JP2005019663A - 発光装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光装置から放出される光出力の高い発光装置を提供すること、発光素子から放出される熱や光による封止樹脂の劣化を防止した発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】青色発光の発光素子1が載置されたテーパー形状の凹部を有する基体5の凹部5aを、YAG(イットリウム・アルミニウム酸化物)の蛍光体30が含有された第1の樹脂10で被覆しており、その第1の樹脂10の表面を、第2の樹脂20で被覆している。屈折率差を利用して、発光素子1から放出された光は、第1の樹脂10、第2の樹脂20、気体層、窓部7を効率よく透過する。これにより、発光素子1からの光との上面から放出される正面輝度を高くした正面からの青色光と、発光素子1の側面から放出され蛍光体により励起、発光された側面部5cからの黄色光と、の混色光により白色に発光する発光装置を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶のバックライト、照明光源、各種インジケーター、ディスプレイ及び交通信号灯などに利用可能な発光装置に関する。特に、屋外での使用が可能であり、信頼性が高く、経時変化の少ない発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発光素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、発光素子は、半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、半導体発光素子は、各種の光源として利用されている。近年、赤色光、緑色光を発光する発光素子だけでなく、青色光が高輝度に発光可能な、窒化物半導体(InGaAl1−x−yN、0≦x≦1、0≦y≦1)を利用した発光素子が開発されている。
【0003】
例えば、発光素子を用いた発光装置として、発光素子を固定したステム上に、該発光素子を包むように透明樹脂をレンズ状にモールドし、このモールド部を透明ガラスをもつ金属製罐で密封した発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この透光性樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂を用い、レンズ状にモールドされている。
【0004】
また、近年、発光素子の光の一部を蛍光体により波長変換し、当該波長変換された光と波長変換されない発光素子の光とを混合して放出することにより、発光素子の光と異なる発光色を発光する発光装置が開発されている。特に、白色系に発光する発光装置は、一般照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等、幅広い分野で使用可能であるため、特に白色系の発光装置に使用される蛍光体が求められている。白色の発光装置の発光色は、光の混色の原理によって得られる。発光素子から放出された青色光は、蛍光体層の中へ入射した後、層内で何回かの吸収と散乱を繰り返した後、外部へ放出される。一方、蛍光体に吸収された青色光は励起源として働き、黄色の蛍光を発する。この黄色光と青色光が補色の関係にあることより混ぜ合わされて人間の目には白色として見える。これより、青色発光素子を用いた白色の発光装置が製造されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭52−11784号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図12に示すように、樹脂中に蛍光体を均一に混合して発光素子上に塗布した場合、発光素子の上面部分の樹脂の膜厚が厚く、発光素子の上面部分から放出される光は、蛍光体に吸収されるため、発光装置の正面輝度が低い。そのため、発光強度が低いという問題が生じている。
【0007】
また、エポキシ系樹脂等の封止樹脂は、発光素子からの強い光や熱に弱いという性質を有する。特に、短波長の発光が可能な窒化物半導体素子を用いた発光素子の場合、赤色や緑色に比べてエネルギーが高いために、封止樹脂が発光素子の周辺から次第に劣化、着色し、その着色部が発光素子からの光を吸収してしまい、光取り出し効率の低下が生じている。また、駆動時には発光素子の温度が上昇し、発光素子からの熱によっても封止樹脂の劣化や着色が生じ、特に小型の発光装置は、放熱性の問題から熱による影響を受けやすい。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の発明では、ステムに固定された発光素子を透明ガラスをもつ金属製罐で密封するため、発光素子から発生する熱が、該金属製罐内に蓄熱される。この発光素子から発生した熱及び金属製罐内に蓄積される熱とにより、発光素子を包み込む透明樹脂が劣化するという問題が生じている。
【0009】
そこで、本発明は、発光装置から放出される光出力の高い発光装置を提供することを目的とする。また、発光素子から放出される熱や光による封止樹脂の劣化を防止した発光装置を提供することを目的とする。さらに、該発光装置の簡易な製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、を有する発光装置であって、該発光素子の少なくとも一部は、透光性の第1の樹脂で被覆されており、該第1の樹脂は、蛍光体が含有されており、該第1の樹脂の少なくとも一部は、第2の樹脂で被覆されていることを特徴とする発光装置に関する。これにより、高い発光強度を有する発光装置を提供することができる。発光素子から放出された光は、第1の樹脂を透過する。該第1の樹脂を透過した光は、第2の樹脂を透過する。屈折率の関係から、第1の樹脂のみ光が透過した場合よりも、第1の樹脂及び第2の樹脂と光が透過した場合の方が、光取り出し効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、一般的にシリコーンレジンは、他のシリコーン(オイル・ゴム)に比べて耐熱性が高いが、樹脂を厚くすると(例えば200μm以上)、クラック等が生じるという問題が生じていた。また、レジンには、ワニス(溶剤を含むもの)として使用することが多く、溶剤揮発による気泡発生、および硬化収縮によって、ワイヤー断線等の問題もある。加えて、溶剤が揮発しきっていない場合、発光素子、ワイヤー、発光装置を構成する部材全体へ悪影響を及ぼすこと等の問題から、発光素子の封止樹脂には、シリコーンレジン(特にシリコーンワニス)はあまり使用されていない。これに対し、本発明は、蛍光体が含有されているシリコーン等の第1の樹脂を用いて発光素子を被覆しているため、駆動による発光素子の発熱、気密封止による該熱の蓄積及び発光装置周辺の高温雰囲気などによって、200℃以上250℃以下の高温に長時間(例えば100時間)さらしても、熱による劣化を生じない。また、クラックなどの問題も生じず、気泡も発生しない。これは、蛍光体等の無機物をシリコーンワニスに加えることにより、樹脂中の溶剤が揮発しやすくなり、樹脂中に溶剤が残留しなくなるためと考えられる。さらに、ガラスキャップなどの蓋体で気密封止をすることで、ワイヤーが露見されることによるワイヤー保護の問題も解消される。
【0013】
さらに、第2の樹脂は、発光素子と直接接触しないため、発光素子で発生した熱は、直接第2の樹脂に伝達されず、ワニス等より耐熱性に乏しい樹脂を用いても熱による劣化が生じない。つまり、一般に樹脂は金属に比べ、熱抵抗が高いため、第1の樹脂によって第2の樹脂まで熱が伝達されにくいため、熱がダイスの共晶部位を伝って放熱されているからである。
【0014】
なお、発光素子の光放出部分に樹脂を用いない場合は、発光素子から放出された光が、気密封止された空気中に放出される。このとき、発光素子に対する空気の屈折率が低いため、発光素子と空気との界面で全反射が起こり、空気中に放出されない光が存在する。これにより、発光素子からの放出される光の取り出し効率が低下する。よって、発光素子の光放出部分に空気よりも屈折率の高い樹脂を被覆して、光取り出し効率の向上を図ることが必要である。
【0015】
本発明は、発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、該基体と該蓋体との間にある、気密封止される気体層と、を有する発光装置であって、該発光素子の少なくとも一部は、透光性の第1の樹脂で被覆されており、該第1の樹脂は、蛍光体が含有されており、該第1の樹脂の少なくとも一部は、第2の樹脂で被覆されており、該発光素子から放出される光は、該第1の樹脂、該第2の樹脂、該気体層及び該蓋体の順に外部に放出されることを特徴とする発光装置に関する。このように、四層構造にすることにより、屈折率の差を利用して、光取り出し効率の向上を図ることができる。例えば、(A)発光素子から放出された光が、屈折率のわずかに低い第1の樹脂中を透過し、該第1の樹脂よりも屈折率の低い第2の樹脂を透過し、該第2の樹脂よりも屈折率の低い気体層を透過させた方が、(B)発光素子から放出された光が、屈折率のわずかに低い第1の樹脂中を透過し、該第1の樹脂よりも屈折率の低い第2の樹脂を透過させた場合よりも、高い光取り出し効率を有する。
【0016】
前記基体は、凹部形状を形成しており、該凹部は、底面部と、該底面から延びる側面部と、を有しており、該凹部は、開口部分の開口面積が、底面部分の底面積よりも大きく、該凹部の底面部は、前記発光素子が載置されていることが好ましい。上記構成にすることにより、例えば、凹部の開口部分の形状が、直径の大きい方が開口側である円錐台の形状を成している場合や、凹部の形状が、半球状の形状を成している場合は、発光素子から放出される光の取り出し効率の向上を図ることができる。また、光の指向特性の制御を図ることができる。凹部の開口部分の形状を、広口にすることにより、発光素子から放出された光が、該凹部の側面部に照射され、その照射された光が外部に放出するからである。
【0017】
前記第1の樹脂は、前記凹部内で前記凹部形状に符号していることが好ましい。上記構成にすることにより、発光素子の上面から放出される発光素子の正面輝度を高め、発光装置全体としての色調バラツキを低減することができる。これは、発光素子の上面に蛍光体を薄く塗布することにより、該蛍光体に吸収される発光素子からの光量を低減して、発光素子の正面輝度を高めることによる。また、蛍光体が含有されている樹脂を用いることにより、所望の色調を有する発光装置を提供することができる。また、蛍光体の含有量を多くすることにより、少量の樹脂で所望の色調に調整することができる。
【0018】
前記第1の樹脂は、体積固体百分率が70%以下であることが好ましい。また、揮発性溶剤の含有率調整によって、蛍光体等が沈降しない下限値に近い粘度にまで下げた状態が好ましい。加えて第1の樹脂の膜厚は、発光素子上面から数μm〜数十μm程度までとすることが好ましい。この状態で、有機溶剤を揮発させると、発光素子表面上部に蛍光体等はほとんど無い状態であり、側面に蛍光体等が多く蓄積された状態となる。これにより、発光素子表面に均一に蛍光体を塗布することができ、色調ばらつきを低減することができる。また、凹部を有する基体を用いた場合、第1及び第2の樹脂の硬化に伴い、樹脂の這い上がりを防止することができる。また、凹部を有する基体を用いた場合、第1の樹脂の硬化に伴い、凹部の中央付近が凹む。その中央付近の凹み部分の下側に発光素子を載置すると、その発光素子の上面は第1の樹脂が薄肉となっているから、発光素子の上面から放出された光は第1の樹脂中に含まれる蛍光体にほとんど吸収されず、強い光を上方に放出する。それに対し、凹部側面部に蛍光体が含まれている第1の樹脂が塗布される。発光素子の側面から放出された光は、この第1の樹脂中に含まれる蛍光体に吸収され、凹部側面部に反射して発光素子の上方へと蛍光体からの光が放出される。この発光素子の上面から放出された光と、凹部側面部の蛍光体から放出された光と、の混色光により、輝度の高い、所望の色調を有する発光装置を容易に造ることができる。
【0019】
前記第1の樹脂は、一般に、接触角が60°以下であることが好ましい。接触角が60°より大きいと、発光素子を載置した基体に樹脂を被覆する際、発光素子周囲へ樹脂が回り込み難く、所定の位置に第1の樹脂を配置することが困難となる。これに対し、接触角が60°以下になると、発光素子周囲へ樹脂が回り込みやすくなり、所定の位置に第1の樹脂を配置することができる。但し、接触角以外にも、樹脂の粘度、発光素子などの部材への濡れ性、樹脂の塗布量、樹脂の塗布方法などの要素も加わるため、これらの種々の要素を変更することにより、上記問題を解決することができるため、接触角が60°より大きすぎると使用できなくなるものではない。
【0020】
前記蛍光体は、前記第1の樹脂中に均一に分散されているが好ましい。これにより、発光装置から放出される光の色調ばらつきを低減することができる。
【0021】
前記凹部は、側面部に反射面が形成されていることが好ましい。これにより、発光素子から放出された光が、該凹部の側面部に照射され、その照射された光の大部分が外部に放出するからである。
【0022】
前記発光装置は、前記基体の凹部の側面部から前記基体の凹部の底面部並びに前記発光素子の側面及び上面までを、前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂のいずれかにより被覆されていることが好ましい。発光素子の発光部分を被覆することにより、発光素子と第1及び第2の樹脂との界面での全反射を抑制することができるからである。また、発光素子を被覆することにより、発光素子の保護を図ることができる。さらに、発光素子から離れた位置に蛍光体を配置すると、色調ばらつきが生じやすいが、本発明では、発光素子を被覆している第1の樹脂に蛍光体が含有されているため、色調ばらつきを低減することができる。
【0023】
前記発光装置は、前記発光素子の周囲部分の前記基体の凹部の底面部における前記第1の樹脂の膜厚よりも、前記発光素子の上面における前記第1の樹脂の膜厚の方が薄いことが好ましい。これにより、発光素子の上面から放出する光(例えば、青色光)と、発光素子の側面から放出する光により波長変換された蛍光体からの光(例えば、黄色光)との混色により所望の色調(例えば、白色光)を有する発光装置を提供することができる。特に、発光素子の上面から放出する光の発光強度を高めることにより、発光装置からの光出力を高めることができる。また、蛍光体からの光は、基体の凹部の側面部で反射され、発光素子からの光と混色することにより、さらに色調ばらつきを低減することができる。一方、発光素子の上面のみに、樹脂を配置させた場合、蛍光体の分散の程度に応じて、色調がばらつきやすくなるため、均一な色調を有する発光装置を提供することが難しい。
【0024】
前記発光装置は、前記発光素子の周囲部分における前記第1の樹脂の上面が、前記発光素子上における前記第1の樹脂の上面と、ほぼ同一の高さであることが好ましい。これにより、光取り出し効率の向上を図ることができる。
【0025】
前記発光装置は、前記基体の凹部の底面側における前記樹脂の上面は、前記基体の凹部の底面部に対してほぼ平行な平面部分を有していることが好ましい。平面形状を有することにより、光取り出し効率の向上を図ることができる。また、均一に光を放出することができる。特に、第1の樹脂の表面が、基体の凹部の形状に応じて、平面形状を有する底面部と、側面部とを有する部分とを有し、凹部内から放出される光の均一化を図ることができる。
【0026】
前記発光装置は、前記基体の凹部の側面部を前記第1の樹脂がほぼ均一の厚さで被覆されていることが好ましい。発光素子から放出される光の一部は、基体の凹部の側面部に照射される。このため、該側面部に均一な厚さの被膜を形成しておくことにより、発光素子から放出される光が第1の樹脂中の蛍光体に照射され、該側面部から均一な蛍光体からの光を放出することができる。これにより、発光装置の光の均質化を図ることができる。また、樹脂が側面部まで延びているため、第1の樹脂の乾燥、加熱による硬化の際に、第1の樹脂の有機溶剤を効率的に飛散することができる。
【0027】
前記第2の樹脂は、前記蛍光体と同一若しくは異なる蛍光体や拡散剤などのフィラー等が含有されていてもよい。紫外線を発光する発光素子を用いて、蛍光体を発光させる場合において、第1の樹脂中に含有される蛍光体と、第2の樹脂中に含有される蛍光体が同一のときは、発光素子からの放出される光を漏らすことなく、効果的に利用することができる。また、第1の樹脂中に含有される蛍光体(例えば、青色発光)と、第2の樹脂中に含有される蛍光体(例えば、黄色発光)が異なるときは、これらの蛍光体のみによって、色味を決定することができる。可視光に発光する発光素子を用いる場合も、同様である。特に、青色に発光する発光素子、第1の樹脂中に含有される蛍光体(例えば、赤色発光)と、第2の樹脂中に含有される蛍光体(例えば、黄色発光)が異なるときは、これらの蛍光体のみによって、演色性に優れ、発光強度の高い発光装置を提供することができる。
【0028】
前記凹部の上面は、前記第2の樹脂により、前記凹部の底面部に対して、ほぼ平行な平面が形成されていることが好ましい。これにより、指向特性の調整が容易な発光装置を提供することができる。
【0029】
本発明は、発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、を有する発光装置の製造方法であって、基体に発光素子を載置する工程と、該発光素子の少なくとも一部を、蛍光体が含有された第1の樹脂で被覆する工程と、該第1の樹脂の上に、さらに第2の樹脂で被覆する工程と、該第1の樹脂及び第2の樹脂を硬化する工程と、該発光素子を気密封止する蓋体を該基板に設ける工程と、を有する発光装置の製造方法に関する。これにより、光出力の高い発光装置を容易に製造することができる。
【0030】
本発明は、発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、を有する発光装置の製造方法であって、基体に発光素子を載置する工程と、該発光素子の少なくとも一部を、蛍光体が含有された第1の樹脂で被覆する工程と、該第1の樹脂を乾燥する工程と、該第1の樹脂の上に、さらに第2の樹脂で被覆する工程と、該第1の樹脂及び第2の樹脂を硬化する工程と、該発光素子を気密封止する蓋体を該基板に設ける工程と、を有する発光装置の製造方法に関する。第1の樹脂を乾燥した後に、第2の樹脂を被覆するため、第1の樹脂を所定の形状に保持することができる。第1の樹脂には蛍光体が含有されているため、第1の樹脂の形状によって、色調バラツキが生ずるからである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る発光装置及びその製造方法を、実施の形態及び実施例を用いて説明する。だたし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。
【0032】
図1(a)は、本発明の実施の形態にかかる発光装置を示す概略平面図である。図1(b)は、本発明の実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。図2は、本発明の実施の形態にかかる発光装置における基体の凹部を拡大した概略断面図である。以下、図面を参照にして、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0033】
本発明にかかる発光装置100は、発光素子1と、該発光素子1を載置する基体5と、該発光素子1を被覆する第1の樹脂10と、第1の樹脂を被覆する第2の樹脂20と、該発光素子1を気密封止する、該基体5に設けられる蓋体8と、を有する。蓋体8は、発光素子1からの光を放出するため、透光性の窓部7と、該窓部7を嵌合したリッド6とを有する。基体5は金属からなり、中央部に発光素子1を収納するための凹部5aを有する。また、前記凹部5aの周辺部であるベース部は、厚さ方向に貫通された貫通孔を2つ有し、それぞれの貫通孔は前記凹部5aを挟んで対向している。該貫通孔内には、絶縁部材3である硬質ガラスを介して正及び負のリード電極2がそれぞれ挿入されている。
【0034】
尚、前記リード電極2の両端部は前記ベース部表面から突出しており、且つ前記リード電極2の底面は前記凹部5aの底面と略同一平面上に位置している。本明細書では、前記基体5の凹部5a開口方向の各部材表面を主面とし、該主面と対向する反対側の表面を背面と表現する。
【0035】
このように構成された金属製基体5の主面側において、前記基体5の凹部5a内に発光素子1を配置し、前記発光素子1の各電極をワイヤー4にて各リード電極2と電気的に接続する。このようにして導電可能とされた基体5の主面側を、透光性窓部7とリッド6とを有する蓋体8にて気密封止している。
【0036】
凹部5a内に載置された発光素子1は、第1の樹脂10で被覆されている。第1の樹脂10は、発光素子が載置されている凹部5aの底面部5bから凹部5aの側面部5cまで延びており、該凹部5aの形状に符号する凹部5aの形状を成している。この凹部5aの形状に符号するとは、物理的意味で凹部5aと同じ形状を有するという意味ではなく、凹部5aの形状に沿って、凹部5aの内側に凹部5aとほぼ同様の形状を形成する意味であり、凹部5aの形状がテーパー状であれば、凹部5aの内側に沿って第1の樹脂10がテーパー状を形成することを意味する。
【0037】
この第1の樹脂10は、凹部5a内にポッティングする方法や、凹部5aの側面部5cから流し込む方法や、スプレー式に第1の樹脂10を吹き飛ばす方法などを用いることができる。このとき樹脂の粘度や接触角などを考慮して、樹脂を選択する。本発明では、第1の樹脂10を凹部5a内に注入する方法は問わないが、該第1の樹脂10を乾燥、加熱させて、第1の樹脂10中の有機溶剤を揮発させて硬化させる。このとき、体積収縮率の大きい樹脂を用いて、凹部5aの中央部を凹ませている。これにより第1の樹脂10中に有機溶剤が残存しないようにしている。特に、第1の樹脂10中に蛍光体30を混入することにより、有機溶剤の揮発を促進することができる。蛍光体30の混入量により有機溶剤の揮発度合いがことなるため、蛍光体30の混入量を適宜調整する。特に、蛍光体30の混入量は、第1の樹脂10に対して1〜50重量%が好ましく、特に15〜25重量%が好ましい。ここで、第1の樹脂10を凹部5aの符号する形状を形成するのは、有機溶剤や水分を残留させないだけでなく、凹部5aの中央部の凹み部分の下側に発光素子1を載置して、発光装置100の正面から放出される光の混色光による色調バラツキの調整も図っている。つまり、例えば、凹部5aの中央部の凹み部分の下側に発光素子1を載置して、該発光素子1の上面から放出される光により、青色光を主として放出させ、該発光素子1の側面から放出される光により、第1の樹脂10中の蛍光体30に吸収及び散乱させ凹部5aの側面部5cにて反射させる光により、黄色光を主として放出させ、発光装置100の正面で、混色光となり、外部に白色光として放出される。図12に示すように、従来は、発光素子1の上面部分に蛍光体30が多く塗布されていたため、該上面から放出される青色光が不足して、その結果、全体として、発光装置100からの光出力が低下していた。そこで二つの方法が考えられる。一つ目は、発光素子1の上面から放出される光を多くするため、発光素子の上面を被覆せず、発光素子の側面部のみ蛍光体を含有した樹脂を配置することも考えられる。しかし、発光素子が露出してしまい、発光素子の保護が十分にされないという問題がある。二つ目は、発光素子の上面を被覆するため、発光素子の側面部のみ蛍光体を含有した樹脂を配置して、その後、発光素子の上面を蛍光体が含有されていない樹脂をポッティングするなどして、発光素子を被覆することも考えられる。しかし、第1の樹脂を二段階に塗布する必要があるため、製造が困難となる。このように、第1の樹脂10を発光素子1に載置する際の製造工程の簡易さや、実質的に発光素子1の上面に蛍光体30を配置させないこと、蛍光体30の塗布量、分散性などによる色調バラツキを考慮すると、本発明のように、均一に蛍光体30を分散させた第1の樹脂10を、一回の塗布のみで発光素子1に塗布する製造方法が最も好ましい。また、第1の樹脂10を発光素子1の発光部分に配置することにより、発光素子1からの光の取り出しを高めることができるなどの効果もある。但し、本工程では、発光素子1の上面に蛍光体30がわずかに配置されるが、光取り出し効率を低下させるまでに到っていないことから、実質的には、蛍光体が含有されていない樹脂を配置したのと同じ効果を得ることができる。
【0038】
凹部5a内に載置された発光素子1は、第1の樹脂10で被覆され、さらに、第1の樹脂10の上面を第2の樹脂20で被覆されている。第1の樹脂10を被覆した後、第2の樹脂20を塗布して、第1の樹脂10を被覆している。
【0039】
第2の樹脂20は、第1の樹脂10の凹みを埋めて、該第2の樹脂20の上面に平面形状を形成している。この平面形状は、凹部5aの底面とほぼ平行であることが好ましい。さらに、この平面形状は、凹部5aの側面部5cの上端とほぼ同一平面上であることが光取り出しの観点から好ましい。特に、第1の樹脂10が凹部5aの側面部5cのほぼ全面を被覆して、さらに、第1の樹脂10の全体を第2の樹脂20で被覆することにより、光取り出し効率の向上と、製品毎の色調バラツキを低減することができる。
【0040】
<発光装置100の製造方法>
発光装置100は、以下の製造方法により製造することができる。
【0041】
凹部5aが設けられた基体5に、発光素子1を載置する。基体5には、予めリード電極2が設けられている。発光素子1は、共晶接合やエポキシ樹脂等で基体5の凹部5aの底面部5bに、ダイボンディングする。発光素子1をダイボンディングした後、ワイヤー4を発光素子1の電極部分とリード電極2とをボンディングして、電気的接続をとる。
【0042】
このように形成された発光素子1が載置された基体5の凹部5a内に、予め蛍光体30を均一に分散させた第1の樹脂10を流し込む。この時、第1の樹脂10と凹部5aとの隙間に空気が入らないようにする。空気が入ることにより、色調バラツキや第1の樹脂10と凹部5aとの剥離などが生じるなどの問題が生じるからである。第1の樹脂10を凹部5a内に流し込んだあと、有機溶剤を揮発させる。第1の樹脂10を乾燥することにより、有機溶剤の除去を行うが、その乾燥と同時、若しくは、その乾燥後第2の樹脂と同時に、加熱して、第1の樹脂10を硬化させる。この乾燥、加熱は、徐々に行い、第1の樹脂10中に気泡が発生しないようにする。
【0043】
さらに、第2の樹脂20をポッティング、流し込み、スプレー噴霧等の手段を用いて、第1の樹脂10の表面を被覆する。第2の樹脂20で被覆した後、加熱して、第2の樹脂20を硬化させる。この時、第1の樹脂10も併せて硬化することもできる。第2の樹脂20は、体積収縮率の低い樹脂、例えば、付加型シリコーンなどを用いて、第2の樹脂20の表面を平坦かつ平滑にしている。第2の樹脂20の上面は、凹部5aの最上部とほぼ同じ高さとなるまで、第2の樹脂20を注入しておくことが好ましい。
【0044】
第1の樹脂10を発光素子1に被覆した後、基体5に、気密封止するために、窓部7とリッド6とを有する蓋体8を設ける。例えば、金属製の基体5と、金属製のリッド6とを溶接等行い、気密封止する手段を用いることができる。
【0045】
以上の工程を経ることにより、発光装置100を製造することができる。
【0046】
<異なる実施の形態>
図4は、本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。この実施の形態は、前述の実施の形態と、第1の樹脂10及び第2の樹脂20の配置が異なる以外は、同じである。
【0047】
凹部5a内に載置された発光素子1は、第1の樹脂10で被覆されている。さらに、第1の樹脂10の上面を第2の樹脂20で被覆されている。該第1の樹脂10には、蛍光体30が均一に分散されて含有されている。上述と同様に、第1の樹脂10を塗布して、発光素子1を被覆する。第1の樹脂10を被覆した後、第2の樹脂20を塗布して、第1の樹脂10を被覆している。
【0048】
第1の樹脂10の上面は、凹部5aの底面部5bとほぼ平行な平面形状を形成している。第1の樹脂10は、凹部5aの側面部5cの上端付近まで延びていない。この形状においても、発光素子1上における樹脂10の上面10aの膜厚は、発光素子1の周囲部分における樹脂10の上面10bの膜厚よりも薄いため、発光素子1の上面からの光出力を低下させることなく、外部に取り出すことができる。
【0049】
第2の樹脂20は、さらに、凹部5a内を埋めている。第2の樹脂20の上面は、平面形状を形成している。この平面形状は、凹部5aの底面とほぼ平行であることが好ましい。さらに、この平面形状は、凹部5aの側面部5cの上端とほぼ同一平面上であることが光取り出しの観点から好ましい。特に、凹部5aの底面部5b、第1の樹脂10の上面、第2の樹脂20の上面、及び窓部7の下面は、ほぼ平行な平面形状を形成していることが好ましい。
【0050】
<異なる実施の形態>
図5は、本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。発光装置300は、発光装置100と凹部5a内を除いて、ほぼ同様の構成を採るため、ほぼ同一の構成を採るところは、同符号を用いる。
【0051】
凹部5a内に載置された発光素子1は、第1の樹脂10で被覆されている。さらに、第1の樹脂10の上面を第2の樹脂21で被覆されている。該第1の樹脂10には、蛍光体30が均一に分散されて含有されている。上述と同様に、第1の樹脂10を塗布して、発光素子1を被覆する。第1の樹脂10を被覆した後、第2の樹脂21を塗布して、第1の樹脂10を被覆している。
【0052】
第2の樹脂21は、第1の樹脂10の凹みを埋めて、該第2の樹脂21の上面に該第1の樹脂10の形状に符合する形状を形成している。この第2の樹脂21は、底面部と側面部とから成っており、該底面部は、平面形状をなしていることが好ましい。この平面形状は、凹部5aの底面とほぼ平行であることが好ましい。第2の樹脂21は、第1の樹脂10と、同一系統の材料を用いること好ましいが、異種材料を用いることもできる。同一系統の材料を用いることにより、第1の樹脂10と第2の樹脂21との密着性やなじみをよくすることができるからである。第2の樹脂21は、発光素子1と直接接触しないため、発光素子1で発生した熱は、直接第2の樹脂21に伝達されず、ワニス等により耐熱性に乏しい樹脂を用いても熱による劣化が生じないからである。つまり、一般に樹脂は金属に比べ、熱抵抗が高いため、第1の樹脂によって第2の樹脂まで熱が伝達されにくいため、熱伝達がし易いダイスの共晶部位を伝って放熱されているからである。
【0053】
発光装置300の製造方法は、第2の樹脂21を設ける以外は、発光装置100の製造方法と、ほぼ同様である。
【0054】
発光素子1を載置させた基体5の凹部5a内に、第1の樹脂10を流し込む。第1の樹脂10を乾燥した後、第1の樹脂10の上に第2の樹脂21を流し込む。第2の樹脂21も、第1の樹脂10と第2の樹脂21との界面に気泡が入らないように流し込む。第1の樹脂10は、乾燥後、凹部5aに符合する形状を成している。第2の樹脂21を乾燥する。その後、第1の樹脂10及び第2の樹脂21を加熱して、硬化させる。これにより、第1の樹脂10と第2の樹脂21との界面を無くすることができ、該界面での反射をなくすることができる。この塗布、硬化方法をとることにより、蛍光体30が含有されている第1の樹脂10の上に、蛍光体30が含有されていない第2の樹脂21を設けることができる。第2の樹脂21は、体積収縮率の高い樹脂を用いて、第2の樹脂21の底面部の表面(上面)を平坦かつ平滑にしている。このように、第2の樹脂21も、発光素子1の上面部分を薄くすることで、発光素子1の上面から放出される光を効率よく取り出すことができる。
【0055】
但し、第2の樹脂21は、第1の樹脂10を加熱、硬化した後、第1の樹脂10の上に被覆することができる。これにより、第2の樹脂21を配置する際、第1の樹脂10の歪みや凹みを無くすることができるからである。
【0056】
第2の樹脂21を塗布して硬化した後、蓋体8を基体5に設ける。基体5に取り付けた後、気密封止するため、基体5と蓋体8のリッド6とを溶接によりシールする。
【0057】
以上の工程を経ることにより、発光装置300を製造することができる。
【0058】
<異なる実施の形態>
図6は、本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。発光装置400は、発光装置100と凹部5a内を除いて、ほぼ同様の構成を採るため、ほぼ同一の構成を採るところは、同符号を用いる。
【0059】
凹部5a内に載置された発光素子1は、第1の樹脂10で被覆されている。さらに、第1の樹脂10の上面を第2の樹脂20で被覆されている。該第1の樹脂10には、蛍光体30が均一に分散されて含有されている。第2の樹脂20には、蛍光体31が均一に分散されて含有されている。上述と同様に、第1の樹脂10を塗布して、発光素子1を被覆する。第1の樹脂10を被覆した後、第2の樹脂20を塗布して、第1の樹脂10を被覆している。
【0060】
第2の樹脂20は、第1の樹脂10の凹みを埋めて、該第2の樹脂20の上面に該第1の樹脂10の形状に符合する形状を形成している。この第2の樹脂20は、底面部と側面部とから成っており、該底面部は、平面形状をなしていることが好ましい。この平面形状は、凹部5aの底面とほぼ平行であることが好ましい。第2の樹脂20は、第1の樹脂10と、ワニス以外の樹脂であって同一系統の材料を用いること好ましいが、異種材料を用いることもできる。第2の樹脂20は、体積収縮がほとんど生じない樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
第2の樹脂20中には、蛍光体31が含有されている。第2の樹脂20中に含有されている蛍光体31は、第1の樹脂10に含有されている蛍光体30と同一種類のものでも良いが、異なる種類ものが好ましい。蛍光体を種々変更することにより、多色に発光する発光装置を提供することができるからである。例えば、紫外線を発光する発光素子1を用いる場合、該紫外線により、第1の樹脂10中の蛍光体30が青色に発光し、この青色光により、第2の樹脂20中の蛍光体31が黄色に発光し、これらの混色光により、白色に発光する発光装置400を提供することができる。これにより、発光素子1の主発光波長のバラツキに伴う色調ズレを抑止することができ、蛍光体30、31のみにより、色調を調整することができる。一方、青色を発光する発光素子1を用いる場合、該青色光により、第1の樹脂10中の蛍光体30が黄赤色に発光し、発光素子1の青色光により、第2の樹脂20中の蛍光体31が黄色に発光する場合、これらの混色光により、演色性が改善された、電球色に近い色温度2000〜6000Kの発光装置400を提供することができる。
【0062】
発光装置400の製造方法は、発光装置100の製造方法と、ほぼ同様であるため省略する。
【0063】
以下、本発明の実施形態における各構成について詳述する。
【0064】
<発光素子>
本発明において発光素子1は特に限定されず、赤色系、緑色系に発光する発光素子に限られず、青色系に発光する発光素子も使用することができる。また、これらの可視光に発光する発光素子だけでなく、可視光の短波長領域から紫外線領域で発光する発光素子、例えば360nm近傍の紫外線領域で発光する発光素子も使用することができる。但し、発光装置100に、蛍光体を用いる場合、該蛍光体を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子としてZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また所望に応じて、前記窒化物半導体にボロンやリンを含有させることも可能である。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0065】
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファー層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0066】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファー層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
【0067】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
【0068】
発光装置100において、白色系を発光させるには、蛍光体からの発光波長との補色関係や透光性樹脂の劣化等を考慮して、発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下が好ましく、420nm以上490nm以下がより好ましい。発光素子と蛍光体との励起、発光効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下がさらに好ましい。
【0069】
例えば、基体5本体を金属により作成されている場合は、紫外線による構成部材の劣化を抑制することができる。よって、発光装置100に近紫外または紫外線領域を主発光波長とする発光素子1を用い、前記発光素子1からの光の一部を吸収して他の波長を発光することが可能な蛍光体とを組み合わせることで、色ムラの少ない色変換型発光装置が得られる。
【0070】
前記蛍光体は、窓部7中に混入させたり、窓部7に被着させたりすることができる。窓部7に被着させる際には、比較的紫外線に強い樹脂や無機物であるシリカ等を用いることが好ましい。
【0071】
<基体>
基体5は、気密封止可能な樹脂や、金属を用いることができる。樹脂は所定の型枠ないにリード電極などを載置してトランスファーモールドすることにより、所定の形状を有する基体5を成型することができる。該基体5は、発光素子1を載置する部分に凹部5を設けておく。該凹部5の底面部5b及び側面部5cは、発光素子1からの光を反射して外部に光を放出することができるように、反射面を設けることが好ましい。若しくは、該基体5の材料を反射率の高い樹脂で成形することもできる。
【0072】
発光装置100の基体5は、金属材料を用いている。金属材料を用いることにより、気密封止をより簡易に行うことができ、また、発光素子1から発生する熱を外部に簡易に放熱することができる。
【0073】
発光装置100に用いられる基体5は、発光素子1を収納する凹部5aと、リード電極2が配置されたベース部とからなる。前記凹部5aの背面と前記リード電極2の底面はほぼ同一面上に位置している。これにより、安定性の高い発光装置100を提供することができる。
【0074】
発光装置100において、発光素子1から発せられる熱の放熱性及び基体5の小型化を考慮すると、基体5は薄肉で形成されることが好ましい。一方、基体5の材料の金属と、該金属と隣接する絶縁部材3と、の熱膨張率等の差を緩和させ信頼性を向上させるためには、それぞれの接触面を大きくする必要があり、基体5は厚肉で形成されることが好ましい。そこで、基体5において、発光素子1が配置される部分とリード電極2を固定する部分とを分別し、それぞれの領域において目的に合わせて形状及び肉厚を設定することにより、信頼性の向上を図る。
【0075】
以下、それぞれの構成部材について詳述する。
【0076】
<基体の凹部>
発光装置100に用いられる基体5は、中央部に発光素子1を収納し、前記発光素子1からの発熱を良好に放熱することが可能な凹部5aを有する。前記凹部5aの背面は、発光装置100の実装面、つまりリード電極2の底面とほぼ同一平面上に位置しており、実装用基板(図示しない)の表面と接するように構成されている。このように構成することにより、実装用基板の表面に配線とは別途高熱伝導性領域を設け、該高熱伝導性領域と前記凹部5aの背面とを導電性部材にて固着することにより、発光素子1からの発熱を直接実装基板へと放熱することができ、発光素子1への電流投下量を増大させ出力向上を図ることができる。また、基体1の背面に導電性を有する支持体を設ける場合は、前記支持体も前記凹部底面と同様に前記高熱伝導性領域と導電性部材にて固着することが好ましい。
【0077】
また前記凹部5aの底面部の膜厚は、良好な放熱性を有するように外周部に相当するベース部より薄肉に形成されている。これにより、前記薄肉部と前記ベース部である厚肉部とに熱抵抗差を設けることができ、効率よく前記薄肉部より放熱することができる。前記凹部底面である薄肉部の膜厚は、0.05mm〜0.2mmが好ましく、より好ましくは0.05mm〜0.1mmである。このように設定された凹部底面は熱抵抗が低く好ましい。このように、発光装置100は、発光素子1からの発熱を外部より熱抵抗が低く設定された領域より短い放熱経路にて直接実装基板に放熱することを可能とし、低熱抵抗化を実現している。また、前記凹部5aの底面である薄肉部主面は前記ベース部である厚肉部主面とほぼ平行をなし、これらの境界部主面である凹部の内壁は屈曲している。これにより、前記薄肉部と前記厚肉部との熱抵抗差が大きくなり、さらに放熱性を向上させることができる。
【0078】
前記凹部5aは、発光装置100の中央部に位置することが好ましく、これにより良好な指向特性が得られる。但し、発光装置100の隅部に凹部5aを設けることもできる。また、矩形の基体5を用いて、凹部5aを2個以上設けることもでき、所望の位置に凹部5aを設けることもできる。
【0079】
また凹部5aは、前記発光素子1全体を収納することが可能な容積を有することが好ましい。これにより、発光素子1の四方側面から発光される光を前記凹部5aの側面部5cで反射させて、良好に正面方向へ取り出すことができる。これにより、特に窒化物半導体からなる発光素子1にみられる、発光ムラや色むらを改善することができる。また、色変換層を用いて発光素子1の波長を変換させる場合、前記凹部5a内に配置された前記発光素子1全体を色変換層で容易に被覆することが可能となる。
【0080】
基体5の凹部5aは、底面部5bと、該底面部5bから延びる側面部5cとを有する。凹部5aは、開口部分の開口面積が底面部分の底面積よりも大きいことが好ましい。特に、凹部5aの開口方向からみて円錐台になっていることが指向特性制御から好ましい。また、三角錐台や四角錐台などの多角錐台なども使用することができる。さらに、半球状や半楕円球状などの湾曲形状のものも使用することができる。凹部5aを湾曲形状とすることにより、集光性を高めることができる。凹部5aの開口部分が広口の方が、光取り出しの観点から好ましい。
【0081】
基体5は、金属材料を用いて、特に発光素子1が配置される凹部5aの放熱性を高めているため、樹脂10の部材は無機物に限らず有機物を用いることも可能であり、大電流投下による前記有機物の劣化はほとんどおこらず、良好な光学特性が得られる。
【0082】
一方、外壁側である前記凹部5aの背面は、逆凸形状となっており、凹部5aの背面とリード電極2の底面との間に溝を有することが好ましく、これにより、実装基板に実装する際、各リード電極2間で短絡が生じることを防止することができ、信頼性高く良好に実装することが可能となる。前記溝がない場合、前記リード電極2の底面に付着される半田が隣接するベース部等に付着し各電極間の絶縁が取れなくなりショートしてしまう恐れがある。
【0083】
凹部5aは、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成される。本実施の形態では、金属平板の主面方向から絞り加工を施して、金属を背面方向に流し凹部5aを形成する。この流れた金属が凹部5aの背面の一部となるように構成することで、実装面の面積を大きくすることができる。また、凹部5aの側面部5cの底面側の膜厚を厚くすることができる。具体的には、実装面を構成する凹部5aの膜厚は、主面側が平坦である発光素子1の載置部は薄く、主面側が凹部5aの側面部5cの一部である前記発光素子1の載置部の外周部は厚く構成されている。これにより、放熱性が向上される他、基体5の機械的強度が増し、好ましい。また、精度良く実装することが可能となり、好ましい指向特性が得られる。
【0084】
<ベース部>
本明細書では、金属製基体5において凹部5aを囲む平板部分をベース部とする。前記ベース部は、厚さ方向に貫通された貫通孔を少なくとも1つ有する。前記貫通孔はリード電極2を固定するためのものであり、本実施の形態の発光装置100は、前記貫通孔を2つ有する。それぞれの貫通孔は、凹部5aを挟んで対向して設けられ、各内部に絶縁部材3を介して正又は負のリード電極2がそれぞれ挿入されている。このように構成することにより、各リード電極間の中心に発光素子1を配置させることができ、良好な指向特性が得られる。
【0085】
ここで、発光装置100の正及び負のリード電極2は、少なくとも一方がベース部の貫通孔内に絶縁部材3を介して挿入されていれば良く、他方のリード電極2は金属製基体5と一体成形されていてもよい。このように構成すると、熱発生源である基体5の凹部5aの発光素子1配置面から前記他方のリード電極2まで絶縁部材3を有さず連続した材料にて構成されているため、熱が良好に分散され、前記凹部5aの底面、前記他方のリード電極2の底面、及びそれらの間の背面から良好に熱を放熱することができる。
【0086】
また、発光装置100において、金属製基体5のベース部の膜厚は凹部5aの底面厚より厚いことを特徴とする。ベース部の厚みは0.3mm〜1.0mmが好ましく、より好ましくは0.5mm〜1.0mmである。0.3mmより薄い場合、基体5全体の強度が低下してしまう。またリッドとの溶接時に起こる応力歪により溶接界面にクラックが生じる恐れがあり、このように気密性が不完全になると、水分が内部に侵入しワイヤー4や発光素子1が腐食され信頼性が低下してしまう。また1.0mm以上の膜厚にすると、前記溶接界面にパルス電流が伝わりにくくなり、シールが不完全になる恐れがある。また発光装置が厚型化するとともにコストが高くなる。
【0087】
また、前記ベース部の外側縁部は、ベース部底面に沿って鍔部を有することが好ましい。このように構成することにより、前記鍔部を設けることにより露出される基体5端面と発光面側に配置されるリッド6の内壁、及び前記鍔部の上面と前記リッド6上面とが合わさり、これらの位置決めを容易に行うことができ、量産性が向上され好ましい。
【0088】
金属製基体5の熱膨張率は、前記絶縁部材3の熱膨張率と同様の値か、若しくは大きい値であることが好ましい。前者の場合、互いの部材が破損されることなく熱密着させることができる。また後者の場合、これらの熱膨張率の差が0.01×10−4/deg以下であれば、互いの接触面積を出来るだけ大きくすることで熱膨張率の差による破損を回避しつつ前記熱膨張率の差の効果によりほどよく金属製基体5が貫通孔の内部方向に収縮され、前記貫通孔の内壁に基材1の酸化膜を設けなくても、前記金属製基体5と前記絶縁部材3とを密着させることができる。これにより、作業工程が簡略化され生産性が良好な発光装置100が得られる。
【0089】
また、金属製基体5の基材は、強い強度を有することが好ましく、これにより薄型の基体を信頼性高く形成することができる。金属製基体5の好ましい基材として、コバール、鉄などが挙げられる。コバールとはFe−Ni−Co合金であり、絶縁部材に用いられる低融点ガラスと近似の熱膨張率を有するので良好に気密封止を行うことができる。これら基材1の最表面にはAgメッキを施すことが好ましい。このように構成すると、基体表面の光反射散乱率が向上される他、Ag層が溶接用ろう材となり、発光素子1、ワイヤー4、及びリッド6と、金属製基体5本体との密着性が向上され好ましい。更に、発光素子1からの光が照射される基体の主面側はAg層を光沢にメッキし、他の部材との密着性を高めたい部分のみのAg層を無光沢にメッキすると、これらの効果は増殖される。
【0090】
本発明で用いられる金属製基体5は、上記のように構成され、これにより高い信頼性を有する発光装置100を安価に得ることができる。
【0091】
<リード電極>
発光装置100は、正及び負のリード電極2を有し、そのうちの少なくとも一方は、金属製基体5のベース部と絶縁部材3を介して一体的に設けられる。例えば、ベース部に貫通孔を設け、該貫通孔内に絶縁部材3を介して挿入されている。リード電極2の先端部は、ベース部の表面から突出しており、且つリード電極2の底面は凹部5aの実装面側底面と略同一平面上に位置している。但し、リード電極2の底面は凹部5aの実装面側底面と異なる高さを有していてもよい。
【0092】
リード電極2のワイヤー4の接続面である上面は、0.02mm〜0.2mmの範囲の面積を有することが好ましく、より好ましくは0.05mm〜0.15mmである。このように構成されることにより、ワイヤーボンディングの精度が良好で且つ小型化の発光装置が得られる。
【0093】
また、リード電極2の実装面側である底面がベース部背面から突出している場合、前記底面は前記上面より広い面積を有するように構成することができる。このように構成すると、リード電極2が発光装置100の支持体の役割を兼ね合わせ、安定して表面実装することが可能となると共に、実装基板との接触面積が広くなるため放熱性が向上される。このような形状のリード電極2は、例えば柱状に形成されたリード電極2の底面側をプレス加工することにより得ることができる。リード電極2の底面側の好ましい形状として、逆T字型、末広がり型、逆テーパー型等が挙げられる。
【0094】
<リッド>
発光装置100は、金属製基体5の主面側に、透光性窓部7と金属部とからなるリッド6を有する蓋体8を備える。前記窓部7は、発光装置100の発光面であり中央部に配置されることが好ましい。
【0095】
本実施の形態において、窓部7は、金属製基体5の凹部5aに配置された発光素子1の上面に位置しており、凹部5aの内壁の延長線と交点を有する。発光素子1の側面からから発光される光は、凹部5aの側面部5cにて反射散乱され正面方向に取り出される。これらの反射散乱光の存在範囲は、ほぼ凹部5aの側面部5cの延長線内であると考えられる。そこで、上記のように発光面である窓部7の面積を調整することにより、前記反射散乱光は効率よく窓部7に集光され、高輝度な光を発光することが可能な発光装置100が得られる。
【0096】
リッド6の基材は、基体5本体及び窓部7の透光性部材と熱膨張係数が近似していることが好ましい。また、リッド6の材質の表面は基材5の保護膜としてNiメッキ層を有することが好ましい。
【0097】
上記リッド6は、例えば、カーボン製の封着治具を用いて、リッド本体に形成された開口部内にタブレット状のガラスを配置し通炉させることによりガラスとリッド本体とを気密絶縁的に封着させることができる。
【0098】
リッド6の形状は、基体5の溶接部と密接可能な滑らかな平面を有し、且つ基体5を気密封止できれば特に限定されるものではない。中央部が凸形状のリッド6を用いると、前記リッド6の窓部7の背面に蛍光体を良好にバインダーさせることができ、歩留まり良く発光装置を形成することができる。また、凸形状のリッド6に柔軟性を有する部材を注入し、金属製基体5に電気的に接続された発光素子1を挿入して一体化させると、耐熱応力に優れた発光装置が得られる。
【0099】
更に、前記窓部7表面を、曲線を帯びたレンズ形状とすると、光の収束が良好となり、正面方向の光度が高い発光装置が得られる。例えば、青色に発光する発光素子1が載置された金属製基体5に、指向角が45度程度に設定され、且つ背面に前記青色の光の一部を吸収し黄色の光を発光する蛍光体を固着されてなる砲弾側レンズを載置すると、これらの混色により高輝度に白色ビームを発光することが可能な小型化発光装置が得られる。このような発光装置は、携帯電話等の小型機械に備えられた描写機能に必要とされるフラッシュの用途に用いることができる。
【0100】
<樹脂>
図3は、樹脂の接触角を示す概略図である。樹脂の接触角θは、蛍光体を含んでいない。
【0101】
第1の樹脂10は、発光素子1の一部を被覆している。発光装置100は、基体5及び蓋体8とにより、気密封止されているため、第1の樹脂10は、外部からの障害物や水分などから発光素子1を保護するために用いることよりも、発光素子1からの光を効率的に取り出すことを主目的としている。これは、発光素子1と空気との界面で生じていた発光素子1からの光の全反射を抑制するため、発光素子1と空気との間に第1の樹脂10と設け、屈折率差により、発光素子1からの光を全反射させることなく、第1の樹脂10中を透過し、空気中に放出するものである。ゆえ、第1の樹脂10は、発光素子1よりも屈折率が低く、気体層よりも高い方が好ましい。
【0102】
第1の樹脂10は、基体5の凹部5aの内部に塗布されており、該凹部5aの形状に符合する形状を形成することが好ましい。例えば、凹部5aの開口部分が広口の円錐台の形状を成している場合は、第1の樹脂10も、該凹部5aの内面に符合する円錐台の形状を成している。例えば、凹部5aの開口部分が広口の四角錐台の形状を成している場合は、第1の樹脂10も、該凹部5aの内面に符合する四角錐台の形状を成している。凹部5a内の底面側における第1の樹脂10の上面は、凹部5aの底面部5bに平行な平面形状を形成することが光取り出し効率、及び、色調バラツキの観点から好ましい。但し、第1の樹脂10は、凹部5aの形状に符号しない、例えば、凹部5aの底面部5bのみに配置したり、発光素子1表面のみに配置したりしてもよい。
【0103】
第1の樹脂10は、基体5と蓋体8とにより気密封止されている気体、例えば窒素、ヘリウム等よりも、高い屈折率を有するものを使用する。光取り出し効率の向上を図るためである。なお、気密封止されている気体は、金属性基体5やワイヤー4を腐食させないために、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスが好ましい。
【0104】
第1の樹脂10は、体積固体百分率70%以下であることが好ましい。特に、該体積固体百分率が30〜60体積%であることが好ましい。第1の樹脂10は、硬化に伴い、樹脂中の有機溶剤が揮発され、体積収縮する。このとき、蛍光体30を含有していない樹脂と、蛍光体30を含有している樹脂と、を同条件で硬化させた場合、蛍光体30を含有している樹脂の方が、体積収縮が大きい。これは、有機溶剤の揮発が促進されているためであると考えられる。このように、体積固体百分率の小さい樹脂を使用することにより、凹部5aの形状により符合した発光装置100を提供することができる。但し、この体積収縮によって、ワイヤー断線は発生していない。これは、第1の樹脂10の厚みが薄いため、内部応力の差が少なく、第1の樹脂10とワイヤー4との接触面積が小さいためと考えられる。
【0105】
第1の樹脂10は、接触角が60°以下であることが好ましい。また、凹部5aの側面部5cが開口部分の方が底面部55bよりも広口で側面部5cが斜面となっている場合、例えば、テーパー形状でも、第1の樹脂10がその凹部5cの側面部5cから滑り落ちない程度の粘度を有していることが好ましい。
【0106】
第1の樹脂10は、耐熱性樹脂であることが好ましい。
【0107】
第1の樹脂10は、蛍光体30が均一に分散されていることが好ましく、適度な粘度を有することが好ましい。第1の樹脂10の粘度が高いと、発光素子1及び基体5の凹部5aに所定量で適切な塗布が困難だからである。また、第1の樹脂10を塗布する際、第1の樹脂10が発光素子1の周囲に回り込まないことも生じる。一方、第1の樹脂10の粘度が低いと、第1の樹脂10を硬化させるまでに、蛍光体30が沈降若しくは浮上してしまい、樹脂中に均一に分散させることができない。
【0108】
第1の樹脂10に含有されている有機溶剤は、キシレン、トルエン、ベンゼンなどである。これらの有機溶剤が揮発することにより、第1の樹脂10の体積収縮を起させることができる。
【0109】
第2の樹脂20、21は、第1の樹脂10の上に形成されている。第2の樹脂20、21は、第1の樹脂10の凹みを埋める。第2の樹脂20、21の上面は、凹部5aの底面とほぼ平行な平面であることが好ましい。特に、凹部5aが平面となる位置まで第2の樹脂20、21で覆うことが好ましい。例えば、体積固体百分率または重量固体百分率が100%の体積収縮がない樹脂を用いて、凹部5a及び第1の樹脂10の凹みを埋めることで、該第2の樹脂20の上面が、平らな面を形成することができる。また、第2の樹脂21に体積固体百分率または重量固体百分率が30〜80%の体積収縮が大きい樹脂を用いて、第1の樹脂10を被覆することもできる。第2の樹脂20、21の材質は、特に限定されず、耐熱性樹脂以外の通常の樹脂も使用することができる。
【0110】
第2の樹脂20、21の屈折率は、第1の樹脂10の屈折率と同じか若しくは小さいことが好ましい。光取り出し効率の向上を図ることができるからである。また、気体層の気体の屈折率は、第2の樹脂20、21の屈折率よりも小さいことが好ましい。よって、発光素子1の屈折率が最も高く、第1の樹脂10、第2の樹脂20、気体層の順に屈折率が小さくなることが好ましい。但し、発光素子1、第1の樹脂10、第2の樹脂20、21、気体層、窓部7の屈折率は、適宜選択する。
【0111】
光出力を高める場合は、第2の樹脂20に蛍光体を含有させないことが好ましい。
【0112】
第2の樹脂20、21は、発光素子1からの光を透過させるため、透光性である。該第2の樹脂20、21中にも蛍光体30を含有させることもできる。この時、第1の樹脂10の蛍光体30は、第2の樹脂20、21の蛍光体よりも、長波長側に主発光波長を有する蛍光体であることが好ましい。これにより、蛍光体の発光効率を高めることができるからである。一方、発光素子1に紫外線を発光する発光素子を用いて、第1の樹脂10中の蛍光体30に照射すると、該発光素子1からの紫外線により励起され、青色に発光する。この青色に発光した蛍光体30の光により第2の樹脂20、21中の蛍光体が励起され、黄色に発光する。これにより、青色光と黄色光との混色光により白色に発光する発光装置100を提供することができる。ただし、蛍光体は、これらに限定されず、種々の組合せで使用することができる。
【0113】
第2の樹脂20は、硬化収縮しない樹脂を用いることが好ましい。配光特性や光取り出し効率の向上を図ることができるからである。但し、硬化収縮する樹脂を用いることもできる。
【0114】
<蛍光体>
発光装置100は、発光素子1と該発光素子1から発光される光の少なくとも一部を吸収し他の光を発光することが可能な蛍光体30とを組み合わせることにより、所望の色調を有する光を得ることができる。また、蛍光体30は、拡散剤や顔料等他の部材と互換性を有しており、またこれらを組み合わせて用いることも可能である。これら蛍光体は、第1の樹脂10及び第2の樹脂20中にも混入させて、所望の発光色を得ることができる。
【0115】
ここで、本実施例で用いられている蛍光体について詳述する。
【0116】
発光装置では、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光素子から発光された光を励起させて発光できるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体をベースとした蛍光体を用いている。
【0117】
具体的なイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体としては、YAlO:Ce、YAl12:Ce(YAG:Ce)やYAl:Ce、更にはこれらの混合物などが挙げられる。イットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体にBa、Sr、Mg、Ca、Znの少なくとも一種が含有されていてもよい。また、Siを含有させることによって、結晶成長の反応を抑制し蛍光体の粒子を揃えることができる。
【0118】
本明細書において、Ceで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体は特に広義に解釈するものとし、イットリウムの一部あるいは全体を、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素に置換され、あるいは、アルミニウムの一部あるいは全体をBa、Tl、Ga、Inの何れが又は両方で置換され蛍光作用を有する蛍光体を含む広い意味に使用する。
【0119】
更に詳しくは、一般式(YGd1−zAl12:Ce(但し、0<z≦1)で示されるフォトルミネッセンス蛍光体や一般式(Re1−aSmRe‘12:Ce(但し、0≦a<1、0≦b≦1、Reは、Y、Gd、La、Scから選択される少なくとも一種、Re’は、Al、Ga、Inから選択される少なくとも一種である。)で示されるフォトルミネッセンス蛍光体である。
【0120】
この蛍光体は、ガーネット構造(ざくろ石型構造)のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークを450nm付近にさせることができる。また、発光ピークも、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0121】
またフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGd(ガドリニウム)を含有することにより、460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が長波長に移動し全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は低下する傾向にある。さらに、所望に応じてCeに加えTb、Cu、Ag、Au、Fe、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Ti、Euらを含有させることもできる。
【0122】
しかも、ガーネット構造を持ったイットリウム・アルミニウム・ガーネット(ざくろ石型)系蛍光体の組成のうち、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトする。また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長が長波長側にシフトする。
【0123】
Yの一部をGdで置換する場合、Gdへの置換を1割未満にし、且つCeの含有(置換)を0.03から1.0にすることが好ましい。Gdへの置換が2割未満では緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるが、Ceの含有量を増やすことで赤色成分を補え、輝度を低下させることなく所望の色調を得ることができる。このような組成にすると温度特性が良好となり発光ダイオードの信頼性を向上させることができる。また、赤色成分を多く有するように調整されたフォトルミネセンス蛍光体を使用すると、ピンク等の中間色を発光することが可能な発光装置を形成することができる。
【0124】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Al、及びCeの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化バリウムやフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350℃〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、つぎに焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。
【0125】
本願発明の発光装置において、このようなフォトルミネセンス蛍光体は、2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(ざくろ石型)蛍光体や他の蛍光体を混合させてもよい。
【0126】
また、本発明で用いられる蛍光体の粒径は1μm〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは3μm〜30μmである。3μmより小さい粒径を有する蛍光体は、比較的凝集体を形成しやすく、液状樹脂中において密になって沈降されるため、光の透過効率を減少させてしまう。本発明では、このような蛍光体を有しない蛍光体を用いることにより蛍光体による光の隠蔽を抑制し発光装置の出力を向上させる。また本発明の粒径範囲である蛍光体は光の吸収率及び変換効率が高く且つ励起波長の幅が広い。このように、光学的に優れた特徴を有する大粒径蛍光体を含有させることにより、発光素子の主波長周辺の光をも良好に変換し発光することができ、発光装置の量産性が向上される。
【0127】
ここで本発明において、粒径とは、体積基準粒度分布曲線により得られる値である。前記体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に各物質を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmにて測定し得られたものである。この体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値であり、本発明で用いられる蛍光体の中心粒径は3μm〜30μmの範囲であることが好ましい。また、この中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより製品毎の色度バラツキが低減され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0128】
蛍光体30は、第1の樹脂10中に均一に分散されていることが好ましいが、蛍光体30を第1の樹脂10中に沈降させてもよい。蛍光体30は、発光素子1の近傍に配置する方が、光取り出しの観点から好ましい。また、少量の蛍光体で色調を決定することができるからである。
【0129】
また、上記YAG蛍光体に限られず、種々の蛍光体を用いることができる。例えば、MSi:Eu(Mは、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属である。)やMSi:Eu(Mは、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属である。)、LaS:Eu、SrAl:R、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などを用いることができる。
【0130】
その他の蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を有することもできる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0131】
本実施の形態における発光装置は、アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
Me(3−x−y)MgSi:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
次に、本実施の形態におけるアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体の製造工程を説明する。
【0132】
アルカリ土類金属珪酸塩の製造のために、選択した組成に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0133】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、YS:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、以下に実施例として示されるように、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0134】
<拡散剤>
更に、本発明において、第1の樹脂10及び第2の樹脂20中に、蛍光体30に加えて拡散剤を含有させても良い。拡散剤を含有することにより、光の拡散効果と、増粘性と、応力拡散効果などがある。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。これによって良好な指向特性を有する発光装置が得られる。
【0135】
拡散剤は、中心粒径が1nm以上5μm未満のものをいう。中心粒径がおよそ400nm以上の拡散剤は、発光素子及び蛍光体からの光を良好に乱反射させ、大きな粒径の蛍光体を用いることにより生じやすい色ムラを抑制することができる。一方、中心粒径がおよそ400nm未満の拡散剤は、発光素子からの光波長に対する干渉効果が低いことから、透明度が高く、光度を低下させることなく樹脂粘度を高めることができる。これにより、ポッティング等により色変換部材を配置させる場合、シリンジ内において樹脂中の蛍光体をほぼ均一に分散させその状態を維持することが可能となり、比較的取り扱いが困難である粒径の大きい蛍光体を用いた場合でも歩留まり良く生産することが可能となる。このように本発明における拡散剤は粒径範囲により作用が異なり、使用方法に合わせて選択若しくは組み合わせて用いることができる。
【0136】
<フィラー>
更に、本発明において、第1の樹脂10及び第2の樹脂20中に、蛍光体30に加えてフィラーを含有させても良い。具体的な材料は拡散剤と同様であるが、拡散剤と中心粒径が異なり、本明細書においてフィラーとは中心粒径が5μm以上100μm以下のものをいう。このような粒径のフィラーを透光性樹脂中に含有させると、光散乱作用により発光装置の色度バラツキが改善される。その他、粒径が1μm以上のフィラーを用いることにより透光性樹脂の耐熱衝撃性を高めることができる。これにより高温下での使用においても、発光素子と外部電極とを電気的に接続しているワイヤーの断線や前記発光素子底面と基体の凹部底面と剥離等を防止することができる信頼性の高い発光装置が得られる。更には樹脂の流動性を長時間一定に調整することが可能となり所望とする場所内に封止部材を形成することができ歩留まり良く量産することが可能となる。
【0137】
また、フィラーは蛍光体と類似の粒径及び/又は形状を有することが好ましい。ここで、本明細書において類似の粒径とは、各粒子のそれぞれの中心粒径の差が20%未満の場合をいい、類似の形状とは、各粒径の真円との近似程度を表す円形度(円形度=粒子の投影面積に等しい真円の周囲長さ/粒子の投影の周囲長さ)の値の差が20%未満の場合をいう。このようなフィラーを用いることにより、蛍光体とフィラーが互いに作用し合い、樹脂中にて蛍光体を良好に分散させることができ色ムラが抑制される。更に、蛍光体及びフィラーは、共に中心粒径が15μm〜50μm、より好ましくは20μm〜50μmであると好ましく、このように粒径を調整することにより、各粒子間に好ましい間隔を設けて配置させることができる。これにより光の取り出し経路が確保され、フィラー混入による光度低下を抑制しつつ指向特性を改善させることができる。
【0138】
【実施例】
<実施例1乃至3>
図7は、本発明の実施の形態にかかる発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。図7における発光装置のA−A部分の概略断面図は、図1(b)の発光装置の概略断面図とほぼ同じであるため省略する。発光装置200は、発光装置100と凹部5a内を除いて、ほぼ同様の構成を採るため、ほぼ同一の構成を採るところは、同符号を用いる。図9は、比較例の発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。図7に示すように、実施例1乃至3の発光装置では、蛍光体30が第1の樹脂10中に均一に分散されている。これに対し、図9に示すように、比較例1の発光装置では、蛍光体が第1の樹脂10中に含有されていない。その第1の樹脂10中には、気泡40が発生している。
【0139】
発光素子1は、460nm近傍に主発光波長を有する青色発光の発光素子を使用した。
【0140】
基体5の凹部5aは、底面部5bと側面部5cとからなる、開口部上面が広口の円錐台形状を成している。
【0141】
第1の樹脂10は、シリコーン(商品名:アレムコシール529(アレムコプロダクツ株式会社製))を使用した。該シリコーンは、体積固体百分率が50.0%、重量固体百分率が54.0%、混合粘度100〜300cps、揮発性4.20lbs/gal、比重1.02g/ccである。
【0142】
第2の樹脂20は、シリコーン(商品名:シリコーンKJR−9023(信越化学工業株式会社製)を使用した。該シリコーンは、重量固体百分率100%、混合粘度4000cps、主剤と副剤の混合比100:10、JIS−A硬度22である。
【0143】
第1の樹脂10中に含有する蛍光体30は、(Y0.8Gd0.2Al12:Ceの、いわゆるYAG蛍光体を使用する。第2の樹脂20には、蛍光体は含まれていない。
【0144】
実施例1は、該シリコーンに対して、YAG蛍光体を10重量%含有する。実施例2は、該シリコーンに対して、YAG蛍光体を20重量%含有する。実施例3は、該シリコーンに対して、YAG蛍光体を30重量%含有する。これに対し、比較例1は、該シリコーンのみである。
【0145】
表1は、実施例1乃至3、比較例1の接触角及び調合粘度を測定した結果を示す。接触角は、3回測定して、平均値を調べた。
【0146】
【表1】
Figure 2005019663
【0147】
実施例1乃至3及び比較例1を、以下の製造方法により発光装置200を製造した。
【0148】
凹部5aが設けられた基体5に、発光素子1を載置する。発光素子1は、Au−Sn共晶接合を用いて基体5の凹部5aの底面部5bにダイボンディングした。発光素子1をダイボンディングした後、発光素子1の電極部と基体5に設けられたリード電極2とをワイヤーボンディングして電気的接続を行った。
【0149】
このように形成された発光素子1が載置された基体5の凹部5a内に、予め蛍光体30を均一に分散させた第1の樹脂10を流し込む。蛍光体30は、上記のYAG蛍光体を用いた。蛍光体30は、所定量秤量して第1の樹脂10中に均一に分散させた。実施例1乃至3における蛍光体30の調合量は、第1の樹脂10に対して、10重量%、20重量%、30重量%と三種類用意した。第1の樹脂10は、上記のシリコーンを用いた。第1の樹脂10は、揮発しやすいため、所定量秤量したあと、蛍光体30を混入して、すばやく攪拌を行った。これらの蛍光体30が均一に分散された第1の樹脂10と凹部5aとの隙間に空気が入らないように流し込んだ。実施例1乃至3及び比較例1は、基体5の凹部5aから流出しない程度に、凹部5aの上端まで流し込んだ。
【0150】
第1の樹脂10を凹部5a内に流し込んだあと、有機溶剤を揮発させた。揮発させる有機溶剤は、有害なものを含んでいるため、排気設備のあるドラフト内で24時間、排気しながら、有機溶剤を揮発させた。
【0151】
次に、第2の樹脂20を、凹部5aの第1の樹脂10の凹み部分にポッティングした。凹部5aの上端とほぼ同じ高さになる位置まで、第2の樹脂20をポッティングした。この第2の樹脂20の上面は、凹部5aの底面部5bと平行な平面である。なお、第2の樹脂20は、予め主剤と副剤とを100:10の割合で混合しておき、脱泡しておく。
【0152】
この後、1時間かけて、常温から90℃〜95℃まで昇温した。90℃〜95℃で約2時間保持した後、さらに1時間かけて170℃〜185℃まで昇温した。170℃〜185℃で約1時間保持した後、常温までゆっくりと温度を下げた。
【0153】
最後に、気密封止するために、基体5に、窓部7とリッド6とを有する蓋体8を設けた。気密封止は、窒素中にて行った。溶接機を用いて、該蓋体8を基体5に設けた後、気密封止するために、接触部分をシールした。
【0154】
以上の工程を経ることにより、実施例1乃至3の発光装置200を製造した。蛍光体30を含有していない以外は、同条件で比較例1の発光装置を製造した。
【0155】
基体5の凹部5aにおいて、第1の樹脂10は、凹部5aに符号する形状を成している。第1の樹脂10は、底面部と側面部とからなり、第1の樹脂10の底面部は、凹部5aの底面部5bに平行かつ平面であり、第1の樹脂10の側面部は、凹部5aの側面部5cと平行かつ平滑な曲面である。
【0156】
発光素子1上における第1の樹脂10の上面10aは、発光素子1の周囲部分における第1の樹脂10の上面10bと、ほぼ同一の高さである。発光素子1の周囲部分5cの第1の樹脂10の膜厚よりも、発光素子1上における第1の樹脂10の上面10aの膜厚の方が薄い。基体5の凹部5aの側面部の第1の樹脂10cは、ほぼ均一の厚さで凹部5aの側面部5cを被覆している。第1の樹脂10は、硬化前に対して約50体積%、体積収縮していた。
【0157】
上記工程より得られた実施例1乃至3,比較例1の色調を表2に示す。
【0158】
【表2】
Figure 2005019663
【0159】
蛍光体30の第1の樹脂10中への配合量が少量であると、多量の樹脂量が必要となり、膜厚が厚くなってしまい、熱衝撃や物理的衝撃によるクラック発生の問題及び有機溶剤の揮発が不完全になり樹脂劣化の問題などが生じる。これに対し、蛍光体30の第1の樹脂10中への配合量が多量であると、色度のシフト量が大きくなるために、所望の色調に調整することが難しい。よって、蛍光体30の配合量は、蛍光体の性能、基体の形状、樹脂の性能等によって決定される。
【0160】
<熱衝撃試験>
実施例1乃至3、比較例1について、熱衝撃試験を行った。
【0161】
熱衝撃試験は、以下の方法により行う。まず、2つの容器を用意し、1つの容器には―40℃の溶液を入れ、もう1つの容器には、100℃の溶液を入れる。この2つの容器それぞれに発光装置200を1分間ずつ交互に浸積する。この2つの容器それぞれに1回ずつ浸積した場合を1サイクルとして、1000サイクル行う。
【0162】
その結果、図に示すように、比較例1の発光装置は、基体5の凹部5a内の第1の樹脂10に気泡40が発生した。この第1の樹脂10の気泡40の発生は、第1の樹脂10中に残留している有機溶剤が、急激な温度差により、発生したものと考えられる。
【0163】
これに対し、実施例1乃至3の発光装置は、いずれも、基体5の凹部5a内の第1の樹脂10に気泡は発生しておらず、所定の色調を有していた。
【0164】
このように、第1の樹脂10中に蛍光体30を含有させないと、樹脂中の有機溶剤が揮発し難くなり、有機溶剤の一部が残留する。この有機溶剤の残留により、気泡40が発生し、色調バラツキ及び光取り出し効率の低下などが生じる。これに対し、第1の樹脂10中に蛍光体30を含有させると、樹脂中の有機溶剤が揮発し易くなり、有機溶剤が残留しない。有機溶剤の残留がないため、気泡が発生せず、色調バラツキ及び光取り出し効率の低下なども生じない。
【0165】
<指向特性測定>
つぎに、実施例2及び比較例1の発光装置の指向特性を測定した。実施例1及び比較例1の発光装置は、樹脂を配置した後、リフロー前とリフロー後とで指向特性を測定した。
【0166】
図8は、本発明の実施の形態にかかる発光装置の指向特性を示す図である。(a)は、リフロー前にcからaへ移動させたとき、(b)は、リフロー前にdからbへ移動させたとき、(c)は、リフロー後にcからaへ移動させたとき、(d)は、リフロー後にdからbへ移動させたときである。図11は、比較例の発光装置の指向特性を示す図である。(a)は、リフロー前にcからaへ移動させたとき、(b)は、リフロー前にdからbへ移動させたとき、(c)は、リフロー後にcからaへ移動させたとき、(d)は、リフロー後にdからbへ移動させたときである。指向特性はCIE標準規格に合致するものである。実施例2と比較例1は、同一のレンズ形状を有する窓部を用いている。
【0167】
指向特性の測定原理の概略を説明する。指向特性は、発光装置の窓部から所定の距離(0.1m)離間して、受光部を配置する。この受光部を、窓部を原点に所定の距離離間したままcからaへ、dからbへと半円状に移動させる。その移動した時に、受光部で受光した照度を測定して、これが相対照度(光度)としている。発光素子の真上を90°、窓部と同一平面上を0°若しくは180°とする。
【0168】
測定結果より、実施例2の発光装置は、cからaへ、dからbへの照度より、正面付近で極めて発光出力が高い。例えば、比較例1の60°、120°の時の相対照度は0.55〜0.65であるのに対し、実施例2の60°、120°の時の相対照度は0.75〜0.85である。よって、60°から120°付近での相対照度は比較例1よりも実施例2の方が高く、発光装置としても発光出力も高い。
【0169】
また、色度x値及びy値について、比較例1の発光装置は、15°〜20°、160°〜165°付近で、色度が急激に0.1〜0.15ずれており、配光色度バラツキが大きいが、実施例2の発光装置は、前記範囲での色度は0.01〜0.05しかずれておらず、配光色度バラツキが極めて小さい。
【0170】
このように、本発明では、配光色度バラツキの低減を図ることができ、光取り出し効率の向上を図ることもできる。
【0171】
<光取り出し効率の測定>
実施例2の発光装置を6種類用意して光取り出し効率を測定した。表3は、光取り出し効率を測定した結果である。
【0172】
【表3】
Figure 2005019663
【0173】
実施例2の発光装置において、第2の樹脂量を種々かえたものを6種類用意した。比較例2の発光装置は、第2の樹脂20を塗布していないこと以外は、実施例2の発光装置と同じ構成を採る。この比較例2の発光装置の光取り出し効率を100%と基準に用いた。6種類の実施例2の発光装置及び比較例2の発光装置は、いずれも同条件で光出力を測定した。
【0174】
この結果から、第1の樹脂10と第2の樹脂20とを形成した実施例2の発光装置は、第1の樹脂10のみを形成した比較例2の発光装置よりも、14〜17%もの光取り出し効率の向上を図ることができた。
【0175】
<実施例4乃至6>
実施例4乃至6も、第1の樹脂10を代えた以外は、同条件で発光装置を製造した。そのため、同条件のところは、記載を省略する。
【0176】
図7は、本発明の実施の形態にかかる発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。図10は、比較例の発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。
【0177】
樹脂10は、エポキシ樹脂(商品名:EpiFine 6673/EpiFine H−215(ファインポリマーズ株式会社製))を使用した。
【0178】
実施例4は、該エポキシ樹脂に対して、YAG蛍光体を10重量%含有する。実施例5は、該エポキシ樹脂に対して、YAG蛍光体を20重量%含有する。実施例6は、該エポキシ樹脂に対して、YAG蛍光体を30重量%含有する。これに対し、比較例3は、該エポキシ樹脂のみである。
【0179】
表4は、実施例4乃至6、比較例3の接触角及び調合粘度を測定した結果を示す。接触角は、3回測定して、平均値を調べた。
【0180】
【表4】
Figure 2005019663
【0181】
実施例4乃至6のエポキシ樹脂にYAG蛍光体を混入すると、接触角が約3度程度大きくなり、粘度上昇が生じている。
【0182】
この結果、実施例4乃至6は、色調バラツキのない、熱衝撃性の高い発光装置を製造することができた。接触角が60度以下であると、凹部5a内に樹脂10をポッティングする際に、発光素子1の周囲部分への樹脂の回り込みが行われる。これに対し、接触角が60度よりも大きくなると、発光素子1の周囲部分へ樹脂がうまく回り込まず、凹部5a内の一部が被覆されない箇所5eが生じる。これにより、発光装置からの色調バラツキを生じる。但し、樹脂の調合粘度を調節したり、塗布方法を変更したりすることで、発光素子1の周囲部分へ樹脂を回り込ませることができる。
【0183】
【発明の効果】
以上のことから、本発明は、光出力の高い発光装置を提供することができる。また、発光素子から放出される熱や光による封止樹脂の劣化を防止することができる。つまり、封止樹脂に蛍光体を含有することにより、封止樹脂の有機溶剤の揮発を促し、有機溶剤の残留を無くすることができる。これにより、第1の樹脂を硬化した後の、発光装置の駆動による有機溶剤の揮発に伴う気泡の発生をなくし、色調バラツキを低減することができる。また、封止樹脂にワニスを使用することができる。該ワニスは蛍光体を混入することにより溶剤からの影響を抑止することができる。また、熱劣化を生じ難い封止樹脂及び発光装置を提供することができる。また、製造工程の簡略化を図ることができる。また、樹脂中の蛍光体を多量に用いることにより、少量の樹脂で基体の凹部を被覆することができ、所望の色調に調整することができる。これにより、本発明は、重要な技術的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態にかかる発光装置を示す概略平面図である。(b)は、本発明の実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる発光装置における基体の凹部を拡大した概略断面図である。
【図3】樹脂の接触角を示す概略図である。
【図4】本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。
【図5】本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。
【図6】本発明の異なる実施の形態にかかる発光装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる発光装置の指向特性を示す図である。
【図9】比較例の発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。
【図10】比較例の発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略平面図である。
【図11】比較例の発光装置の指向特性を示す図である。
【図12】従来の発光装置における発光素子の載置部分を示す拡大した概略断面図である。
【符号の説明】
1 発光素子
2 リード電極
3 絶縁部材
4 ワイヤー
5 基体
5a 凹部
5b 凹部の底面部
5c 凹部の側面部
5d 発光素子の周囲部分
6 リッド
7 窓部
8 蓋体
10 樹脂
10a 発光素子上における樹脂の上面
10b 発光素子の周囲部分における樹脂の上面
10c 基体の凹部の側面部の樹脂
20、21 第2の樹脂
30、31 蛍光体
40 気泡
100、200、300、400 発光装置

Claims (15)

  1. 発光素子と、
    該発光素子を載置する基体と、
    該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、
    を有する発光装置であって、
    該発光素子の少なくとも一部は、透光性の第1の樹脂で被覆されており、
    該第1の樹脂は、蛍光体が含有されており、
    該第1の樹脂の少なくとも一部は、第2の樹脂で被覆されていることを特徴とする発光装置。
  2. 発光素子と、
    該発光素子を載置する基体と、
    該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、
    該基体と該蓋体との間にある、気密封止される気体層と、
    を有する発光装置であって、
    該発光素子の少なくとも一部は、透光性の第1の樹脂で被覆されており、
    該第1の樹脂は、蛍光体が含有されており、
    該第1の樹脂の少なくとも一部は、第2の樹脂で被覆されており、
    該発光素子から放出される光は、該第1の樹脂、該第2の樹脂、該気体層及び該蓋体の順に外部に放出されることを特徴とする発光装置。
  3. 前記基体は、凹部形状を形成しており、該凹部は、底面部と、該底面から延びる側面部と、を有しており、該凹部は、開口部分の開口面積が、底面部分の底面積よりも大きく、該凹部の底面部は、前記発光素子が載置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発光装置。
  4. 前記第1の樹脂は、前記凹部内で前記凹部形状に符号していることを特徴とする請求項1乃至3の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  5. 前記第1の樹脂は、体積固体百分率が70%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  6. 前記蛍光体は、前記第1の樹脂中に均一に分散されていることを特徴とする請求項1乃至5の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  7. 前記凹部は、側面部に反射面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  8. 前記発光装置は、前記基体の凹部の側面部から前記基体の凹部の底面部並びに前記発光素子の側面及び上面までを、前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂のいずれかにより被覆されていることを特徴とする請求項1乃至7の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  9. 前記発光装置は、前記発光素子の周囲部分の前記基体の凹部の底面部における前記第1の樹脂の膜厚よりも、前記発光素子の上面における前記第1の樹脂の膜厚の方が薄いことを特徴とする請求項1乃至8の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  10. 前記発光装置は、前記発光素子の周囲部分における前記第1の樹脂の上面が、前記発光素子上における前記第1の樹脂の上面と、ほぼ同一の高さであることを特徴とする請求項1乃至9の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  11. 前記発光装置は、前記基体の凹部の底面側における前記樹脂の上面は、前記基体の凹部の底面部に対してほぼ平行な平面部分を有していることを特徴とする請求項1乃至10の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  12. 前記発光装置は、前記基体の凹部の側面部を前記第1の樹脂がほぼ均一の厚さで被覆されていることを特徴とする請求項1乃至11の少なくともいずれか一項に記載の発光装置。
  13. 前記凹部の上面は、前記第2の樹脂により、前記凹部の底面部に対して、ほぼ平行な平面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発光装置。
  14. 発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、を有する発光装置の製造方法であって、
    基体に発光素子を載置する工程と、
    該発光素子の少なくとも一部を、蛍光体が含有された第1の樹脂で被覆する工程と、
    該第1の樹脂の上に、さらに第2の樹脂で被覆する工程と、
    該第1の樹脂及び第2の樹脂を硬化する工程と、
    該発光素子を気密封止する蓋体を該基板に設ける工程と、
    を有する発光装置の製造方法。
  15. 発光素子と、該発光素子を載置する基体と、該発光素子を気密封止する、該基体に設けられる蓋体と、を有する発光装置の製造方法であって、
    基体に発光素子を載置する工程と、
    該発光素子の少なくとも一部を、蛍光体が含有された第1の樹脂で被覆する工程と、
    該第1の樹脂を乾燥する工程と、
    該第1の樹脂の上に、さらに第2の樹脂で被覆する工程と、
    該第1の樹脂及び第2の樹脂を硬化する工程と、
    該発光素子を気密封止する蓋体を該基板に設ける工程と、
    を有する発光装置の製造方法。
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