JP2009216079A - スクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置 - Google Patents

スクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置 Download PDF

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富次 鈴木
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Abstract

【課題】製造コストを低減しつつ圧縮効率及び耐久性を向上することができるスクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置を提供する。
【解決手段】鏡板(10,12)の鏡板面(10a,12a)に渦巻き状のラップ(14,16)が対をなしてそれぞれ立設された固定及び可動スクロール(8,6)を備え、固定スクロールに対し可動スクロールが公転旋回運動することにより、ラップ間に作動流体の圧縮室(20)を形成し、該圧縮室がラップの最内周部(32)に向けてその容積を減少させながら移動するスクロール型流体機械であって、可動スクロールまたは固定スクロールのうちの少なくとも一方のスクロールのラップは、該ラップの先端により形成される面が所定の曲率となる回転楕円面または球面をなす凹面部(34)を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、スクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置に係り、詳しくは、冷凍空調機やヒートポンプ式給湯機に好適なスクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置に関する。
この種のスクロール型流体機械、例えば密閉型スクロール圧縮機は、ハウジング内で固定スクロールに対し可動スクロールが公転旋回運動することにより、作動流体の吸入、圧縮及び吐出の一連のプロセスを実施するスクロールユニットを備えている。
詳しくは、可動及び固定スクロールの鏡板の鏡板面には、それぞれ渦巻き状のラップが立設され、これらラップが協働して圧縮室を形成し、この圧縮室の容積を減少することにより上記一連のプロセスを実施している。
そして、ラップ高さをラップ中心に向け所定の傾斜角でラップの渦巻き状に沿って直線的に減少させた傾斜面を有することにより、ラップが熱膨張してもラップの先端面と対向する鏡板面との間のスラスト方向ギャップを適正に保持することができる技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
特許3046486号公報
しかしながら、上記従来技術では、ラップの連続する先端面に傾斜面とフラット面とを形成することにより、これら面間に段差部が形成されてしまうため、この段差部においてラップ間のかじりや作動流体の漏れが発生するとの問題がある。
また、上記従来技術の如くラップの渦巻き状に沿って傾斜面を直線的に加工するには、切削または研磨加工等により長時間を要するのが一般的であり、ラップの加工コスト、ひいては圧縮機の製造コストが増大するおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、製造コストを低減しつつ圧縮効率及び耐久性を向上することができるスクロール型流体機械及びその加工方法及びその加工装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、請求項1記載のスクロール型流体機械は、鏡板の鏡板面に渦巻き状のラップが対をなしてそれぞれ立設された固定及び可動スクロールを備え、固定スクロールに対し可動スクロールが公転旋回運動することにより、ラップ間に作動流体の圧縮室を形成し、該圧縮室がラップの最内周部に向けてその容積を減少させながら移動するスクロール型流体機械であって、可動スクロールまたは固定スクロールのうちの少なくとも一方のスクロールのラップは、該ラップの先端により形成される面が所定の曲率となる回転楕円面または球面をなす凹面部を有することを特徴としている。
また、請求項2記載の発明では、請求項1において、凹面部は、凹面部を有するラップの最内周部が最小ラップ高さとなることを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、請求項1または2において、凹面部を有するラップは、凹面部よりも外周側に最大ラップ高さとなるフラット部を有し、所定の曲率は、ラップの先端において凹面部をフラット部と滑らかに連続させるべく予め設定されることを特徴としている。
更にまた、請求項4記載のスクロール型流体機械の加工方法の発明は、請求項2または3において、凸面部を備えた凹面加工治具を使用し、該凸面部とラップとの互いの押圧運動によってラップを切削または研磨することにより凹面部を形成する凹面加工工程を含むことを特徴としている。
また、請求項5記載のスクロール型流体機械の加工装置の発明は、請求項4において、凹面加工治具と、凹面部が形成されるラップを凹面加工治具側に向けた状態でスクロールを固定するクランプ機構を備えたスクロール型流体機械の加工装置であって、凹面加工治具及びクランプ機構は、押圧運動の方向に交差する向きに回転可能に構成され、凹面加工治具とクランプ機構との互いの押圧運動及び回転運動の合成によって、凸面部とラップとの一定の面接触状態を保ちながらラップを切削または研磨することにより凹面部を形成することを特徴としている。
更に、請求項6記載の発明では、請求項5において、凹面加工治具は、押圧運動の方向から所定の傾斜角にて傾斜した状態でその軸心を中心として回転可能に構成され、凸面部は、ラップをその渦巻き中心を通過する境界線で分けたときのラップ半割領域のみに面接触されることを特徴としている。
更にまた、請求項7記載の発明では、請求項5または6において、凹面加工治具は、クランプ機構の回転方向とは逆向きに回転されることを特徴としている。
請求項1記載の本発明のスクロール型流体機械によれば、ラップは、ラップの先端により形成される面が所定の曲率となる回転楕円面または球面をなす凹面部を有する。これにより、凹面の曲率をスクロール型流体機械の圧縮運転時におけるラップの熱膨張量に合わせ、圧縮運転時のラップと対向する鏡板面との間のスラスト方向ギャップを段差無く適正に保持することができるため、ラップ間のかじりや作動流体の漏れを確実に防止することができる。
しかも、凹面部を形成することにより、圧縮室の容積を減少させることにより圧縮熱が高温となるラップの最内周部から最外周側に向けて鏡板を介して放射状に伝達される熱量を考慮してラップの熱膨張量に即したスラスト方向ギャップを保持することができるため、これらにより、スクロール型流体機械の圧縮効率及び耐久性を向上することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、凹面部は、ラップの最内周部が最小高さとなるように形成されることにより、圧縮室における圧縮熱により最も高温となるラップの最内周部を最も大きくなる熱膨張量に合わせてスラスト方向ギャップを適正に保持することができるため、スクロール型流体機械の圧縮効率及び耐久性を確実に向上することができる。
更に、請求項3記載の発明によれば、所定の曲率は、ラップの先端において凹面部をフラット部と滑らかに連続するべく予め設定される。これにより、スラスト方向ギャップを確実に段差無く適正に保持することができるため、スクロール型流体機械の圧縮効率及び耐久性をより一層確実に向上することができる。
更にまた、請求項4記載の本発明のスクロール型流体機械の加工方法によれば、凹面加工治具の凸面部とラップとの互いの押圧運動によってラップを切削または研磨することにより凹面部を形成する凹面加工工程を含む。これにより、ラップの渦巻き状に沿ってその先端に加工を施す場合に比して凹面部を短時間で形成できるため、ラップの加工コスト、ひいてはスクロール型流体機械の製造コストを低減することができる。
また、請求項5記載の本発明のスクロール型流体機械の加工装置によれば、この加工装置が備える凹面加工治具及びクランプ機構は、押圧運動の方向に交差する向きに回転可能に構成され、凹面加工治具とクランプ機構との互いの押圧運動及び回転運動の合成によって、凸面部とラップとの一定の面接触状態を保ちながらラップを切削または研磨することにより凹面部を形成する。これにより、凸面部とラップとの互いの押圧運動によってラップを切削または研磨する場合に比して、凹面加工治具とクランプ機構との互いの回転運動が加わるため、凹面加工における加工時間を更に短縮することができるため、ラップの加工コスト、ひいてはスクロール型流体機械の製造コストを更に低減しつつスクロール型流体機械の圧縮効率及び耐久性を向上することができる。
更に、請求項6記載の発明によれば、凹面加工治具は、押圧運動の方向から所定の傾斜角にて傾斜した状態でその軸心を中心として回転可能に構成され、凸面部は、ラップをその渦巻き中心を通過する境界線で分けたときのラップ半割領域のみに面接触される。これにより、凸面部とラップとの接触領域を半減させることができるため、加工装置の凹面加工における加工精度の誤差の影響を半減することができ、凹面部の寸法精度を確保しつつ凹面加工における加工時間を短縮することができる。
更にまた、請求項7記載の発明によれば、凹面加工治具は、クランプ機構の回転方向とは逆向きに回転される。これにより、凸面部とラップとの単位時間あたりの総接触面積を倍増させることができるため、凹面加工における加工時間をより一層短縮することができる。
以下、図面により本発明の一実施形態について先ず第1実施形態から説明する。
図1は、本実施形態に係るスクロール型流体機械の一例として、密閉型のスクロール圧縮機1のスクロールユニット2の縦断面図を示しており、当該ユニット2は、図示しない密閉容器内に収容され、回転軸4を介して図示しない電動モータにより駆動される。
当該圧縮機1は、冷凍空調装置やヒートポンプ式給湯機などの冷凍回路に組み込まれ、当回路は作動流体の一例である二酸化炭素冷媒(以下、冷媒という)が循環する経路を備え、圧縮機1は経路から冷媒を吸入し、圧縮して経路に向けて吐出する。この際、ユニット2は冷媒の吸入、圧縮及び吐出の一連のプロセスを実施する。
詳しくは、ユニット2は可動スクロール6及び固定スクロール8から構成され、可動スクロール6は鏡板10を備え、この鏡板10の鏡板面10aには固定スクロール8の鏡板12に向けて延びる渦巻き状のラップ14が立設され、一方、固定スクロール8の鏡板12の鏡板面12aにも鏡板10に向けて延びる渦巻き状のラップ16が立設されている。
そして、これらラップ14,16が互いに協働し、鏡板12の外周側に形成された冷媒の吸入ポート18から冷媒を吸入して圧縮室20を形成する。圧縮室20は、固定スクロール8に対する可動スクロール6の公転旋回運動により、これらラップ14,16の径方向の最外周側から中心である最内周側に向けて移動しながらその容積が減少される。
可動スクロール6に公転旋回運動を付与するため、鏡板10の背面側にはボス22が形成され、ボス22は軸受24を介して回転軸4の上端側に一体形成される偏心軸26に回転自在に支持されている。なお、可動スクロール6の自転は図示しない自転阻止ピンにより阻止されている。
一方、固定スクロール8は密閉容器の内側に固定される図示しないフレームに支持、固定されており、固定スクロール8の中央部分には圧縮室20に連通可能な吐出孔28が穿設される。
上述した圧縮機によれば、回転軸26の回転に伴って可動スクロール6が自転することなく公転旋回運動することにより、吸入ポート18を介してユニット2に吸入した冷媒をユニット2の内方に向けて移動させながら圧縮した後に吐出孔28から吐出する。そして、吐出孔28から吐出された冷媒は密閉容器内を循環した後に図示しない吐出ポートを介して圧縮機外へ送出される。
ところで、図2の可動スクロール6の縦断面図に示されるように、本実施形態のラップ14はラップ14の最外周側に形成されるフラット部30と、ラップ14の最内周部32側に形成される凹面部34とから形成されている。
図3に示される可動スクロール6の鏡板面10a側からみた平面図も参照すると、フラット部30はラップ14のうち、最外周側の1巻と略半巻目となる部分に該当し、鏡板面10aから先端までのラップ高さHが最大となり、その先端は平坦なフラット面30aとなっており、可動スクロール6を固定スクロール8と組合わせたときに、フラット面30aと固定スクロール8の鏡板面12aとの間には最小のスラスト方向ギャップGMINを残して最外周側の圧縮室20が形成される。
一方、凹面部34はラップ14のうち、フラット部30よりも最内周部32側の全巻部分に該当し、図3中に斜線で示されており、ラップ14の先端により形成される面が所定の曲率kとなる回転楕円面または球面をなす凹面34aを形成している。
凹面部34におけるラップ14のラップ高さHはフラット部30から最内周部32にかけて滑らかに放物線状に減少し、最内周部32において最小となっている。換言すると、凹面34aと対向する鏡板面12aとのスラスト方向ギャップGはフラット部30から最内周部32にかけて滑らかに放物線状に増大し、最内周部32において最大のギャップGMAX(例えば6マイクロメートル程度)となる。
また、図3に示される凹面部34とフラット部30との境界部36は凹面34aとフラット面30aとが段差無く滑らかに連続しており、曲率kはこのような境界部36を形成するべく予め設定される。なお、凹面部34からフラット部30にかけ曲率kを連続的に変化させて境界部36を形成しても良い。そして、可動スクロール6を固定スクロール8と組合わせたときには、可動スクロール6のラップ14と対向する固定スクロール8の鏡板面12aとの間のスラスト方向ギャップGがフラット部30から最内周部32にかけて滑らかに放物線状にて変化し、圧縮機の圧縮運転時におけるラップ14,16の熱膨張時には、フラット部30の場合と同様に、最小のスラスト方向ギャップGMINを残して最内周部32側の圧縮室20が形成される。
以下、図4に示される凹面部34を形成するための凹面加工工程について説明する。
先ず、アルミ系材料からなる鏡板10に対して切削加工を施すことにより、先端がフラット面30aとなるフラット部30のみを有するラップ14を形成する。
次に、フラット部30の内周側に対して、凹面34aと略同一となる曲率k’の凸加工面(凸面部)38aを有する凹面加工治具38による切削加工を施す。凹面加工治具38は例えば旋盤加工用のバイトやインサートチップであって、切削加工は例えば研削加工や旋削加工による凹面加工であり、ラップ14の渦巻き中心Oを加工中心とし、凸加工面38aをラップ14の先端に押圧しながら切削または研磨することにより、フラット部30を最外周側のみ残して図4中の点線部分が椀形状に削られ、ラップ14の最内周部32側のみに凹面34aを有する凹面部34を形成している。
このように構成される圧縮機の圧縮運転開始初期には、各ラップ14,16はほぼ常温の状態にある。そして、フラット面30aが鏡板面12aとの間に最小となるスラスト方向ギャップGMINを介して対向しているから、吸入ポート18側への漏れがない状態で最外周側の圧縮室20に冷媒を確実に封じ込めることができる。
次に、当該圧縮機が暖機され、定格状態となったときには、吸入ポート18から吸入された冷媒は、最外周側の圧縮室20から最内周部32側の圧縮室20に順次送り込まれて圧縮され、このときに発生する圧縮熱等により、ラップ14,16は最外周側の1巻目から最内周部32側の4巻目に亘って放射状に高温をなした温度分布となる。
詳しくは、各圧縮室20内の圧力は最外周側の圧縮室20から最内周部32側の圧縮室20に向けて圧力が順次高くなるため、最内周部32側の圧縮室20は最外周側の圧縮室20よりも高温になり、各ラップ14,16も最外周側から最内周部32側にかけて徐々に温度が高くなる。
また、ユニット2や軸受24等を潤滑するための高温高圧の潤滑油が回転軸26内を軸線方向に穿孔される図示しない給油路を上昇し、回転軸26の上端から供給されることも、各ラップ14,16の最内周部32側が最外周側よりも高温になる要因の1つである。そして、この温度上昇により各ラップ部14,16は熱膨張し、特にラップ14の凹面部34は最内周部32側にかけて漸次大きく熱膨張し、最内周部32近傍は最大の熱膨張量となる。
以上のように、本実施形態では、ラップ14の先端により形成される面が所定の曲率kとなる回転楕円面または球面をなす凹面部34を有することにより、凹面部34の凹面34aの曲率kを圧縮機の圧縮運転時におけるラップ14の熱膨張量に合わせ、圧縮運転時のラップ14と対向する鏡板面12aとの間のスラスト方向ギャップGを段差無く適正に保持することができ、ラップ14,16間のかじりや冷媒の漏れを確実に防止することができるため、圧縮機の圧縮効率及び耐久性を向上することができる。
ここで、上述したように、圧縮室20の圧縮熱や潤滑油の熱により、ラップ14の最内周部32が最も高温となることから、ラップ14、ひいては鏡板10をラップ14の熱膨張に係る伝熱部と捉え、ラップ14の熱膨張に当該伝熱部を介して伝達される熱量が影響していると考えることもできる。そして、伝熱部の大きさに鑑みると、ラップ14の渦巻状に沿って伝達される熱量よりも鏡板10を介して最内周部32から放射状に伝達される熱量の方が多いことが想定される。従って、凹面部34を形成することにより、ラップ14の熱膨張量に即したスラスト方向ギャップGを保持することができ、ひいては圧縮機の圧縮効率及び耐久性の向上に大きく貢献する。
また、凹面部34はラップ14の最内周部32が最小高さとなることにより、圧縮室20における圧縮熱により最も高温となるラップ14の最内周部32を最も大きくなる熱膨張量に合わせてスラスト方向ギャップGを更に適正に保持することができる。
更に、曲率kは凹面部34がフラット部30と滑らかに連続するべく予め設定されることにより、スラスト方向ギャップGを確実に段差無く適正に保持することができる。
更に、凹面部34は凹面加工治具38の凸加工面38aをラップ14の先端に押圧しながらラップ14を切削または研磨することにより形成されるため、ラップ14の渦巻き状に沿ってその先端に加工を施す場合に比して凹面部34を短時間で形成できるため、ラップ14の加工コスト、ひいては圧縮機の製造コストを低減しつつ圧縮機の圧縮効率及び耐久性を向上することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
当該第2実施形態は、上記第1実施形態とは異なる凹面加工治具40が装着された凹面加工装置(加工装置)42を使用して、砥石による研削により凹面部34を形成するものであり、他は上記第1実施形態と同様の構成をなすため、主として凹面加工治具40及び凹面加工装置42について説明する。
図5は、凹面加工装置42の要部を示した縦断面図であり、凹面加工装置42は、凹面加工治具40とクランプ機構44とから構成されている。
クランプ機構44は、凹面加工治具40の下側において可動スクロール6をチャック固定した状態で回転しながら鉛直方向に上下運動可能に構成されている。
凹面加工治具40は、回転軸46とその加工先端に装着された砥石部(凸面部)48とから構成され、鉛直方向から所定の傾斜角θ(例えば約45°程度)にて傾斜した状態で回転軸46の軸心を中心としてクランプ機構44の回転方向とは逆向きに回転可能に構成されている。
砥石部48は、例えばCBN(Cubic Boron Nitride(立方晶窒化硼素))などのダイヤモンド並みの高硬度を有する材料から椀形状をなして形成され、砥石部48の径方向中心O’の周囲に凹面加工に際して生じる切削及び研磨くずの逃げ空間として中空部50が設けられている。
このように構成される加工装置42は、クランプ機構44の回転運動、押圧運動、及び凹面加工治具40の回転運動の3運動の合成により、凹面加工治具40と可動スクロール6のラップ14とが一定の面接触状態を保ちながら凹面部34を形成する。
詳しくは、先ず、可動スクロール6をラップ14が上側に向いた状態で鏡板10の外周面10bにてクランプ機構44にチャック固定する。このときの凹面加工治具40とラップ14とは、砥石部48がラップ14をその渦巻き中心Oを通過する境界線で分けたときのラップ半割領域52のみに面接触可能な位置関係を有している。
次に、凹面加工治具40に向けてクランプ機構44を回転上昇させることにより、ラップ半割領域52が回転中の砥石部48に対して接触、押圧され、この押圧運動と同時にクランプ機構44が回転することによって、ラップ14が異なる領域において砥石部48と一定の面接触状態を保ちながら研削される。これにより、砥石部48の凸面48aの曲率k’と略同一となる曲率kの凹面34aを有する凹面部34が形成される。
以上のように、本実施形態では、凹面加工治具40が装着された加工装置42を用いて凹面部34を形成することにより、凹面部34の寸法精度を確保しつつ凹面加工における加工時間を更に短縮することができるため、ラップ14の加工コスト、ひいては圧縮機の製造コストを更に低減しつつ圧縮機の圧縮効率及び耐久性を向上することができる。
具体的には、上記第1実施形態の凹面加工治具38を使用する場合に比して、凹面加工において凹面加工治具40とクランプ機構44との互いの押圧運動に加え、これらの互いの回転運動が加わるため、凹面加工における加工時間を更に短縮することができる。
また、砥石部48がラップ半割領域52のみに面接触されることにより、上記第1実施形態の場合に比して、砥石部48とラップ14との接触領域を半減させることができるため、加工装置42の凹面加工における加工精度の誤差の影響を半減することができ、凹面部34の寸法精度を確保しつつ凹面加工における加工時間を短縮することができる。
更に、凹面加工治具40がクランプ機構44の回転方向とは逆向きに回転されることにより、砥石部48とラップ14との単位時間あたりの総接触面積を倍増させることができるため、凹面加工における加工時間をより一層短縮することができる。
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、可動スクロール6のラップ14に凹面部34を形成することとしているが、ラップ14の熱膨張が吸収され、スラスト方向ギャップGが適正に保持されれば良く、ラップ14をフラット部30のみで形成し、固定スクロール8のラップ16に凹面部を形成しても良い。この場合にも上記と同様に圧縮機の製造コストを低減しつつその圧縮効率及び耐久性を向上することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係るスクロール型圧縮機のスクロールユニットを示した縦断面図である。 図1の可動スクロールを示した縦断面図である。 図2の可動スクロールを鏡板面側からみた平面図である。 図2の凹面部の加工方法を示した縦断面図である。 図2の凹面部の別の加工方法及びその加工装置を示した縦断面図である。
符号の説明
6 可動スクロール
8 固定スクロール
10,12 鏡板
10a,12a 鏡板面
14,16 ラップ
20 圧縮室
30 フラット部
32 最内周部
34 凹面部
38 凹面加工治具
38a 凸加工面(凸面部)
40 凹面加工治具
44 クランプ機構
52 ラップ半割領域

Claims (7)

  1. 鏡板の鏡板面に渦巻き状のラップが対をなしてそれぞれ立設された固定及び可動スクロールを備え、前記固定スクロールに対し前記可動スクロールが公転旋回運動することにより、前記ラップ間に作動流体の圧縮室を形成し、該圧縮室が前記ラップの最内周部に向けてその容積を減少させながら移動するスクロール型流体機械であって、
    前記可動スクロールまたは前記固定スクロールのうちの少なくとも一方のスクロールの前記ラップは、該ラップの先端により形成される面が所定の曲率となる回転楕円面または球面をなす凹面部を有することを特徴とするスクロール型流体機械。
  2. 前記凹面部は、該凹面部を有する前記ラップの前記最内周部が最小ラップ高さとなることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
  3. 前記凹面部を有する前記ラップは、前記凹面部よりも外周側に最大ラップ高さとなるフラット部を有し、
    前記所定の曲率は、前記ラップの先端において前記凹面部を前記フラット部と滑らかに連続させるべく予め設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール型流体機械。
  4. 請求項2または3に記載のスクロール型流体機械の加工方法であって、
    凸面部を備えた凹面加工治具を使用し、該凸面部と前記ラップとの互いの押圧運動によって該ラップを切削または研磨することにより前記凹面部を形成する凹面加工工程を含むことを特徴とするスクロール型流体機械の加工方法。
  5. 前記凹面加工治具と、前記凹面部が形成される前記ラップを前記凹面加工治具側に向けた状態で前記スクロールを固定するクランプ機構を備えた請求項4に記載の加工方法を用いたスクロール型流体機械の加工装置であって、
    前記凹面加工治具及び前記クランプ機構は、前記押圧運動の方向に交差する向きに回転可能に構成され、
    前記凹面加工治具と前記クランプ機構との互いの前記押圧運動及び回転運動の合成によって、前記凸面部と前記ラップとの一定の面接触状態を保ちながら前記ラップを切削または研磨することにより前記凹面部を形成することを特徴とするスクロール型流体機械の加工装置。
  6. 前記凹面加工治具は、前記押圧運動の方向から所定の傾斜角にて傾斜した状態でその軸心を中心として回転可能に構成され、
    前記凸面部は、前記ラップをその渦巻き中心を通過する境界線で分けたときのラップ半割領域のみに面接触されることを特徴とする請求項5に記載のスクロール型流体機械の加工装置。
  7. 前記凹面加工治具は、前記クランプ機構の回転方向とは逆向きに回転されることを特徴とする請求項5または6に記載のスクロール型流体機械の加工装置。
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