JP2005016545A - 油圧−機械式変速装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】デファレンシャルギヤ101が中途部に設けられた出力軸106L・106Rと、差動機構51と静油圧式無段変速装置52とを組み合わせた油圧−機械式変速装置50とをミッションケース59内に設け、該出力軸と、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプ71のポンプ軸72と、静油圧式無段変速装置の油圧モータ81のモータ軸82とを互いに平行、かつ略同一平面内に配置した。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸とともにハウジング内に設けられ、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置に関する。
より詳細には、ミッションケース内における差動機構、静油圧式無段変速装置およびデファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸の配置構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、静油圧式無段変速装置(Hydro Static Transmission;HST)と、デファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸と、がハウジング内に設けられたミッションケースの技術は公知となっている。
このようなミッションケースは全体としてコンパクトに構成することが可能であるとともに、部品点数および組立工数の削減が容易であることから、トラクタ等の作業車両に広く用いられている。例えば特許文献1に記載の如くである。
また、差動機構と、静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置(Hydro Mechanical Transmission;HMT)の技術も公知となっている。
このような油圧−機械式変速装置は、差動機構を構成する三つの要素(キャリアおよびプラネタリギヤからなるキャリア部、サンギヤ、インターナルギヤ)と、静油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータの連動の態様によって、▲1▼出力分割型(入力結合型)と、▲2▼入力分割型(出力結合型)の二つの形式に分けられる。
▲1▼出力分割型(入力結合型)は、差動機構を構成する三つの要素のうち、外部に駆動力を出力する要素(出力要素)に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続されるものである。
▲2▼入力分割型(出力結合型)は、差動機構を構成する三つの要素のうち、外部に駆動力を出力する要素(出力要素)に静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されるものである。
そして、油圧−機械式変速装置は静油圧式無段変速装置と比較して▲1▼いわゆる入力分割型においては高速時における動力伝達効率が高く、出力分割型は低速時における動力伝達効率が高い、▲2▼無段変速できる速度範囲が大きい、といった点で優れている。例えば特許文献2に記載の如くである。
【0003】
【特許文献1】
特公平4−79856号公報
【特許文献2】
特開2001−355705号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記入力分割型の油圧−機械式変速装置は、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせたものであるため、該油圧−機械式変速装置とデファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸とを同一のハウジング内に設けてミッションケースを構成する場合、少なくとも油圧ポンプの回転軸(ポンプ軸)、油圧モータの回転軸(モータ軸)およびデファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸の計三本の回転軸をハウジングに軸支するとともに、各構成部材が互いに干渉しないように配置する必要がある。従って、該ミッションケースをコンパクトに構成するのが困難であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
デファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸と、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプのポンプ軸と、静油圧式無段変速装置の油圧モータのモータ軸とを互いに平行、かつ略同一平面内に配置し、かつ、出力軸と油圧−機械式変速装置とをミッションケース内に設けたものである。
【0007】
請求項2においては、前記油圧ポンプのポンプ軸と、油圧モータのモータ軸とを一直線上に配置したものである。
【0008】
請求項3においては、油圧−機械式変速装置に駆動力を入力するための入力軸の軸線方向をミッションケースの略上下方向としたものである。
【0009】
請求項4においては、油圧−機械式変速装置とデファレンシャルギヤとの間の駆動力伝達経路に、制動手段を設けたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の油圧−機械式変速装置を備える作業車両の模式図、図2は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第一実施例の平面断面図、図3は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第一実施例の側面断面図、図4は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第二実施例の平面断面図、図5は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第二実施例の側面断面図、図6は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第三実施例の平面断面図、図7は本発明に係る油圧−機械式変速装置の第三実施例の側面断面図、である。
【0011】
まず、図1を用いて本発明の油圧−機械式変速装置が適用される走行車両の一例であるトラクタ30の全体構成について説明する。
なお本発明は本実施例のトラクタ30に限らず、エンジン等の駆動源により発生した駆動力を変速し、走行輪や作業機等に伝達するものに広く適用可能である。
また、以後の説明では、図1に示す如く、トラクタ30の前方を示す矢印Aの方向を、ミッションケース59(ミッションケース159、ミッションケース259)の「前方」とし、トラクタ30の上下方向をミッションケース59(ミッションケース159、ミッションケース259)の上下方向とする。
【0012】
トラクタ30本機の前後には前輪1・1および後輪2・2が支承され、前部のボンネット6内部にはエンジン5が配置され、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10が配設されている。ステアリングハンドル10の後方には座席11が配設され、座席11の側部には主変速レバー等の操作レバー群が配設されている。
【0013】
エンジン5は、そのクランク軸の長手方向が上下方向となるように設けられ、該クランク軸の下端はトラクタ30の下方に突出している。一方、トラクタ30の後部にはミッションケース59が配設され、エンジン5のクランク軸下端に外嵌固定されたプーリ31と、ミッションケース59の上方に突出した入力軸68の上端に外嵌固定されたプーリ32とにベルト33が巻回される。
駆動源であるエンジン5のクランク軸が回転駆動されると、プーリ31・32およびベルト33を介してミッションケース59の入力軸68が回転駆動される。
そして、エンジン5からの駆動力はミッションケース59内に設けられた油圧−機械式変速装置50(図2に図示)にて変速された後、出力軸(右出力軸106Rおよび左出力軸106L)の回転駆動力として出力される。該出力軸の左右両端にはそれぞれ後輪2・2が固設され、出力軸の回転に連動して回転駆動される。
また、前輪1・1と後輪2・2との間に挟まれたトラクタ30の下部には、ミッドマウントモア34が設けられる。ミッドマウントモア34は牧草や芝草等を刈り取るものであり、図示せぬ昇降機構により、地面からの高さを調整可能に構成される。
【0014】
以下では、図2および図3を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例である油圧−機械式変速装置50について説明する。なお、以下の説明では、油圧−機械式変速装置を「HMT」、静油圧式無段変速装置を「HST」と表記することとする。
【0015】
HMT50は主に、差動機構51、HST52等で構成される。HMT50はミッションケース59内に配設される。
【0016】
以下では差動機構51の詳細説明を行う。図2に示す如く、差動機構51は、主にキャリア61と該キャリア61に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ62・62・・・とからなるキャリア部63と、プラネタリギヤ62・62・・・と互いに噛合するサンギヤ64と、プラネタリギヤ62・62・・・と互いに噛合するインターナルギヤ65と、からなる三つの要素を備えている。
本実施例のHMT50はいわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置であって、キャリア部63が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、インターナルギヤ65が入力分割要素(HST52の油圧ポンプ71が接続される部分)、サンギヤ64が出力要素(HST52の油圧モータ81が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0017】
キャリア61は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、モータ軸82の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸66・66・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸66・66・・・にはそれぞれプラネタリギヤ62・62・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。また、キャリア61はモータ軸82に軸受を介して回転自在に遊嵌(軸支)されるとともに、キャリア61にはベベルギヤ67が外嵌固定されている。
【0018】
サンギヤ64は、モータ軸82に外嵌固定され、プラネタリギヤ62と互いに噛合している。
【0019】
インターナルギヤ65は、主に胴体部65a、ギヤ部65b、ギヤ部65c、支軸65d等で構成される。胴体部65aは略円盤形状の部材であり、一方の盤面には外縁部に沿ってリング状に突出したリング部が形成されるとともにモータ軸82の一端が回転自在に嵌装される嵌装穴が形成される。該リング部の内周面にはギヤ部65bが形成される。胴体部65aの外周面にはギヤ部65cが形成される。また、胴体部65aの他方の盤面には支軸65dが形成され、ミッションケース59に軸受を介して回転自在に軸支される。
【0020】
図3に示す如く、入力軸68はミッションケース59内にエンジン5からの駆動力を入力するための回転軸であり、ミッションケース59の筐体を構成する上下のハウジング59a・59bのうち上半部のハウジング59aに回転自在に軸支される。また、該入力軸68の軸線方向は上下方向となっており、ミッションケース59の前後左右略中央に配置されて、入力軸68の上下略中央で軸受するようにしている。該入力軸68の上端はミッションケース59より上方に突出されてプーリ32が外嵌固定されている。一方、入力軸68の下端部にはベベルギヤ部68aが形成され、キャリア61に外嵌固定されたベベルギヤ67と互いに噛合している。
【0021】
以下ではHST52の詳細説明を行う。図2に示す如く、HST52は、主に油圧ポンプ71と、油圧モータ81と、該油圧ポンプ71と油圧モータ81とを流体的に接続する油圧経路55・56とを備えている。
【0022】
油圧ポンプ71は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、ポンプ軸72と、該ポンプ軸72に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック73と、該シリンダブロック73に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン74・74・・・と、該ピストン74・74・・・を往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板75を備えている。可動斜板75とピストン74・74・・・とが当接する部位にはスラストベアリング76が設けられている。ピストン74・74・・・とシリンダブロック73とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ74a・74a・・・が内装されており、ピストン74・74・・・を可動斜板75に当接する方向に付勢している。
【0023】
油圧ポンプ71の可動斜板75は、操作軸77の下端部に固設される。操作軸77はミッションケース59の筐体を構成する上下のハウジング59a・59bの内、上半部を構成するハウジング59aに回動可能に軸支され、操作軸77の上端はミッションケース59の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0024】
従って、変速レバーの操作により可動斜板75の板面とポンプ軸72の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板75の板面をポンプ軸72の軸線方向に対して垂直としたときは、ポンプ軸72が回転駆動されても油圧モータ81に圧油を搬送することがない中立状態であり、該可動斜板75の板面をポンプ軸72の軸線方向に対して垂直の状態から傾倒させることにより、ポンプ軸72の回転駆動に連動して油圧モータ81に圧油を搬送する。また、可動斜板75の傾倒角度を調節することにより、ポンプ軸72が一回転する間に搬送される圧油の量を調節することが可能である。
なお、以後の説明では、HST52を「作動させる」とは、「油圧ポンプ71の可動斜板75をポンプ軸72に対して傾倒させ、油圧モータ81に圧油を搬送可能な状態とする」ことを指すものとする。
【0025】
油圧ポンプ71のポンプ軸72には入力ギヤ69が外嵌固定される。また、入力ギヤ69は前記インターナルギヤ65のギヤ部65cと互いに噛合する。
【0026】
油圧モータ81は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンモータであり、モータ軸82と、該モータ軸82に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック83と、該シリンダブロック83に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン84・84・・・と、油圧ポンプ71から搬送されてきた圧油によるピストン84・84・・・の往復駆動力をモータ軸82の回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する可動斜板85を備えている。可動斜板85とピストン84・84・・・とが当接する部位にはスラストベアリング86が設けられている。ピストン84・84・・・とシリンダブロック83とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ84a・84a・・・が内装されており、ピストン84・84・・・を可動斜板85に当接する方向に付勢している。
【0027】
油圧モータ81の可動斜板85は、操作軸87の下端部に固設される。操作軸87はミッションケース59の筐体を構成する上下のハウジング59a・59bの内、上半部を構成するハウジング59aに回動可能に軸支され、操作軸87の上端はミッションケース59の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0028】
従って、変速レバーの操作により可動斜板85の板面とモータ軸82の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板85の傾倒角度を調節することにより、油圧ポンプ71から搬送されてくる圧油の量に対するモータ軸82の回転量を調節することが可能である。
なお、本実施例の油圧モータ81については可動斜板85を用いているが、該可動斜板85に代えて、固定式斜板(モータ軸82と斜板の板面との成す角度が固定されている)を用いても良い。
【0029】
油圧ポンプ71のポンプ軸72、および油圧モータ81のモータ軸82は、それぞれ中途部にて取付部材54に軸受を介して軸支される。また、油圧ポンプ71のシリンダブロック73、および油圧モータ81のシリンダブロック83は、それぞれ取付部材54の側面に固設されたバルブプレート78・88に当接しつつ回転する。このとき、シリンダブロック73およびシリンダブロック83は、バルブプレート78・88に当接する方向にバネ等の弾性体により付勢され、該当接部からの圧油の漏出を極力抑えている。バルブプレート78・88には、それぞれ一対の吐出ポートおよび吸入ポートが穿設されており、バルブプレート78の吐出ポートとバルブプレート88の吸入ポート、バルブプレート78の吸入ポートとバルブプレート88の吐出ポート、はそれぞれ取付部材54に穿設された油圧経路55・56により連通されている。
取付部材54はミッションケース59の筐体の下半部を構成するハウジング59bに固設され、ミッションケース59内に収容される。該取付部材54はその長手方向がミッションケース59の前後方向となるように配置された略直方体の部材であり、左右一側壁面に油圧ポンプ71と油圧モータ81を前後並列に取り付けている。該取付部材54のHST52に対して左右反対側には差動機構51が配設される。また、ポンプ軸72、モータ軸82、出力軸(車軸)106L・106Rは順に前後平行に配置され、その軸線方向は左右方向であり、上下のハウジング59a・59bの割面に配置される。
【0030】
なお、油圧経路55・56はチェック・中立バルブ(図示せず)を介して連通されるとともに、HST52から漏出した圧油を補充するためのチャージ回路(図示せず)が接続されている。チェック・中立バルブは油圧ポンプ71が中立位置のときは「開」となり、チャージ回路と油圧経路55・56とを連通する。また、チェック・中立バルブは油圧ポンプ71が圧油を搬送するときは「閉」となる。
【0031】
以下では制動手段53の詳細説明を行う。図2に示す如く、制動手段53は主にローター91、ブレーキパッド92・93、カムリング94、カムボール95、操作軸96、ケーシング97等で構成され、HST52の右側に配置されている。
ローター91はモータ軸82の他端(差動機構51のインターナルギヤ65に嵌合している側とは反対の端部)に外嵌固定された略円盤形状の部材である。
ブレーキパッド92・93は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、それぞれローター91の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段53が作動しないときはブレーキパッド92・93の盤面とローター91の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。
カムリング94は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、ブレーキパッド92のローター91と対向する盤面と反対の盤面に対向する。
カムボール95は球状部材であり、カムリング94とブレーキパッド92との間に配置される。このとき、ブレーキパッド92の盤面にはカムボール95の一部が嵌合する凹みが穿設されるとともに、カムリング94の盤面にはカムボール95の一部が嵌合する溝が穿設される。カムリング94の盤面に穿設されたカムボール95の一部が嵌合する溝は、カムリングの中心から同心状に設けられており、溝の深さは一端が浅く、他端が深くなるように形成される。
操作軸96はカムリング94を回動させるための軸であり、ミッションケース59に回動可能に軸支されるとともに、操作軸96の一端はミッションケース59の側方に突出している。
【0032】
ケーシング97はローター91近傍においてモータ軸82を軸受を介して軸支するとともにブレーキパッド92・93、カムリング94、カムボール95等を収容するものであり、ミッションケース59内に固設される。このとき、ブレーキパッド93はケーシング97に固設され、ブレーキパッド92はモータ軸82の軸線方向に摺動可能かつモータ軸82の回転方向には回動不能、カムリング94はモータ軸82の軸線方向に摺動不能かつモータ軸82の回転方向に回動可能となっている。
操作軸96を回動して制動手段53を作動させると、操作軸96に連動してカムリング94が回動する。このとき、カムリング94に穿設されたカムボール95と当接している溝は、その当接箇所の溝の深さが徐々に浅くなり、カムボール95およびブレーキパッド92はローター91側に移動する。
従って、ブレーキパッド92・93間の隙間が小さくなり、ローター91の盤面とブレーキパッド92・93の盤面とが当接して摩擦力を発生する。このようにして、制動手段53によりモータ軸82の回転が制動される。
【0033】
制動手段53は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT50の入力分割要素(本実施例ではインターナルギヤ65)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段53が作動し、その後は制動手段53が解除される構成としても良い。
【0034】
以下では、図2を用いてデフ装置のデファレンシャルギヤ101および出力軸(左出力軸106Lおよび右出力軸106R)の詳細構成について説明する。
デファレンシャルギヤ101は主にリングギヤ102、基部103、ピニオンギヤ104・104、サイドギヤ105・105等で構成される。
リングギヤ102はデファレンシャルギヤ101全体を左出力軸106Lおよび右出力軸106Rの回転方向に沿って回転させるためのギヤであり、基部103に外嵌固定される。リングギヤ102はモータ軸82の外周面に形成されたギヤ部82aと互いに噛合する。
基部103は筒状の部材であり、左出力軸106Lの中央寄り端部および右出力軸106Rの中央寄り端部に対して回転可能に遊嵌される。
基部103の外周面にはピニオン軸103a・103aが突設され、ピニオンギヤ104・104がそれぞれ回転自在に遊嵌される。サイドギヤ105・105はそれぞれ左出力軸106Lおよび右出力軸106Rに外嵌固定される。サイドギヤ105・105はピニオンギヤ104・104と互いに噛合する。
左出力軸106Lおよび右出力軸106Rはミッションケース59に軸支され、左出力軸106Lの左端部および右出力軸106Rの右端部はミッションケース59の外部に突出し、該突出端にはそれぞれ後輪2・2が固設される。
【0035】
以下では、図1から図3を用いてミッションケース59の駆動力の伝達経路について説明する。
エンジン5が回転駆動されると、プーリ31、プーリ32およびベルト33を介して入力軸68が回転駆動される。入力軸68の下端部に形成されたギヤ部68aはキャリア61に外嵌されたベベルギヤ67と噛合しており、キャリア部63が回転駆動される。
【0036】
キャリア部63が回転駆動されると、プラネタリギヤ62と噛合するインターナルギヤ65が回転駆動される。そして、インターナルギヤ65のギヤ部65cと噛合する入力ギヤ69およびポンプ軸72が一体的に回転駆動される。
油圧ポンプ71の可動斜板75を中立位置から傾倒させると、ポンプ軸72の回転に連動してシリンダブロック73が回転駆動され、ピストン74・74が往復摺動し、圧油が油圧経路55・56を介して油圧モータ81に搬送される。
油圧モータ81の可動斜板85が傾倒された状態のとき、油圧ポンプ71から搬送されてきた圧油によりピストン84・84・・・が往復摺動してシリンダブロック83が回転駆動される。このようにして、シリンダブロック83が相対回転不能に嵌装されたモータ軸82は、シリンダブロック83と一体的に回転駆動される。
以上の如く、HMT50において、入力要素であるキャリア部63から入力分割要素であるインターナルギヤ65、HST52を経てモータ軸82に駆動力が伝達される経路を「第一の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0037】
一方、プラネタリギヤ62はサンギヤ64とも互いに噛合していることから、キャリア部63を回転させる駆動力の一部は直接モータ軸82に伝達される。このように入力要素であるキャリア部63から出力要素であるモータ軸82に直接駆動力が伝達される経路を「第二の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0038】
第一の駆動力伝達経路および第二の駆動力伝達経路を経てモータ軸82が回転駆動されると、該モータ軸82のギヤ部82aと噛合するリングギヤ102が回転駆動される。そして、デファレンシャルギヤ101により回転数が調整されて左出力軸106Lおよび右出力軸106Rが回転駆動される。
【0039】
なお、エンジン始動時からポンプ軸72が所定の回転数以上で回転するまで制動手段53を作動させ(すなわち第二の駆動力伝達経路を介したモータ軸82への駆動力伝達を抑制し)、その後制動手段53を解除することにより、HMT50に起因する振動を防止することが可能である。
【0040】
図2に示す如く、本実施例のHMT50は、差動機構51とHST52とを組み合わせた油圧−機械式変速装置であり、HMT50はデファレンシャルギヤ101が中途部に設けられた出力軸(左出力軸106Lおよび右出力軸106R)と、HST52の油圧ポンプ71のポンプ軸72と、HST52の油圧モータ81のモータ軸82とが互いに平行に配置されている(本実施例の場合、出力軸、ポンプ軸72、モータ軸82の軸線方向はいずれもトラクタ30の機体の左右方向となる)。
また、図3に示す如く、本実施例のHMT50は、デファレンシャルギヤ101が中途部に設けられた出力軸(左出力軸106Lおよび右出力軸106R)と、HST52の油圧ポンプ71のポンプ軸72と、HST52の油圧モータ81のモータ軸82とが略同一平面(水平面)内に配置されている。
さらに、出力軸(左出力軸106Lおよび右出力軸106R)と、HMT50とが同一のミッションケース59内に設けられている。
【0041】
このように構成することにより、同一のミッションケース59内にHMT50と出力軸を収納しているにもかかわらず該ミッションケース59の上下高さを小さくし、コンパクトに構成することが可能である。また、ミッションケース59の上下高さを抑えることにより、ミッションケース59の出力軸に直接後輪2・2を固設しても地上表面からミッションケース59下端までの高さを大きくとることが可能である。
さらに、出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82の軸線の高さと、ミッションケースを構成する上下二分割のハウジングの分割面高さを合わせることにより、ハウジングを鋳造成型する際に出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82をミッションケースに軸支するための軸受の嵌装部も同時に成型し、機械加工によりハウジングに軸受の嵌装部を成形する工程を省略してコストを削減することが可能である。
【0042】
また、本実施例のHMT50にエンジン5からの駆動力を入力する入力軸68は、その軸線方向がミッションケース59の略上下方向となっている。
このように構成することにより、駆動源からの駆動力伝達経路(図1に示すトラクタ30の場合、エンジン5からプーリ31、ベルト33、プーリ32を経て入力軸68を回転駆動する駆動力伝達経路)をミッションケース59よりも上下方向において高い位置に配置して、走行車両の下部空間(前輪1・1と後輪2・2の間の空間)を広く取り、該空間を有効利用することが可能である。トラクタ30の場合、ミッドマウントモア34がエンジン5からミッションケース59への駆動力伝達経路と干渉することを防止することが可能である。
【0043】
以下では、図4および図5を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例である油圧−機械式変速装置150について説明する。
【0044】
HMT150は主に、差動機構151、HST152等で構成される。HMT150はミッションケース159内に配設される。
【0045】
以下では差動機構151の詳細説明を行う。図4に示す如く、差動機構151は、主にキャリア161と該キャリア161に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ162・162・・・とからなるキャリア部163と、プラネタリギヤ162・162・・・と互いに噛合するサンギヤ164と、プラネタリギヤ162・162・・・と互いに噛合するインターナルギヤ165と、からなる三つの要素を備えている。
本実施例のHMT150はいわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置であって、キャリア部163が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、インターナルギヤ165が入力分割要素(HST152の油圧ポンプ171が接続される部分)、サンギヤ164が出力要素(HST152の油圧モータ181が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0046】
キャリア161は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、モータ軸182の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸166・166・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸166・166・・・にはそれぞれプラネタリギヤ162・162・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。また、キャリア161はモータ軸182に軸受を介して回転自在に遊嵌(軸支)されるとともに、キャリア161にはベベルギヤ167が外嵌固定されている。
【0047】
サンギヤ164は、モータ軸182に外嵌固定され、プラネタリギヤ162と互いに噛合している。
【0048】
インターナルギヤ165は、主に胴体部165a、ギヤ部165b等で構成される。胴体部165aは略円盤形状の部材であり、一方の盤面には外縁部に沿ってリング状に突出したリング部が形成されるとともにモータ軸182の一端が回転自在に嵌装される嵌装穴が形成される。該リング部の内周面にはギヤ部165bが形成される。また、胴体部165aの他方の盤面にはポンプ軸172が突設され、ミッションケース159に軸受を介して回転自在に軸支される。
【0049】
図5に示す如く、入力軸168はミッションケース159内にエンジン5からの駆動力を入力するための回転軸であり、ミッションケース159の筐体を構成する上下のハウジング159a・159bのうち上半部のハウジング159aに回転自在に軸支される。また、該入力軸168の軸線方向は上下方向となっており、ミッションケース159の左右略中央やや前方寄りに配置されて、入力軸168の上下略中央で軸受するようにしている。入力軸168の上端はミッションケース159より上方に突出されてプーリ32が外嵌固定されている。一方、入力軸168の下端部にはベベルギヤ部168aが形成され、キャリア161に外嵌固定されたベベルギヤ167と互いに噛合している。
【0050】
以下ではHST152の詳細説明を行う。図4に示す如く、HST152は、主に油圧ポンプ171と、油圧モータ181と、該油圧ポンプ171と油圧モータ181とを流体的に接続する油圧経路155・156とを備えている。
【0051】
油圧ポンプ171は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、ポンプ軸172と、該ポンプ軸172に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック173と、該シリンダブロック173に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン174・174・・・と、該ピストン174・174・・・を往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板175を備えている。可動斜板175とピストン174・174・・・とが当接する部位にはスラストベアリング176が設けられている。ピストン174・174・・・とシリンダブロック173とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ174a・174a・・・が内装されており、ピストン174・174・・・を可動斜板175に当接する方向に付勢している。
【0052】
油圧ポンプ171の可動斜板175は、操作軸177の下端部に固設される。操作軸177はミッションケース159の筐体を構成する上下のハウジング159a・159bの内、上半部を構成するハウジング159aに回動可能に軸支され、操作軸177の上端はミッションケース159の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0053】
従って、変速レバーの操作により可動斜板175の板面とポンプ軸172の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板175の板面をポンプ軸172の軸線方向に対して垂直としたときは、ポンプ軸172が回転駆動されても油圧モータ181に圧油を搬送することがない中立状態であり、該可動斜板175の板面をポンプ軸172の軸線方向に対して垂直の状態から傾倒させることにより、ポンプ軸172の回転駆動に連動して油圧モータ181に圧油を搬送する。また、可動斜板175の傾倒角度を調節することにより、ポンプ軸172が一回転する間に搬送される圧油の量を調節することが可能である。
なお、以後の説明では、HST152を「作動させる」とは、「油圧ポンプ171の可動斜板175をポンプ軸172に対して傾倒させ、油圧モータ181に圧油を搬送可能な状態とする」ことを指すものとする。
【0054】
油圧モータ181は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンモータであり、モータ軸182と、該モータ軸182に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック183と、該シリンダブロック183に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン184・184・・・と、油圧ポンプ171から搬送されてきた圧油によるピストン184・184・・・の往復駆動力をモータ軸182の回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する可動斜板185を備えている。可動斜板185とピストン184・184・・・とが当接する部位にはスラストベアリング186が設けられている。ピストン184・184・・・とシリンダブロック183とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ184a・184a・・・が内装されており、ピストン184・184・・・を可動斜板185に当接する方向に付勢している。
【0055】
油圧モータ181の可動斜板185は、操作軸187の下端部に固設される。操作軸187はミッションケース159の筐体を構成する上下のハウジング159a・159bの内、上半部を構成するハウジング159aに回動可能に軸支され、操作軸187の上端はミッションケース159の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0056】
従って、変速レバーの操作により可動斜板185の板面とモータ軸182の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板185の傾倒角度を調節することにより、油圧ポンプ171から搬送されてくる圧油の量に対するモータ軸182の回転量を調節することが可能である。
なお、本実施例の油圧モータ181については可動斜板185を用いているが、該可動斜板185に代えて、固定式斜板(モータ軸182と斜板の板面との成す角度が固定されている)を用いても良い。
【0057】
油圧ポンプ171のポンプ軸172、および油圧モータ181のモータ軸182は、それぞれ中途部にて取付部材154に軸受を介して軸支される。取付部材154は正面視(トラクタ30の前方から見て)略凹型の部材であり、凹み部分には差動機構151が取付部材154と干渉しないように配置される。また、油圧ポンプ171のシリンダブロック173、および油圧モータ181のシリンダブロック183は、それぞれ取付部材154の左右側面に固設されたバルブプレート178・188に当接しつつ回転する。このとき、シリンダブロック173およびシリンダブロック183は、バルブプレート178・188に当接する方向にバネ等の弾性体により付勢され、該当接部からの圧油の漏出を極力抑えている。バルブプレート178・188には、それぞれ一対の吐出ポートおよび吸入ポートが穿設されており、バルブプレート178の吐出ポートとバルブプレート188の吸入ポート、バルブプレート178の吸入ポートとバルブプレート188の吐出ポート、はそれぞれ取付部材154に穿設された油圧経路155・156により連通されている。
取付部材154はミッションケース159の筐体の下半部を構成するハウジング159bに固設され、ミッションケース159内に収容される。該取付部材154は正面視略凹型の部材であり、該凹部に差動機構151が配置されるとともに、左右側面にはそれぞれ油圧ポンプ171および油圧モータ181が取り付けられる。そして、油圧ポンプ171のポンプ軸171、油圧モータ181のモータ軸182および差動機構151が一直線となるように配置される。
【0058】
なお、油圧経路155・156はチェック・中立バルブ(図示せず)を介して連通されるとともに、HST152から漏出した圧油を補充するためのチャージ回路(図示せず)が接続されている。チェック・中立バルブは油圧ポンプ171が中立位置のときは「開」となり、チャージ回路と油圧経路155・156とを連通する。また、チェック・中立バルブは油圧ポンプ171が圧油を搬送するときは「閉」となる。
【0059】
以下では制動手段153の詳細説明を行う。図4に示す如く、制動手段153は主にローター191、ブレーキパッド192・193、カムリング194、カムボール195、操作軸196、ケーシング197等で構成され、HST152の右側に配置されている。
ローター191はモータ軸182の他端(差動機構151のインターナルギヤ165に嵌合している側とは反対の端部)に外嵌固定された略円盤形状の部材である。
ブレーキパッド192・193は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、それぞれローター191の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段153が作動しないときはブレーキパッド192・193の盤面とローター191の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。
カムリング194は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、ブレーキパッド192のローター191と対向する盤面と反対の盤面に対向する。
カムボール195は球状部材であり、カムリング194とブレーキパッド192との間に配置される。このとき、ブレーキパッド192の盤面にはカムボール195の一部が嵌合する凹みが穿設されるとともに、カムリング194の盤面にはカムボール195の一部が嵌合する溝が穿設される。カムリング194の盤面に穿設されたカムボール195の一部が嵌合する溝は、カムリングの中心から同心状に設けられており、溝の深さは一端が浅く、他端が深くなるように形成される。
操作軸196はカムリング194を回動させるための軸であり、ミッションケース159に回動可能に軸支されるとともに、操作軸196の一端はミッションケース159の側方に突出している。
【0060】
ケーシング197はローター191近傍においてモータ軸182を軸受を介して軸支するとともにブレーキパッド192・193、カムリング194、カムボール195等を収容するものであり、ミッションケース159内に固設される。このとき、ブレーキパッド193はケーシング197に固設され、ブレーキパッド192はモータ軸182の軸線方向に摺動可能かつモータ軸182の回転方向には回動不能、カムリング194はモータ軸182の軸線方向に摺動不能かつモータ軸182の回転方向に回動可能となっている。
操作軸196を回動して制動手段153を作動させると、操作軸196に連動してカムリング194が回動する。このとき、カムリング194に穿設されたカムボール195と当接している溝は、その当接箇所の溝の深さが徐々に浅くなり、カムボール195およびブレーキパッド192はローター191側に移動する。
従って、ブレーキパッド192・193間の隙間が小さくなり、ローター191の盤面とブレーキパッド192・193の盤面とが当接して摩擦力を発生する。このようにして、制動手段153によりモータ軸182の回転が制動される。
【0061】
制動手段153は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT150の入力分割要素(本実施例ではインターナルギヤ165)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段153が作動し、その後は制動手段153が解除される構成としても良い。
【0062】
以下では、図4を用いてデフ装置のデファレンシャルギヤ201および出力軸(左出力軸206Lおよび右出力軸206R)の詳細構成について説明する。
デファレンシャルギヤ201は主にリングギヤ202、基部203、ピニオンギヤ204・204、サイドギヤ205・205等で構成される。
リングギヤ202はデファレンシャルギヤ201全体を左出力軸206Lおよび右出力軸206Rの回転方向に沿って回転させるためのギヤであり、基部203に外嵌固定される。リングギヤ202はモータ軸182の外周面に形成されたギヤ部182aと互いに噛合する。
基部203は筒状の部材であり、左出力軸206Lの中央寄り端部および右出力軸206Rの中央寄り端部に対して回転可能に遊嵌される。
基部203の外周面にはピニオン軸203a・203aが突設され、ピニオンギヤ204・204がそれぞれ回転自在に遊嵌される。サイドギヤ205・205はそれぞれ左出力軸206Lおよび右出力軸206Rに外嵌固定される。サイドギヤ205・205はピニオンギヤ204・204と互いに噛合する。
左出力軸206Lおよび右出力軸206Rはミッションケース159に軸支され、左出力軸206Lの左端部および右出力軸206Rの右端部はミッションケース159の外部に突出し、該突出端にはそれぞれ後輪2・2が固設される。
【0063】
以下では、図1、図4および図5を用いてミッションケース159の駆動力の伝達経路について説明する。
エンジン5が回転駆動されると、プーリ31、プーリ32およびベルト33を介して入力軸168が回転駆動される。入力軸168の下端部に形成されたギヤ部168aはキャリア161に外嵌されたベベルギヤ167と噛合しており、キャリア部163が回転駆動される。
【0064】
キャリア部163が回転駆動されると、プラネタリギヤ162と噛合するインターナルギヤ165が回転駆動される。そして、インターナルギヤ165に突設されたポンプ軸172が一体的に回転駆動される。
油圧ポンプ171の可動斜板175を中立位置から傾倒させると、ポンプ軸172の回転に連動してシリンダブロック173が回転駆動され、ピストン174・174が往復摺動し、圧油が油圧経路155・156を介して油圧モータ181に搬送される。
油圧モータ181の可動斜板185が傾倒された状態のとき、油圧ポンプ171から搬送されてきた圧油によりピストン184・184・・・が往復摺動してシリンダブロック183が回転駆動される。このようにして、シリンダブロック183が相対回転不能に嵌装されたモータ軸182は、シリンダブロック183と一体的に回転駆動される。
以上の如く、HMT150において、入力要素であるキャリア部163から入力分割要素であるインターナルギヤ165、HST152を経てモータ軸182に駆動力が伝達される経路を「第一の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0065】
一方、プラネタリギヤ162はサンギヤ164とも互いに噛合していることから、キャリア部163を回転させる駆動力の一部は直接モータ軸182に伝達される。このように入力要素であるキャリア部163から出力要素であるモータ軸182に直接駆動力が伝達される経路を「第二の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0066】
第一の駆動力伝達経路および第二の駆動力伝達経路を経てモータ軸182が回転駆動されると、該モータ軸182のギヤ部182aと噛合するリングギヤ202が回転駆動される。そして、デファレンシャルギヤ201により回転数が調整されて左出力軸206Lおよび右出力軸206Rが回転駆動される。
【0067】
なお、エンジン始動時からポンプ軸172が所定の回転数以上で回転するまで制動手段153を作動させ(すなわち第二の駆動力伝達経路を介したモータ軸182への駆動力伝達を抑制し)、その後制動手段153を解除することにより、HMT150に起因する振動を防止することが可能である。
【0068】
図4に示す如く、本実施例のHMT150は、差動機構151とHST152とを組み合わせた油圧−機械式変速装置であり、HMT150はデファレンシャルギヤ201が中途部に設けられた出力軸(左出力軸206Lおよび右出力軸206R)と、HST152の油圧ポンプ171のポンプ軸172と、HST152の油圧モータ181のモータ軸182とが互いに平行に配置されている(本実施例の場合、出力軸、ポンプ軸172、モータ軸182の軸線方向はいずれもトラクタ30の機体の左右方向となる)。
また、図5に示す如く、本実施例のHMT150は、デファレンシャルギヤ201が中途部に設けられた出力軸(左出力軸206Lおよび右出力軸206R)と、HST152の油圧ポンプ171のポンプ軸172と、HST152の油圧モータ181のモータ軸182とが略同一平面(水平面)内に配置されている。
さらに、出力軸(左出力軸206Lおよび右出力軸206R)と、HMT150とが同一のミッションケース159内に設けられている。
【0069】
このように構成することにより、同一のミッションケース159内にHMT150と出力軸を収納しているにもかかわらず該ミッションケース159の上下高さを小さくし、コンパクトに構成することが可能である。また、ミッションケース159の上下高さを抑えることにより、ミッションケース159の出力軸に直接後輪2・2を固設しても地上表面からミッションケース159下端までの高さを大きくとることが可能である。
さらに、出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82の軸線の高さと、ミッションケースを構成する上下二分割のハウジングの分割面高さを合わせることにより、ハウジングを鋳造成型する際に出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82をミッションケースに軸支するための軸受の嵌装部も同時に成型し、機械加工によりハウジングに軸受の嵌装部を成形する工程を省略してコストを削減することが可能である。
【0070】
また、本実施例のHMT150にエンジン5からの駆動力を入力する入力軸168は、その軸線方向がミッションケース159の略上下方向となっている。
このように構成することにより、駆動源からの駆動力伝達経路(図1に示すトラクタ30の場合、エンジン5からプーリ31、ベルト33、プーリ32を経て入力軸168を回転駆動する駆動力伝達経路)をミッションケース159よりも上下方向において高い位置に配置して、走行車両の下部空間(前輪1・1と後輪2・2の間の空間)を広く取り、該空間を有効利用することが可能である。トラクタ30の場合、ミッドマウントモア34がエンジン5からミッションケース159への駆動力伝達経路と干渉することを防止することが可能である。
【0071】
さらに、第二実施例のHMT150においては、図4および図5に示す如く、油圧ポンプ171のポンプ軸172と、油圧モータ181のモータ軸182とが一直線上に(より厳密には、ポンプ軸172の軸線と、モータ軸182の軸線とが同一直線上に)配置される。
このように構成することにより、第一実施例のHMT50に係るミッションケース59と比較して、第二実施例のHMT150に係るミッションケース159の前後方向の長さを短く構成することが可能となる。
【0072】
以下では、図6および図7を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例である油圧−機械式変速装置250について説明する。
【0073】
HMT250は主に、差動機構251、HST252等で構成される。HMT250はミッションケース259内に配設される。
【0074】
以下では差動機構251の詳細説明を行う。図6に示す如く、差動機構251は、主にキャリア261と該キャリア261に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ262・262・・・とからなるキャリア部263と、プラネタリギヤ262・262・・・と互いに噛合するサンギヤ264と、プラネタリギヤ262・262・・・と互いに噛合するインターナルギヤ265と、からなる三つの要素を備えている。
本実施例のHMT250はいわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置であって、キャリア部263が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、インターナルギヤ265が入力分割要素(HST252の油圧ポンプ271が接続される部分)、サンギヤ264が出力要素(HST252の油圧モータ281が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0075】
キャリア261は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、モータ軸282の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸266・266・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸266・266・・・にはそれぞれプラネタリギヤ262・262・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。また、キャリア261はモータ軸282に軸受を介して回転自在に遊嵌(軸支)されるとともに、キャリア261にはギヤ267が外嵌固定されている。
【0076】
サンギヤ264は、モータ軸282に外嵌固定され、プラネタリギヤ262と互いに噛合している。
【0077】
インターナルギヤ265は、主に胴体部265a、ギヤ部265b等で構成される。胴体部265aは略円盤形状の部材であり、一方の盤面には外縁部に沿ってリング状に突出したリング部が形成されるとともにモータ軸282の一端が回転自在に嵌装される嵌装穴が形成される。該リング部の内周面にはギヤ部265bが形成される。また、胴体部265aの他方の盤面にはポンプ軸272が突設され、ミッションケース259に軸受を介して回転自在に軸支される。
【0078】
図7に示す如く、入力軸268はミッションケース259内にエンジン5からの駆動力を入力するための回転軸であり、ミッションケース259の筐体を構成する上下のハウジング259a・259bのうち上半部のハウジング259aに回転自在に軸支される。また、該入力軸268の軸線方向は上下方向となっており、ミッションケース259の左右略中央やや前方寄りに配置されて、入力軸268の上下略中央で軸受するようにしている。入力軸268の上端はミッションケース259より上方に突出されてプーリ32が外嵌固定されている。一方、入力軸268の下端部にはベベルギヤ部268aが形成される。
ミッションケース259内において、ポンプ軸271およびモータ軸282よりも前方側には、伝達軸258が軸受を介して軸支され、該伝達軸258にはギヤ257およびベベルギヤ270が外嵌固定されている。前記ベベルギヤ部268aとベベルギヤ270とは互いに噛合し、ギヤ257とギヤ267とは互いに噛合している。
【0079】
以下ではHST252の詳細説明を行う。図6に示す如く、HST252は、主に油圧ポンプ271と、油圧モータ281と、該油圧ポンプ271と油圧モータ281とを流体的に接続する油圧経路255・256とを備えている。
【0080】
油圧ポンプ271は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、ポンプ軸272と、該ポンプ軸272に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック273と、該シリンダブロック273に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン274・274・・・と、該ピストン274・274・・・を往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板275を備えている。可動斜板275とピストン274・274・・・とが当接する部位にはスラストベアリング276が設けられている。ピストン274・274・・・とシリンダブロック273とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ274a・174a・・・が内装されており、ピストン274・274・・・を可動斜板275に当接する方向に付勢している。
【0081】
油圧ポンプ271の可動斜板275は、操作軸277の下端部に固設される。操作軸277はミッションケース259の筐体を構成する上下のハウジング259a・259bの内、上半部を構成するハウジング259aに回動可能に軸支され、操作軸277の上端はミッションケース259の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0082】
従って、変速レバーの操作により可動斜板275の板面とポンプ軸272の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板275の板面をポンプ軸272の軸線方向に対して垂直としたときは、ポンプ軸272が回転駆動されても油圧モータ281に圧油を搬送することがない中立状態であり、該可動斜板275の板面をポンプ軸272の軸線方向に対して垂直の状態から傾倒させることにより、ポンプ軸272の回転駆動に連動して油圧モータ281に圧油を搬送する。また、可動斜板275の傾倒角度を調節することにより、ポンプ軸272が一回転する間に搬送される圧油の量を調節することが可能である。
なお、以後の説明では、HST252を「作動させる」とは、「油圧ポンプ271の可動斜板275をポンプ軸272に対して傾倒させ、油圧モータ281に圧油を搬送可能な状態とする」ことを指すものとする。
【0083】
油圧モータ281は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンモータであり、モータ軸282と、該モータ軸282に相対回転不能に嵌装されるシリンダブロック283と、該シリンダブロック283に穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストン284・284・・・と、油圧ポンプ271から搬送されてきた圧油によるピストン284・284・・・の往復駆動力をモータ軸282の回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する可動斜板285を備えている。可動斜板285とピストン284・284・・・とが当接する部位にはスラストベアリング286が設けられている。ピストン284・284・・・とシリンダブロック283とで囲まれる空間(作動油室)には巻きバネ284a・284a・・・が内装されており、ピストン284・284・・・を可動斜板285に当接する方向に付勢している。
【0084】
油圧モータ281の可動斜板285は、操作軸287の下端部に固設される。操作軸287はミッションケース259の筐体を構成する上下のハウジング259a・259bの内、上半部を構成するハウジング259aに回動可能に軸支され、操作軸287の上端はミッションケース259の上方に突出するとともに図示せぬアームが固設されている。該アームは座席11近傍に設けられた変速レバーの操作に連動して回動される。
【0085】
従って、変速レバーの操作により可動斜板285の板面とモータ軸282の軸線方向との成す角度を変更することが可能である。可動斜板285の傾倒角度を調節することにより、油圧ポンプ271から搬送されてくる圧油の量に対するモータ軸282の回転量を調節することが可能である。
なお、本実施例の油圧モータ281については可動斜板285を用いているが、該可動斜板285に代えて、固定式斜板(モータ軸282と斜板の板面との成す角度が固定されている)を用いても良い。
【0086】
油圧ポンプ271のポンプ軸272、および油圧モータ281のモータ軸282は、それぞれ中途部にて取付部材254に軸受を介して軸支される。取付部材254は正面視(トラクタ30の前方から見て)略凹型の部材であり、凹み部分には差動機構251が取付部材254と干渉しないように配置される。また、油圧ポンプ271のシリンダブロック273、および油圧モータ281のシリンダブロック283は、それぞれ取付部材254の左右側面に固設されたバルブプレート278・288に当接しつつ回転する。このとき、シリンダブロック273およびシリンダブロック283は、バルブプレート278・288に当接する方向にバネ等の弾性体により付勢され、該当接部からの圧油の漏出を極力抑えている。バルブプレート278・288には、それぞれ一対の吐出ポートおよび吸入ポートが穿設されており、バルブプレート278の吐出ポートとバルブプレート288の吸入ポート、バルブプレート278の吸入ポートとバルブプレート288の吐出ポート、はそれぞれ取付部材254に穿設された油圧経路255・256により連通されている。
取付部材254はミッションケース259の筐体の下半部を構成するハウジング259bに固設され、ミッションケース259内に収容される。該取付部材254は正面視略凹型の部材であり、該凹部に差動機構251が配置されるとともに、左右側面にはそれぞれ油圧ポンプ271および油圧モータ281が取り付けられる。そして、油圧ポンプ271のポンプ軸271、油圧モータ281のモータ軸282および差動機構251が一直線となるように配置される。
【0087】
なお、油圧経路255・256はチェック・中立バルブ(図示せず)を介して連通されるとともに、HST252から漏出した圧油を補充するためのチャージ回路(図示せず)が接続されている。チェック・中立バルブは油圧ポンプ271が中立位置のときは「開」となり、チャージ回路と油圧経路255・256とを連通する。また、チェック・中立バルブは油圧ポンプ271が圧油を搬送するときは「閉」となる。
【0088】
以下では制動手段253の詳細説明を行う。図6に示す如く、制動手段253は主にローター291、ブレーキパッド292・293、カムリング294、カムボール295、操作軸296、ケーシング297等で構成され、HST252の右側に配置されている。
ローター291はモータ軸282の他端(差動機構251のインターナルギヤ265に嵌合している側とは反対の端部)に外嵌固定された略円盤形状の部材である。
ブレーキパッド292・293は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、それぞれローター291の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段253が作動しないときはブレーキパッド292・293の盤面とローター291の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。
カムリング294は中央部に孔が穿設された略円盤形状の部材であり、ブレーキパッド292のローター291と対向する盤面と反対の盤面に対向する。
カムボール295は球状部材であり、カムリング294とブレーキパッド292との間に配置される。このとき、ブレーキパッド292の盤面にはカムボール295の一部が嵌合する凹みが穿設されるとともに、カムリング294の盤面にはカムボール295の一部が嵌合する溝が穿設される。カムリング294の盤面に穿設されたカムボール295の一部が嵌合する溝は、カムリングの中心から同心状に設けられており、溝の深さは一端が浅く、他端が深くなるように形成される。
操作軸296はカムリング294を回動させるための軸であり、ミッションケース259に回動可能に軸支されるとともに、操作軸296の一端はミッションケース259の側方に突出している。
【0089】
ケーシング297はローター291近傍においてモータ軸282を軸受を介して軸支するとともにブレーキパッド292・293、カムリング294、カムボール295等を収容するものであり、ミッションケース259内に固設される。このとき、ブレーキパッド293はケーシング297に固設され、ブレーキパッド292はモータ軸282の軸線方向に摺動可能かつモータ軸282の回転方向には回動不能、カムリング294はモータ軸282の軸線方向に摺動不能かつモータ軸282の回転方向に回動可能となっている。
操作軸296を回動して制動手段253を作動させると、操作軸296に連動してカムリング294が回動する。このとき、カムリング294に穿設されたカムボール295と当接している溝は、その当接箇所の溝の深さが徐々に浅くなり、カムボール295およびブレーキパッド292はローター291側に移動する。
従って、ブレーキパッド292・293間の隙間が小さくなり、ローター291の盤面とブレーキパッド292・293の盤面とが当接して摩擦力を発生する。このようにして、制動手段253によりモータ軸282の回転が制動される。
【0090】
制動手段253は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT250の入力分割要素(本実施例ではインターナルギヤ265)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段253が作動し、その後は制動手段253が解除される構成としても良い。
【0091】
以下では、図6を用いてデフ装置のデファレンシャルギヤ301および出力軸(左出力軸306Lおよび右出力軸306R)の詳細構成について説明する。
デファレンシャルギヤ301は主にリングギヤ302、基部303、ピニオンギヤ304・304、サイドギヤ305・305等で構成される。
リングギヤ302はデファレンシャルギヤ301全体を左出力軸306Lおよび右出力軸306Rの回転方向に沿って回転させるためのギヤであり、基部303に外嵌固定される。リングギヤ302はモータ軸282の外周面に形成されたギヤ部282aと互いに噛合する。
基部303は筒状の部材であり、左出力軸306Lの中央寄り端部および右出力軸306Rの中央寄り端部に対して回転可能に遊嵌される。
基部303の外周面にはピニオン軸303a・303aが突設され、ピニオンギヤ304・304がそれぞれ回転自在に遊嵌される。サイドギヤ305・305はそれぞれ左出力軸306Lおよび右出力軸306Rに外嵌固定される。サイドギヤ305・305はピニオンギヤ304・304と互いに噛合する。
左出力軸306Lおよび右出力軸306Rはミッションケース259に軸支され、左出力軸306Lの左端部および右出力軸306Rの右端部はミッションケース259の外部に突出し、該突出端にはそれぞれ後輪2・2が固設される。
【0092】
以下では、図1、図6および図7を用いてミッションケース259の駆動力の伝達経路について説明する。
エンジン5が回転駆動されると、プーリ31、プーリ32およびベルト33を介して入力軸268が回転駆動される。入力軸268の下端部に形成されたベベルギヤ部268aはベベルギヤ270と噛合しており、該ベベルギヤ270が外嵌固定されている伝達軸258、および該伝達軸258に外嵌固定されているギヤ257が一体的に回転駆動される。そして、ギヤ257とギヤ267とが互いに噛合していることから、キャリア部263が回転駆動される。
【0093】
キャリア部263が回転駆動されると、プラネタリギヤ262と噛合するインターナルギヤ265が回転駆動される。そして、インターナルギヤ265に突設されたポンプ軸272が一体的に回転駆動される。
油圧ポンプ271の可動斜板275を中立位置から傾倒させると、ポンプ軸272の回転に連動してシリンダブロック273が回転駆動され、ピストン274・274が往復摺動し、圧油が油圧経路255・256を介して油圧モータ281に搬送される。
油圧モータ281の可動斜板285が傾倒された状態のとき、油圧ポンプ271から搬送されてきた圧油によりピストン284・284・・・が往復摺動してシリンダブロック283が回転駆動される。このようにして、シリンダブロック283が相対回転不能に嵌装されたモータ軸282は、シリンダブロック283と一体的に回転駆動される。
以上の如く、HMT250において、入力要素であるキャリア部263から入力分割要素であるインターナルギヤ265、HST252を経てモータ軸282に駆動力が伝達される経路を「第一の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0094】
一方、プラネタリギヤ262はサンギヤ264とも互いに噛合していることから、キャリア部263を回転させる駆動力の一部は直接モータ軸282に伝達される。このように入力要素であるキャリア部263から出力要素であるモータ軸282に直接駆動力が伝達される経路を「第二の駆動力伝達経路」と呼ぶこととする。
【0095】
第一の駆動力伝達経路および第二の駆動力伝達経路を経てモータ軸282が回転駆動されると、該モータ軸282のギヤ部282aと噛合するリングギヤ302が回転駆動される。そして、デファレンシャルギヤ301により回転数が調整されて左出力軸306Lおよび右出力軸306Rが回転駆動される。
【0096】
なお、エンジン始動時からポンプ軸272が所定の回転数以上で回転するまで制動手段253を作動させ(すなわち第二の駆動力伝達経路を介したモータ軸282への駆動力伝達を抑制し)、その後制動手段253を解除することにより、HMT250に起因する振動を防止することが可能である。
【0097】
図6に示す如く、本実施例のHMT250は、差動機構251とHST252とを組み合わせた油圧−機械式変速装置であり、HMT250はデファレンシャルギヤ301が中途部に設けられた出力軸(左出力軸306Lおよび右出力軸306R)と、HST252の油圧ポンプ271のポンプ軸272と、HST252の油圧モータ281のモータ軸282とが互いに平行に配置されている(本実施例の場合、出力軸、ポンプ軸272、モータ軸282の軸線方向はいずれもトラクタ30の機体の左右方向となる)。
また、図7に示す如く、本実施例のHMT250は、デファレンシャルギヤ301が中途部に設けられた出力軸(左出力軸306Lおよび右出力軸306R)と、HST252の油圧ポンプ271のポンプ軸272と、HST252の油圧モータ281のモータ軸282とが略同一平面(水平面)内に配置されている。
さらに、出力軸(左出力軸306Lおよび右出力軸306R)と、HMT250とが同一のミッションケース259内に設けられている。
【0098】
このように構成することにより、同一のミッションケース259内にHMT250と出力軸を収納しているにもかかわらず該ミッションケース259の上下高さを小さくし、コンパクトに構成することが可能である。また、ミッションケース259の上下高さを抑えることにより、ミッションケース259の出力軸に直接後輪2・2を固設しても地上表面からミッションケース259下端までの高さを大きくとることが可能である。
さらに、出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82の軸線の高さと、ミッションケースを構成する上下二分割のハウジングの分割面高さを合わせることにより、ハウジングを鋳造成型する際に出力軸、ポンプ軸72およびモータ軸82をミッションケースに軸支するための軸受の嵌装部も同時に成型し、機械加工によりハウジングに軸受の嵌装部を成形する工程を省略してコストを削減することが可能である。
【0099】
また、本実施例のHMT250にエンジン5からの駆動力を入力する入力軸268は、その軸線方向がミッションケース259の略上下方向となっている。
このように構成することにより、駆動源からの駆動力伝達経路(図1に示すトラクタ30の場合、エンジン5からプーリ31、ベルト33、プーリ32を経て入力軸268を回転駆動する駆動力伝達経路)をミッションケース259よりも上下方向において高い位置に配置して、走行車両の下部空間(前輪1・1と後輪2・2の間の空間)を広く取り、該空間を有効利用することが可能である。トラクタ30の場合、ミッドマウントモア34がエンジン5からミッションケース159への駆動力伝達経路と干渉することを防止することが可能である。
【0100】
さらに、第三実施例のHMT250においては、図6および図7に示す如く、油圧ポンプ271のポンプ軸272と、油圧モータ281のモータ軸282とが一直線上に(より厳密には、ポンプ軸272の軸線と、モータ軸282の軸線とが同一直線上に)配置される。
このように構成することにより、第一実施例のHMT50に係るミッションケース59と比較して、第三実施例のHMT250に係るミッションケース259の前後方向の長さを短く構成することが可能となる。
【0101】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0102】
即ち、請求項1に示す如く、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
デファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸と、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプのポンプ軸と、静油圧式無段変速装置の油圧モータのモータ軸とを互いに平行、かつ略同一平面内に配置し、かつ、出力軸と油圧−機械式変速装置とをミッションケース内に設けたので、ミッションケース内に油圧−機械式変速装置と出力軸を収納しているにもかかわらず、ミッションケースの上下高さを小さくし、コンパクトに構成することが可能である。
また、ミッションケースの上下高さを抑えることにより、ミッションケースの出力軸に直接後輪を固設しても地上表面からミッションケース下端までの高さを大きくとることが可能である。
さらに、出力軸、ポンプ軸およびモータ軸の軸線の高さと、ミッションケースを構成する上下二分割のハウジングの分割面高さを合わせることにより、ハウジングを鋳造成型する際に出力軸、ポンプ軸およびモータ軸をミッションケースに軸支するための軸受の嵌装部も同時に成型し、機械加工によりハウジングに軸受の嵌装部を成形する工程を省略してコストを削減することが可能である。
【0103】
請求項2に示す如く、前記油圧ポンプのポンプ軸と、油圧モータのモータ軸とを一直線上に配置したので、ミッションケースの前後方向の長さを短く構成することが可能となる。
【0104】
請求項3に示す如く、油圧−機械式変速装置に駆動力を入力するための入力軸の軸線方向をミッションケースの略上下方向としたので、駆動源からの駆動力伝達経路をミッションケースよりも上下方向において高い位置に配置して、走行車両の下部空間を広く取り、該空間を有効利用することが可能である。
【0105】
請求項4に示す如く、油圧−機械式変速装置とデファレンシャルギヤとの間の駆動力伝達経路に、制動手段を設けたので、エンジン始動時からポンプ軸が所定の回転数以上で回転するまでの間に油圧−機械式変速装置に生じる振動を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油圧−機械式変速装置を備える作業車両の模式図。
【図2】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第一実施例の平面断面図。
【図3】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第一実施例の側面断面図。
【図4】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第二実施例の平面断面図。
【図5】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第二実施例の側面断面図。
【図6】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第三実施例の平面断面図。
【図7】本発明に係る油圧−機械式変速装置の第三実施例の側面断面図。
【符号の説明】
30 トラクタ
50 油圧−機械式変速装置(HMT)
51 差動機構
52 静油圧式無段変速装置(HST)
53 制動手段
59 ミッションケース
68 入力軸
71 油圧ポンプ
72 ポンプ軸
81 油圧モータ
82 モータ軸
101 デファレンシャルギヤ
106L・106R 出力軸
Claims (4)
- 差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
デファレンシャルギヤが中途部に設けられた出力軸と、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプのポンプ軸と、静油圧式無段変速装置の油圧モータのモータ軸とを互いに平行、かつ略同一平面内に配置し、かつ、出力軸と油圧−機械式変速装置とをミッションケース内に設けた、ことを特徴とする油圧−機械式変速装置。 - 前記油圧ポンプのポンプ軸と、油圧モータのモータ軸とを一直線上に配置した、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧−機械式変速装置。
- 油圧−機械式変速装置に駆動力を入力するための入力軸の軸線方向をミッションケースの略上下方向とした、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧−機械式変速装置。
- 油圧−機械式変速装置とデファレンシャルギヤとの間の駆動力伝達経路に、制動手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の油圧−機械式変速装置。
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