JP2005029495A - フェノール類の吸着分離法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェノール類化合物を保温することなく液相状態で吸着剤に接触させる方法を提供する
【解決手段】2,5−ジクロロフェノールを含むジクロロフェノール異性体混合物から、2,5−ジクロロフェノールを吸着分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、フォージャサイト型ゼオライト吸着剤に接触させることによりジクロロフェノール異性体混合物を保温することなく吸着剤に供給する方法を提供することができる。すなわち、ジクロロフェノール異性体混合物から2,5−ジクロロフェノールを分離するに際し、供給原料を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、吸着剤に接触させることを特徴とする吸着分離法を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】2,5−ジクロロフェノールを含むジクロロフェノール異性体混合物から、2,5−ジクロロフェノールを吸着分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、フォージャサイト型ゼオライト吸着剤に接触させることによりジクロロフェノール異性体混合物を保温することなく吸着剤に供給する方法を提供することができる。すなわち、ジクロロフェノール異性体混合物から2,5−ジクロロフェノールを分離するに際し、供給原料を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、吸着剤に接触させることを特徴とする吸着分離法を提供する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離する吸着分離法に関するものである。特にジクロロフェノール異性体混合物などを1−ヘキサノールに溶解させて吸着剤と接触させ、特定のジクロロフェノール異性体を得る方法に関するものである。フェノール類化合物の異性体は、医農薬品などの原料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
フェノール類化合物は、一般的に融点が高く、また溶融した液体状態では、粘度が高い。フェノール類化合物の融点は、例えば、クレゾールでは、8−34℃、キシレノールでは、22−77℃、クロロフェノールでは、8−45℃、ジクロロフェノールでは、42−68℃である。フェノール類化合物の粘度は、例えばo−クレゾールでは、10.21kPa・s(25℃)、p−クレゾールでは、5.607kPa・s(40℃)である。
【0003】
アルキルフェノール異性体の吸着分離法として、特許文献1には、鉛を含むフォージャサイト型ゼオライト吸着剤を使用する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2にはクレゾール異性体を少なくとも5重量%の水分を含んでおり、バリウム・イオンあるいはバリウム・イオンとカリウム・イオンの混合物で交換されたXゼオライトで構成されている吸着剤に吸着し、次に、このクレゾール異性体を脱着性物質と接触させ、クレゾールを回収する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−245457号公報(実施例1及び2)
【0006】
【特許文献2】
特公平6−100483号公報(実施例1〜3)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するには、供給原料を液相状態にする必要がある。すなわち、融点が室温以上のフェノール類化合物は、液相状態を保つため、保温する必要がある。また、粘度が高いため、吸着分離するにあたって、吸着剤への吸着、脱着過程における拡散が遅く、吸着分離性能が悪い。
【0008】
本発明は、フェノール類化合物を保温することなく液相状態で供給できることを可能にし、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、「フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するに際し、吸着原料を脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させて吸着剤に接触させることを特徴とするフェノール類の吸着分離法」により、フェノール類化合物を保温することなく液相状態で供給することを可能にし、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を見出し、本発明に到達した。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明が適用されるフェノール類化合物としては、クロロフェノール異性体混合物、ジクロロフェノール異性体混合物、トリクロロフェノール異性体混合物、クレゾール異性体混合物、キシレノール異性体混合物、トリメチルフェノール異性体混合物などがあげられる。
【0011】
本発明の方法は、常温で固体又は粘度の高いフェノール類化合物を吸着分離する際、特に有効である。
【0012】
本発明に用いられる吸着剤は、分離対象化合物を吸着できる細孔を有するゼオライトであることが好ましい。より好ましいゼオライトとしてはフォージャサイト型ゼオライトを挙げることが出来る。フォージャサイト型ゼオライトとしては、合成品がゼオライト含量が高いことから好ましく用いられる。
【0013】
本発明において好ましく使用されるフォージャサイト型ゼオライトは、次式で示される結晶性アルミノシリケートである。
【0014】
0.9±0.2M2/nO:Al2O3:xSiO2:yH2O
ここで、Mはカチオンを示し、nはその原子価を示す。xが3未満をX型、xが3以上をY型として分類されるが、何れのゼオライトも好ましく利用できる。yは水和の程度により異なる。
【0015】
ゼオライトは分離対象のフェノール類化合物に適したカチオンを含有するものを使用するのが好ましい。ゼオライトに含まれるカチオンはイオン交換により、合成されたゼオライト中に主に含まれるナトリウムイオンと置き換えることができる。カチオン交換の方法は通常、目的のカチオンを含む化合物、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物などの水溶液にゼオライトを接触させることにより実施される。イオン交換率はカチオンの種類により異なるが水溶液中に含まれる量やイオン交換処理回数により任意に設定することができる。イオン交換後には十分に水洗し、交換されて水溶液中に溶出したナトリウムイオンやそのカウンターアニオンである例えば塩素イオン、硝酸イオンなどを除去するのが好ましい。
【0016】
カチオン交換率の測定は、原子吸光法、ICP法、蛍光X線法など公知の分析法により求めることが出来る。好ましいカチオン含有率としては、ナトリウムイオン2%〜100%、鉛イオン0%〜50%、カリウムイオン0〜98%である。
【0017】
一般に吸着剤は、成形して用いる。成形体はゼオライトのみを固めたものでも、アルミナ、粘土などのバインダーと共に造粒したものでも良い。造粒の仕方は、例えばアルミナなどのバインダーと共に混練りした後、押し出し機で押し出し、マルメライザーでマルメることによって作ることができる。その粒径は、通常、0.1mm以上である。これ以上であれば圧損を大きくすることなく分離が可能である。大きさの上限は通常5mmであるが、拡散を有利に進めるために、粒径は小さい方が好ましい。1mm以下が好ましくさらに好ましくは0.5mm以下である。
【0018】
ゼオライトを含む吸着剤は、使用する前に予めゼオライト中の結晶水を必要に応じて除去するのが好ましい。通常は200〜600℃で加熱することにより、結晶水を除去することができる。
【0019】
本発明の吸着分離法を用いて、フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するための吸着分離技術は、いわゆるクロマト分取法であってもよいし、また擬似移動床による吸着分離方法でもよい。擬似移動床による分離が、特定の1異性体を分離して製造する場合には、最も好ましく用いられる。
【0020】
擬似移動床による連続的吸着分離技術は基本的操作として、次に示す吸着操作、濃縮操作、脱着操作及び脱着剤回収操作を連続的に循環して実施される。
(1) 吸着操作:フェノール類化合物の異性体混合物がフォージャサイト型ゼオライトの吸着剤と接触し、強吸着成分が選択的に吸着される。弱吸着成分はラフィネート成分として高純度化され後で述べる脱着剤と共に回収される。
(2) 濃縮操作:強吸着成分を選択的に吸着した吸着剤は後で述べるエクストラクトの一部と接触させられ、吸着剤上に非選択的に吸着している弱吸着成分が追い出され強吸着成分が高純度化される。
(3) 脱着操作:高純度化された強吸着成分は脱着剤によって吸着剤から追い出され、脱着剤を伴ってエクストラクト成分として回収される。
(4) 脱着剤回収操作:実質的に脱着剤のみを吸着した吸着剤は、ラフィネート流れの一部と接触させられ該吸着剤に含まれる脱着剤の一部が脱着剤回収流れとして回収される。
【0021】
上記、擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示したのが図1である。吸着剤を充填した吸着室1〜12が連続的に循環して連結されている。
【0022】
本発明は、吸着原料のフェノール類化合物の異性体混合物を脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させて吸着剤に接触させるのがポイントである。吸着原料は、重量割合で5〜80%となるように脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させるのが好ましい。その中でも重量割合で30〜55%となる濃度がより好ましい。
【0023】
吸着原料を溶解させる脂肪族アルコール又は脂環式アルコールは、吸着分離で分離された後、フェノール類化合物の異性体や脱着剤との混合物で得られるので、その後分離する必要がある。分離は蒸留など通常の方法で行えばよい。脂肪族アルコール又は脂環式アルコールはフェノール類化合物および/または脱着剤との分離が必要なことからフェノール類化合物の異性体および/または脱着剤と沸点などの物性差が大きいものが好ましい。また吸着塔内で、使用中に分解したり、他の化合物に変換したりしない熱的、化学的に安定な化合物ほど好ましく、吸着原料と共に吸着剤に供給されるため、粘度が低く、吸着原料と同等の吸着力を持っているものが好ましい。
【0024】
脱着剤との分離が不要になる点から、脱着剤に使われる脂肪族アルコール又は脂環式アルコールにフェノール類化合物を溶解させるのが好ましい。図2に示すように、吸着分離で得られたフェノール類化合物の異性体と脱着剤の混合液から脱着剤を蒸留分離し、分離した脱着剤に吸着原料を溶解させてリサイクルするのがより好ましい。
【0025】
フェノール類化合物の異性体混合物を溶解させるのに好ましいアルコールは、脂肪族アルコール及び脂環式アルコールのうちでも、炭素数3〜7の脂肪族アルコール及び炭素数3〜7の脂環式アルコールがより好ましい。
【0026】
本発明を、ジクロロフェノール異性体混合物から特定の異性体を吸着分離する際に適用する場合、吸着剤は、フォージャサイト型ゼオライトが好ましく、その中でもY型ゼオライトがより好ましい。ゼオライトはナトリウムイオン、カリウムイオンおよび鉛イオンから選ばれる少なくとも一つのカチオンを含んでいるのが好ましく、その中でもナトリウムイオンを含有しているものが特に好ましい。
好ましいカチオン含有率としては、ナトリウムイオン2%〜100%、鉛イオン0%〜50%、カリウムイオン0〜98%でり、その中でもナトリウムイオン100%のY型ゼオライトがより好ましい。吸着原料を溶解させる脂肪族アルコール又は脂環式アルコール濃度は、重量割合で5〜80%の脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させるのが好ましい。その中でも重量割合で30〜55%がより好ましい。吸着原料を溶解する脂肪族アルコール又は脂環式アルコールは、脱着剤と同じであることが好ましく、炭素数が3〜7のアルコールから選ばれる少なくとも一種であるのが好ましく、その中でも1−ヘキサノールがより好ましい。特にジクロロフェノール異性体混合物から2,5−ジクロロフェノールを分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに重量割合で30〜80%となるように、より好ましくは40〜50%となる濃度で溶解させ、ナトリウムイオン含有しているY型ゼオライトを含む吸着剤と接触させ吸着分離するのが好ましい。
【0027】
【実施例】
(吸着剤の調製)
吸着剤
ナトリウムタイプY型ゼオライト(以下Na−Yと表す。)(東ソー(株)製・ゼオラムNa−Y粉末品;SiO2 /Al2 O3 モル比=5.5)成型品(0.4mφ押し出しマルメ造粒品)をそのまま利用した。
【0028】
実施例1
吸着剤を予め500℃、1時間焼成し、デシケーター中で冷却した。この吸着剤を吸着カラム(内径4.6mmφ、長さ5000mm)に最密充填した。このカラムを150℃のオイルバスに浸し、脱着剤1−ヘキサノールでカラム内を液置換した。脱着剤を流通しながら、カラム温度が150℃になるように安定化させた後、脱着剤の供給を停止し同時に脱着剤に溶解させた吸着原料(組成を下記に示す)を1.5ml/min.(20℃)で供給した。カラム出口の液組成の変化をガスクロマトグラフ及び液クロマトグラフを用いて時間ごとに分析し、流出曲線を調べた。結果を図3に示す。
【0029】
ジクロロフェノール異性体混合物を1−ヘキサノールに溶解させることにより、保温することなく液相状態で吸着原料供給することができた。また、図3から、拡散速度の影響による分離性能の悪化はなく、2,5−ジクロロフェノールを最も早く流出しており、ジクロロフェノールを分離可能なことが確認できた。
【0030】
吸着原料を脱着剤(1−ヘキサノール)に溶解させた供給原料の組成
n−オクタン 4.5重量%
2,3―DCP 5.0重量%
2,4―DCP 7.0重量%
2,5―DCP 32.0重量%
2,6―DCP 3.0重量%
3,4―DCP 0.5重量%
1−ヘキサノール 48.0重量%
(ジクロロフェノールをDCPと略す)
【0031】
【発明の効果】
2,5−ジクロロフェノールを含むジクロロフェノール異性体混合物から、2,5−ジクロロフェノールを吸着分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、フォージャサイト型ゼオライト吸着剤に接触させることによりジクロロフェノール異性体混合物を保温することなく液相状態で供給し、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様である擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示す図である。
【図2】本発明で脱着剤をリサイクル使用する場合のプロセスを模式的に示した図である。
【図3】本発明の実施例1における流出曲線を示す図である。
【符号の説明】
1〜12:吸着室
13:脱着剤供給ライン
14:エクストラクト抜き出しライン
15:異性体混合物供給ライン
16:ラフィネート抜き出しライン
17:脱着剤回収ライン
18:バルブ
19:異性体混合物(吸着原料)供給ライン
20:吸着原料溶解用脱着剤供給ライン
21:吸着塔
22:エクストラクト蒸留塔
23:ラフィネート蒸留塔
24:エクストラクト抜き出しライン
25:ラフィネート抜き出しライン
26:脱着剤回収ライン
オクタン:流出液中のn−オクタン重量濃度
2,6−DCP:流出液中の2,6−DCP重量濃度
2,3−DCP:流出液中の2,3−DCP重量濃度
2,5−DCP:流出液中の2,5−DCP重量濃度
2,4−DCP:流出液中の2,4−DCP重量濃度
3,4−DCP:流出液中の3,4−DCP重量濃度
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離する吸着分離法に関するものである。特にジクロロフェノール異性体混合物などを1−ヘキサノールに溶解させて吸着剤と接触させ、特定のジクロロフェノール異性体を得る方法に関するものである。フェノール類化合物の異性体は、医農薬品などの原料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
フェノール類化合物は、一般的に融点が高く、また溶融した液体状態では、粘度が高い。フェノール類化合物の融点は、例えば、クレゾールでは、8−34℃、キシレノールでは、22−77℃、クロロフェノールでは、8−45℃、ジクロロフェノールでは、42−68℃である。フェノール類化合物の粘度は、例えばo−クレゾールでは、10.21kPa・s(25℃)、p−クレゾールでは、5.607kPa・s(40℃)である。
【0003】
アルキルフェノール異性体の吸着分離法として、特許文献1には、鉛を含むフォージャサイト型ゼオライト吸着剤を使用する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2にはクレゾール異性体を少なくとも5重量%の水分を含んでおり、バリウム・イオンあるいはバリウム・イオンとカリウム・イオンの混合物で交換されたXゼオライトで構成されている吸着剤に吸着し、次に、このクレゾール異性体を脱着性物質と接触させ、クレゾールを回収する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−245457号公報(実施例1及び2)
【0006】
【特許文献2】
特公平6−100483号公報(実施例1〜3)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するには、供給原料を液相状態にする必要がある。すなわち、融点が室温以上のフェノール類化合物は、液相状態を保つため、保温する必要がある。また、粘度が高いため、吸着分離するにあたって、吸着剤への吸着、脱着過程における拡散が遅く、吸着分離性能が悪い。
【0008】
本発明は、フェノール類化合物を保温することなく液相状態で供給できることを可能にし、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、「フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するに際し、吸着原料を脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させて吸着剤に接触させることを特徴とするフェノール類の吸着分離法」により、フェノール類化合物を保温することなく液相状態で供給することを可能にし、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を見出し、本発明に到達した。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明が適用されるフェノール類化合物としては、クロロフェノール異性体混合物、ジクロロフェノール異性体混合物、トリクロロフェノール異性体混合物、クレゾール異性体混合物、キシレノール異性体混合物、トリメチルフェノール異性体混合物などがあげられる。
【0011】
本発明の方法は、常温で固体又は粘度の高いフェノール類化合物を吸着分離する際、特に有効である。
【0012】
本発明に用いられる吸着剤は、分離対象化合物を吸着できる細孔を有するゼオライトであることが好ましい。より好ましいゼオライトとしてはフォージャサイト型ゼオライトを挙げることが出来る。フォージャサイト型ゼオライトとしては、合成品がゼオライト含量が高いことから好ましく用いられる。
【0013】
本発明において好ましく使用されるフォージャサイト型ゼオライトは、次式で示される結晶性アルミノシリケートである。
【0014】
0.9±0.2M2/nO:Al2O3:xSiO2:yH2O
ここで、Mはカチオンを示し、nはその原子価を示す。xが3未満をX型、xが3以上をY型として分類されるが、何れのゼオライトも好ましく利用できる。yは水和の程度により異なる。
【0015】
ゼオライトは分離対象のフェノール類化合物に適したカチオンを含有するものを使用するのが好ましい。ゼオライトに含まれるカチオンはイオン交換により、合成されたゼオライト中に主に含まれるナトリウムイオンと置き換えることができる。カチオン交換の方法は通常、目的のカチオンを含む化合物、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物などの水溶液にゼオライトを接触させることにより実施される。イオン交換率はカチオンの種類により異なるが水溶液中に含まれる量やイオン交換処理回数により任意に設定することができる。イオン交換後には十分に水洗し、交換されて水溶液中に溶出したナトリウムイオンやそのカウンターアニオンである例えば塩素イオン、硝酸イオンなどを除去するのが好ましい。
【0016】
カチオン交換率の測定は、原子吸光法、ICP法、蛍光X線法など公知の分析法により求めることが出来る。好ましいカチオン含有率としては、ナトリウムイオン2%〜100%、鉛イオン0%〜50%、カリウムイオン0〜98%である。
【0017】
一般に吸着剤は、成形して用いる。成形体はゼオライトのみを固めたものでも、アルミナ、粘土などのバインダーと共に造粒したものでも良い。造粒の仕方は、例えばアルミナなどのバインダーと共に混練りした後、押し出し機で押し出し、マルメライザーでマルメることによって作ることができる。その粒径は、通常、0.1mm以上である。これ以上であれば圧損を大きくすることなく分離が可能である。大きさの上限は通常5mmであるが、拡散を有利に進めるために、粒径は小さい方が好ましい。1mm以下が好ましくさらに好ましくは0.5mm以下である。
【0018】
ゼオライトを含む吸着剤は、使用する前に予めゼオライト中の結晶水を必要に応じて除去するのが好ましい。通常は200〜600℃で加熱することにより、結晶水を除去することができる。
【0019】
本発明の吸着分離法を用いて、フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するための吸着分離技術は、いわゆるクロマト分取法であってもよいし、また擬似移動床による吸着分離方法でもよい。擬似移動床による分離が、特定の1異性体を分離して製造する場合には、最も好ましく用いられる。
【0020】
擬似移動床による連続的吸着分離技術は基本的操作として、次に示す吸着操作、濃縮操作、脱着操作及び脱着剤回収操作を連続的に循環して実施される。
(1) 吸着操作:フェノール類化合物の異性体混合物がフォージャサイト型ゼオライトの吸着剤と接触し、強吸着成分が選択的に吸着される。弱吸着成分はラフィネート成分として高純度化され後で述べる脱着剤と共に回収される。
(2) 濃縮操作:強吸着成分を選択的に吸着した吸着剤は後で述べるエクストラクトの一部と接触させられ、吸着剤上に非選択的に吸着している弱吸着成分が追い出され強吸着成分が高純度化される。
(3) 脱着操作:高純度化された強吸着成分は脱着剤によって吸着剤から追い出され、脱着剤を伴ってエクストラクト成分として回収される。
(4) 脱着剤回収操作:実質的に脱着剤のみを吸着した吸着剤は、ラフィネート流れの一部と接触させられ該吸着剤に含まれる脱着剤の一部が脱着剤回収流れとして回収される。
【0021】
上記、擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示したのが図1である。吸着剤を充填した吸着室1〜12が連続的に循環して連結されている。
【0022】
本発明は、吸着原料のフェノール類化合物の異性体混合物を脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させて吸着剤に接触させるのがポイントである。吸着原料は、重量割合で5〜80%となるように脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させるのが好ましい。その中でも重量割合で30〜55%となる濃度がより好ましい。
【0023】
吸着原料を溶解させる脂肪族アルコール又は脂環式アルコールは、吸着分離で分離された後、フェノール類化合物の異性体や脱着剤との混合物で得られるので、その後分離する必要がある。分離は蒸留など通常の方法で行えばよい。脂肪族アルコール又は脂環式アルコールはフェノール類化合物および/または脱着剤との分離が必要なことからフェノール類化合物の異性体および/または脱着剤と沸点などの物性差が大きいものが好ましい。また吸着塔内で、使用中に分解したり、他の化合物に変換したりしない熱的、化学的に安定な化合物ほど好ましく、吸着原料と共に吸着剤に供給されるため、粘度が低く、吸着原料と同等の吸着力を持っているものが好ましい。
【0024】
脱着剤との分離が不要になる点から、脱着剤に使われる脂肪族アルコール又は脂環式アルコールにフェノール類化合物を溶解させるのが好ましい。図2に示すように、吸着分離で得られたフェノール類化合物の異性体と脱着剤の混合液から脱着剤を蒸留分離し、分離した脱着剤に吸着原料を溶解させてリサイクルするのがより好ましい。
【0025】
フェノール類化合物の異性体混合物を溶解させるのに好ましいアルコールは、脂肪族アルコール及び脂環式アルコールのうちでも、炭素数3〜7の脂肪族アルコール及び炭素数3〜7の脂環式アルコールがより好ましい。
【0026】
本発明を、ジクロロフェノール異性体混合物から特定の異性体を吸着分離する際に適用する場合、吸着剤は、フォージャサイト型ゼオライトが好ましく、その中でもY型ゼオライトがより好ましい。ゼオライトはナトリウムイオン、カリウムイオンおよび鉛イオンから選ばれる少なくとも一つのカチオンを含んでいるのが好ましく、その中でもナトリウムイオンを含有しているものが特に好ましい。
好ましいカチオン含有率としては、ナトリウムイオン2%〜100%、鉛イオン0%〜50%、カリウムイオン0〜98%でり、その中でもナトリウムイオン100%のY型ゼオライトがより好ましい。吸着原料を溶解させる脂肪族アルコール又は脂環式アルコール濃度は、重量割合で5〜80%の脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させるのが好ましい。その中でも重量割合で30〜55%がより好ましい。吸着原料を溶解する脂肪族アルコール又は脂環式アルコールは、脱着剤と同じであることが好ましく、炭素数が3〜7のアルコールから選ばれる少なくとも一種であるのが好ましく、その中でも1−ヘキサノールがより好ましい。特にジクロロフェノール異性体混合物から2,5−ジクロロフェノールを分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに重量割合で30〜80%となるように、より好ましくは40〜50%となる濃度で溶解させ、ナトリウムイオン含有しているY型ゼオライトを含む吸着剤と接触させ吸着分離するのが好ましい。
【0027】
【実施例】
(吸着剤の調製)
吸着剤
ナトリウムタイプY型ゼオライト(以下Na−Yと表す。)(東ソー(株)製・ゼオラムNa−Y粉末品;SiO2 /Al2 O3 モル比=5.5)成型品(0.4mφ押し出しマルメ造粒品)をそのまま利用した。
【0028】
実施例1
吸着剤を予め500℃、1時間焼成し、デシケーター中で冷却した。この吸着剤を吸着カラム(内径4.6mmφ、長さ5000mm)に最密充填した。このカラムを150℃のオイルバスに浸し、脱着剤1−ヘキサノールでカラム内を液置換した。脱着剤を流通しながら、カラム温度が150℃になるように安定化させた後、脱着剤の供給を停止し同時に脱着剤に溶解させた吸着原料(組成を下記に示す)を1.5ml/min.(20℃)で供給した。カラム出口の液組成の変化をガスクロマトグラフ及び液クロマトグラフを用いて時間ごとに分析し、流出曲線を調べた。結果を図3に示す。
【0029】
ジクロロフェノール異性体混合物を1−ヘキサノールに溶解させることにより、保温することなく液相状態で吸着原料供給することができた。また、図3から、拡散速度の影響による分離性能の悪化はなく、2,5−ジクロロフェノールを最も早く流出しており、ジクロロフェノールを分離可能なことが確認できた。
【0030】
吸着原料を脱着剤(1−ヘキサノール)に溶解させた供給原料の組成
n−オクタン 4.5重量%
2,3―DCP 5.0重量%
2,4―DCP 7.0重量%
2,5―DCP 32.0重量%
2,6―DCP 3.0重量%
3,4―DCP 0.5重量%
1−ヘキサノール 48.0重量%
(ジクロロフェノールをDCPと略す)
【0031】
【発明の効果】
2,5−ジクロロフェノールを含むジクロロフェノール異性体混合物から、2,5−ジクロロフェノールを吸着分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を脱着剤である1−ヘキサノールに溶解させ、フォージャサイト型ゼオライト吸着剤に接触させることによりジクロロフェノール異性体混合物を保温することなく液相状態で供給し、且つ、吸着分離性能を向上させる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様である擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示す図である。
【図2】本発明で脱着剤をリサイクル使用する場合のプロセスを模式的に示した図である。
【図3】本発明の実施例1における流出曲線を示す図である。
【符号の説明】
1〜12:吸着室
13:脱着剤供給ライン
14:エクストラクト抜き出しライン
15:異性体混合物供給ライン
16:ラフィネート抜き出しライン
17:脱着剤回収ライン
18:バルブ
19:異性体混合物(吸着原料)供給ライン
20:吸着原料溶解用脱着剤供給ライン
21:吸着塔
22:エクストラクト蒸留塔
23:ラフィネート蒸留塔
24:エクストラクト抜き出しライン
25:ラフィネート抜き出しライン
26:脱着剤回収ライン
オクタン:流出液中のn−オクタン重量濃度
2,6−DCP:流出液中の2,6−DCP重量濃度
2,3−DCP:流出液中の2,3−DCP重量濃度
2,5−DCP:流出液中の2,5−DCP重量濃度
2,4−DCP:流出液中の2,4−DCP重量濃度
3,4−DCP:流出液中の3,4−DCP重量濃度
Claims (7)
- フェノール類化合物の異性体混合物から特定の異性体を吸着分離するに際し、吸着原料を脂肪族アルコール又は脂環式アルコールに溶解させて吸着剤に接触させることを特徴とするフェノール類の吸着分離法。
- 吸着剤が、フォージャサイト型ゼオライトであることを特徴とする請求項1記載のフェノール類の吸着分離法。
- 吸着原料を溶解させる脂肪族アルコール又は脂環式アルコールが脱着剤であることを特徴とする請求項1または2記載のフェノール類の吸着分離法。
- 吸着分離で得られたフェノール類化合物と脱着剤の混合液から脱着剤を蒸留分離し、分離した脱着剤に吸着原料を溶解させてリサイクルすることを特徴とする請求項3記載のフェノール類の吸着分離法。
- 脂肪族アルコール又は脂環式アルコールの炭素数が3〜7であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のフェノール類の吸着分離法。
- フェノール類化合物が、クロロフェノール、ジクロロフェノール、トリクロロフェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノールから選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のフェノール類の吸着分離法。
- ジクロロフェノール異性体混合物から2,5−ジクロロフェノールを分離するに際し、ジクロロフェノール異性体混合物を1−ヘキサノールに溶解させて、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び鉛イオンから選ばれる少なくとも一つを含有するY型ゼオライトと接触させることを特徴とする請求項6記載のフェノール類の吸着分離法。
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---|---|---|---|
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
US7458796B2 (en) | 2005-06-17 | 2008-12-02 | The Japan Steel Works, Ltd. | Mold clamping apparatus of injection molding machine and method of adjusting effective length of tie bar |
CN108211423A (zh) * | 2018-02-28 | 2018-06-29 | 北京化工大学 | 一种用可生物降解化合物作为吸附剂吸附分离油中酚类化合物的方法 |
CN116239451A (zh) * | 2022-12-16 | 2023-06-09 | 中触媒新材料股份有限公司 | 一种间对甲酚的分离提纯方法 |
-
2003
- 2003-07-10 JP JP2003195149A patent/JP2005029495A/ja active Pending
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