以下では、本発明に係る作業車両の実施の一形態(第一実施形態)であるトラクタ1について説明する。なお、本発明に係る作業車両は、本実施形態に係るトラクタ1に限るものではなく、その他の農業車両や建設車両、産業車両等、広く車両全般に適用することが可能である。また、以下では図中の矢印Fの方向を前方向と定義して説明を行う。
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その後部でエンジン3に連結される。エンジン3の後部には、トラクタ1の動力伝達機構の一部を収納するトランスミッションケース10が長手方向を前後方向として連結される。機体フレーム2の前部はフロントアクスルを介して左右一対の前輪4・4に支持され、トランスミッションケース10の後部はリアアクスルを介して左右一対の後輪5・5に支持される。
そして、エンジン3の動力が前記動力伝達機構で変速された後、前記フロントアクスルを経て左右一対の前輪4・4に伝達可能とされるとともに、前記リアアクスルを経て左右一対の後輪5・5に伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪4・4及び左右一対の後輪5・5が回転駆動され、トラクタ1の走行が行われる。
また、エンジン3の動力が前記動力伝達機構で変速された後、トランスミッションケース10に対して作業機装着装置6を介して装着された図示しない耕耘装置等の作業機にも伝達可能とされる。さらに、エンジン3の動力によって駆動される、図示しない油圧ポンプにより圧送される作動油を、機体フレーム2及びトランスミッションケース10に対して装着された図示しないフロントローダ等の作業機に供給可能とされる。このようにして、エンジン3の動力が伝達されることによって、種々の作業機が駆動される。
トランスミッションケース10の上部においては、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部7が設けられ、キャビン8によって覆われる。また、キャビン8の前方には、エンジン3を覆うボンネット9が設けられる。
以下では、トランスミッションケース10内に収納される動力伝達機構について説明する。
図2及び図3に示すように、トランスミッションケース10内には、前記動力伝達機構の一部であるミッション入力軸20、ギヤ機構30、無段入力軸40、無段変速機50、無段出力軸70、アイドルギヤ80、走行出力軸90、正逆転切換クラッチ機構100、遊星歯車機構110、高低速切換クラッチ機構120、及び副変速クラッチ機構130等が収納される。また、トランスミッションケース10内には、前記動力伝達機構を支持するための第一リテーナ11、支持部材としての第二リテーナ12、第三リテーナ13、及び第四リテーナ14等が固定される。
第一軸としてのミッション入力軸20は、第一ミッション入力軸21、第二ミッション入力軸22、カップリング23、第三ミッション入力軸24等から構成される。第一ミッション入力軸21は、その軸線方向を前後方向に向けて配置される。第一ミッション入力軸21の前端部は、軸受を介して第一リテーナ11に回転可能に支持される。 第二ミッション入力軸22は、その軸線方向を前後方向に向けて第一ミッション入力軸21の後方に配置される。第二ミッション入力軸22の前端部近傍は、軸受を介して第二リテーナ12に回転可能に支持される。第二ミッション入力軸22の後端部は、後述する第一ギヤ31及び軸受を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。カップリング23は、第一ミッション入力軸21の後端部及び第二ミッション入力軸22の前端部とスプライン嵌合することにより、第一ミッション入力軸21と第二ミッション入力軸22とを相対回転不能となるように連結する。第三ミッション入力軸24は、その軸線方向を前後方向に向けて第二ミッション入力軸22の後方に配置される。第三ミッション入力軸24の前端部は、第二ミッション入力軸22の後端部とともに第一ギヤ31及び軸受等を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。第三ミッション入力軸24の後端部は、図示しないギヤ等を介して、トラクタ1に装着される耕耘装置等に動力を伝達するための図示しないPTO軸と連結される。
図3に示す一対の歯車としてのギヤ機構30は、第一歯車としての第一ギヤ31及び第二歯車としての第二ギヤ32等から構成される。第一ギヤ31は、第二ミッション入力軸22上(より詳細には、第二ミッション入力軸22の後端部)に配置される。第一ギヤ31は、第二ミッション入力軸22及び第三ミッション入力軸24とスプライン嵌合される。これによって、第一ギヤ31は第二ミッション入力軸22及び第三ミッション入力軸24と一体的に回転することができるとともに、当該第一ギヤ31によって第二ミッション入力軸22と第三ミッション入力軸24とが相対回転不能となるように連結される。第二ギヤ32は、後述する第一無段入力軸41上(より詳細には、第一無段入力軸41の後端部近傍)に配置されるとともに、第一ギヤ31と歯合される。第二ギヤ32は、第一無段入力軸41とスプライン嵌合され、第一無段入力軸41と一体的に回転することができる。
図2及び図3に示す第二軸としての無段入力軸40は、第一無段入力軸41、第二無段入力軸42、及びカップリング43等から構成される。第一無段入力軸41は、その軸線方向を前後方向に向けて、すなわちミッション入力軸20(第一ミッション入力軸21、第二ミッション入力軸22、及び第三ミッション入力軸24)と平行に配置される。第一無段入力軸41の後端部は、第二ミッション入力軸22の後端部と前後方向において略同一位置に配置される。第一無段入力軸41の後端部は、軸受を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。第一無段入力軸41の中途部は、軸受を介して第四リテーナ14に回転可能に支持される。第二無段入力軸42は、その軸線方向を前後方向に向けて第一無段入力軸41の前方に配置される。第二無段入力軸42の前端部は、第一リテーナ11に回転可能に支持される。カップリング43は、第一無段入力軸41の前端部及び第二無段入力軸42の後端部とスプライン嵌合することにより、第一無段入力軸41と第二無段入力軸42とを相対回転不能となるように連結する。
図2及び図4に示す無段変速機50は、前記動力伝達機構の一部を成すものであり、エンジン3からの動力を無段階に変速させることが可能なものである。
無段変速機50は、可変容量型の油圧ポンプ51、固定容量型の油圧モータ59、油圧サーボ機構65等を備えており、油圧ポンプ51は入力側ハウジング52、斜板保持部材53、入力側斜板54、シリンダブロック55、入力側プランジャ56・56・・・、入力側タイミングスプール57・57・・・、入力側スプールカム58等によって構成され、また、油圧モータ59はシリンダブロック55、出力側プランジャ60・60・・・、出力側タイミングスプール61・61・・・、出力側スプールカム62、出力側斜板63等によって構成されている。
さらに詳述すると、シリンダブロック55は、第二無段入力軸42とスプライン嵌合により相対回転不能に固定されており、シリンダブロック55と第二無段入力軸42が一体的に回転する構成としている。また、シリンダブロック55には、第二無段入力軸42の軸線方向に往復動する入力側プランジャ56・56・・・及び出力側プランジャ60・60・・・と、同じく軸線方向に往復動する入力側タイミングスプール57・57・・・及び出力側タイミングスプール61・61・・・を収容している。
また、入力側プランジャ56・56・・・は、第二無段入力軸42の軸線に対する傾斜角度を後述する油圧サーボ機構65により変更可能な入力側斜板54(可動斜板)と、斜板面54aにおいて当接しており、また、出力側プランジャ60・60・・・は、前記軸線に対して所定の傾斜角度を成す出力側斜板63と、斜板面63aにおいて当接している。そして、入力側斜板54の軸線に対する傾斜角度を変更することにより、入力側プランジャ56・56・・・が往復動する振幅量が変化するため、往復動に伴って吸入及び排出する作動油量が変化する。入力側プランジャ56・56・・・と出力側プランジャ60・60・・・はシリンダブロック55内の油路により連通しているため、作動油量の変化は出力側プランジャ60・60・・・へと伝達される。出力側プランジャ60・60・・・の往復動する振幅量は変化しないため、出力側プランジャ60・60・・・へ供給される作動油量の変化によって、出力側プランジャ60・60・・・が当接している出力側斜板63の回転数を可変とする構成としている。
このように、無段変速機50は、第二無段入力軸42に入力される入力回転を、入力側斜板54の斜板面54aの軸線に対する傾斜角度を変更することにより、出力側斜板63の回転数を所望する回転数に調整しつつ回転出力を行うものである。
次に、出力側斜板63について説明する。出力側斜板63は、出力側プランジャ60を往復動させる力(即ち、シリンダブロック55内に形成された油圧回路内の作動油の圧力)を後述する無段出力軸70等の回転駆動力に変換するものである。また、出力側斜板63は第二無段入力軸42が貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材であり、その前部には斜板面63aが形成されている。斜板面63aには出力側プランジャ60の突出端が当接する。斜板面63aは第二無段入力軸42の軸線に対して所定の傾斜角を成している。
出力側斜板63の後端部には出力ケース64が固定され、出力側斜板63と出力ケース64が一体的に回転する構成としている。なお、出力側斜板63と第二無段入力軸42との間には軸受が介装されるので、出力側斜板63は第二無段入力軸42と相対回転可能である。出力ケース64には、略円柱状(中空軸状)に形成された後述する無段出力軸70が連結され、無段変速機50において変速された動力は当該無段出力軸70を介して取り出すことが可能である。
以下では、油圧サーボ機構65について説明する。油圧サーボ機構65は、入力側ハウジング52に前後方向に形成されたシリンダ66と、当該シリンダ66において前後方向に往復摺動可能に内挿されるピストン67と、当該ピストン67の後端部に固設される掛止部材68等で構成されている。
ピストン67の前端部には拡径部67aが形成される。ピストン67の拡径部67aによってシリンダ66内部の空間が2つに仕切られることにより、当該拡径部67aの前後に2つの油室が形成される。そして、図示せぬ電磁比例弁、サーボスプール等によって前記2つの油室内の油圧を変化させることにより、ピストン67を前後方向に往復摺動可能としている。
掛止部材68は、略直方体状の部材の一部に切り欠き68aを設け、平面視略U字状に形成したものである。掛止部材68は、切り欠き68aの開放側を側方に向けた状態で、ピストン67の後端部(突出端部)に固設されている。掛止部材68は、入力側斜板54の一端部(左端部)に設けられた円柱状の掛止部54bを掛止する。
上述の如く構成された無段変速機50において、トラクタ1の操作レバー等の操作に基づいてピストン67が前後方向に往復摺動されると、掛止部材68及び掛止部54bを介して入力側斜板54の傾斜角度が変更される。これによって、無段変速機50による変速比を変更(変速)することができる。
図2及び図3に示す第三軸としての無段出力軸70は、略円柱状に形成された中空軸である。無段出力軸70は、その軸線方向を前後方向に向けて、無段入力軸40(第一無段入力軸41及び第二無段入力軸42)と同一軸線上に配置される。すなわち、無段出力軸70の内部には第一無段入力軸41及び第二無段入力軸42が挿通されるとともに、無段出力軸70と第一無段入力軸41及び第二無段入力軸42とは相対回転可能とされる。無段出力軸70の中途部には、低速出力ギヤ部70aが形成される。無段出力軸70の前端部は出力ケース64と相対回転不能に連結される(図4参照)。無段出力軸70の前端部近傍は、軸受を介してトランスミッションケース10に回転可能に支持される。無段出力軸70の後端部は、軸受を介して第四リテーナ14に回転可能に支持される。無段出力軸70上(より詳細には、無段出力軸70の後端部近傍)には、逆転出力ギヤ71及び高速出力ギヤ72が配置される。逆転出力ギヤ71及び高速出力ギヤ72は無段出力軸70とスプライン嵌合され、無段出力軸70と一体的に回転することができる。
伝達歯車としてのアイドルギヤ80は、第二リテーナ12に形成される略円柱状の軸受部12aに支持されるとともに、無段出力軸70の低速出力ギヤ部70aと歯合される。より詳細には、軸受部12aには第二リテーナ12を前後方向に貫通する貫通孔12bが形成され、当該貫通孔12bに第二ミッション入力軸22が挿通されている。軸受部12aには軸受81・81が外嵌され、当該軸受81・81を介してアイドルギヤ80が回転可能に支持される。
走行出力軸90は、第一走行出力軸91、第二走行出力軸92、カップリング93、及び第三走行出力軸94等から構成される。第一走行出力軸91は、その軸線方向を前後方向に向けて、すなわちミッション入力軸20(第一ミッション入力軸21、第二ミッション入力軸22、及び第三ミッション入力軸24)と平行に配置される。第一走行出力軸91の前端部は、軸受を介して第二リテーナ12に回転可能に支持される。第一走行出力軸91の後端部は、軸受を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。第二走行出力軸92は、その軸線方向を前後方向に向けて第一走行出力軸91の後方に配置される。第二走行出力軸92の前端部は、軸受を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。第二走行出力軸92の後端部は、軸受及び後述する高速ギヤ132を介してトランスミッションケース10に回転可能に支持される。カップリング93は、第一走行出力軸91の後端部及び第二走行出力軸92の前端部とスプライン嵌合することにより、第一走行出力軸91と第二走行出力軸92とを相対回転不能となるように連結する。第三走行出力軸94は、その軸線方向を前後方向に向けて第二走行出力軸92の後方に配置される。第三走行出力軸94の前端部は、軸受及び高速ギヤ132を介してトランスミッションケース10に回転可能に支持される。第三走行出力軸94の後端部は、図示しないギヤ、リアアクスル等を介して、後輪5・5に連結される。
正逆転切換クラッチ機構100は、正転ギヤ101、逆転ギヤ102、及び正逆転切換クラッチ103等から構成される。正転ギヤ101は、第一走行出力軸91上(より詳細には、第一走行出力軸91の前端部近傍)に配置されるとともに、アイドルギヤ80と歯合される。正転ギヤ101は、軸受を介して第一走行出力軸91に相対回転可能に支持される。逆転ギヤ102は、第一走行出力軸91上(より詳細には、第一走行出力軸91の前端部近傍であって正転ギヤ101の後方)に配置されるとともに、逆転出力ギヤ71と歯合される。逆転ギヤ102は、軸受を介して第一走行出力軸91に相対回転可能に支持される。正逆転切換クラッチ103は、第一走行出力軸91上(より詳細には、第一走行出力軸91の正転ギヤ101と逆転ギヤ102との間)に配置される油圧クラッチである。正逆転切換クラッチ103は、図示しない電磁バルブを切り換えることにより、正転ギヤ101及び逆転ギヤ102のうちいずれか一方と第一走行出力軸91とを相対回転不能に連結する状態、又は正転ギヤ101及び逆転ギヤ102のいずれも第一走行出力軸91と連結しない状態に切り換えることができる。
図3に示す遊星歯車機構110は、サンギヤ111、キャリヤ112、プラネタリギヤ113・113・・・、リングギヤ114、及び遊星出力ギヤ115等から構成される。サンギヤ111は、第二ミッション入力軸22上(より詳細には、第二ミッション入力軸22の中途部)に配置される。サンギヤ111は、軸受を介して第二ミッション入力軸22に相対回転可能に支持される。サンギヤ111の前端部及び後端部には、それぞれギヤ部が形成される。サンギヤ111の前端部に形成されるギヤ部は、高速出力ギヤ72と歯合される。キャリヤ112は、第二ミッション入力軸22上(より詳細には、第二ミッション入力軸22の中途部であってサンギヤ111の後方)に配置される。キャリヤ112は、第二ミッション入力軸22とスプライン嵌合される。これによって、キャリヤ112は第二ミッション入力軸22と一体的に回転することができる。プラネタリギヤ113・113・・・は、プラネタリ軸113a・113a・・・を介してそれぞれキャリヤ112に回転可能に支持される。プラネタリギヤ113・113・・・はキャリヤ112の前方に配置され、第二ミッション入力軸22の軸線を中心とする同心円上に配置される。プラネタリギヤ113・113・・・は、サンギヤ111の後端部に形成されるギヤ部と歯合される。リングギヤ114は、円筒形状の歯車であり、その内周面にギヤ部が形成される。リングギヤ114のギヤ部は、プラネタリギヤ113・113・・・と歯合される。遊星出力ギヤ115は、第二ミッション入力軸22上(より詳細には、第二ミッション入力軸22の中途部であってキャリヤ112の後方)に配置される。遊星出力ギヤ115は、軸受を介して第二ミッション入力軸22に相対回転可能に支持される。遊星出力ギヤ115の前端部及び後端部には、それぞれギヤ部が形成される。遊星出力ギヤ115の前端部に形成されるギヤ部は、リングギヤ114のギヤ部と歯合される。
高低速切換クラッチ機構120は、高速ギヤ121及び高低速切換クラッチ122等から構成される。高速ギヤ121は、第一走行出力軸91上(より詳細には、第一走行出力軸91の後端部近傍)に配置されるとともに、遊星出力ギヤ115の後端部に形成されるギヤ部と歯合される。高速ギヤ121は、軸受を介して第一走行出力軸91に相対回転可能に支持される。高低速切換クラッチ122は、第一走行出力軸91上(より詳細には、第一走行出力軸91の後端部近傍であって高速ギヤ121の前方)に配置される油圧クラッチである。高低速切換クラッチ122は、図示しない電磁バルブを切り換えることにより、高速ギヤ121と第一走行出力軸91とを相対回転不能に連結する状態、又は高速ギヤ121と第一走行出力軸91とを連結しない状態に切り換えることができる。
副変速クラッチ機構130は、低速ギヤ131、高速ギヤ132、副変速クラッチ133、中空軸134、入力ギヤ135、及び出力ギヤ136等から構成される。低速ギヤ131は、第二走行出力軸92上に配置される。低速ギヤ131は、軸受を介して第二走行出力軸92に相対回転可能に支持される。高速ギヤ132は、第二走行出力軸92上(より詳細には、低速ギヤ131の後方)に配置される。高速ギヤ132は、軸受を介してトランスミッションケース10に回転可能に支持される。また、高速ギヤ132は、第三走行出力軸94とスプライン嵌合される。これによって、高速ギヤ132は第三走行出力軸94と一体的に回転することができる。副変速クラッチ133は、第二走行出力軸92上(より詳細には、低速ギヤ131と高速ギヤ132との間)に配置される。副変速クラッチ133は、図示しないアームによって第二走行出力軸92の軸線方向に摺動されることにより、低速ギヤ131及び高速ギヤ132のうちいずれか一方と第二走行出力軸92とを相対回転不能に連結する状態、又は低速ギヤ131及び高速ギヤ132のいずれも第二走行出力軸92と連結しない状態に切り換えることができる。中空軸134は、その軸線方向を前後方向に向けて、第三ミッション入力軸24と同一軸線上に配置される。すなわち、中空軸134の内部には第三ミッション入力軸24が挿通されるとともに、中空軸134と第三ミッション入力軸24とは相対回転可能とされる。中空軸134の前端部は、軸受を介して第三リテーナ13に回転可能に支持される。中空軸134の後端部は、軸受を介してトランスミッションケース10に回転可能に支持される。入力ギヤ135は、中空軸134上(より詳細には、中空軸134の前端部)に配置されるとともに、低速ギヤ131と歯合される。入力ギヤ135は、中空軸134とスプライン嵌合される。これによって、入力ギヤ135は中空軸134と一体的に回転することができる。出力ギヤ136は、中空軸134上(より詳細には、中空軸134の後端部)に配置されるとともに、高速ギヤ132と歯合される。出力ギヤ136は、中空軸134とスプライン嵌合される。これによって、出力ギヤ136は中空軸134と一体的に回転することができる。
以下では、図3及び図4を用いて、上述の如く構成された動力伝達機構における、動力の伝達の態様について説明する。
エンジン3からの動力は、図示せぬクラッチを介して第一ミッション入力軸21に伝達され、当該第一ミッション入力軸21が回転される。第一ミッション入力軸21の回転は、カップリング23、及び第二ミッション入力軸22を介して第一ギヤ31に伝達される。また、第二ミッション入力軸22の回転は、第一ギヤ31を介して第三ミッション入力軸24に伝達され、ひいては前記PTO軸へと伝達される。さらに、第二ミッション入力軸22と一体的にキャリヤ112が回転する。
第一ギヤ31の回転は、第二ギヤ32を介して第一無段入力軸41に伝達される。この際、第一ギヤ31及び第二ギヤ32によって、第二ミッション入力軸22の回転は増速されて、第一無段入力軸41に伝達される。
第一無段入力軸41の回転は、カップリング43、及び第二無段入力軸42を介して無段変速機50に伝達される。無段変速機50に伝達された回転は、当該無段変速機50によって変速され、当該変速後の回転は無段出力軸70に伝達される。
無段出力軸70の回転は、アイドルギヤ80を介して正転ギヤ101に、逆転出力ギヤ71を介して逆転ギヤ102に、高速出力ギヤ72を介してサンギヤ111に、それぞれ伝達される。
サンギヤ111に伝達された回転は、プラネタリギヤ113・113・・・において、第二ミッション入力軸22からキャリヤ112に伝達された回転と合成され、リングギヤ114を介して遊星出力ギヤ115に伝達される。
高低速切換クラッチ122により高速ギヤ121と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されず、正逆転切換クラッチ103によって正転ギヤ101と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されている場合、正転ギヤ101と共に第一走行出力軸91が回転する。この場合、無段出力軸70と正転ギヤ101との間にアイドルギヤ80が介在するため、第一走行出力軸91は無段出力軸70と同一方向(正転方向)に回転する。高低速切換クラッチ122により高速ギヤ121と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されず、正逆転切換クラッチ103によって逆転ギヤ102と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されている場合、逆転ギヤ102と共に第一走行出力軸91が回転する。この場合、無段出力軸70と逆転ギヤ102との間にギヤは介在しないため、第一走行出力軸91は無段出力軸70と逆方向(逆転方向)に回転する。正逆転切換クラッチ103によって正転ギヤ101及び逆転ギヤ102と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されず、高低速切換クラッチ122により高速ギヤ121と第一走行出力軸91とが相対回転不能に連結されている場合、高速ギヤ121と共に第一走行出力軸91が正転方向に回転する。この場合の第一走行出力軸91の回転数は、正転ギヤ101の回転により第一走行出力軸91が回転する場合よりも高速となる。
第一走行出力軸91に伝達された回転は、カップリング93を介して第二走行出力軸92に伝達される。
副変速クラッチ133により低速ギヤ131と第二走行出力軸92とが相対回転不能に連結されている場合、第二走行出力軸92と共に低速ギヤ131が回転する。この場合、低速ギヤ131の回転は、入力ギヤ135、中空軸134、出力ギヤ136、及び高速ギヤ132を介して第三走行出力軸94に伝達される。副変速クラッチ133により高速ギヤ132と第二走行出力軸92とが相対回転不能に連結されている場合、第二走行出力軸92と共に高速ギヤ132が回転する。この場合、高速ギヤ132の回転は第三走行出力軸94に伝達される。また、この場合の第三走行出力軸94の回転数は、副変速クラッチ133により低速ギヤ131と第二走行出力軸92とが連結されている場合よりも高速となる。
第三走行出力軸94に伝達された回転は、図示しないリアアクスル等を介して後輪5・5へと伝達される。このように、トラクタ1はエンジン3の動力を、無段変速機50、正逆転切換クラッチ機構100、高低速切換クラッチ機構120、及び副変速クラッチ機構130によって適宜変速して所望の速度で走行することができる。
以下ではギヤ機構30についてさらに詳細に説明する。
上述の如く、ギヤ機構30は、ミッション入力軸20を介して伝達されるエンジン3からの動力を、増速した後に無段入力軸40へと伝達する。この際の第一ギヤ31と第二ギヤ32とのギヤ比(増速比)を適切に選択することにより、無段変速機50に最適な回転数を伝達することができる。また、仕様の異なるエンジン3をトラクタ1に搭載する場合であっても、一対のギヤ(第一ギヤ31及び第二ギヤ32)を変更するだけで、適切なギヤ比(増速比)を任意に選択することができ、無段変速機50に最適な回転数を伝達することができる。このように、無段変速機50へ伝達する動力を簡単な構成で増速することができ、かつ、仕様の異なるエンジン3を搭載する場合にも容易にギヤ比(増速比)を変更することができる。さらに、ギヤ機構30は、ミッション入力軸20の軸線方向において、エンジン3が連結される側と他側に配置されているため、一対のギヤ(第一ギヤ31及び第二ギヤ32)の組み換えを容易に行うことができる。
以下ではアイドルギヤ80についてさらに詳細に説明する。
上述の如く、アイドルギヤ80は、第二ミッション入力軸22を支持する軸受部12aに、軸受81・81を介して外嵌される。このように、アイドルギヤ80を支持するための軸を別途設けることなく、第二ミッション入力軸22を支持する軸受部12aにより支持することで、動力伝達機構をコンパクトに構成することができる。また、図5及び図6に示すように、本実施形態に係るアイドルギヤ80の中心軸(軸線)と、第二ミッション入力軸22の中心軸(軸線)とは、一致しないように配置される。詳細には、第二リテーナ12の軸受部12aの中心軸Xに対して、貫通孔12bの中心軸Yが偏心した状態で当該貫通孔12bが形成されている。これによって、軸受部12aに外嵌されるアイドルギヤ80は、貫通孔12bに支持される第二ミッション入力軸22に対して偏心した状態に配置される。このように、軸受部12aの中心軸Xを、貫通孔12bの中心軸Yに対して任意の位置に偏心するように形成することにより、無段出力軸70とミッション入力軸20との軸間距離に制限されることなく、アイドルギヤ80を任意の軸線上に配置することができる。
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車両)は、エンジン3から出力された動力を伝達するミッション入力軸20(第一軸)と、ミッション入力軸20と平行に配置され、軸線上に無段変速機50を備える無段入力軸40(第二軸)と、ミッション入力軸20に配置される第一ギヤ31(第一歯車)、及び無段入力軸40に配置される第二ギヤ32(第二歯車)からなり、ミッション入力軸20から無段入力軸40へと動力を伝達するギヤ機構30(一対の歯車)と、を備え、ミッション入力軸20の一側にエンジン3からの動力が入力され、他側に第一ギヤ31が配置されるものである。このように構成することにより、エンジン3からの動力を無段変速機50に伝達する際に、簡単な構成で無段変速機50に適した動力になるように増減速することができる。したがって、動力伝達機構を安価かつコンパクトに構成することができる。また、仕様が異なるエンジン3を適用する場合には、一対の歯車(ギヤ機構30)を変更するだけで増減速比を調節することができ、無段変速機50等のその他の部品の共用化を図ることができる。また、一対の歯車(ギヤ機構30)の組み換えを容易に行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
また、トラクタ1は、無段入力軸40と同軸上に配置され、無段変速機50から出力された動力を伝達する無段出力軸70(第三軸)と、ミッション入力軸20の軸上に配置され、無段出力軸70からの動力を伝達可能なアイドルギヤ80(伝達歯車)と、を具備するものである。このように構成することにより、無段変速機50からの動力を取り出すためのアイドルギヤ80をミッション入力軸20上に配置することで、別途軸を配置するスペースが必要ないため、動力伝達機構をコンパクトに構成することができる。
また、トラクタ1は、ミッション入力軸20を支持するとともに、アイドルギヤ80をミッション入力軸20の軸線と異なる軸線上に支持する第二リテーナ12(支持部材)を具備するものである。このように構成することにより、第二リテーナ12を介してアイドルギヤ80を支持することにより、ミッション入力軸20とは異なる軸線上にアイドルギヤ80を支持することができる。したがって、無段出力軸70とミッション入力軸20との軸間距離に制限されることなく、無段出力軸70とアイドルギヤ80との軸間距離を設定することができ、所望のアイドルギヤ80を選定することができる。また、第二リテーナ12を適宜変更することで、無段出力軸70とアイドルギヤ80との軸間距離を変更することができ、所望のアイドルギヤ80に変更することで当該アイドルギヤ80による増減速比を所望の値に設定することができる。