JP3757989B2 - ナフタレンジカルボン酸の精製方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はジアルキルナフタレンを酸化して得られる粗ナフタレンジカルボン酸の精製方法に関する。ナフタレンジカルボン酸は優れた性能を有するポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂の原料として有用である。
【0002】
【従来技術】
ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコール等のジオール類とを重合することにより得られるポリエステルは、優れた引っ張り強度と耐熱性をもち、フィルムやポリエステル繊維、プラスチックボトル等の素材として、工業的に重要な用途をもつ。特に2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを重合させて得られるポリエチレンナフタレート(PEN)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代わる優れた工業用樹脂として近い将来の需要拡大が見込まれている。
【0003】
ナフタレンジカルボン酸は、ジアルキルナフタレンを酢酸溶媒中でCoやMn等の重金属と臭素化合物の存在下に、分子状酸素を高温、高圧で作用させることにより得られる。しかしながら、こうして得られるナフタレンジカルボン酸には、触媒金属であるCoやMnの他に、酸化反応の中間生成物であるホルミルナフトエ酸やメチルナフトエ酸、分解で生じるトリメリット酸、臭素付加したナフタレンジカルボン酸ブロマイド、原料ジアルキルナフタレンの不純物に由来するナフトエ酸やナフタレントリカルボン酸等が不純物として含まれる。
これらの不純物の含まれるナフタレンジカルボン酸をジオール類との重合の原料に用いた場合、得られるポリエステルには耐熱性及び軟化点の低下や、着色する等の品質の劣化がみられる。特にホルミルナフトエ酸がある程度以上含まれている場合には、重合度が上がらない他、ゲル化や着色を生じるためその量の抑制が重要となる。このため高品質のポリエステルを得るためには純度99% 以上の高純度のナフタレンジカルボン酸が必要とされる。
【0004】
一般に有機物の精製には、蒸留、再結晶、昇華等の方法が工業的に用いられるが、ナフタレンジカルボン酸は、高温の加熱で分解するため蒸留が不可能であり、また一般の溶媒に難溶性であるため通常の簡便な再結晶による精製法の適用が困難である。このため高純度のナフタレンジカルボン酸を得る工業的方法は未だ確立しておらず、粗ナフタレンジカルボン酸をメタノール等のアルコール類を反応させてナフタレンジカルボン酸エステルとし、蒸留、再結晶等の操作で精製する方法等が行われている。
【0005】
しかしながらジメチルテレフタレートから高純度テレフタル酸に代替され、経済的に有利な直接重合法によるポリエチレンテレフタレートの製造が可能になったように、ポリエチレンナフタレートの原料としてはナフタレンジカルボン酸エステルではなく高純度ナフタレンジカルボン酸が望ましく、その精製法の確立が急がれている。
【0006】
ナフタレンジカルボン酸を溶媒に溶解し、精製する方法として次のような方法が提案されている。
米国特許第 5,256,817号では、水または酢酸水溶液を溶媒として、300 ℃以上の高温下で溶解し、水添、晶析を行うことにより精製を行っている。この方法では高い溶解度を得るため高温が必要とされ、そのため副反応を生じやすく、例えば脱炭酸反応によりナフトエ酸、核水添反応によりテトラリンジカルボン酸が生成し、なお且つホルミルナフトエ酸が水添が不十分であり、晶析後の結晶に残存してしまうという問題がある。
【0007】
また特開昭62-230747 号では粗2,6-ナフタレンジカルボン酸をジメチルスルホミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶媒で溶解、晶析することによる精製方法が示されている。しかし2,6-ナフタレンジカルボン酸のこれらの溶媒への溶解度が低く、且つ該溶液を水素化した場合、溶媒も水素化されるために水素化処理を行うことができず、重合の際に特に問題とされるホルミルナフトエ酸の完全な除去が難しいという欠点がある。
特開平5-32586 号ではピリジン類に溶解し晶析することによる精製方法が示されている。しかしながら2,6-ナフタレンジカルボン酸の溶解度の温度依存性が低いため回収率が低いという欠点がある。
【0008】
そこでナフタレンジカルボン酸をアルカリに溶解し、アルカリ塩として溶解度を向上させ、精製する方法が提案されている。
例えば特公昭52-20993号や特公昭48-68554号では、粗ナフタレンジカルボン酸を KOHやNaOH等のアルカリ水溶液に溶解し、炭酸ガスや亜硫酸ガスによる酸析によりモノアルカリ塩として析出させ、当該モノアルカリ塩と水とを接触させて不均化する事により2,6-ナフタレンジカルボン酸を遊離させている。しかしこれらの方法では、モノアルカリ塩を析出する際に、2,6-ホルミルナフトエ酸等他の不純物の塩も同時に析出してしまうほか、大量のアルカリや酸の処理及び回収が必要となるという欠点がある。
【0009】
また特公昭52-20994号や特開昭48-68555号では、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸を KOHやNaOH等のアルカリ水溶液に溶解し、冷却または濃縮によりジアルカリ塩での晶析を行い、更に不均化することにより、精製された2,6-ナフタレンジカルボン酸を得る方法が提案されている。しかしこの方法では、アルカリ塩の溶解度の温度依存性が低く、また低温においてもジアルカリ塩の水に対する溶解度が非常に高いため回収率が低く、更に結晶中の微量のアルカリの除去が困難という問題がある。
特開昭 50-135062号では粗2,6-ナフタレンジカルボン酸を炭素数6以下の脂肪族アミン水溶液に溶解し、冷却または濃縮によりジアミン塩として晶析し、加熱分解により精製された2,6-ナフタレンジカルボン酸を得る方法が示されている。しかしこの方法では、低温においてもアミン塩の水に対する溶解度が非常に高いため回収率が低く、工業的には問題がある。
更に特開平5-294892号では、ナフタレンジカルボン酸をアミン類とアルコール類との混合溶媒に溶解後に晶析し、析出するナフタレンジカルボン酸アミン塩をそのアミンの沸点以上の温度で加熱分解し、精製されたナフタレンジカルボン酸を得る方法が示されている。この方法でも、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の低級アルコールに対する溶解度が非常に高いため、回収率が低いという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き従来技術での問題点を改善し、粗ナフタレンジカルボン酸から高純度なナフタレンジカルボン酸を、高い回収率で且つ工業的にも容易に製造できる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは粗ナフタレンジカルボン酸を精製する方法について鋭意研究を重ねた結果、ナフタレンジカルボン酸は脂肪族アミンとの反応によりナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成し、そのアミン塩はピリジン類に対し大きな溶解度の温度依存性を示し低温では低い溶解度を示すこと、ナフタレンジカルボン酸を該溶媒に溶解し、水素化処理することによりホルミルナフトエ酸や、ナフタレンジカルボン酸ブロマイドの量を低減し、適当な条件での晶析によりナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を高い回収率で得られること、さらに加熱によりナフタレンジカルボン酸アミン塩を分解し、精製されたナフタレンジカルボン酸が得られ、粗ナフタレンジカルボン酸から容易に高収率で、高純度のナフタレンジカルボン酸を得ることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、ジアルキルナフタレンの酸化反応により得られた粗ナフタレンジカルボン酸をピリジン類と脂肪族アミン類からなる混合溶媒に溶解し、晶析によりナフタレンジカルボン酸アミン塩を回収し、回収した該アミン塩を加熱分解することを特徴とするナフタレンジカルボン酸の精製方法および、
粗ナフタレンジカルボン酸を混合溶媒に溶解した後、Pt, Pd, Rh, Ru, Ni, Coから選ばれる1種以上の金属を含む触媒の存在下 250℃以下の温度で水素化処理し、晶析を行う該ナフタレンジカルボン酸の精製方法である。
【0013】
本発明で原料として使用される粗ナフタレンジカルボン酸はジアルキルナフタレンの酸化反応により得られたものであれば良く、酸化反応に用いられるジアルキルナフタレンの種類や該酸化条件等については特に制限は無い。
ジアルキルナフタレンとしては、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等があり、アルキル基の位置によりそれぞれ10種の異性体がある。それらのうちポリエステルの原料としては、2,6-置換体と2,7-置換体が有用であり、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸が有用である。これらのジアルキルナフタレンは、通常、重金属及び臭素を主とする酸化触媒存在下、分子状酸素により酸化することによりナフタレンジカルボン酸が得られる。
【0014】
本発明方法において混合溶媒に使用されるピリジン類としては、例えばピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、エチルピリジン、ジエチルピリジン、エチルメチルピリジン、プロピルピリジン、イソプロピルピリジン、N-メチルピリジン、N-エチルピリジン、N-プロピルピリジン、N-イソプロピルピリジン、コリジン等が挙げられる。これらの中でピリジン及びメチルピリジンが特に好適に用いられる。
【0015】
また混合溶媒に使用される脂肪族アミン類としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert- ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン等のアルキルアミンや、ピペリジン、N-メチルピペリジン、ピロリジン、エチレンイミン、ヘキサメチレンイミン等の脂環式アミンが挙げられる。これらの中で取り扱いや入手の容易さからエチルアミン類が好ましく、ナフタレンジカルボン酸とアミンを形成した場合に分解温度の低いトリエチルアミンが特に好ましい。
【0016】
本発明方法では上記の脂肪族アミン類とピリジン類のそれぞれ1種以上からなる混合溶媒が使用される。溶媒の混合比は、ナフタレンジカルボン酸の溶解度に著しく影響を与えるため、慎重に制御する必要がある。その混合比は使用する溶媒種によって異なるが、通常脂肪族アミン類に対するピリジン類の重量比が1倍から10倍であり、好ましくは2倍から5倍の範囲である。
使用されるピリジン類と脂肪族アミン類の混合溶媒のナフタレンジカルボン酸に対する重量比は特に制限されないが、水素化処理を行う場合には反応温度において粗ナフタレンジカルボン酸を溶解させるだけの量が最低限必要である。この量は使用される溶媒の種類と混合比によって異なるため、それぞれの混合溶媒で適宜決められる。粗ナフタレンジカルボン酸に対する混合溶媒は重量比で一般的に1〜100 倍であり、好ましくは 2〜20倍の範囲である。
【0017】
本発明の方法において粗ナフタレンジカルボン酸を混合溶媒に溶解した後、水素化処理を行うことが望ましい。水素化処理は、触媒として活性炭やシリカ、アルミナ等の表面積の大きな担体上に、Pt, Pd, Rh, Ru, Ni, Coから選ばれる1種以上の金属を分散させたものを用いる。PdまたはPtを活性炭上に分散させた触媒が好適である。これらの触媒の存在下、粗ナフタレンジカルボン酸を前記溶媒に溶解させた溶液を水素化処理を行う。反応方式は回分方式でも連続流通式でも良いが、工業的には連続流通式が好ましい。
水素化処理の反応条件は使用する触媒種や触媒量、滞留時間により異なるが、反応温度は通常 100〜250 ℃であり、粗ナフタレンジカルボン酸を混合溶媒に溶解する温度と同じとすることが望ましい。水素分圧は0.01〜30 kg/cm2 であり、好ましくは0.01〜10 kg/cm2 である。 250℃より高温の過酷な反応条件では副反応としてナフタレン環の核水素化によるテトラリンジカルボン酸(TDCA)の生成や、脱炭酸、脱カルボニル反応でのナフトエ酸の生成が起こる場合がある。
ピリジンとアミンの混合溶媒系でナフタレンジカルボン酸を溶解する場合には比較的低温での溶解が可能であり、且つアミンには核水素化反応の抑制効果があるため、これらの副反応を抑制した上で、目的の反応を高選択的に行うことができる。
【0018】
本発明の方法では晶析によりナフタレンジカルボン酸アミン塩を回収し、回収した該アミン塩を加熱分解することにより高純度のナフタレンジカルボン酸が得られる。晶析方式は回分方式、連続方式のどちらでもよいが、工業プロセスとして大量に処理する場合は連続式の方が優れている。
通常、晶析は次の方法により行う。まずナフタレンジカルボン酸を前述のピリジン類と脂肪族アミン類の混合溶媒に溶解する。その際の温度は80〜300 ℃であり、好ましくは 100〜250 ℃である。系内の圧力は使用する溶媒種と温度に依存し特に制限されない。続いて必要があれば水素化処理や活性炭による脱色処理等を行い、不溶物は濾過により除去する。次に冷却または溶媒の留去により結晶を析出させ、濾過や遠心分離による固液分離操作を行う。
この際の晶析温度は−50〜150 ℃であり、好ましくは−20〜80℃である。濾過の際、濾過するスラリー中の結晶に対する液の重量比は 1〜100 倍であり、好ましくは 3〜10倍である。液の重量比が小さい場合は回収率は上がるが精製度が低くなり、またスラリー濃度が高いため濾過操作が困難になる。逆に液の重量比が大きい場合は精製度は上がるが回収率が低く、母液の循環量が大きくなるため不経済である。従って濾過するスラリー中の結晶に対する液の重量比は、精製度と経済性とを勘案して決められる。
析出する結晶はナフタレンジカルボン酸アミン塩であり、母液の抱き込みによる不純物も含まれているので、目的物に対し溶解度をあまりもたない溶媒で洗浄する。通常は洗浄溶媒として使用した脂肪族アミンまたはピリジン類を単独で用いるとよい。母液および洗浄液は、通常はそのまま晶析原料として循環使用するが、必要があれば不純物を抜き出した後に再使用する。
【0019】
晶析により得たナフタレンジカルボン酸アミン塩を、そのまま加熱するか溶媒中で加熱することにより高純度のナフタレンジカルボン酸を得ることができる。
加熱温度は使用したアミンの沸点以上の50〜300 ℃、好ましくは 100〜250 ℃の範囲で行う。必要温度以上の加熱はナフタレンジカルボン酸の分解や着色を起こし、低すぎる場合は分解速度が遅いため経済的に不利である。ナフタレンジカルボン酸アミン塩をそのまま加熱する場合は、着色を避けるために系内を減圧にするかまたは不活性ガスの流通下で行うことが望ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等が用いられる。加熱によりナフタレンジカルボン酸アミン塩が分解され、気体として発生するアミンは冷却して捕集することによりによりほぼ全量回収できる。
ナフタレンジカルボン酸アミン塩を溶媒中で加熱する場合に使用する溶媒は、加熱条件下でナフタレンジカルボン酸や使用した脂肪族アミンとの反応性が無いものであれば特に制限は無い。例えばジュレンやメシチレン、トルエン等の芳香族炭化水素や、流動パラフィン等の飽和炭化水素、エステル類、エーテル類等から選ばれる。加熱により生成する精製ナフタレンジカルボン酸は、濾過や遠心分離等の操作により回収することができる。また発生するアミンは、加熱時に溶媒から連続的に留去し回収するか、熱時濾過した後溶媒から回収する等の方法がとられる。回収されたアミンは循環使用するため、加熱に使用する溶媒はアミンと共沸を生じないものが望ましい。
【0020】
本発明の方法では溶媒に用いられたピリジン類は晶析時に濾液として回収され、脂肪族アミンは上記の如き方法で回収され、必要に応じて蒸留等の方法により精製して容易に循環使用することができる。なお精製ナフタレンジカルボン酸中にアミンやピリジン類が多量に残存すると、ポリエステルに着色を生じるなど品質に悪影響を与える場合があるので結晶の洗浄等を十分に行う必要がある。
【0021】
【実施例】
次に実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、原料および精製ナフタレンジカルボン酸の結晶の純度および性状では、有機物はメチルエステル化後にガスクロマトグラフィーで、無機物は蛍光X線分析法、残留窒素は微量全窒素分析法、粒度測定はレーザー回折式粒度分布測定法で分析した。また色相の評価は 0.5gの試料を10gのジメチルアセトアミドに溶解し、不溶物を濾過により除去し、10mmの石英セルを用いた 500nmの波長の吸光度で示した。
また各表中に記した略号は次の通りである。
2,6-NDCA 2,6-ナフタレンジカルボン酸
2-NA 2-ナフトエ酸
2,6-MNA 2,6-メチルナフトエ酸
2,6-FNA 2,6-ホルミルナフトエ酸
TMA トリメリット酸
NTCA ナフタレントリカルボン酸
Br-2,6-NDCA 2,6-ナフタレンジカルボン酸ブロマイド
TDCA テトラリンジカルボン酸
L.E. 低沸物
H.E. 高沸物
TEA トリエチルアミン
【0022】
参考例1
ピリジンに対するトリエチルアミンの混合比が 0、10、15、20、30、40、50、100wt%である溶媒における80℃と 150℃の2,6-ナフタレンジカルボン酸の溶解度データを表1に示す(20wt%溶液については、30℃と 0℃のデータも示す)。
ピリジンのみを溶媒として用いた場合(0wt%)は溶解度の温度依存性が小さく、TEA のみ(100wt%)では殆どナフタレンジカルボン酸を溶解しないが、適当な混合比の溶媒に対しては溶解度が大きく温度依存性を示し、低温での溶解度は低い。
【0023】
【表1】
【0024】
参考例2
還流冷却器、ガス吹き込み管、撹拌装置、温度測定管を備えた5Lのチタン製オートクレーブに、酢酸コバルト4水塩 3.8g、酢酸マンガン4水塩32.0g、臭化水素酸 5.5g、氷酢酸1800gと99.5%純度の2,6-ジメチルナフタレン 180gを仕込み、反応温度200 〜210 ℃、反応系内圧力 20kg/cm2 に保持して撹拌した。次いで同純度の2,6-ジメチルナフタレン 131gの仕込みと同組成の触媒溶液786gを2時間かけてフィードし、同時に排ガスを13.1L/minの割合で抜き出し、一定圧力を保持しながら圧縮空気を供給した。フィード終了後30分間保持し、反応器を室温まで冷却し、反応混合物を回収し、水及び酢酸で洗浄後乾燥した。その結果、表2に示す組成の粗2,6-ナフタレンジカルボン酸が収率85.6%で得られた。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例1
300ml のオートクレーブに、参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸50gと、ピリジン 120g、トリエチルアミン80g、1% Pd/C 粉末2.5gを仕込み、窒素置換後、水素を5kg/cm2 充填し、 150℃で 2hr反応させた。原料と反応生成液の有機物組成を表3に示す。2,6-FNA の水素化と、Br-2,6-NDCA の水素化分解が生じ、僅かに低沸物、高沸物等の副反応も生じた。
【0027】
比較例1
実施例1と同様な装置と仕込み条件で、反応温度 280℃で 2hr反応させた。表3に反応生成液の組成を示す。反応条件が過酷であるので、2-ナフトエ酸や2,6-メチルナフトエ酸の生成や、低沸物、高沸物の増加が著しい。
【0028】
【表3】
【0029】
実施例2
参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸25.0gと、ピリジン80.1g、トリエチルアミン20.0gを150 ℃で溶解し、 1μm のフィルターで不溶物を濾過した。濾液を撹拌装置、濾過装置と上部に抜き出し口を備えた 300mlのSUS 製オートクレーブに仕込み、窒素パージ後、150 ℃で 2hr加熱した。20℃まで 8時間かけて冷却し、析出した結晶を濾別し、トリエチルアミン25gで洗浄した。結晶を真空下で撹拌しながら、150 ℃で 3hr加熱した。純白色の精製2,6-ナフタレンジカルボン酸の結晶 22.9gを得た(回収率92.6%)。実施条件と併せて原料と結晶の組成分析の結果を表4に示す。
【0030】
実施例 3
参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸25.0gと、ピリジン80.0g、トリエチルアミン20.4gを 150℃で溶解し、 1μm のフィルターで濾過し、濾液を実施例2で使用した 300mlのSUS 製オートクレーブに仕込み、窒素パージ後、150 ℃で 2hr撹拌した。20℃まで 8時間かけて冷却し、析出した結晶を濾過し、トリエチルアミン25gで洗浄した。更に100gのメシチレンを加え、 200℃で50g/hrの割合で上部より気相を留出しながら、同量のメシチレンを追加する操作を連続的に 5hr行った。 200℃で熱時濾過し、純白色の精製2,6-ナフタレンジカルボン酸 23.2gを得た(回収率93.5%)。結晶の組成を表4に示す。
【0031】
実施例4
参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸25.0gと、γ- ピリジン80.0g、トリエチルアミン20.0gを 120℃で加熱溶解し、 1μm のフィルターで濾過し、濾液を 300mlのガラス製 4口フラスコに移し常圧 120℃で 2hr撹拌した。該濾液を 0℃まで 8時間かけて冷却し、析出した結晶を濾別し、トリエチルアミン25gで洗浄した。結晶を真空下で撹拌しながら 150℃で 3hr加熱したところ、純白色の精製2,6-ナフタレンジカルボン酸の結晶24.1gが得られた(回収率97.4%)。結晶の組成を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
比較例2
300ml のガラス製4口フラスコに、参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸50.0gと同量の純水、トリエチルアミン56g(1.2当量)を仕込み、90℃で加熱溶解した。 8時間かけて 0℃まで冷却し、析出した結晶を濾別し、トリエチルアミン50gで洗浄した。結晶を 100mlナスフラスコに移送し、真空下で撹拌しながら、150 ℃で 3hr加熱した。純白色の精製2,6-ナフタレンジカルボン酸22.4gを得た(回収率45.3%)。結晶の組成を表5に示す。得られた結晶の純度は高いが、収率が低い。
【0034】
比較例3
参考例2で得られた粗2,6-ナフタレンジカルボン酸10gとピリジン 150gを 150℃で加熱溶解し、 1μm のフィルターで濾過後、濾液を撹拌装置および濾過装置と上部に抜き出し口を備えた 300mlオートクレーブに移し、150 ℃で 2hr撹拌した。ピリジンを上部の抜き出し口より50g留去し、更に20℃まで冷却し析出した結晶を濾別した。やや着色した結晶 6.8gが得られた(回収率68.7%)。結晶の組成を表5に示す。結晶が着色しており、収率が低く、且つ溶媒が大量に必要である。
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】
実施例より明らかなように、本発明の方法によりジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸を精製することによって高純度のナフタレンジカルボン酸を極めて高い回収率で容易に得ることができる。溶媒として用いられるピリジン類と脂肪族アミン類は容易に循環使用できことなどから本発明の方法は工業的有利な方法であり、その工業的意義は大きい。
Claims (2)
- ジアルキルナフタレンの酸化反応により得られた粗ナフタレンジカルボン酸をピリジン類と脂肪族アミン類からなる混合溶媒に溶解し、晶析によりナフタレンジカルボン酸アミン塩を回収し、回収した該アミン塩を加熱分解することを特徴とするナフタレンジカルボン酸の精製方法
- 粗ナフタレンジカルボン酸を混合溶媒に溶解した後、Pt, Pd, Rh, Ru, Ni, Coから選ばれる1種以上の金属を含む触媒の存在下 250℃以下の温度で水素化処理し、晶析を行う請求項1記載の方法
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