JP2005022568A - 防音車輪及びこれに用いる防音リング - Google Patents

防音車輪及びこれに用いる防音リング Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題
(目的)は、防音リングの締結作業に起因する悪影響を回避可能な防音車輪、防音リング及び防音リングの締結方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る防音車輪は、車輪本体に形成された溝内に防音リングを配置してなる防音車輪において、前記防音リングが、所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有する。また、前記切れ目を覆うように配置されるチューブ状の連結部材を備える。そして、前記連結部材に対してかしめ処理を施すことによって、当該防音リングを前記車輪本体に対して固定する構造を採る。
【選択図】 図7

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鉄道車両用の防音車輪の構造に関する。特に、防音リングを用いた防音車輪における当該防音リングの締結構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両においては、曲線通過時の騒音を低減するための種々の工夫がなされている。例えば、鉄道車輪のリム内径に外周に沿った溝を形成し、その溝の中に金属製の防音リングを嵌め込んだ防音車輪が提案されている。従来の防音車輪においては、防音リングの外周の一部に隙間(切れ目)が形成されている。そして、車輪のリム内径溝に当該防音リングを嵌め込んだ後、防音効果を確保しつつリング脱落を防止するために、当該隙間において対向する端部同士を溶接で接合していた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−142005
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶接によって防音リングの端部同士を接合すると、溶接作業者の技量により、車輪リム内径に熱的な影響を与える可能性がある。また、一方で、車輪が寿命に至ったときに、防音リングを再利用する要求も高まっている。そのためには、リング接合部を従来溶接品よりも容易に取り外し可能とすることが要求される。
【0005】
従って、本発明の目的は、防音リングの締結作業に起因するリム内径への熱的な影響を回避可能とし、リサイクルが容易で、且つ、安定した防音効果の得られる防音車輪、防音リング及び防音リングの締結方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る防音車輪は、車輪本体に形成された溝内の少なくとも一部に防音リングを配置してなる防音車輪であって、前記防音リングは、所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有し、前記切れ目を覆うように配置されるチューブ状の連結部材を備える。そして、前記連結部材に対してかしめ処理を施すことによって、当該防音リングを前記車輪本体に対して固定する構造を採る。
【0007】
本発明の第2の態様に係る防音リングは、車輪本体に形成された溝内の少なくとも一部に配置される防音リングであって、所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有し、チューブ状の連結部材を前記切れ目を覆うように配置し、当該箇所をかしめることによって、前記車輪本体に対して固定する構造を採用する。
【0008】
本発明の第3の態様に係る防音リングの締結方法は、以下のような構造の防音車輪に適用される。すなわち、車輪本体の少なくとも表側又は裏側の何れかのリム内径に形成された溝内の少なくとも一部に防音リングを配置してなる防音車輪であって、好ましくは、前記防音リングは、所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有し、前記切れ目を覆うように配置されるチューブ状の連結部材と、前記切れ目に差し込まれるスペーサとを備え、前記連結部材に対してかしめ処理を施すことによって、当該防音リングを前記車輪本体に対して固定する構造であり、前記防音リングの前記第1の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成され、前記防音リングの前記第2の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成され、少なくとも前記第1の端部のスライド領域の長さは、前記連結部材の長さよりも長く、
前記第1及び第2の端部のスライド領域には、前記かしめ処理がなされる平坦部が形成され、前記第1及び第2の端部のスライド領域の先端側には、テーパ部が各々形成されている。
【0009】
そして、本発明に係る方法によれば、前記連結部材を防音リングの切れ目から前記第1の端部のスライド領域側に貫挿セットし;前記連結部材を備えた前記防音リングを前記車輪本体の溝内に嵌め込み;前記防音リングの前記切れ目に所定厚さのスペーサを差し込んで当該防音リングのテンションを調整し;前記防音リングの前記第1及び第2の端部の平坦部に前記連結部材が跨るように当該部材をスライドさせ;前記連結部材の上からかしめ処理を行うことにより、前記防音リングを前記車輪本体に対して固定する。
【0010】
上述のように、本発明においては、防音リングの端部を溶接ではなく「かしめ」によって固定しているため、溶接作業に伴う種々の不都合を回避することができる。すなわち、防音リングの締結作業の効率化を図ることができると同時に、溶接作業を避けることができるため、リムに熱的な影響を及ぼさず、且つ、安定した防音効果を得ることができる。加えて、防音リングのリングテンション(隙間)の調整が防音効果を上げるために必要だが、本発明においては、それが容易にできる。更に、リング自体のリサイクルも容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施例に係る防音車輪10の構成を示す部分斜視図(一部断面)である。防音車輪10の少なくとも表側又は裏側の何れかのリム11内径には、外周に沿った溝12が形成され、その溝12の中に主に金属製の防音リング14が嵌め込まれている。防音リング14の材質としては、ステンレス材によるもの、又は、ステンレス材の周りにブチルゴム等のゴムを巻いたもの等を使用することができる。
【0012】
防音リング14は、図2に示すように、一部に切れ目(隙間)16が形成された断面円形の環状に成形されている。図3は、図2に示す防音リング14の切れ目16周辺の構造を示す。また、図4は、図3のA−A方向から見た様子を示す。防音リング14は、大まかには断面直径D1の本体部18と、切れ目16に対向する端部とから構成される。端部には、本体部18よりも細い断面直径D2のスライド領域20,22が形成されている。スライド領域20,22の更に内側(端部側)には、平坦部24,26が形成されている。ここで、少なくともスライド領域20又は22の何れか一方は、チューブ34の長さL4より長くする。
【0013】
ここで、防音リング14の各部のサイズは、適用する鉄道車輪の大きさに応じて適宜設計変更されるが、例えば、以下のように設定することができる。
本体部18の直径D1:12.7mm
スライド領域20,22の直径D2:10.0mm
切れ目16の間隔d1:2.0mm
スライド領域20の長さL1:25.0mm
スライド領域22の長さL2:15.0mm
【0014】
図5は、本実施例に使用されるかしめ用チューブ(連結部材)34の構造を示す。このかしめ用チューブ34は、図6に示すように、防音リング14のスライド領域20,22が貫挿された状態でリング周方向にスライド可能な構成となっている。そのため、かしめ用チューブ34の内径D4は、スライド領域20,22の外径D2よりも若干大きく、例えば、10.7mmに設定される。また、外径D3は、防音リング14の本体部18の直径D1と同一とすることが好ましく、従って本実施例においては、D3は12.7mmに設定される。また、チューブ34の長さL4は、スライド領域20の長さL1より短く、特に両側の平坦部とテーパ部(L3×2)とスペーサ38の厚みを足し合わせたものよりも少し短くしたものが好ましく、例えば、21.0mmに設定する。こうすると、チューブ34の両端が平坦部とスライド領域の円柱部との境界に当たってチューブ34のスライド防止効果が得られる。
【0015】
平坦部24,26の内側(端部側)には、テーパ28,30が形成されており、後述するスペーサ38の切れ目16への挿入を容易にしている。なお、平坦部24,26の本体部18側端部から切れ目16の端部までの長さL3は、例えば、10.0mmとする。
【0016】
次に、図7(A)〜図7(C)及び、図8(A)、(B)を参照して、実施例に係る防音リングの締結手順を説明する。防音リング14を車輪リム11の溝12に嵌め込む前に、(A)図の状態から(B)図に示すように、切れ目16からかしめ用チューブ34をスライド領域20側に差し込む。この状態で、防音リング14をリム11の溝12に嵌め込む。その後、スペーサ38を切れ目16に差し込み、車輪をハンマリングしながら、音がよく減衰する最適なテンション(隙間)になるように防音リング14を調整する。なお、スペーサ38の直径は、かしめ用チューブ34の内径D4よりも小さくし、図4に示すようなリグ断面で見たときに、平坦部とスライド領域とに内接する円よりも大きくする。こうすると、チューブ34のスライド防止となる他、スペーサ自身の脱落防止や、動いて位置ズレを起こすことが無くなる。(E図参照)
【0017】
次に、図8(A)図に示すように、かしめ用チューブ34を切れ目16が中心にくる用にスライドさせる。その後、図8(B)図に示すように、平坦部24,26に対応する位置に置いて、かしめ用工具を用いてチューブ34をかしめる((E)図)。これによって、防音リング14が鉄道車輪に対して固定(締結)され、防音効果を確保しつつリング脱落の防止を図ることが可能となる。
【0018】
図9は、本発明の他の実施例に係る防音車輪の構成を示す部分斜視図(一部断面)である。また、図10は、図9の要部(かしめ位置近傍)を示す正面図である。更に、図11は、図10を横方向から見た図であり、かしめ作業状態を示す。なお、図9〜図11において、先に説明した実施例と同一又は対応箇所には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
本実施例の特徴は、防音リング44の形状にある。すなわち、本実施例の防音リング44は、連結部分が溝12から浮いた状態になるように成形されている。これにより、はさみタイプのかしめ工具46を使用することが可能となる。かしめ工程においては、防音リング44(チューブ34)とリム11との間に、かしめ工具46の一端を挿入し、上下方向から挟み込むようにかしめ作業を行う。
【0020】
以上のように、本実施例においては、先に示した実施例の効果に加え、かしめ作業を容易に行うことができるという利点がある。
【0021】
本発明によれば、防音リング14の端部を溶接ではなく「かしめ」工程によって固定しているため、溶接作業に伴う種々の不都合を回避することができ、リムに熱的な影響を及ぼすことが無くなる。また、防音リングのリングテンション(隙間)の調整が容易になるなど、防音リングの締結作業の効率化を図ることができる。更に、防音効果を確認しながら締結作業するので、曲線通過時に発生するかん高い高周波のきしり音を安定的、効果的に低減することができる。加えて、リング自体は使用可能な状態で取り外しでき、リサイクルが可能となる。
【0022】
以上、本発明の実施例(実施形態、実施態様)について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る防音車輪の構成を示す部分斜視図(一部断面)である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る防音リングの構成を示す平面図である。
【図3】図3は、図2に示す防音リングの要部の構造を示す正面図である。
【図4】図4は、図3のA−A方向から見た側面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に使用されるかしめ用チューブの構造を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例に係る防音リングの使用状態を示す説明図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、本発明の実施例に係る防音リングの締結手順を示す説明図(正面図)である。
【図8】図8(A)、図8(B)は、本発明の実施例に係る防音リングの締結手順を示す説明図(正面図)である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例に係る防音車輪の構成を示す部分斜視図(一部断面)である。
【図10】図10は、図9の要部(かしめ位置近傍)を示す正面図である。
【図11】図11は、図10を横方向から見た図であり、かしめ作業状態を示す。
【符号の説明】
10 防音車輪
12 溝
14 防音リング
16 切れ目(隙間)
18 本体部(大径部)
20,22 スライド領域(小径部)
24,26 平坦部
28,30 テーパ部
34 かしめ用チューブ(連結部材)
38 スペーサ

Claims (13)

  1. 車輪本体に形成された溝内の少なくとも一部に防音リングを配置してなる防音車輪であって、
    前記防音リングは、所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有し、
    前記切れ目を覆うように配置されるチューブ状の連結部材を備え、
    前記連結部材に対してかしめ処理を施すことによって、当該防音リングを前記車輪本体に対して固定することを特徴とする防音車輪。
  2. 前記防音リングの前記第1の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成され、
    前記防音リングの前記第2の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音車輪。
  3. 少なくとも前記第1又は第2の何れかの端部のスライド領域の長さは、前記連結部材の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の防音車輪。
  4. 前記第1及び第2の端部のスライド領域には、前記かしめ処理がなされる平坦部が形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の防音車輪。
  5. 前記切れ目に差し込まれるスペーサを更に備え、
    前記第1及び第2の端部のスライド領域の先端側には、テーパ部が各々形成されていることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の防音車輪。
  6. 車輪本体の少なくとも表側又は裏側の何れかのリム内径に形成された溝内の少なくとも一部に防音リングを配置してなる請求項1,2,3,4又は5に記載の防音車輪。
  7. 車輪防音リングの前記かしめ処理されたリング締結部が前記溝内から浮かせて設置されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の防音車輪。
  8. 車輪本体に形成された溝内の少なくとも一部に配置される防音リングであって、
    所定幅の切れ目を形成する互いに対向する第1及び第2の端部を有し、
    チューブ状の連結部材を前記切れ目を覆うように配置し、当該箇所をかしめることによって、前記車輪本体に対して固定することを特徴とする防音リング。
  9. 前記第1の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成され、
    前記第2の端部には、当該リングの他の部分より断面径が小さく、前記連結部材がスライド可能なスライド領域が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の防音リング。
  10. 少なくとも前記第1又は第2の何れかの端部のスライド領域の長さは、前記連結部材の長さよりも長いことを特徴とする請求項9に記載の防音リング。
  11. 前記第1及び第2の端部のスライド領域には、前記かしめ処理がなされる平坦部が形成されていることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の防音リング。
  12. 前記第1及び第2の端部のスライド領域の先端側には、テーパ部が各々形成されていることを特徴とする請求項8,9,10又は11に記載の防音リング。
  13. 前記請求項6に記載の防音車輪における前記防音リングの締結方法において、
    前記連結部材を前記防音リングの前記切れ目から前記第1の端部のスライド領域側に貫挿セットし;
    前記連結部材を備えた前記防音リングを前記車輪本体の溝内に嵌め込み;
    前記防音リングの前記切れ目に所定厚さのスペーサを差し込んで当該防音リングのテンションを調整し;
    前記防音リングの前記第1及び第2の端部の平坦部に前記連結部材が跨るように当該部材をスライドさせ;
    前記連結部材の上からかしめ処理を行うことにより、前記防音リングを前記車輪本体に対して固定することを特徴とする締結方法。
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