JP2005019750A - セラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構造で優れた熱放散性を有し、高温と低温との間で温度サイクルが加えられてもセラミック基板が破壊することのない信頼性の高いのセラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュールを提供する。
【解決手段】金属回路板31の両面にセラミック基板33を接合してなり、一方のセラミック基板33aに前記金属回路板31の一部が露出するような凹部37を形成するとともに、該凹部37に露出した前記金属回路板31に電気素子35が搭載されるセラミック回路基板39において、前記金属回路板31が気孔を有することを特徴とする
【選択図】図1
【解決手段】金属回路板31の両面にセラミック基板33を接合してなり、一方のセラミック基板33aに前記金属回路板31の一部が露出するような凹部37を形成するとともに、該凹部37に露出した前記金属回路板31に電気素子35が搭載されるセラミック回路基板39において、前記金属回路板31が気孔を有することを特徴とする
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気素子、特に高出力のパワーFETなどを搭載し、放熱性に優れたセラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュールに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、高出力のパワーFETなどを収容する半導体素子用パッケージのセラミック回路基板は、図4に示すように、作動時に発熱する半導体素子1の放熱性を向上させるため、半導体素子1と、熱伝導率の高い金属回路板3、セラミック基板5などから構成され、セラミック回路基板7の一方側の面に、金属回路板3が接続され、この金属回路板3には、半導体素子1が搭載されている。
【0003】
半導体素子1は、たとえばSi単結晶の原子の一部をV族またはIII族の原子で置き換えた、いわゆる不純物半導体からなり、自由電子と正孔の二つのキャリヤ数により区別されるn型、p型半導体の組合せにより構成される。その役割は、ICなどの電子回路のベース電圧信号でパワー回路の電流のスイッチングを行い、電力の制御を行うことにある。
【0004】
また、金属回路板3は、パワー回路上のエミッタ電極を構成し、大電流を通電するとともに、半導体素子1で発生した熱を外部に伝達し、放出する際、熱を広範囲に伝導し、熱放散性を高める働きをする。
【0005】
また、セラミック基板5は、絶縁性を有しており、金属回路板3間の電気的絶縁を確保するために設けられるとともに、金属回路板3と同様に熱を外部に伝達する役目を有する。
【0006】
このようなセラミック回路基板7において、金属回路板3が銅からなる場合、銅の熱伝導率が大きい為、半導体素子1の発熱により発生する熱は、金属回路板3を伝わって良好に外部に放出され、半導体素子の温度上昇を有効に防ぐことが可能となる。
【0007】
しかしながら、銅からなる金属回路板3の熱膨張係数が、17×10−6/℃であるのに対して、セラミック基板5の熱膨張係数は、一般的に2〜8×10−6/℃であり、両者の熱膨張係数が大きく異なるため、金属回路板3とセラミック基板5とを接合する際に、熱膨張係数差に起因して発生する熱応力によって、セラミック回路基板7に反りが発生したり、あるいはセラミック基板5に亀裂が入る等の問題が発生していた。また、同様に半導体素子1を金属回路板3に実装する際にも、半導体素子1の熱膨張係数3〜4×10−6/℃と金属回路板3との熱膨張係数の差により、半導体素子1に亀裂が入る等の問題が発生していた。
【0008】
このような問題を解決するために、金属回路板3として、熱膨張係数が比較的小さく、セラミック基板5や、半導体素子1の熱膨張係数に近い銅−タングステン合金(6〜9×10−6/℃)を用いたものや、金属回路板3の素子搭載面を銅―タングステン合金とし、セラミック基板5の他の面に、銅からなる裏金属板を接合した構造のものが報告されている(特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、金属回路板3として銅―タングステン合金を用いた場合、セラミック基板5や半導体素子1との間の熱膨張係数の差により発生する熱応力は緩和されるものの、銅―タングステン合金の熱伝導率は180〜200W/m・Kであり、銅の熱伝導率(約390W/m・K)に比べ小さく、金属回路板3に銅を用いた場合に比べ放熱性が半減するという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するため、図5に示すように、銅などの高熱伝導性の金属板3aの両面に、半導体素子に熱膨張係数が近い銅―タングステン合金などからなる金属板3bを接合して、高熱伝導性と熱膨張係数の低下とを併せて達成した金属回路板3が報告されている(特許文献2参照)。
【0011】
また、図6に示すように、セラミック基板5の一方側に金属回路板3を接合し、半導体素子1搭載面とし、セラミック基板5の他方側に裏金属板9を接合しヒートシンクベース11と密着する構造のセラミック回路基板7が提案されている(特許文献3参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開昭63−73651号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平2−146748号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平15−17627号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載された構造では、セラミック回路基板7の反り、及びセラミック基板5に発生する亀裂の問題は抑制されるものの、銅のみの金属基体に比べて放熱性は低下するうえ、タングステンおよびモリブテンなどの低熱膨張金属やそれらの合金は極めて高価であるとともに、金属回路板3の層数が多くなることによりコスト高を招く原因となる。
【0016】
また、特許文献3に記載された構造のセラミック回路基板7では、セラミック基板5の両面に金属板3、9が接合されており、セラミック基板5の表裏での発生応力のバランスが良く、接合時の反りが防止できるものの、更に放熱性を向上するため、裏金属板9を厚くすると、中間層であるセラミック基板5に発生する熱応力は過大なものとなり、熱サイクルによりクラックや反りなどが発生しやすくなるという問題があった。
【0017】
また、金属板3、9とセラミック基板5の接合面の熱膨張は拘束されるのに対し、半導体素子1を搭載する金属回路板3表面近傍での熱膨張は完全には拘束されないため、半導体素子1や接合部の半田層に加わる熱応力を低減することはできず、半導体素子1に亀裂が入る等の問題点があった。
【0018】
以上説明したように、高出力のパワーFETなどを収容する半導体素子用パッケージのセラミック回路基板においては、放熱性と、信頼性に加え、生産性、コストなどを改善すべく、様々な取り組みが行われているものの、未だ、全てを十分に満足することはできていない。
【0019】
本発明は、特に半導体素子と金属回路板の接合部や、金属回路板とセラミック基板の接合部、及びセラミック基板に、熱応力や反りによるクラックが発生することを効果的に防止でき、更に工程を簡略化でき、安価で、長期間にわたって優れた耐久性と信頼性が得られるセラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュールを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の両面にセラミック基板を接合してなり、一方のセラミック基板に前記金属回路板の一部が露出するような凹部を形成するとともに、該凹部に露出した前記金属回路板に電気素子が搭載されるセラミック回路基板において、前記金属回路板が気孔を有することを特徴とする。
【0021】
従来は、熱膨張係数差の大きい金属回路と電気素子とを接続していたため、電気素子が熱膨張差により破損するなどの問題が起こっていたが、本発明のセラミック回路基板では、熱膨張係数の大きい金属回路板の両面に金属回路板よりも熱膨張係数が小さく、剛性の高いセラミック基板を接合することで、温度変化に伴う金属回路板の熱膨張、熱収縮を両面から完全に拘束することができ、金属回路板と電気素子の温度変化に伴う寸法変化の差を小さくすることができるため、金属回路板と電気素子の接合信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、金属回路板の両面にセラミック基板を接合することで、金属回路板の両面の熱応力が均衡し、セラミック回路基板の反りを防止できるとともに、セラミック基板へのクラックの発生を防止できる。
【0023】
また、金属回路板に気孔を導入したことで、金属回路板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0024】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板が気孔を有することを特徴とする。セラミック基板に気孔を導入したことで、セラミック基板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0025】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の気孔率が2%以上であることを特徴とする。金属回路板の気孔率を2%以上とすることで、金属回路板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0026】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板の気孔率が0.5〜10%であることを特徴とする。セラミック基板の気孔率を0.5%以上とすることで、セラミック基板のヤング率を下げることができ、また、セラミック基板の気孔率を10%以下とすることで、セラミック基板に十分な剛性を付与することができ、金属回路板を両面から強固に拘束することができるため、金属回路板と電気素子との接合信頼性を確保することができるとともに、セラミック基板の熱伝導率も実用上望ましい範囲に維持できる。
【0027】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の厚さが、0.1mm以上であって、且つセラミック基板の厚さの5倍以下であることを特徴とする。
【0028】
このように金属回路板の厚さを0.1mm以上とすることで、セラミック回路基板の放熱性を十分に高くでき、また、セラミック基板の厚さの5倍以下とすることにより、金属回路板の熱膨張による過大な応力の発生を防止できる。
【0029】
また、本発明のセラミック回路基板は、一方のセラミック基板の厚さが、0.1mm以上であって、且つ他方のセラミック基板の0.3〜3倍であることを特徴とする。
【0030】
このようにセラミック基板の厚さを0.1mm以上とすることにより、セラミック基板の強度を十分確保することが出来、金属回路板の熱膨張に起因する熱応力が発生してもセラミック基板にクラックや割れを生じることなく金属回路板の熱膨張を十分に拘束することが出来る。
【0031】
また、一方のセラミック基板の厚さを他方のセラミック基板の厚さの0.3〜3倍とすることにより、金属回路板の両面に配置されたセラミック基板に発生する熱応力のバランスを均一なものとすることが出来、セラミック回路板の反りを抑制できるとともに、セラミック基板へのクラックの発生を抑制できる。
【0032】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板が、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアから選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする。
【0033】
このような高強度で低熱膨張のセラミックスを用いることで、金属回路板を十分に拘束することができるとともに、セラミック基板の破壊を防止することができる。
【0034】
また、本発明のセラミック回路基板は、一方のセラミック基板と他方のセラミック基板とが同質であることを特徴とする。このように、金属回路板を介して設けられた両面のセラミック基板を同質の材質から形成することにより、金属回路板を両面から均一に拘束することが可能となり、セラミック回路基板の信頼性が向上する。
【0035】
なお、同質とは組成や気孔率がほぼ等しいものを意味し、仮に、組成や気孔率が完全に同一でなくとも、ヤング率や熱膨張係数が同程度になるものであればよい。
【0036】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板が銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種から成ることを特徴とする。
【0037】
このように金属回路板を、低抵抗、高熱伝導性の銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種から成る金属とすることで、金属回路板の発熱を抑制できるとともに、高い熱放散性を実現できる。
【0038】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は金属粉末を含有する金属シートの一方の主面に、無機粉末を含有する第一の無機シートを当接させ、他方の主面に貫通孔が形成された第二の無機シートを積層して積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を同時焼成する工程とを具備し、以上説明したセラミック回路基板を作製することを特徴とする。
【0039】
従来の工程ではセラミック基板が直接接合法等により金属回路板に接合されていたため接合時の位置ずれの発生、熱膨張係数の差によるセラミック基板のクラック発生等の問題があり接合信頼性低下の要因となっていた。また接合工程を設ける必要があり、セラミック回路基板のコスト高の原因ともなっていた。しかし、本発明のセラミック回路基板の製造方法によれば、金属シートを無機シートで挟持し、積層した後、同時焼成を行うことにより、工程の簡略化が達成できる為、所望の製品形状が簡易に作製でき、接合に掛かる全ての工程が省かれ接合コストが削減でき、しかも接合時の位置ずれ等が発生しない為、接合信頼性が向上する。
【0040】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、金属シートに含有される金属粉末の平均粒径が0.5μm以上であることを特徴とする。このように金属粉末の平均粒径を0.5μm以上とすることによって金属シートに含有される金属粉末の過剰な充填を抑制でき、焼き上げ時の金属回路板の気孔を確保することが出来る。
【0041】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、金属シートが少なくとも平均粒径の異なる2種類の金属粉末を含有することを特徴とする。このように平均粒径の異なる金属粉末を含有させることにより、金属シートの焼き上げ時の気孔率を制御することが出来、金属回路板のヤング率を下げることが出来る。
【0042】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、積層成形体に、積層方向に荷重を加えながら焼成を行うことを特徴とする。このように、積層成形体に荷重を加えながら同時焼成を行うことにより、焼成時に発生するセラミック回路基板の反りを抑制することが出来、電気素子搭載時の歩留まりを向上することが出来る。
【0043】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、第一の無機シートと第二の無機シートとが同質であることを特徴とする。このように、金属シートを介して設けられた両面の無機シートを同質の材質から形成することにより、金属シートを両面から均一に拘束することが可能となり、同時焼成時のセラミック回路基板の反りを抑制できる。
【0044】
なお、同質とは組成及び成形体密度がほぼ等しいものを意味し、このような同質の第一の無機シートと第二の無機シートは、収縮挙動も等しくなるため、セラミック回路基板に過大な反りが生じることがない。
【0045】
本発明の電気回路モジュールは、ヒートシンクベースに以上説明したセラミック回路基板を搭載することにより、簡単な構造で優れた熱放散性を有し、高温と低温との間で温度サイクルが加えられてもセラミック基板が破壊することがなく、信頼性の高い発熱性の電気素子用放熱構造体を得ることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック回路基板は、図1に示すように金属回路板31と、金属回路板31の両面に接合されたセラミック基板33で構成され、金属回路板31の一方側に設けられたセラミック基板33aには、金属回路板31の一部が露出するように貫通した凹部37が設けられ、凹部37に露出した金属回路31には、電気素子35、例えば、半導体素子35が接続される。
【0047】
また、金属回路板31の他方側に設けられたセラミック基板33bには、ヒートシンクベース41が配設されている。
【0048】
このような構造のセラミック回路基板39において、半導体素子35は、例えば、発熱性素子やIGBT、パワー系素子などのように電流を制御する機能を有しており、半導体素子35には電流を制御するための信号を半導体素子35に伝達するための配線(図示せず)が接続されている。
【0049】
また、半導体素子35には電流を流すための配線(図示せず)が接続され、半導体素子35を介して、前記電流を流すための配線から金属回路板35に電流が流れる。電流の流れが逆になる場合があるのは言うまでもない。
【0050】
また、金属回路板31には気孔が存在することが重要であり、金属回路板31の気孔率は2%以上、特に3〜4%の範囲であることが望ましい。この金属回路板31の気孔率を2%以上、特に3〜4%の範囲とすることで金属回路板31のヤング率が下がるため、セラミック基板33と金属回路板31の熱サイクルに伴う応力を小さくすることができるとともに、発生した応力を十分緩和することができ、接合信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、このようなセラミック回路基板39においてセラミック基板33の気孔率は、0.5〜10%の範囲、特に5〜8%以上が望ましい。セラミック基板33の気孔率を前記の範囲とすることで、セラミック基板33に金属回路板31を拘束するために十分な強度と剛性を付与することができる。また、後述する製法で金属シートと無機シートとを積層した後、同時焼成してセラミック回路基板39を作製する場合には、セラミック基板33の気孔率が10%以下、特に8%以下となるように同時焼成することにより、セラミック基板33の緻密化が促進され、焼成過程においてセラミック基板33と金属回路板31の界面でアンカー効果が発生し、高い接合強度が得られ、セラミック基板33と金属回路板31との接合信頼性を向上させることができる
また、本発明のセラミック回路基板39において、金属回路板31の厚さを0.1mm以上とし、セラミック基板33の厚さの5倍以下とすることが望ましい。
【0052】
例えば、セラミック基板33の厚みが0.5mmの場合、金属回路板31の厚みを0.1mm〜2.5mmの範囲にすることが望ましい。この金属回路板31の厚みを0.1mm以上とすることで、セラミック回路基板39の放熱性を高くすることができるとともに、金属回路板31の電気的抵抗を下げることができるため、電流を流した際の金属回路板31の発熱も抑制することができる。また、金属回路板31の厚みをセラミック基板33の5倍以下とすることで、金属回路板31とセラミック基板33との熱膨張係数の差によるセラミック回路基板39の反りを抑制できるとともに、セラミック基板33の割れを抑制できる。
【0053】
また、セラミック基板33の厚みは、0.1mm以上、特に0.5mm以上であることが望ましい。このセラミック基板33の厚さを0.1mm以上、特に0.5mm以上とすることで、セラミック基板33に十分な強度と剛性を付与できるため、金属回路板31の熱サイクルに伴う膨張と収縮を十分に拘束することが可能となり、セラミック回路基板39の反りやセラミック基板33の割れを防止することができる。
【0054】
また、金属回路板31の両面に配置されたセラミック基板33に発生する熱応力のバランスを考慮して、一方のセラミック基板33aの厚みが、他方のセラミック基板33bの0.3〜3倍であることが好ましく、さらに、0.5〜1.5倍の範囲がより望ましい。
【0055】
また、セラミック基板33は、特に限定されるものではないが、高強度で、低熱膨張係数を有する窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアから選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましく、特に、低融点金属を含む金属回路板31との同時焼成が可能で、比較的高強度で、且つ熱伝導率が比較的高いアルミナを用いることが望ましい。
【0056】
また、均一に金属回路板31を拘束するという点と、同時焼成を行い、セラミック回路基板39を作製する場合には、収縮挙動を一致させ、セラミック回路基板39の反りを抑制できる点から、金属回路板31の両面に配置されるセラミック基板33は同質であることが望ましい。
【0057】
また、金属回路板31は、銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種を主成分とすることが望ましい。特に熱伝導性、原料コスト、および導電性の点から、銅を主成分とすることが望ましい。
【0058】
また、無機シート1と金属シート2とを同時焼成し、無機シート1の焼成温度が1600℃を超えるような場合には、金属回路板31の気孔の確保のために、金属シート2に、例えば、アルミナなどの無機粉末を添加することが望ましく、無機粉末の量は、熱伝導率を確保するために20体積%以下、望ましくは10体積%以下とすることが望ましい。
【0059】
本発明に係る電気回路モジュールは、上記のように調整したセラミック回路基板39の半導体素子35が搭載される面の反対側の面にヒートシンクベース41を配設して構成される。
【0060】
上記構成に係るセラミック回路基板39およびそれを用いた半導体モジュールとヒートシンクベース41の接合方法としては、高分子を主成分とした接着剤、グリースのみならず、半田、ロウ材等を使用してもよい。また、本発明のヒートシンクベース41は、いわゆるヒートシンク(放熱板)のみを示すものではなく、実装ボードなどのセラミック回路基板39が接合または実装されるものは全て含むものとする。
【0061】
以下に、上記セラミック回路基板39の製造方法の一例について、図2を用いて説明する。
【0062】
まず、セラミック基板39となる窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアのいずれかの無機粉末を主成分とする無機シート1と、金属回路板31となる銅、タングステン、モリブテンのいずれかの金属粉末を主成分とする金属シート2を作製する。無機シート1及び金属シート2は周知の成形方法によって作製することが出来、例えば、上記混合粉末に有機バインダーや溶媒を添加してスラリーを調整した後、ドクターブレード法によって成形したり、混合粉末に有機バインダーを加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みの無機シート1及び金属シート2を作製できる。
【0063】
このようにして作製した無機シート1の焼結温度が1400℃より高い場合には、金属粉末にW及び/又はMoからなる金属シート2を用いることが望ましく、また、無機シート1の焼成温度が1400℃以下の場合には、CuとW及び/又はMoからなる金属シート2を用いることが望ましい。
【0064】
また、金属回路板31に気孔を形成するためには、金属シート2の緻密化を阻害するために、金属シート2に含有される金属粉末の平均粒径を、0.5μm以上、特に、0.7μm以上とすることが望ましい。
【0065】
また、金属シート2には、少なくとも平均粒径の異なる2種類の金属粉末を配合することが望ましい。この金属粉末の平均粒径は、第一の平均粒径が0.7〜1.0μmが好ましく、第二の平均粒径が3.0〜5.0μmが望ましい。これにより金属粉末間に気孔が出来やすくなり、金属回路板31のヤング率を下げることが出来る。
【0066】
次に、金属回路板31が露出する貫通孔を形成する為に無機シート1にプレスによる打ち抜きや、レーザー加工で所定形状の貫通孔3を形成する。金属シート2の一方の主面に、この貫通孔3の形成された無機シート1aを当接させ、前記金属シート2の他方の主面に無垢の無機シート1bを当接し、位置合わせをして、加圧積層し、凹部を有する積層成形体4を作製する。
【0067】
また、本発明においては、一方の無機シート1aと他方の無機シート1bとが同質であることが望ましく、金属シート2を介して設けられた両面の無機シート1を同質の材質から形成することにより、金属シート2を両面から均一に拘束することが可能となり、同時焼成時に発生する反りが抑制できる。
【0068】
この積層成形体4を、1200〜1700℃の非酸化性雰囲気中で焼成して、セラミック回路基板39を作製する。また、金属シート2に含まれる金属成分の酸化を防止するために、焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素、あるいは窒素と水素の混合雰囲気を用いることが望ましい。なお、この雰囲気は所望により、アルゴンガス等の不活性ガスを混入してもよい。
【0069】
また、同時焼成時において、積層成形体4にセッターを介して、Moメッシュ等で荷重を加えながら焼成を行うことで、セラミック回路基板39の反りを抑制することが出来る。
【0070】
尚、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図3に示すように、無機シート1cに金属シート2を金型同時打ち抜き法等で埋め込んで作製された積層成形体4を用いても良い。
【0071】
次に、セラミック回路基板39およびそれを用いた電気回路モジュールについて実施例を用いて具体的に説明する。
【0072】
【実施例】
(無機シート作製)
Al2O3製セラミック基板33用の無機シート1として、酸化アルミニウム粉末(平均粒径1.8μm)を91.5質量%と、5質量%のMnO2、3質量%のSiO2、0.5質量%のMgOを混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0073】
また、AlN製セラミック基板33用の無機シート1として、窒化アルミニウムを90.0質量%と、8.0質量%の酸化エルビウム(Er2O3)、2.0質量%の酸化ストロンチウム(SrO)を混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0074】
また、Si3N4製セラミック基板33用の無機シート1として、平均粒径が1.2μm、酸素量が1.3質量%、α率93%の直接窒化法により製造された窒化ケイ素原料粉末を84.9モル%と、7.5モル%のEr2O3、7.5モル%のMgO、Al2O3を0.01モル%以下となる量で配合して、成形用バインダとしてアクリル樹脂バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0075】
また、ZrO2製セラミック基板33用の無機シートとして、平均粒径が0.5μmのZrO2粉末97モル%に、3モル%のY2O3粉末を混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0076】
次に、これらのスラリーを用いて、ドクターブレード法によって4種の無機シート1を作製した。なお、これらの無機シート1は焼成後に表1に示す厚みになるように調整した。
【0077】
(金属シート作製)
銅−タングステン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が3μmの銅粉末50体積%に、平均粒径が0.7μmのタングステン粉末を50体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0078】
また、タングステン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が1.8μmのタングステン粉末90体積%に、Al2O3粉末を10体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0079】
また、モリブデン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が2.5μmのモリブデン粉末90体積%に、Al2O3粉末を10体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0080】
次に、これらのスラリーを用いてドクターブレード法によって、3種の金属シート2を作製した。なお、これらの金属シート2は焼成後に表1に示す厚みになるように調整した。
【0081】
(積層成形体作製)
次に、4種の無機シート1aに対して金型プレス装置によって、中央部に15mm角の大きさの貫通穴3を形成した。
【0082】
次に、貫通穴3を形成した4種の無機シート1aと、無機シート1bの一方の主面に、密着液を塗布し、4種の金属シート2の一方の面に無機シート1aの密着液を塗布した面を当接させ、金属シート2の他方の面に無機シート1bの密着液を塗布した面を当接させて、表1の組み合わせになるように積層成形体4を作製し、さらに、この積層成形体4を、60℃に加熱して、900MPaの圧力を印加した。
【0083】
次に、この積層成形体4を還元雰囲気中で、表1に示す温度で1時間保持して同時焼成した。
【0084】
(セラミック回路基板評価)
次に、金属回路板31の一部が露出するように貫通した凹部37に、Sn−Pb共晶半田ペーストを塗布し、半導体素子35を当接させた。
【0085】
次に、300℃、30分の条件でリフローし、半導体素子35をセラミック回路基板39のセラミック基板33aの凹部37から露出した金属回路板31に接合した。
【0086】
次に、このセラミック回路基板39に搭載された半導体素子35に電流制御用配線を接続させ、電流用配線を半導体素子35と金属回路板31に接続させ、半導体素子35の搭載後にセラミック基板33と半導体素子35の割れの有無を確認し、半導体素子35の搭載後の不良率を表1に示した。
【0087】
また、セラミック回路基板39の反りと熱抵抗を測定し、表1に示した。
【0088】
また、金属回路板31の気孔率は、金属回路板31に接合されるセラミック基板33を研磨して、除去した後、その一部を粉砕し、理論密度を求め、残部を用いてアルキメデス法により比重を測定し、気孔率を算出した。また、セラミック基板33の気孔率は、他方のセラミック基板33と金属回路板31を研磨して、除去した後、その一部を粉砕し、理論密度を求め、残部を用いてアルキメデス法により比重を測定し、気孔率を算出した。
【0089】
なお、セラミック回路基板39の反りは、セラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの二つの対角を結ぶ線上を、表面粗さ計を用いてRmax値を測定し、その平均値を反りの値とした。表1で、反り測定値が0より小さいものはセラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの中央部がへこんでいることを示し、反り測定値が0より大きいものはセラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの中央部が盛り上がっていることを示している。
【0090】
なお、熱抵抗の測定は、半導体素子35に電流を流し、発熱させ、半導体素子35の温度に敏感なパラメータの温度依存データから、動作時の半導体素子35の温度を算出して熱抵抗を計算するTSP法(Temperature sensitive parameter method)を用いて行った。その結果を表1に示した。
【0091】
また、金属シート2単体を焼成し、得られた気孔率2%の金属板を金属回路板31として用い、セラミック基板33に気孔率が0.5〜12%のAl2O3製基板を用いた試料No.26〜29と、気孔率が0%の銅−タングステン金属回路板31と、セラミック基板33aとして気孔率が6%のAl2O3製セラミック基板と、気孔率が5%のZrO2製セラミック基板33bを用いて作製した試料No.30では、それぞれのセラミックス基板33と金属回路板31とを活性金属法により接合し、セラミック回路基板39を作製した。
【0092】
また、比較のために、金属回路板31の片面のみにセラミック基板33aを活性金属法により接合した回路基板(試料No.31)、金属回路板31の片面のみにセラミック基板33bを活性金属法により接合した回路基板(試料No.32)を作製した。それぞれ上記と同様に半導体素子35搭載時の不良品個数、反り、熱抵抗を求め、その結果も併せて表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1の結果から分かるように、本発明の範囲外である金属回路板31と半導体素子35搭載側のみにセラミック基板33aを設けた試料No.31のセラミック回路基板39は、金属回路板31を十分に拘束出来ず、反りが非常に大きくなり、半導体素子35搭載時の不良率が100%となり、非常に高くなった。
【0095】
また、本発明の範囲外である金属回路板31と、半導体素子35搭載側と反対側のみにセラミック基板33bを設けた試料No.32のセラミック回路基板39は、金属回路板31を十分に拘束出来ず反りが非常に大きくなり、特に半導体素子35搭載側のセラミック基板33aが無いため、金属回路板31の熱膨張が拘束されずに、半導体素子35搭載時の不良率が100%となり、極端に高くなった。
【0096】
なお、試料No.31、32では良品が得られず、熱抵抗は測定できなかった。
【0097】
また、直接接合法により作製し、気孔率が0%の銅−タングステン金属板と、セラミック基板33aとして気孔率が6%のAl2O3製セラミック基板と、気孔率が5%のZrO2製セラミック基板33bを用いて作製した本発明の範囲外の試料No.30では、半導体素子35の搭載時の不良率が11%と極端に高くなった。
【0098】
これに対して、金属回路板31の両面にセラミック基板33を設け、半導体素子35搭載面側のセラミック基板33aに金属回路板31が露出するような凹部37を形成して、半導体素子35の搭載を可能にするとともに、金属回路板31の熱膨張及び熱収縮を両面から拘束する構造とした本発明のセラミック回路基板39(試料No.1〜28)は、熱応力による反り、及び熱抵抗がともに小さく、反りが50μm以下で、且つ熱抵抗が2.33℃/W以下という優れた特性を有している。このため、半導体素子35搭載時の不良品がいずれも4%以下であり、放熱性にも優れていることがわかる。
【0099】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、金属回路板31の気孔率を1.5〜5.0%の範囲で変化させた試料No.1〜5では、金属回路板31の気孔率が3.0%以上の試料で、半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。また、反りも30μm以下となった。
【0100】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、セラミック基板33の気孔率を8〜12%の範囲で変化させた試料No.6、7において、セラミック基板33の気孔率が12%の試料No.6では、セラミック基板33の収縮が不十分な為、同時焼成時に反りが発生し、半導体素子35の搭載時に2%の不良が発生している。また、セラミック基板33の気孔率が8%の試料No.7では半導体素子35の搭載時の半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。
【0101】
また、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを0.3mmとし、金属回路板31の厚みを0.05〜2mmの範囲で変化させた試料No.8〜11においては、金属回路板31の厚みが0.1mm未満の試料No.8では、不良は発生していないものの、他の試料に比べ、熱抵抗が1.34℃/Wと若干高くなっている。また、金属回路板31とセラミック基板33との厚みの比が5を超える試料No.11では、熱応力が大きくなるために、若干ではあるが、半導体素子35搭載時に不良が発生している。
【0102】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、0.05〜1.5mmの範囲で変化させた試料No.12〜15では、セラミック基板33の厚みが0.1mm以上の試料で半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。また、セラミック基板33の厚みが0.05mmの試料No.12は同時焼成において金属回路板31を十分拘束することが出来ず、そりが大きくなった為、ヒートシンクベース41との密着性が低下し、熱拡散が効率よく行えず熱抵抗が上昇した。
【0103】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと、反対側のセラミック基板33bの厚みを変化させた試料No.16〜19では、片側のセラミック基板33aの厚みと、他方のセラミック基板33bの厚みの比が0.3〜3倍の範囲を超える試料No.17、19では1%の不良が発生したのに対して、片側のセラミック基板33aの厚みと他方のセラミック基板33bの厚みの比が0.3〜3倍の範囲内の試料No.16、18では、半導体素子35搭載時の不良率が0%になり、高い歩留まりを達成できた。
【0104】
なお、以上説明した試料No.1〜19は、Al2O3製のセラミック基板33とCu/W製の金属回路板31を組み合わせた例である。
【0105】
セラミック基板33として、Al2O3、Si3N4、AlN、ZrO2を用い、金属回路板31として、Cu/W、W、Moを用いた試料No.20〜25においても、低い不良率が達成された。
【0106】
なお、両面のセラミック基板33を異なる材質とした試料No.23では、同じ材質を用いた場合に比べ、不良率が4%となり、不良率が増加する傾向にあるが、それぞれの厚さを適宜、調整することで、不良率は減少させられるものと推測される。
【0107】
また、セラミック基板33の材質に焼成温度1400℃以上の材質を用いた試料No.20〜22、24、25においては、試料No.20〜22、24では、WにAl2O3粉末を加えた金属シート2を用い、試料No.25では、MoにAl2O3粉末を加えた金属シート2を用いて、1600℃の焼成温度で同時焼成を行った。その結果、熱抵抗は若干高くなったものの、半導体素子35搭載時の不良率が0%になり、高い歩留まりを達成できた。
【0108】
また、セラミック基板33の気孔率を変化させた試料No.26〜29では、気孔率が2%の銅−タングステン金属回路板31と、セラミック基板33として気孔率が10%以下のAl2O3製セラミック基板33を用いた試料No.26〜28では熱抵抗、反りがともに小さく良好な結果が得られた。しかし、セラミック基板33として気孔率が12%のAl2O3製基板を用いた試料No.29ではセラミック基板33の熱伝導が悪くなった為、実用上問題はないものの、発熱時の熱拡散を効率よく行えず、1.11℃/Wと若干、熱抵抗が高くなった。
【0109】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の両面をセラミック基板とし、電気素子搭載面側のセラミック基板に金属回路板が露出するような凹部を形成して、電気素子の搭載を可能にするとともに、金属回路板の熱膨張を両面から拘束することから、セラミック基板と金属回路板を同時焼成する際に、金属回路板の表裏での熱応力の発生を抑制しながらバランスを保ち、反りの発生を抑えることができ、同時焼成時に反りを生じることなく、さらにセラミック基板の亀裂の発生を防ぐことが出来る。
【0110】
また、セラミック回路基板に電気素子を半田などで実装する際にも、中央の金属回路板が両面のセラミック基板によって拘束されているので、反りの発生や、繰返しの熱サイクルによる電気素子や接合部に亀裂が入ることなく使用することが出来る。さらに、金属回路板やセラミック基板に気孔を導入することでこれらの部材のヤング率が下がり、電気素子搭載時の不良率が減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック回路基板及び電気回路モジュールを示す断面図である。
【図2】本発明の積層成形体を示す断面図である。
【図3】本発明の他の形態の積層成形体を示す断面図である。
【図4】従来のセラミック回路基板を示す断面図である。
【図5】従来のセラミック回路基板の他の形態を示す断面図である。
【図6】従来のセラミック回路基板とヒートシンクベースとを接続した形態を示す断面図である。
【符号の説明】
31・・・金属回路板
33・・・セラミック基板
35・・・電気素子
37・・・凹部
39・・・セラミック回路基板
41・・・ヒートシンクベース
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気素子、特に高出力のパワーFETなどを搭載し、放熱性に優れたセラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュールに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、高出力のパワーFETなどを収容する半導体素子用パッケージのセラミック回路基板は、図4に示すように、作動時に発熱する半導体素子1の放熱性を向上させるため、半導体素子1と、熱伝導率の高い金属回路板3、セラミック基板5などから構成され、セラミック回路基板7の一方側の面に、金属回路板3が接続され、この金属回路板3には、半導体素子1が搭載されている。
【0003】
半導体素子1は、たとえばSi単結晶の原子の一部をV族またはIII族の原子で置き換えた、いわゆる不純物半導体からなり、自由電子と正孔の二つのキャリヤ数により区別されるn型、p型半導体の組合せにより構成される。その役割は、ICなどの電子回路のベース電圧信号でパワー回路の電流のスイッチングを行い、電力の制御を行うことにある。
【0004】
また、金属回路板3は、パワー回路上のエミッタ電極を構成し、大電流を通電するとともに、半導体素子1で発生した熱を外部に伝達し、放出する際、熱を広範囲に伝導し、熱放散性を高める働きをする。
【0005】
また、セラミック基板5は、絶縁性を有しており、金属回路板3間の電気的絶縁を確保するために設けられるとともに、金属回路板3と同様に熱を外部に伝達する役目を有する。
【0006】
このようなセラミック回路基板7において、金属回路板3が銅からなる場合、銅の熱伝導率が大きい為、半導体素子1の発熱により発生する熱は、金属回路板3を伝わって良好に外部に放出され、半導体素子の温度上昇を有効に防ぐことが可能となる。
【0007】
しかしながら、銅からなる金属回路板3の熱膨張係数が、17×10−6/℃であるのに対して、セラミック基板5の熱膨張係数は、一般的に2〜8×10−6/℃であり、両者の熱膨張係数が大きく異なるため、金属回路板3とセラミック基板5とを接合する際に、熱膨張係数差に起因して発生する熱応力によって、セラミック回路基板7に反りが発生したり、あるいはセラミック基板5に亀裂が入る等の問題が発生していた。また、同様に半導体素子1を金属回路板3に実装する際にも、半導体素子1の熱膨張係数3〜4×10−6/℃と金属回路板3との熱膨張係数の差により、半導体素子1に亀裂が入る等の問題が発生していた。
【0008】
このような問題を解決するために、金属回路板3として、熱膨張係数が比較的小さく、セラミック基板5や、半導体素子1の熱膨張係数に近い銅−タングステン合金(6〜9×10−6/℃)を用いたものや、金属回路板3の素子搭載面を銅―タングステン合金とし、セラミック基板5の他の面に、銅からなる裏金属板を接合した構造のものが報告されている(特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、金属回路板3として銅―タングステン合金を用いた場合、セラミック基板5や半導体素子1との間の熱膨張係数の差により発生する熱応力は緩和されるものの、銅―タングステン合金の熱伝導率は180〜200W/m・Kであり、銅の熱伝導率(約390W/m・K)に比べ小さく、金属回路板3に銅を用いた場合に比べ放熱性が半減するという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するため、図5に示すように、銅などの高熱伝導性の金属板3aの両面に、半導体素子に熱膨張係数が近い銅―タングステン合金などからなる金属板3bを接合して、高熱伝導性と熱膨張係数の低下とを併せて達成した金属回路板3が報告されている(特許文献2参照)。
【0011】
また、図6に示すように、セラミック基板5の一方側に金属回路板3を接合し、半導体素子1搭載面とし、セラミック基板5の他方側に裏金属板9を接合しヒートシンクベース11と密着する構造のセラミック回路基板7が提案されている(特許文献3参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開昭63−73651号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平2−146748号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平15−17627号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載された構造では、セラミック回路基板7の反り、及びセラミック基板5に発生する亀裂の問題は抑制されるものの、銅のみの金属基体に比べて放熱性は低下するうえ、タングステンおよびモリブテンなどの低熱膨張金属やそれらの合金は極めて高価であるとともに、金属回路板3の層数が多くなることによりコスト高を招く原因となる。
【0016】
また、特許文献3に記載された構造のセラミック回路基板7では、セラミック基板5の両面に金属板3、9が接合されており、セラミック基板5の表裏での発生応力のバランスが良く、接合時の反りが防止できるものの、更に放熱性を向上するため、裏金属板9を厚くすると、中間層であるセラミック基板5に発生する熱応力は過大なものとなり、熱サイクルによりクラックや反りなどが発生しやすくなるという問題があった。
【0017】
また、金属板3、9とセラミック基板5の接合面の熱膨張は拘束されるのに対し、半導体素子1を搭載する金属回路板3表面近傍での熱膨張は完全には拘束されないため、半導体素子1や接合部の半田層に加わる熱応力を低減することはできず、半導体素子1に亀裂が入る等の問題点があった。
【0018】
以上説明したように、高出力のパワーFETなどを収容する半導体素子用パッケージのセラミック回路基板においては、放熱性と、信頼性に加え、生産性、コストなどを改善すべく、様々な取り組みが行われているものの、未だ、全てを十分に満足することはできていない。
【0019】
本発明は、特に半導体素子と金属回路板の接合部や、金属回路板とセラミック基板の接合部、及びセラミック基板に、熱応力や反りによるクラックが発生することを効果的に防止でき、更に工程を簡略化でき、安価で、長期間にわたって優れた耐久性と信頼性が得られるセラミック回路基板及びその製造方法並びに電気回路モジュールを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の両面にセラミック基板を接合してなり、一方のセラミック基板に前記金属回路板の一部が露出するような凹部を形成するとともに、該凹部に露出した前記金属回路板に電気素子が搭載されるセラミック回路基板において、前記金属回路板が気孔を有することを特徴とする。
【0021】
従来は、熱膨張係数差の大きい金属回路と電気素子とを接続していたため、電気素子が熱膨張差により破損するなどの問題が起こっていたが、本発明のセラミック回路基板では、熱膨張係数の大きい金属回路板の両面に金属回路板よりも熱膨張係数が小さく、剛性の高いセラミック基板を接合することで、温度変化に伴う金属回路板の熱膨張、熱収縮を両面から完全に拘束することができ、金属回路板と電気素子の温度変化に伴う寸法変化の差を小さくすることができるため、金属回路板と電気素子の接合信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、金属回路板の両面にセラミック基板を接合することで、金属回路板の両面の熱応力が均衡し、セラミック回路基板の反りを防止できるとともに、セラミック基板へのクラックの発生を防止できる。
【0023】
また、金属回路板に気孔を導入したことで、金属回路板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0024】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板が気孔を有することを特徴とする。セラミック基板に気孔を導入したことで、セラミック基板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0025】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の気孔率が2%以上であることを特徴とする。金属回路板の気孔率を2%以上とすることで、金属回路板のヤング率が下がるため、セラミック基板と金属回路板との熱膨張差による応力を緩和でき、接合信頼性が向上する。
【0026】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板の気孔率が0.5〜10%であることを特徴とする。セラミック基板の気孔率を0.5%以上とすることで、セラミック基板のヤング率を下げることができ、また、セラミック基板の気孔率を10%以下とすることで、セラミック基板に十分な剛性を付与することができ、金属回路板を両面から強固に拘束することができるため、金属回路板と電気素子との接合信頼性を確保することができるとともに、セラミック基板の熱伝導率も実用上望ましい範囲に維持できる。
【0027】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の厚さが、0.1mm以上であって、且つセラミック基板の厚さの5倍以下であることを特徴とする。
【0028】
このように金属回路板の厚さを0.1mm以上とすることで、セラミック回路基板の放熱性を十分に高くでき、また、セラミック基板の厚さの5倍以下とすることにより、金属回路板の熱膨張による過大な応力の発生を防止できる。
【0029】
また、本発明のセラミック回路基板は、一方のセラミック基板の厚さが、0.1mm以上であって、且つ他方のセラミック基板の0.3〜3倍であることを特徴とする。
【0030】
このようにセラミック基板の厚さを0.1mm以上とすることにより、セラミック基板の強度を十分確保することが出来、金属回路板の熱膨張に起因する熱応力が発生してもセラミック基板にクラックや割れを生じることなく金属回路板の熱膨張を十分に拘束することが出来る。
【0031】
また、一方のセラミック基板の厚さを他方のセラミック基板の厚さの0.3〜3倍とすることにより、金属回路板の両面に配置されたセラミック基板に発生する熱応力のバランスを均一なものとすることが出来、セラミック回路板の反りを抑制できるとともに、セラミック基板へのクラックの発生を抑制できる。
【0032】
また、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板が、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアから選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする。
【0033】
このような高強度で低熱膨張のセラミックスを用いることで、金属回路板を十分に拘束することができるとともに、セラミック基板の破壊を防止することができる。
【0034】
また、本発明のセラミック回路基板は、一方のセラミック基板と他方のセラミック基板とが同質であることを特徴とする。このように、金属回路板を介して設けられた両面のセラミック基板を同質の材質から形成することにより、金属回路板を両面から均一に拘束することが可能となり、セラミック回路基板の信頼性が向上する。
【0035】
なお、同質とは組成や気孔率がほぼ等しいものを意味し、仮に、組成や気孔率が完全に同一でなくとも、ヤング率や熱膨張係数が同程度になるものであればよい。
【0036】
また、本発明のセラミック回路基板は、金属回路板が銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種から成ることを特徴とする。
【0037】
このように金属回路板を、低抵抗、高熱伝導性の銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種から成る金属とすることで、金属回路板の発熱を抑制できるとともに、高い熱放散性を実現できる。
【0038】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は金属粉末を含有する金属シートの一方の主面に、無機粉末を含有する第一の無機シートを当接させ、他方の主面に貫通孔が形成された第二の無機シートを積層して積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を同時焼成する工程とを具備し、以上説明したセラミック回路基板を作製することを特徴とする。
【0039】
従来の工程ではセラミック基板が直接接合法等により金属回路板に接合されていたため接合時の位置ずれの発生、熱膨張係数の差によるセラミック基板のクラック発生等の問題があり接合信頼性低下の要因となっていた。また接合工程を設ける必要があり、セラミック回路基板のコスト高の原因ともなっていた。しかし、本発明のセラミック回路基板の製造方法によれば、金属シートを無機シートで挟持し、積層した後、同時焼成を行うことにより、工程の簡略化が達成できる為、所望の製品形状が簡易に作製でき、接合に掛かる全ての工程が省かれ接合コストが削減でき、しかも接合時の位置ずれ等が発生しない為、接合信頼性が向上する。
【0040】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、金属シートに含有される金属粉末の平均粒径が0.5μm以上であることを特徴とする。このように金属粉末の平均粒径を0.5μm以上とすることによって金属シートに含有される金属粉末の過剰な充填を抑制でき、焼き上げ時の金属回路板の気孔を確保することが出来る。
【0041】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、金属シートが少なくとも平均粒径の異なる2種類の金属粉末を含有することを特徴とする。このように平均粒径の異なる金属粉末を含有させることにより、金属シートの焼き上げ時の気孔率を制御することが出来、金属回路板のヤング率を下げることが出来る。
【0042】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、積層成形体に、積層方向に荷重を加えながら焼成を行うことを特徴とする。このように、積層成形体に荷重を加えながら同時焼成を行うことにより、焼成時に発生するセラミック回路基板の反りを抑制することが出来、電気素子搭載時の歩留まりを向上することが出来る。
【0043】
また、本発明のセラミック回路基板の製造方法は、第一の無機シートと第二の無機シートとが同質であることを特徴とする。このように、金属シートを介して設けられた両面の無機シートを同質の材質から形成することにより、金属シートを両面から均一に拘束することが可能となり、同時焼成時のセラミック回路基板の反りを抑制できる。
【0044】
なお、同質とは組成及び成形体密度がほぼ等しいものを意味し、このような同質の第一の無機シートと第二の無機シートは、収縮挙動も等しくなるため、セラミック回路基板に過大な反りが生じることがない。
【0045】
本発明の電気回路モジュールは、ヒートシンクベースに以上説明したセラミック回路基板を搭載することにより、簡単な構造で優れた熱放散性を有し、高温と低温との間で温度サイクルが加えられてもセラミック基板が破壊することがなく、信頼性の高い発熱性の電気素子用放熱構造体を得ることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック回路基板は、図1に示すように金属回路板31と、金属回路板31の両面に接合されたセラミック基板33で構成され、金属回路板31の一方側に設けられたセラミック基板33aには、金属回路板31の一部が露出するように貫通した凹部37が設けられ、凹部37に露出した金属回路31には、電気素子35、例えば、半導体素子35が接続される。
【0047】
また、金属回路板31の他方側に設けられたセラミック基板33bには、ヒートシンクベース41が配設されている。
【0048】
このような構造のセラミック回路基板39において、半導体素子35は、例えば、発熱性素子やIGBT、パワー系素子などのように電流を制御する機能を有しており、半導体素子35には電流を制御するための信号を半導体素子35に伝達するための配線(図示せず)が接続されている。
【0049】
また、半導体素子35には電流を流すための配線(図示せず)が接続され、半導体素子35を介して、前記電流を流すための配線から金属回路板35に電流が流れる。電流の流れが逆になる場合があるのは言うまでもない。
【0050】
また、金属回路板31には気孔が存在することが重要であり、金属回路板31の気孔率は2%以上、特に3〜4%の範囲であることが望ましい。この金属回路板31の気孔率を2%以上、特に3〜4%の範囲とすることで金属回路板31のヤング率が下がるため、セラミック基板33と金属回路板31の熱サイクルに伴う応力を小さくすることができるとともに、発生した応力を十分緩和することができ、接合信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、このようなセラミック回路基板39においてセラミック基板33の気孔率は、0.5〜10%の範囲、特に5〜8%以上が望ましい。セラミック基板33の気孔率を前記の範囲とすることで、セラミック基板33に金属回路板31を拘束するために十分な強度と剛性を付与することができる。また、後述する製法で金属シートと無機シートとを積層した後、同時焼成してセラミック回路基板39を作製する場合には、セラミック基板33の気孔率が10%以下、特に8%以下となるように同時焼成することにより、セラミック基板33の緻密化が促進され、焼成過程においてセラミック基板33と金属回路板31の界面でアンカー効果が発生し、高い接合強度が得られ、セラミック基板33と金属回路板31との接合信頼性を向上させることができる
また、本発明のセラミック回路基板39において、金属回路板31の厚さを0.1mm以上とし、セラミック基板33の厚さの5倍以下とすることが望ましい。
【0052】
例えば、セラミック基板33の厚みが0.5mmの場合、金属回路板31の厚みを0.1mm〜2.5mmの範囲にすることが望ましい。この金属回路板31の厚みを0.1mm以上とすることで、セラミック回路基板39の放熱性を高くすることができるとともに、金属回路板31の電気的抵抗を下げることができるため、電流を流した際の金属回路板31の発熱も抑制することができる。また、金属回路板31の厚みをセラミック基板33の5倍以下とすることで、金属回路板31とセラミック基板33との熱膨張係数の差によるセラミック回路基板39の反りを抑制できるとともに、セラミック基板33の割れを抑制できる。
【0053】
また、セラミック基板33の厚みは、0.1mm以上、特に0.5mm以上であることが望ましい。このセラミック基板33の厚さを0.1mm以上、特に0.5mm以上とすることで、セラミック基板33に十分な強度と剛性を付与できるため、金属回路板31の熱サイクルに伴う膨張と収縮を十分に拘束することが可能となり、セラミック回路基板39の反りやセラミック基板33の割れを防止することができる。
【0054】
また、金属回路板31の両面に配置されたセラミック基板33に発生する熱応力のバランスを考慮して、一方のセラミック基板33aの厚みが、他方のセラミック基板33bの0.3〜3倍であることが好ましく、さらに、0.5〜1.5倍の範囲がより望ましい。
【0055】
また、セラミック基板33は、特に限定されるものではないが、高強度で、低熱膨張係数を有する窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアから選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましく、特に、低融点金属を含む金属回路板31との同時焼成が可能で、比較的高強度で、且つ熱伝導率が比較的高いアルミナを用いることが望ましい。
【0056】
また、均一に金属回路板31を拘束するという点と、同時焼成を行い、セラミック回路基板39を作製する場合には、収縮挙動を一致させ、セラミック回路基板39の反りを抑制できる点から、金属回路板31の両面に配置されるセラミック基板33は同質であることが望ましい。
【0057】
また、金属回路板31は、銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種を主成分とすることが望ましい。特に熱伝導性、原料コスト、および導電性の点から、銅を主成分とすることが望ましい。
【0058】
また、無機シート1と金属シート2とを同時焼成し、無機シート1の焼成温度が1600℃を超えるような場合には、金属回路板31の気孔の確保のために、金属シート2に、例えば、アルミナなどの無機粉末を添加することが望ましく、無機粉末の量は、熱伝導率を確保するために20体積%以下、望ましくは10体積%以下とすることが望ましい。
【0059】
本発明に係る電気回路モジュールは、上記のように調整したセラミック回路基板39の半導体素子35が搭載される面の反対側の面にヒートシンクベース41を配設して構成される。
【0060】
上記構成に係るセラミック回路基板39およびそれを用いた半導体モジュールとヒートシンクベース41の接合方法としては、高分子を主成分とした接着剤、グリースのみならず、半田、ロウ材等を使用してもよい。また、本発明のヒートシンクベース41は、いわゆるヒートシンク(放熱板)のみを示すものではなく、実装ボードなどのセラミック回路基板39が接合または実装されるものは全て含むものとする。
【0061】
以下に、上記セラミック回路基板39の製造方法の一例について、図2を用いて説明する。
【0062】
まず、セラミック基板39となる窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアのいずれかの無機粉末を主成分とする無機シート1と、金属回路板31となる銅、タングステン、モリブテンのいずれかの金属粉末を主成分とする金属シート2を作製する。無機シート1及び金属シート2は周知の成形方法によって作製することが出来、例えば、上記混合粉末に有機バインダーや溶媒を添加してスラリーを調整した後、ドクターブレード法によって成形したり、混合粉末に有機バインダーを加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みの無機シート1及び金属シート2を作製できる。
【0063】
このようにして作製した無機シート1の焼結温度が1400℃より高い場合には、金属粉末にW及び/又はMoからなる金属シート2を用いることが望ましく、また、無機シート1の焼成温度が1400℃以下の場合には、CuとW及び/又はMoからなる金属シート2を用いることが望ましい。
【0064】
また、金属回路板31に気孔を形成するためには、金属シート2の緻密化を阻害するために、金属シート2に含有される金属粉末の平均粒径を、0.5μm以上、特に、0.7μm以上とすることが望ましい。
【0065】
また、金属シート2には、少なくとも平均粒径の異なる2種類の金属粉末を配合することが望ましい。この金属粉末の平均粒径は、第一の平均粒径が0.7〜1.0μmが好ましく、第二の平均粒径が3.0〜5.0μmが望ましい。これにより金属粉末間に気孔が出来やすくなり、金属回路板31のヤング率を下げることが出来る。
【0066】
次に、金属回路板31が露出する貫通孔を形成する為に無機シート1にプレスによる打ち抜きや、レーザー加工で所定形状の貫通孔3を形成する。金属シート2の一方の主面に、この貫通孔3の形成された無機シート1aを当接させ、前記金属シート2の他方の主面に無垢の無機シート1bを当接し、位置合わせをして、加圧積層し、凹部を有する積層成形体4を作製する。
【0067】
また、本発明においては、一方の無機シート1aと他方の無機シート1bとが同質であることが望ましく、金属シート2を介して設けられた両面の無機シート1を同質の材質から形成することにより、金属シート2を両面から均一に拘束することが可能となり、同時焼成時に発生する反りが抑制できる。
【0068】
この積層成形体4を、1200〜1700℃の非酸化性雰囲気中で焼成して、セラミック回路基板39を作製する。また、金属シート2に含まれる金属成分の酸化を防止するために、焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素、あるいは窒素と水素の混合雰囲気を用いることが望ましい。なお、この雰囲気は所望により、アルゴンガス等の不活性ガスを混入してもよい。
【0069】
また、同時焼成時において、積層成形体4にセッターを介して、Moメッシュ等で荷重を加えながら焼成を行うことで、セラミック回路基板39の反りを抑制することが出来る。
【0070】
尚、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図3に示すように、無機シート1cに金属シート2を金型同時打ち抜き法等で埋め込んで作製された積層成形体4を用いても良い。
【0071】
次に、セラミック回路基板39およびそれを用いた電気回路モジュールについて実施例を用いて具体的に説明する。
【0072】
【実施例】
(無機シート作製)
Al2O3製セラミック基板33用の無機シート1として、酸化アルミニウム粉末(平均粒径1.8μm)を91.5質量%と、5質量%のMnO2、3質量%のSiO2、0.5質量%のMgOを混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0073】
また、AlN製セラミック基板33用の無機シート1として、窒化アルミニウムを90.0質量%と、8.0質量%の酸化エルビウム(Er2O3)、2.0質量%の酸化ストロンチウム(SrO)を混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0074】
また、Si3N4製セラミック基板33用の無機シート1として、平均粒径が1.2μm、酸素量が1.3質量%、α率93%の直接窒化法により製造された窒化ケイ素原料粉末を84.9モル%と、7.5モル%のEr2O3、7.5モル%のMgO、Al2O3を0.01モル%以下となる量で配合して、成形用バインダとしてアクリル樹脂バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0075】
また、ZrO2製セラミック基板33用の無機シートとして、平均粒径が0.5μmのZrO2粉末97モル%に、3モル%のY2O3粉末を混合した後、さらに、成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダを、溶媒としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0076】
次に、これらのスラリーを用いて、ドクターブレード法によって4種の無機シート1を作製した。なお、これらの無機シート1は焼成後に表1に示す厚みになるように調整した。
【0077】
(金属シート作製)
銅−タングステン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が3μmの銅粉末50体積%に、平均粒径が0.7μmのタングステン粉末を50体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0078】
また、タングステン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が1.8μmのタングステン粉末90体積%に、Al2O3粉末を10体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0079】
また、モリブデン製金属回路板31用の金属シート2として平均粒径が2.5μmのモリブデン粉末90体積%に、Al2O3粉末を10体積%、成形用有機樹脂としてアクリル系バインダを2質量部、溶剤としてトルエンを添加し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。
【0080】
次に、これらのスラリーを用いてドクターブレード法によって、3種の金属シート2を作製した。なお、これらの金属シート2は焼成後に表1に示す厚みになるように調整した。
【0081】
(積層成形体作製)
次に、4種の無機シート1aに対して金型プレス装置によって、中央部に15mm角の大きさの貫通穴3を形成した。
【0082】
次に、貫通穴3を形成した4種の無機シート1aと、無機シート1bの一方の主面に、密着液を塗布し、4種の金属シート2の一方の面に無機シート1aの密着液を塗布した面を当接させ、金属シート2の他方の面に無機シート1bの密着液を塗布した面を当接させて、表1の組み合わせになるように積層成形体4を作製し、さらに、この積層成形体4を、60℃に加熱して、900MPaの圧力を印加した。
【0083】
次に、この積層成形体4を還元雰囲気中で、表1に示す温度で1時間保持して同時焼成した。
【0084】
(セラミック回路基板評価)
次に、金属回路板31の一部が露出するように貫通した凹部37に、Sn−Pb共晶半田ペーストを塗布し、半導体素子35を当接させた。
【0085】
次に、300℃、30分の条件でリフローし、半導体素子35をセラミック回路基板39のセラミック基板33aの凹部37から露出した金属回路板31に接合した。
【0086】
次に、このセラミック回路基板39に搭載された半導体素子35に電流制御用配線を接続させ、電流用配線を半導体素子35と金属回路板31に接続させ、半導体素子35の搭載後にセラミック基板33と半導体素子35の割れの有無を確認し、半導体素子35の搭載後の不良率を表1に示した。
【0087】
また、セラミック回路基板39の反りと熱抵抗を測定し、表1に示した。
【0088】
また、金属回路板31の気孔率は、金属回路板31に接合されるセラミック基板33を研磨して、除去した後、その一部を粉砕し、理論密度を求め、残部を用いてアルキメデス法により比重を測定し、気孔率を算出した。また、セラミック基板33の気孔率は、他方のセラミック基板33と金属回路板31を研磨して、除去した後、その一部を粉砕し、理論密度を求め、残部を用いてアルキメデス法により比重を測定し、気孔率を算出した。
【0089】
なお、セラミック回路基板39の反りは、セラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの二つの対角を結ぶ線上を、表面粗さ計を用いてRmax値を測定し、その平均値を反りの値とした。表1で、反り測定値が0より小さいものはセラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの中央部がへこんでいることを示し、反り測定値が0より大きいものはセラミック回路基板39の半導体素子35を搭載しない側のセラミック基板33bの中央部が盛り上がっていることを示している。
【0090】
なお、熱抵抗の測定は、半導体素子35に電流を流し、発熱させ、半導体素子35の温度に敏感なパラメータの温度依存データから、動作時の半導体素子35の温度を算出して熱抵抗を計算するTSP法(Temperature sensitive parameter method)を用いて行った。その結果を表1に示した。
【0091】
また、金属シート2単体を焼成し、得られた気孔率2%の金属板を金属回路板31として用い、セラミック基板33に気孔率が0.5〜12%のAl2O3製基板を用いた試料No.26〜29と、気孔率が0%の銅−タングステン金属回路板31と、セラミック基板33aとして気孔率が6%のAl2O3製セラミック基板と、気孔率が5%のZrO2製セラミック基板33bを用いて作製した試料No.30では、それぞれのセラミックス基板33と金属回路板31とを活性金属法により接合し、セラミック回路基板39を作製した。
【0092】
また、比較のために、金属回路板31の片面のみにセラミック基板33aを活性金属法により接合した回路基板(試料No.31)、金属回路板31の片面のみにセラミック基板33bを活性金属法により接合した回路基板(試料No.32)を作製した。それぞれ上記と同様に半導体素子35搭載時の不良品個数、反り、熱抵抗を求め、その結果も併せて表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1の結果から分かるように、本発明の範囲外である金属回路板31と半導体素子35搭載側のみにセラミック基板33aを設けた試料No.31のセラミック回路基板39は、金属回路板31を十分に拘束出来ず、反りが非常に大きくなり、半導体素子35搭載時の不良率が100%となり、非常に高くなった。
【0095】
また、本発明の範囲外である金属回路板31と、半導体素子35搭載側と反対側のみにセラミック基板33bを設けた試料No.32のセラミック回路基板39は、金属回路板31を十分に拘束出来ず反りが非常に大きくなり、特に半導体素子35搭載側のセラミック基板33aが無いため、金属回路板31の熱膨張が拘束されずに、半導体素子35搭載時の不良率が100%となり、極端に高くなった。
【0096】
なお、試料No.31、32では良品が得られず、熱抵抗は測定できなかった。
【0097】
また、直接接合法により作製し、気孔率が0%の銅−タングステン金属板と、セラミック基板33aとして気孔率が6%のAl2O3製セラミック基板と、気孔率が5%のZrO2製セラミック基板33bを用いて作製した本発明の範囲外の試料No.30では、半導体素子35の搭載時の不良率が11%と極端に高くなった。
【0098】
これに対して、金属回路板31の両面にセラミック基板33を設け、半導体素子35搭載面側のセラミック基板33aに金属回路板31が露出するような凹部37を形成して、半導体素子35の搭載を可能にするとともに、金属回路板31の熱膨張及び熱収縮を両面から拘束する構造とした本発明のセラミック回路基板39(試料No.1〜28)は、熱応力による反り、及び熱抵抗がともに小さく、反りが50μm以下で、且つ熱抵抗が2.33℃/W以下という優れた特性を有している。このため、半導体素子35搭載時の不良品がいずれも4%以下であり、放熱性にも優れていることがわかる。
【0099】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、金属回路板31の気孔率を1.5〜5.0%の範囲で変化させた試料No.1〜5では、金属回路板31の気孔率が3.0%以上の試料で、半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。また、反りも30μm以下となった。
【0100】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、セラミック基板33の気孔率を8〜12%の範囲で変化させた試料No.6、7において、セラミック基板33の気孔率が12%の試料No.6では、セラミック基板33の収縮が不十分な為、同時焼成時に反りが発生し、半導体素子35の搭載時に2%の不良が発生している。また、セラミック基板33の気孔率が8%の試料No.7では半導体素子35の搭載時の半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。
【0101】
また、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを0.3mmとし、金属回路板31の厚みを0.05〜2mmの範囲で変化させた試料No.8〜11においては、金属回路板31の厚みが0.1mm未満の試料No.8では、不良は発生していないものの、他の試料に比べ、熱抵抗が1.34℃/Wと若干高くなっている。また、金属回路板31とセラミック基板33との厚みの比が5を超える試料No.11では、熱応力が大きくなるために、若干ではあるが、半導体素子35搭載時に不良が発生している。
【0102】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと反対側のセラミック基板33bの厚みを同じにして、0.05〜1.5mmの範囲で変化させた試料No.12〜15では、セラミック基板33の厚みが0.1mm以上の試料で半導体素子35搭載時の不良率が0%となり、高い歩留まりを達成できた。また、セラミック基板33の厚みが0.05mmの試料No.12は同時焼成において金属回路板31を十分拘束することが出来ず、そりが大きくなった為、ヒートシンクベース41との密着性が低下し、熱拡散が効率よく行えず熱抵抗が上昇した。
【0103】
また、金属回路板31の厚みを1.5mmとし、半導体素子35搭載側のセラミック基板33aと、反対側のセラミック基板33bの厚みを変化させた試料No.16〜19では、片側のセラミック基板33aの厚みと、他方のセラミック基板33bの厚みの比が0.3〜3倍の範囲を超える試料No.17、19では1%の不良が発生したのに対して、片側のセラミック基板33aの厚みと他方のセラミック基板33bの厚みの比が0.3〜3倍の範囲内の試料No.16、18では、半導体素子35搭載時の不良率が0%になり、高い歩留まりを達成できた。
【0104】
なお、以上説明した試料No.1〜19は、Al2O3製のセラミック基板33とCu/W製の金属回路板31を組み合わせた例である。
【0105】
セラミック基板33として、Al2O3、Si3N4、AlN、ZrO2を用い、金属回路板31として、Cu/W、W、Moを用いた試料No.20〜25においても、低い不良率が達成された。
【0106】
なお、両面のセラミック基板33を異なる材質とした試料No.23では、同じ材質を用いた場合に比べ、不良率が4%となり、不良率が増加する傾向にあるが、それぞれの厚さを適宜、調整することで、不良率は減少させられるものと推測される。
【0107】
また、セラミック基板33の材質に焼成温度1400℃以上の材質を用いた試料No.20〜22、24、25においては、試料No.20〜22、24では、WにAl2O3粉末を加えた金属シート2を用い、試料No.25では、MoにAl2O3粉末を加えた金属シート2を用いて、1600℃の焼成温度で同時焼成を行った。その結果、熱抵抗は若干高くなったものの、半導体素子35搭載時の不良率が0%になり、高い歩留まりを達成できた。
【0108】
また、セラミック基板33の気孔率を変化させた試料No.26〜29では、気孔率が2%の銅−タングステン金属回路板31と、セラミック基板33として気孔率が10%以下のAl2O3製セラミック基板33を用いた試料No.26〜28では熱抵抗、反りがともに小さく良好な結果が得られた。しかし、セラミック基板33として気孔率が12%のAl2O3製基板を用いた試料No.29ではセラミック基板33の熱伝導が悪くなった為、実用上問題はないものの、発熱時の熱拡散を効率よく行えず、1.11℃/Wと若干、熱抵抗が高くなった。
【0109】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明のセラミック回路基板は、金属回路板の両面をセラミック基板とし、電気素子搭載面側のセラミック基板に金属回路板が露出するような凹部を形成して、電気素子の搭載を可能にするとともに、金属回路板の熱膨張を両面から拘束することから、セラミック基板と金属回路板を同時焼成する際に、金属回路板の表裏での熱応力の発生を抑制しながらバランスを保ち、反りの発生を抑えることができ、同時焼成時に反りを生じることなく、さらにセラミック基板の亀裂の発生を防ぐことが出来る。
【0110】
また、セラミック回路基板に電気素子を半田などで実装する際にも、中央の金属回路板が両面のセラミック基板によって拘束されているので、反りの発生や、繰返しの熱サイクルによる電気素子や接合部に亀裂が入ることなく使用することが出来る。さらに、金属回路板やセラミック基板に気孔を導入することでこれらの部材のヤング率が下がり、電気素子搭載時の不良率が減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック回路基板及び電気回路モジュールを示す断面図である。
【図2】本発明の積層成形体を示す断面図である。
【図3】本発明の他の形態の積層成形体を示す断面図である。
【図4】従来のセラミック回路基板を示す断面図である。
【図5】従来のセラミック回路基板の他の形態を示す断面図である。
【図6】従来のセラミック回路基板とヒートシンクベースとを接続した形態を示す断面図である。
【符号の説明】
31・・・金属回路板
33・・・セラミック基板
35・・・電気素子
37・・・凹部
39・・・セラミック回路基板
41・・・ヒートシンクベース
Claims (15)
- 金属回路板の両面にセラミック基板を接合してなり、一方のセラミック基板に前記金属回路板の一部が露出するような凹部を形成するとともに、該凹部に露出した前記金属回路板に電気素子が搭載されるセラミック回路基板において、前記金属回路板が気孔を有することを特徴とするセラミック回路基板。
- セラミック基板が気孔を有することを特徴とする請求項1に記載のセラミック回路基板。
- 金属回路板の気孔率が2%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック回路基板。
- セラミック基板の気孔率が0.5〜10%であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- 金属回路板の厚さが、0.1mm以上であって、且つセラミック基板の厚さの5倍以下であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- 一方のセラミック基板の厚さが、0.1mm以上であって、且つ他方のセラミック基板の0.3〜3倍であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- セラミック基板が、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアから選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- 一方のセラミック基板と他方のセラミック基板とが同質であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- 金属回路板が、銅、タングステン、モリブテンおよびそれらの合金の少なくとも1種から成ることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれかに記載のセラミック回路基板。
- 金属粉末を含有する金属シートの一方の主面に、無機粉末を含有する第一の無機シートを当接させ、他方の主面に貫通孔が形成された第二の無機シートを積層して積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を同時焼成する工程とを具備し、請求項1乃至9のうちいずれかに記載のセラミック回路基板を作製することを特徴とするセラミック回路基板の製造方法。
- 金属シートに含有される金属粉末の平均粒径が0.5μm以上であることを特徴とする請求項10に記載のセラミック回路基板の製造方法。
- 金属シートが、少なくとも平均粒径の異なる2種類の金属粉末を含有することを特徴とする請求項10又は11記載のセラミック回路基板の製造方法。
- 積層成形体に、積層方向に荷重を加えながら焼成を行うことを特徴とする請求項10乃至12のうちいずれかに記載のセラミック回路基板の製造方法。
- 第一の無機シートと第二の無機シートとが同質であることを特徴とする請求項10乃至13のうちいずれかに記載のセラミック回路基板の製造方法。
- 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のセラミック回路基板において、電気素子が搭載される反対側の面のセラミック基板にヒートシンクベースを接合したことを特徴とする電気回路モジュール。
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