JP2005021863A - 窒素化合物含有排水の電解処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくともアンモニア又はヒドラジンを含有する窒素化合物含有排水を電解槽で電解処理して窒素化合物を分解する排水処理方法において、電解処理される排水中の遊離残留塩素濃度を、排水中のアンモニア性窒素濃度の6倍と排水中のヒドラジン性窒素濃度の4倍との合計量以上に調整したのち、電解処理することを特徴とする窒素化合物含有排水の電解処理方法。
【選択図】図1
Description
本発明者らは、窒素化合物を含有する水を電解処理したのち、金属過酸化物触媒と接触させる窒素化合物含有排水の処理方法を提案した(特許文献1)。この方法によれば、酸化剤を使用することなく、窒素化合物含有排水を常温常圧で処理して、水中の窒素化合物を下記の反応式などにより酸化分解して窒素ガスとして除去し、同時に化学的酸素消費量をも低下することができる。
2NH3 + 3OCl- → N2 + 3H2O + 3Cl- …[1]
N2H4 + 2OCl- → N2 + 2H2O + 2Cl- …[2]
2H2NCH2CH2OH + 13OCl-
→ N2 + 4CO2 + 7H2O + 13Cl- …[3]
しかし、窒素化合物含有排水を電解処理すると、難分解性副生物が生成し、臭気成分も発生することから、その改良が望まれていた。
すなわち、本発明は、
(1)少なくともアンモニア又はヒドラジンを含有する窒素化合物含有排水を電解槽で電解処理して窒素化合物を分解する排水処理方法において、電解処理される排水中の遊離残留塩素濃度を、排水中のアンモニア性窒素濃度の6倍と排水中のヒドラジン性窒素濃度の4倍との合計量以上に調整したのち、電解処理することを特徴とする窒素化合物含有排水の電解処理方法、
(2)排水を連続的に電解槽に給水することにより電解処理を行い、電解槽の出口の水の一部を電解処理水として抜き取り、残部を電解槽の入口に返送して循環する第1項記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法、
(3)排水を受水槽に貯留し、電解槽に循環して電解処理を半バッチ方式で行い、電解処理終了後に受水槽より電解処理水の一部を抜き出したのち、排水を受水槽に供給して電解処理を開始する第1項記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法、
(4)受水槽に撹拌機を設けて、水を撹拌混合する第3項記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法、及び、
(5)電解処理後の電解処理水を、金属過酸化物触媒と接触させる第1項記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法、
を提供するものである。
窒素化合物含有排水を塩化物イオン共存下で電解処理すると、JIS K 0102において遊離残留塩素と定義される次亜塩素酸が生成する。次亜塩素酸イオンは、上記の反応式[1]、[2]、[3]などにより表される反応により、窒素化合物を酸化分解して窒素ガスとする。しかし、電解処理の初期に、水中の次亜塩素酸の濃度が低く、次亜塩素酸に対して窒素化合物が過剰に存在する状態では、窒素化合物は完全に窒素ガスまで分解されず、アンモニア、ヒドラジンなどからはクロロアミンが生成し、モノエタノールアミンからは2−オキサゾリドンなどが生成する。クロロアミンは、水相から一部が気相に移行して刺激臭の原因となる。また。2−オキサゾリドンなどは難分解性の物質であり、電解処理後の処理水を金属過酸化物触媒と接触させても完全には分解されず、触媒処理水の化学的酸素消費量を高める原因となる。
排水中のアンモニアが反応式[1]にしたがって次亜塩素酸イオンと反応すると、アンモニア性窒素の7.60重量倍の遊離残留塩素が消費される。排水中のヒドラジンが反応式[2]にしたがって次亜塩素酸イオンと反応すると、ヒドラジン性窒素の5.06重量倍の遊離残留塩素が消費される。排水中に存在する遊離残留塩素の量が、反応式[1]及び[2]より求められる反応当量の75%未満になると、電解処理の初期において、クロロアミン、2−オキサゾリドンなどの臭気成分や難分解性副生物が生成するおそれがある。電解処理後に、遊離残留塩素の共存下で金属過酸化物触媒と接触させても、クロロアミン、2−オキサゾリドンなどは分解しにくく、触媒処理水に残存してCODや残留塩素の上昇の原因となる。
本発明方法において、窒素化合物含有排水中のアンモニア性窒素は、JIS K 0102 42.にしたがって、インドフェノール青吸光光度法、中和滴定法、イオン電極法、イオンクロマトグラフ法などにより測定することができる。ヒドラジン性窒素は、JIS B 8224にしたがって、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド吸光光度法、ヨウ素滴定法などにより測定することができる。遊離残留塩素濃度は、JIS K 0102 33.にしたがって、o−トリジン比色法、ジエチル−p−フェニレンジアンモニウム(DPD)比色法などにより測定することができる。
本発明方法に使用する金属過酸化物触媒としては、例えば、過酸化コバルト、過酸化ニッケル、過酸化銅、過酸化銀などを挙げることができる。これらの中で、過酸化ニッケル触媒及び過酸化コバルト触媒を特に好適に使用することができる。金属過酸化物触媒は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することもできる。過酸化ニッケル触媒は、有機化合物及び窒素化合物の酸化分解の促進に優れた性能を有し、過酸化コバルト触媒は次亜塩素酸イオンの分解に優れた性能を有するので、過酸化ニッケル触媒と接触させることによりエタノールアミンなどの有機化合物と、ヒドラジンなどの窒素化合物を分解除去したのち、過酸化コバルト触媒と接触させることにより、残留する次亜塩素酸イオンを分解除去することが好ましい。
本発明方法において使用する金属過酸化物触媒は、多孔質担体に担持されたものであることが好ましい。金属過酸化物触媒を担持させる多孔質担体としては、例えば、ゼオライト、チタニア、γ−アルミナ、α−アルミナなどを挙げることができる。これらの中で、X型、Y型、A型などの合成ゼオライト、クリノプチロライト型、モルデナイト型などの天然ゼオライト、チタニアなどを好適に使用することができる。これらの多孔質担体は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
図1は、本発明方法の実施の一態様の工程系統図である。原水槽1に貯留された窒素化合物含有排水は、ポンプ2により電解槽3に供給される。電解槽より流出する水は、一部が電解処理水として抜き取られて電解処理水槽4に送られ、残部が受水槽5に貯留される。受水槽又は電解処理水槽に貯留することにより、気液分離が行われ、電解槽と触媒充填塔への気泡の混入を防止することができる。受水槽の水は、ポンプ6により電解槽の入口に送られ、ポンプ2により供給される排水と混合される。受水槽の水には電解により生成した遊離残留塩素が含まれ、アンモニア又はヒドラジンを含有する排水は受水槽より返送される水と混合希釈されるので、電解処理される排水中の遊離残留塩素濃度を所定の値に調整することができる。電解処理水槽4に貯留された電解処理水は、ポンプ7により、過酸化ニッケル触媒充填塔8と過酸化コバルト触媒充填塔9に順次送られて、良好な水質を有する触媒処理水となる。
1回の電解処理が終了したとき、受水槽の電解処理水の全部を抜き出し、新たに窒素化合物含有排水の電解処理を行う完全バッチ方式では、電解処理の初期には、水中に遊離残留塩素に対して過剰の窒素化合物が存在するので、臭気成分や難分解性副生物が生成する。しかし、本態様のように、1回の電解処理が終了したとき、受水槽の電解処理水の一部を残し、窒素化合物含有排水を追加して電解処理を行う半バッチ方式によれば、電解処理の初期から所定濃度の遊離残留塩素を水中に存在させ、臭気成分や難分解性副生物の生成を防ぐことができる。電解処理水槽4に貯留された電解処理水は、ポンプ7により、過酸化ニッケル触媒充填塔8と過酸化コバルト触媒充填塔9に順次送られて、良好な水質を有する触媒処理水となる。
本発明の窒素化合物含有排水の電解処理方法によれば、排水の電解処理に際して、臭気成分と難分解性副生物の生成を抑え、水質の良好な処理水を得ることができる。
なお、実施例及び比較例においては、モノエタノールアミン2,675mg/L、アンモニア454mg/L、ヒドラジン75mg/L、塩化物イオン14,889mgCl-/L、カルシウム4.0mg/L、マグネシウム0.6mg/Lを含有するpH9.53、CODMn1,070mgO/Lの窒素化合物含有排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11.7〜12.0に調整した原水を使用した。
また、電解処理は、それぞれ寸法53mm×450mmのIrO2/Pt/TiO2電極を陽極、SUS316電極を陰極とし、極間距離を3mmとした電解槽4槽を直列に接続して通水し、電流密度12A/dm2で通電することにより行った。電解処理水は、Y型ゼオライトに過酸化ニッケルをニッケルとして2.0重量%担持させた粒状触媒200mLを充填した塔と、Y型ゼオライトに過酸化コバルトをコバルトとして2.0重量%担持させた粒状触媒100mLを充填した塔に、通水温度45℃、通水速度300mL/h(SV=1h-1)で通水した。
処理水の液体クロマトグラフィーは、陽イオン交換樹脂SCR−101Hを充填した直径7.9mm、長さ300mmのカラムと、移動相として0.01モル/L過塩素酸水溶液を用い、カラム温度50℃、流量1.0mL/minの条件で行い、UV検出器を用いて波長210nmで検出した。この条件で、保持時間約17.3分のピークが2−オキサゾリドンに相当する。
図1に示す工程で、循環一過方式により、原水の電解処理を行った。
原水槽1から、ポンプ2により、3.9L/hの速度で原水を電解槽3に供給した。電解槽から流出する水のうち3.9L/hを電解処理水として抜き取って電解処理水槽4に貯留し、残余の流出水は受水槽5に貯留した。受水槽の水は、ポンプ6により78L/hの速度で電解槽の入口に供給した。定常状態に達したとき、電解処理水の水質は、遊離残留塩素濃度6,120mgCl/L、CODMn174mgO/Lであった。また、受水槽で刺激臭は全く感じられなかった。
電解処理水を、ポンプ7により、さらに過酸化ニッケル触媒充填塔8と過酸化コバルト触媒充填塔9に通水し、触媒と接触させた。触媒処理水の水質は、CODMn5mgO/L以下であった。
本実施例においては、原水3.9L/hと遊離残留塩素濃度6,120mgCl/Lの水78L/hが電解槽の入口で混合されて電解槽へ送り込まれるので、電解処理される水のアンモニア性窒素濃度の6倍とヒドラジン性窒素濃度の4倍の合計量は119.1mgN/L、遊離残留塩素濃度は5,830mgCl/Lとなり、電解処理される水中の遊離残留塩素濃度は、該合計量の49倍となる。この処理において、原水中に含まれるアンモニア性窒素373mgN/Lと反応する遊離残留塩素は2,835mgCl/Lであり、原水中に含まれるヒドラジン性窒素65.6mgN/Lと反応する遊離残留塩素は335mgCl/Lである。
図2に示す工程で、半バッチ方式により、原水の電解処理を行った。
受水槽10に前回の電解処理水10Lを残し、新しく原水6Lを供給して、ポンプ11により通水速度78L/hで電解槽3に通水し、1.6時間電解処理を行った。次いで、受水槽の水6Lを電解処理水槽4に抜き取り、新たに原水6Lを受水槽に供給して、同様にして1.6時間の電解処理を行った。同様な操作を繰り返して、定常状態に達したとき、電解処理水の水質は、遊離残留塩素濃度4,480mgCl/L、CODMn124mgO/Lであった。また、受水槽で刺激臭は殆ど感じられなかった。
電解処理水を、ポンプ7により、さらに過酸化ニッケル触媒充填塔8と過酸化コバルト触媒充填塔9に通水し、触媒と接触させた。触媒処理水の水質は、CODMn8.4mgO/Lであった。
本実施例においては、原水6Lと遊離残留塩素濃度4,480mgCl/Lの水10Lが受水槽で混合されて電解槽へ送り込まれるので、電解処理が開始されるときの水のアンモニア性窒素濃度の6倍とヒドラジン性窒素濃度の4倍の合計量は938mgN/L、遊離残留塩素濃度は2,800mgCl/Lとなり、電解処理される水中の遊離残留塩素濃度は、該合計量の3.0倍となる。この処理において、新しく供給される原水6Lに含まれるアンモニア性窒素2,240mgNと反応する遊離残留塩素は17,024mgClであり、ヒドラジン性窒素394mgNと反応する遊離残留塩素は2,009mgClである。受水槽に残された電解処理水10L中に含まれる遊離残留塩素は44,800mgClなので、新しく供給された原水中のアンモニアとヒドラジンを酸化分解するに十分な遊離残留塩素が存在する。
受水槽10に前回の電解処理水8Lを残し、新しく原水8Lを供給し、受水槽に撹拌機を設けて受水槽内の水を撹拌混合し、電解時間を2.0時間とした以外は、実施例2と同じ操作を行った。
定常状態に達したとき、電解処理水の水質は、遊離残留塩素濃度4,920mgCl/L、CODMn128mgO/Lであった。また、受水槽で刺激臭が僅かに感じられた。触媒処理水の水質は、CODMn8.6mgO/Lであった。
本実施例においては、原水8Lと遊離残留塩素濃度4,920mgCl/Lの水8Lが受水槽で混合されて電解槽へ送り込まれるので、電解処理が開始されるときの水のアンモニア性窒素濃度の6倍とヒドラジン性窒素濃度の4倍の合計量は1,250mgN/L、遊離残留塩素濃度は2,460mgCl/Lとなり、電解処理される水中の遊離残留塩素濃度は、該合計量の2.0倍となる。この処理において、新しく供給される原水8Lに含まれるアンモニア性窒素2,984mgNと反応する遊離残留塩素は22,678mgClであり、ヒドラジン性窒素525mgNと反応する遊離残留塩素は2,678mgClである。受水槽に残された電解処理水8L中に含まれる遊離残留塩素は39,400mgClなので、新しく供給された原水中のアンモニアとヒドラジンを酸化分解するに十分な遊離残留塩素が存在する。
図2に示す工程で、完全バッチ方式により、原水の電解処理を行った。
空の受水槽に原水16Lを入れ、ポンプ11により通水速度78L/hで電解槽3に通水し、4.8時間電解処理を行ったのち、全量を電解処理水槽4に移送した。電解処理水の水質は、遊離残留塩素濃度5,850mgCl/L、CODMn232mgO/Lであった。また、電解処理中、受水槽で強い刺激臭が感じられた。
電解処理水を、ポンプ7により、さらに過酸化ニッケル触媒充填塔8と過酸化コバルト触媒充填塔9に通水し、触媒と接触させた。触媒処理水の水質は、CODMn32mgO/Lであった。
実施例1〜3及び比較例1の結果を、第1表に示す。また、実施例1の電解処理水のクロマトグラムを図3、触媒処理水のクロマトグラムを図4に、比較例1の電解処理水のクロマトグラムを図5、触媒処理水のクロマトグラムを図6に示す。
図5及び図6のクロマトグラムを見ると、いずれも保持時間約17.3分にピークがあり、比較例1の電解処理では、2−オキサゾリドンが生成し、金属過酸化物触媒との接触によっても除去されていないことが分かる。一方、図3及び図4のクロマトグラムには、保持時間16分以上のピークがほとんどなく、実施例1の電解処理では、2−オキサゾリドンが生成しないばかりでなく、その他の副生物の生成量も少ないことが分かる。
2 ポンプ
3 電解槽
4 電解処理水槽
5 受水槽
6 ポンプ
7 ポンプ
8 過酸化ニッケル触媒充填塔
9 過酸化コバルト触媒充填塔
10 受水槽
11 ポンプ
Claims (5)
- 少なくともアンモニア又はヒドラジンを含有する窒素化合物含有排水を電解槽で電解処理して窒素化合物を分解する排水処理方法において、電解処理される排水中の遊離残留塩素濃度を、排水中のアンモニア性窒素濃度の6倍と排水中のヒドラジン性窒素濃度の4倍との合計量以上に調整したのち、電解処理することを特徴とする窒素化合物含有排水の電解処理方法。
- 排水を連続的に電解槽に給水することにより電解処理を行い、電解槽の出口の水の一部を電解処理水として抜き取り、残部を電解槽の入口に返送して循環する請求項1記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法。
- 排水を受水槽に貯留し、電解槽に循環して電解処理を半バッチ方式で行い、電解処理終了後に受水槽より電解処理水の一部を抜き出したのち、排水を受水槽に供給して電解処理を開始する請求項1記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法。
- 受水槽に撹拌機を設けて、水を撹拌混合する請求項3記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法。
- 電解処理後の電解処理水を、金属過酸化物触媒と接触させる請求項1記載の窒素化合物含有排水の電解処理方法。
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