JP2007238484A - パラ−キシレン異性体の分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】p−キシレンを含むC8芳香族炭化水素混合物から、p−キシレンを経済的に分離する。
【解決手段】p−キシレンを含むC8芳香族炭化水素混合物から、p−キシレンを吸着分離するに際し、フォージャサイト型吸着剤と4−エチル−m−キシレン脱着剤により、経済的にp−キシレンを分離できる。すなわち、フォージャサイト型ゼオライト吸着剤を用いて、パラ−キシレンを含有する混合物からパラ−キシレンを吸着分離する際に、脱着剤として、4−エチル−m−キシレンを用いることを特徴とするパラ−キシレン異性体の分離方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、パラ−キシレンを含む混合物、特に、C8芳香族炭化水素を主成分とする混合物からパラ−キシレンをゼオライト吸着剤により吸着分離するにあたって、特定の脱着剤を用いる方法に関わるものである。パラ−キシレンはポリエステル原料などとして極めて重要である。
キシレン異性体のうち、現在工業的に、特に、重要なものはパラ−キシレンである。パラ−キシレンは合成繊維ポリエステルの粗原料として、これまで、その需要は著しく増大してきた。今後もその傾向は変わらないものと予想される。
C8芳香族炭化水素混合物には、キシレン異性体であるパラ−キシレン、メタ−キシレン、オルソ−キシレン及びエチルベンゼンが存在している。これらキシレン異性体及びエチルベンゼンの間の沸点差は小さい。即ち、パラ−キシレン138℃、メタ−キシレン139.1℃、オルソ−キシレン144.4℃、エチルベンゼン136.2℃であり、蒸留で高純度のパラ−キシレンを得ることは殆ど不可能である。
パラ−キシレンを高純度で得る工業的方法としては、深冷分離法と吸着分離法があり、現在、吸着分離法が主流となっている。深冷分離法は、パラ−キシレンが他のキシレン異性体及びエチルベンゼンより、融点が高いことを利用して、低温でパラ−キシレンを結晶化させて分離する方法である。一方、吸着分離法は、ゼオライト吸着剤を用い、ゼオライト細孔内でキシレン各異性体及びエチルベンゼンとの親和性等による吸着力の差を利用して分離する方法である。特に、パラ−キシレンを最も強く吸着するゼオライト吸着剤、特にフォージャサイト型ゼオライトが好ましく用いられている。
パラ−キシレン吸着分離の工業的方法は、パラ−キシレンを含むC8芳香族炭化水素混合物をゼオライト吸着剤と接触させ、ゼオライト吸着剤にパラ−キシレンを選択的に吸着させる。次いで、脱着剤を用いてゼオライト吸着剤に選択的に吸着しているパラ−キシレンを脱着剤と置換させることにより脱着させ、パラ−キシレンを脱着剤と共に、流出させ、蒸留分離法によりパラ−キシレンと脱着剤を分離し、製品パラ−キシレンを得る。
パラ−キシレン製造コストを低減させる為に、パラ−キシレン分離コストを削減することは、極めて重要な課題の一つである。パラ−キシレンの吸着分離コストを削減するための方策の幾つかを例示すれば次の通りである。
(1)パラ−キシレン吸着分離性能のより優れた吸着剤を利用すること。
パラ−キシレン吸着分離性能を向上させるフォージャサイト型ゼオライト中に存在する好ましいカチオンとして、バリウムイオン、カリウムイオンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
(2)パラ−キシレン吸着分離性能を向上させる成分を吸着剤中に存在させること。
フォージャサイト型ゼオライト中に水を存在させたり(例えば、特許文献2参照)、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミンを存在させる(例えば、特許文献3参照)ことにより、パラ−キシレン吸着分離性能が向上することが開示されている。
(3)吸着したパラ−キシレンを効率的に脱着出来、パラ−キシレンと脱着剤との混合物を蒸留分離しやすくするため、パラ−キシレンとの沸点差が大きい脱着剤を利用すること。
ゼオライト吸着剤を用いるパラ−キシレン吸着分離用脱着剤が、C8芳香族芳香族炭化水素より、高い沸点を有し、分子当たり炭素数が11より少ない芳香族炭化水素が脱着剤として好ましく、そのなかでもジエチルベンゼンが好ましく、特に、パラ−ジエチルベンゼンが最も好ましいことを開示している(例えば、特許文献4参照)。ジエチルベンゼンより更に沸点が高い脱着剤であれば、キシレンとの蒸留分離が容易になることから、ジエチルトルエン(例えば、特許文献5参照)、ジフェニルメタン(例えば、特許文献6参照)、1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えば、特許文献7参照)等が好ましいことが開示されている。
米国特許第3,558,730号明細書(カラム4) 米国特許第3,734,974号明細書(カラム10、表1) 米国特許第4,283,587号明細書(カラム7〜10、表I〜VI) 米国特許第3,686,342号明細書(カラム2〜3) 米国特許第4,864,069号明細書(カラム7、実施例1) 米国特許第5,495,061号明細書(カラム10〜11) 米国特許第5,849,981号明細書(カラム10〜13)
パラ−キシレンを含むC8芳香族炭化水素混合物からパラ−キシレンを効率的に吸着分離し、製品パラ−キシレンを経済的に回収する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、「フォージャサイト型ゼオライト吸着剤を用いて、パラ−キシレンを含有するC8芳香族炭化水素混合物からパラ−キシレンを吸着分離する際に、4−エチル−m−キシレンを含有する脱着剤を用いることを特徴とするパラ−キシレン異性体の分離方法」により、効率的に製造できることを見出し、本発明に到達した。
本発明に関わる4−エチル−m−キシレンは、現在工業的に脱着剤として使用されているパラ−ジエチルベンゼンに比べて脱着性能が優れている。更に、4−エチル−m−キシレンの沸点は188℃、パラ−ジエチルベンゼンの沸点は183℃である。4−エチル−m−キシレンの沸点はより高いため、吸着分離工程で分離され流出してくるパラ−キシレンと脱着剤混合物を蒸留分離する際により容易に分離できる。これらの効果により、パラ−キシレン含有C8芳香族炭化水素混合物からパラ−キシレンを効率的に分離でき、パラ−キシレンの分離コストを低減できる。
本発明に適用されるパラ−キシレンを含む混合物からパラ−キシレンを吸着分離するが、パラ−キシレンを含む混合物としては、C8芳香族炭化水素混合物が好ましく用いられる。C8芳香族炭化水素混合物としては以下に示す炭化水素混合物を単独で、または混合して使用することが出来る。
a.エチルベンゼンを含有する熱分解型キシレン
b.リフォメート型キシレン
c.これらキシレン異性体混合物中のエチルベンゼン成分を反応で、或いは、分離でエチルベンゼン濃度を減少させたキシレン異性体混合物
d.トランスアルキレーション反応で製造するキシレン異性体混合物
e.キシレン異性体混合物からパラ−キシレンを分離し、次いで、異性化反応により、パラ−キシレン濃度を増大させたキシレン異性体混合物。
本発明に用いられるゼオライトは、分離対象化合物を吸着できる細孔を有するゼオライトであることが必要である。好ましいゼオライトとしてはフォージャサイト型ゼオライトを挙げることが出来る。フォージャサイト型ゼオライトとしては、合成品がゼオライト含量が高いことから好ましく用いられる。
本発明において使用されるフォージャサイト型ゼオライトは、次式で示される結晶性アルミノシリケートである。
0.9±0.2M2/nO:Al:xSiO:yH
ここで、Mはカチオンを示し、nはその原子価を示す。xが3未満をX型、xが3以上をY型として分類されるが、何れのゼオライトも好ましく利用できる。yは水和の程度により異なる。
パラ−キシレンを選択的に吸着できるゼオライト吸着剤に含まれるカチオンは利用するゼオライトにより変化するが、X型ゼオライトではバリウムイオンが好ましく用いられる。バリウムイオンの他にカリウムイオンが共存していることも好ましい。Y型ゼオライトではカリウムイオンが好ましく用いられるが、その他のイオンが吸着分離性能を向上させるため適宜存在している。具体的には、バリウムイオンとカリウムイオンの混合系或いは、カリウムイオンと水素イオンの混合系などを挙げることが出来る。
これらのカチオンはイオン交換により、合成されたゼオライト中に主に含まれるナトリウムイオンと置き換えることができる。カチオン交換の方法は通常、目的のカチオンを含む化合物、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物などの水溶液にゼオライトを接触させることにより実施される。イオン交換率はカチオンの種類により異なるが水溶液中に含まれる量やイオン交換処理回数により任意に設定することができる。イオン交換後には十分に水洗し、交換されて水溶液中に溶出したナトリウムイオンや例えば塩素イオン、硝酸イオンなどを除去するのが好ましい。
バリウムイオン交換率、カリウムイオン交換率の測定は、原子吸光法、ICP法、蛍光X線法など公知の分析法により求めることが出来る。X型ゼオライトで用いられるバリウムイオンは、ゼオライトの交換サイトの70当量%以上、より好ましくは80当量%以上である。残りの交換サイトにカリウムイオンが存在していることがより好ましい。一方、Y型ゼオライトでは、カリウムイオンが、80当量%以上、更に好ましくは、90当量%以上存在していることが好ましい。残りの交換サイトの一部に水素イオン及び又はバリウムイオンが存在していることは好ましい実施形態である。
一般に吸着剤は、成形して用いる。成形体はゼオライトのみを固めたものでも、アルミナ、粘土などのバインダーと共に造粒したものでも良い。造粒の仕方は、例えばアルミナなどのバインダーと共に混練りした後、押し出し機で押し出し、マルメライザーでマルメることによって作ることができる。その粒径は、通常、0.1mm以上である。これより小さいと圧損が大きくなる。大きさの上限は通常5mmであるが、拡散を有利に進めるために、粒径は小さい方が好ましい。1mm以下が好ましくさらに好ましくは0.5mm以下である。
吸着剤は、使用する前に予めゼオライト中の吸着水を必要に応じて除去するのが好ましい。通常は200〜600℃で加熱することにより、吸着水を除去することができる。
吸着剤としてカリウムイオンを含有するY型ゼオライトを用いる場合には、特に、吸着水を出来るだけ除去するのが好ましい。好ましくは、1重量%以下である。吸着水が増加するとパラ−キシレン分離性能が低下する。これは、カリウムイオン上に吸着水が吸着し、パラ−キシレンの吸着エネルギーを減少させる為と推定している。
一方、バリウムイオンを含有するX型ゼオライトの場合には、逆に吸着水を0.1〜7重量%含有すると、パラ−キシレンの吸着分離性能が向上する。特に、吸着水を1〜6重量%含有すると、パラーキシレンの吸着分離性能がより向上する。これは、バリウムイオン上に吸着した水が、バリウムイオン上に吸着するパラ−キシレンの吸着構造安定性を向上させることによっていると推定している。しかし、7重量%以上になると、X型ゼオライト中は水分で満たされ、パラ−キシレンが吸着する空間が無くなり、分離特性が低下する。いずれにしても、ゼオライト吸着剤の吸着水(以下“含水率”とも言う)には最適組成が存在する。ゼオライト吸着剤の含水率は、例えば、次のようにして求める。内容積約35mlの磁性るつぼを電気炉中、空気雰囲気下500℃で30分以上焼成して空焼きし、デシケータ中で冷却する。このようにして空焼きした磁性るつぼの重量を測定し、次いでゼオライト吸着剤約2グラムを入れ精秤する。電気炉中、空気雰囲気下500℃、1時間焼成し、デシケータ中で冷却する。デシケータで約15分間冷却後、重量を測定し、磁性るつぼ空重量との差からゼオライト吸着剤の重量を求める。この重量が、含水率0重量%の吸着剤重量である。含水率0重量%の吸着剤を基準に、焼成前の重量減から含水率を求める。逆に、500℃、1時間焼成した吸着剤に吸着水を含ませ、所望の含水率にすることもできる。更には、吸着剤を500℃、1時間焼成し含水率0重量%の吸着剤とする。次いで、該吸着剤を吸湿させ飽和含水率とする。次いで、適切な温度と時間で脱水させ、目的の含水率とすることもできる。
一方、工業的には、上記方法で目的の含水率とした吸着剤を用いることもできるが、供給原料であるキシレン異性体混合物液に水分を溶解させ、吸着剤と接触させることにより、キシレン異性体混合液中の水分率と吸着剤の含水率との平衡関係から吸着剤を目的の含水率にすることが、より現実的である。この場合には、キシレン異性体混合物の溶解水分率と吸着剤の含水率との平衡吸着量を各温度で予め測定しておく必要がある。これは、バッチ的にキシレン異性体混合液と吸着剤を接触させる方法において、吸着剤に接触させる前のキシレン異性体混合液の水分率と吸着剤に接触させた後のキシレン異性体混合物の水分率を測定することによって求めることが出来る。水分率は、当業者ではよく知られたカールフィシャー法により測定することが出来る。
本発明の吸着剤を用いて、パラ−キシレンを含むキシレン異性体混合物からパラ−キシレンを吸着分離するための吸着分離技術は、いわゆるクロマト分取法であってもよいし、また擬似移動床による吸着分離方法でもよい。擬似移動床による分離が、特定の1異性体を分離して製造する場合には、最も好ましく用いられる。
擬似移動床による連続的吸着分離技術は基本的操作として、次に示す吸着操作、濃縮操作、脱着操作及び脱着剤回収操作を連続的に循環して実施される。
(1)吸着操作:2又は3置換芳香族異性体混合物を含む原料供給物が、本発明の吸着剤と接触して吸着力が強い成分ほど選択的に吸着される。強吸着成分はエクストラクト成分として後で述べる脱着剤とともに回収される。
(2)濃縮操作:弱吸着成分はさらに吸着剤と接触させられ吸着力が弱い成分ほど高純度化されて、脱着剤とともにラフィネートから回収される。
(3)脱着操作:高純度化された弱吸着成分はラフィネートとして回収される一方、強吸着成分は脱着剤によって吸着剤から追出され、脱着剤をともなってエクストラクト成分として回収される。
(4)脱着剤回収操作:実質的に脱着剤のみを吸着した吸着剤は、ラフィネート流れの一部と接触させられ該吸着剤に含まれる脱着剤の一部が脱着剤回収流れとして回収される。
上記、擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示したのが図1である。吸着剤を充填した吸着室1〜12が連続的に循環して連結されている。
脱着剤は、吸着剤に吸着したパラ−キシレンを効率的に脱着し、次いで吸着剤に吸着した脱着剤をパラ−キシレンを含有するキシレン異性体混合物から効率的にパラ−キシレンが吸着剤に吸着し、吸着している脱着剤を脱離させることが必要である。即ち、吸着剤に対して、脱着剤はパラ−キシレンと同等の吸着力を有し、更には、脱着剤存在下でキシレン異性体混合物からパラ−キシレンを吸着剤に選択的に吸着させる効果を有していることが必要である。
キシレン異性体混合物中のパラ−キシレンの純度を向上させられた脱着剤との混合物、及びキシレン異性体混合物中のパラ−キシレン濃度を減少させられたキシレン異性体混合物と脱着剤との混合物は、パラ−キシレン及びキシレン異性体混合物を回収するため、脱着剤と分離させる。この分離方法は、最も経済的方法が採用させる。本発明に係わる方法では、蒸留分離法が適用される。蒸留分離法では、パラ−キシレン、キシレン異性体混合物との沸点差が大きい化合物が脱着剤として好ましい。
脱着剤は、使用中、分解したり、他の化合物に変換したりしない熱的、化学的に安定な化合物ほど好ましい。
上述した特性を必要とする脱着剤として、これまで、パラ−ジエチルベンゼンが広く使用されている。
本発明者らは、脱着剤として、パラ−ジエチルベンゼンよりも更に優れた上述した特性を有する脱着剤として、エチルキシレン、特に、4−エチル−m−キシレンが優れていることを見出した。パラ−キシレンの沸点138℃、パラ−ジエチルベンゼンの沸点183℃に対して、4−エチル−m−キシレンの沸点が188℃であり、パラ−キシレンとの沸点差が、4−エチル−m−キシレンがより大きい。このことは、蒸留分離がより容易になり、分離コストを低減させる。又、ジエチルベンゼンは、フェニル基に2個のエチル基が存在し、一方、4−エチル−m−キシレンは、エチル基が1個である。脱着剤中に微量混入する可能性のある酸素に対して、エチル基はメチル基に比べ、より酸化されやすい。酸化されると極性化合物となり、吸着剤を被毒し、パラ−キシレン分離性能を低下させる。懸かる観点においても、4−エチル−m−キシレンがパラ−ジエチルベンゼンより、優れた脱着剤である。エチルキシレンには、6種類の異性体が存在する。本発明に用いる脱着剤としてのエチルキシレンとしては4−エチル−m−キシレンが55重量%以上含有していることが好ましく、より好ましくは80重量%以上含有していることである。また、本発明の一実施態様として、パラ−ジエチルベンゼン脱着剤と混合して用いることも出来る。
4−エチル−m−キシレンは、m−キシレンを固体酸触媒存在下エチレンによりアルキル化し、蒸留分離することにより製造出来る。この場合、エチルキシレン中の4−エチル−m−キシレン濃度は50から70重量%である。4−エチル−m−キシレン濃度を70重量%以上に高くする為には、エチルキシレン異性体間の沸点差が小さいので、蒸留分離だけでは、困難である。4−エチル−m−キシレンを含むエチルキシレン異性体混合物を、フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤を用いて吸着分離することにより、高純度の4−エチル−m−キシレンを得ることが出来る。
パラ−キシレンの分離性能に関しては、以下、実施例で説明する。
(吸着剤の調製)
吸着剤1
ナトリウムタイプY型ゼオライト(以下Na−Yと表す。)(東ソー(株)製・ゼオラムNa−5.5Y粉末品;SiO/Alモル比=5.5)100重量部にバインダーとしてアルミナゾル(日産化学200番;Al=10重量%)をアルミナ換算で15重量部添加して0.15〜0.5mmφに造粒されたNa−Y型ゼオライトを120℃で乾燥した。この乾燥品を500℃、1時間焼成したNa−Y型ゼオライト成形体50gを10重量%のKNO溶液200ccと80℃、1時間接触させた。その後、純水で洗浄後、再び10重量%のKNO溶液200ccと80℃、1時間接触させた。この操作を8回繰り返し、純水でバッチ的に6回水洗した。このK−Y型ゼオライトを120℃で乾燥した。蛍光X線法により分析した結果、Kイオン交換率は98%であり、残りはNaイオンであった。この吸着剤を吸着剤1とする。
吸着剤2
ナトリウムタイプX型ゼオライト(以下Na−Xと表す。)(東ソー(株)製・ゼオラムNa−X粉末品;SiO/Alモル比=2.5)100重量部にバインダーとしてアルミナゾル(日産化学200番;Al=10重量%)をアルミナ換算で20重量部添加して0.15〜0.5mmφに造粒されたNa−X型ゼオライトを120℃で乾燥した。この乾燥品を、500℃、1時間焼成したNa−X型ゼオライト成形体100gを10重量%のKNO溶液400ccと80℃、1時間接触させた。その後、純水で洗浄後、再び10重量%のKNO溶液400ccと80℃、1時間接触させた。この操作を8回繰り返し、純水でバッチ的に6回水洗した。次いで、10重量%のBa(NO溶液340ccと80℃、1時間接触させた。その後、純水で洗浄後、再び10重量%Ba(NO溶液340ccと80℃、1時間接触させた。この操作を8回繰り返し、純水でバッチ的に6回水洗した。このBa−K−X型ゼオライトを120℃で乾燥した。蛍光X線法により分析した結果、Baイオン交換率(2価イオンとして)88.4%、Kイオン交換率10.3%、Na交換率1.3%であった。
(吸着選択率の定義)
実施例におけるバッチ式評価では、吸着剤の吸着性能を式(1)の吸着選択率(α)で表す。
Figure 2007238484
ここで、A,Bは各成分の1つを示し、Sは吸着相を、Lは吸着相と平衡状態にある液相を示す。
上記吸着選択率(αA/B)の値が1より大きい時、A成分が選択的に吸着され、1より小さい時は、B成分が選択的に吸着される。また、上記吸着選択率(αA/B)の値が1より大きい吸着剤、或いは1より小さく0に近い吸着剤ほどAとBの吸着分離が容易になる。αA/Bが1近くでは成分AとBは分離できないことを示す。また、Aが供給原料成分中で最大吸着強さを示す成分、Bが脱着剤(以下”DES”と略す)である場合、αA/Bの値は1に近いほど好ましい。著しく大きい時には、吸着された成分を十分に脱着出来ない。一方、1より著しく小さい時には、脱着剤が吸着剤に強く吸着され、次に吸着される成分の吸着が十分に出来ない。
実施例1、比較例1〜7
吸着剤1を予め、500℃、1時間焼成し、デシケータ中で冷却した。予め精秤した吸着剤約2.1gと供給原料約2.5ccを内容積6.2mlのオートクレーブ内に充填し、供給原料重量を精秤して密封した。170℃で30分間、時々攪拌しながら放置し吸着平衡とした。供給原料液および吸着平衡状態の液相をガスクロマトグラフを用いて分析した。分析測定条件は次の通りであった。
ガスクロマトグラム:水素炎検出器付きGC−14A(島津製作所製)
カラム:ティーシー ワックス/キャピラリーカラム 内径0.53mmφ 長さ30m(GLサイエンス社製)
試料ガス:スプリットせずに、全量カラムに注入
空気:0.5kg/cm−G 水素:0.6kg/cm−G ヘリウム:1.0kg/cm−G
分離温度:40℃で10分維持し、その後1分間2℃の昇温速度で120℃まで昇温。
使用した供給原料はn−ノナン(n−C9と略す)、トルエン(TOLと略す)、エチルベンゼン(EBと略す)、p−、m−、o−キシレン(XYと略す)及び脱着剤(DESと略す)を混合した液であり、その組成(重量比)は次の通りであった。n−C9は吸着剤に吸着されない内部標準物質として用いた。
n−C9:TOL:EB:p−XY:m−XY:o−XY:DES
=10:5:10:20:45:20:100
脱着剤として、4−エチル−m−キシレン(4−Et−m−XYと略す(東京化成(株)特級)、4−エチル−o−キシレン(4−Et−o−XYと略す)(東京化成(株)特級)、2−エチル−p−キシレン(2−Et−p−XYと略す) (東京化成(株特級))、パラ−ジエチルベンゼン(p−DEBと略す)(東京化成(株)特級)、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン(1,2,3,4−TeMBと略す) (東京化成(株)一級)、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン(1,2,3,5−TeMBと略す) (東京化成(株)特級)、パラ−ノルマルプロピルトルエン(p−n−Pr−TOLと略す) (東京化成(株)特級)、n−ブチルベンゼン(n−Bt−BZと略す)(東京化成(株)特級)を用いて吸着選択率を評価した。
吸着選択率は、供給原料液と吸着平衡時の液相側の組成分析から、次のようにして計算した。
F:供給原料重量(グラム)
R:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液重量(グラム)
Fn:供給原料中のn−C9濃度(重量%)
Ft:供給原料中のTOL濃度(重量%)
Fe:供給原料中のEB濃度(重量%)
Fo:供給原料中のo−XY濃度(重量%)
Fm:供給原料中のm−XY濃度(重量%)
Fp:供給原料中のp−XY濃度(重量%)
DES:供給原料中のDES濃度(重量%)
Rn:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のn−C9濃度(内部標準物質)濃度(重量%)
Rt:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のTOL濃度(重量%)
Re:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のEB濃度(重量%)
Ro:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のo−XY濃度(重量%)
Rm:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のm−XY濃度(重量%)
Rp:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のp−XY濃度(重量%)
DES:吸着平衡時の吸着剤に吸着しなかった液相中のDES濃度(重量%)
吸着選択率αは
p−XY/DES=[(F×Fp−R×Rp)/(F×FDES−R×RDES)]/(Rp/RDES
p−XY/EB=[(F×Fp−R×Rp)/(F×Fe−R×Re)]/(Rp/Re)
p−XY/m−XY=[(F×Fp−R×Rp)/(F×Fm−R×Rm)]/(Rp/Rm)
p−XY/o−XY=[(F×Fp−R×Rp)/(F×Fm−R×Ro)]/(Rp/Ro)
p−XY/TOL=[(F×Fp−R×Rp)/(F×Ft−R×Rt)]/(Rp/Rt)
から求めた。
上記、式中Rは
R=F×Fn/Rn
である。
その結果を表1に示す。
Figure 2007238484
表1から、4−エチル−m−キシレンを脱着剤とすることにより、αp−XY/DESが0.93と1.0に近く、脱着剤として好ましいことがわかる。又、パラ−キシレンと最も分離し難いC8芳香族炭化水素成分であるエチルベンゼンとの吸着選択率αp−XY/EBが2.0以上に向上し、この点からも好ましい脱着剤であることがわかった。
実施例2
吸着剤2を予め、500℃、1時間焼成し、吸着剤中の含水率を零の状態にし、デシケータ中で冷却した。予めこの吸着剤約2.2gを精秤し、実施例1と同じ供給原料約2.5ccを内容積6.2mlのオートクレーブ内に充填し、供給原料重量を精秤し密封した。170℃で30分間、時々攪拌しながら放置し、吸着平衡とした。供給原料液および吸着平衡状態の液相をガスクロマトグラフにより分析した。実施例1と同様にして吸着選択率を計算した。その結果を表2に示す。
実施例3〜5
吸着剤2を予め、500℃、1時間焼成し、デシケータ中で冷却した吸着剤約2.2gを精秤し、相対湿度を80%にするため飽和NHCl水溶液を有するデシケータ中で、一晩吸湿させた。次いで、電気炉で300℃、30分間脱水させた。このときの吸着剤の含水率は、3.20重量%であった。この吸着剤を用い、エチルキシレン中の4−エチル−m−キシレン濃度が100重量%、84重量%、57重量%含有する脱着剤について実施例1と同じ供給液2.5ccを内容積6.2mlのオートクレーブ内に充填し、密封した。170℃で30分間、時々攪拌しながら放置し、吸着平衡とした。供給原料液および吸着平衡状態の液相をガスクロマトグラフィーにより分析した。実施例1と同様にして吸着選択率を計算した。その結果を表2に示す。
なお、上記において、含水率は次のようにして求めた。内容積約35mlの磁性るつぼを電気炉中、空気雰囲気下500℃で30分以上焼成して空焼きし、デシケータ中で冷却した。この空焼きした磁性るつぼの重量を測定し、次いで吸着剤約2グラムを入れ精秤した。電気炉中、空気雰囲気下500℃、1時間焼成し、デシケータ中で冷却した。デシケータで約15分間冷却後、重量を測定し、磁性るつぼ空重量との差から含水率0重量%の吸着剤の重量を求めた。この含水率0重量%の吸着剤を、上記のとおり飽和NHCl水溶液を有するデシケータ中で、水分を飽和吸着させた。電気炉で300℃、30分脱水させ、飽和NHCl水溶液を含まないデシケータで15分間冷却した。重量を量り磁性るつぼの空重量を差し引いて、吸湿した吸着剤重量を求めた。吸湿した吸着剤重量と水分率0重量%の吸着剤重量の差を含水量とし、この含水量を含水率0重量%の吸着剤重量で割って含水率を求めた。
Figure 2007238484
比較例8
脱着剤をパラ−ジエチルベンゼン(p-DEBと略す)とした以外は、実施例3〜5と同じようにして、吸着選択率を調べた。その結果を表2に示す。
表2より明らかなように、吸着剤2においても、脱着剤として、4−エチル−m−キシレンが優れた脱着剤であることがわかる。
実施例6
予め500℃、1時間焼成した吸着剤2を、飽和NHCl水溶液を有するデシケータ中で、一晩吸湿させた。次いで、電気炉で260℃、30分間脱水させた。このときの吸着剤の含水率は、5.3重量%であった。この吸着剤を吸着カラム(内径4.6mmφ、長さ1000mm)に最密充填した。このカラムを150℃のオイルバスに浸し、脱着剤4−エチル−m−キシレンでカラム内を置換した。脱着剤を1.5mm/min.(150℃における空塔速度10cm/min.)で流通しながら、カラム温度が150℃になるように安定化させた。供給原料(組成を下記に示す)1.5mlをパルス的に送入した。カラム出口の液組成変化を時間と共に分析し、流出曲線を調べた。その結果を図2に示した。この結果から、p−キシレンが最も遅く流出してくることが分かった。このことから、p−キシレンを吸着側成分として分離出来ることが分かった。
原料組成
n−ノナン 5重量%
エチルベンゼン 10重量%
p−キシレン 20重量%
m−キシレン 45重量%
o−キシレン 20重量%
本発明の実施態様である擬似移動床による吸着分離操作を模式的に示す図である。 本発明の実施例5における吸着分離性能を示す図である。
符号の説明
n−C9:n−ノナン
EB:エチルベンゼン
p−XY:パラ−キシレン
m−XY:メタ−キシレン
o−XY:オルソ−キシレン

Claims (9)

  1. フォージャサイト型ゼオライト吸着剤を用いて、パラーキシレンを含有する混合物からパラーキシレンを吸着分離する際に、4−エチル−m−キシレンを含む脱着剤を用いることを特徴とするパラ−キシレン異性体の分離方法。
  2. 脱着剤中の4−エチル−m−キシレン濃度が55重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  3. 脱着剤中の4−エチル−m−キシレン濃度が80重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  4. フォージャサイト型ゼオライトがバリウムイオンを含有するX型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  5. フォージャサイト型ゼオライトがバリウムイオン及びカリウムイオンを含有するX型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  6. 水分を0.1〜7重量%含有するフォージャサイト型ゼオライト吸着剤を用いて、パラ−キシレンを含有する混合物からパラ−キシレンを吸着分離することを特徴とする請求項4または5記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  7. 水分を1〜6重量%含有するフォージャサイト型ゼオライト吸着剤を用いて、パラ−キシレンを含有する混合物からパラ−キシレンを吸着分離することを特徴とする請求項4または5記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  8. フォージャサイト型ゼオライトがカリウムイオンを含有するY型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
  9. パラ−キシレンを含有する混合物がC8芳香族炭化水素混合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のパラ−キシレン異性体の分離方法。
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