JP3938093B2 - 渦巻形ガスケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦巻形ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、気体や液体などの流体の流路を構成する配管等には、流体の漏洩を防止すべく、渦巻形ガスケットが配設されている。この渦巻形ガスケットとしては、例えば、図14(a)及び(b)に示すように、帯状の金属製薄板からなるフープ材1と、帯状のフィラー製薄板からなるフィラー材2とを重ね合わせ、渦巻状に巻回されてなるガスケット本体3と、このガスケット本体3の内周側及び外周側に、補強リング部材としての内輪4及び外輪5とを備えたものがある。この渦巻形ガスケットは、ガスケット本体2と内輪4及び外輪5とを分離しないよう一体化させるべく、ガスケット本体3の内周面のV字溝3aと内輪4の外周面の突条4aとを係合させ、またガスケット本体3の外周面の膨出部3bと外輪5の内周面のV字溝5aとを係合させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の渦巻形ガスケットは、例えば、つぎのようにして製造されている。すなわち、まず、内輪4の外周部にフープ材1の一端をスポット溶接等で接合した後、フープ材1のみを数回巻回する。ついで、フィラー材2を挟んで、互いに重ね合わせて所定回数巻回する。その後、フープ材1のみを数回巻回し、スポット溶接等で固着して、内輪4の外周側にガスケット本体3を形成する。そして、熟練した者により、ガスケット本体3の外周に外輪5を木槌等で叩きながら無理やり嵌め込んだ後、ガスケット本体3の巻きを若干緩めてガスケット本体3を拡径する。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−117782号公報(第2頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の渦巻形ガスケットは、使用現場において内輪4及び外輪5とガスケット本体3とを組み立てるのが難しいという問題がある。すなわち、上述のとおり、内輪4はガスケット本体3の巻き上げ加工に用いられ、また外輪5は製造現場でも機械化・自動化が難しいために熟練した者によりガスケット本体3を木槌等で叩きながら無理嵌めして巻きを緩めることを必要としていることから、ユーザーがガスケット本体3に内輪4及び外輪5を取り付けるのが難しい。このため、ガスケット本体3が寿命に至ると、配管等から取り外した渦巻形ガスケットをそのまま廃棄処分するか、あるいは材料的に高級なものを用いている渦巻形ガスケットについては、製造元が回収して内輪4及び外輪5を取り外したのちガスケット本体3のみを交換して内輪4及び外輪5を再利用しているのが現状である。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、補強リング部材とガスケット本体との組み立てが容易で、補強リング部材を有効に再利用することができる渦巻形ガスケットの提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の渦巻形ガスケットは、環状のガスケット本体と、このガスケット本体の内周及び外周のうちの少なくとも一方に配置される補強リング部材とを備えた渦巻形ガスケットであって、前記補強リング部材が、ガスケット本体に着脱容易に内装又は外装されており、かつ、前記補強リング部材が、ガスケット本体の近傍にて、周方向に沿って所定間隔毎に設けられた複数の切り欠き部と、それぞれの切り欠き部に隣接し前記ガスケット本体と接合可能な爪部と、を有し、前記複数の切り欠き部のうちの一部の切り欠き部に隣接する爪部が、前記切り欠き部を広げることでガスケット本体側に押し出されて前記ガスケット本体と係合していることを特徴としている。
上記の構成によれば、補強リング部材に複数の切り欠き部及び爪部を形成しているので、切り欠き部の空間を利用して爪部をガスケット本体側に向けて移動させるだけで、ガスケット本体に補強リング部材を取り付けることができる。このため、ガスケット本体と補強リング部材との組み立てが容易となる。また、組み立てが容易であるため、ユーザーであっても使用済みのガスケット本体を交換することができ、補強リング部材を有効に再利用することができる。
ここで、「着脱容易」とは、爪部を移動させなければガスケット本体と補強リング部材とが一体化せずに分離してしまう程度をいう。
【0008】
上記の渦巻形ガスケットにおいて、前記ガスケット本体の一方の周面にV字溝が形成され、他方の周面に膨出部が形成されており、かつ、前記ガスケット本体の一方の周面側に配置される補強リング部材の少なくとも爪部の前記ガスケット本体と対向する面に前記V字溝と係合する突条が形成され、前記ガスケット本体の他方の周面側に配置される補強リング部材の少なくとも爪部の前記ガスケット本体と対向する面に前記膨出部と係合するV字溝が形成されているのが好ましい。この場合、爪部の形状とガスケット本体の形状とが適合するため、一層、組み立てが容易で脱輪し難い渦巻形ガスケットになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の渦巻形ガスケットの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る渦巻形ガスケット11の構成を示す平面図であり、図2は図1のX−X断面図であり、図3は図1のY−Y断面図である。本形態の渦巻形ガスケット11は、主に中低圧用として用いられるものであり、ガスケット本体12と、このガスケット本体12の外周側に配置された補強リング部材としての外輪13と、ガスケット本体12の内周側に配置された補強リング部材としての内輪14とを備えている。
【0010】
ガスケット本体12は、帯状の金属(ステンレス鋼等)製薄板からなるフープ材15と、そのフープ材15と同一幅の軟質材(膨張黒鉛等)からなる帯状のフィラー材16とを備えたものである。そして、これらを重ね合わせ、渦巻状に巻装して構成されている。詳細には、ガスケット本体12の外周側及び内周側において、図2に示すように、フィラー材16を介装せずにフープ材15のみが巻かれた2〜5巻き程度の空巻き部分15a,15bがそれぞれ設けられている。また、ガスケット本体12の中央領域において、フープ材15とフィラー材16とが交互に重ね合わされている。さらに、ガスケット本体12の内周面には、その周方向に沿って径方向外方に凹設したV字溝12aが形成されており、またガスケット本体12の外周面には、その周方向に沿って径方向外方に膨出した山形の膨出部12bが形成されている。そして、外周側の空巻き部分15a及び内周側の空巻き部分15bの各端部を隣り合う層の部分でスポット溶接等により固着することで、全体として1個の環状のガスケット本体12を構成している。
【0011】
外輪13は、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板などの金属材を用いて形成されたものであり、その厚みをガスケット本体12よりも薄くしている。また、外輪13の最小内径は、ガスケット本体12の最大外径に略等しくなるよう設定されている。さらに、外輪13の内周面には、ガスケット本体12の膨出部に適合するようV字溝13aが周方向に沿って延設されている。
【0012】
そして、外輪13の内周縁部側(ガスケット本体側近傍)には、例えば周方向等配に8個のT字状の切り欠き部21a、21b(図1参照)が形成され、この切り欠き部21a、21bと外輪12の内周面との間には爪部22が2個づつそれぞれに形成されている。そして、切り欠き部21aに隣接する爪部22のガスケット本体12に対向する面に形成されたV字溝13aに、ガスケット本体12の膨出部12bが係合することで、外輪13とガスケット本体12とが一体化されている。なお、図1中、切り欠き部21a、21bは、周方向に1つおきに異なる符号を付している。
【0013】
このような外輪13は、常法により外輪を形成した後、レーザ加工等を施して所定寸法の切り欠き部21a、21bを形成することにより製造することができる。なお、切り欠き部21a、21bの寸法は、適宜に設定されるのは勿論である。例えば、品番♯2603−EEEで呼び径600LB−6Bの渦巻形ガスケットの場合、T字状の切り欠き部21a、21bの寸法は、径方向に延設された部分の長さが2.2mmで幅が0.3mm、径方向に直交する部分の長さが15mmで幅が0.8mmに設定される。
【0014】
一方、内輪14は、外輪13と同様、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板などの金属材を用いて形成されたものであり、その厚みをガスケット本体12よりも薄くしている。また、内輪14の最大外径は、ガスケット本体12の最小内径に略等しくなるよう設定されている。さらに、内輪14の外周全体にわたり面取り加工が施され、これにより内輪14の外周面に突条14aが周方向に沿って延設されている。なお、面取り加工は、内輪14の外周全体に行わなくてもよく、少なくとも爪部24に行われていればよい。
【0015】
そして、内輪14の外周縁部側(ガスケット本体側近傍)には、例えば周方向等配に8個のL字状の切り欠き部23a、23b(図1参照)が形成され、この切り欠き部23a、23bと内輪14の外周面との間には爪部24が形成されている。そして、切り欠き部23aに隣接する爪部24のガスケット本体12に対向する面に形成された突条14aが、ガスケット本体12の内周面に形成されたV字溝12に係合することで、内輪14とガスケット本体12とが一体化されている。なお、図1中、切り欠き部23a、23bは、周方向に1つおきに異なる符号を付している。
なお、内輪14の切り欠き部23a、23bと外輪13の切り欠き部21a、21bは、径方向の同一線上に並ばないよう位相をずらして配置するのがよい。また、切り欠き部21a、21b、23a、23b及び爪部22,24の数は、渦巻形ガスケットの寸法等に応じて適宜に設定される。
【0016】
このような内輪14は、常法により内輪を形成した後、レーザ加工等を施して所定寸法の切り欠き部23a、23bを形成することにより製造することができる。なお、切り欠き部23a、23bの寸法は、適宜に設定されるのは勿論である。例えば、品番♯2603−EEEで呼び径600LB−6Bの渦巻形ガスケットの場合、L字状の切り欠き部21a、21bの寸法は、径方向に延設された部分の長さが2.2mmで幅が0.3mm、径方向に直交する部分の長さが8mmで幅が0.8mmに設定される。
【0017】
上記のように構成された本形態に係る渦巻形ガスケット11は、外輪13の切り欠き部21a、21b及び爪部22によってガスケット本体12と外輪13とを容易に組み立てることができ、また内輪14の切り欠き部23a、23b及び爪部24によってガスケット本体12と内輪14とを容易に組み立てることができる。このため、ユーザーであっても寿命が尽きたガスケット本体12を新品のものに簡単に交換でき、その結果、外輪13及び内輪14を有効に再利用することができる。また、ユーザー側において外輪13及び内輪14の着脱を簡単に行えるため、使用済みの渦巻形ガスケットを製造元に搬送する手間が不要となり、さらにガスケット本体のみを購入すればよいので、経済的であるという利点を有する。
【0018】
ここで、外輪13とガスケット本体12との具体的な組み立て方法は、図4に示すように、外輪13に形成された切り欠き部のうちの一部の切り欠き部21aに隣接する爪部22をガスケット本体12側に押し出す(切り欠き部21aを広げる)ことにより、爪部22のV字溝13a(図2参照)にガスケット本体12の膨出部12b(図2参照)を係合させて接合する。なお、外輪13の切り欠き部21bに隣接する爪部22は押し出さない。
一方、外輪13を取り外す場合には、通常、ガスケット本体12の表裏面を締め付けて使用するので、使用後の渦巻形ガスケットでは爪部22が押し出す前の位置に戻っているかあるいは切り欠き部21a内にまで移動している。このため、使用済みのガスケット本体12を押圧したり潰したりすれば容易に外輪13を取り外すことができる。ところが、使用後の渦巻形ガスケットであっても爪部22が内方に押し出された状態である場合には、図5に示すように、爪部22を切り欠き部21aの空間内に移動させてもよい。なお、取り外す際に爪部22が起きあがった状態になっている場合には、ドライバーの柄等で叩いて元の状態に戻すことにより、外輪13を再利用することができる。そして、切り欠き部21aに隣接する爪部22を何回か変形させて強度が弱くなると、切り欠き部21bに隣接する爪部22を用いる。これにより、外輪13を繰り返し用いることができる。
【0019】
上記の実施形態では、一回の組み立てで複数の爪部の半数を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、接合強度、再使用の回数等に応じて適宜の数の爪部を用いることができる。また、1個の切り欠き部にある2個の爪部を同時に使用する態様に限らず、一方の爪部のみを用いる態様であってもよい。
【0020】
本発明の渦巻形ガスケットは、上記した実施形態に限定されるものではない。外輪13の切り欠き部21及び爪部22としては、例えば、図6〜図10に示すものであってもよい。すなわち、図6に示すように、L字状の切り欠き部21及びその切り欠き部21と外輪13の内周面との間に形成される爪部22であってもよい。また、図7に示すように、径方向に対し所定角度で傾斜した直線状の切り欠き部21及びその切り欠き部21と外輪13の内周面との間に形成される爪部22であってもよく、さらに図8に示すように、径方向に対し所定角度で対称に傾斜した直線状の2個の切り欠き部21及びそれぞれの切り欠き部21と外輪13の内周面との間に形成される2個の爪部22であってもよい。また、図9に示すように、外輪13の内周面まで繋がっていない直線状の切り欠き部21及びその切り欠き部21と外輪13の内周面との間に形成される爪部22であってもよく、図10に示すように、外輪13の内周面まで繋がっていない直線状の切り欠きの略中央に円弧状に外輪13の外方に向かって膨出した部分を有する切り欠き部21及びその切り欠き部21と外輪13の内周面との間に形成される爪部22であってもよい。
【0021】
また、内輪14の切り欠き部23及び爪部24としては、例えば、図11〜図13に示すものであってもよい。すなわち、図11に示すように、T字状の切り欠き部23及びその切り欠き部23と内輪14の外周面との間に形成される2つの爪部24であってもよい。また、図12に示すように、径方向に対し所定角度で傾斜した直線状の切り欠き部23及びその切り欠き部23と内輪14の外周面との間に形成される爪部24であってもよく、図13に示すように、内輪14の外周面まで繋がっていない直線状の切り欠き部23及びその切り欠き部23と内輪14の外周面との間に形成される爪部24であってもよい。
【0022】
本発明の渦巻形ガスケットは、外輪及び内輪の両方を用いる態様に限定されるものではなく、外輪及び内輪のうちのいずれか一方のみを用いる態様であっても同様に適用することができる。また、本発明は、補強リング部材の周面やガスケット本体の周面が凹凸になったものに限らず、爪部の押し出し量等を調節すれば、両周面が平面のものでも適用可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明の渦巻形ガスケットによれば、補強リング部材に切り欠き部及び爪部が形成されているので、切り欠き部の空間を利用して爪部をガスケット本体側に向けて移動させるだけで、補強リング部材とガスケット本体とを容易に組み立てることができる。また、組み立てが容易であるため、ユーザーであっても使用済みのガスケット本体を交換することができ、補強リング部材を有効に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の渦巻形ガスケットの一実施形態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】外輪とガスケット本体とを組み立てる方法の一例を説明するための部分的な拡大平面図である。
【図5】外輪とガスケット本体とを取り外す方法の一例を説明するための部分的な拡大平面図である。
【図6】外輪の切り欠き部及び爪部の他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図7】外輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図8】外輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図9】外輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図10】外輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図11】内輪の切り欠き部及び爪部の他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図12】内輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図13】内輪の切り欠き部及び爪部のさらに他の例を模式的に示す部分的な拡大平面図である。
【図14】(a)は従来の渦巻形ガスケットを説明するための平面図であり、(b)は(a)のP−P断面図である。
【符号の説明】
11 渦巻形ガスケット
12 ガスケット本体
12a ガスケット本体のV字溝
12b ガスケット本体の膨出部
13 外輪(補強リング部材)
13a 外輪のV字溝
14 内輪(補強リング部材)
14a 内輪の突条
21a、21b 外輪の切り欠き部
22 外輪の爪部
23a、23b 内輪の切り欠き部
24 内輪の爪部
Claims (2)
- 環状のガスケット本体と、このガスケット本体の内周及び外周のうちの少なくとも一方に配置される補強リング部材とを備えた渦巻形ガスケットであって、
前記補強リング部材が、ガスケット本体に着脱容易に内装又は外装されており、かつ、前記補強リング部材が、ガスケット本体の近傍にて、周方向に沿って所定間隔毎に設けられた複数の切り欠き部と、それぞれの切り欠き部に隣接し前記ガスケット本体と接合可能な爪部と、を有し、前記複数の切り欠き部のうちの一部の切り欠き部に隣接する爪部が、前記切り欠き部を広げることでガスケット本体側に押し出されて前記ガスケット本体と係合していることを特徴とする渦巻形ガスケット。 - 前記ガスケット本体の一方の周面にV字溝が形成され、他方の周面に膨出部が形成されており、
かつ、前記ガスケット本体の一方の周面側に配置される補強リング部材の少なくとも爪部の前記ガスケット本体と対向する面に前記V字溝と係合する突条が形成され、前記ガスケット本体の他方の周面側に配置される補強リング部材の少なくとも爪部の前記ガスケット本体と対向する面に前記膨出部と係合するV字溝が形成されている請求項1記載の渦巻形ガスケット。
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