JP2005029565A - 高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粗芳香族ポリカルボン酸を精製して高純度芳香族ポリカルボン酸を製造するに際して、(I)第1分散媒による粗芳香族ポリカルボン酸のスラリーを攪拌しながら180〜300℃で10分以上加熱熟成処理する熟成工程、(II)加熱熟成処理した芳香族ポリカルボン酸を含むスラリーを、分散媒置換塔に導入し、第2分散媒と接触させ、不純物を含む第1分散媒液と、芳香族ポリカルボン酸結晶を含む第2分散媒スラリーとに分離する分散媒置換工程および、(III)前記第2分散媒スラリーから芳香族ポリカルボン酸結晶を分離する結晶分離工程を有することを特徴とする高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
【選択図】 無
Description
すなわち、芳香族ポリカルボン酸を全溶解により精製する方法では、大量のスチームを必要とするためユーティリティーコストが多大となる。また、前述した芳香族ポリカルボン酸の精製方法では、このエネルギー消費量を減らすためにスラリー濃度を高めた方法で精製されるが、これらの方法により高純度で且つ色相や粒経が良好な芳香族ポリカルボン酸の結晶を得ることが困難である。
図1において、先ず酸化工程で芳香族ポリカルボン酸の原料となるポリアルキル芳香族炭化水素を酸化して粗芳香族ポリカルボン酸が製造される。
熟成工程では、酸化工程で得られた粗芳香族ポリカルボン酸結晶を分散媒(第1分散媒)中でスラリー化して加熱熟成処理する。分散媒置換工程では、熟成工程から抜き出される粗芳香族ポリカルボン酸スラリー(第1分散媒スラリー)と清澄な分散媒(第2分散媒)を接触させ、分散媒を連続的に置換し、結晶と清澄な分散媒とによるスラリー(第2分散媒スラリー)と、不純物を含む第1分散媒液を得る。結晶分離工程では、第2分散媒スラリーから精製された高純度芳香族ポリカルボン酸結晶を分離する。
なお、後述するように、分散媒置換工程からの不純物を含む第1分散媒液は、必要に応じて水素化精製などを行った後、結晶を分離して、酸化工程、熟成工程、或いは分散媒置換工程にリサイクルすることができる。あるいは、この得られた結晶を、そのまま、あるいはエステル化した後、これをプロダクトとして使用することができる。
粗芳香族ポリカルボン酸結晶中には、従来技術で記載のように、酸化反応の中間生成物であるモノカルボン酸類やアルデヒド類、触媒由来の臭素付加物や金属成分、および構造不明の着色成分などの不純物が含まれる。熟成工程では、このような不純物が含まれる粗芳香族ポリカルボン酸結晶を第1分散媒中でスラリー化し、攪拌しながら所定温度で加熱熟成処理することにより、該不純物を第1分散媒に移行ないし転換させ、結晶の品質を向上させる。ここで、攪拌は、機械攪拌でもガス攪拌でもよく、機械攪拌は攪拌機を用いて熟成槽内で攪拌しても、循環ポンプを用いて攪拌しても良い。
分散媒置換工程では、熟成工程から抜き出される粗芳香族ポリカルボン酸スラリー(第1分散媒スラリー)と清澄な分散媒(第2分散媒)を接触させ、分散媒を連続的に置換し、結晶と清澄な液とによるスラリー(第2分散媒スラリー)を得る。この(II)分散媒置換工程では、縦型の分散媒置換塔が好適に用いられ、第1分散媒スラリーは、塔頂付近より、熟成槽からの状態をそのまま維持した状態で供給し、第2分散媒は、分散媒置換塔の下部から導入することが好ましい。
結晶分離工程では、分散媒置換工程で得られた第2分散媒スラリーより、芳香族ポリカルボン酸の結晶を晶析、ろ過等により分離回収する。これにより、精製された高純度芳香族ポリカルボン酸を得ることができる。尚、ここで結晶から分離された母液(ろ液)を熟成工程へ循環使用することも可能である。
なお、本発明において、図1に示すように、分散媒置換工程で抜き出された不純物を含む第1分散媒液は、そのまま、あるいは、必要に応じて金属触媒により水素化又は脱カルボニル化精製した後、落圧、降温等により結晶を分離し、得られた結晶を熟成工程、分散媒置換工程あるいは酸化工程(粗芳香族ポリカルボン酸製造工程)に循環使用することができる。あるいは、この得られた結晶を、そのまま、あるいはエステル化した後、これをプロダクトとして使用することができる。
従って、本発明により高純度芳香族ポリカルボン酸を工業的に極めて有利に製造することができ、本発明の工業的意義は大きい。
なお、以下の実施例および比較例において、原料の粗芳香族ポリカルボン酸および高純度芳香族ポリカルボン酸結晶中の有機不純物は、メチルエステル化後にガスクロマトグラフィーにより分析した。 色相については、サンプル1gを水酸化ナトリウム水溶液10mlに溶解し、10mmの石英セルを用いた400nmの吸光度(以下、OD400で表す)で評価した。このOD400値は、芳香族ポリカルボン酸中の着色性不純物、着色原因物質の量を反映しており、OD400値が低ければ着色性不純物は少ないことになる。 平均粒経は、レーザー回折式乾式粒度分布計(HORIBA LA-500)で測定した。
(I)熟成工程
2,6-ジメチルナフタレンをCo/Mn/Br系触媒存在下、液相酸化して得た粗2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶(ホルミルナフトエ酸含有量:2500ppm、OD400:1.5、平均結晶粒経:5μm)と水を混合してスラリー濃度20重量%に調合し、窒素雰囲気下、攪拌機付500mlオートクレーブに300g予め仕込んで280℃に加熱した。次に、同様の粗2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶に水を混合してスラリー濃度20重量%に調合し、室温にて連続的に120g/hで該オートクレーブに供給した。280℃の熟成槽における滞留時間を3時間として、オートクレーブ底部より連続的に120g/hで抜き出した。オートクレーブ底部より抜き出した2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶の平均粒径は、50μmであった。尚、280℃における2,6-ナフタレンジカルボン酸の水への溶解度は、水100gに対して6gである。
(II)分散媒置換工程
熟成槽におけるオートクレーブ底部より抜き出した2,6-ナフタレンジカルボン酸を含むスラリーを、そのまま280℃で、径25mmφ、高さ50cmの分散媒置換塔の上部に120g/hで供給した。分散媒置換塔の下部から90℃の水を100g/hで供給し、塔頂液を100g/hで抜き出すと共に、2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶を含むスラリーを塔底部より120g/hで抜き出した。
(III)結晶分離工程
分散媒置換塔の塔底部より抜き出された2,6-ナフタレンジカルボン酸スラリーから、2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶をろ過により常圧分離した。これを、90℃の水でリンスした後、乾燥した。得られた高純度2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.09で、平均結晶粒径は40μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
実施例1の(I)熟成工程において、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸の代わりに、ホルミルビフェニルカルボン酸を3000ppm含有し、OD400が1.6であり、平均結晶粒径が4μmの粗4,4’-ビフェニルジカルボン酸を使用した以外は、実施例1と同様に行った。得られた高純度4,4’-ビフェニルジカルボン酸結晶は、ホルミルビフェニルカルボン酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.08、平均結晶粒経は50μmであった。この4,4’-ビフェニルジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
実施例1の(I)熟成工程において、熟成槽の滞留時間を10分とした以外は実施例1と同様に行った。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が1000ppmであり、OD400が0.9であった。平均結晶粒径は、16μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは若干着色していた。
実施例1の(I)熟成工程において、熟成槽の滞留時間を30分とした以外は実施例1と同様に行った。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が100ppmであり、OD400が0.2であった。平均結晶粒径は、30μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは若干着色していた。
実施例1の(I)熟成工程において、熟成槽の滞留時間を5分とした以外は実施例1と同様に行った。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が2000ppmであり、OD400が1.2であった。平均結晶粒径は、10μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは若干着色していた。
実施例1の(I)熟成工程において、熟成槽の温度を160℃とした以外は実施例1と同様に行った。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が2300ppmであり、OD400が1.3で、平均結晶粒径は、7μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは若干着色していた。
実施例1において、分散媒置換工程以降を省略して熟成工程のみによる精製を実施した。即ち、(I)熟成工程で得られたスラリー溶液を常圧まで落圧して、得られた結晶をろ過分離した。これを、90℃の水でリンスした後、乾燥した。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が2000ppm以上であり、OD400が1.35で、平均結晶粒径は40μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは若干着色していた。
0.5重量%のPdを担持したやし殻活性炭100mlを充填した水添塔に、実施例1の(II)分散媒置換工程で得られた分散媒置換塔の塔頂液を280℃のまま供給し、水素の分圧を0.2MPaとして水素化精製した。これを常圧まで落圧して、得られた結晶をろ過分離した。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が20ppm以下であり、OD400が0.6であった。この回収した2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶の内、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸供給量に対して20重量%に相当する分を(I)熟成工程にリサイクルした。それ以外は実施例1と同様に行った。(III)結晶分離工程で得られた高純度2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.07で、平均結晶粒径は40μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
実施例1において、0.5重量%のPdを担持したやし殻活性炭100mlを充填した水添塔に、(II)分散媒置換工程で得られた分散媒置換塔の塔頂液を280℃のまま、水素の分圧を0.2MPaとして水素化精製した。水素化精製液を常圧まで落圧して、得られた結晶をろ過分離した。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶は、ホルミルナフトエ酸の含有量が20ppm以下であり、OD400が0.6であった。この回収した2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶の内、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸供給量に対して20重量%に相当する分を(II)分散媒置換工程にリサイクルした。それ以外は実施例1と同様に行った。(III)結晶分離工程で得られた高純度2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.07で、平均結晶粒径は、40μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
実施例1の(I)熟成工程において、0.5重量%のPdを担持したやし殻活性炭50mlを金属製の網に充填したものを熟成槽の中に設置した以外は、実施例1と同様に行った。(III)結晶分離工程で得られた高純度2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.08で、平均結晶粒径は、50μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
実施例1の(II)分散媒置換工程において、熟成槽におけるオートクレーブ底部より抜き出した2,6-ナフタレンジカルボン酸を含むスラリーを、そのまま280℃で、径25mmφ、高さ50cmの分散媒置換塔の上部に120g/hで供給した。分散媒置換塔の下部から90℃の水を80g/hで供給し、塔頂液を100g/hで抜き出すと共に、2,6-ナフタレンジカルボン酸結晶を含むスラリーを塔底部より100g/hで抜き出した。それ以外は、実施例1と同様に行った。(III)結晶分離工程で得られた高純度2,6-ナフタレンジカルボン酸は、ホルミルナフトエ酸の含有量が10ppm以下であり、OD400が0.09で、平均結晶粒径は、40μmであった。この2,6-ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと共に重縮合してポリエステルとした。生成したポリエステルのペレットは無色透明であった。
1)粗芳香族ポリカルボン酸を含むスラリーを高温で加熱熟成させることにより、粒径が増大すると共に、有機不純物が分散媒へ分配された。
2)高温で加熱熟成した粗芳香族ポリカルボン酸を含むスラリーを分散媒置換塔に供給すると、塔底から高純度芳香族ポリカルボン酸が得られた。
3)分散媒置換塔の塔頂から得られた不純物を含む第1分散媒液を水添精製することによって、粗芳香族ポリカルボン酸に比べ、純度の高い芳香族ポリカルボン酸が得られた。これを循環使用することで、粗芳香族ポリカルボン酸精製の生産効率が向上した。
Claims (10)
- 粗芳香族ポリカルボン酸を精製して高純度芳香族ポリカルボン酸を製造するに際して、(I)第1分散媒による粗芳香族ポリカルボン酸のスラリーを攪拌しながら180〜300℃で、10分以上加熱熟成処理する熟成工程、(II)加熱熟成処理した芳香族ポリカルボン酸を含むスラリーを、分散媒置換塔に導入し、第2分散媒と接触させ、不純物を含む第1分散媒液と、芳香族ポリカルボン酸結晶を含む第2分散媒スラリーとに分離する分散媒置換工程および、(III)前記第2分散媒スラリーから芳香族ポリカルボン酸結晶を分離する結晶分離工程を有することを特徴とする高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 前記第1分散媒が、水および/または酢酸である請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 前記第2分散媒が、水および/または酢酸である請求項1または2に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 前記(I)熟成工程において、加熱熟成処理を、不活性ガスあるいは分子状水素を含むガス雰囲気下で行う請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 触媒の存在下で加熱熟成処理を行う請求項4に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 前記(II)分散媒置換工程において、分散媒置換塔に導入される第2分散媒の温度が、分散媒置換塔へ導入される芳香族ポリカルボン酸を含むスラリーの温度以下である請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 前記(II)分散媒置換工程において、分散媒置換塔で分離される第2分散媒スラリー中の芳香族ポリカルボン酸濃度を、分散媒置換塔へ導入される芳香族ポリカルボン酸を含むスラリー中の芳香族ポリカルボン酸濃度よりも高くする請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- (II)分散媒置換工程で抜き出された不純物を含む第1分散媒液を、金属触媒により水素化精製した後に結晶を分離し、得られた結晶を(I)熟成工程または(II)分散媒置換工程に循環使用する請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 芳香族ポリカルボン酸が、ナフタレンポリカルボン酸およびビフェニルポリカルボン酸から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
- 芳香族ポリカルボン酸が、2,6−ナフタレンジカルボン酸および/または4,4’−ビフェニルジカルボン酸である請求項9に記載の高純度芳香族ポリカルボン酸の製造法。
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