JP2005029936A - ポリエステル系複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 特定の処理剤(油剤)を付与することにより、紡糸時の紡糸性が良好で、得られた未延伸糸は安定に延伸や仮撚加工ができ、ストレッチ性が高く、膨らみ感やソフトな風合も良好で、品位にも優れたポリエステル系複合繊維を効率よく得る。
【解決手段】高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAと、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBとが、重量比率(A:B)で30:70〜70:30の割合でサイド・バイ・サイド型に貼り合わされたポリエステル系複合繊維の表面に、(A)ポリオキシアルキレングリコール共重合体:35〜60重量%、(B)エーテルエステル化合物:20〜55重量%、(C)エーテル化合物:5〜15重量%、および(D)炭素数8〜18のアルコールにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを0〜10モル付加したもののリン酸エステルのアミン塩:1〜5重量%を含有する処理剤を該複合繊維の重量を基準として0.2〜1.0重量%付着したポリエステル系複合糸繊維。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ストレッチ性が高く、ふくらみ感があり、かつソフトな風合の布帛が得られるポリエステル系複合繊維に関する。
従来、2種類の収縮特性または溶融粘度の異なった重合体を、サイド・バイ・サイド型に貼り合せ、複合紡糸したのち、これを延伸し、弛緩状態で熱処理することによって捲縮糸を得る方法がよく知られている。特に、ポリエステル系複合繊維は、力学的な性質、熱安定性、ウォッシュアンドウエアー性などに優れているため広く用いられている。しかし、従来のポリエステル系複合繊維を使った織物には、嵩高性の高いものは得られるが、ストレッチ性は小さく、弾性回復性も劣るといった欠点や、剛性が高く風合が硬いといった欠点がある。
この欠点に対して、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの組み合わせからなるサイド・バイ・サイド型複合繊維が開示されている。例えば、特許文献1(特開平11−189923号公報)には、低粘度のポリトリメチレンテレフタレートと高粘度のポリエステルとを複合化したポリエステル系複合繊維が提案されている。しかし、低粘度の低収縮性成分のポリトリメチレンテレフタレートを使用していることから、織物のソフト性は向上しているものの、捲縮特性が不十分であった。
一方、特許文献2(特開2001−348734公報)には、高粘度のポリトリメチレンテレフタレートと低粘度のポリエステルとを複合化したポリエステル系複合繊維が提案されている。確かに、この方法によればストレッチ性が高く、ふくらみ感があり、同時にソフトな風合を有する繊維が得られるものの、後述する油剤の構成成分であるポリエーテルの含有比率が0.7〜30重量%と少なく、製糸工程で毛羽や断糸の発生を抑制することが難しく、安定した糸品質が得られにくい。
通常、製糸を行う際、毛羽や糸切れを起こさないことを目的に繊維表面に油剤処理が施される。油剤の構成成分としては、平滑性、集束性、静電気防止性、耐熱性などの要求特性に対して、エステル、鉱物油、ポリエーテル、非イオン活性剤、イオン活性剤などを適宜選択、組合せて使用される。なかでもポリエチレンテレフタレート繊維用油剤は、用途に応じて各種の油剤が提案されている。例えば、仮撚加工用油剤としては仮撚加工時のヒータータールを少なくするために低加熱残渣油剤として、特許文献3(特開昭62−78275号公報)、特許文献4(特開平2−269878号公報)、特許文献5(特開平3−180577号公報)には、分子量1,000〜10,000のポリエーテルをベースにした油剤が提案されている。確かに、ポリエチレンテレフタレート繊維の場合はヒータータールを抑制するには有効であるものの、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の場合はヒーター温度が低いため、ヒータータールの問題よりもポリエーテルをベースのため、繊維/金属間の動摩擦が高くなり、平滑性不足による毛羽や加工断糸が増大する問題があり実用化は困難である。
一方、ポリトリメチレンテレフタレート繊維用油剤としては、ポリトリメチレンテレフタレートの糸物性から、繊維/繊維間の静摩擦や繊維/金属間の動摩擦を下げる油剤が提案されている。例えば、特許文献6(WO99/39041の再公表特許公報)には、ポリエーテルおよびエステルまたは鉱物油をベースにした油剤が提案されている。確かに、ポリトリメチレンテレフタレート単独の仮撚加工には有効であるが、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型複合繊維の場合は、物性差のためか毛羽や断糸の抑制は十分でなかった。さらに、直延のように高速度で延伸する際は、単に繊維/繊維間の静摩擦や繊維/金属間の動摩擦を下げる油剤だけでは金属に対する油膜が弱く、油膜切れによる延伸性が不十分で毛羽や断糸の抑制は困難である。
以上のように、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型のポリエステル系複合繊維の場合、上述のポリエチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート繊維用の公知油剤では、毛羽や断糸の抑制は困難で安定した製糸性を得られないのが現状である。
特開平11−189923号公報 特開2001−348734公報 特開昭62−78275号公報 特開平2−269878号公報 特開平3−180577号公報 WO99/39041の再公表特許公報
解決しようとする問題点は、これまでのポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型のポリエステル系複合繊維では、ストレッチ性が高く、ふくらみ感があり、同時にソフトな風合を有し、紡糸や延伸、仮撚加工工程でも毛羽の発生が殆ど無く安定した品質を有するものが得られなかった点である。
本発明は、高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAと、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBとが、重量比率(A:B)で30:70〜70:30の割合でサイド・バイ・サイド型に貼り合された複合繊維の表面に、下記(A)〜(D)成分[ただし、(A)+(B)+(C)+(D)=100重量%]を必須成分として含有する処理剤(油剤)が該複合繊維の重量を基準として0.2〜1.0重量%付着していることを特徴とするポリエステル系複合糸繊維に関する。
(A)プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)との共重合体であって、重量平均分子量が1,000〜20,000、PO/EO共重合重量比が20/80〜80/20であるポリオキシアルキレングリコール共重合体:35〜60重量%
(B)エチレンオキサイド(EO)を1〜20モル付加した炭素数6〜18のアルコールを炭素数6〜18の脂肪酸でエステル化したエーテルエステル化合物:20〜55重量%
(C)炭素数8〜15のアルコールにプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを3〜9モル付加したエーテル化合物:5〜15重量%
(D)炭素数8〜18のアルコールにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを0〜10モル付加したもののリン酸エステルのアミン塩:1〜5重量%
ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとからなるサイド・バイ・サイド型の複合繊維に、特定のポリエーテル、エーテルエステル、エーテル化合物およびリン酸エステルのアミン塩を含有する処理剤(油剤)を付与することによって、ストレッチ性、ふくらみ感、ソフト性の何れも満足し、かつ延伸あるいは仮撚加工工程で毛羽の発生が極めて少ない繊維が得られる。
本発明は、高いストレッチ性を示す高粘度のポリトリメチレンテレフタレートと、低粘度のポリエチレンテレフタレートとからなる複合繊維について、紡糸や延伸、仮撚加工工程で毛羽が発生する原因について調査し、該複合繊維に付与する油剤を検討した結果、特定のポリエーテル、エーテルエステル、エーテル化合物およびリン酸エステルのアミン塩を特定の配合比率にしたとき、ストレッチ性、ふくらみ感、ソフト性の何れも満足し、かつ紡糸や延伸あるいは仮撚加工工程で毛羽の発生が極めて少ない繊維が得られることを見出し本発明の完成するに至ったものである。
本発明のポリエステル系複合繊維は、高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAと、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBとを、サイド・バイ・サイド型に貼り合せてなる複合繊維である。
本発明でいうポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、一方、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBは、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルである。
上記のポリエステルAおよびBには、本発明を阻害しない範囲、例えば酸成分を基準として15モル%以下、好ましくは5モル%以下で第3成分を共重合してもよい。好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸テトラブチルポスホニウム塩などの酸成分や、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール成分のほか、ε−カプロラクトン、4−ヒドロキシ安息香酸、ポリオキシエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
本発明において、複合繊維を構成するポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAと、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBの複合比率は、通常、サイド・バイ・サイド型複合による捲縮性付与に用いられる複合比率であれば、特に規定するものではないが、一般的にはA:Bが30:70〜70:30の重量比率での範囲である。好ましくは、A:Bが40:60〜60:40の重量比率である。
なお、高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAの固有粘度は、0.9〜1.5dl/g、好ましくは0.9〜1.2dl/gであり、この範囲を外れると加工糸品質が不十分である。一方、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBの固有粘度は、0.3〜0.7dl/g、好ましくは0.35〜0.6dl/gであり、この範囲を外れると加工糸品質が不十分である。
次に、本発明の複合繊維に付与する本発明の処理剤(油剤)、好ましくは紡糸時に付与する本発明の処理剤の必須成分である(A)〜(D)について説明する。
本発明の(A)成分であるポリエーテル(ポリオキシアルキレングリコール共重合体)は、本発明のポリエステル系複合繊維の仮撚加工時の油膜を強化させ、毛羽や断糸の発生防止のために使用するものであり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体である。また、(A)成分は、その重量平均分子量は、1,000〜20,000、好ましくは2000〜9000であり、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合比(重量比)が20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30である、ランダムあるいはブロック型のポリオキシアルキレングリコール共重合体である。もちろん、これらのポリオキシアルキレングリコール共重合体の片末端あるいは両末端は、アルキル基などでエーテル、エステル、チオエーテル、アミノエーテルなどを介して封鎖されてもよく、この末端基の種類によって本発明は何等制限されるものではない。
上記(A)ポリオキシアルキレングリコール共重合体は、従来公知の方法でエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを共重合して得られるが、通常はアルキレンオキサイドと反応できるような活性水素を少なくとも1ケ以上もつ化合物を用い、これにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを共重合して製造される。ここで、活性水素を有する化合物としては、活性水素を有する基が水酸基ならば1価以上のアルコール類、カルボキシル基ならば1価以上の塩基酸類、そしてアミノ基であれば1価以上のアミノ化合物などを挙げることができる。
上記(A)成分の重量平均分子量は、1,000未満では熱安定性に乏しく、分解揮散して平滑性が不十分となるので使用できない。一方、重量平均分子量が20,000を超えると、粘性アップにより平滑性が低下するため不適当である。
また、エチレンオキサイドの共重合割合が80重量%を超えると、仮撚加工部に使用されているゴムの膨潤性が悪化しやすくなる。一方、20重量%未満の場合には、乳化剤が必要であり好ましくない。
ここで、(A)成分としては、好ましくは、重量平均分子量が1,000〜6,000のものと7,000〜20,000のものを併用するのが好ましい。この場合、(A)成分としては、重量平均分子量が1,000〜6,000のものを主体として使用し、重量平均分子量が7,000〜20,000のものは(A)成分全体の10〜20重量%が毛羽対策に有効である。
また、油剤中における(A)成分の含有量は35〜60重量%である必要があり、この範囲未満では耐毛羽性が低下し、逆にこの範囲を超える場合には、他成分の含有量が不十分となって本発明の目的が達成できなくなる。(A)成分の含有量は、好ましくは、40〜55重量%である。
次に、本発明の(B)成分であるエーテルエステル化合物は、各種糸導との擦過による毛羽発生の抑制のために平滑性を改善するものである。平滑性を改善するには、モノエステルが一般的には有効だが、延伸や仮撚加工する際、ヒータープレートにタールが堆積し、タールとの摩擦で逆に毛羽や断糸を誘発するために使用できない。本発明の(B)エーテルエステル化合物は、加熱残渣が少なくタール化がなり難く、平滑性が向上し擦過による毛羽発生が抑制できるものである。
この(B)エーテルエステル化合物は、炭素数6〜18のアルコールにエチレンオキサイドを1〜20モル付加した後、炭素数6〜18の脂肪酸でエステル化したものである。エチレンオキサイドが20モルを超えると、平滑性が低下するので好ましくない。炭素数6〜18のアルコールとしては、直鎖状でも分岐状でも本発明の目的とする効果は得られるが、好ましくは2−ヘチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、6−ドデシルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。一方、炭素数6〜18の脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などが挙げられる。
油剤中における(B)成分の含有量は、20〜55重量%である必要があり、この範囲未満では平滑性が低下し、逆にこの範囲を超える場合には、他成分の含有量が不十分となって本発明の目的が達成できなくなる。(B)成分の含有量は、好ましくは30〜55重量%である。
次に、本発明の(C)成分であるエーテル化合物は、油剤を繊維糸条に均一に付着させるために使用するものであり、炭素数8〜15のアルコールにプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを3〜9モル、通常の方法で付加させたものである。ここで、アルコールは直鎖状でも分岐状でもよいが、特に第二級または第三級、なかでも第二級アルコールは、より顕著な効果が得られるので好ましい。このアルコールとしては、2−エチルヘキシルアルコール、6−ドデシルアルコール、セカンダリーアルコール(C12〜C14)などを好ましく用いることができる。また、付加させるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドのモル数は、上記アルコール1モル当たり3〜9モル、好ましくは7〜9モルである。付加量がこの範囲を外れると、油剤の濡れ性が低下して本発明の目的を達成できない。
このような(C)成分の油剤中の含有量は、5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%である。含有量が5重量%未満では、濡れ性が不十分で、油剤を繊維に均一に付着さることが困難である。一方、15重量%を超えると、本発明の(A)および(B)成分の含有量が低下するため、平滑性不足や糸表面の油膜強化が不十分となって摩擦仮撚加工時の毛羽や断糸が増大する。
次に、本発明の(D)成分であるアルキレンオキサイド付加物の部分リン酸エステルのアミン塩について説明する。(D)成分は、繊維−金属静摩擦係数を下げて、製糸時(延伸時)の毛羽発生を抑制するために使用するものである。
(D)成分は、アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加し、末端をリン酸エステル化しアミンで中和し塩にしたものである。
上記アルコールとしては、炭素数8〜18のカプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、あるいはこれらの分岐アルコールが挙げられる。好ましくは、シリコーンや鉱物油と相溶性が良好な分岐アルコールである。
本発明に用いられる(D)成分は、これらのアルコールに、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを0〜10モル付加させるものであるが、付加モル数として、好ましくはシリコーンや鉱物油と相溶性が良好な2〜8モルである。
中和するアミンとしては、2級および3級アミンで、2級アミンとしては、例えばジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミンなどが挙げられる。また、3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、ジブチルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどが挙げられる。このなかで、好ましくはジブチルエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン塩である。アミン塩は、繊維−金属静摩擦係数を低くすることが可能で、しかも非水系で使用した場合でも油剤の相溶性が良好で均一な油剤を得ることが可能である。
これら(D)成分のアルキレンオキサイド付加物の部分リン酸エステルのアミン塩は、油剤に対して含有比率は1〜5重量%である。含有比率が1重量%未満では対金属と糸との油膜強度が劣り毛羽になりやすく、一方含有比率が5重量%を超えると、平滑性の低下による毛羽発生の防止が困難となる。(D)成分の含有量は、好ましくは2〜4重量%である。
なお、本発明で用いられる上記油剤には、上記成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、従来から使用されている非イオン活性剤、アニオン活性剤、変性シリコーン、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合してもよい。
また、本発明で用いられる油剤は、油剤成分を3〜20重量%含有する水性エマルジョンとして紡糸時に付与されるものである。この際、付与する方法としてはオイリングローラ方式、計量ノズルを用いる方式など、従来から採用されているいずれの方式であってもよい。
油剤の繊維への付着量は、繊維に対して有効成分として0.2〜1.0重量%が必要である。付着量が0.2重量%未満の場合には平滑性および制電性が不十分となって毛羽や断糸、スカム発生などのトラブルを惹き起こす。一方、1.0重量%を超えても毛羽や断糸、スカム発生の抑制効果の向上は少なく、逆に過剰の油剤が糸導などを汚染することになり、新たな問題を惹き起こすことにもなり工業上得策でない。本発明の油剤の付着量は、好ましくは0.4〜0.8重量%である。
本発明においては、上述の油剤が付与された未延伸ポリエステル系複合繊維を延伸、あるいは仮撚加工に供するものであるが、その際、延伸方式は紡糸後、一旦巻き取って延伸する別延方式でも、あるいは紡糸後連続して延伸する直延方式でもかまわない。好ましくは、本発明の効果を最大限発揮できるのは直延方式である。一方、仮撚方式は、ピンあるいはディスク、ベルトの方式でもよい。また、延伸あるいは仮撚加工条件としては特別の条件を採用する必要はなく、目的とする捲縮性能に応じて通常の条件から任意に選択すればよい。延伸あるいは仮撚加工の速度は500〜5,000m/分、延伸ローラー温度およびヒーター温度は仮撚加工のヒーター温度は100〜200℃が一般的である。
なお、以上の説明では、本発明のポリエステル系複合繊維について、主として、未延伸糸について説明したが、これに限定するものではなく、本発明は、上記のように、該未延伸糸を、延伸、あるいは(延伸)仮撚加工してなる、延伸糸、延伸仮撚加工糸も広く包含するものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として、35℃で常法に従って測定した。
(2)OPU測定方法
紡出糸3gを105℃×2時間乾燥後直ちに、重量(W1)を測定し、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とする洗浄用水溶液300cc中に浸析し、40℃にて超音波を少なくとも10分かける。洗浄液を廃棄し、40℃の温水により30分流水洗浄後、室温にて風乾する。その後、105℃×2時間乾燥後直ちに重量(W2)を測定する。
OPU%=[(W1−W2)/W2]×100
上式よりOPU算出する。
(3)糸・糸間の静摩擦
138dtex/36フィラメントのポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型の複合糸からなる未延伸糸または83dtex /36フィラメントのポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型の複合糸からなる延伸糸(F1)を円筒の周りに、ラセン角±15°で約10gの巻き張力で前後に巻き付ける。この円筒は直径が2インチ(5.1cm)で、長さが3インチ(7.6cm)である。上述のポリエステルフィラメントを12インチ(30.5cm)(B)とって、この円筒の上に掛けて、この時、(F2)が(A)の上層部にのっており、かつその巻き付け方向と平行になるようにする。(F2)のdtexの0.04倍の荷重を(F2)の一端にかけ、もう一方の端には、ストレインゲージを連結させる。円筒を0.0016cm/秒の周速で180度回転させて、その時の張力を連続記録する。フィラメント間摩擦係数(f)は、円筒上を走行するベルトの摩擦に関する良く知られた下記式より算出される。
f=(1/π)ln(T2/T1)
ここで、T2はピーク張力の平均値(n=25)、T1はマルチフィラメントdtex ×0.04の荷重により与えられる張力、lnは自然対数記号である。
測定中に非可逆的な伸長、つまり延伸が起ったサンプルのデータは使用しなかった。測定雰囲気温度は25℃で測定を行った。
(4)糸・金属接触体間の静摩擦
83dtex /36フィラメントのポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型の複合糸からなる延伸糸を用い、繊維・金属間走行摩擦測定機で、走行速度0.1m/分で摩擦体として径60mmの梨地クロムピンを用いて、接触角180度、摩擦体入側張力30g(T1)で摩擦体出側の張力(T2)を測定し糸・糸間の静摩擦に記載した式で摩擦係数を求めた。
(5)糸・金属接触体間の動摩擦
83dtex /36フィラメントのポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなるサイド・バイ・サイド型の複合糸からなる延伸糸を用い、繊維・金属間走行摩擦測定機で、走行速度300m/分で摩擦体として径60mmの梨地クロムピンを用いて、接触角180度、摩擦体入側張力10g(T1)で摩擦体出側の張力(T2)を測定し糸・糸間の静摩擦に記載した式で摩擦係数を求めた。
(6)毛羽数
延伸糸或いは加工糸を毛羽試験機で測定し百万mあたりの毛羽数を求めた。
(7)ヒーター上の発煙の発生状況
ヒーター上の発煙の発生状況はヒーター出側に発生した発煙量の大小を肉眼判定し、1〜5級の判定を行った。1級(不可)〜5級(良)
(8)断糸率
延伸糸、仮撚加工糸1,000Kg当たり断糸回数を求めた。
(9)織物の風合い(ふくらみ感、ソフト性)
任意に選んだ10人により官能評価を行ない、良好○、やや不良△、不良×の3段階で評価した。
固有粘度1.05dl/gのポリトリメチレンテレフタレートAのチップと、固有粘度0.4dl/gのポリエチレンテレフタレートBのチップを、重量比率A:B=50:50になるように、複合紡糸機に供給し、サイド・バイ・サイド型の複合紡糸口金より、温度270℃で溶融紡出する際、紡糸糸条に表1に記載した組成物を水系エマルジョンでエマルジョン濃度10%(重量)として純分付着量が0.45%(重量)になるように付着させ、紡糸速度3,000m/分で引取った後、これを巻き取り、198デシテックス/24フィラメントの未延伸糸を得た。この未延伸糸をウレタン製の外接式摩擦仮撚装置を用いて延伸倍率1.8、ヒーター温度190℃、加工速度800m/分で延伸しながら仮撚加工を行い、110デシテックス/24フィラメントの加工糸を得た。次いでこの加工糸の平織物を製織後、95℃で常法に従って精練した。その仮撚加工結果および織物の風合い結果も併せて表1に示した。
















Figure 2005029936
実施例;実験No.1〜3 、比較例;実験No.4〜8
なお、油剤成分の1−1〜4−4は、次のとおりである。
1−1;PO/EO=50/50分子量2,000のランダムポリエーテル(ブタノール出発原料)
1−2;PO/EO=50/50分子量1万のランダムポリエーテル(グリセリン出発原料)
1−3;PO/EO=50/50分子量500のランダムポリエーテル(ブタノール出発原料)
2−1;(EO)10ラウリルエーテルデカネート
2−2;(EO)7ウリルエーテルラウレート
3−1;(EO)nラウリルエーテル
4−1;ラウリルホスフェートジブチルエタノールアミン塩
4−2;(EO)3ラウリルホスフェートK塩
5−1;ラウリルオレート
5−2;(EO)n硬化ヒマシ油エーテル
5−3;ラウリルスルホネートNa塩
固有粘度1.05dl/gのポリトリメチレンテレフタレートAのチップと、固有粘度0.4dl/gのポリエチレンテレフタレートBのチップを、重量比率A:B=50:50になるように、複合紡糸機に供給し、サイド・バイ・サイド型の複合紡糸口金より、温度270℃で溶融紡出する際、紡糸糸条に[実施例1]の実験No.3(実施例)あるいはNo.4(比較例)に記載した組成物を水系エマルジョンでエマルジョン濃度10%(重量)として純分付着量が0.6%(重量)になるように付着させ、紡糸速度1,200m/分、延伸倍率3.1倍、延伸ローラー温度130℃、巻き取り速度3,700m/分で83dtex /36フィラメントの延伸糸を得た。この実験No.を、それぞれ、実験No.9(実施例)、実験No.10(比較例)とする。結果を表2に示す。
Figure 2005029936
本発明によれば、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルとポリエチレンテレフタレート系ポリエステルとのサイド・バイ・サイド型複合繊維に、特定の処理剤(油剤)が付与されているので、紡糸時の紡糸性が良好で、得られた未延伸糸は安定に延伸や仮撚加工ができ、さらに、得られた延伸糸や延伸仮撚加工糸はストレッチ性が高く、膨らみ感やソフトな風合も良好で、品位にも優れる。したがって、本発明のポリエステル系複合繊維は、デニム、カジュアルスポーツ衣料、婦人衣料、ストレッチ裏地などの用途に有用である。

Claims (2)

  1. 高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAと、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBとが、重量比率(A:B)で30:70〜70:30の割合でサイド・バイ・サイド型に貼り合された複合繊維の表面に、下記(A)〜(D)成分[ただし、(A)+(B)+(C)+(D)=100重量%]を必須成分として含有する処理剤が該複合繊維の重量を基準として0.2〜1.0重量%付着していることを特徴とするポリエステル系複合糸繊維。
    (A)プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)との共重合体であって、重量平均分子量が1,000〜20,000、PO/EO共重合重量比が20/80〜80/20であるポリオキシアルキレングリコール共重合体:35〜60重量%
    (B)エチレンオキサイド(EO)を1〜20モル付加した炭素数6〜18のアルコールを炭素数6〜18の脂肪酸でエステル化したエーテルエステル化合物:20〜55重量%
    (C)炭素数8〜15のアルコールにプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを3〜9モル付加したエーテル化合物:5〜15重量%
    (D)炭素数8〜18のアルコールにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを0〜10モル付加したもののリン酸エステルのアミン塩:1〜5重量%
  2. 高粘度のポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルAの固有粘度が0.9〜1.5dl/gであり、低粘度のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルBの固有粘度が0.3〜0.7dl/gである請求項1記載のポリエステル系複合繊維。
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