JP2005026241A - 電子ビーム生成装置、及び電子ビーム露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子ビームの電流量を精度よく制御し、また、カソード及びセルフバイアス抵抗等の劣化による電子ビームの電流量の変化を抑制する。
【解決手段】カソードに流れるエミッション電流を検出し、エミッション電流の変化に基づいてグリッドに印加する電圧を変化させる、電流検出部、電圧源及び制御部と、カソードの電位に対するグリッドの電位を、エミッション電流による電圧降下によって変化させるセルフバイアス抵抗とを備え、セルフバイアス抵抗と、電圧源及び制御部とを、エミッション電流の変化を抑制させるように制御することにより、エミッション電流を安定化させ、電子ビームの電流量の変化を抑制し、また、精度よく制御することが可能となる。
【選択図】 図4
【解決手段】カソードに流れるエミッション電流を検出し、エミッション電流の変化に基づいてグリッドに印加する電圧を変化させる、電流検出部、電圧源及び制御部と、カソードの電位に対するグリッドの電位を、エミッション電流による電圧降下によって変化させるセルフバイアス抵抗とを備え、セルフバイアス抵抗と、電圧源及び制御部とを、エミッション電流の変化を抑制させるように制御することにより、エミッション電流を安定化させ、電子ビームの電流量の変化を抑制し、また、精度よく制御することが可能となる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置及び電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置に関する。特に、電子ビームの電流量を精度良く制御可能な電子ビーム生成装置及び電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における、半導体素子の微細化等に伴い、電子ビーム露光装置における電子ビームの強度すなわち露光量を精度良く制御し、安定な描画を行うことが必要とされている。従来の電子ビーム露光装置における電子ビーム生成装置は、セルフバイアス抵抗を用いて電子ビームの電流量を制御していた。
【0003】
図1は、従来の電子ビーム生成装置200を説明する図である。電子ビーム生成装置200は、熱電子を生成するカソード10、熱電子を収束させ電子ビームを形成するグリッド20、カソード10を加熱し熱電子を生成させるフィラメント電流を生成するフィラメント電流源12、カソード10に電圧を印加し熱電子を放出させるカソード電源40、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させるセルフバイアス抵抗22、カソード40と基準電位間の電圧を検出するカソード電圧検出部44、及び検出した電圧に基づいてカソード電源がカソード10に印加する電圧を制御するカソード制御部42を備える。
【0004】
フィラメント電流源12は、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソードを加熱して、カソード10に熱電子を発生させる。カソード電圧源40は、カソード10に加速電圧を印加し、発生した熱電子をカソード10から放出させる。カソード電圧検出部44は、カソード10と基準電位間の電圧を検出し、カソード制御部42は、カソード電圧検出部44が検出した電圧に基づいて、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御し、カソード10と基準電位間の電圧を一定値に保つ。カソード10には、発生した熱電子量に基づくエミッション電流が流れ、エミッション電流は、セルフバイアス抵抗22に供給される。セルフバイアス抵抗22は、供給されたエミッション電流に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させる。グリッド20には、カソード10に対して負電圧が印加され、放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成する。また、グリッド20は、印加された電圧に基づいて、熱電子がグリッド20を通過する電子量を抑制する。つまり、グリッド20に印加される電圧によって、形成される電子ビームの電流量が変化する。
【0005】
形成される電子ビームの電流量が、放電等により変化した場合、カソード10が放出する熱電子量が急激に変化し、エミッション電流の電流値が急激に変化する。セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の電流値の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を、エミッション電流の電流値の変化を抑制するように変化させる。例えば、エミッション電流が急激に増大した場合、グリッド20に印加される負電圧を増大させ、カソード10から放出される熱電子の電子量を抑制する。以上説明したように、従来の電子ビーム生成装置200においては、エミッション電流の電流値の変化に基づいて、セルフバイアス抵抗22により、グリッド20に印加する負電圧を変化させ、電子ビームの電流量の変化を抑制していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電子ビーム生成装置では、電子ビームの電流量の調整を、セルフバイアス抵抗22により行っていたため、電流量の精度は、セルフバイアス抵抗22の性能によるところが大きかった。そのため、セルフバイアス抵抗22の抵抗値の経時変化による長期的安定性の確保や、セルフバイアス抵抗22の発熱による、特性変化等による電流値の調整精度を確保することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる電子ビーム露光装置を提供することを目的とする。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置であって、熱電子を発生させるカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを備えることを特徴とする電子ビーム生成装置を提供する。
【0009】
本発明の第1の形態において、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対するグリッドの電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗を更に備えてよい。また、第1グリッド制御部は、エミッション電流の変化を抑制するように、第1グリッド電圧源を制御してよい。また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。
【0010】
また、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を更に制御してよい。また、抑制グリッドに、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源と、カソードに対する抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部とを更に備えてよい。また、第2グリッド制御部は、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を略一定の値に保つように、第2グリッド電圧源を制御してよい。
【0011】
また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する、引出グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御し、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を更に制御してよい。
【0012】
また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する、引出グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御し、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源と、カソードに対する抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部とを更に備えてよい。
【0013】
また、第2グリッド制御部は、カソードの電位に対するグリッドの電位を略一定の値に保つように、第2グリッド電圧源を制御してよい。また、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第1グリッド制御部に与える第1タイミング発生器を更に備え、第1グリッド制御部は、第1タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。また、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第2グリッド制御部に与える第2タイミング発生器を更に備え、第2グリッド制御部は、タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。
【0014】
本発明の第2の形態においては、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置と、電子ビームをウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、ウェハを載置するステージとを備え、電子ビーム生成装置は、熱電子を発生させるカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを有することを特徴とする電子ビーム露光装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の形態においては、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、電子ビームを生成する複数の電子ビーム生成装置と、電子ビームをウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、ウェハを載置するステージとを備え、複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、熱電子を発生させるカソードと、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部を有し、複数のカソードに負電圧を印加し、複数のカソードから熱電子を放出させるカソード電圧源を更に備えることを特徴とする電子ビーム露光装置を提供する。複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、それぞれのカソードに更に電圧を印加する複数のカソード微小電圧源を更に有してよい。
【0016】
尚、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又、発明となりうる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。電子ビーム露光装置300は、電子ビームによりウェハ392に所定の露光処理を施す露光部350と、露光部350に含まれる各構成の動作を制御する制御系140を備える。
【0019】
露光部350は、チャンバ352内部において複数の電子ビームを発生し、電子ビームの断面形状を所望に成形する電子ビーム成形手段360と、複数の電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替える照射切替手段370と、ウェハ392に転写されるパターンの像の向き及びサイズを調整するウェハ用投影系380を含む電子光学系を備える。また、露光部350は、パターンを露光すべきウェハ392を載置するウェハステージ396と、ウェハステージ396を駆動するウェハステージ駆動部とを含むステージ系を備える。
【0020】
電子ビーム成形手段360は、複数の電子ビームを発生させる複数の電子ビーム生成装置100と、電子ビームを通過させることにより、照射された電子ビームの断面形状を成形する複数の開口部を有する第1成形部材362および第2成形部材372と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第1多軸電子レンズ364と、第1成形部材362を通過した複数の電子ビームを独立に偏向する第1成形偏向部366および第2成形偏向部368とを有する。
【0021】
照射切替手段370は、複数の電子ビームを独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第2多軸電子レンズ374と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に偏向させることにより、それぞれの電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替えるブランキング電極アレイ376と、電子ビームを通過させる複数の開口部を含み、ブランキング電極アレイ376で偏向された電子ビームを遮蔽する電子ビーム遮蔽部材136とを有する。他の例においてブランキング電極アレイ376は、ブランキング・アパーチャ・アレイ・デバイスであってもよい。
【0022】
ウェハ用投影系380は、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、電子ビームの照射径を縮小する第3多軸電子レンズ378と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第4多軸電子レンズ384と、複数の電子ビームをウェハ392の所望の位置に、それぞれの電子ビームに対して独立に偏向する偏向部386と、ウェハ392に対する対物レンズとして機能し、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束する第5多軸電子レンズ388とを有する。
【0023】
制御系340は、統括制御部330及び個別制御部320を備える。個別制御部320は、電子ビーム制御部332と、多軸電子レンズ制御部334と、成形偏向制御部336と、ブランキング電極アレイ制御部338と、偏向制御部340と、ウェハステージ制御部342とを有する。統括制御部330は、例えばワークステーションであって、個別制御部320に含まれる各制御部を統括制御する。
【0024】
電子ビーム制御部332は、電子ビーム生成装置100を制御する。電子ビーム生成装置100は、熱電子を発生させるカソードと、前記カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを有する。電子ビーム制御部332は、生成すべき電子ビームの強度に基づいて、第1グリッド制御部を制御し、グリッドに印加される電圧を制御する。また、電子ビーム制御部332は、生成すべき電子ビームの強度に基づいて、カソード電圧源を制御し、カソードに印加される電圧を制御してよい。グリッド及びカソードに印加される電圧を制御することにより電子ビームの電流量を調整することが可能となる。また、電子ビーム制御部332は、電流検出部が検出したエミッション電流の変化に基づいて、電子ビームの電流量を略一定値に保つように、第1グリッド制御部及びカソード電圧源を制御してよい。
【0025】
多軸電子レンズ制御部334は、第1多軸電子レンズ364、第2多軸電子レンズ374、第3多軸電子レンズ378、第4多軸電子レンズ384および第5多軸電子レンズ388に供給する電流を制御する。成形偏向制御部336は、第1成形偏向部366および第2成形偏向器368を制御する。ブランキング電極アレイ制御部338は、ブランキング電極アレイ376に含まれる偏向電極に印加する電圧を制御する。偏向制御部344は、偏向部386に含まれる複数の偏向器が有する偏向電極に印加する電圧を制御する。ウェハステージ制御部342は、ウェハステージ駆動部398を制御し、ウェハステージ396を所定の位置に移動させる。
【0026】
本実施形態に係る電子ビーム露光装置300の動作について説明する。まず、複数の電子ビーム生成装置100が、複数の電子ビームを生成する。第1成形部材362は、複数の電子ビーム生成装置100により発生し、第1成形部材362に照射された複数の電子ビームを、第1成形部材362に設けられた複数の開口部を通過させることにより成形する。他の例においては、電子ビーム生成装置100において発生した電子ビームを複数の電子ビームに分割する手段を更に有することにより、複数の電子ビームを生成してもよい。
【0027】
第1多軸電子レンズ364は、矩形に成形された複数の電子ビームを独立に集束し、第2成形部材372に対する電子ビームの焦点を、電子ビーム毎に独立に調整する。第1成形偏向部366は、第1成形部材362において矩形形状に成形された複数の電子ビームを、第2成形部材における所望の位置に照射するように、それぞれ独立に偏向する。
【0028】
第2成形偏向部368は、第1成形偏向部366で偏向された複数の電子ビームを、第2成形部材372に対して略垂直な方向にそれぞれ偏向し、第2成形部材372に照射する。そして矩形形状を有する複数の開口部を含む第2成形部材372は、第2成形部材372に照射された矩形の断面形状を有する複数の電子ビームを、ウェハ392に照射すべき所望の断面形状を有する電子ビームにさらに成形する。
【0029】
第2多軸電子レンズ374は、複数の電子ビームを独立に集束して、ブランキング電極アレイ376に対する電子ビームの焦点を、それぞれ独立に調整する。そして、第2多軸電子レンズ374により焦点がそれぞれ調整された複数の電子ビームは、ブランキング電極アレイ376に含まれる複数のアパーチャを通過する。
【0030】
ブランキング電極アレイ制御部338は、ブランキング電極アレイ376における各アパーチャの近傍に設けられた偏向電極に電圧を印加するか否かを制御する。ブランキング電極アレイ376は、偏向電極に印加される電圧に基づいて、電子ビームをウェハ392に照射させるか否かを切替える。
【0031】
ブランキング電極アレイに376により偏向されない電子ビームは、第3多軸電子レンズ378を通過する。そして第3多軸電子レンズ378は、第3多軸電子レンズ378を通過する電子ビームの電子ビーム径を縮小する。縮小された電子ビームは、電子ビーム遮蔽部材382に含まれる開口部を通過する。また、電子ビーム遮蔽部材382は、ブランキング電極アレイ376により偏向された電子ビームを遮蔽する。電子ビーム遮蔽部材382を通過した電子ビームは、第4多軸電子レンズ384に入射される。そして第4多軸電子レンズ384は、入射された電子ビームをそれぞれ独立に集束し、偏向部386に対する電子ビームの焦点をそれぞれ調整する。第4多軸電子レンズ384により焦点が調整された電子ビームは、偏向部386に入射される。
【0032】
偏向部386に含まれる複数の偏向器は、偏向制御部340からの指示に基づき、偏向部386に入射されたそれぞれの電子ビームを、ウェハ392に対して照射すべき位置にそれぞれ独立に偏向する。第5多軸電子レンズ388は、第5多軸電子レンズ388を通過するそれぞれの電子ビームのウェハ392に対する焦点を調整する。そしてウェハ392に照射すべき断面形状を有するそれぞれの電子ビームは、ウェハ392に対して照射すべき所望の位置に照射される。
【0033】
露光処理中、ウェハステージ駆動部398は、ウェハステージ制御部342からの指示に基づき、一定方向にウェハステージを移動させるのが好ましい。そして、ウェハ392の移動に合わせて、電子ビームの断面形状をウェハ392に照射すべき形状に成形し、ウェハ392に照射すべき電子ビームを通過させるアパーチャを定め、さらに偏向部386によりそれぞれの電子ビームをウェハ392に対して照射すべき位置に偏向させることにより、ウェハ392に所望の回路パターンを露光することができる。
【0034】
図3は、複数の電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。電子ビーム露光装置300は、複数の電子ビーム生成装置100を備える。複数の電子ビーム生成装置100は、それぞれカソード10、グリッド20、フィラメント電流源12、電流検出部16、第1グリッド制御部18、第1グリッド電圧源24、カソード微小電圧源48、及びカソード電圧源40を有する。カソード電圧源40は、複数のカソード10に電圧を印加する。つまり、1つのカソード電圧源40を、複数の電子ビーム生成装置100が共有する。
【0035】
電子ビーム制御部332は、カソード電圧源40が複数のカソード10に印加する電圧を制御する。カソード10には、カソード電圧源40とカソード微小電圧源48とが印加する電圧の和である加速電圧が印加される。カソード微小電圧源48は、カソード電圧源40が生成することのできる電圧の分解能より小さい分解能で電圧を生成し、カソード10に印加する。また、カソード微小電圧源48は、複数のカソード10の抵抗値等の個体差に基づいてカソード10に印加する電圧を変動させるのが好ましい。電子ビーム制御部332は、カソード微小電圧源48がカソード10に印加する電圧をそれぞれ制御してよい。
【0036】
第1グリッド電圧源24は、グリッド20に、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える。グリッド20には、カソード電圧源40が印加する電圧と、第1グリッド電圧源24が印加する電圧との和が印加される。例えば、カソード電圧源40は、50kVの負電圧を発生し、第1グリッド電圧源24は、2kVの負電圧を発生した場合、カソード10には略50kVの負電圧が印加され、グリッド20には略52kVの負電圧が印加される。
【0037】
カソード10は、供給されるフィラメント電流により加熱され、熱電子を発生させる。発生した熱電子は、カソード10に印加される負電圧によりカソード10から放出される。例えば、第1成形部材362やステージ396等を接地させてアノードとし、カソード10と当該アノードとの間に電位差を生じさせることにより、熱電子をウェハ方向に放出させるのが望ましい。カソード10には、放出した熱電子量に基づいたエミッション電流が流れる。カソード10から放出された熱電子は、カソード10より更に負電圧を印加されたグリッド20により集束される。また、カソード10に印加される負電圧の電圧値に基づいて、カソード10から放出される熱電子の量、即ち電子ビームの電流量が変化する。
【0038】
電流検出部16は、カソード10に流れるエミッション電流を検出する。第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御し、電子ビームの電流量を制御する。電子ビーム制御部332は、生成されるべき電子ビームの電流量に基づいて、第1グリッド制御部18を制御する。例えば、電子ビーム制御部332は、予め定められた電流量を保つように、第1グリッド制御部18が制御する第1グリッド電圧源24における電圧値を制御する。
【0039】
図4は、電子ビーム生成装置100の動作の一例を示すブロック図である。図4において図3と同一の符号を付したものは、図3に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。フィラメント電流源12は、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソード10を加熱してカソード10に熱電子を発生させる。カソード電圧源40は、カソード10に加速電圧を印加し、発生した熱電子をカソード10から放出させる。カソード10には、放出した熱電子量に基づいたエミッション電流が流れる。電流検出部16は、エミッション電流を検出し、エミッション電流値を第1グリッド制御部18に与える。第1グリッド制御部18は、与えられたエミッション電流値に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧値を制御する。エミッション電流は、セルフバイアス抵抗22に供給され、セルフバイアス抵抗22は、カソード10に印加された電圧を、供給されたエミッション電流に基づいて電圧降下させ、グリッドに印加する。セルフバイアス抵抗22により生じた電圧降下と、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧とに基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位が定まる。
【0040】
カソード10から放出された熱電子は、カソード10と基準電位との電位差に基づいてウェハ392に向かって放出されるが、カソード10と基準電位との間に設けられたグリッド20にカソード10より更に負の電圧が印加されているため、熱電子の放出が抑制される。つまり、カソード10とグリッド20との電位差に基づいて、カソード10から放出される熱電子量が変化し、カソード10に流れるエミッション電流が変化する。本発明では、エミッション電流を検出し、検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド制御部18は、第1グリッド電圧源がグリッド20印加する電圧を制御し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流に基づいた電圧降下を生じ、エミッション電流の変化を抑制するように、グリッド20に印加される電圧を変化させる。つまり、エミッション電流の変化を検出し、エミッション電流の変化を抑制するようにグリッド20に印加する電圧を変化させることで、電子ビームの電流量を所望の値に調整することが可能となる。
【0041】
電流検出部16、第1グリッド制御部18、及び第1グリッド電圧源24は、例えばカソード10等の劣化による電子ビームの長期的な変動を抑制し、セルフバイアス抵抗22は、例えば放電等による電子ビームの短期的な変動を抑制する場合に特に有効である。本発明による電子ビーム生成装置100によれば、セルフバイアス抵抗22の劣化や、発熱等による抵抗値の変化がある場合であっても、電流検出部16、第1グリッド制御部18、及び第1グリッド電圧源24によって、電子ビームの電流量を安定にすることが可能となる。
【0042】
図5は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の一例を示す図である。図5において、図3及び図4と同一の符号を付したものは、図3及び図4に関連して説明して説明したものと、同一又は同様の機能及び構成を有してよい。電子ビーム生成装置100は、熱電子を発生させるカソード10と、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソード10を加熱し熱電子を発生させるフィラメント電流源12と、カソード10に負電圧を印加し、カソード10から前記熱電子を放出させるカソード電圧源40と、カソード10と基準電位間の電圧を検出するカソード電圧検出部44と、カソード電圧検出部44が検出した電圧に基づいて、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御するカソード制御部42と、カソード10から放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッド20と、グリッド20に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源24と、カソード10に流れる、カソード10が放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部16と、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御する第1グリッド制御部18と、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗22とを備える。本例において、第1グリッド電圧源24は、グリッド20に、カソード10の電位より更に負の電位を与える。
【0043】
本例において、電子ビーム50の電流量を一定の値に保つように、電子ビーム制御部332が電子ビーム生成装置100を制御する場合、カソード制御部42は、カソード電圧検出部44が検出する電圧値を一定値に保つように、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御し、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出するエミッション電流の電流値の変化を抑制するように第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御する。例えば電子ビームの電流量が増大し、エミッション電流が増大した場合、セルフバイアス抵抗22における電圧降下が増大し、グリッド20の、カソード10に対する電位が負の方向に増大する。第1グリッド制御部18は、エミッション電流の変化を検出し、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を更に負の方向に増大させ、グリッド20の、カソード10に対する電位が負の方向に増大させる。カソード10に対するグリッド20の電位が更に負の方向に増大されることにより、カソード10から放出される熱電子量が抑制され、電子ビームの電流量が抑制され、エミッション電流の変化が抑制される。セルフバイアス抵抗22と、第1グリッド制御部18及び第1グリッド電圧源24とは、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するフィードバックを行う。当該フィードバックは、エミッション電流が安定するまで行われる。
【0044】
第1グリッド電圧源24が発生する電圧は、カソード電圧源が発生する電圧より小さい電圧であることが好ましい。また、本実施例において、電流検出部16は、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に流れる電流を検出しているが、他の例においては、セルフバイアス抵抗22と第1グリッド電圧源24との間に流れる電流を検出してよい。また、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出した電流の周波数等に基づいて、第1グリッド電圧源を制御してよい。
【0045】
図6は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の他の例を示す。図6において、図3から図5において説明したものと同一の符号を付したものは、図3から図5に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例において、カソード10、フィラメント電流源12、カソード電圧源40、カソード制御部42、及びカソード電圧検出部44は、それぞれ図5において説明したものと同一の機能を有する。
【0046】
グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有する。また、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させ、第1グリッド電圧源24は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御する。抑制グリッド26は、図5において説明したグリッド20と同一又は同様の機能を有する。抑制グリッド26は、カソード10とセルフバイアス抵抗22を介して接続され、エミッション電流の変化に応じて、カソード10に対する電位が変化する。
【0047】
引出グリッド28は、カソード10の電位に対して正の電位が与えられ、カソード10から放出された熱電子をウェハ方向に引き出す。引出グリッド28は、第1グリッド電圧源24を介してカソード10に接続される。電流検出部16は、カソード10に流れるエミッション電流を検出し、第1グリッド制御部18にエミッション電流の情報を与える。電流検出部16は、例えばエミッション電流の電流値、周波数、位相等の情報を第1グリッド制御部18に与えてよく、第1グリッド制御部18は、エミッション電流の電流値、周波数、位相等の情報に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッド28に印加する電圧を制御してよい。
【0048】
本例においては、電流検出部16は、セルフバイアス抵抗22とカソード電圧源40との間に流れる電流を検出したが、他の例においては、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に流れる電流を検出してよい。本例における電子ビーム生成装置100によれば、グリッド20が抑制グリッド26と引出グリッド28とを有する場合であっても、電子ビーム50の電流量を精度よく制御することが可能となる。
【0049】
図7は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。図7において、図3から図6において説明したものと同一の符号を付したものは、図3から図6に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例において、カソード10、フィラメント電流源12、カソード電圧源40、カソード制御部42、カソード電圧検出部44、引出グリッド28、第1グリッド電圧源24、第1グリッド制御部18、電流検出部16、及びセルフバイアス抵抗は、図6において説明したものと同一の機能を有する。
【0050】
本例における電子ビーム生成装置100は、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源34と、カソード10に対する抑制グリッド26の電圧値を検出する電圧検出部30と、電圧検出部30が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する第2グリッド制御部32とを更に備える。
【0051】
抑制グリッド26は、カソード10と、セルフバイアス抵抗22と第2グリッド電圧源34とを介して接続される。電圧検出部30は、抑制グリッド26とカソード10との電位差を検出し、第2グリッド制御部32に検出した電位差の情報を与える。第2グリッド制御部32は、与えられた電位差の情報に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する。セルフバイアス抵抗22及び第2グリッド電圧源34は、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対して更に負の電位を与える。電子ビーム50の電流量を略一定の値に保つ場合、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させ、第2グリッド電圧源34は、カソード10と抑制グリッド26との電位差の変化に基づいて、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させる。
【0052】
セルフバイアス抵抗22は、例えばエミッション電流の急峻な変化に対応して抑制グリッド26のカソード10に対する電位を変化させる。また、第2グリッド制御部32は、例えばカソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を略一定値に保つように、第2グリッド電圧源34を制御する。セルフバイアス抵抗22は、電圧検出部30及び第2グリッド制御部32が追従できないような、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位の急峻な変化を抑制する場合に特に有効である。また、電圧検出部30、第2グリッド制御部32、及び第2グリッド電圧源34は、セルフバイアス抵抗22の劣化や、カソード10の劣化等による、エミッション電流の変化を抑制する場合に特に有効である。
【0053】
また、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を略一定値に保つことにより、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧の変動幅を小さくすることが可能となる。すなわち、第1グリッド電圧源24の規模を小さくすることが可能となり、電子ビーム生成装置100の電源系を小さくすることが可能となる。
【0054】
本例において、電子ビーム生成装置100は、第2グリッド制御部32が、電圧検出部30が検出したカソード10と抑制グリッド26間の電圧に基づいて第2グリッド電圧源を制御したが、他の例においては、第1グリッド制御部32が、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34を制御してよい。つまり、図6に関連して説明した電子ビーム生成装置100は、抑制グリッド26にカソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源34を更に備え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を更に制御してよい。
【0055】
図7に関連して説明した電子ビーム生成装置100において、電流検出部16は、第2グリッド電圧源34とカソード電圧源40との間に接続されているが、他の例においては、電流検出部16は、セルフバイアス抵抗22と第2グリッド電圧源34との間に配置されてよく、また、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に配置されてもよい。また、第2グリッド電圧源34が発生する電圧は、カソード電圧源40が発生する電圧より、小さい電圧であることが好ましい。
【0056】
本例における電子ビーム生成装置100によれば、グリッド20が抑制グリッド26と引出グリッド28とを有する場合であっても、電子ビーム50の電流量を精度よく制御することが可能となる。また、抑制グリッド26と引出グリッド28のそれぞれに対応する可変電圧源を設けているため、カソード10や、セルフバイアス抵抗22が劣化した場合等であっても、抑制グリッド26及び引出グリッド28に印加する電圧を最適な値に制御することが可能となり、そのため、精度よく電子ビーム50の電流量を制御することが可能となる。
【0057】
図8は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。図8において、図3から図7において説明したものと、同一の符号を付したものは、図3から図7に関連して説明したものと、同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例における電子ビーム生成装置100は、図3において説明した電子ビーム生成装置100において、グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する、引出グリッド28の電位を変化させ、第1グリッド電圧源24は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御し、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源34と、カソード10に対する抑制グリッド26の電圧値を検出する電圧検出部30と、電圧検出部30が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する第2グリッド制御部32とを更に備える。第1タイミング制御部36及び第1グリッド制御部以外の構成要素については、図7と同一の機能を有する。
【0058】
第1タイミング制御部36は、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第1グリッド制御部18に与える。第1グリッド制御部18は、第1タイミング発生器36が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御する。第1グリッド制御部18が、タイミング信号に基づくタイミングで第1グリッド電圧源24を制御することにより、エミッション電流が発振することを防ぐことが可能となる。即ち、第1グリッド電圧源24が印加する電圧を連続的に変化させた場合に、エミッション電流の変化の態様と、第1グリッド制御部18が第1グリッド電圧源24を制御する周波数特性と、セルフバイアス抵抗22の特性とが、エミッション電流が発振するような条件であっても、第1グリッド制御部18の制御タイミングを与えることにより、エミッション電流の発振を防ぐことが可能である。
【0059】
第1グリッド制御部18は、与えられたタイミング信号に基づいて、電流検出部16から、エミッション電流の情報を受け取り、受け取った情報に基づいて、第1グリッド電圧源24を制御してよい。また、第1タイミング制御部36は、タイミング信号を第2グリッド制御部32に更に与え、第2グリッド制御部は、第1タイミング発生器36が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源が引出グリッド28に印加する電圧を制御してよい。第1タイミング制御部は、第1グリッド制御部18に与えたタイミング信号と異なるタイミング信号を第2グリッド制御部32に与えてよい。
【0060】
また、本例における電子ビーム生成装置100は、タイミング信号を発生し、タイミングを第2グリッド制御部32に与える第2タイミング発生器を更に備え、第2グリッド制御部32は、第2タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御してよい。第2タイミング発生器は、第1タイミング発生器36が発生するタイミングと異なるタイミングを発生してよい。
【0061】
また、本例における電子ビーム生成装置100は、第2グリッド制御部32が、第2グリッド電圧源34を制御したが、他の例においては、電子ビーム生成装置100は、第1グリッド制御部18が、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド制御部34を制御してよい。すなわち、図3に関連して説明した電子ビーム生成装置100において、グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する、引出グリッド28の電位を変化させ、第1グリッド電圧源18は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御し、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源34を更に備え、第1グリッド制御部18は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を更に制御してよい。
【0062】
本例における電子ビーム生成装置100によれば、エミッション電流の発振を防ぐことにより、電子ビームの電流量を安定に制御することが可能となる。また、図3から図7に関連して説明した電子ビーム生成装置100においても、第1タイミング発生器36を備えてよい。また、電子ビーム露光装置300の照射切替手段370は、第1グリッド制御部18が第1グリッド電圧源24を制御したタイミングで、電子ビームをウェハ392に照射してよい。
【0063】
図9は、第1タイミング発生器36を備える電子ビーム生成装置100におけるエミッション電流の制御を示す。図9(a)から図9(c)において、横軸は時間を示し、T1、T2、T3・・・Tn−2、Tn−1、Tnは、第1グリッド制御部18が、タイミング信号に基づいて、第1グリッド電圧源24を制御するタイミングを示す。エミッション電流が図9(a)に示すような変化を示した場合、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧は、図9(b)に示すような変化を示す。第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を図9(b)に示すようなタイミングで変化させることにより、エミッション電流の変化は、図9(c)に示すように抑制される。第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を連続的に変化させず、所定のタイミング毎に変化させることにより、エミッション電流の発振を防ぐことができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、電子ビームの電流量を精度よく制御することが可能となる。また、カソード及びセルフバイアス抵抗等の劣化等による電子ビームの電流量の変化も抑制することが可能となる。また、エミッション電流の発振を防ぎ、電子ビームの電流量を安定に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電子ビーム生成装置200を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。
【図3】複数の電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。
【図4】電子ビーム生成装置100の動作の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の他の例を示す図である。
【図7】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。
【図8】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。
【図9】第1タイミング発生器36を備える電子ビーム生成装置100におけるエミッション電流の制御を示す図である。
【符号の説明】
10・・・カソード、12・・・フィラメント電流源
16・・・電流検出部、18・・・第1グリッド制御部
20・・・グリッド、22・・・セルフバイアス抵抗
24・・・第1グリッド電圧源、26・・・抑制グリッド
28・・・引出グリッド、30・・・電圧検出部
32・・・第2グリッド制御部、34・・・第2グリッド電圧源
36・・・第1タイミング制御部、40・・・カソード電圧源
42・・・カソード制御部、44・・・カソード電圧検出部
48・・・カソード微小電圧源、50・・・電子ビーム
100・・・電子ビーム生成装置、200・・・従来の電子ビーム生成装置
300・・・電子ビーム露光装置、320・・・個別制御部
330・・・統括制御部、332・・・電子ビーム制御部
334・・・多軸電子レンズ制御部、336・・・成形偏向制御部
338・・・ブランキング電極アレイ制御部、340・・・制御系
342・・・ウェハステージ制御部、344・・・偏向制御部
350・・・露光部、352・・・チャンバ
360・・・電子ビーム成形手段、362・・・第1成形部材
364・・・第1多軸電子レンズ、366・・・第1成形偏向部
368・・・第2成形偏向部、370・・・照射切替手段
372・・・第2成形部材、374・・・第2多軸電子レンズ
376・・・ブランキング電極アレイ、378・・・第3多軸電子レンズ
380・・・ウェハ用投影系、382・・・電子ビーム遮蔽部材
384・・・第4多軸電子レンズ、386・・・偏向部
388・・・第5多軸電子レンズ、392・・・ウェハ
396・・・ウェハステージ、398・・・ウェハステージ駆動部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置及び電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置に関する。特に、電子ビームの電流量を精度良く制御可能な電子ビーム生成装置及び電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における、半導体素子の微細化等に伴い、電子ビーム露光装置における電子ビームの強度すなわち露光量を精度良く制御し、安定な描画を行うことが必要とされている。従来の電子ビーム露光装置における電子ビーム生成装置は、セルフバイアス抵抗を用いて電子ビームの電流量を制御していた。
【0003】
図1は、従来の電子ビーム生成装置200を説明する図である。電子ビーム生成装置200は、熱電子を生成するカソード10、熱電子を収束させ電子ビームを形成するグリッド20、カソード10を加熱し熱電子を生成させるフィラメント電流を生成するフィラメント電流源12、カソード10に電圧を印加し熱電子を放出させるカソード電源40、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させるセルフバイアス抵抗22、カソード40と基準電位間の電圧を検出するカソード電圧検出部44、及び検出した電圧に基づいてカソード電源がカソード10に印加する電圧を制御するカソード制御部42を備える。
【0004】
フィラメント電流源12は、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソードを加熱して、カソード10に熱電子を発生させる。カソード電圧源40は、カソード10に加速電圧を印加し、発生した熱電子をカソード10から放出させる。カソード電圧検出部44は、カソード10と基準電位間の電圧を検出し、カソード制御部42は、カソード電圧検出部44が検出した電圧に基づいて、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御し、カソード10と基準電位間の電圧を一定値に保つ。カソード10には、発生した熱電子量に基づくエミッション電流が流れ、エミッション電流は、セルフバイアス抵抗22に供給される。セルフバイアス抵抗22は、供給されたエミッション電流に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させる。グリッド20には、カソード10に対して負電圧が印加され、放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成する。また、グリッド20は、印加された電圧に基づいて、熱電子がグリッド20を通過する電子量を抑制する。つまり、グリッド20に印加される電圧によって、形成される電子ビームの電流量が変化する。
【0005】
形成される電子ビームの電流量が、放電等により変化した場合、カソード10が放出する熱電子量が急激に変化し、エミッション電流の電流値が急激に変化する。セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の電流値の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を、エミッション電流の電流値の変化を抑制するように変化させる。例えば、エミッション電流が急激に増大した場合、グリッド20に印加される負電圧を増大させ、カソード10から放出される熱電子の電子量を抑制する。以上説明したように、従来の電子ビーム生成装置200においては、エミッション電流の電流値の変化に基づいて、セルフバイアス抵抗22により、グリッド20に印加する負電圧を変化させ、電子ビームの電流量の変化を抑制していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電子ビーム生成装置では、電子ビームの電流量の調整を、セルフバイアス抵抗22により行っていたため、電流量の精度は、セルフバイアス抵抗22の性能によるところが大きかった。そのため、セルフバイアス抵抗22の抵抗値の経時変化による長期的安定性の確保や、セルフバイアス抵抗22の発熱による、特性変化等による電流値の調整精度を確保することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる電子ビーム露光装置を提供することを目的とする。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置であって、熱電子を発生させるカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを備えることを特徴とする電子ビーム生成装置を提供する。
【0009】
本発明の第1の形態において、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対するグリッドの電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗を更に備えてよい。また、第1グリッド制御部は、エミッション電流の変化を抑制するように、第1グリッド電圧源を制御してよい。また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。
【0010】
また、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を更に制御してよい。また、抑制グリッドに、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源と、カソードに対する抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部とを更に備えてよい。また、第2グリッド制御部は、カソードの電位に対する抑制グリッドの電位を略一定の値に保つように、第2グリッド電圧源を制御してよい。
【0011】
また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する、引出グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御し、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を更に制御してよい。
【0012】
また、グリッドは、カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドとを有し、セルフバイアス抵抗は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する、引出グリッドの電位を変化させ、第1グリッド電圧源は、引出グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御し、抑制グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源と、カソードに対する抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部とを更に備えてよい。
【0013】
また、第2グリッド制御部は、カソードの電位に対するグリッドの電位を略一定の値に保つように、第2グリッド電圧源を制御してよい。また、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第1グリッド制御部に与える第1タイミング発生器を更に備え、第1グリッド制御部は、第1タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第1グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。また、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第2グリッド制御部に与える第2タイミング発生器を更に備え、第2グリッド制御部は、タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源が引出グリッドに印加する電圧を制御してよい。
【0014】
本発明の第2の形態においては、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置と、電子ビームをウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、ウェハを載置するステージとを備え、電子ビーム生成装置は、熱電子を発生させるカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを有することを特徴とする電子ビーム露光装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の形態においては、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、電子ビームを生成する複数の電子ビーム生成装置と、電子ビームをウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、ウェハを載置するステージとを備え、複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、熱電子を発生させるカソードと、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部を有し、複数のカソードに負電圧を印加し、複数のカソードから熱電子を放出させるカソード電圧源を更に備えることを特徴とする電子ビーム露光装置を提供する。複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、それぞれのカソードに更に電圧を印加する複数のカソード微小電圧源を更に有してよい。
【0016】
尚、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又、発明となりうる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。電子ビーム露光装置300は、電子ビームによりウェハ392に所定の露光処理を施す露光部350と、露光部350に含まれる各構成の動作を制御する制御系140を備える。
【0019】
露光部350は、チャンバ352内部において複数の電子ビームを発生し、電子ビームの断面形状を所望に成形する電子ビーム成形手段360と、複数の電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替える照射切替手段370と、ウェハ392に転写されるパターンの像の向き及びサイズを調整するウェハ用投影系380を含む電子光学系を備える。また、露光部350は、パターンを露光すべきウェハ392を載置するウェハステージ396と、ウェハステージ396を駆動するウェハステージ駆動部とを含むステージ系を備える。
【0020】
電子ビーム成形手段360は、複数の電子ビームを発生させる複数の電子ビーム生成装置100と、電子ビームを通過させることにより、照射された電子ビームの断面形状を成形する複数の開口部を有する第1成形部材362および第2成形部材372と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第1多軸電子レンズ364と、第1成形部材362を通過した複数の電子ビームを独立に偏向する第1成形偏向部366および第2成形偏向部368とを有する。
【0021】
照射切替手段370は、複数の電子ビームを独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第2多軸電子レンズ374と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に偏向させることにより、それぞれの電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替えるブランキング電極アレイ376と、電子ビームを通過させる複数の開口部を含み、ブランキング電極アレイ376で偏向された電子ビームを遮蔽する電子ビーム遮蔽部材136とを有する。他の例においてブランキング電極アレイ376は、ブランキング・アパーチャ・アレイ・デバイスであってもよい。
【0022】
ウェハ用投影系380は、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、電子ビームの照射径を縮小する第3多軸電子レンズ378と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第4多軸電子レンズ384と、複数の電子ビームをウェハ392の所望の位置に、それぞれの電子ビームに対して独立に偏向する偏向部386と、ウェハ392に対する対物レンズとして機能し、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束する第5多軸電子レンズ388とを有する。
【0023】
制御系340は、統括制御部330及び個別制御部320を備える。個別制御部320は、電子ビーム制御部332と、多軸電子レンズ制御部334と、成形偏向制御部336と、ブランキング電極アレイ制御部338と、偏向制御部340と、ウェハステージ制御部342とを有する。統括制御部330は、例えばワークステーションであって、個別制御部320に含まれる各制御部を統括制御する。
【0024】
電子ビーム制御部332は、電子ビーム生成装置100を制御する。電子ビーム生成装置100は、熱電子を発生させるカソードと、前記カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電圧源と、カソードから放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッドと、グリッドに、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、カソードに流れる、カソードが放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源がグリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部とを有する。電子ビーム制御部332は、生成すべき電子ビームの強度に基づいて、第1グリッド制御部を制御し、グリッドに印加される電圧を制御する。また、電子ビーム制御部332は、生成すべき電子ビームの強度に基づいて、カソード電圧源を制御し、カソードに印加される電圧を制御してよい。グリッド及びカソードに印加される電圧を制御することにより電子ビームの電流量を調整することが可能となる。また、電子ビーム制御部332は、電流検出部が検出したエミッション電流の変化に基づいて、電子ビームの電流量を略一定値に保つように、第1グリッド制御部及びカソード電圧源を制御してよい。
【0025】
多軸電子レンズ制御部334は、第1多軸電子レンズ364、第2多軸電子レンズ374、第3多軸電子レンズ378、第4多軸電子レンズ384および第5多軸電子レンズ388に供給する電流を制御する。成形偏向制御部336は、第1成形偏向部366および第2成形偏向器368を制御する。ブランキング電極アレイ制御部338は、ブランキング電極アレイ376に含まれる偏向電極に印加する電圧を制御する。偏向制御部344は、偏向部386に含まれる複数の偏向器が有する偏向電極に印加する電圧を制御する。ウェハステージ制御部342は、ウェハステージ駆動部398を制御し、ウェハステージ396を所定の位置に移動させる。
【0026】
本実施形態に係る電子ビーム露光装置300の動作について説明する。まず、複数の電子ビーム生成装置100が、複数の電子ビームを生成する。第1成形部材362は、複数の電子ビーム生成装置100により発生し、第1成形部材362に照射された複数の電子ビームを、第1成形部材362に設けられた複数の開口部を通過させることにより成形する。他の例においては、電子ビーム生成装置100において発生した電子ビームを複数の電子ビームに分割する手段を更に有することにより、複数の電子ビームを生成してもよい。
【0027】
第1多軸電子レンズ364は、矩形に成形された複数の電子ビームを独立に集束し、第2成形部材372に対する電子ビームの焦点を、電子ビーム毎に独立に調整する。第1成形偏向部366は、第1成形部材362において矩形形状に成形された複数の電子ビームを、第2成形部材における所望の位置に照射するように、それぞれ独立に偏向する。
【0028】
第2成形偏向部368は、第1成形偏向部366で偏向された複数の電子ビームを、第2成形部材372に対して略垂直な方向にそれぞれ偏向し、第2成形部材372に照射する。そして矩形形状を有する複数の開口部を含む第2成形部材372は、第2成形部材372に照射された矩形の断面形状を有する複数の電子ビームを、ウェハ392に照射すべき所望の断面形状を有する電子ビームにさらに成形する。
【0029】
第2多軸電子レンズ374は、複数の電子ビームを独立に集束して、ブランキング電極アレイ376に対する電子ビームの焦点を、それぞれ独立に調整する。そして、第2多軸電子レンズ374により焦点がそれぞれ調整された複数の電子ビームは、ブランキング電極アレイ376に含まれる複数のアパーチャを通過する。
【0030】
ブランキング電極アレイ制御部338は、ブランキング電極アレイ376における各アパーチャの近傍に設けられた偏向電極に電圧を印加するか否かを制御する。ブランキング電極アレイ376は、偏向電極に印加される電圧に基づいて、電子ビームをウェハ392に照射させるか否かを切替える。
【0031】
ブランキング電極アレイに376により偏向されない電子ビームは、第3多軸電子レンズ378を通過する。そして第3多軸電子レンズ378は、第3多軸電子レンズ378を通過する電子ビームの電子ビーム径を縮小する。縮小された電子ビームは、電子ビーム遮蔽部材382に含まれる開口部を通過する。また、電子ビーム遮蔽部材382は、ブランキング電極アレイ376により偏向された電子ビームを遮蔽する。電子ビーム遮蔽部材382を通過した電子ビームは、第4多軸電子レンズ384に入射される。そして第4多軸電子レンズ384は、入射された電子ビームをそれぞれ独立に集束し、偏向部386に対する電子ビームの焦点をそれぞれ調整する。第4多軸電子レンズ384により焦点が調整された電子ビームは、偏向部386に入射される。
【0032】
偏向部386に含まれる複数の偏向器は、偏向制御部340からの指示に基づき、偏向部386に入射されたそれぞれの電子ビームを、ウェハ392に対して照射すべき位置にそれぞれ独立に偏向する。第5多軸電子レンズ388は、第5多軸電子レンズ388を通過するそれぞれの電子ビームのウェハ392に対する焦点を調整する。そしてウェハ392に照射すべき断面形状を有するそれぞれの電子ビームは、ウェハ392に対して照射すべき所望の位置に照射される。
【0033】
露光処理中、ウェハステージ駆動部398は、ウェハステージ制御部342からの指示に基づき、一定方向にウェハステージを移動させるのが好ましい。そして、ウェハ392の移動に合わせて、電子ビームの断面形状をウェハ392に照射すべき形状に成形し、ウェハ392に照射すべき電子ビームを通過させるアパーチャを定め、さらに偏向部386によりそれぞれの電子ビームをウェハ392に対して照射すべき位置に偏向させることにより、ウェハ392に所望の回路パターンを露光することができる。
【0034】
図3は、複数の電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。電子ビーム露光装置300は、複数の電子ビーム生成装置100を備える。複数の電子ビーム生成装置100は、それぞれカソード10、グリッド20、フィラメント電流源12、電流検出部16、第1グリッド制御部18、第1グリッド電圧源24、カソード微小電圧源48、及びカソード電圧源40を有する。カソード電圧源40は、複数のカソード10に電圧を印加する。つまり、1つのカソード電圧源40を、複数の電子ビーム生成装置100が共有する。
【0035】
電子ビーム制御部332は、カソード電圧源40が複数のカソード10に印加する電圧を制御する。カソード10には、カソード電圧源40とカソード微小電圧源48とが印加する電圧の和である加速電圧が印加される。カソード微小電圧源48は、カソード電圧源40が生成することのできる電圧の分解能より小さい分解能で電圧を生成し、カソード10に印加する。また、カソード微小電圧源48は、複数のカソード10の抵抗値等の個体差に基づいてカソード10に印加する電圧を変動させるのが好ましい。電子ビーム制御部332は、カソード微小電圧源48がカソード10に印加する電圧をそれぞれ制御してよい。
【0036】
第1グリッド電圧源24は、グリッド20に、カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える。グリッド20には、カソード電圧源40が印加する電圧と、第1グリッド電圧源24が印加する電圧との和が印加される。例えば、カソード電圧源40は、50kVの負電圧を発生し、第1グリッド電圧源24は、2kVの負電圧を発生した場合、カソード10には略50kVの負電圧が印加され、グリッド20には略52kVの負電圧が印加される。
【0037】
カソード10は、供給されるフィラメント電流により加熱され、熱電子を発生させる。発生した熱電子は、カソード10に印加される負電圧によりカソード10から放出される。例えば、第1成形部材362やステージ396等を接地させてアノードとし、カソード10と当該アノードとの間に電位差を生じさせることにより、熱電子をウェハ方向に放出させるのが望ましい。カソード10には、放出した熱電子量に基づいたエミッション電流が流れる。カソード10から放出された熱電子は、カソード10より更に負電圧を印加されたグリッド20により集束される。また、カソード10に印加される負電圧の電圧値に基づいて、カソード10から放出される熱電子の量、即ち電子ビームの電流量が変化する。
【0038】
電流検出部16は、カソード10に流れるエミッション電流を検出する。第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御し、電子ビームの電流量を制御する。電子ビーム制御部332は、生成されるべき電子ビームの電流量に基づいて、第1グリッド制御部18を制御する。例えば、電子ビーム制御部332は、予め定められた電流量を保つように、第1グリッド制御部18が制御する第1グリッド電圧源24における電圧値を制御する。
【0039】
図4は、電子ビーム生成装置100の動作の一例を示すブロック図である。図4において図3と同一の符号を付したものは、図3に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。フィラメント電流源12は、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソード10を加熱してカソード10に熱電子を発生させる。カソード電圧源40は、カソード10に加速電圧を印加し、発生した熱電子をカソード10から放出させる。カソード10には、放出した熱電子量に基づいたエミッション電流が流れる。電流検出部16は、エミッション電流を検出し、エミッション電流値を第1グリッド制御部18に与える。第1グリッド制御部18は、与えられたエミッション電流値に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧値を制御する。エミッション電流は、セルフバイアス抵抗22に供給され、セルフバイアス抵抗22は、カソード10に印加された電圧を、供給されたエミッション電流に基づいて電圧降下させ、グリッドに印加する。セルフバイアス抵抗22により生じた電圧降下と、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧とに基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位が定まる。
【0040】
カソード10から放出された熱電子は、カソード10と基準電位との電位差に基づいてウェハ392に向かって放出されるが、カソード10と基準電位との間に設けられたグリッド20にカソード10より更に負の電圧が印加されているため、熱電子の放出が抑制される。つまり、カソード10とグリッド20との電位差に基づいて、カソード10から放出される熱電子量が変化し、カソード10に流れるエミッション電流が変化する。本発明では、エミッション電流を検出し、検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド制御部18は、第1グリッド電圧源がグリッド20印加する電圧を制御し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流に基づいた電圧降下を生じ、エミッション電流の変化を抑制するように、グリッド20に印加される電圧を変化させる。つまり、エミッション電流の変化を検出し、エミッション電流の変化を抑制するようにグリッド20に印加する電圧を変化させることで、電子ビームの電流量を所望の値に調整することが可能となる。
【0041】
電流検出部16、第1グリッド制御部18、及び第1グリッド電圧源24は、例えばカソード10等の劣化による電子ビームの長期的な変動を抑制し、セルフバイアス抵抗22は、例えば放電等による電子ビームの短期的な変動を抑制する場合に特に有効である。本発明による電子ビーム生成装置100によれば、セルフバイアス抵抗22の劣化や、発熱等による抵抗値の変化がある場合であっても、電流検出部16、第1グリッド制御部18、及び第1グリッド電圧源24によって、電子ビームの電流量を安定にすることが可能となる。
【0042】
図5は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の一例を示す図である。図5において、図3及び図4と同一の符号を付したものは、図3及び図4に関連して説明して説明したものと、同一又は同様の機能及び構成を有してよい。電子ビーム生成装置100は、熱電子を発生させるカソード10と、カソード10にフィラメント電流を供給し、カソード10を加熱し熱電子を発生させるフィラメント電流源12と、カソード10に負電圧を印加し、カソード10から前記熱電子を放出させるカソード電圧源40と、カソード10と基準電位間の電圧を検出するカソード電圧検出部44と、カソード電圧検出部44が検出した電圧に基づいて、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御するカソード制御部42と、カソード10から放出された熱電子を集束させ、電子ビームを形成するグリッド20と、グリッド20に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源24と、カソード10に流れる、カソード10が放出した熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部16と、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御する第1グリッド制御部18と、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗22とを備える。本例において、第1グリッド電圧源24は、グリッド20に、カソード10の電位より更に負の電位を与える。
【0043】
本例において、電子ビーム50の電流量を一定の値に保つように、電子ビーム制御部332が電子ビーム生成装置100を制御する場合、カソード制御部42は、カソード電圧検出部44が検出する電圧値を一定値に保つように、カソード電圧源40がカソード10に印加する電圧を制御し、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出するエミッション電流の電流値の変化を抑制するように第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を制御する。例えば電子ビームの電流量が増大し、エミッション電流が増大した場合、セルフバイアス抵抗22における電圧降下が増大し、グリッド20の、カソード10に対する電位が負の方向に増大する。第1グリッド制御部18は、エミッション電流の変化を検出し、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を更に負の方向に増大させ、グリッド20の、カソード10に対する電位が負の方向に増大させる。カソード10に対するグリッド20の電位が更に負の方向に増大されることにより、カソード10から放出される熱電子量が抑制され、電子ビームの電流量が抑制され、エミッション電流の変化が抑制される。セルフバイアス抵抗22と、第1グリッド制御部18及び第1グリッド電圧源24とは、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対するグリッド20の電位を変化させ、エミッション電流の変化を抑制するフィードバックを行う。当該フィードバックは、エミッション電流が安定するまで行われる。
【0044】
第1グリッド電圧源24が発生する電圧は、カソード電圧源が発生する電圧より小さい電圧であることが好ましい。また、本実施例において、電流検出部16は、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に流れる電流を検出しているが、他の例においては、セルフバイアス抵抗22と第1グリッド電圧源24との間に流れる電流を検出してよい。また、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出した電流の周波数等に基づいて、第1グリッド電圧源を制御してよい。
【0045】
図6は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の他の例を示す。図6において、図3から図5において説明したものと同一の符号を付したものは、図3から図5に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例において、カソード10、フィラメント電流源12、カソード電圧源40、カソード制御部42、及びカソード電圧検出部44は、それぞれ図5において説明したものと同一の機能を有する。
【0046】
グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有する。また、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソードの電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させ、第1グリッド電圧源24は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御する。抑制グリッド26は、図5において説明したグリッド20と同一又は同様の機能を有する。抑制グリッド26は、カソード10とセルフバイアス抵抗22を介して接続され、エミッション電流の変化に応じて、カソード10に対する電位が変化する。
【0047】
引出グリッド28は、カソード10の電位に対して正の電位が与えられ、カソード10から放出された熱電子をウェハ方向に引き出す。引出グリッド28は、第1グリッド電圧源24を介してカソード10に接続される。電流検出部16は、カソード10に流れるエミッション電流を検出し、第1グリッド制御部18にエミッション電流の情報を与える。電流検出部16は、例えばエミッション電流の電流値、周波数、位相等の情報を第1グリッド制御部18に与えてよく、第1グリッド制御部18は、エミッション電流の電流値、周波数、位相等の情報に基づいて、第1グリッド電圧源が引出グリッド28に印加する電圧を制御してよい。
【0048】
本例においては、電流検出部16は、セルフバイアス抵抗22とカソード電圧源40との間に流れる電流を検出したが、他の例においては、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に流れる電流を検出してよい。本例における電子ビーム生成装置100によれば、グリッド20が抑制グリッド26と引出グリッド28とを有する場合であっても、電子ビーム50の電流量を精度よく制御することが可能となる。
【0049】
図7は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。図7において、図3から図6において説明したものと同一の符号を付したものは、図3から図6に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例において、カソード10、フィラメント電流源12、カソード電圧源40、カソード制御部42、カソード電圧検出部44、引出グリッド28、第1グリッド電圧源24、第1グリッド制御部18、電流検出部16、及びセルフバイアス抵抗は、図6において説明したものと同一の機能を有する。
【0050】
本例における電子ビーム生成装置100は、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源34と、カソード10に対する抑制グリッド26の電圧値を検出する電圧検出部30と、電圧検出部30が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する第2グリッド制御部32とを更に備える。
【0051】
抑制グリッド26は、カソード10と、セルフバイアス抵抗22と第2グリッド電圧源34とを介して接続される。電圧検出部30は、抑制グリッド26とカソード10との電位差を検出し、第2グリッド制御部32に検出した電位差の情報を与える。第2グリッド制御部32は、与えられた電位差の情報に基づいて、第2グリッド電圧源が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する。セルフバイアス抵抗22及び第2グリッド電圧源34は、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対して更に負の電位を与える。電子ビーム50の電流量を略一定の値に保つ場合、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させ、第2グリッド電圧源34は、カソード10と抑制グリッド26との電位差の変化に基づいて、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を変化させる。
【0052】
セルフバイアス抵抗22は、例えばエミッション電流の急峻な変化に対応して抑制グリッド26のカソード10に対する電位を変化させる。また、第2グリッド制御部32は、例えばカソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を略一定値に保つように、第2グリッド電圧源34を制御する。セルフバイアス抵抗22は、電圧検出部30及び第2グリッド制御部32が追従できないような、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位の急峻な変化を抑制する場合に特に有効である。また、電圧検出部30、第2グリッド制御部32、及び第2グリッド電圧源34は、セルフバイアス抵抗22の劣化や、カソード10の劣化等による、エミッション電流の変化を抑制する場合に特に有効である。
【0053】
また、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を略一定値に保つことにより、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧の変動幅を小さくすることが可能となる。すなわち、第1グリッド電圧源24の規模を小さくすることが可能となり、電子ビーム生成装置100の電源系を小さくすることが可能となる。
【0054】
本例において、電子ビーム生成装置100は、第2グリッド制御部32が、電圧検出部30が検出したカソード10と抑制グリッド26間の電圧に基づいて第2グリッド電圧源を制御したが、他の例においては、第1グリッド制御部32が、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34を制御してよい。つまり、図6に関連して説明した電子ビーム生成装置100は、抑制グリッド26にカソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源34を更に備え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を更に制御してよい。
【0055】
図7に関連して説明した電子ビーム生成装置100において、電流検出部16は、第2グリッド電圧源34とカソード電圧源40との間に接続されているが、他の例においては、電流検出部16は、セルフバイアス抵抗22と第2グリッド電圧源34との間に配置されてよく、また、カソード10とセルフバイアス抵抗22との間に配置されてもよい。また、第2グリッド電圧源34が発生する電圧は、カソード電圧源40が発生する電圧より、小さい電圧であることが好ましい。
【0056】
本例における電子ビーム生成装置100によれば、グリッド20が抑制グリッド26と引出グリッド28とを有する場合であっても、電子ビーム50の電流量を精度よく制御することが可能となる。また、抑制グリッド26と引出グリッド28のそれぞれに対応する可変電圧源を設けているため、カソード10や、セルフバイアス抵抗22が劣化した場合等であっても、抑制グリッド26及び引出グリッド28に印加する電圧を最適な値に制御することが可能となり、そのため、精度よく電子ビーム50の電流量を制御することが可能となる。
【0057】
図8は、本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。図8において、図3から図7において説明したものと、同一の符号を付したものは、図3から図7に関連して説明したものと、同一又は同様の機能及び構成を有してよい。本例における電子ビーム生成装置100は、図3において説明した電子ビーム生成装置100において、グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する、引出グリッド28の電位を変化させ、第1グリッド電圧源24は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御し、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源34と、カソード10に対する抑制グリッド26の電圧値を検出する電圧検出部30と、電圧検出部30が検出した電圧値に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御する第2グリッド制御部32とを更に備える。第1タイミング制御部36及び第1グリッド制御部以外の構成要素については、図7と同一の機能を有する。
【0058】
第1タイミング制御部36は、タイミング信号を発生し、タイミング信号を第1グリッド制御部18に与える。第1グリッド制御部18は、第1タイミング発生器36が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御する。第1グリッド制御部18が、タイミング信号に基づくタイミングで第1グリッド電圧源24を制御することにより、エミッション電流が発振することを防ぐことが可能となる。即ち、第1グリッド電圧源24が印加する電圧を連続的に変化させた場合に、エミッション電流の変化の態様と、第1グリッド制御部18が第1グリッド電圧源24を制御する周波数特性と、セルフバイアス抵抗22の特性とが、エミッション電流が発振するような条件であっても、第1グリッド制御部18の制御タイミングを与えることにより、エミッション電流の発振を防ぐことが可能である。
【0059】
第1グリッド制御部18は、与えられたタイミング信号に基づいて、電流検出部16から、エミッション電流の情報を受け取り、受け取った情報に基づいて、第1グリッド電圧源24を制御してよい。また、第1タイミング制御部36は、タイミング信号を第2グリッド制御部32に更に与え、第2グリッド制御部は、第1タイミング発生器36が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源が引出グリッド28に印加する電圧を制御してよい。第1タイミング制御部は、第1グリッド制御部18に与えたタイミング信号と異なるタイミング信号を第2グリッド制御部32に与えてよい。
【0060】
また、本例における電子ビーム生成装置100は、タイミング信号を発生し、タイミングを第2グリッド制御部32に与える第2タイミング発生器を更に備え、第2グリッド制御部32は、第2タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を制御してよい。第2タイミング発生器は、第1タイミング発生器36が発生するタイミングと異なるタイミングを発生してよい。
【0061】
また、本例における電子ビーム生成装置100は、第2グリッド制御部32が、第2グリッド電圧源34を制御したが、他の例においては、電子ビーム生成装置100は、第1グリッド制御部18が、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド制御部34を制御してよい。すなわち、図3に関連して説明した電子ビーム生成装置100において、グリッド20は、カソード10の電位より更に負の電位を有する抑制グリッド26と、カソード10の電位より正の電位を有する引出グリッド28とを有し、セルフバイアス抵抗22は、エミッション電流の変化に基づいて、カソード10の電位に対する、引出グリッド28の電位を変化させ、第1グリッド電圧源18は、引出グリッド28に、カソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、第1グリッド制御部18は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第1グリッド電圧源24が引出グリッド28に印加する電圧を制御し、抑制グリッド26に、カソード10の電位に対する抑制グリッド26の電位を与える電圧を印加する第2グリッド電圧源34を更に備え、第1グリッド制御部18は、電流検出部が検出したエミッション電流に基づいて、第2グリッド電圧源34が抑制グリッド26に印加する電圧を更に制御してよい。
【0062】
本例における電子ビーム生成装置100によれば、エミッション電流の発振を防ぐことにより、電子ビームの電流量を安定に制御することが可能となる。また、図3から図7に関連して説明した電子ビーム生成装置100においても、第1タイミング発生器36を備えてよい。また、電子ビーム露光装置300の照射切替手段370は、第1グリッド制御部18が第1グリッド電圧源24を制御したタイミングで、電子ビームをウェハ392に照射してよい。
【0063】
図9は、第1タイミング発生器36を備える電子ビーム生成装置100におけるエミッション電流の制御を示す。図9(a)から図9(c)において、横軸は時間を示し、T1、T2、T3・・・Tn−2、Tn−1、Tnは、第1グリッド制御部18が、タイミング信号に基づいて、第1グリッド電圧源24を制御するタイミングを示す。エミッション電流が図9(a)に示すような変化を示した場合、第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧は、図9(b)に示すような変化を示す。第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を図9(b)に示すようなタイミングで変化させることにより、エミッション電流の変化は、図9(c)に示すように抑制される。第1グリッド電圧源24がグリッド20に印加する電圧を連続的に変化させず、所定のタイミング毎に変化させることにより、エミッション電流の発振を防ぐことができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、電子ビームの電流量を精度よく制御することが可能となる。また、カソード及びセルフバイアス抵抗等の劣化等による電子ビームの電流量の変化も抑制することが可能となる。また、エミッション電流の発振を防ぎ、電子ビームの電流量を安定に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電子ビーム生成装置200を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。
【図3】複数の電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。
【図4】電子ビーム生成装置100の動作の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の他の例を示す図である。
【図7】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。
【図8】本発明に係る電子ビーム生成装置100の構成の更に他の例を示す図である。
【図9】第1タイミング発生器36を備える電子ビーム生成装置100におけるエミッション電流の制御を示す図である。
【符号の説明】
10・・・カソード、12・・・フィラメント電流源
16・・・電流検出部、18・・・第1グリッド制御部
20・・・グリッド、22・・・セルフバイアス抵抗
24・・・第1グリッド電圧源、26・・・抑制グリッド
28・・・引出グリッド、30・・・電圧検出部
32・・・第2グリッド制御部、34・・・第2グリッド電圧源
36・・・第1タイミング制御部、40・・・カソード電圧源
42・・・カソード制御部、44・・・カソード電圧検出部
48・・・カソード微小電圧源、50・・・電子ビーム
100・・・電子ビーム生成装置、200・・・従来の電子ビーム生成装置
300・・・電子ビーム露光装置、320・・・個別制御部
330・・・統括制御部、332・・・電子ビーム制御部
334・・・多軸電子レンズ制御部、336・・・成形偏向制御部
338・・・ブランキング電極アレイ制御部、340・・・制御系
342・・・ウェハステージ制御部、344・・・偏向制御部
350・・・露光部、352・・・チャンバ
360・・・電子ビーム成形手段、362・・・第1成形部材
364・・・第1多軸電子レンズ、366・・・第1成形偏向部
368・・・第2成形偏向部、370・・・照射切替手段
372・・・第2成形部材、374・・・第2多軸電子レンズ
376・・・ブランキング電極アレイ、378・・・第3多軸電子レンズ
380・・・ウェハ用投影系、382・・・電子ビーム遮蔽部材
384・・・第4多軸電子レンズ、386・・・偏向部
388・・・第5多軸電子レンズ、392・・・ウェハ
396・・・ウェハステージ、398・・・ウェハステージ駆動部
Claims (14)
- 電子ビームを生成する電子ビーム生成装置であって、
熱電子を発生させるカソードと、
前記カソードに負電圧を印加し、前記カソードから前記熱電子を放出させるカソード電圧源と、
前記カソードから放出された前記熱電子を集束させ、前記電子ビームを形成するグリッドと、
前記グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、
前記カソードに流れる、前記カソードが放出した前記熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記グリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部と、
前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する前記グリッドの電位を変化させ、前記エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗と
を備えることを特徴とする電子ビーム生成装置。 - 前記第1グリッド制御部は、前記エミッション電流の変化を抑制するように、前記第1グリッド電圧源を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記グリッドは、
前記カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、
前記カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドと
を有し、
前記セルフバイアス抵抗は、前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する前記抑制グリッドの電位を変化させ、
前記第1グリッド電圧源は、前記引出グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、
前記第1グリッド制御部は、前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記引出グリッドに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記抑制グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、
前記第1グリッド制御部は、前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第2グリッド電圧源が前記抑制グリッドに印加する電圧を更に制御することを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記抑制グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源と、
前記カソードに対する前記抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、前記第2グリッド電圧源が前記抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部と
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記第2グリッド制御部は、前記カソードに対する前記抑制グリッドの電圧値を略一定の値に保つように、前記第2グリッド電圧源を制御することを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記グリッドは、
前記カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、
前記カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドと
を有し、
前記セルフバイアス抵抗は、前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する、前記引出グリッドの電位を変化させ、
前記第1グリッド電圧源は、前記引出グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、
前記第1グリッド制御部は、前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記引出グリッドに印加する電圧を制御し、
前記抑制グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源を更に備え、
前記第1グリッド制御部は、前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第2グリッド電圧源が前記抑制グリッドに印加する電圧を更に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記グリッドは、
前記カソードの電位より更に負の電位を有する抑制グリッドと、
前記カソードの電位より正の電位を有する引出グリッドと
を有し、
前記セルフバイアス抵抗は、前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する、前記引出グリッドの電位を変化させ、
前記第1グリッド電圧源は、前記引出グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与え、
前記第1グリッド制御部は、前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記引出グリッドに印加する電圧を制御し、
前記抑制グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第2グリッド電圧源と、
前記カソードに対する前記抑制グリッドの電圧値を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧値に基づいて、前記第2グリッド電圧源が前記抑制グリッドに印加する電圧を制御する第2グリッド制御部と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記第2グリッド制御部は、前記カソードに対する前記グリッドの電圧値を略一定の値に保つように、前記第2グリッド電圧源を制御することを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム生成装置。
- タイミング信号を発生し、前記タイミング信号を前記第1グリッド制御部に与える第1タイミング発生器を更に備え、
前記第1グリッド制御部は、前記第1タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、前記第1グリッド電圧源が前記引出グリッドに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。 - タイミング信号を発生し、前記タイミング信号を前記第2グリッド制御部に与える第2タイミング発生器を更に備え、
前記第2グリッド制御部は、前記第1タイミング発生器が発生したタイミング信号に基づくタイミングで、前記第2グリッド電圧源が前記引出グリッドに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。 - 電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、
前記電子ビームを生成する電子ビーム生成装置と、
前記電子ビームを前記ウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、
前記ウェハを載置するステージと
を備え、
前記電子ビーム生成装置は、
熱電子を発生させるカソードと、
前記カソードに負電圧を印加し、前記カソードから前記熱電子を放出させるカソード電圧源と、
前記カソードから放出された前記熱電子を集束させ、前記電子ビームを形成するグリッドと、
前記グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、
前記カソードに流れる、前記カソードが放出した前記熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記グリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部と、
前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する前記グリッドの電位を変化させ、前記エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗と
を有することを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、
前記電子ビームを生成する複数の電子ビーム生成装置と、
前記電子ビームを前記ウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、
前記ウェハを載置するステージと
を備え、
前記複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、
熱電子を発生させるカソードと、
前記カソードから放出された前記熱電子を集束させ、前記電子ビームを形成するグリッドと、
前記グリッドに、前記カソードの電位に対して更に電圧を印加した電位を与える第1グリッド電圧源と、
前記カソードに流れる、前記カソードが放出した前記熱電子の量に基づいたエミッション電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した前記エミッション電流に基づいて、前記第1グリッド電圧源が前記グリッドに印加する電圧を制御する第1グリッド制御部と、
前記エミッション電流の変化に基づいて、前記カソードの電位に対する前記グリッドの電位を変化させ、前記エミッション電流の変化を抑制するセルフバイアス抵抗と
を有し、
複数の前記カソードに負電圧を印加し、複数の前記カソードから前記熱電子を放出させるカソード電圧源を更に備えることを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 前記複数の電子ビーム生成装置のそれぞれは、それぞれの前記カソードに更に電圧を印加する複数のカソード微小電圧源を更に有することを特徴とする請求項13に記載の電子ビーム露光装置。
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