JP2005023240A - ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な補強材としてのフラーレン類を配合して、低比重でヒステリシスロスないし損失正接を低減させたゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた
低発熱性で耐久性と転動抵抗に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法或いはCVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。また、上記のゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
【選択図】 なし
低発熱性で耐久性と転動抵抗に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法或いはCVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。また、上記のゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラーレン類を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた各種ゴム製品、特にゴム部材として用いたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
C60で代表されるフラーレンは、60個の炭素が正六角形20個と正五角形12個からなる球状の切頭正二十面体を構成する炭素化合物として、1985年にH.W.KrotoとR.E.Smalley等によって発見された新規な化学物質である。このフラーレン型の炭素材は、従来、知られていたグラファイトやアモルファスカーボン、ダイヤモンドとは異なる新しい炭素物質として注目されている。その理由は、フラーレンが従来の炭素物質とは異なる特異な構造と物性を示すためであり、例えば、C60やC70に代表されるフラーレンは、多数の炭素原子が球状の籠型に配置された分子構造を構成し、しかも炭素物質でありながらベンゼン等の有機溶媒に良く溶ける性質があるので、その精製及び分離も容易である。
【0003】
上記フラーレンは、C60やC70以外にも多数の種類が知られており、超伝導体や半導体としての性質を示すことが知られ、更に光官能効果が高く、電子写真感光材料や、光デバイスとしての応用も考えられている。また、内部に異種の元素を閉じこめたり、外部に多種の化学官能基を付与させることで、機能性材料として有効な物性を発現することも判明してきた。この様にフラーレンを分子内に基本骨格として有するフラーレン誘導体は、フラーレンの化学的性質や物理的性質を制御したり、光学的性質を出現させたりする上で、重要な物質として認識されており、様々なフラーレン誘導体が考案されている。
【0004】
また、フラーレンの炭素骨格は、歪を有するsp2炭素混成軌道どうしの共有結合により閉じた三次元的な中空球殻状構造を有する炭素同素体であり、その分子構造は5角形と6角形より成る多面体である。この様な特殊構造を含むフラーレン又はその誘導体をゴム組成物に用いることにより、従来より低比重でありながら新規な或いは強力な補強効果が発揮される可能性、並びに新たな架橋形態に関与する可能性等が考えられる。
【0005】
尚、フラーレンの製造或いは応用に関しては、例えば、下記の特許文献1〜4に開示されており、また総説記事として、例えば、下記の非特許文献1に詳しく掲載されている。
【0006】
この様なフラーレン型の炭素をゴム組成物及びタイヤへ適用した例として、例えば、下記の特許文献5が挙げられる。この文献においては、ジエン系エラストマーとフラーレン炭素、カーボンブラック及び沈降シリカの少なくとも1種、から構成されるゴム組成物及びタイヤが開示され、比重が小さくて転がり抵抗及びトレッドの耐摩耗性のバランスが優れると記載されている。
また、2層型ソリッド製ゴルフボールにおいて、コア用のゴム組成物にフラーレン又はその誘導体を用いることが開示され(例えば、特許文献6参照。)、優れた反発性能及び飛行性能を有し、かつ打球感を向上させ得ると記載されている。
しかしながら、ゴム組成物及び各種ゴム製品への適用例は未だ極めて少なく、フラーレン型炭素類の特徴を良く把握した上での適切な応用事例は今後の研究に待たれている。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5,273,729号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,281,653号明細書
【特許文献3】
米国特許第5,292,813号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,372,798号明細書
【特許文献5】
特開平10−168238号公報
【特許文献6】
特開2002−253703号公報
【非特許文献1】
「Scientific American」(1990年、10月号)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における上記の事情に鑑み、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、新規な補強材ないし機能材としてのフラーレン類の特質を把握して、特定の範囲において、該フラーレン類を配合した低比重のゴム組成物を提供し、従来困難とされてきた、ヒステリシスロスないし損失正接の抑制と機械的強度ないし耐久性の向上を両立させることを目的とする。
また、本発明の第2の目的は、走行発熱の低い且つ高耐久寿命を有し転がり抵抗の小さい優れたタイヤを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、下記の通りである。即ち、
<1> ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
<2> ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、CVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
<3> 更に、20〜70質量部のカーボンブラックを配合してなることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<4> 前記フラーレン類が、(1)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び/又は(2)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、を含有することを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<5> ゴム成分100質量部と、アーク放電法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
<6> ゴム成分100質量部と、CVD(化学蒸着)法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
【0010】
【発明の実施の形態】
第1の本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
第2の本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、CVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
また、本発明のタイヤは、上記第1或いは第2の様なゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明のゴム組成物は、上記に加えて、20〜70質量部のカーボンブラックを配合してなることが好ましい形態である。この様に、新規な補強材として、アーク放電法により製造された、或いはCVD(化学蒸着)法により製造されたフラーレン類を、ゴム成分に対して上記の範囲内で配合することにより、本発明のゴム組成物は、低比重という特質を有し、ヒステリシスロスもしくは損失正接(tanδ)を抑制して、機械的強度や耐久性に優れた物性を保有する。
尚、本発明の上記ゴム組成物には、目的ないし必要に応じて、更に、他の補強材や充填材、プロセスオイル、硫黄、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、酸化防止剤、及びその他の各種添加剤等を配合することができる。
また、上記のゴム組成物をゴム部材或いは部材の一部として用いて製造された本発明のタイヤは、軽量で低発熱性であり且つ転がり抵抗が小さく耐久性に優れたタイヤである。
以下、本発明のゴム組成物及びタイヤについて、詳細に説明する。
【0012】
(フラーレン類及びその製法)
フラーレンは、コアアヌレン環構造もしくはコアアヌレン環構造を含む部位を有する同素体形炭素(C2n)であり、ここで該nは約16〜960の範囲の整数が可能であり、好ましくは約24〜240の範囲、より好ましくは約30〜80の範囲であり、特に好ましくは約30〜40の範囲の整数である。これらは少くとも12個の五角形と少くとも20個の六角形の頂点に配置されて、閉じた籠構造の炭素原子構造を形成している。この様なフラーレン若しくはフラーレン炭素は、その中空分子構造に起因して、約1.2〜約1.7の範囲の極めて低い比重を持つという特徴を有する。
【0013】
一般に、フラーレン類は高温ないし高エネルギーで気化させた炭素蒸気を冷却して再凝固させる方法により生成されるが、この炭素を蒸発させる手段として、燃焼法や抵抗加熱法、レーザー加熱法、高周波誘導加熱法、アーク放電法、CVD(化学蒸着)法等が知られている。この内、(1)燃焼法は減圧下でベンゼン等を炭素源として酸素或いはアルゴン雰囲気下で燃焼させる方法、(2)抵抗加熱法は炭素棒等に通電して抵抗発熱を利用する方法、(3)レーザー加熱法は黒鉛板等に高エネルギーのレーザー光を照射させる方法、(4)高周波誘導加熱法は原料グラファイト等に渦電流を流し加熱蒸発させる方法である。(5)アーク放電法は、クレッチマー(Kratschmer)等により大量合成法として提示(例えば、「Nature」、<347,354>、1990)された方法で、50〜200TorrのHe雰囲気容器内で陽極及び陰極となる一対の黒鉛電極間にアーク放電させて炭素を蒸発させることによりフラーレン類を含むスート粉末として回収する方法である。(6)CVD(化学蒸着)法は、高温の基板上に原料ガスの化学分解反応により固体層を析出させる方法である。
【0014】
本発明のゴム組成物においては、その製造コストや品質安定性及び量産供給能力の観点より、上記(5)のアーク放電法或いは上記(6)のCVD(化学蒸着)法によって製造されたフラーレン類が用いられる。
【0015】
アーク放電法は、グラファイト棒等を陰極と陽極に用い、HeやAr等の希ガス雰囲気中で、数十Vの電圧を印加し電極間に数十Aの電流を流すことで、アーク放電が起こり、その結果、陽極先端部は約4000℃程度まで温度が上昇し、陽極の先端部が蒸発して、フラーレン類を含有する煤が陰極や装置の内壁に堆積する。このアーク放電法において、グラファイト棒を電極として用いると、アークプラズマ中に多量に存在する電子やイオンが陽極側のグラファイト棒に衝突する。その結果、グラファイト棒の先端の温度は約4000℃まで上昇し、炭素のイオンや中性粒子が多量に放出される。これらが、陰極やチャンバーに付着したり、陽極側に再付着する過程で、フラーレン類が生成されると考えられている。この様なフラーレン類には、フラーレン炭素そのもの及び特殊な構造のアモルファスカーボン粒子やグラファイト粒子等も含まれている。
【0016】
上記のアーク放電法によるフラーレン類の製造方法に関して、フラーレン組成を最適化し収率を向上させ経済性を高める等を目的に、アーク放電法条件及び製造パラメーター(炭素源、放電方式、放電条件、減圧、温度、金属触媒、キャリヤーガス、滞留時間、回収法、精製法など)を選択的に制御する各種の技法が提案されている。例えば、
【0017】
(1)炭素クラスターの製造用原料として、グラファイト棒の中心に穴部を設け、金属触媒含有材料を充填し焼結して、陽極となる既黒鉛化炭素質成形体を用いる(特開2003−112912号)。
(2)中心部に中性電極を配置し、同心的に配置された円筒状多相交流電極の内部にアークプラズマ密閉室を形成し、該密閉室内に炭素材と触媒金属との混合物を充填した後、炭素材と金属触媒の混合物の隙間内に連続的に周期的に軸方向で移動するアークプラズマを発生させて炭素蒸気を生成し、フイルタで炭素蒸気を分離して凝縮器でフラーレンを分離回収する。キャリアガスはポンプにより排熱回収部を経て、ガス供給口からアークプラズマ室内に循環される(特開2003−54924号)。
(3)炭素源電極として、ファーネスブラックを30〜90質量%含み、室温での固有抵抗が50〜120μΩmとし、結合剤としてピッチ又は樹脂を用いる(特開2003−34513号)。
【0018】
(4)不活性ガスの減圧雰囲気下に反応チャンバー内に、負極に接続された炭素棒電極を設け、その先端部に対向する様に、正極に接続された炭素棒電極を供給し、該先端部と負極に接続された炭素棒電極の先端部との間に、アーク放電を生成して、フラーレン類を製造する方法(特開2003−234716号)。
(5)不活性ガスの減圧雰囲気に保持された反応チャンバー内で、一対の炭素棒電極間にアーク放電を発生させ、生成されたフラーレン類を含む生成物を、不活性なガスに同伴させて、反応チャンバーに接続されたガス循環通路に導き、該通路内に設けられたフィルターによって捕集するフラーレン類の製造方法(特開2003−234715号)。
(6)不活性ガスの減圧雰囲気に保持された反応チャンバー内で、正極に接続され横断面が略蝸牛状をなした板部材によって形成された炭素電極の周方向の切り欠き端部と、負極に接続された炭素棒電極の先端部とが対向した関係を保持し、略蝸牛状炭素電極の切り欠き端部と炭素棒電極の先端部との間に、アーク放電が生成される様に、略蝸牛状炭素電極を回転させると共に、炭素棒電極を移動させるるフラーレン類の製造方法(特開2003−234714号)。
【0019】
(7)一対の炭素棒電極間にアーク放電を発生させ、生成されたフラーレン類を含む生成物を絡み取って、捕集する製造方法(特開2003−234713号)。
(8)密閉容器のアークプラズマ室内に棒状三相交流電極と中性電極とを間隔をおいて配置し、アークプラズマ室内に粒状炭素材と金属触媒との混合物を充填した後、プラズマガスの存在下で三相交流電極と中性電極との間に三相交流電力を供給し、粒状炭素材と金属触媒の混合物の隙間内に連続的に変化するアークプラズマを発生させて金属触媒蒸気の存在下で炭素蒸気を生成し、フイルターで炭素蒸気を分離して凝縮器でフラーレンを分離回収する。プラズマガスはポンプにより排熱回収部を経て、ガス供給口からアークプラズマ室内に循環される(特開2002−29718号)。
(9)系内を1.3Pa以下に減圧し、含炭素液状物質を供給して系内を1.3kPa〜93.3kPaとしアーク放電を行い、該アーク放電により発生する放電プラズマ中に含炭素液状物質を供給し、該含炭素液状物質を分解等して、フラーレンを生成させる方法(特開2001−348215号)。
【0020】
更に、特開2002−265208号、特開2001−019412号、特開2000−159514号、特開2000−063295号、特開平10−074518号、特開平08−310806号、特開平08−268705号、特開平08−239210号、特開平08−217430号、特開平08−165112号、特開平07−315819号、特開平07−257916号、特開平07−237913号、特開平07−223807号、特開平07−165406号、特開平07−115012号、特開平05−282938号、特開平05−201715号、特開平05−116925号、特開平05−116921号、等にも記載されている。
本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、目的と必要に応じて、上記の技法を加味して製造したフラーレン類も好適に使用できる。
【0021】
CVD(化学蒸着)法によるフラーレン類の製法は、炭素源として例えばアセチレンガスやメタンガス等を用い、この原料ガスの化学分解反応により、高純度のフラーレン類が製造される。このCVD(化学蒸着)法における化学反応は、原料の熱分解過程を利用しているので、純度の高いフラーレン類を製造することが可能である。また、原料がガスの場合には、原料の連続的な投入が可能であり、更にフッ素系化合物を原料としたCVD法は、高い製造効率を有するという利点がある。具体的には、テトラフルオロエチレンや塩化ビニリデン或いはフッ化ビニリデン等を原料として、光CVD法或いは熱CVD法により、フラーレン類を含む混在物を形成させる。このCVD法においては、基板上にこれらのフラーレン類を含む被膜を形成させることができるので、他の製法に比してその分離精製が容易となる。
【0022】
上記のCVD(化学蒸着)法において使用する光源としては、炭素やフッ素、塩素の結合を励起する光であれば、特に制限なく使用できる。一般にσ結合は、紫外線により励起されるので、水銀ランプなどの紫外線光源を使用することが好ましい。また、紫外線領域のレーザーは高強度であるため、光CVDのエネルギー源として好ましく、特に真空紫外領域の紫外線レーザーの使用が好ましい。この様なレーザーとしては、エキシマレーザーの使用が好適であり、より具体的には、Ar2、Kr2、Xe2などの希ガスエキシマレーザー、ArF、KrF、XeClなどの希ガスハロゲンエキシマレーザー等が挙げられる。特に、ArFエキシマレーザー光を使用することが好ましい。ArFエキシマレーザー光は、波長が193nmの紫外線であり、炭素の関与する化学結合を励起ないし解離する能力が強い。
【0023】
また、熱CVD法に際しては、原料を加熱する場合には、通常、常圧から減圧下(10〜8torr程度)、温度100〜2000℃程度(より好ましくは、200〜1500℃程度)で加熱する。
【0024】
フラーレン類或いはこれらの混在物を形成させる基板としては、石英ガラス、プラチナ、パラジウム、白金、鉄などが使用できる。次いで、基板上の生成物をエタノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの溶剤中で、例えば超音波を印加して洗浄し、副生物を除去し精製することもできる。
尚、原料として樹脂フイルム(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を使用してもよく、この場合には、脱フッ素によりポリイン構造を形成することが知られているので、光CVD法或いは熱CVD法により、フィルム表面及び/又はフィルム内部からポリイン及びポリインオリゴマーが蒸発し、これからフラーレン類が形成されるものと考えられる。
【0025】
上記のフッ素系化合物を原料としたCVD(化学蒸着)法によるフラーレン類の製造方法として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデンを原料として、光CVD法又は熱CVD法により、フラーレン類を含むアモルファスカーボンを生成する方法が、特開平11−349308号に記載されている。本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、上記の技法を適用して製造したフラーレン類も好適に使用できる。
【0026】
本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン炭素そのもの、或いは(2)フラーレンの製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び(3)該煤からフラーレン類を抽出した後の残滓、の何れをも使用することができ、また任意の割合で混合して使用することも出来る。
上記の中でも、費用対効果の観点より、特に(1)フラーレンの製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び/又は(2)該煤からフラーレン類を抽出した後の残滓、を含有するフラーレン類を使用することが好ましい。
尚、上記(2)のフラーレン類を抽出した後の残滓は、フラーレン類を含む煤から、ベンゼン等の有機溶媒でフラーレン類を溶解し除去することにより得られるものである。
【0027】
本発明のゴム組成物においては、ロス特性と強度特性等を両立させて改善する為に、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の上記フラーレン類を配合して使用する。該配合量は0.3〜8質量部が好ましく、特に0.5〜5質量部が最も好ましい。該フラーレン類の配合量が、0.1質量部に満たない場合は、フラーレン類の添加による上記特性の改善効果が不十分であり、また該配合量が10質量部を越えて配合しても、上記の改善効果としては飽和してしまい、返って強度が低下することもあるので、過剰の添加は好ましくない。
【0028】
(ゴム組成物)
本発明に用いるゴム成分としては特に限定はなく、従来より公知のゴム配合に使用される天然ゴム及び各種合成ゴムを用いることができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総てを用いることができる。
上記合成ゴムとしても、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR);エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物等が挙げられる。
また、これらのゴム成分は、適宜に窒素、スズ、珪素等のヘテロ原子を含むことができる。
【0029】
本発明のゴム組成物には、前述のフラーレン類に加えて、補強材ないし充填材としてカーボンブラックを配合することが好ましい。ゴム成分100質量部に対して、20〜70質量部のカーボンブラックを配合することにより、破壊強度や耐摩耗性及び弾性率等を更に向上できる。尚、該カーボンブラックの配合量は、上記効果を高める為に、30〜60質量部の範囲がより好ましく、特に40〜60質量部のカーボンを配合することが最も好ましい。該配合量が20質量部に満たないと、向上効果が不十分であることがあり、一方、70質量部を越えて配合すると、ヒステリシスロス或いは損失係数の悪化を招くことがある。
【0030】
配合するカーボンブラックとしては特に制限はなく、具体的には例えば、N110(SAF)、N115、N120、N121、N125、N134、N135、S212、N220(ISAF−HM)、N231(ISAF−LM)、N234、N293、N299、S315、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)、N351、N356、N358、N375、N539、N550(FEF)、N582、N630、N642、N650、N660(GPF)、N683(APF)、N754、N762(SRF−LM)、N765、N772、N774(SRF−HM)、N787、N907、N908、N990(MT)、N991(MT)カーボン等を用いることができる。ここで、括弧内の記号は、従来からのカーボンブラックの慣用分類名を示す。
【0031】
上記のカーボンブラックの中でも、前述のフラーレン類と併用して、ロス特性と破壊強度を両立させて向上させる観点より、N110(SAF)、N220(ISAF−HM)、N231(ISAF−LM)、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N347(HAF−HS)、N550(FEF)、N660(GPF)カーボンが好ましく、特にN330(HAF)とN347(HAF−HS)カーボンが好ましい。
上記のカーボンブラックは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
また本発明のゴム組成物には、補強材ないし充填材としてシリカを配合することもできる。該シリカとしては特に制限はなく、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性及び低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
シリカを充填材として用いた場合、補強性を更に向上させるために、配合時にシランカップリング剤を用いることが好ましく、そのシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド等が挙げられる。
また、更にカーボンナノファイバー(中実品、中空品など)やアルミナ類、炭酸カルシウム、クレー等の無機充填剤を用いることもできる。
【0033】
これらの実施の形態においては、(1)フラーレン類とカーボンブラック及び/又はシリカの全配合量は、ゴム成分100質量部に対して10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、特に30〜60質量部が好ましい。また、(2)フラーレン類のカーボンブラック及び/又はシリカに対する割合は0.3〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、特に1〜30質量%が好ましい。
【0034】
更に、本発明のゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、を添加してもよい。
上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、その配合量はゴム成分100重量部に対して硫黄分として0.1重量部から10重量部が好ましく、更に好ましくは1重量部から5重量部である。
上記加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくはM(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPG(ジフェニルグアジニン)等のグアジニン系の加硫促進剤が挙げられ、その使用量は、主に必要とされるゴムの加硫速度で決定される。一般的にゴム成分100重量部に対して0.1重量部から7重量部が好ましく、更に好ましくは1重量部から5重量部である。
【0035】
上記プロセス油としては、例えば、パラフィン系,ナフテン系,芳香族系等が挙げられ、引張強度,耐摩耗性の向上を重視する用途には芳香族系が、ヒステリシスロス、低温特性の向上を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100重量部に対して0重量部から100重量部が好ましく、100重量部を越えると加硫ゴムの引張強度、低発熱性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物には、これら以外にもゴム工業で通常使用されている老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤等の添加剤を適宜に配合することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機やバンバリーミキサーなどの密閉式混練機等の混練り機械を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材、免振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業用品等の用途に用いることができるが、特にタイヤのトレッド、アンダートレッド、サイドウォール用ゴムとして好適に使用される。
また、上記ゴム組成物を用いた本発明の空気入りタイヤにおいては、破壊強度、ウェットスキッド抵抗性、ドライスキッド性(ドライグリップ性)、耐摩耗性、及び低燃費性等において優れた性能を得ることができる。このタイヤに充填する気体としては、空気、又は窒素などの不活性ガスが挙げられる。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明のゴム組成物の実施例について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、本実施例中の「部数」及び「%」は全て、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0038】
[実施例1〜6及び比較例1]
下記の表1の上段に示す配合処方に基づき、通常の手順に従って、500mLのラボプラストミルを用いて混練りして、実施例1〜6及び比較例1の各ゴム組成物のシート物を作製した。次いで、温度150℃で、加硫反応によるトルクの上昇が全体の90%に達するまでの時間(t90)の1.5倍にあたる加硫時間で加硫して、下記の物性測定用の供試サンプルを得た。
【0039】
ここで、本実施例に用いたフラーレン類は下記の通りである。
・フラーレン(煤)………本荘ケミカル(株)製のアーク放電法により製造されたカーボンクラスターで、炭素組成は約98質量%、煤中のフラーレン類は約7質量%である。
・フラーレン(炭素)………本荘ケミカル(株)製のアーク放電法により製造されたフラーレン炭素混合物で、該フラーレン中、C60は約80質量%でC70は約18質量%である。
【0040】
更に、表1の配合成分の仕様(スペック)は下記の通りである。
・SBR1500………JSR(株)製のスチレン−ブタジエン共重合体。
・カーボンブラック(HAF)………旭カーボン(株)製の「旭#70」。
・プロセスオイル………スピンドル油。
・「ノクラック6C」………N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製の老化防止剤。
・「ノクセラーNS」………N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製の加硫促進剤。
【0041】
上記の各加硫ゴム試料につき、以下の様に評価試験を実施して、その結果を下記の表1の下段に示した。
(1)引張試験
室温25℃において、JIS K6301−1995(3号試験片サンプル)に準拠して引張試験を行い、300%伸長時のモデュラスM300(MPa)及び破壊強度Tb(MPa)と破断伸び(%)Ebを測定した。
【0042】
(2)動的粘弾性試験
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定試験機「ARES」を使用して、温度50℃、測定周波数15Hz、及び動的歪1%における貯蔵弾性率G′(MPa)及び損失正接(tanδ)を測定した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記の表1の結果より、フラーレン類を本発明の範囲に従って配合した実施例1〜6の貯蔵弾性率(G′)は、比較例1に比べて概ね同等或いはそれ以上に高く、損失正接(tanδ)はかなり小さいことが判明した。また、300%モデュラス(M300)も同等もしくは高く、破壊強度(Tb)は概ね同等或いはそれ以上に高かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明に依れば、新規な補強材としてフラーレン類を配合したゴム組成物が得られ、(1)低比重である、(2)高モジュラスである、(3)ヒステリシスロスが小さい、(4)損失係数(tanδ)が小さい、等の優位性のある物性が得られた。更に、このゴム組成物を部材に適用することにより、低発熱性で転動抵抗に優れたタイヤを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラーレン類を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた各種ゴム製品、特にゴム部材として用いたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
C60で代表されるフラーレンは、60個の炭素が正六角形20個と正五角形12個からなる球状の切頭正二十面体を構成する炭素化合物として、1985年にH.W.KrotoとR.E.Smalley等によって発見された新規な化学物質である。このフラーレン型の炭素材は、従来、知られていたグラファイトやアモルファスカーボン、ダイヤモンドとは異なる新しい炭素物質として注目されている。その理由は、フラーレンが従来の炭素物質とは異なる特異な構造と物性を示すためであり、例えば、C60やC70に代表されるフラーレンは、多数の炭素原子が球状の籠型に配置された分子構造を構成し、しかも炭素物質でありながらベンゼン等の有機溶媒に良く溶ける性質があるので、その精製及び分離も容易である。
【0003】
上記フラーレンは、C60やC70以外にも多数の種類が知られており、超伝導体や半導体としての性質を示すことが知られ、更に光官能効果が高く、電子写真感光材料や、光デバイスとしての応用も考えられている。また、内部に異種の元素を閉じこめたり、外部に多種の化学官能基を付与させることで、機能性材料として有効な物性を発現することも判明してきた。この様にフラーレンを分子内に基本骨格として有するフラーレン誘導体は、フラーレンの化学的性質や物理的性質を制御したり、光学的性質を出現させたりする上で、重要な物質として認識されており、様々なフラーレン誘導体が考案されている。
【0004】
また、フラーレンの炭素骨格は、歪を有するsp2炭素混成軌道どうしの共有結合により閉じた三次元的な中空球殻状構造を有する炭素同素体であり、その分子構造は5角形と6角形より成る多面体である。この様な特殊構造を含むフラーレン又はその誘導体をゴム組成物に用いることにより、従来より低比重でありながら新規な或いは強力な補強効果が発揮される可能性、並びに新たな架橋形態に関与する可能性等が考えられる。
【0005】
尚、フラーレンの製造或いは応用に関しては、例えば、下記の特許文献1〜4に開示されており、また総説記事として、例えば、下記の非特許文献1に詳しく掲載されている。
【0006】
この様なフラーレン型の炭素をゴム組成物及びタイヤへ適用した例として、例えば、下記の特許文献5が挙げられる。この文献においては、ジエン系エラストマーとフラーレン炭素、カーボンブラック及び沈降シリカの少なくとも1種、から構成されるゴム組成物及びタイヤが開示され、比重が小さくて転がり抵抗及びトレッドの耐摩耗性のバランスが優れると記載されている。
また、2層型ソリッド製ゴルフボールにおいて、コア用のゴム組成物にフラーレン又はその誘導体を用いることが開示され(例えば、特許文献6参照。)、優れた反発性能及び飛行性能を有し、かつ打球感を向上させ得ると記載されている。
しかしながら、ゴム組成物及び各種ゴム製品への適用例は未だ極めて少なく、フラーレン型炭素類の特徴を良く把握した上での適切な応用事例は今後の研究に待たれている。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5,273,729号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,281,653号明細書
【特許文献3】
米国特許第5,292,813号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,372,798号明細書
【特許文献5】
特開平10−168238号公報
【特許文献6】
特開2002−253703号公報
【非特許文献1】
「Scientific American」(1990年、10月号)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における上記の事情に鑑み、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、新規な補強材ないし機能材としてのフラーレン類の特質を把握して、特定の範囲において、該フラーレン類を配合した低比重のゴム組成物を提供し、従来困難とされてきた、ヒステリシスロスないし損失正接の抑制と機械的強度ないし耐久性の向上を両立させることを目的とする。
また、本発明の第2の目的は、走行発熱の低い且つ高耐久寿命を有し転がり抵抗の小さい優れたタイヤを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、下記の通りである。即ち、
<1> ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
<2> ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、CVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
<3> 更に、20〜70質量部のカーボンブラックを配合してなることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<4> 前記フラーレン類が、(1)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び/又は(2)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、を含有することを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<5> ゴム成分100質量部と、アーク放電法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
<6> ゴム成分100質量部と、CVD(化学蒸着)法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
【0010】
【発明の実施の形態】
第1の本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
第2の本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、CVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
また、本発明のタイヤは、上記第1或いは第2の様なゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明のゴム組成物は、上記に加えて、20〜70質量部のカーボンブラックを配合してなることが好ましい形態である。この様に、新規な補強材として、アーク放電法により製造された、或いはCVD(化学蒸着)法により製造されたフラーレン類を、ゴム成分に対して上記の範囲内で配合することにより、本発明のゴム組成物は、低比重という特質を有し、ヒステリシスロスもしくは損失正接(tanδ)を抑制して、機械的強度や耐久性に優れた物性を保有する。
尚、本発明の上記ゴム組成物には、目的ないし必要に応じて、更に、他の補強材や充填材、プロセスオイル、硫黄、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、酸化防止剤、及びその他の各種添加剤等を配合することができる。
また、上記のゴム組成物をゴム部材或いは部材の一部として用いて製造された本発明のタイヤは、軽量で低発熱性であり且つ転がり抵抗が小さく耐久性に優れたタイヤである。
以下、本発明のゴム組成物及びタイヤについて、詳細に説明する。
【0012】
(フラーレン類及びその製法)
フラーレンは、コアアヌレン環構造もしくはコアアヌレン環構造を含む部位を有する同素体形炭素(C2n)であり、ここで該nは約16〜960の範囲の整数が可能であり、好ましくは約24〜240の範囲、より好ましくは約30〜80の範囲であり、特に好ましくは約30〜40の範囲の整数である。これらは少くとも12個の五角形と少くとも20個の六角形の頂点に配置されて、閉じた籠構造の炭素原子構造を形成している。この様なフラーレン若しくはフラーレン炭素は、その中空分子構造に起因して、約1.2〜約1.7の範囲の極めて低い比重を持つという特徴を有する。
【0013】
一般に、フラーレン類は高温ないし高エネルギーで気化させた炭素蒸気を冷却して再凝固させる方法により生成されるが、この炭素を蒸発させる手段として、燃焼法や抵抗加熱法、レーザー加熱法、高周波誘導加熱法、アーク放電法、CVD(化学蒸着)法等が知られている。この内、(1)燃焼法は減圧下でベンゼン等を炭素源として酸素或いはアルゴン雰囲気下で燃焼させる方法、(2)抵抗加熱法は炭素棒等に通電して抵抗発熱を利用する方法、(3)レーザー加熱法は黒鉛板等に高エネルギーのレーザー光を照射させる方法、(4)高周波誘導加熱法は原料グラファイト等に渦電流を流し加熱蒸発させる方法である。(5)アーク放電法は、クレッチマー(Kratschmer)等により大量合成法として提示(例えば、「Nature」、<347,354>、1990)された方法で、50〜200TorrのHe雰囲気容器内で陽極及び陰極となる一対の黒鉛電極間にアーク放電させて炭素を蒸発させることによりフラーレン類を含むスート粉末として回収する方法である。(6)CVD(化学蒸着)法は、高温の基板上に原料ガスの化学分解反応により固体層を析出させる方法である。
【0014】
本発明のゴム組成物においては、その製造コストや品質安定性及び量産供給能力の観点より、上記(5)のアーク放電法或いは上記(6)のCVD(化学蒸着)法によって製造されたフラーレン類が用いられる。
【0015】
アーク放電法は、グラファイト棒等を陰極と陽極に用い、HeやAr等の希ガス雰囲気中で、数十Vの電圧を印加し電極間に数十Aの電流を流すことで、アーク放電が起こり、その結果、陽極先端部は約4000℃程度まで温度が上昇し、陽極の先端部が蒸発して、フラーレン類を含有する煤が陰極や装置の内壁に堆積する。このアーク放電法において、グラファイト棒を電極として用いると、アークプラズマ中に多量に存在する電子やイオンが陽極側のグラファイト棒に衝突する。その結果、グラファイト棒の先端の温度は約4000℃まで上昇し、炭素のイオンや中性粒子が多量に放出される。これらが、陰極やチャンバーに付着したり、陽極側に再付着する過程で、フラーレン類が生成されると考えられている。この様なフラーレン類には、フラーレン炭素そのもの及び特殊な構造のアモルファスカーボン粒子やグラファイト粒子等も含まれている。
【0016】
上記のアーク放電法によるフラーレン類の製造方法に関して、フラーレン組成を最適化し収率を向上させ経済性を高める等を目的に、アーク放電法条件及び製造パラメーター(炭素源、放電方式、放電条件、減圧、温度、金属触媒、キャリヤーガス、滞留時間、回収法、精製法など)を選択的に制御する各種の技法が提案されている。例えば、
【0017】
(1)炭素クラスターの製造用原料として、グラファイト棒の中心に穴部を設け、金属触媒含有材料を充填し焼結して、陽極となる既黒鉛化炭素質成形体を用いる(特開2003−112912号)。
(2)中心部に中性電極を配置し、同心的に配置された円筒状多相交流電極の内部にアークプラズマ密閉室を形成し、該密閉室内に炭素材と触媒金属との混合物を充填した後、炭素材と金属触媒の混合物の隙間内に連続的に周期的に軸方向で移動するアークプラズマを発生させて炭素蒸気を生成し、フイルタで炭素蒸気を分離して凝縮器でフラーレンを分離回収する。キャリアガスはポンプにより排熱回収部を経て、ガス供給口からアークプラズマ室内に循環される(特開2003−54924号)。
(3)炭素源電極として、ファーネスブラックを30〜90質量%含み、室温での固有抵抗が50〜120μΩmとし、結合剤としてピッチ又は樹脂を用いる(特開2003−34513号)。
【0018】
(4)不活性ガスの減圧雰囲気下に反応チャンバー内に、負極に接続された炭素棒電極を設け、その先端部に対向する様に、正極に接続された炭素棒電極を供給し、該先端部と負極に接続された炭素棒電極の先端部との間に、アーク放電を生成して、フラーレン類を製造する方法(特開2003−234716号)。
(5)不活性ガスの減圧雰囲気に保持された反応チャンバー内で、一対の炭素棒電極間にアーク放電を発生させ、生成されたフラーレン類を含む生成物を、不活性なガスに同伴させて、反応チャンバーに接続されたガス循環通路に導き、該通路内に設けられたフィルターによって捕集するフラーレン類の製造方法(特開2003−234715号)。
(6)不活性ガスの減圧雰囲気に保持された反応チャンバー内で、正極に接続され横断面が略蝸牛状をなした板部材によって形成された炭素電極の周方向の切り欠き端部と、負極に接続された炭素棒電極の先端部とが対向した関係を保持し、略蝸牛状炭素電極の切り欠き端部と炭素棒電極の先端部との間に、アーク放電が生成される様に、略蝸牛状炭素電極を回転させると共に、炭素棒電極を移動させるるフラーレン類の製造方法(特開2003−234714号)。
【0019】
(7)一対の炭素棒電極間にアーク放電を発生させ、生成されたフラーレン類を含む生成物を絡み取って、捕集する製造方法(特開2003−234713号)。
(8)密閉容器のアークプラズマ室内に棒状三相交流電極と中性電極とを間隔をおいて配置し、アークプラズマ室内に粒状炭素材と金属触媒との混合物を充填した後、プラズマガスの存在下で三相交流電極と中性電極との間に三相交流電力を供給し、粒状炭素材と金属触媒の混合物の隙間内に連続的に変化するアークプラズマを発生させて金属触媒蒸気の存在下で炭素蒸気を生成し、フイルターで炭素蒸気を分離して凝縮器でフラーレンを分離回収する。プラズマガスはポンプにより排熱回収部を経て、ガス供給口からアークプラズマ室内に循環される(特開2002−29718号)。
(9)系内を1.3Pa以下に減圧し、含炭素液状物質を供給して系内を1.3kPa〜93.3kPaとしアーク放電を行い、該アーク放電により発生する放電プラズマ中に含炭素液状物質を供給し、該含炭素液状物質を分解等して、フラーレンを生成させる方法(特開2001−348215号)。
【0020】
更に、特開2002−265208号、特開2001−019412号、特開2000−159514号、特開2000−063295号、特開平10−074518号、特開平08−310806号、特開平08−268705号、特開平08−239210号、特開平08−217430号、特開平08−165112号、特開平07−315819号、特開平07−257916号、特開平07−237913号、特開平07−223807号、特開平07−165406号、特開平07−115012号、特開平05−282938号、特開平05−201715号、特開平05−116925号、特開平05−116921号、等にも記載されている。
本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、目的と必要に応じて、上記の技法を加味して製造したフラーレン類も好適に使用できる。
【0021】
CVD(化学蒸着)法によるフラーレン類の製法は、炭素源として例えばアセチレンガスやメタンガス等を用い、この原料ガスの化学分解反応により、高純度のフラーレン類が製造される。このCVD(化学蒸着)法における化学反応は、原料の熱分解過程を利用しているので、純度の高いフラーレン類を製造することが可能である。また、原料がガスの場合には、原料の連続的な投入が可能であり、更にフッ素系化合物を原料としたCVD法は、高い製造効率を有するという利点がある。具体的には、テトラフルオロエチレンや塩化ビニリデン或いはフッ化ビニリデン等を原料として、光CVD法或いは熱CVD法により、フラーレン類を含む混在物を形成させる。このCVD法においては、基板上にこれらのフラーレン類を含む被膜を形成させることができるので、他の製法に比してその分離精製が容易となる。
【0022】
上記のCVD(化学蒸着)法において使用する光源としては、炭素やフッ素、塩素の結合を励起する光であれば、特に制限なく使用できる。一般にσ結合は、紫外線により励起されるので、水銀ランプなどの紫外線光源を使用することが好ましい。また、紫外線領域のレーザーは高強度であるため、光CVDのエネルギー源として好ましく、特に真空紫外領域の紫外線レーザーの使用が好ましい。この様なレーザーとしては、エキシマレーザーの使用が好適であり、より具体的には、Ar2、Kr2、Xe2などの希ガスエキシマレーザー、ArF、KrF、XeClなどの希ガスハロゲンエキシマレーザー等が挙げられる。特に、ArFエキシマレーザー光を使用することが好ましい。ArFエキシマレーザー光は、波長が193nmの紫外線であり、炭素の関与する化学結合を励起ないし解離する能力が強い。
【0023】
また、熱CVD法に際しては、原料を加熱する場合には、通常、常圧から減圧下(10〜8torr程度)、温度100〜2000℃程度(より好ましくは、200〜1500℃程度)で加熱する。
【0024】
フラーレン類或いはこれらの混在物を形成させる基板としては、石英ガラス、プラチナ、パラジウム、白金、鉄などが使用できる。次いで、基板上の生成物をエタノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの溶剤中で、例えば超音波を印加して洗浄し、副生物を除去し精製することもできる。
尚、原料として樹脂フイルム(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を使用してもよく、この場合には、脱フッ素によりポリイン構造を形成することが知られているので、光CVD法或いは熱CVD法により、フィルム表面及び/又はフィルム内部からポリイン及びポリインオリゴマーが蒸発し、これからフラーレン類が形成されるものと考えられる。
【0025】
上記のフッ素系化合物を原料としたCVD(化学蒸着)法によるフラーレン類の製造方法として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデンを原料として、光CVD法又は熱CVD法により、フラーレン類を含むアモルファスカーボンを生成する方法が、特開平11−349308号に記載されている。本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、上記の技法を適用して製造したフラーレン類も好適に使用できる。
【0026】
本発明のゴム組成物に用いるフラーレン類としては、(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン炭素そのもの、或いは(2)フラーレンの製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び(3)該煤からフラーレン類を抽出した後の残滓、の何れをも使用することができ、また任意の割合で混合して使用することも出来る。
上記の中でも、費用対効果の観点より、特に(1)フラーレンの製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び/又は(2)該煤からフラーレン類を抽出した後の残滓、を含有するフラーレン類を使用することが好ましい。
尚、上記(2)のフラーレン類を抽出した後の残滓は、フラーレン類を含む煤から、ベンゼン等の有機溶媒でフラーレン類を溶解し除去することにより得られるものである。
【0027】
本発明のゴム組成物においては、ロス特性と強度特性等を両立させて改善する為に、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の上記フラーレン類を配合して使用する。該配合量は0.3〜8質量部が好ましく、特に0.5〜5質量部が最も好ましい。該フラーレン類の配合量が、0.1質量部に満たない場合は、フラーレン類の添加による上記特性の改善効果が不十分であり、また該配合量が10質量部を越えて配合しても、上記の改善効果としては飽和してしまい、返って強度が低下することもあるので、過剰の添加は好ましくない。
【0028】
(ゴム組成物)
本発明に用いるゴム成分としては特に限定はなく、従来より公知のゴム配合に使用される天然ゴム及び各種合成ゴムを用いることができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総てを用いることができる。
上記合成ゴムとしても、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR);エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物等が挙げられる。
また、これらのゴム成分は、適宜に窒素、スズ、珪素等のヘテロ原子を含むことができる。
【0029】
本発明のゴム組成物には、前述のフラーレン類に加えて、補強材ないし充填材としてカーボンブラックを配合することが好ましい。ゴム成分100質量部に対して、20〜70質量部のカーボンブラックを配合することにより、破壊強度や耐摩耗性及び弾性率等を更に向上できる。尚、該カーボンブラックの配合量は、上記効果を高める為に、30〜60質量部の範囲がより好ましく、特に40〜60質量部のカーボンを配合することが最も好ましい。該配合量が20質量部に満たないと、向上効果が不十分であることがあり、一方、70質量部を越えて配合すると、ヒステリシスロス或いは損失係数の悪化を招くことがある。
【0030】
配合するカーボンブラックとしては特に制限はなく、具体的には例えば、N110(SAF)、N115、N120、N121、N125、N134、N135、S212、N220(ISAF−HM)、N231(ISAF−LM)、N234、N293、N299、S315、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)、N351、N356、N358、N375、N539、N550(FEF)、N582、N630、N642、N650、N660(GPF)、N683(APF)、N754、N762(SRF−LM)、N765、N772、N774(SRF−HM)、N787、N907、N908、N990(MT)、N991(MT)カーボン等を用いることができる。ここで、括弧内の記号は、従来からのカーボンブラックの慣用分類名を示す。
【0031】
上記のカーボンブラックの中でも、前述のフラーレン類と併用して、ロス特性と破壊強度を両立させて向上させる観点より、N110(SAF)、N220(ISAF−HM)、N231(ISAF−LM)、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N347(HAF−HS)、N550(FEF)、N660(GPF)カーボンが好ましく、特にN330(HAF)とN347(HAF−HS)カーボンが好ましい。
上記のカーボンブラックは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
また本発明のゴム組成物には、補強材ないし充填材としてシリカを配合することもできる。該シリカとしては特に制限はなく、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性及び低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
シリカを充填材として用いた場合、補強性を更に向上させるために、配合時にシランカップリング剤を用いることが好ましく、そのシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド等が挙げられる。
また、更にカーボンナノファイバー(中実品、中空品など)やアルミナ類、炭酸カルシウム、クレー等の無機充填剤を用いることもできる。
【0033】
これらの実施の形態においては、(1)フラーレン類とカーボンブラック及び/又はシリカの全配合量は、ゴム成分100質量部に対して10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、特に30〜60質量部が好ましい。また、(2)フラーレン類のカーボンブラック及び/又はシリカに対する割合は0.3〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、特に1〜30質量%が好ましい。
【0034】
更に、本発明のゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、を添加してもよい。
上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、その配合量はゴム成分100重量部に対して硫黄分として0.1重量部から10重量部が好ましく、更に好ましくは1重量部から5重量部である。
上記加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくはM(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPG(ジフェニルグアジニン)等のグアジニン系の加硫促進剤が挙げられ、その使用量は、主に必要とされるゴムの加硫速度で決定される。一般的にゴム成分100重量部に対して0.1重量部から7重量部が好ましく、更に好ましくは1重量部から5重量部である。
【0035】
上記プロセス油としては、例えば、パラフィン系,ナフテン系,芳香族系等が挙げられ、引張強度,耐摩耗性の向上を重視する用途には芳香族系が、ヒステリシスロス、低温特性の向上を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100重量部に対して0重量部から100重量部が好ましく、100重量部を越えると加硫ゴムの引張強度、低発熱性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物には、これら以外にもゴム工業で通常使用されている老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤等の添加剤を適宜に配合することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機やバンバリーミキサーなどの密閉式混練機等の混練り機械を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材、免振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業用品等の用途に用いることができるが、特にタイヤのトレッド、アンダートレッド、サイドウォール用ゴムとして好適に使用される。
また、上記ゴム組成物を用いた本発明の空気入りタイヤにおいては、破壊強度、ウェットスキッド抵抗性、ドライスキッド性(ドライグリップ性)、耐摩耗性、及び低燃費性等において優れた性能を得ることができる。このタイヤに充填する気体としては、空気、又は窒素などの不活性ガスが挙げられる。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明のゴム組成物の実施例について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、本実施例中の「部数」及び「%」は全て、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0038】
[実施例1〜6及び比較例1]
下記の表1の上段に示す配合処方に基づき、通常の手順に従って、500mLのラボプラストミルを用いて混練りして、実施例1〜6及び比較例1の各ゴム組成物のシート物を作製した。次いで、温度150℃で、加硫反応によるトルクの上昇が全体の90%に達するまでの時間(t90)の1.5倍にあたる加硫時間で加硫して、下記の物性測定用の供試サンプルを得た。
【0039】
ここで、本実施例に用いたフラーレン類は下記の通りである。
・フラーレン(煤)………本荘ケミカル(株)製のアーク放電法により製造されたカーボンクラスターで、炭素組成は約98質量%、煤中のフラーレン類は約7質量%である。
・フラーレン(炭素)………本荘ケミカル(株)製のアーク放電法により製造されたフラーレン炭素混合物で、該フラーレン中、C60は約80質量%でC70は約18質量%である。
【0040】
更に、表1の配合成分の仕様(スペック)は下記の通りである。
・SBR1500………JSR(株)製のスチレン−ブタジエン共重合体。
・カーボンブラック(HAF)………旭カーボン(株)製の「旭#70」。
・プロセスオイル………スピンドル油。
・「ノクラック6C」………N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製の老化防止剤。
・「ノクセラーNS」………N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製の加硫促進剤。
【0041】
上記の各加硫ゴム試料につき、以下の様に評価試験を実施して、その結果を下記の表1の下段に示した。
(1)引張試験
室温25℃において、JIS K6301−1995(3号試験片サンプル)に準拠して引張試験を行い、300%伸長時のモデュラスM300(MPa)及び破壊強度Tb(MPa)と破断伸び(%)Ebを測定した。
【0042】
(2)動的粘弾性試験
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定試験機「ARES」を使用して、温度50℃、測定周波数15Hz、及び動的歪1%における貯蔵弾性率G′(MPa)及び損失正接(tanδ)を測定した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記の表1の結果より、フラーレン類を本発明の範囲に従って配合した実施例1〜6の貯蔵弾性率(G′)は、比較例1に比べて概ね同等或いはそれ以上に高く、損失正接(tanδ)はかなり小さいことが判明した。また、300%モデュラス(M300)も同等もしくは高く、破壊強度(Tb)は概ね同等或いはそれ以上に高かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明に依れば、新規な補強材としてフラーレン類を配合したゴム組成物が得られ、(1)低比重である、(2)高モジュラスである、(3)ヒステリシスロスが小さい、(4)損失係数(tanδ)が小さい、等の優位性のある物性が得られた。更に、このゴム組成物を部材に適用することにより、低発熱性で転動抵抗に優れたタイヤを提供することができる。
Claims (6)
- ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、アーク放電法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
- ゴム成分100質量部と0.1〜10質量部のフラーレン類とを配合してなるゴム組成物において、該フラーレン類が、CVD(化学蒸着)法により製造されたものであり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゴム組成物。
- 更に、20〜70質量部のカーボンブラックを配合してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- 前記フラーレン類が、(1)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、及び/又は(2)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量部と、アーク放電法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
- ゴム成分100質量部と、CVD(化学蒸着)法により製造されたフラーレン類であり、且つ(1)C2n(該nは30以上の整数)で表される閉じた籠構造を有するフラーレン、(2)その製造過程で発生するフラーレン類を含む煤、(3)該煤からフラーレン類を抽出した残滓、から選ばれる少なくとも1種のフラーレン類の0.1〜10質量部とを、含有するゴム組成物をゴム部材として用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
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JP2007224085A (ja) * | 2006-02-21 | 2007-09-06 | Tokai Rubber Ind Ltd | 架橋用ゴム組成物 |
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CN102936360A (zh) * | 2012-11-20 | 2013-02-20 | 北京汽车股份有限公司 | 富勒烯或其衍生物改性的橡胶组合物及轮胎胎面 |
JP2017014318A (ja) * | 2015-06-26 | 2017-01-19 | 昭和電工株式会社 | エラストマー組成物の製造方法、エラストマー組成物、マスターバッチ及びエラストマー混合物 |
-
2003
- 2003-07-04 JP JP2003191682A patent/JP2005023240A/ja active Pending
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