の稜線に垂直なB3方向にうねりがなく、切れ刃53の稜線部分の状態を安定させることが可能である。
【0049】
ここで、切れ刃53を曲面に成形しようとする場合には、図20(a)に示す方法を採用して、平形砥石54の軌跡を所望の輪郭に沿って運動させることにより、比較的容易に切れ刃53の稜線を曲線状にすることができるが、この方法は、先に述べた理由から、採用が困難である。
【0050】
一方、通例用いられる図21(a)に示した方法では、接触面が平面であるカップ形砥石55の端面を用いた加工であるため、切れ刃53の稜線を窪んだ形状に成形することが困難である。このことから、図21(a)に示す成形方法を採用するベーン溝加工用のブローチ刃50の製作にあたっては、切れ刃53の稜線を曲線に成形することは実用上採用されることがなく、直線状にする方法がとられてきた。これらの技術的な背景から、直線状の切れ刃53によって加工されたベーン溝の側面は、平面とならざるを得なかった。
【0051】
また、図19(b)に示したように、近年実用化された円盤砥石40による加工においても、回転する円盤砥石40の側面を直線状に移動させて加工する方法であるため、得られるベーン溝2の側面は平面であった。
【0052】
このことからして、これらのブローチ加工や円盤砥石加工によって得られた平面状のベーン溝2の側面では、ベーン溝2内で発生するベーン16の傾斜によるベーン溝2とベーン16の線接触を回避することが困難であった。
【0053】
以上のように、従来のベーン溝加工法によると、ベーン溝2の側面が平面にならざるを得ない状況の下では、ベーン溝2の側面とベーン16との間に局部荷重が生じる線状の接触を回避することが不可能であり、このために、より高い負荷が生じる使用条件や潤滑性に劣る冷媒が使用される条件でロータリ圧縮機の運転を試みると、ベーン溝2の早期摩耗や異常摩耗、ベーン溝2とベーン16との焼き付けなどの摺動部の問題が発生していた。
【0054】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、ベーンとベーン溝との摩擦を効果的に低減し、ベーンの信頼性を高めることができるようにしたロータリ圧縮機とそのシリンダの加工法を提供することにある。
【0055】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるロータリ圧縮機は、シリンダに形成されているベーン溝の少なくとも一方の側面が、シリンダの外周面側あるいは内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲形状をなしているものである。
【0056】
また、ベーン溝でのシリンダの高圧室側の側面は、シリンダの外周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、シリンダの内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状をなし、ベーン溝でのシリンダの低圧室側の側面は、シリンダの内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、シリンダの外周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状をなすものである。
【0057】
また、ベーン溝の湾曲形状をなす部分は、ベーンがベーン溝内で傾斜してベーン溝の側面に当接した状態で、ベーンとベーン溝の側面との間に油膜によるシールを形成し、かつベーンが面接触する長さ,幅に設定されているものである。
【0058】
上記目的を達成するために、本発明によるロータリ圧縮機のシリンダ加工法は、外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられて回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、ベーン溝の側面加工のための第1の平面に対して、回転軸心に直交し砥粒層の回転軌跡を含む第2の平面が所定の角度をなすように、円盤形状砥石を該進行方向に対して傾斜させながら、円盤形状砥石を該進行方向に移動させてベーン溝の側面を加工するものである。
【0059】
また、外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられて回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、ベーン溝の側面加工のための円盤形状砥石の進行方向に平行な平面に対して砥粒層の回転軌跡を含む平面が傾斜するように、円盤形状砥石を傾斜させ、砥粒層の進行方向前半分の部分でベーン溝を加工し、ベーン溝の側面の断面形状を凸形状に加工するものである。
【0060】
また、円盤形状砥石の進行方向前半側がベーン溝の中心線に近づくように、円盤形状砥石を傾斜させてベーン溝の側面を加工するものである。
【0061】
また、円盤形状砥石は、傾斜状態を固定して、ベーン溝の一方の側面でのシリンダの内周面側と他方の側面でのシリンダの外周面側とを加工するものである。
【0062】
【発明実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
【0063】
図1は本発明によるロータリ圧縮機の一実施形態の要部、即ち、圧縮機構部におけるベーン溝の近傍を示す部分展開斜視図であって、先の図面と同様、1はシリンダ、2はベーン溝、2Hはベーン溝2の高圧側面、2Lはベーン溝2の低圧室側の側面、3はシリンダ1の内周面、8は高圧室、9は低圧室、12は圧縮機構部、16はベーン、17はローラである。この実施形態も、その全体構成は図15に示す構成と同様である。
【0064】
図1において、シリンダ1に設けられたベーン溝2には、ベーン16が摺動可能に嵌合されており、シリンダ1内でのローラ17の偏心回転に伴って、ベーン16はベーン溝2内を摺動する。ベーン16の摺動方向は、ベーン溝2からシリンダ1の内周面3(即ち、ローラ17)に向かう方向をH方向、その反対にシリンダ1の外周面に向かう方向をG方向としている。
【0065】
ベーン16は、シリンダ1とローラ17とで形成される動作ガスの圧縮室を高圧室8と低圧室9に仕切っており、高圧室8側の動作ガス圧力Pdの方が低圧室9側の圧力Psよりも高い。このため、ベーン16は、圧力Pdをより大きく受けた状態で、ベーン溝2に沿ってG,H方向に摺動する。そして、ベーン16は、高圧室8内でより大きい圧力Pdを受けるため、ベーン溝2内で低圧室9側に傾斜した状態になる。この傾斜した状態で摺動するベーン16はベーン溝2の側面2H,2Lに接触するが、この接触が線状の接触であることを回避して接触面積を増大するように、ベーン溝2の側面2H,2Lは湾曲した形状をなしている。ここでは、G方向もしくはH方向に向かうに従って、ベーン溝2の側面2H,2Lがベーン溝2の中心線から離れるように湾曲している。なお、ここでは、この湾曲の形状を誇張して表わしている。
【0066】
図2(a),(b)は図1を矢印M方向にみたときのベーン16の状態を示す図であって、2Lはベーン溝2の低圧室側の側面、2L1はこの低圧室側の側面2Lの湾曲部、2Hはベーン溝2の高圧室側の側面、2H2はこの高圧室側の側面2Hの湾曲部、16Lはベーン16の低圧室側の側面、16Hはベーン16の高圧室側側面であり、図1に対応する部分には同一符号をつけている。なお、図2(a),(b)において、図面上右側がシリンダ1の内周面側(即ち、図1でのローラ17側)となる。
【0067】
図2(a)において、幅W1のベーン溝2にこの幅W1より狭い幅W2のベーン16が嵌合されており、幅δ1の間隙が両者の間に形成されている。ベーン溝2の低圧室側の側面2Lには、そのシリンダ1の内周面側に、この内周面方向であるH方向に向かうに従ってベーン溝2の中心線(図示せず)から離れていくように、湾曲部2L1が形成されており、また、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hには、そのシリンダ1の外周面側に、この外周面方向であるG方向に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れていくように、湾曲部2H2が形成されている。
【0068】
ベーン16に高圧室8(図1)側の動作ガス圧力Pdと低圧室9(図1)側の動作ガス圧力Psとが作用すると、Pd>Psであるから、図2(b)のように、ベーン溝2内でベーン16が低圧室9側に傾斜する。これにより、ベーン16でのシリンダ1の内周面側(以下、ベーン16の先端部という)では、その低圧室側の側面16Lはベーン溝2の低圧室側の側面2Lに設けられた湾曲部2L1によって支持され、ベーン16のそれとは反対側(以下、ベーン16の後端部という)では、その高圧室側の側面16Hがベーン溝2の高圧室側の側面2Hに設けられた湾曲部2H2によって支持される。これら湾曲部2L1,2H2には、油膜が存在するため、湾曲形状と平面の接触ではあるが、線状の接触にはならずに、面状の接触でベーン溝2とベーン16との間の摺動面が形成されることになる。
【0069】
このようにして、これら湾曲部2L1,2H2の存在により、ベーン16とベーン溝2との線状の接触を回避でき、これらの摺動部分の信頼性が向上することになる。
【0070】
なお、図2(a)(b)においては、湾曲部2L1,2H2の湾曲の程度は誇張して示している。
【0071】
ここで、図2(a)におけるベーン溝2の湾曲部2L1,2H2の長さRと幅Sとの大小による効果について説明する。
【0072】
ベーン溝2の外周側(即ち、図面上左側)では、ロータリ圧縮機のケース10(図15)内に充満した動作ガスから圧力Pvを受けている。この圧力Pvの動作ガスは、シリンダ1とローラ17(図1)との間の圧縮室内で圧縮が完了してケース10内に排気され、次に、このロータリ圧縮機に接続された機器へ供給される前の過程にあり、圧力Pd,Psよりも圧力が高い場合がある。従って、圧力Pvの動作ガスは、ベーン溝2を経由して圧縮室内に漏出しようとするが、ベーン溝2とベーン16との間に油膜が介在していることにより、この圧力Pvの動作ガスが圧縮室内に漏洩するのを防止している。この漏出が多大であるときには、一旦圧縮が完了した動作ガスが再度圧縮室に貫流して無益に再膨張するため、ロータリ圧縮機の容積効率の低下につながり、最終的には、消費エネルギーの損失となる。従って、ベーン溝2の油膜によるシール機能は重要な役割を担っている。
【0073】
かかる制約のもとに、図2(a)に示す湾曲部2L1,2H2の長さRと幅Sとが大きいと、図2(b)に示すベーン溝2の低圧室側の側面2Lとベーン16の低圧室側の側面16Lとの間の間隙δ2が広くなるが、このことは油膜によるシールの破壊を容易にすることにつながる。一方で、これらの長さRと幅Sとが小さいときには、摺動部の接触面積が縮小し、摺動部の信頼性を損ねる線状の接触状態に近くなる。
【0074】
これらの相反する条件を両立させるように、これら長さRと幅Sとを設定することが必要となり、一例として、ベーン溝2の幅W1が4mm程度、長さLが15mm程度の空調用ロータリ圧縮機において、間隙δ1が0.01mm程度の場合には、L/Rが1/3程度であって、幅Sは数μm程度が好ましい。
【0075】
また、ベーン溝2の側面2H,2Lの湾曲部2H2,2L1とそれ以外の直線部との境界点Dでは、湾曲部2H2,2L1の接線が直線部と一致して滑らかに接続されるように、湾曲部2H2,2L1の形状を設定する。ベーン溝2の側面2H,2Lが、この滑らかに接続する条件を満たし、かつベーン16側に凸状をなす形状であれば、湾曲部2H2,2L1の形状は円弧や楕円の部分弧であってもよいし、また、他の関数で規定される曲線などを選定することも可能である。
【0076】
なお、ロータリ圧縮機には、縦形,横形などの使用時の設置形態によって潤滑油を摺動部に供給する手法が異なる。このため、ベーン溝2の内周側と外周側とで潤滑状態の良否に差がある場合がある。このような場合には、この湾曲部2H2,2L1の設定は、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hと低圧室側の側面2Lとのいずれか一方で行なう構成としてもよく、同様の効果が得られるものである。
【0077】
以上は、ベーン16が高圧室側からの動作ガスの圧力Pdの方向に力を受けてベーン溝2中で傾斜した場合のベーン溝2とベーン16とが線状に接触するのを防止するものであった。ロータリ圧縮機の圧縮過程の大半では、ベーン16がかかる圧力Pdの方向に力を受けるため、以上の構成が圧縮過程にある状態で有効である。
【0078】
ところで、ロータリ圧縮機では、ローラ17が動作ガスを圧縮過程から上死点に達した後、一時的に圧縮室が高圧室8及び低圧室9の2室構成から1室構成に切り替わる場合があり、図3はこの状態を示している。
【0079】
図3に示す状態は、クランクシャフト13の回転によってローラ17が旋回し、ローラ17がベーン16をベーン溝2内に最も押し込んだ状態を示している。この状態では、ローラ17とシリンダ1の内周面3によって形成される圧縮室は低圧室9のみとなる。このときの低圧室9は吸入口4に連通しており、吐出口5がバルブ(図示せず)によって閉塞されるために、低圧室9の全体が吸入口と同圧となる。このようになる直前までベーン16は高圧室8側から一方向に力を受けていたが、この上死点で圧縮室全体が低圧室9となるため、ベーン16は高圧室8側から受ける圧力から開放される。このとき、ベーン16はベーン溝2内で傾斜していた状態から開放されるが、この反動でこれまでに傾斜していた方向とは反対の方向にベーン16が振れる。ベーン16がこのように振られると、ベーン溝2は、その側面のここまでとは異なる部分でベーン16を支持することになる。
【0080】
図4に以上の過程を示すものであって、これも図1で矢印M方向にみた図である。
【0081】
図4(a)はロータリ圧縮機が上記の圧縮過程にある状態であり、ベーン16は高圧室8側からの動作ガスの圧力Pdによって傾斜させられている。かかる圧力Pdで押し付けた状態から、上記の上死点に達すると、ベーン16は傾斜方向が反対となり、一時的に図4(b)に示す状態になる。このとき、ベーン16を支持するベーン溝2の側面(以下、ベーン溝側面という)2Aは、図4(a)に示す湾曲部2L1,2H2から図4(b)に示すように、側面2L,2Hのこれら湾曲部2L1,2H2とは異なる部分である。この動作はきわめて短時間の間に生じ、このため、ベーン16とベーン溝2の側面2L、2Hとの接触は衝撃的に発生する。
【0082】
そこで、図4に示すように、ベーン溝2の側面2L,2H夫々の湾曲部2L1,2H2とは反対側の部分にも、同様の湾曲部L2,2H1を設定して、ベーン16とベーン溝2との間で面状の接触がなされるようにする。これにより、ベーン16とベーン溝2との間の接触部分の信頼性がさらに向上することになる。
【0083】
このベーン16の傾斜方向の転換は、ロータリ圧縮機の全圧縮過程の中では、一瞬の現象であるが、図2に示すベーン溝側面2Aへの湾曲面の設定にかかる湾曲部2L2,2H1を加えることにより、ベーン16とベーン溝2との摺動部の信頼性がさらに向上することになる。なお、ここでも、ベーン溝側面2Aの湾曲の程度は誇張して示している。
【0084】
図5は以上のベーン溝2を成形する本発明によるシリンダの加工方法の一実施形態を示す図であって、30は円盤形状砥石、31は砥石主軸、32は台金、33は砥粒層、34は砥石軸心であり、図1に対応する部分には同一符号を付けている。
【0085】
図5(a)は回転する円盤形状砥石30がシリンダ1の加工前のベーン溝2の直前の位置に配置された状態を示す。円盤形状砥石30は、砥石主軸31に円盤状の台金32が支持され、その台金32の外周端面と両側面の外周部(以下、これらの部分を台金32の先端部という)に砥粒層33が形成されており、砥石主軸31を中心に台金32が矢印Tの方向に回転することによって台金32の先端部に形成された砥粒層33が回転する。そして、この円盤形状砥石30を、このように回転した状態でベーン溝2へのα方向に進行させることにより、ベーン溝2の加工が可能となる。
【0086】
台金32の外周端面側での砥粒層33の幅W3は、加工によって得ようとするベーン溝2の幅W4より狭く設定されている。円盤形状砥石30が進行するα方向と砥石主軸31の軸心、即ち、砥石軸心34とを含んだ平面PF上で、砥粒層33がT方向に回転してできる円軌道を含む面とα方向との間で角度βを設定している。即ち、円盤形状砥石30は、そのα方向に対して角度βだけ向きがずれた状態で、そのα方向に進行する。ここで、角度βは誇張して示してある。
【0087】
図5(b)は図5(a)で平面PFに対して直交するN方向から見た平面である。
【0088】
図5(b)において、砥粒層33が回転してできる円軌道は、円盤形状砥石30のα方向に対して角度βだけ傾いている。この角度βは、回転した状態での円盤形状砥石30の砥石軸心34よりもα方向側にある砥粒層33(即ち、円盤形状砥石30の前半分)を、ベーン溝側面2Aから離れる方向に傾斜させる角度である(これは、また、ベーン溝2の中心線から見ると、円盤形状砥石30の前半分がベーン溝2の中心線に近づく方向に傾斜させることを意味するものであるが、以下では、上記のように、ベーン溝側面2A側から見た表現とする)。ここでは、この逆の傾き、即ち、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33がベーン溝側面2Aに近づくように、傾斜円盤形状砥石30を傾けることはしない。円盤形状砥石30をこのように配置してα方向に進行させることにより、ベーン溝側面2Aを、図2で示したように、加工できる。
【0089】
ここでは、シリンダ1には、予め荒加工によってベーン溝2が形成されており、この荒加工されたベーン溝2を円盤形状砥石30によって拡幅し、ベーン溝2を形成するものであるが、円盤形状砥石30の構成によっては、ベーン溝2が荒加工されていないシリンダ1に直接、円盤形状砥石30により、ベーン溝2を形成することも可能である。
【0090】
ここで、図5(b)の状態から円盤形状砥石30を進行方向αに進行させると、図5(c)に示す状態となる。この図5(c)に示す状態では、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33がベーン溝2を通過しているが、この状態で円盤形状砥石30を加工から離脱させる。この円盤形状砥石30を離脱させる位置は、砥粒層33での前半分とは反対側の部分、即ち、砥粒層33の後ろ半分がベーン溝2に接触を開始する前にある。
【0091】
これらのことを図6を用いて説明する。なお、図6は図5(b),(c)で砥石軸芯34に平行な矢印J方向から見た図である。
【0092】
図6(a)は図5(b)に示す状態を矢印J方向から見た状態を示すものであって、円盤形状砥石30がベーン溝2を加工する直前の状態を示している。この状態から円盤形状砥石30がα方向に進行して、ベーン溝側面2Aが加工される。
【0093】
図6(b)は図5(c)に示す状態を矢印J方向から見た状態を示すものであって、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33が加工を終了した状態にある。この状態から円盤形状砥石30をα方向にさらに進めると、砥粒層33の後ろ半分がベーン溝2側面2Aに接触を始めてその加工を行なうことになるが、この実施形態では、図6(b)に示す状態で円盤形状砥石30を加工から離脱させる。台金32は砥粒層33よりも幅が狭く、ベーン溝2の加工された側面2Aから離れているため、図6(b)に示す状態になれば、特段の処置を施さなくても、砥粒層33とベーン溝側面2Aとの接触は中断して加工は中断されている。従って、図6(b)に示す状態から、円盤形状砥石30がベーン溝側面2Aに接触しないように、円盤形状砥石30をベーン溝側面2Aから離れるように移動させた後、この円盤形状砥石30をさらにα方向に進行させるか、あるいはα方向と逆方向、即ち、K方向に引き戻させることにより、容易に加工状態から円盤形状砥石30を離脱させることができる。
【0094】
ここで、円盤形状砥石30がα方向に進行する過程で、図6(b)に示すように、円盤形状砥石30によるベーン溝側面2Aの加工を一旦中断できるようにしている。即ち、砥石軸心34からベーン溝側面2Aの最外周部までの距離L2は、砥粒層33の回転軌道の内側の半径r2より小さく、なおかつ、長さL,厚さT1のベーン溝側面2Aが一旦砥粒層33から離れるように、設定される。また、ベーン溝側面2Aの長さLは、砥石主軸31に接触しないように、設定されている。さらに、砥粒層33の半径r1は、ベーン溝側面2Aの外周側に存在するシリンダ1の部材に接触せず、さらに、シリンダ1の内周面3(図1)に接触しないように、設定されている。このような設定により、円盤形状砥石30がα方向に進行する過程で、ベーン溝側面2Aが台金32の範疇に収まり、加工が中断する状態を作り出すことができる。
【0095】
以上の方法で形成されるベーン溝側面2Aの形状について、以下、図7を用いて説明する。
【0096】
図7(a)は図6(a)で円盤形状砥石30を矢印Kの方向から見た斜視図である。
【0097】
図7(a)において、紙面に垂直な方向を、円盤形状砥石30が進行するα方向であり、円盤形状砥石30はこの方向に対して角度βだけずれた向きとなっているので、円盤形状砥石30が斜めから見たように示されている。ここでは、加工時には、円盤形状砥石30が紙面より手前側に進行することになる。ベーン溝側面2A(図示せず)は図示する円盤形状砥石30の左側にあることになり、従って、円盤形状砥石30の砥石軸心34より手前側の円盤形状砥石30の前半分がベーン溝側面2Aに対して矢印N方向に開くように、砥石軸心34がα方向に垂直な方法に対して傾斜しており、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33で加工が行なわれる。ここでも、砥石軸心34が傾斜は誇張して示している。
【0098】
かかる状態で加工対象であるベーン溝側面2Aに転写されるのは、ベーン溝側面2Aの存在範囲Lにある砥粒層33の軌跡33Aである。この形状は、円を傾斜させて投影した形状であり、楕円の部分弧となる。
【0099】
これを図7(b)で説明するが、説明を容易にするために、円盤形状砥石30の前半分のうちの下半分の部分での砥粒層33について説明する。
【0100】
砥粒層33の回転軌跡の中心0(図7(a)での砥石軸心34が通る点)はα方向に平行な平面PG上にあり、この中心点0からα方向に対して垂直方向の砥粒層33の点S2もこの平面PG上にある。また、中心点0からほぼα方向にある砥粒層33の点S1は、中心点0から見てα方向から角度βだけずれた方向にあり、砥粒層33の回転軌跡の半径をrとすると、平面PGからr・sinβだけ離れた位置である。この砥粒層33の回転軌跡を平面PGに垂直な平面PHに投影すると、軌跡KTが得られる(なお、この回転軌跡33上の点S1の平面PHへの投写点が点S1’であり、以下、点SX,S2の平面PHへの投写点が夫々点SX’,S2’である)。計算は省略するが、この軌跡KTが楕円弧をなすものである。この平面PHをベーン溝2の端面とすると、ベーン溝2では、回転する砥粒層33がα方向に移動することにより、側面が加工されて、表面がこの軌跡KTがα方向に延長されてなるベーン溝側面2Aが得られることになる。なお、弧の実施形態では、図6で説明したように、図7(b)に示す1/4円部で示す砥粒層33の一部がベーン溝側面2Aの加工に使用される。
【0101】
図7(c)は図7(b)で説明したようにして図7(a)に示す砥粒層33の軌跡33Aの転写によって形成されるベーン溝側面2Aの形状を示すものである。G方向がシリンダ1の外周側、H方向が内周側になるが、この実施形態の加工法では、シリンダ1の外周側であるG方向に向かうに従ってベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線(図示せず)から離れていくように、ベーン溝側面2Aが湾曲した形状に加工されることになる。従って、この加工法では、図2に示すベーン溝2の高圧室側の側面2Hが湾曲部2H2を有するように加工されたことになる。なお、ここでも、ベーン溝側面2Aの湾曲した形状は誇張して示している。
【0102】
次に、以上に述べた方法で、図7(c)のように、シリンダ1の外周側になるにつれてベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線から離れるような湾曲したベーン溝を得た場合の精度の例について図8を用いて説明する。
【0103】
図8は、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝2の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.02degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの精度を示すグラフ図であり、横軸はベーン溝側面2Aでのシリンダ1の内周面3から外周方向への距離Lを示し、縦軸はベーン溝側面2Aの基準平面からの距離δを示している。この基準平面とは、円盤形状砥石30を傾斜させずに加工した場合、即ち、図5に示す傾斜角度βがゼロの場合の平面をいい、最外周部をゼロとした。
【0104】
同図において、ハッチングして示した部分がシリンダ1に属する側であり、その反対側がベーン溝2に面する側である。ここでは、上記の条件で加工した場合の精度を計算によって算出して表示したものである。
【0105】
図示するように、ベーン溝側面2Aは、ベーン溝2でのシリンダ1の内周面3からの距離Lが増大するに従って、基準平面からの距離δが減少していく形状となっている。これは、外周に向かうに従ってベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心から離れていく形状を示している。また、図示する曲線は楕円の一部分である弧となっている。従って、上記の加工例により、シリンダ1の外周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れていくように湾曲した形状のベーン溝側面2Aを得ることが可能である。
【0106】
以上の加工法により、図2において、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lで、シリンダ1の外周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるように湾曲したベーン溝側面2Aとすることが可能であるが、図2におけるもう一方の側面、即ち、低圧室側の側面2Lで、シリンダ1の内周に向かうにつれてベーン溝の中心線から離れるように湾曲したベーン溝側面2Aを形成することは、上記の加工法では不可能である。その理由を図9で説明する。
【0107】
図9はベーン溝側面2Aをシリンダの内周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した面に加工すべく、円盤形状砥石30を配置した例を示すものである。円盤形状砥石30は、その前半分が加工しようとするベーン溝側面2Aから離れるように、円盤形状砥石30が進行するα方向から角度βだけ傾斜した状態で配置されている。この状態で円盤形状砥石30をα方向に進行させると、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hで所望の形状を得ることができる。
【0108】
しかし、ベーン溝2の外周側には、シリンダ1の部材が存在し、ベーン溝2を挟んでシリンダ1の両側を結合しているのが通例である。このため、図9に示すように円盤形状砥石30を配置したのでは、円盤形状砥石30のα方向に除去してはならない部分が存在するため、円盤形状砥石30がベーン溝を通過することができずに、高圧室側の側面2Hをシリンダの内周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した面に加工することができない。なお、ベーン溝2がシリンダ1の外周側でも貫通していて、円盤形状砥石30が通過できる設定のシリンダ1である場合には、上記のように円盤形状砥石30を配置しても、側面が所望の形状のベーン溝を得ることが可能である。しかし、このような形状のシリンダ1は実用化されておらず、また、シリンダ1の剛性低下をまねくため、採用するメリットに乏しい。
【0109】
図10は図2に示すようなシリンダの内周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した形状のベーン溝側面2Aを成形するできるようにした本発明によるシリンダの加工法の他の実施形態を示す図である。
【0110】
図10(a)はこの場合の円盤形状砥石30の配置状態を示すものであって、先に図7に示した配置状態にして、さらに、円盤形状砥石30をα方向の軸回りの角度κを加味している。
【0111】
α,β,κの関係は図10(b)で示す通りである。即ち、いま、平面P1を図5(a)に示す平面PFに垂直で、かつα方向に平行な平面とする。また、軸Q1を、この平面P1上にあって、かつ平面PF(図5(a))に垂直な中心軸とする。この平面P1をこの中心軸Q1を中心として角度βだけ回動して得られる平面P2が、図5に示した実施形態での円盤形状砥石30の砥粒層33の回転軌跡を含む平面である。ここで、軸Q2を平面P2上の水平な中心軸とする。この平面P2を水平な中心軸Q2を中心に角度κだけ回動させると、平面P3が得られるが、図10に示す実施形態では、円盤形状砥石30の砥粒層33の回転軌跡がこの平面P3上にあるようにしているものである。
【0112】
この角度κの回動により、図10(a)において、円盤形状砥石30の砥石軸心34よりのF方向にある部分(即ち、円盤形状砥石30の上半分)が加工するベーン溝側面2Aにより近接する。このように、角度κだけ回動させた状態で、円盤形状砥石30をα方向に進行させると、ベーン溝側面2Aに転写される形状は円盤形状砥石30のL1で示す範囲33Bの形状が転写される。この転写形状は楕円の部分弧を傾斜させた形状になるが、角度κの設定に応じてベーン溝2をシリンダ1の内周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように、湾曲の度合いを変えることが可能となる。
【0113】
図10(b)はこのように設定加工されたベーン溝側面2Aの形状の一例を示すものであり、シリンダ1の内周面の方向(H方向)に向かうにつれて、ベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線(図示せず)から離れるような形状にベーン溝側面2Aが形成される。なお、ここでも、角度κの設定状態とベーン溝側面2Aの湾曲の程度は誇張して示している。
【0114】
図11は以上のように円盤形状砥石30に傾斜角κを加えて加工した場合の精度の一具体例を示すグラフ図である。ここでは、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝2の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.05deg、α方向の軸回りの傾斜角0.05degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの形状を示している。横軸は図8に示すグラフの場合と同様である。また、縦軸も図8に示すグラフの場合とほぼ同様であり、ベーン溝側面2Aの基準平面からの距離を示している。ここで、図11での基準平面とは、円盤形状砥石30を傾斜させずに加工した場合、即ち、角度β,κがともにゼロの場合の平面を用い、最内周部をゼロとした。
【0115】
このグラフに示すように、ベーン溝側面2AでのL=8付近が最も突出しており、ここからシリンダの外周と内周とに向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状の側面が得られることになる。この湾曲の程度と最も突出する位置とは、円盤形状砥石30の直径Dと角度β,κとを変化させることによって調整することができる。
【0116】
以上では、ベーン溝2の側面2H,2Lで夫々片側に(即ち、図2に示すように、低圧室側の側面2Lでは、シリンダ1の内周面側に、高圧室側の側面2Hでは、外周面側に)湾曲部2L1,2H2を設けるようにしたが、側面2H,2Lでともにシリンダ1の内周側,外周側に夫々湾曲部を設けるようにすることもでは、例えば、ベーン溝2内部の中心点を中心に線対称となることを考慮に入れて条件を設定することにより、同様の加工が可能である。従って、高圧室側の側面2Hと低圧室側の側面2Lの夫々に必要な形状を、上記の角度β,κを調整して得ることが可能である。
【0117】
次に、上記の加工法の具体的な手順の一例を図12を参照して説明する。ここで、図12に示す手順は、図5(b),(c)の場合と同じ方向からベーン溝2と円盤形状砥石30を見たものである。
【0118】
まず、図12(a)に示すように、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lを加工するように、円盤形状砥石30に対する傾斜角β,κを設定し、この円盤形状砥石30をα1方向(図5でのα方向と同じ)に進行させる。ここで、角度κは図示していないが、円盤形状砥石30の紙面よりも手前に存在する側が低圧室側の側面2Lに近づく向きに設定されている。図12(a)の状態から円盤形状砥石30がα1方向に進行して、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33による加工が終了すると、図12(b)に示す状態になる。次に、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き出すために、図12(b)において、α1方向に直交する矢印λ1の方向に移動させ、図12(c)に示す状態にする。そして、かかる状態でα1方向とは反対方向のα2方向に円盤形状砥石30を移動させて、図12(d)に示すように、ベーン溝2内から円盤形状砥石30を引き出す。
【0119】
ここで、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを加工するために、円盤形状砥石30を、図12(d)に示す状態で、λ1方向に移動させ、これとともに、図12(a)の角度βとは反対方向に角度β2だけ円盤形状砥石30を旋回させて、円盤形状砥石30を図12(a)の角度βとは反対方向に角度βだけ傾いた状態とする。さらに、図示しないが、角度κも同様の切り替えを行なう。図12(e)はかかる角度β,κの切り替えを行なった円盤形状砥石30の状態を示す。
【0120】
しかる後、円盤形状砥石30をα1方向に進行させる。これにより、高圧室側の側面2Hが加工されて図12(f)に示す状態になると、円盤形状砥石30の砥石軸心34より進行方向側、即ち、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33による加工が完了する。そして、矢印λ2方向に円盤形状砥石30を移動させて、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き抜ける図12(g)に示す状態にすると、図示する矢印α2方向に円盤形状砥石30を移動させて円盤形状砥石30をベーン溝2内から引き抜き、図12(h)に示す状態とする。そして、円盤形状砥石30の角度β,κと位置を図12(a)に示す状態に戻して、一連の加工動作が完了する。
【0121】
次に、上記の湾曲した形状のベ−ン溝側面2Aをさらに簡易に得ることができる手法について説明する。
【0122】
上記の加工工程の例では、ベーン溝2の一方の側面を加工してから反対側の側面を加工を開始するまでの間に、円盤形状砥石30に設定した角度β,κを変更(切り替え)する必要がある。これら角度の変更は自動的に制御した場合でも、シリンダ1個を加工するための時間にこの角度変更を行なっている間の時間も含まれることになる。角度変更を行なう時間は、切り屑を出す実加工時間ではなく、いわゆる無駄時間となる。
【0123】
そこで、かかる角度変更を行なわずに、ベーン溝の両側面を加工するようにすることが必要となるが、このようにして、湾曲形状の面をさらに効率的に得る手法を図13を用いて説明する。図12と同一方向には同一符号を付している。
【0124】
図13(a)は、円盤形状砥石30がベーン溝2の低圧室側の側面2Lを加工する直前の状態を示すものであり、円盤形状砥石30には、α1方向に対して傾斜角度βが設定されているし、図示しないが、図12の場合と同様に、傾き角度κも設定している。
【0125】
図13(a)示す状態から円盤形状砥石30をα1方向に進行させ、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33での加工が完了すると、図13(b)に示す状態になる。この状態で、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lの加工が完了している。次いで、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き出すために、矢印λ1方向に移動させて図13(c)に示す状態にし、この状態から、再び矢印α1方向に円盤形状砥石30を移動させて、ベーン溝2内から円盤形状砥石30を引き出す。これで図13(d)に示す状態となる。
【0126】
次に、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを加工するために、図13(d)に示す状態から矢印λ1方向へ円盤形状砥石30を移動させる。これにより、図13(e)に示す状態となる。そして、円盤形状砥石30での角度β,κの設定は変更せずに、矢印α2方向に円盤形状砥石30を後退させる。角度βを変更しなくても、この配置上では、円盤形状砥石30が砥石軸心34よりα2方向にある部分(この場合の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33の部分)が、高圧室側の側面2Hから離れるような状態となっている。2α方向に円盤形状砥石30が進むと、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hが加工され、図13(f)に示すように、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33の部分による加工が完了する。そして、矢印λ2方向に円盤形状砥石30を移動させて、円盤形状砥石30がベーン溝2の側面2L,2Hに接触せずに引き抜ける図13(g)に示す状態にし、次いで、矢印α2方向に円盤形状砥石30を後退させることにより、図13(h)に示すように、円盤形状砥石30をベーン溝2の中から引き出して最初の状態に戻る。
【0127】
円盤形状砥石30のこれら一連の動作は、円盤形状砥石30の前進と後退及びその間の直交方向への横移動だけで構成されており、かかる加工過程で角度β,κの変更・調整が必要ないため、一旦角度β,κを決めて固定してしまえば、その後では、単純な直進移動だけで加工が完了する。また、一往復で加工を終了するため、ベーン溝2の側面2L,2H毎に往復動作を繰り返す必要がなく、短時間で面加工ができる。
【0128】
図14は以上の図13に示す一連の動作による加工の結果得られたベーン溝側面2Aの形状の具体例を示すグラフ図であって、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.015deg、円盤形状砥石30の進行方向の軸回りの傾斜角κが0.015degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの形状を示すものである。
【0129】
図14(a)はベーン溝2の高圧室側の側面2Hの形状を示し、図14(b)は低圧室側の側面2Lの形状を示している。これらグラフの横軸及び縦軸は図11に用いた設定と同様である。円盤形状砥石30に与える角度κは、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lがシリンダ1の内周面側でより湾曲するように設定している。加工中に円盤形状砥石30に設定した角度は変更していない。
【0130】
この結果、得られたベーン溝2の高圧室側の側面2Hは、図14(a)に示すように、シリンダの外周面に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した面形状となり、中央付近がやや突出した形状となっている。低圧室側の側面2Lは、図14(b)に示すように、中央付近からシリンダ1の内周面と外周面とに向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した面形状となり、中央付近が突出した形状となっている。
【0131】
ベーン16は図14(a),(b)に示す形状の側面2L,2Hの間に形成される溝内に挿入され、シリンダ1の内周面側が低圧室側の側面2Lに押し付けられるように傾斜する。このベ−ン16を適切に支持するように、高圧室側の側面2Hは、シリンダ1の内周面に向かうに従って低圧室側の側面2Lに近づくように傾斜させている。
【0132】
このように、円盤形状砥石30の角度β,κを適切に選択することにより、これら角度β,κの変更を加工過程で行なうことなく、ベーン16を支持するに適した面形状のベーン溝側面2Aを得ることが可能となる。従って、上記実施形態の加工法により、好適に湾曲した形状のベーン溝側面を安価に得ることが可能となり、その結果、ベーン部の摺動信頼性がより向上し、耐久性に優れるロータリ圧縮機を提供することが可能となる。
【0133】
なお、図13に示す手順では、円盤形状砥石30の往復動作のいずれでも加工を行なうが、設定を変えることにより、加工を一方向の動作で完結させることも可能である。その一具体例を図13で説明すると、図13(b)に示す状態で円盤形状砥石30をλ1方向へ移動させる際に、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを所定の寸法に加工できるまで移動させる。この移動が完了した状態を図13(c)に示す状態とすると、この状態でα1方向に円盤形状砥石30を進行させる。これにより、図13(d)に示す状態となるが、円盤形状砥石30は、図13(d)に示す状態になるまでのベーン溝2を通過する過程において、高圧室側の側面2Hを加工しながら進行する。この過程で形成される形状は、先に説明した図13(e)〜図13(f)の過程に形成される形状と同一である。
【0134】
従って、この具体例では、円盤形状砥石30がα1方向に進む過程でベーン溝2の両側面2L,2Hの加工が可能となり、図13(e)〜図13(h)で示す円盤形状砥石30がα2方向に移動する過程では、ベーン溝2の側面の加工を行う必要がない。従って、往復動作をさせた場合の移動精度が前進と後退で異なるような機械を用いた場合、一方向の移動だけを用いて加工することが可能となる。ここでは、α1方向への移動で加工する場合を説明したが、α2方向への移動で加工するようにしてもよい。
【0135】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。即ち、
従来のロータリ圧縮機のベーン溝には、線状の接触部が存在するため、ベーンとベーン溝との摺動部では、高負荷運転や潤滑性に乏しい冷媒の使用に起因して、油膜切れによる金属接触が起こり、早期摩耗や異常摩耗、さらに、焼き付けを起こすという問題があったが、本発明によると、ベーン溝の側面が負荷のかかったベーンを適切に支持でき、かつ接触部で面接触となるように、ベーン溝の側面が湾曲した面形状をなしているものであるから、線状の接触を回避することができ、ベーン溝の摺動部の摺動信頼性が大幅に向上するし、かかるベーン溝を具備したシリンダを組み込んだロータリ圧縮機では、耐久性が大幅に向上する。
【0136】
また、本発明の加工法によれば、ベーン溝に発生していた上記の問題を解消する湾曲した形状のベーン溝の側面を簡便でかつ量産に適したものであり、耐久性に優れるベーン溝を安価に提供することができ、ひいては、耐久性の向上したロータリ圧縮機を低廉なコストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるロータリ圧縮機の一実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】図1で矢印M方向にみた圧縮過程でのベーンの状態を示す図である。
【図3】図1に示す実施形態での上死点にある圧縮室の状態を示した図である。
【図4】図1に示す実施形態での圧縮過程と上死点とでのベーンを比較して示す図である。
【図5】本発明によるシリンダの加工方法の一実施形態を示す図である。
【図6】図5に示す実施形態でベーン溝の側面の加工の開始時と終了時とでの円盤形状砥石とベーン溝との配置関係を示す図である。
【図7】図5に示す実施形態での円盤形状砥石の傾き状態とこれによって加工されたベーンみその側面形状を示す図である。
【図8】図5に示す実施形態による加工方法で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図9】図5に示す実施形態で傾斜した円盤形状砥石によるベーン溝の加工で制約となる事項を示す図である。
【図10】本発明によるシリンダの加工方法の他の実施形態を示す図である。
【図11】図10に示す実施形態による加工方法で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図12】図10に示す実施形態によるベーン溝側面の一連の加工工程の一具体例を示す図である。
【図13】図10に示す実施形態によるベーン溝側面の一連の加工工程の他の具体例を示す図である。
【図14】図13で示す加工工程で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図15】ロータリ圧縮機の構造の一例を示す縦断面図である。
【図16】図15での分断線A−Aに沿う横断面図である。
【図17】ロータリ圧縮機の動作時でのベーン溝中のベーンの状態を示す図である。
【図18】ベーンの従来例を示す図である。
【図19】ベーン溝の加工方法の従来例を示す図である。
【図20】図19に示すブローチはの成形方法の一従来例を示す図である。
【図21】図19に示すブローチはの成形方法の他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ベーン溝
2A ベーン溝側面
2L ベーン溝の低圧室側の側面
2H ベーン溝の高圧室側面
2L1,2L2,2H1,2H2 湾曲部
3 シリンダの内周面
8 高圧室
9 低圧室
16 ベーン
16L ベーンの低圧室側の側面
16H ベーンの高圧室側の側面
17 ローラ
30 円盤形状砥石
31 砥石主軸
32 砥石台金
33 砥粒層
33A 砥粒層側面
34 砥石軸心
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、空調装置及び冷凍装置に使用されるロータリ圧縮機に係り、特に、ベーン溝部分の信頼性を高めるようにしたロータリ圧縮機とそのシリンダの加工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図15は従来のロータリ圧縮機の代表的な構造例を示す縦断面図である。
【0003】
同図において、従来のロータリ圧縮機は、ケース10内にモータ11と圧縮機構部12とが格納され、モータ11のステータ11Bとの作用によるロータ11Aの回転運動がクランクシャフト13によって伝達されて圧縮機構部12を駆動する構成をなしている。
【0004】
圧縮機構部12には、シリンダ1が設けられており、このシリンダ1の上下両側に主軸受け14と副軸受け15とがボルト20によって締結され、クランクシャフト13がこれら主軸受け14,副軸受け15によって回動可能に支持されている。モータ11によるクランクシャフト13の回転により、シリンダ1内でローラ17が旋回する。また、このシリンダ1内では、ベーン16が、バネ21により、ロータ17に押し付けられている。
【0005】
図16は図15の圧縮機構部12での分断線A−Aに沿う横断面であって、シリンダ1での圧縮室の構造を示している。
【0006】
同図において、クランクシャフト13の偏心部13Aとローラ17とは隙間嵌めで嵌合されており、ローラ17が、シリンダ内周面3との間は微小な間隙が形成されて、シリンダ内周面3に沿って移動可能なシール部を成している。また、ベーン16は、シリンダ1に設けられたベーン溝2内に隙間嵌めで嵌合されて摺動可能に設けられており、ベーン溝穴6のバネ21によってローラ17に押し付けられている。
【0007】
圧縮室は、シリンダ1の内周面3とローラ17によって形成される三日月形状の領域がベーン16により2分されて区画されることで形成される。この区画のうち、動作ガスの吸入口4に連通する側が低圧室9となり、動作ガスの吐出口5に連通する側が高圧室8となる。
【0008】
かかる構成において、モータ11の回転運動がクランクシャフト13に伝導されると、クランクシャフト13の矢印P方向の回転に伴ってローラ17がシリンダ内をその内周面3に沿って旋回する。このローラ17の旋回に伴って、ベーン16がベーン溝2内でQ方向の直線的な往復運動を行ない、高圧室8と低圧室9とを常時仕切る機能を果たしている。
【0009】
ローラ17のこの旋回運動により、吸入口4から動作ガスが吸入される。図16に示す状態では、低圧室9は拡大している過程にあり、動作ガスが吸入されている。一方、高圧室8はローラ17の旋回に伴って体積を縮小し、動作ガスを圧縮する過程にある。かかる状態から、さらに、ローラ17が矢印P方向に旋回して圧縮が完了すると、動作ガスは吐出口5からシリンダ1の外部に排気される。
【0010】
このように、動作ガスの吸入と圧縮とを並行して進行させることにより、ロータリ圧縮機は連続的に動作ガスの吸入・圧縮動作を行ない、圧縮機としての機能を果たしている。
【0011】
圧縮完了して吐出口5からシリンダ1の外部に排気された動作ガスは、図15において、ケース10の内部を通過し、吐出パイプ23を経由してこのロータリ圧縮機に連結された機構(図示せず)に供給される。例えば、冷凍機の場合、圧縮された動作ガス(冷媒)は凝縮器,膨張弁,放熱器などを経由するが、その過程で放熱と吸熱を行なって冷媒としての機能を果たし、その後、再びロータリ圧縮機の吸込口22(図16)に戻ってくるサイクルを繰り返す。
【0012】
なお、圧縮機構部12には、摺動部分が複数存在しているが、ケース10の下部に貯留した潤滑油24によってこれらの摺動部分は潤滑されている。潤滑油は、クランクシャフト13の下方内部に配置される給油ポンプ19により、クランクシャフト13の回転を動力源として、ケース10の下部から吸い上げられる。吸い上げられた潤滑油24はクランクシャフト13の内部を上昇し、その上昇過程でクランクシャフト13に設けられた横穴(図示せず)から副軸受け15やローラ17(図16),主軸受け14の内部に供給される。また、ローラ17の内部を通過した潤滑油24は、主軸受け14の端面とローラ17の端面との間や副軸受け15とローラ17の端面との間を潤滑する。さらに、図16に示すローラ17とベーン16との間やベーン溝2とベーン16との間を潤滑する。この潤滑油24は、摺動部分の摩擦抵抗の低減や摩耗の防止などを担っている。
【0013】
以上のように機能するロータリ圧縮機において、摺動部分の焼き付きや摩耗に対する耐久性は運転信頼性を確保する上で重要であるが、クランクシャフト13の給油機構から直接給油されないベーン16とベーン溝2との間の摺動部は、潤滑油確保に不利な部分であった。
【0014】
即ち、図17に示すように、ベーン16は高圧室8から圧力Pdを受け、低圧室9から圧力Psを受けており、低圧室9側の圧力Psよりも高圧室8側の圧力Pdの方が高い。また、ベーン溝2の中、例えば、ベーン溝2の高圧室側面2Hとベーン16の高圧室側面16Hとの間は油膜でシールされており、圧力Pdが伝播しにくい。このため、ベーン16はベーン溝2の中で傾斜し、ベーン溝2の一方の端部での接触部C1とベーン溝2の他方の端部での接触部C2で支持する形態となる。この状態でベーン溝2に沿ってQ方向にベーン16が摺動するが、ベーン16はこれら接触部C1,C2に線状に接触した状態にあり、局部荷重を受けることになる。この局部荷重が生じている部分では、潤滑油24の油膜厚さが薄くなる。この状態で、ロータリ圧縮機が高速回転するなどの負荷の高い運転条件となる場合には、ベーン16と接触部C1,C2とがこすり合いして接触部C1,C2の油膜破壊が生じ易くなり、ベーン16とベーン溝2の側面との間で金属同士が接触する状態になり、早期摩耗を起こす原因となる。よって、この線状の形態で接触するベーン16とベーン溝2とでは、摺動部分の耐久性が乏しくなる問題があった。
【0015】
ロータリ圧縮機のベーン部のかかる不具合点を改善させる方法が種々提案されているが、その一例として、ベーンの形状によってこの不具合を解決するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
これは、図18(a)に示すように、ベーン16の高圧室側面16Hにテーパ部16aを設け、このテーパ部16aが、図17に示すように、ベーン溝2の高圧室側面2Hを往復運動する際に動圧Paを発生させるものである。油膜が介在するベーン溝2の高圧室側面2Hに対して、テーパ部16aが移動することにより、動圧軸受けと同様の作用で動圧Paが発生する。この動圧Paがベーン16の傾斜を解消するような力となるため、ベーン16はベーン溝2の低圧室側面2Lに面接触するようになる。これにより、ベーン16とベーン溝2の側面との間の接触形態が線接触から面接触に転換し、このため、摺動部分の面積が増大して摺動部の信頼性が向上する。
【0017】
このように、この従来技術は、ベーン16にテーパ部16aを設けることにより、ベーン溝2とベーン16の摺動信頼性を向上させるものである。
【0018】
また、ベーンポンプに関するものであるが、ベーンの摩擦を防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
この技術は、図18(b)に示されるように、ポンプケーシング100の内部にロータ101が偏心回転し、このロータ101に設けられたベーン102(ここでは、1つのみを示しているが、複数個設けられている)により、ロータ101の矢印K方向の回転とともに、ベーン102により、ポンプケーシング100内の流体を矢印K方向に移動させるものである。
【0020】
ベーン102は、ロータ101に設けられているベーン溝103内を移動可能に設けられており、偏心回転により、ロータ101がポンプケーシング100の内面のカムリング100aから離れると、ベーン102がベーン溝103から出る方向にスライドし、また、ロータ101がカムリング100aに近づくと、ベーン102がベーン溝103内に押し込まれる方向にスライドする。
【0021】
かかる構成において、ベーン102の両側面102a,102bはそのスライド方向にクラウニングが施されて、全体として、このスライド方向にわん曲をなしている。このため、ロータ101が回転することによる流体の作用により、ベーン102がベーン溝103に対して傾いた状態となっても、ベーン102のわん曲した側面102bがベーン溝103の先端のエッジ103aに当接することになり、この側面102bが平面であるときよりも、これら側面102bとエッジ103bとの間の摩擦が小さくなるし、また、ベーン102のわん曲した側面102aがベーン溝103の側面103bに当接するから、これら側面102a,103bとの摩擦が小さくなる、というものである。
【0022】
ベーンとベーン溝との摩擦を低減するさらに他の例が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0023】
これは、図18(c)に示すように、ベーン201が摺動するベーン溝202のローラ200側の端部、即ち、高圧側圧縮室203a側の端部に油溜め用の高圧側C面取り204aを、低圧側圧縮室203b側の端部に油溜め用の低圧側C面取り204bを夫々設けたものであり、これら高圧側C面取り204aと低圧側C面取り204bとの面取り量の比率を所定の範囲に設定することにより、ベーン溝202への給油が効果的に行なわれるようにして、ベーン201とベン溝202の側面との摩擦を低減するものである。
【0024】
次に、シリンダ1にベーン溝2を形成する従来の加工技術の例について説明する。ベーン溝2の加工法の一従来例として、ブローチ加工が採用されたものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0025】
ブローチ加工を図19(a)によって説明すると、ブローチ刃50が固定ネジ52によってホルダ51に固定されており、加工機(図示せず)により、シリンダ1の面に対して垂直なU1方向(下方向)に直進運動する。ブローチ刃50には、U1方向とは反対方向の上方に向かって幅が拡大していくように、切れ刃53が形成されており、ベーン溝2内をU1方向に進行させるに伴って、ベーン溝2の両側面を同時に切削加工して溝幅を拡大していく。U1方向にブローチ刃50が進み、最後の切れ刃53がベーン溝2を通過すると、加工が終了する。
【0026】
ここで説明したブローチ加工は、荒加工などで既に形成されたベーン溝2にブローチ刃50を通過させるものであるが、溝が全くない部分に直接ブローチ加工でベーン溝2を加工することも、ブローチ刃51の構造を選択することにより、可能であり、一般的に行なわれてきた。
【0027】
また、ベーン溝2の別の加工法として、砥石板を用いた方法も提案されており、近年用いられるようになってきている(例えば、特許文献5参照)。
【0028】
これは、図19(b)に示すように、シリンダ1に荒加工状態の溝をブローチ加工,メタルソー加工あるいはエンドミル加工などにより形成し、荒加工で形成された溝に円盤砥石40を通過させ、この溝の側面を研削することにより、ベーン溝2を仕上げる方法である。砥石を高速で回転させる技術が進歩したことにより、近年実用化された手法である。この円盤砥石40による加工法は、研削加工であるため、切削加工であるブローチ加工に比較して、表面粗さが小さく、良好な加工面が得られる特徴がある。
【0029】
以上のブローチ加工や円盤砥石加工のいずれの加工法でも、従来の加工法では、ベーン溝2の両側面を平面に仕上げることを目的とした加工法であった。これらの技術の開発過程では、寸法や表面粗さ,並行度,平面度に関わる精度をいかに良好にするかが主眼になっていた。
【0030】
【特許文献1】
特開平7−189924号公報
【0031】
【特許文献2】
特開平6ー129365号公報
【0032】
【特許文献3】
特開平6ー81783号公報
【0033】
【特許文献4】
特公平7−24971号公報
【0034】
【特許文献5】
特開平10−109260号公報
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のロータリ圧縮機のベーン溝2とベーン16とでは、次のような問題があった。
【0036】
特許文献1に記載の図18(a)に示すベーン16を用いたロータリ圧縮機では、図17において、ベーン16に動圧Paを発生させるために、ベーン16の高圧室側面16Hにテーパ16a(図18(a))を設ける構成をなすものであるが、ベーン溝2の高圧室側面2Hに穴または溝(図示せず)が形成されていると、動圧を発生させる油膜がこの穴または溝から漏洩してしまい、適切な動圧Paを得ることが困難であった。ベーン16をローラ17に押し付けるためにバネ21を用いることが多いが、ベーン溝穴6をベーン溝2の一部に至るように形成すると、この穴6がベーン溝2にくぼみを形成することになる。従って、ベーン溝穴6が形成されたベーン溝2では、ベーン16に設けたテーパ16aによって適切な動圧Paを得ることが困難であった。このように、適切な動圧Paを得ることが困難になると、ベーン16とベーン溝2とが上記の線接触で接触することになり、これらの摺動部分での早期摩耗や異常摩耗,焼き付けといった問題が生じ、ベーン16が正常な動作を行なうことができなくなるといった信頼性の点で問題があった。
【0037】
また、上記特許文献2に記載の技術では、ベーンの側面をわん曲にするものであるが、図18(b)において、ベーン102の側面102bは、わん曲をなしているとしても、やはりベーン溝103のエッジ103aに当接するものであるから、線状に接触して摺動することになり、その摺動部で早期摩耗や異常摩耗,焼き付けが発生することになる。
【0038】
ロータリ圧縮機などにおいては、一般に、ベーンは高精度な部品であり、特許文献2では、ベーン102の製法として、研磨などの機械加工法,プレスなどの塑性加工法,バレルによる加工法,線引による方法などが挙げられているが、これら加工法による適した量産方法がない。このため、特許文献2に記載のベーン102を作成しようとすると、一品毎に手作りするような加工方法を採らざるを得ず、非常に高価なものとなってしまう。
【0039】
さらに、上記特許文献3に記載の発明では、図18(c)に示すように、C面取り204a,204bを設けたことにより、ベーン溝202への給油が円滑に行なわれるようになるが、この場合でも、特に、低圧側C面取り204bのベーン溝202側の縁部では、エッジが生ずるものであり、ベーン201が低圧側圧縮室203b側に傾いたとき、ベーン201の側面がこの低圧側C面取り204bの縁部のエッジと線状に当接して摺動することになる。このため、このエッジとベーン201の側面との間で早期摩耗や異常摩耗,焼き付けが生ずる可能性が残ることになる。
【0040】
ところで、近年、冷凍・空調用圧縮機では、オゾン層破壊を防止するフロン規制に対応するために、冷媒がHCFC(ハイドロ クロロ フルオロ カーボン)からHFC(ハイドロ フルオロ カーボン)に転換されている。従来のHCFC冷媒は分子内に塩素基を含有していたため、塩素基が極圧剤としての効果を備え、冷媒自体に潤滑性があったが、転換後のHFC冷媒には、この塩素基が存在しないため、冷媒の潤滑性が乏しいという課題がベーン溝に加わった。
【0041】
さらに、HFC冷媒は地球温暖化係数が高いため、オゾン層破壊や地球温暖化のいずれに対しても問題とならない自然冷媒である炭化水素冷媒(一例としてイソブタンなど)に転換する検討がなされている。炭化水素冷媒は、潤滑油である鉱油やアルキルベンゼン油との相溶性が高く、冷媒中に潤滑油が多量に溶解するため、潤滑油の粘度が低下して潤滑不良を起こすという問題がある。このため、炭化水素冷媒の使用も、ベーン溝2の潤滑に課題を与えることになる。
【0042】
このように、フロン規制による冷媒の転換により、摺動部の潤滑に対する課題が増大している状況にあるが、摺動部の中でも、線状の接触形態を成すベーン16とベーン溝2にとって、この潤滑の問題は重要な課題となっている。
【0043】
次に、ベーン溝の加工法についてみると、ベーン溝2の加工法として採用されてきた図19(a)に示すブローチ加工では、切れ刃53の稜線が直線であった。従って、この切れ刃53を直線的に移動させて加工して得られるベーン溝2の側面は平面である。このことを、図20を参照して詳細に説明する。
【0044】
図20は図19に示したブローチ刃50の切れ刃53を成形する方法の例を示している。
【0045】
図20(a)は切れ刃53の逃げ面53Aを円盤形状の平形砥石54で成形している状態を模式的に示している。これは、得ようとする切れ刃53の稜線に平行に平形砥石54を回転させながら移動させて、逃げ面53Aを加工する方法である。この方法では、平形砥石54の外周が残す痕跡が逃げ面53Aに形成され、平形砥石54の移動方向に平行な状痕が形成される。この状痕は、平形砥石54の移動方向のB1方向から観察すると、図20(b)に示すように、B1方向に垂直なB3方向のうねり53Aとなる。このうねり53Aにより、切れ刃53の稜線(先端)の形状が変化する。図20(b)は誇張して示しているが、うねり53Aの位置によっては、図20(b)のように、切れ刃53の稜線が非常に薄くなる。切れ刃53は、工具として使用する際には、B3方向に移動しながら切削を行なうので、切れ刃53の稜線部分が薄くなることは、切れ刃53の強度が低下することを意味しており、切削中に切れ刃53が欠損し易くなる。また、その逆に、うねり53Aの位置によって切れ刃53の稜線が厚くなると、これは工具の逃げ角が鈍角に変化することになり、切削抵抗が増大して正常な加工が困難となる。
【0046】
以上により、図20(a)に示すような平形砥石54によるブローチ刃50の成形は、一般には、行われていない。
【0047】
ブローチ刃50の成形は、通例、図21(a)に示すカップ形砥石55を用いる方法によって行なわれている。カップ形砥石55の円環形状の端面を切れ刃53の逃げ面53Aに当接し、この逃げ面53Aに平行なV2方向に移動させて成形を行なう。
【0048】
この方法では、カップ形砥石55によって形成される状痕53Cは、概略的に図示するように、概略円弧形状を呈し、切れ刃53の稜線に向かう方向に形成される。この方法で形成された切れ刃53の稜線近傍A1では、図21(b)に示すように、切れ刃53には切れ刃53の稜線に垂直なB3方向にうねりがなく、切れ刃53の稜線部分の状態を安定させることが可能である。
【0049】
ここで、切れ刃53を曲面に成形しようとする場合には、図20(a)に示す方法を採用して、平形砥石54の軌跡を所望の輪郭に沿って運動させることにより、比較的容易に切れ刃53の稜線を曲線状にすることができるが、この方法は、先に述べた理由から、採用が困難である。
【0050】
一方、通例用いられる図21(a)に示した方法では、接触面が平面であるカップ形砥石55の端面を用いた加工であるため、切れ刃53の稜線を窪んだ形状に成形することが困難である。このことから、図21(a)に示す成形方法を採用するベーン溝加工用のブローチ刃50の製作にあたっては、切れ刃53の稜線を曲線に成形することは実用上採用されることがなく、直線状にする方法がとられてきた。これらの技術的な背景から、直線状の切れ刃53によって加工されたベーン溝の側面は、平面とならざるを得なかった。
【0051】
また、図19(b)に示したように、近年実用化された円盤砥石40による加工においても、回転する円盤砥石40の側面を直線状に移動させて加工する方法であるため、得られるベーン溝2の側面は平面であった。
【0052】
このことからして、これらのブローチ加工や円盤砥石加工によって得られた平面状のベーン溝2の側面では、ベーン溝2内で発生するベーン16の傾斜によるベーン溝2とベーン16の線接触を回避することが困難であった。
【0053】
以上のように、従来のベーン溝加工法によると、ベーン溝2の側面が平面にならざるを得ない状況の下では、ベーン溝2の側面とベーン16との間に局部荷重が生じる線状の接触を回避することが不可能であり、このために、より高い負荷が生じる使用条件や潤滑性に劣る冷媒が使用される条件でロータリ圧縮機の運転を試みると、ベーン溝2の早期摩耗や異常摩耗、ベーン溝2とベーン16との焼き付けなどの摺動部の問題が発生していた。
【0054】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、ベーンとベーン溝との摩擦を効果的に低減し、ベーンの信頼性を高めることができるようにしたロータリ圧縮機とそのシリンダの加工法を提供することにある。
【0055】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるロータリ圧縮機は、シリンダに形成されているベーン溝の少なくとも一方の側面が、シリンダの外周面側あるいは内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲形状をなしているものである。
【0056】
また、ベーン溝でのシリンダの高圧室側の側面は、シリンダの外周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、シリンダの内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状をなし、ベーン溝でのシリンダの低圧室側の側面は、シリンダの内周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、シリンダの外周面側に向かうに従ってベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状をなすものである。
【0057】
また、ベーン溝の湾曲形状をなす部分は、ベーンがベーン溝内で傾斜してベーン溝の側面に当接した状態で、ベーンとベーン溝の側面との間に油膜によるシールを形成し、かつベーンが面接触する長さ,幅に設定されているものである。
【0058】
上記目的を達成するために、本発明によるロータリ圧縮機のシリンダ加工法は、外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられて回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、ベーン溝の側面加工のための第1の平面に対して、回転軸心に直交し砥粒層の回転軌跡を含む第2の平面が所定の角度をなすように、円盤形状砥石を該進行方向に対して傾斜させながら、円盤形状砥石を該進行方向に移動させてベーン溝の側面を加工するものである。
【0059】
また、外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられて回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、ベーン溝の側面加工のための円盤形状砥石の進行方向に平行な平面に対して砥粒層の回転軌跡を含む平面が傾斜するように、円盤形状砥石を傾斜させ、砥粒層の進行方向前半分の部分でベーン溝を加工し、ベーン溝の側面の断面形状を凸形状に加工するものである。
【0060】
また、円盤形状砥石の進行方向前半側がベーン溝の中心線に近づくように、円盤形状砥石を傾斜させてベーン溝の側面を加工するものである。
【0061】
また、円盤形状砥石は、傾斜状態を固定して、ベーン溝の一方の側面でのシリンダの内周面側と他方の側面でのシリンダの外周面側とを加工するものである。
【0062】
【発明実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
【0063】
図1は本発明によるロータリ圧縮機の一実施形態の要部、即ち、圧縮機構部におけるベーン溝の近傍を示す部分展開斜視図であって、先の図面と同様、1はシリンダ、2はベーン溝、2Hはベーン溝2の高圧側面、2Lはベーン溝2の低圧室側の側面、3はシリンダ1の内周面、8は高圧室、9は低圧室、12は圧縮機構部、16はベーン、17はローラである。この実施形態も、その全体構成は図15に示す構成と同様である。
【0064】
図1において、シリンダ1に設けられたベーン溝2には、ベーン16が摺動可能に嵌合されており、シリンダ1内でのローラ17の偏心回転に伴って、ベーン16はベーン溝2内を摺動する。ベーン16の摺動方向は、ベーン溝2からシリンダ1の内周面3(即ち、ローラ17)に向かう方向をH方向、その反対にシリンダ1の外周面に向かう方向をG方向としている。
【0065】
ベーン16は、シリンダ1とローラ17とで形成される動作ガスの圧縮室を高圧室8と低圧室9に仕切っており、高圧室8側の動作ガス圧力Pdの方が低圧室9側の圧力Psよりも高い。このため、ベーン16は、圧力Pdをより大きく受けた状態で、ベーン溝2に沿ってG,H方向に摺動する。そして、ベーン16は、高圧室8内でより大きい圧力Pdを受けるため、ベーン溝2内で低圧室9側に傾斜した状態になる。この傾斜した状態で摺動するベーン16はベーン溝2の側面2H,2Lに接触するが、この接触が線状の接触であることを回避して接触面積を増大するように、ベーン溝2の側面2H,2Lは湾曲した形状をなしている。ここでは、G方向もしくはH方向に向かうに従って、ベーン溝2の側面2H,2Lがベーン溝2の中心線から離れるように湾曲している。なお、ここでは、この湾曲の形状を誇張して表わしている。
【0066】
図2(a),(b)は図1を矢印M方向にみたときのベーン16の状態を示す図であって、2Lはベーン溝2の低圧室側の側面、2L1はこの低圧室側の側面2Lの湾曲部、2Hはベーン溝2の高圧室側の側面、2H2はこの高圧室側の側面2Hの湾曲部、16Lはベーン16の低圧室側の側面、16Hはベーン16の高圧室側側面であり、図1に対応する部分には同一符号をつけている。なお、図2(a),(b)において、図面上右側がシリンダ1の内周面側(即ち、図1でのローラ17側)となる。
【0067】
図2(a)において、幅W1のベーン溝2にこの幅W1より狭い幅W2のベーン16が嵌合されており、幅δ1の間隙が両者の間に形成されている。ベーン溝2の低圧室側の側面2Lには、そのシリンダ1の内周面側に、この内周面方向であるH方向に向かうに従ってベーン溝2の中心線(図示せず)から離れていくように、湾曲部2L1が形成されており、また、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hには、そのシリンダ1の外周面側に、この外周面方向であるG方向に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れていくように、湾曲部2H2が形成されている。
【0068】
ベーン16に高圧室8(図1)側の動作ガス圧力Pdと低圧室9(図1)側の動作ガス圧力Psとが作用すると、Pd>Psであるから、図2(b)のように、ベーン溝2内でベーン16が低圧室9側に傾斜する。これにより、ベーン16でのシリンダ1の内周面側(以下、ベーン16の先端部という)では、その低圧室側の側面16Lはベーン溝2の低圧室側の側面2Lに設けられた湾曲部2L1によって支持され、ベーン16のそれとは反対側(以下、ベーン16の後端部という)では、その高圧室側の側面16Hがベーン溝2の高圧室側の側面2Hに設けられた湾曲部2H2によって支持される。これら湾曲部2L1,2H2には、油膜が存在するため、湾曲形状と平面の接触ではあるが、線状の接触にはならずに、面状の接触でベーン溝2とベーン16との間の摺動面が形成されることになる。
【0069】
このようにして、これら湾曲部2L1,2H2の存在により、ベーン16とベーン溝2との線状の接触を回避でき、これらの摺動部分の信頼性が向上することになる。
【0070】
なお、図2(a)(b)においては、湾曲部2L1,2H2の湾曲の程度は誇張して示している。
【0071】
ここで、図2(a)におけるベーン溝2の湾曲部2L1,2H2の長さRと幅Sとの大小による効果について説明する。
【0072】
ベーン溝2の外周側(即ち、図面上左側)では、ロータリ圧縮機のケース10(図15)内に充満した動作ガスから圧力Pvを受けている。この圧力Pvの動作ガスは、シリンダ1とローラ17(図1)との間の圧縮室内で圧縮が完了してケース10内に排気され、次に、このロータリ圧縮機に接続された機器へ供給される前の過程にあり、圧力Pd,Psよりも圧力が高い場合がある。従って、圧力Pvの動作ガスは、ベーン溝2を経由して圧縮室内に漏出しようとするが、ベーン溝2とベーン16との間に油膜が介在していることにより、この圧力Pvの動作ガスが圧縮室内に漏洩するのを防止している。この漏出が多大であるときには、一旦圧縮が完了した動作ガスが再度圧縮室に貫流して無益に再膨張するため、ロータリ圧縮機の容積効率の低下につながり、最終的には、消費エネルギーの損失となる。従って、ベーン溝2の油膜によるシール機能は重要な役割を担っている。
【0073】
かかる制約のもとに、図2(a)に示す湾曲部2L1,2H2の長さRと幅Sとが大きいと、図2(b)に示すベーン溝2の低圧室側の側面2Lとベーン16の低圧室側の側面16Lとの間の間隙δ2が広くなるが、このことは油膜によるシールの破壊を容易にすることにつながる。一方で、これらの長さRと幅Sとが小さいときには、摺動部の接触面積が縮小し、摺動部の信頼性を損ねる線状の接触状態に近くなる。
【0074】
これらの相反する条件を両立させるように、これら長さRと幅Sとを設定することが必要となり、一例として、ベーン溝2の幅W1が4mm程度、長さLが15mm程度の空調用ロータリ圧縮機において、間隙δ1が0.01mm程度の場合には、L/Rが1/3程度であって、幅Sは数μm程度が好ましい。
【0075】
また、ベーン溝2の側面2H,2Lの湾曲部2H2,2L1とそれ以外の直線部との境界点Dでは、湾曲部2H2,2L1の接線が直線部と一致して滑らかに接続されるように、湾曲部2H2,2L1の形状を設定する。ベーン溝2の側面2H,2Lが、この滑らかに接続する条件を満たし、かつベーン16側に凸状をなす形状であれば、湾曲部2H2,2L1の形状は円弧や楕円の部分弧であってもよいし、また、他の関数で規定される曲線などを選定することも可能である。
【0076】
なお、ロータリ圧縮機には、縦形,横形などの使用時の設置形態によって潤滑油を摺動部に供給する手法が異なる。このため、ベーン溝2の内周側と外周側とで潤滑状態の良否に差がある場合がある。このような場合には、この湾曲部2H2,2L1の設定は、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hと低圧室側の側面2Lとのいずれか一方で行なう構成としてもよく、同様の効果が得られるものである。
【0077】
以上は、ベーン16が高圧室側からの動作ガスの圧力Pdの方向に力を受けてベーン溝2中で傾斜した場合のベーン溝2とベーン16とが線状に接触するのを防止するものであった。ロータリ圧縮機の圧縮過程の大半では、ベーン16がかかる圧力Pdの方向に力を受けるため、以上の構成が圧縮過程にある状態で有効である。
【0078】
ところで、ロータリ圧縮機では、ローラ17が動作ガスを圧縮過程から上死点に達した後、一時的に圧縮室が高圧室8及び低圧室9の2室構成から1室構成に切り替わる場合があり、図3はこの状態を示している。
【0079】
図3に示す状態は、クランクシャフト13の回転によってローラ17が旋回し、ローラ17がベーン16をベーン溝2内に最も押し込んだ状態を示している。この状態では、ローラ17とシリンダ1の内周面3によって形成される圧縮室は低圧室9のみとなる。このときの低圧室9は吸入口4に連通しており、吐出口5がバルブ(図示せず)によって閉塞されるために、低圧室9の全体が吸入口と同圧となる。このようになる直前までベーン16は高圧室8側から一方向に力を受けていたが、この上死点で圧縮室全体が低圧室9となるため、ベーン16は高圧室8側から受ける圧力から開放される。このとき、ベーン16はベーン溝2内で傾斜していた状態から開放されるが、この反動でこれまでに傾斜していた方向とは反対の方向にベーン16が振れる。ベーン16がこのように振られると、ベーン溝2は、その側面のここまでとは異なる部分でベーン16を支持することになる。
【0080】
図4に以上の過程を示すものであって、これも図1で矢印M方向にみた図である。
【0081】
図4(a)はロータリ圧縮機が上記の圧縮過程にある状態であり、ベーン16は高圧室8側からの動作ガスの圧力Pdによって傾斜させられている。かかる圧力Pdで押し付けた状態から、上記の上死点に達すると、ベーン16は傾斜方向が反対となり、一時的に図4(b)に示す状態になる。このとき、ベーン16を支持するベーン溝2の側面(以下、ベーン溝側面という)2Aは、図4(a)に示す湾曲部2L1,2H2から図4(b)に示すように、側面2L,2Hのこれら湾曲部2L1,2H2とは異なる部分である。この動作はきわめて短時間の間に生じ、このため、ベーン16とベーン溝2の側面2L、2Hとの接触は衝撃的に発生する。
【0082】
そこで、図4に示すように、ベーン溝2の側面2L,2H夫々の湾曲部2L1,2H2とは反対側の部分にも、同様の湾曲部L2,2H1を設定して、ベーン16とベーン溝2との間で面状の接触がなされるようにする。これにより、ベーン16とベーン溝2との間の接触部分の信頼性がさらに向上することになる。
【0083】
このベーン16の傾斜方向の転換は、ロータリ圧縮機の全圧縮過程の中では、一瞬の現象であるが、図2に示すベーン溝側面2Aへの湾曲面の設定にかかる湾曲部2L2,2H1を加えることにより、ベーン16とベーン溝2との摺動部の信頼性がさらに向上することになる。なお、ここでも、ベーン溝側面2Aの湾曲の程度は誇張して示している。
【0084】
図5は以上のベーン溝2を成形する本発明によるシリンダの加工方法の一実施形態を示す図であって、30は円盤形状砥石、31は砥石主軸、32は台金、33は砥粒層、34は砥石軸心であり、図1に対応する部分には同一符号を付けている。
【0085】
図5(a)は回転する円盤形状砥石30がシリンダ1の加工前のベーン溝2の直前の位置に配置された状態を示す。円盤形状砥石30は、砥石主軸31に円盤状の台金32が支持され、その台金32の外周端面と両側面の外周部(以下、これらの部分を台金32の先端部という)に砥粒層33が形成されており、砥石主軸31を中心に台金32が矢印Tの方向に回転することによって台金32の先端部に形成された砥粒層33が回転する。そして、この円盤形状砥石30を、このように回転した状態でベーン溝2へのα方向に進行させることにより、ベーン溝2の加工が可能となる。
【0086】
台金32の外周端面側での砥粒層33の幅W3は、加工によって得ようとするベーン溝2の幅W4より狭く設定されている。円盤形状砥石30が進行するα方向と砥石主軸31の軸心、即ち、砥石軸心34とを含んだ平面PF上で、砥粒層33がT方向に回転してできる円軌道を含む面とα方向との間で角度βを設定している。即ち、円盤形状砥石30は、そのα方向に対して角度βだけ向きがずれた状態で、そのα方向に進行する。ここで、角度βは誇張して示してある。
【0087】
図5(b)は図5(a)で平面PFに対して直交するN方向から見た平面である。
【0088】
図5(b)において、砥粒層33が回転してできる円軌道は、円盤形状砥石30のα方向に対して角度βだけ傾いている。この角度βは、回転した状態での円盤形状砥石30の砥石軸心34よりもα方向側にある砥粒層33(即ち、円盤形状砥石30の前半分)を、ベーン溝側面2Aから離れる方向に傾斜させる角度である(これは、また、ベーン溝2の中心線から見ると、円盤形状砥石30の前半分がベーン溝2の中心線に近づく方向に傾斜させることを意味するものであるが、以下では、上記のように、ベーン溝側面2A側から見た表現とする)。ここでは、この逆の傾き、即ち、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33がベーン溝側面2Aに近づくように、傾斜円盤形状砥石30を傾けることはしない。円盤形状砥石30をこのように配置してα方向に進行させることにより、ベーン溝側面2Aを、図2で示したように、加工できる。
【0089】
ここでは、シリンダ1には、予め荒加工によってベーン溝2が形成されており、この荒加工されたベーン溝2を円盤形状砥石30によって拡幅し、ベーン溝2を形成するものであるが、円盤形状砥石30の構成によっては、ベーン溝2が荒加工されていないシリンダ1に直接、円盤形状砥石30により、ベーン溝2を形成することも可能である。
【0090】
ここで、図5(b)の状態から円盤形状砥石30を進行方向αに進行させると、図5(c)に示す状態となる。この図5(c)に示す状態では、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33がベーン溝2を通過しているが、この状態で円盤形状砥石30を加工から離脱させる。この円盤形状砥石30を離脱させる位置は、砥粒層33での前半分とは反対側の部分、即ち、砥粒層33の後ろ半分がベーン溝2に接触を開始する前にある。
【0091】
これらのことを図6を用いて説明する。なお、図6は図5(b),(c)で砥石軸芯34に平行な矢印J方向から見た図である。
【0092】
図6(a)は図5(b)に示す状態を矢印J方向から見た状態を示すものであって、円盤形状砥石30がベーン溝2を加工する直前の状態を示している。この状態から円盤形状砥石30がα方向に進行して、ベーン溝側面2Aが加工される。
【0093】
図6(b)は図5(c)に示す状態を矢印J方向から見た状態を示すものであって、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33が加工を終了した状態にある。この状態から円盤形状砥石30をα方向にさらに進めると、砥粒層33の後ろ半分がベーン溝2側面2Aに接触を始めてその加工を行なうことになるが、この実施形態では、図6(b)に示す状態で円盤形状砥石30を加工から離脱させる。台金32は砥粒層33よりも幅が狭く、ベーン溝2の加工された側面2Aから離れているため、図6(b)に示す状態になれば、特段の処置を施さなくても、砥粒層33とベーン溝側面2Aとの接触は中断して加工は中断されている。従って、図6(b)に示す状態から、円盤形状砥石30がベーン溝側面2Aに接触しないように、円盤形状砥石30をベーン溝側面2Aから離れるように移動させた後、この円盤形状砥石30をさらにα方向に進行させるか、あるいはα方向と逆方向、即ち、K方向に引き戻させることにより、容易に加工状態から円盤形状砥石30を離脱させることができる。
【0094】
ここで、円盤形状砥石30がα方向に進行する過程で、図6(b)に示すように、円盤形状砥石30によるベーン溝側面2Aの加工を一旦中断できるようにしている。即ち、砥石軸心34からベーン溝側面2Aの最外周部までの距離L2は、砥粒層33の回転軌道の内側の半径r2より小さく、なおかつ、長さL,厚さT1のベーン溝側面2Aが一旦砥粒層33から離れるように、設定される。また、ベーン溝側面2Aの長さLは、砥石主軸31に接触しないように、設定されている。さらに、砥粒層33の半径r1は、ベーン溝側面2Aの外周側に存在するシリンダ1の部材に接触せず、さらに、シリンダ1の内周面3(図1)に接触しないように、設定されている。このような設定により、円盤形状砥石30がα方向に進行する過程で、ベーン溝側面2Aが台金32の範疇に収まり、加工が中断する状態を作り出すことができる。
【0095】
以上の方法で形成されるベーン溝側面2Aの形状について、以下、図7を用いて説明する。
【0096】
図7(a)は図6(a)で円盤形状砥石30を矢印Kの方向から見た斜視図である。
【0097】
図7(a)において、紙面に垂直な方向を、円盤形状砥石30が進行するα方向であり、円盤形状砥石30はこの方向に対して角度βだけずれた向きとなっているので、円盤形状砥石30が斜めから見たように示されている。ここでは、加工時には、円盤形状砥石30が紙面より手前側に進行することになる。ベーン溝側面2A(図示せず)は図示する円盤形状砥石30の左側にあることになり、従って、円盤形状砥石30の砥石軸心34より手前側の円盤形状砥石30の前半分がベーン溝側面2Aに対して矢印N方向に開くように、砥石軸心34がα方向に垂直な方法に対して傾斜しており、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33で加工が行なわれる。ここでも、砥石軸心34が傾斜は誇張して示している。
【0098】
かかる状態で加工対象であるベーン溝側面2Aに転写されるのは、ベーン溝側面2Aの存在範囲Lにある砥粒層33の軌跡33Aである。この形状は、円を傾斜させて投影した形状であり、楕円の部分弧となる。
【0099】
これを図7(b)で説明するが、説明を容易にするために、円盤形状砥石30の前半分のうちの下半分の部分での砥粒層33について説明する。
【0100】
砥粒層33の回転軌跡の中心0(図7(a)での砥石軸心34が通る点)はα方向に平行な平面PG上にあり、この中心点0からα方向に対して垂直方向の砥粒層33の点S2もこの平面PG上にある。また、中心点0からほぼα方向にある砥粒層33の点S1は、中心点0から見てα方向から角度βだけずれた方向にあり、砥粒層33の回転軌跡の半径をrとすると、平面PGからr・sinβだけ離れた位置である。この砥粒層33の回転軌跡を平面PGに垂直な平面PHに投影すると、軌跡KTが得られる(なお、この回転軌跡33上の点S1の平面PHへの投写点が点S1’であり、以下、点SX,S2の平面PHへの投写点が夫々点SX’,S2’である)。計算は省略するが、この軌跡KTが楕円弧をなすものである。この平面PHをベーン溝2の端面とすると、ベーン溝2では、回転する砥粒層33がα方向に移動することにより、側面が加工されて、表面がこの軌跡KTがα方向に延長されてなるベーン溝側面2Aが得られることになる。なお、弧の実施形態では、図6で説明したように、図7(b)に示す1/4円部で示す砥粒層33の一部がベーン溝側面2Aの加工に使用される。
【0101】
図7(c)は図7(b)で説明したようにして図7(a)に示す砥粒層33の軌跡33Aの転写によって形成されるベーン溝側面2Aの形状を示すものである。G方向がシリンダ1の外周側、H方向が内周側になるが、この実施形態の加工法では、シリンダ1の外周側であるG方向に向かうに従ってベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線(図示せず)から離れていくように、ベーン溝側面2Aが湾曲した形状に加工されることになる。従って、この加工法では、図2に示すベーン溝2の高圧室側の側面2Hが湾曲部2H2を有するように加工されたことになる。なお、ここでも、ベーン溝側面2Aの湾曲した形状は誇張して示している。
【0102】
次に、以上に述べた方法で、図7(c)のように、シリンダ1の外周側になるにつれてベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線から離れるような湾曲したベーン溝を得た場合の精度の例について図8を用いて説明する。
【0103】
図8は、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝2の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.02degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの精度を示すグラフ図であり、横軸はベーン溝側面2Aでのシリンダ1の内周面3から外周方向への距離Lを示し、縦軸はベーン溝側面2Aの基準平面からの距離δを示している。この基準平面とは、円盤形状砥石30を傾斜させずに加工した場合、即ち、図5に示す傾斜角度βがゼロの場合の平面をいい、最外周部をゼロとした。
【0104】
同図において、ハッチングして示した部分がシリンダ1に属する側であり、その反対側がベーン溝2に面する側である。ここでは、上記の条件で加工した場合の精度を計算によって算出して表示したものである。
【0105】
図示するように、ベーン溝側面2Aは、ベーン溝2でのシリンダ1の内周面3からの距離Lが増大するに従って、基準平面からの距離δが減少していく形状となっている。これは、外周に向かうに従ってベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心から離れていく形状を示している。また、図示する曲線は楕円の一部分である弧となっている。従って、上記の加工例により、シリンダ1の外周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れていくように湾曲した形状のベーン溝側面2Aを得ることが可能である。
【0106】
以上の加工法により、図2において、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lで、シリンダ1の外周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるように湾曲したベーン溝側面2Aとすることが可能であるが、図2におけるもう一方の側面、即ち、低圧室側の側面2Lで、シリンダ1の内周に向かうにつれてベーン溝の中心線から離れるように湾曲したベーン溝側面2Aを形成することは、上記の加工法では不可能である。その理由を図9で説明する。
【0107】
図9はベーン溝側面2Aをシリンダの内周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した面に加工すべく、円盤形状砥石30を配置した例を示すものである。円盤形状砥石30は、その前半分が加工しようとするベーン溝側面2Aから離れるように、円盤形状砥石30が進行するα方向から角度βだけ傾斜した状態で配置されている。この状態で円盤形状砥石30をα方向に進行させると、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hで所望の形状を得ることができる。
【0108】
しかし、ベーン溝2の外周側には、シリンダ1の部材が存在し、ベーン溝2を挟んでシリンダ1の両側を結合しているのが通例である。このため、図9に示すように円盤形状砥石30を配置したのでは、円盤形状砥石30のα方向に除去してはならない部分が存在するため、円盤形状砥石30がベーン溝を通過することができずに、高圧室側の側面2Hをシリンダの内周に向かうにつれてベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した面に加工することができない。なお、ベーン溝2がシリンダ1の外周側でも貫通していて、円盤形状砥石30が通過できる設定のシリンダ1である場合には、上記のように円盤形状砥石30を配置しても、側面が所望の形状のベーン溝を得ることが可能である。しかし、このような形状のシリンダ1は実用化されておらず、また、シリンダ1の剛性低下をまねくため、採用するメリットに乏しい。
【0109】
図10は図2に示すようなシリンダの内周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した形状のベーン溝側面2Aを成形するできるようにした本発明によるシリンダの加工法の他の実施形態を示す図である。
【0110】
図10(a)はこの場合の円盤形状砥石30の配置状態を示すものであって、先に図7に示した配置状態にして、さらに、円盤形状砥石30をα方向の軸回りの角度κを加味している。
【0111】
α,β,κの関係は図10(b)で示す通りである。即ち、いま、平面P1を図5(a)に示す平面PFに垂直で、かつα方向に平行な平面とする。また、軸Q1を、この平面P1上にあって、かつ平面PF(図5(a))に垂直な中心軸とする。この平面P1をこの中心軸Q1を中心として角度βだけ回動して得られる平面P2が、図5に示した実施形態での円盤形状砥石30の砥粒層33の回転軌跡を含む平面である。ここで、軸Q2を平面P2上の水平な中心軸とする。この平面P2を水平な中心軸Q2を中心に角度κだけ回動させると、平面P3が得られるが、図10に示す実施形態では、円盤形状砥石30の砥粒層33の回転軌跡がこの平面P3上にあるようにしているものである。
【0112】
この角度κの回動により、図10(a)において、円盤形状砥石30の砥石軸心34よりのF方向にある部分(即ち、円盤形状砥石30の上半分)が加工するベーン溝側面2Aにより近接する。このように、角度κだけ回動させた状態で、円盤形状砥石30をα方向に進行させると、ベーン溝側面2Aに転写される形状は円盤形状砥石30のL1で示す範囲33Bの形状が転写される。この転写形状は楕円の部分弧を傾斜させた形状になるが、角度κの設定に応じてベーン溝2をシリンダ1の内周に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように、湾曲の度合いを変えることが可能となる。
【0113】
図10(b)はこのように設定加工されたベーン溝側面2Aの形状の一例を示すものであり、シリンダ1の内周面の方向(H方向)に向かうにつれて、ベーン溝側面2Aがベーン溝2の中心線(図示せず)から離れるような形状にベーン溝側面2Aが形成される。なお、ここでも、角度κの設定状態とベーン溝側面2Aの湾曲の程度は誇張して示している。
【0114】
図11は以上のように円盤形状砥石30に傾斜角κを加えて加工した場合の精度の一具体例を示すグラフ図である。ここでは、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝2の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.05deg、α方向の軸回りの傾斜角0.05degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの形状を示している。横軸は図8に示すグラフの場合と同様である。また、縦軸も図8に示すグラフの場合とほぼ同様であり、ベーン溝側面2Aの基準平面からの距離を示している。ここで、図11での基準平面とは、円盤形状砥石30を傾斜させずに加工した場合、即ち、角度β,κがともにゼロの場合の平面を用い、最内周部をゼロとした。
【0115】
このグラフに示すように、ベーン溝側面2AでのL=8付近が最も突出しており、ここからシリンダの外周と内周とに向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるような湾曲した形状の側面が得られることになる。この湾曲の程度と最も突出する位置とは、円盤形状砥石30の直径Dと角度β,κとを変化させることによって調整することができる。
【0116】
以上では、ベーン溝2の側面2H,2Lで夫々片側に(即ち、図2に示すように、低圧室側の側面2Lでは、シリンダ1の内周面側に、高圧室側の側面2Hでは、外周面側に)湾曲部2L1,2H2を設けるようにしたが、側面2H,2Lでともにシリンダ1の内周側,外周側に夫々湾曲部を設けるようにすることもでは、例えば、ベーン溝2内部の中心点を中心に線対称となることを考慮に入れて条件を設定することにより、同様の加工が可能である。従って、高圧室側の側面2Hと低圧室側の側面2Lの夫々に必要な形状を、上記の角度β,κを調整して得ることが可能である。
【0117】
次に、上記の加工法の具体的な手順の一例を図12を参照して説明する。ここで、図12に示す手順は、図5(b),(c)の場合と同じ方向からベーン溝2と円盤形状砥石30を見たものである。
【0118】
まず、図12(a)に示すように、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lを加工するように、円盤形状砥石30に対する傾斜角β,κを設定し、この円盤形状砥石30をα1方向(図5でのα方向と同じ)に進行させる。ここで、角度κは図示していないが、円盤形状砥石30の紙面よりも手前に存在する側が低圧室側の側面2Lに近づく向きに設定されている。図12(a)の状態から円盤形状砥石30がα1方向に進行して、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33による加工が終了すると、図12(b)に示す状態になる。次に、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き出すために、図12(b)において、α1方向に直交する矢印λ1の方向に移動させ、図12(c)に示す状態にする。そして、かかる状態でα1方向とは反対方向のα2方向に円盤形状砥石30を移動させて、図12(d)に示すように、ベーン溝2内から円盤形状砥石30を引き出す。
【0119】
ここで、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを加工するために、円盤形状砥石30を、図12(d)に示す状態で、λ1方向に移動させ、これとともに、図12(a)の角度βとは反対方向に角度β2だけ円盤形状砥石30を旋回させて、円盤形状砥石30を図12(a)の角度βとは反対方向に角度βだけ傾いた状態とする。さらに、図示しないが、角度κも同様の切り替えを行なう。図12(e)はかかる角度β,κの切り替えを行なった円盤形状砥石30の状態を示す。
【0120】
しかる後、円盤形状砥石30をα1方向に進行させる。これにより、高圧室側の側面2Hが加工されて図12(f)に示す状態になると、円盤形状砥石30の砥石軸心34より進行方向側、即ち、円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33による加工が完了する。そして、矢印λ2方向に円盤形状砥石30を移動させて、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き抜ける図12(g)に示す状態にすると、図示する矢印α2方向に円盤形状砥石30を移動させて円盤形状砥石30をベーン溝2内から引き抜き、図12(h)に示す状態とする。そして、円盤形状砥石30の角度β,κと位置を図12(a)に示す状態に戻して、一連の加工動作が完了する。
【0121】
次に、上記の湾曲した形状のベ−ン溝側面2Aをさらに簡易に得ることができる手法について説明する。
【0122】
上記の加工工程の例では、ベーン溝2の一方の側面を加工してから反対側の側面を加工を開始するまでの間に、円盤形状砥石30に設定した角度β,κを変更(切り替え)する必要がある。これら角度の変更は自動的に制御した場合でも、シリンダ1個を加工するための時間にこの角度変更を行なっている間の時間も含まれることになる。角度変更を行なう時間は、切り屑を出す実加工時間ではなく、いわゆる無駄時間となる。
【0123】
そこで、かかる角度変更を行なわずに、ベーン溝の両側面を加工するようにすることが必要となるが、このようにして、湾曲形状の面をさらに効率的に得る手法を図13を用いて説明する。図12と同一方向には同一符号を付している。
【0124】
図13(a)は、円盤形状砥石30がベーン溝2の低圧室側の側面2Lを加工する直前の状態を示すものであり、円盤形状砥石30には、α1方向に対して傾斜角度βが設定されているし、図示しないが、図12の場合と同様に、傾き角度κも設定している。
【0125】
図13(a)示す状態から円盤形状砥石30をα1方向に進行させ、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33での加工が完了すると、図13(b)に示す状態になる。この状態で、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lの加工が完了している。次いで、円盤形状砥石30を、ベーン溝2の側面2L,2Hに接触させずに、ベーン溝2内から引き出すために、矢印λ1方向に移動させて図13(c)に示す状態にし、この状態から、再び矢印α1方向に円盤形状砥石30を移動させて、ベーン溝2内から円盤形状砥石30を引き出す。これで図13(d)に示す状態となる。
【0126】
次に、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを加工するために、図13(d)に示す状態から矢印λ1方向へ円盤形状砥石30を移動させる。これにより、図13(e)に示す状態となる。そして、円盤形状砥石30での角度β,κの設定は変更せずに、矢印α2方向に円盤形状砥石30を後退させる。角度βを変更しなくても、この配置上では、円盤形状砥石30が砥石軸心34よりα2方向にある部分(この場合の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33の部分)が、高圧室側の側面2Hから離れるような状態となっている。2α方向に円盤形状砥石30が進むと、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hが加工され、図13(f)に示すように、円盤形状砥石30の円盤形状砥石30の前半分の砥粒層33の部分による加工が完了する。そして、矢印λ2方向に円盤形状砥石30を移動させて、円盤形状砥石30がベーン溝2の側面2L,2Hに接触せずに引き抜ける図13(g)に示す状態にし、次いで、矢印α2方向に円盤形状砥石30を後退させることにより、図13(h)に示すように、円盤形状砥石30をベーン溝2の中から引き出して最初の状態に戻る。
【0127】
円盤形状砥石30のこれら一連の動作は、円盤形状砥石30の前進と後退及びその間の直交方向への横移動だけで構成されており、かかる加工過程で角度β,κの変更・調整が必要ないため、一旦角度β,κを決めて固定してしまえば、その後では、単純な直進移動だけで加工が完了する。また、一往復で加工を終了するため、ベーン溝2の側面2L,2H毎に往復動作を繰り返す必要がなく、短時間で面加工ができる。
【0128】
図14は以上の図13に示す一連の動作による加工の結果得られたベーン溝側面2Aの形状の具体例を示すグラフ図であって、円盤形状砥石30の直径Dが50mm、ベーン溝の長さL1が12.3mm、砥石軸心34からベーン溝2の最外周部までの距離L2が22.3mmで、円盤形状砥石30の傾斜角βが0.015deg、円盤形状砥石30の進行方向の軸回りの傾斜角κが0.015degである条件で加工した場合のベーン溝側面2Aの形状を示すものである。
【0129】
図14(a)はベーン溝2の高圧室側の側面2Hの形状を示し、図14(b)は低圧室側の側面2Lの形状を示している。これらグラフの横軸及び縦軸は図11に用いた設定と同様である。円盤形状砥石30に与える角度κは、ベーン溝2の低圧室側の側面2Lがシリンダ1の内周面側でより湾曲するように設定している。加工中に円盤形状砥石30に設定した角度は変更していない。
【0130】
この結果、得られたベーン溝2の高圧室側の側面2Hは、図14(a)に示すように、シリンダの外周面に向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した面形状となり、中央付近がやや突出した形状となっている。低圧室側の側面2Lは、図14(b)に示すように、中央付近からシリンダ1の内周面と外周面とに向かうに従ってベーン溝2の中心線から離れるように湾曲した面形状となり、中央付近が突出した形状となっている。
【0131】
ベーン16は図14(a),(b)に示す形状の側面2L,2Hの間に形成される溝内に挿入され、シリンダ1の内周面側が低圧室側の側面2Lに押し付けられるように傾斜する。このベ−ン16を適切に支持するように、高圧室側の側面2Hは、シリンダ1の内周面に向かうに従って低圧室側の側面2Lに近づくように傾斜させている。
【0132】
このように、円盤形状砥石30の角度β,κを適切に選択することにより、これら角度β,κの変更を加工過程で行なうことなく、ベーン16を支持するに適した面形状のベーン溝側面2Aを得ることが可能となる。従って、上記実施形態の加工法により、好適に湾曲した形状のベーン溝側面を安価に得ることが可能となり、その結果、ベーン部の摺動信頼性がより向上し、耐久性に優れるロータリ圧縮機を提供することが可能となる。
【0133】
なお、図13に示す手順では、円盤形状砥石30の往復動作のいずれでも加工を行なうが、設定を変えることにより、加工を一方向の動作で完結させることも可能である。その一具体例を図13で説明すると、図13(b)に示す状態で円盤形状砥石30をλ1方向へ移動させる際に、ベーン溝2の高圧室側の側面2Hを所定の寸法に加工できるまで移動させる。この移動が完了した状態を図13(c)に示す状態とすると、この状態でα1方向に円盤形状砥石30を進行させる。これにより、図13(d)に示す状態となるが、円盤形状砥石30は、図13(d)に示す状態になるまでのベーン溝2を通過する過程において、高圧室側の側面2Hを加工しながら進行する。この過程で形成される形状は、先に説明した図13(e)〜図13(f)の過程に形成される形状と同一である。
【0134】
従って、この具体例では、円盤形状砥石30がα1方向に進む過程でベーン溝2の両側面2L,2Hの加工が可能となり、図13(e)〜図13(h)で示す円盤形状砥石30がα2方向に移動する過程では、ベーン溝2の側面の加工を行う必要がない。従って、往復動作をさせた場合の移動精度が前進と後退で異なるような機械を用いた場合、一方向の移動だけを用いて加工することが可能となる。ここでは、α1方向への移動で加工する場合を説明したが、α2方向への移動で加工するようにしてもよい。
【0135】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。即ち、
従来のロータリ圧縮機のベーン溝には、線状の接触部が存在するため、ベーンとベーン溝との摺動部では、高負荷運転や潤滑性に乏しい冷媒の使用に起因して、油膜切れによる金属接触が起こり、早期摩耗や異常摩耗、さらに、焼き付けを起こすという問題があったが、本発明によると、ベーン溝の側面が負荷のかかったベーンを適切に支持でき、かつ接触部で面接触となるように、ベーン溝の側面が湾曲した面形状をなしているものであるから、線状の接触を回避することができ、ベーン溝の摺動部の摺動信頼性が大幅に向上するし、かかるベーン溝を具備したシリンダを組み込んだロータリ圧縮機では、耐久性が大幅に向上する。
【0136】
また、本発明の加工法によれば、ベーン溝に発生していた上記の問題を解消する湾曲した形状のベーン溝の側面を簡便でかつ量産に適したものであり、耐久性に優れるベーン溝を安価に提供することができ、ひいては、耐久性の向上したロータリ圧縮機を低廉なコストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるロータリ圧縮機の一実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】図1で矢印M方向にみた圧縮過程でのベーンの状態を示す図である。
【図3】図1に示す実施形態での上死点にある圧縮室の状態を示した図である。
【図4】図1に示す実施形態での圧縮過程と上死点とでのベーンを比較して示す図である。
【図5】本発明によるシリンダの加工方法の一実施形態を示す図である。
【図6】図5に示す実施形態でベーン溝の側面の加工の開始時と終了時とでの円盤形状砥石とベーン溝との配置関係を示す図である。
【図7】図5に示す実施形態での円盤形状砥石の傾き状態とこれによって加工されたベーンみその側面形状を示す図である。
【図8】図5に示す実施形態による加工方法で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図9】図5に示す実施形態で傾斜した円盤形状砥石によるベーン溝の加工で制約となる事項を示す図である。
【図10】本発明によるシリンダの加工方法の他の実施形態を示す図である。
【図11】図10に示す実施形態による加工方法で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図12】図10に示す実施形態によるベーン溝側面の一連の加工工程の一具体例を示す図である。
【図13】図10に示す実施形態によるベーン溝側面の一連の加工工程の他の具体例を示す図である。
【図14】図13で示す加工工程で得られた湾曲したベーン溝側面の形状の一具体例を示す図である。
【図15】ロータリ圧縮機の構造の一例を示す縦断面図である。
【図16】図15での分断線A−Aに沿う横断面図である。
【図17】ロータリ圧縮機の動作時でのベーン溝中のベーンの状態を示す図である。
【図18】ベーンの従来例を示す図である。
【図19】ベーン溝の加工方法の従来例を示す図である。
【図20】図19に示すブローチはの成形方法の一従来例を示す図である。
【図21】図19に示すブローチはの成形方法の他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ベーン溝
2A ベーン溝側面
2L ベーン溝の低圧室側の側面
2H ベーン溝の高圧室側面
2L1,2L2,2H1,2H2 湾曲部
3 シリンダの内周面
8 高圧室
9 低圧室
16 ベーン
16L ベーンの低圧室側の側面
16H ベーンの高圧室側の側面
17 ローラ
30 円盤形状砥石
31 砥石主軸
32 砥石台金
33 砥粒層
33A 砥粒層側面
34 砥石軸心
Claims (7)
- クランク軸の回転によってローラがシリンダ内で偏心回転し、該シリンダに設けられたベーン溝内をベーンが往復摺動して偏心回転する該ローラに当接されることにより、該シリンダ内が該ベーンによって高圧室と低圧室とに仕切られて、該シリンダ内で動作ガスが圧縮される圧縮機構部を備えたロータリ圧縮機において、
該ベーン溝の少なくとも一方の側面が、該シリンダの外周面側あるいは内周面側に向かうに従って該ベーン溝の中心線から離れていく湾曲形状をなしていることを特徴とするロータリ圧縮機。 - 請求項1において、
前記ベーン溝での前記シリンダの前記高圧室側の側面は、前記シリンダの外周面側に向かうに従って前記ベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、前記シリンダの内周面側に向かうに従って前記ベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状であって、
前記ベーン溝での前記シリンダの前記低圧室側の側面は、前記シリンダの内周面側に向かうに従って前記ベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状、もしくは、さらに、前記シリンダの外周面側に向かうに従って前記ベーン溝の中心線から離れていく湾曲した形状であることを特徴とするロータリ圧縮機。 - 請求項1または2において、
前記ベーン溝の湾曲形状をなす部分は、前記ベーンが前記ベーン溝内で傾斜して前記ベーン溝の側面に当接したとき、前記ベーンと前記ベーン溝の側面との間に油膜によるシールを形成し、かつ前記ベーンが面接触する長さ,幅に設定されていることを特徴とするロータリ圧縮機。 - 請求項1,2または3記載のロータリ圧縮機の前記ベーン溝の側面の加工法であって、
外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられ、回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、
前記ベーン溝の側面加工のための第1の平面に対して、該回転軸心に直交し該砥粒層の回転軌跡を含む第2の平面が所定の角度をなすように、該円盤形状砥石を該進行方向に対して傾斜させながら、該円盤形状砥石を該進行方向に移動させて前記ベーン溝の側面を加工することを特徴とするシリンダの加工法。 - 請求項1,2または3記載のロータリ圧縮機の前記ベーン溝の側面の加工法であって、
外端面と両側面の外周部とに砥粒層が設けられ、回転軸心を中心に回転する円盤形状砥石を用い、
前記ベーン溝の側面加工のための該円盤形状砥石の進行方向に平行な平面に対して該砥粒層の回転軌跡を含む平面が傾斜するように、該円盤形状砥石を傾斜させ、該砥粒層の進行方向前半分の部分で前記ベーン溝を加工し、前記ベーン溝の側面の断面形状を凸形状に加工することを特徴とするシリンダの加工法。 - 請求項5において、
前記円盤形状砥石の進行方向前半側が前記ベーン溝の中心線に近づくように、前記円盤形状砥石を前記回転軸心を中心に傾斜させて前記ベーン溝の側面を加工することを特徴とするシリンダの加工法。 - 請求項6において、
前記円盤形状砥石は、前記傾斜状態を固定して、前記ベーン溝の一方の側面での前記シリンダの内周面側と他方の側面での前記シリンダの外周面側とを加工することを特徴とするシリンダの加工法。
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