まず、本発明に係わる作業車両1をトラクタとした全体構成について、図1より説明する。なお、矢印F方向を前方とする。作業車両1は、エンジン3が機体フレーム20の前部のボンネット2内に搭載され、該ボンネット2の後方にはステアリングハンドル4が配設され、該ステアリングハンドル4の後方には、オペレータが着座する運転席5が設けられ、キャビン21により覆われている。そして、該運転席5の下方には、変速装置30を収納するミッションケース6が配設され、該ミッションケース6の後部両側には、リアアクスルケース8を介して後輪10・10が支承されている。
また、前記ミッションケース6の下前部から伝動軸22を介して、フロントアクスルケース7に動力が伝達され、前輪9・9が駆動されるようにしている。
次に、図2及び図3を用いて、本発明に係る変速装置30の構成について説明する。変速装置30は、主としてミッションケース6、入力軸31、油圧式無段変速装置40、主変速装置50、副変速装置60、PTO変速装置70、差動機構80等を具備する。
前記ミッションケース6には前後方向に、入力軸31、HST入力軸41、HST出力軸26、クラッチ軸51、出力軸61、PTO入力軸71、PTO軸72が軸受を介して回転自在に支持されている。入力軸31には、エンジン3により発生された動力がダンパー23を介して伝達される。入力軸31は、前後方向にミッションケース6に支持され、後端には同一軸心上にPTO入力軸71が連設される。入力軸31の前部上にはポンプ駆動歯車221が固設され(図3)、ポンプ駆動歯車221は入力軸31と平行に配置したポンプ軸223上に固設したポンプ従動歯車222と歯合されている。ポンプ軸223の前端には作業機用油圧ポンプ224やチャージポンプ225が配置されて駆動可能としている。
前記入力軸31の後部には増速用歯車機構が設けられる。増速歯車機構は増速歯車24と増速従動歯車25からなり、入力軸31の後部上に増速歯車24が固設される。該増速歯車24はHST入力軸41の後部上に固設した増速従動歯車25と歯合されている。このように、前記入力軸31とHST入力軸41は、増速用歯車機構を介して連動連結されているので、出力馬力が大きいエンジンに対して小型の油圧式無段変速装置40で変速可能となり、従来の油圧式変速装置と遊星歯車機構を有する変速装置に比べて小型化でき、ひいては、コスト削減化を図ることができる。前記HST入力軸41の前端には油圧式無段変速装置40が配置され、HST入力軸41の中央部上にはパイプ状のHST出力軸26が外嵌され、該HST出力軸26上には前から主変速装置50の低速駆動歯車27、後進速駆動歯車28、高速駆動歯車29が固設されている。
油圧式無段変速装置40は、入力される動力を無段階に変速して出力するものである。油圧式無段変速装置40は、油圧ポンプ42、油圧モータ43、シリンダブロック44等を具備する。前記油圧式無段変速装置40は、HST入力軸41とHST出力軸26が同一軸心上に配置され、油圧ポンプ42と油圧モータ43が直列に配置されるため、コンパクトに構成され、ミッションケース6の後部に配置される主変速装置50よりも前上部の空いた空間に配置されて、ミッションケース6全体をコンパクトな構成としている。
油圧ポンプ42は、その容量を変更可能に構成された可変容量型油圧ポンプとしている。油圧ポンプ42は、入力側プランジャ42a、入力側斜板42b、入力側スプール弁等を具備する。入力側プランジャ42a・42a・・・は、シリンダブロック44の軸心と平行に形成された複数の孔に挿入され、往復摺動することで作動油の吸入及び排出を行うようにしている。
入力側斜板42bは、斜板アクチュエータ110により傾斜角度を変更可能に構成され、斜板アクチュエータ110は運転席5近傍に設けた主変速レバーの回動に応じて作動される。詳しくは、図4に示すように、主変速レバーの操作位置は主変速操作位置検出手段15により検出され、斜板アクチュエータ110及び主変速操作位置検出手段15は制御装置100と接続されている。こうして、主変速レバーの操作に応じて斜板アクチュエータ110が作動され、入力側斜板42bが傾倒され後述するHST出力軸26の回転数を変更できるようにしている。斜板アクチュエータ110はモータ、またはソレノイド、または電磁弁を用いた油圧サーボ等により構成でき、限定するものではない。入力側斜板42bには、入力側プランジャ42a・42a・・・の突出端が当接、または係合される。入力側スプール弁は、シリンダブロック44に形成される複数の孔に挿入され、入力側プランジャ42a・42a・・・によって吸入又は排出される作動油の油路を切り換えるものである。
上記の如く構成された油圧ポンプ42において、入力側斜板42bが傾斜している際にシリンダブロック44が回転すると、入力側プランジャ42a・42a・・・及び入力側スプール弁はHST入力軸41の周りをシリンダブロック44と共に回転しながら、シリンダブロック44の孔内をその軸線方向に往復運動する。当該入力側プランジャ42a・42a・・・の往復運動により、入力側スプール弁が切り換える油路を通じて、作動油が油圧モータ43へ吸入及び排出される。
油圧モータ43は、その容量を変更不可能な定容量型油圧モータとしている。油圧モータ43は、主として出力側プランジャ43a・43a・・・、出力側斜板43b、出力側スプール弁等を具備する。出力側プランジャ43a・43a・・・は、シリンダブロック44に軸心と平行に形成された複数の孔に挿入され、圧送される作動油により往復摺動される。
出力側斜板43bは、HST入力軸41に対する傾斜角度が変更不能に構成された板状の部材である。出力側斜板43bは、HST入力軸41上であって、シリンダブロック44の後方に、HST入力軸41と相対回転可能となるように配置される。出力側斜板43bには、出力側プランジャ43a・43a・・・の突出端が当接、または係合される。出力側スプール弁は、シリンダブロック44に形成される複数の孔に挿入され、出力側プランジャ43a・43a・・・に吸入又は排出される作動油の油路を切り換えるものである。
上記の如く構成された油圧モータ43において、油圧ポンプ42により作動油が供給されると、出力側プランジャ43a・43a・・・はシリンダブロック44の孔内をその軸線方向に往復運動する。当該出力側プランジャ43a・43a・・・の往復運動により、出力側斜板43bがシリンダブロック44に対して相対的に回転する。
シリンダブロック44は、略円柱状の部材であり、入力側プランジャ42a・42a・・・、入力側スプール弁、出力側プランジャ43a・43a・・・、及び出力側スプール弁が挿通される複数の孔が形成される。シリンダブロック44の軸心部には、HST入力軸41が挿通され、HST入力軸41とスプライン嵌合される。これによって、シリンダブロック44はHST入力軸41と一体的に回転する。
HST出力軸26は、前端が出力側斜板43bと連結されて一体的に回転するように構成されている。HST出力軸26は、その軸心部を中空に形成された中空軸とし、その内部にHST入力軸41が挿通される。
上記構成において油圧式無段変速装置40の動作態様について説明する。エンジン3から入力軸31に伝達された動力は、増速歯車24と増速従動歯車25により増速されて、HST入力軸41に伝えられる。この動力によりHST入力軸41上に固定したシリンダブロック44が回転される。この際、入力側斜板42bがシリンダブロック44の回転軸(HST入力軸41)の軸線と直交している場合、すなわち、入力側斜板42bの傾斜角度が0の場合、入力側プランジャ42a・42a・・・は往復運動を行わない。従って、油圧ポンプ42から油圧モータ43への作動油の供給が断たれるため、出力側プランジャ43a・43a・・・が往復運動をすることはなく、出力側斜板43bはシリンダブロック44と一体的に回転する。すなわち、HST出力軸26は、出力側斜板43b及びシリンダブロック44を介して、HST入力軸41と一体的に回転する。
入力側斜板42bを減速側に傾斜させると、出力側斜板43bはシリンダブロック44に対してHST入力軸41の回転方向と逆方向に相対的に回転する。図5に示すように、入力側斜板42bの傾斜角度を最大減速側(Y方向)に傾斜させると、HST出力軸26の回転数は0となるように設定され、走行停止状態となる。
入力側斜板42bを増速側(X方向)に傾斜させると、出力側斜板43bはシリンダブロック44に対してHST入力軸41の回転方向と同方向に相対的に回転する。入力側斜板42bの傾斜角度を最大増速側まで傾斜させると、HST出力軸26の回転数はHST入力軸41の回転数の2倍となるように設定している。
また、本実施形態の如く油圧式無段変速装置40をHST入力軸41上に配置することによって、コンパクト化が図れ、入力軸31から増速してHST入力軸41に入力することによって、油圧式無段変速装置40の作動油量を増加させて変速装置30の大型化を伴うことなく、低馬力のエンジン3により動力を入力して変速することにより、従来よりも大きな機体の作業車両を作動させることができる。
次に、主変速装置50について、説明する。主変速装置50は、低速駆動歯車27、後進速駆動歯車28、高速駆動歯車29、クラッチ軸51、低速クラッチ52、低速従動歯車53、後進クラッチ54、後進速歯車55、高速クラッチ56、高速従動歯車57、遊星歯車機構39等からなり、前進の高低と後進とを切換可能としている。
前記HST出力軸26上には、前からの順に低速駆動歯車27、後進速駆動歯車28、高速駆動歯車29が固設される。クラッチ軸51は、入力軸31やHST入力軸41と平行に前後方向にミッションケース6に回転自在に支持される。クラッチ軸51上に前から順に低速従動歯車53、後進速歯車55、高速従動歯車57が回転自在に遊嵌されている。
低速従動歯車53は入力軸31上に遊嵌した中間歯車32を介して低速駆動歯車27から動力が伝達される。中間歯車32は大径ギヤ32aと小径ギヤ32bかなり、大径ギヤ32aは低速駆動歯車27と歯合され、小径ギヤ32bは低速従動歯車53と歯合される。こうして、低速駆動歯車27から減速して低速従動歯車53に動力が伝達される。後進速歯車55は後進速駆動歯車28と歯合され、後進速駆動歯車28から動力が後進速歯車55に伝達される。
高速従動歯車57は入力軸31上に遊嵌した伝動歯車18と歯合され、伝動歯車18は遊星歯車機構39のアウターギヤ36と一体的に構成されている。遊星歯車機構39は、サンギヤ35、アウターギヤ36、プラネタリギヤ37、キャリヤ38等を具備する。
サンギヤ35は、入力軸31上であってキャリヤ38の前方に回転自在に支持されている。サンギヤ35の前部には一体的に遊星入力歯車34が形成され、遊星入力歯車34は高速駆動歯車29と歯合されている。サンギヤ35は、プラネタリギヤ37・37・・・と噛合される。
キャリヤ38は、入力軸31上に外嵌固定され、キャリヤ38の前外周部にプラネタリギヤ37・37・・・が回転自在に支持される。プラネタリギヤ37・37・・・は、入力軸31を中心とする同心円上に複数具備される。
アウターギヤ36は、入力軸31上であってサンギヤ35の後方に回転自在に支持される。アウターギヤ36は、前端外周部の内周に歯が形成されている。アウターギヤ36の後端部に伝動歯車18が形成されている。アウターギヤ36は、プラネタリギヤ37・37・・・と噛合される。
上記の構成において、高速駆動歯車29から遊星入力歯車34を介してサンギヤ35に動力が伝達され、サンギヤ35からプラネタリギヤ37・37・・・を介してアウターギヤ36に伝達されて増速され、伝動歯車18より高速従動歯車57に動力が伝達される。
前記低速クラッチ52は、低速従動歯車53とクラッチ軸51との間で油圧式無段変速装置40からの動力を断接するものである。低速クラッチ52は油圧クラッチにより構成され、クラッチ軸51上に設けられる。低速クラッチ52は、低速従動歯車53のボス部とクラッチ軸51上に固設したクラッチケース58との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。低速クラッチ52への圧油の送油の切り換えは、図4に示すように、電磁バルブによりなる主変速低速アクチュエータ111により切り換えられ、該主変速低速アクチュエータ111は制御装置100と接続されて制御される。この制御は後述する。
後進クラッチ54は、後進速歯車55とクラッチ軸51との間で油圧式無段変速装置40からの動力を断接するものである。後進クラッチ54は、後進速歯車55のボス部とクラッチ軸51上に固設したクラッチケース58との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。後進クラッチ54への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる主変速後進アクチュエータ112により切り換えられ、該主変速後進アクチュエータ112は制御装置100と接続されて制御される。
高速クラッチ56は、高速従動歯車57とクラッチ軸51との間で油圧式無段変速装置40からの動力を断接するものである。高速クラッチ56は高速従動歯車57のボス部とクラッチ軸51上に固設したクラッチケース59との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。高速クラッチ56への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる主変速高速アクチュエータ113により切り換えられ、該主変速高速アクチュエータ113は制御装置100と接続されて制御される。
また、クラッチ軸51と出力軸61との間には副変速装置60が配設される。副変速装置60は、副変速低速駆動歯車62、副変速高速駆動歯車63、副変速低速従動歯車64、副変速高速従動歯車65、副変速低速クラッチ66、副変速高速クラッチ67等を備える。
副変速低速駆動歯車62と副変速高速駆動歯車63はクラッチ軸51上に固設され、副変速低速駆動歯車62は出力軸61上に遊嵌した副変速低速従動歯車64と歯合され、副変速高速駆動歯車63は出力軸61上に遊嵌した副変速高速従動歯車65と歯合されている。
副変速低速クラッチ66は、副変速低速従動歯車64と出力軸61との間で主変速装置50からの動力を断接するものである。副変速低速クラッチ66は油圧クラッチにより構成され、出力軸61上に設けられる。副変速低速クラッチ66は、副変速低速従動歯車64のボス部と出力軸61上に固設したクラッチケース68との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。副変速低速クラッチ66への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる副変速低速アクチュエータ114により切り換えられ、該副変速低速アクチュエータ114は制御装置100と接続されて制御される。
副変速高速クラッチ67は、油圧クラッチにより構成され、出力軸61上に設けられる。副変速高速クラッチ67は、副変速高速従動歯車65のボス部と出力軸61上に固設したクラッチケース68との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。副変速高速クラッチ67への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる副変速高速アクチュエータ115により切り換えられ、該副変速高速アクチュエータ115は制御装置100と接続されて制御される。
前記出力軸61の後端には、ピニオン69が形成され、該ピニオン69は差動機構80のリングギヤ81と歯合されている。差動機構80はベベルギヤからなるデフサイドギヤやデフピニオンと、デフロック装置等からなり、両側からデフ出力軸82L・82Rを突出し、デフ出力軸82L・82R上にはそれぞれブレーキ装置83・83が設けられている。前記デフ出力軸82L・82Rの端部から遊星歯車機構からなる最終減速歯車機構84・84を介して車軸85L・85Rと連動連結され、エンジン3から変速装置30により変速した動力を車軸85L・85Rに固設した後輪10・10に伝達可能に構成している。
また、前記出力軸61の前部には前輪出力歯車91が固設され、該前輪出力歯車91から前輪増速機構90に動力を伝達可能としている。前輪増速機構90は4輪駆動歯車92と前輪増速駆動歯車93と4輪従動歯車95と前輪増速従動歯車96と4輪駆動クラッチ97と前輪増速クラッチ98等を具備する。
前輪出力歯車91は中間軸94上に固設した4輪駆動歯車92と歯合され、4輪駆動歯車92は前輪出力軸99上に遊嵌した4輪従動歯車95と歯合されている。また、中間軸94上には前輪増速駆動歯車93が固設され、前輪増速駆動歯車93は前輪出力軸99上に遊嵌した前輪増速従動歯車96と歯合されている。なお、中間軸94及び前輪出力軸99は出力軸61と平行に配設されている。前記前輪出力軸99の前端にはユニバーサルジョイント、伝動軸22、前輪差動機構等を介して前輪9・9に動力が伝達される。
前記4輪従動歯車95と前輪出力軸99との間には4輪駆動クラッチ97が配設され、前輪増速従動歯車96と前輪出力軸99との間には前輪増速クラッチ98が配設される。4輪駆動クラッチ97は油圧クラッチにより構成され、前輪出力軸99上に設けられる。
4輪駆動クラッチ97は、4輪従動歯車95のボス部と前輪出力軸99上に固設したクラッチケース100との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。4輪駆動クラッチ97への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる4WDアクチュエータ118により切り換えられ、該4WDアクチュエータ118は制御装置100と接続されて制御される。
前輪増速クラッチ98は、前輪増速従動歯車96のボス部と前輪出力軸99上に固設したクラッチケース100との間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。前輪増速クラッチ98への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなる増速アクチュエータ119により切り換えられ、該増速アクチュエータ119は制御装置10011と接続されて制御される。
このような構成において、図示しない前輪駆動切換操作具により2輪駆動に切り換えた場合は、4輪駆動クラッチ97および前輪増速クラッチ98はオフ、つまり、4WDアクチュエータ118および増速アクチュエータ119は作動されず、後輪10・10のみ駆動される。前輪駆動切換操作具により4輪駆動に切り換えた場合は、4輪駆動クラッチ97が作動され、出力軸61から前輪9に動力が伝達され、前輪9・9および後輪10・10が駆動される。この4輪駆動状態において、図示しない選択手段により前輪増速が選択されていると、ステアリングハンドル4が直進位置から設定角度以上回転されると、4輪駆動クラッチ97がオフとなると同時に前輪増速クラッチ98がオンとなり、前輪9・9が増速されて駆動される。
また、前記入力軸31の後端には、PTOクラッチ73を介してPTO入力軸71と接続可能としている。つまり、入力軸31の後方延長軸線上にPTO入力軸71が同心に配置され、入力軸31とPTO入力軸71の間にPTOクラッチ73が配置される。PTOクラッチ73は油圧クラッチにより構成され、入力軸31後端に形成したボス部とPTO入力軸71上に固設したクラッチケースとの間に摩擦板を配置し、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接して動力を伝達可能としている。PTOクラッチ73には一体的に慣性ブレーキ75が設けられ、クラッチケース74とミッションケース6との間に摩擦板が配設され、圧油によりピストンを伸長させて摩擦板を圧接してPTO軸72(PTO入力軸71)を制動可能としている。PTOクラッチ73及び慣性ブレーキ75への圧油の送油の切り換えは、電磁バルブよりなるPTOアクチュエータ116と慣性ブレーキアクチュエータ117とにより切り換えられ、該PTOアクチュエータ116と慣性ブレーキアクチュエータ117は制御装置100と接続されて制御される。
前記PTO入力軸71の後部上には、前からPTO3速歯車76、PTO2速歯車77、PTO1速歯車78、PTO逆転歯車79が固設され、PTO入力軸71と平行にPTO軸72が架設され、該PTO軸72上に前からPTO3速従動歯車176、PTO2速従動歯車177、PTO1速従動歯車178、PTO逆転従動歯車179が遊嵌され、PTO3速歯車76はPTO3速従動歯車176と歯合され、PTO2速歯車77はPTO2速従動歯車177と歯合され、PTO1速歯車78はPTO1速従動歯車178と歯合され、PTO逆転歯車79はカウンタ歯車173を介してPTO逆転従動歯車179と歯合されている。
PTO軸72上にはスライダ171が相対回転不能、かつ、摺動自在に外嵌され、スライダ171は、PTO3速従動歯車176、PTO2速従動歯車177、PTO1速従動歯車178、PTO逆転従動歯車179と摺動させることにより選択的に係合可能に構成されている。スライダ171は操縦部の運転席5近傍に配置されるPTO変速レバーと連動連結され、変速操作可能としている。
次に、制御回路につて説明する。図4に示すように、制御装置100には、モード切換手段17、エンジン回転数検知手段11、HST出力軸回転数検知手段12、走行速度検知手段13、車速設定手段14、主変速操作位置検出手段15、前後進切換検知手段16、斜板アクチュエータ110、主変速低速アクチュエータ111、主変速後進アクチュエータ112、主変速高速アクチュエータ113、副変速低速アクチュエータ114、副変速高速アクチュエータ115、PTOアクチュエータ116、慣性ブレーキアクチュエータ117、4WDアクチュエータ118、増速アクチュエータ119等が接続されている。なお、図示及び説明は省くが、アクセルレバーまたはアクセルペダルのエンジン回転数設定値検知手段やPTO変速レバー位置検知手段やステアリングハンドル4の操作位置検知手段等も制御装置100と接続されている。
制御装置100は、変速装置30の油圧クラッチを走行速度に応じて切換制御する。制御装置100は、周知のCPU、ROM、RAM等を具備する。モード切換手段17は作業モードと自動走行モードと高速移動走行モードとを切り換えるもので、スイッチまたダイヤル等で構成される。各モードの変速状態は後述する。エンジン回転数検知手段11は、フライホイル近傍に配置されてエンジン3の出力回転数を検出する。但し、入力軸31またはHST入力軸41の回転数を検出してもよい。HST出力軸回転数検知手段12は、油圧式無段変速装置40のHST出力軸26の回転数を検知する。
走行速度検知手段13は、出力軸61の回転数を検知して制御装置100に入力し走行速度に変換する。但し、走行速度は車軸85L・85Rの回転数を検知したり、レーザドップラ振動計等を用いて検出してもよく限定するものではない。車速設定手段14は、所望の速度で走行させたい場合に速度設定するものであり、ダイヤル等で構成されている。
主変速操作位置検出手段15は、運転席5近傍に配置される主変速操作手段となる主変速レバーの回動位置(操作位置)を検知するものであり、本実施例では無段階に変速可能としている。前後進切換検知手段16はステアリングハンドル4近傍に配置される前後進切換レバーの切り換え位置を検出するもので、スイッチ等で構成される。
上記の如く構成された変速装置30の動作について、図5を用いて説明する。まず、作業モードについて説明する。作業モードは副変速装置60を低速位置に保持し、高速走行ができないようにした状態で走行しながら作業するモードである。具体的には、エンジン3始動後において、作業車両1により耕耘作業等を行う場合には、モード切換手段17を作業モードに切り換える。前後進切換レバーが中立位置で、主変速レバーが中立位置のとき、主変速装置50および副変速装置60のクラッチはオフとなっており、入力側斜板42bは斜板アクチュエータ110の作動によりHST入力軸41に対して直角方向の一側(Y方向とする)の最大傾倒位置となるB位置まで傾倒され、HST出力軸26の回転が停止状態となるようにしている。このHST出力軸26の回転はHST出力軸回転数検知手段12により検知されフィードバックされている。
作業を行うために、PTO変速レバーを所望の変速位置に操作すると、PTOクラッチ73がオンとなりPTO軸72が回転可能とされる。エンジン回転数設定手段となるアクセルレバーを作業回転数に設定しエンジン回転数を上昇させ、前後進切換レバーを前進側に切り換えることにより、主変速低速アクチュエータ111および副変速低速アクチュエータ114が作動されて低速クラッチ52および副変速低速クラッチ66がオン(接)となる。そして、主変速レバーを高速側に徐々に回動していくと、斜板アクチュエータ110が作動されて入力側斜板42bが他側方向(X方向とする)に傾倒され、図5のa線のように、B位置から車速が上昇される。
このときの、油圧式無段変速装置40のHST出力軸26からの動力伝達経路は、HST出力軸26→低速駆動歯車27→中間歯車32→低速従動歯車53→低速クラッチ52→クラッチ軸51→副変速低速駆動歯車62→副変速低速従動歯車64→副変速低速クラッチ66→出力軸61と伝達され、後輪10及び前輪9を回転駆動する。
そして更に、主変速レバーを高速側に徐々に回動した場合には、走行速度が第一設定速度v1に達すると、主変速装置50が低速から高速に切り換わる。つまり、制御装置100が走行速度検知手段13からの検出値がv1を越えたと判断すると、主変速低速アクチュエータ111を非作動として低速クラッチ52をオフ(断)とすると同時に、主変速高速アクチュエータ113を作動して高速クラッチ56をオン(接)とする。そして、斜板アクチュエータ110を前記と逆方向に作動させ入力側斜板42bをY方向に傾斜させる。こうして走行速度が上昇され、図5のb線のように、車速が上昇される。但し、作業モードの場合、制御装置100により副変速装置60が低速に切り換えられた状態に維持され、高速走行ができないようにしている。つまり、主変速レバーを高速側に更に回動しても副変速装置60は変速されず、走行速度は設定速度以上速く走行することが制限されている。
このときの、油圧式無段変速装置40のHST出力軸26からの動力伝達経路は、HST出力軸26→高速駆動歯車29→遊星入力歯車34→遊星歯車機構39→伝動歯車18→高速従動歯車57→高速クラッチ56→クラッチ軸51→副変速低速駆動歯車62→副変速低速従動歯車64→副変速低速クラッチ66→出力軸61と伝達され、後輪10及び前輪9を回転駆動する。
また、走行を停止した(中立)状態から前後進切換レバーを後進側に回動すると、主変速後進アクチュエータ112および副変速低速アクチュエータ114が作動されて後進クラッチ54および副変速低速クラッチ66がオン(接)となる。なおこのとき、前進側の低速クラッチ52と高速クラッチ56はオフとなっている。そして、主変速レバーを高速側に徐々に回動していくと、斜板アクチュエータ110が作動されて入力側斜板42bがX方向に傾倒され、図5のc線のように、車速が上昇される。
次に、自動走行モードについて説明する。自動走行モードは車速に合わせて副変速装置が変速されるモードであり、走行速度が第二設定速度v2(v1<v2)となるA位置までは前記作業モードと同様に制御される。そして、走行速度が第二設定速度v2を越えると、主変速装置50が高速から低速に切り換えられ、副変速装置60が低速から高速に切り換えられる。つまり、走行速度検知手段13により走行速度が第二設定速度v2を越えたと検知すると、制御装置100は、主変速高速アクチュエータ113を非作動として高速クラッチ56をオフとし、主変速低速アクチュエータ111を作動として低速クラッチ52をオンとする。同時に、副変速低速アクチュエータ114を非作動として副変速低速クラッチ66をオフとし、副変速高速アクチュエータ115を作動させて副変速高速クラッチ67をオンとする。そして、主変速レバーを高速側に徐々に回動していくと、斜板アクチュエータ110が作動されて入力側斜板42bがX方向に傾倒され、図5のd線のように、車速が上昇される。
このときの、油圧式無段変速装置40のHST出力軸26からの動力伝達経路は、HST出力軸26→低速駆動歯車27→中間歯車32→低速従動歯車53→低速クラッチ52→クラッチ軸51→副変速高速駆動歯車63→副変速高速従動歯車65→副変速高速クラッチ67→出力軸61と伝達され、後輪10及び前輪9を回転駆動する。
但し、車速設定手段14が第二設定速度v2よりも少し速く、後述する第四設定速度v4よりも遅い第三設定速度v3以下(v2<v3<v4)に設定されている場合には、第二設定速度v2を越えても主変速装置50および副変速装置60は切り換えられずb線の延長上のf線の走行速度に制御される。
さらに、走行速度が増加され、第四設定速度v4に達すると、副変速装置60はそのままで主変速装置50が低速から高速に切り換えられる。すなわち、走行速度検知手段13により走行速度が第四設定速度v4を越えたと検知すると、制御装置100は、主変速低速アクチュエータ111を非作動として低速クラッチ52をオフとして主変速高速アクチュエータ113を作動し高速クラッチ56をオンとする。そして、主変速レバーを高速側に徐々に回動していくと、斜板アクチュエータ110が前記と逆方向作動されて入力側斜板42bがY方向に傾倒され、図5のe線のように、車速が上昇される。
このときの、油圧式無段変速装置40のHST出力軸26からの動力伝達経路は、HST出力軸26→高速駆動歯車29→遊星入力歯車34→遊星歯車機構39→伝動歯車18→高速従動歯車57→高速クラッチ56→クラッチ軸51→副変速高速駆動歯車63→副変速高速従動歯車65→副変速高速クラッチ67→出力軸61と伝達され、後輪10及び前輪9を回転駆動する。
高速走行から減速する場合は前記と逆のクラッチ切換が行われる。そして、副変速装置60が高速に切り換わった状態において前後進切換レバーを後進に切り換えると、A位置において副変速装置60は低速に切り換えられず、g線を減速してB位置に至り停止し、副変速装置60は低速に切り換わりc線で後進する。
次に、高速移動走行モードについて、説明する。高速移動走行モードは副変速装置60が高速に切り換えられた状態で維持され、主変速装置50のみ切り換えられる。即ち、停止した状態から前後進切換レバーを前進に切り換えて主変速レバーを増速側に回動すると、主変速装置50が低速に、副変速装置60が高速に切り換えられる。つまり、主変速低速アクチュエータ111を作動として低速クラッチ52をオンとし、副変速高速アクチュエータ115を作動させて副変速高速クラッチ67をオンとする。そして、主変速レバーを高速側に徐々に回動していくと、斜板アクチュエータ110が作動されて入力側斜板42bがX方向に傾倒され、図5のg線およびd線で車速が上昇される。
そして、第四設定速度v4に達すると、副変速装置60は低速から高速に切り換えられる。つまり、主変速装置50はそのままで、副変速低速アクチュエータ114が非作動として副変速低速クラッチ66がオフとなり、同時に、副変速高速アクチュエータ115が作動されて、副変速高速クラッチ67がオンとなる。
また、前後進レバーを後進側に切り換えると、副変速装置60は高速位置で、変速低速アクチュエータ111と主変速高速アクチュエータ113は非作動で主変速後進アクチュエータ112が作動されて、後進クラッチ54がオンとなり、図5のh線で車速が上昇される。なお、副変速装置60が高速位置で前進走行しているときに、前後進レバーを後進に切り換えると危険な状態となるので、制御装置100は警報を発して主変速装置50のクラッチ(低速クラッチ52または高速クラッチ56)を切るようにし、走行を停止してから後進クラッチ54が入るようにしている。
次に、変速装置30の第二の実施形態である変速装置200について図6、図7より説明する。なお、第一の実施形態における変速装置30と略同一の構成の部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
入力軸31の後端部のミッションケース6の後部に油圧式無段変速装置40が配置される。このように配置することでミッションケース6の後面を閉じる蓋体を外すことにより油圧式無段変速装置40を容易にメンテナンスすることが可能となっている。油圧式無段変速装置40の油圧ポンプ42の前部に油圧モータ43が配置され、円筒状に構成してHST出力軸26は前方に突出して入力軸31上に遊嵌される。HST出力軸26の前端上に低速駆動歯車27が固設され、低速駆動歯車27の前方の入力軸31上に遊星歯車機構39を介して高速駆動歯車29が遊嵌されている。
前記高速駆動歯車29の前方の入力軸31上にPTO駆動軸121が固設され、PTO駆動軸121はPTO入力軸71上に遊嵌されたPTO従動歯車122と歯合される。PTO入力軸71は入力軸31と平行に配設される。前記PTO従動歯車122のボス部とPTO入力軸71上に固設したクラッチケース74との間にPTOクラッチ73が構成され、クラッチケース74とミッションケース6との間に慣性ブレーキ75が構成される。前記PTO従動歯車122はポンプ駆動歯車をかねており、ポンプ従動歯車222と更に歯合され、作業機用油圧ポンプ224とチャージポンプ225を駆動可能に構成している。
前記PTO入力軸71は後方に延設されて、その軸上にPTO3速歯車76、PTO2速歯車77、PTO1速歯車78、PTO逆転歯車79が固設される。PTO3速歯車76、PTO2速歯車77、PTO1速歯車78はPTO入力軸71と平行に配設したPTO伝動軸180上に遊嵌したPTO3速従動歯車176、PTO2速従動歯車177、PTO1速従動歯車178とそれぞれ歯合される。PTO逆転歯車79はカウンタ歯車173を介してPTO逆転従動歯車179と歯合される。PTO伝動軸180は後方に延設され、減速歯車181・182を介してPTO軸72と連動連結される。
前記HST出力軸26の前端上に固設した低速駆動歯車27は、クラッチ軸51上に遊嵌した低速従動歯車53と歯合され、該低速従動歯車53のボス部とクラッチケース58との間に低速クラッチ52が構成されている。
前記遊星歯車機構39のアウターギヤ36から前方へ延設したボス部に形成された高速駆動歯車29は、クラッチ軸51上に遊嵌した高速従動歯車57と歯合され、高速従動歯車57のボス部とクラッチケース58との間に高速クラッチ56が形成されている。
前記高速クラッチ56の後方におけるクラッチ軸51上には、後進速クラッチ54と副変速装置60の副変速低速クラッチ66と副変速高速クラッチ67が配置される。後進速歯車55はクラッチ軸51上に遊嵌され、クラッチ軸51に固設したクラッチケース59と後進速歯車55のボス部との間に後進クラッチ54が形成され、進速歯車55はカウンタ歯車155を介して出力軸61上に固設した後進従動歯車156と歯合して連動される。
副変速高速駆動歯車63はクラッチ軸51に遊嵌され、クラッチ軸51に固設したクラッチケース59と副変速高速駆動歯車63のボス部との間に副変速高速クラッチ67が形成される。副変速高速駆動歯車63は出力軸61に固設した副変速高速従動歯車65と歯合される。
副変速低速駆動歯車62はクラッチ軸51に遊嵌され、クラッチ軸51に固設したクラッチケース68と副変速低速駆動歯車62のボス部との間に副変速低速クラッチ66が形成され、副変速低速駆動歯車62は副変速低速従動歯車64と歯合される。
出力軸61の後端にはピニオン69が形成され、前記同様に差動機構80、最終減速歯車機構84を介して後輪10に動力を伝達可能に構成されている。また、出力軸61の前部には前輪出力歯車91が固設され、前記同様に前輪増速機構90、前輪差動機構を介して前輪9に動力を伝達可能に構成している。また、第二実施形態において、走行速度変速時には、前記同様に図5に示す速度で、低速クラッチ52、後進クラッチ54、高速クラッチ56、副変速低速クラッチ66、副変速高速クラッチ67が入切制御される。
以上のように、エンジン3から入力される動力を変速する油圧式無段変速装置40と、主変速装置50と、副変速装置60とを備える変速装置において、前記副変速装置60は油圧クラッチにより構成されてアクチュエータにより変速切換可能に構成され、該アクチュエータは制御装置100により制御され、該制御装置100には、走行速度検知手段13が接続され、制御装置100は、増速時または減速時に走行速度が設定速度に至ると副変速装置60を切り換えるので、設定走行速度で副変速装置60が自動的に変速されて、変速ショックがなくスムーズな増速または減速が得られる。副変速操作が不要となって変速操作が簡単となり、最適変速速度で走行できる。
また、前記制御装置100には、作業モードと、自動走行モードと、高速移動走行モードとを切り換えるモード切換手段17が接続され、前記制御装置100は、前記モード切換手段を作業モードに切り換えると副変速装置を低速位置に保持するので、車速上昇操作をしても、作業に適した速度範囲内で走行され、無理な負荷もかからず走行できる。
前記制御装置100は、前記モード切換手段17を高速移動走行モードに切り換えると副変速装置を高速位置に保持するので、走行速度が大きく変化しても副変速装置は変速されず、低速域での主変速切換や副変速装置の切換をなくすことができて、スムーズな加速及び減速が可能となる。また、変速装置の切換による摩耗を減少して寿命を長くすることができる。