JP2011099546A - 作業車両の変速装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のような、油圧式無段変速装置にギア式有段変速機構等の副変速機構を加えて成る変速装置、あるいは、油圧−機械式無段変速装置から成る変速装置において、変速可能な車速範囲を拡大して走行性能を向上させるには、大型の副変速機構が必要となって変速装置が大型化・重量化し、燃費の悪化や製造コストの増加が避けられない、という問題があった。
【解決手段】エンジン4からのエンジン動力と油圧式無段変速装置50からの変速動力を合成して合成動力として出力するための遊星ギア機構9を備えると共に、該遊星ギア機構9と前記油圧式無段変速装置50との間に、前記変速動力を正転側または逆転側の回転動力に変えてから前記遊星ギア機構9に入力する正逆転クラッチ8を介設した。
【選択図】図1

Description

本発明は、農作業に使用されるトラクタ、または土木作業に使用されるホイルローダ、運搬車等の作業車両の変速装置に関し、特に、変速可能な車速範囲を容易に拡大可能な変速構成に関する。
従来より、作業車両においては、機体に搭載したエンジンの回転動力(以下、「エンジン動力」とする。)が、変速装置、デフ機構等を介して左右の車輪に伝達されるが、このうちの変速装置には、優れた操作性から油圧式無段変速装置の適用ケースが増加している。ただし、大型のトラクタ、ホイルローダ、運搬車等のように大馬力を要する大型作業車両に対しては、この油圧式無段変速装置からの回転動力(以下、「変速動力」とする。)だけでは、変速可能な車速範囲の幅が狭くて不十分なことから、油圧式無段変速装置に加えて、ギア式有段変速機構等による副変速機構を別途に設ける技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−76449号公報
しかしながら、前記技術では、変速可能な車速範囲を更に拡大して走行性能を向上させるには、多段で変速比の大きな大型の副変速機構が必要なため、該副変速機構を備えた変速装置も大型化・重量化し、燃費の悪化や製造コストの増加が避けられなかった。
あるいは、前記油圧式無段変速装置にコンパクトな遊星ギア機構を組み合わせた、いわゆる油圧−機械式無段変速装置を用いて、変速可能な車速範囲の幅を拡大する対応も考えられるが、該油圧−機械式無段変速装置において前記エンジン動力と変速動力を合成して得られる回転動力(以下、「合成動力」とする。)によっても、十分な車速範囲が得られず、やはり大型の副変速機構が必要となっていた。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジンからの入力軸によって駆動する油圧式無段変速装置を備えた作業車両の変速装置において、前記エンジンからのエンジン動力と油圧式無段変速装置からの変速動力を合成して合成動力として出力するための遊星ギア機構を備えると共に、該遊星ギア機構と前記油圧式無段変速装置との間に、前記変速動力を正転側または逆転側の回転動力に変えてから前記遊星ギア機構に入力する正逆転クラッチを介設したものである。
請求項2においては、前記正逆転クラッチを軸支するクラッチ軸は、前記遊星ギア機構と同一軸心上に配置するものである。
請求項3においては、前記遊星ギア機構から合成動力を出力する低速側出力部材と高速側出力部材を設け、該低速側出力部材と高速側出力部材を、前記作業車両の車軸を駆動する走行出力軸に対して、それぞれ断接可能に接続するための低速側クラッチと高速側クラッチを設け、該低速側クラッチと高速側クラッチとから成る高低速クラッチを前記遊星ギア機構に一体的に付設するものである。
請求項4においては、前記遊星ギア機構は、中心のサンギアと、該サンギアの外周に配置・噛合されプラネタリキャリアのキャリア軸に回動自在に支持される複数のプラネタリギアと、該プラネタリギアの外周に噛合されるリング状のインターナルギアとから構成し、前記サンギアと同一軸心上を回転自在に前記プラネタリキャリアを設け、該プラネタリキャリアと前記プラネタリギアを、それぞれ前記低速側出力部材と高速側出力部材に連係するものである。
請求項5においては、前記油圧式無段変速装置は、前記入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に油圧ポンプ部と油圧モータ部を配置して構成し、前記シリンダブロックには、前記油圧ポンプ部の第一プランジャ、前記油圧モータ部の第二プランジャ、該第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路、及び該一対のメイン油路内で送油方向を変更するスプール弁を設けると共に、前記入力軸と同一軸心上に油圧モータ部からの出力軸を配置するものである。
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、該正逆転クラッチを介して変速動力の回転方向を正転側または逆転側に切り替え、走行動力で変速可能な車速範囲を大きく拡大することができ、大型作業車両に必要な車速範囲が得られて、多段で変速比の大きな大型の副変速機構が不要となり、変速装置の小型化・軽量化による燃費の向上や製造コストの低減を図ることができる。
請求項2により、前記クラッチ軸を遊星ギア機構への入力軸と兼用したり、正逆転クラッチから遊星ギア機構までの動力伝達経路を短縮したりすることができ、新たな軸の配設に必要な軸・軸受け等の部品や、動力伝達経路のための設置スペースが不要となる。これにより、更なる変速装置の小型化・軽量化を図ることができる。
請求項3により、高低速2段切換式のコンパクトな副変速機構として遊星ギア機構を利用することができ、大型の副変速機構を設けることなく、更なる変速装置の小型化・軽量化を図ることができる。
請求項4により、通常の遊星ギア機構を利用して低速動力と高速動力を取り出し、走行出力軸に断接可能に伝達することができ、複雑な部品や構造が不要となり、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項5により、油圧式無段変速装置の入力軸と出力軸を内外二重構造にする等して、油圧式無段変速装置の軸方向長さを短縮することができ、更なる変速装置の小型化・軽量化を図ることができる。
実施例1の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 実施例1の油圧式無段変速装置の側面一部断面図である。 実施例1の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。 実施例1の動力伝達経路における速度範囲の変化を示す説明図である。 実施例1の変速時の動作関係を示す説明図である。 実施例2の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 実施例3の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 実施例4の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 実施例4の動力伝達経路における速度範囲の変化を示す説明図である。 実施例4の変速時の動作関係を示す説明図である。 実施例5の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 実施例5の正逆転クラッチと前後進クラッチの油圧回路図である。 実施例5の動力伝達経路における速度範囲の変化を示す説明図である。 実施例5の変速時の動作関係を示す説明図である。 実施例6の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 構成例1作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 構成例2の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。 構成例3の作業車両における動力伝達構成を示すスケルトン図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図中の矢印Fで示す方向を作業車両1乃至1Jの前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
まず、本発明の実施例1に係わる変速装置2を搭載した作業車両1の全体構成について、図1により説明する。
該作業車両1は、四輪駆動型の大型トラクタであって、原動機であるエンジン4と、該エンジン4からのエンジン動力を変速する変速装置2や後車軸駆動装置12を収容するミッションケース3とを備える。そして、前記エンジン4の後面からは、エンジン出力軸5が後方に突出され、該エンジン出力軸5の後端は、ドライブシャフト6を介して、前記変速装置2へのエンジン動力軸7の前端に連結されており、エンジン動力が前記変速装置2に入力されるようにしている。
該変速装置2においては、機体前部の左右幅略中央に油圧式無段変速装置50が配置され、該油圧式無段変速装置50の左方には、前から順に、正逆転クラッチ8、遊星ギア機構9、該遊星ギア機構9に一体的に付設した高低速クラッチ10、及び前後進クラッチ11が同一軸心上に配置され、いずれも、ミッションケース3の前壁3aと中壁3bとの間の空間に形成された前室13a内に収容されている。そして、このような変速装置2からの回転動力は、前記エンジン動力軸7に平行で回転自在に支持される走行出力軸16に伝達される。
更に、前記ミッションケース3の中壁3bと後壁3aとの間の空間には後室13bが形成され、該後室13b内に前記後車軸駆動装置12が収容されている。該後車軸駆動装置12においては、ロック機構23a付きの差動装置23が左右略中央に配置され、該差動装置23から後車軸14・14が左右に延出され、該後車軸14・14の途中部にブレーキ24と減速機構25が介設されている。そして、前記差動装置23のリングギア23bには、ベベルギア26が噛合され、該ベベルギア26は、前記走行出力軸16の後端に固設されており、前記変速装置2からの回転動力が、走行出力軸16から後車軸駆動装置12に入力されるようにしている。
一方、同一軸心上に配置した前記正逆転クラッチ8、遊星ギア機構9、高低速クラッチ10、及び前後進クラッチ11の左方には、前後方向に前出力軸17が配置され、該前出力軸17は、前記前壁3aと中壁3bとの間で回転自在に支持されている。該前出力軸17において、その後部には、前出力従動ギア19が固設され、該前出力従動ギア19は、前記走行出力軸16の後部に固設された前出力駆動ギア18に噛合されると共に、前出力軸17の前端は、ドライブシャフト20を介して、前車軸駆動装置22への入力軸21の後端に連結されており、前記変速装置2からの回転動力が、走行出力軸16から、ギア列18・19、前出力軸17、ドライブシャフト20、入力軸21を介して、前車軸駆動装置22に入力されるようにしている。
これにより、後で詳述するようにして変速装置2で変速され出力された回転動力を、そのまま後車軸駆動装置12に入力して左右の後輪15・15を差動駆動し、同時に、前出力軸17等を介して前車軸駆動装置22にも入力し、図示せぬ左右の前輪を駆動することができる。
なお、前記油圧式無段変速装置50の右方に、前記エンジン動力軸7がミッションケース3を前後方向に貫通するようにして配置されると共に、エンジン動力軸7の後端は、図示せぬPTOクラッチを介してPTO軸に連結されており、該PTO軸の後端に連結された作業機に対して、エンジン動力をPTO動力として断接可能に出力するようにしている。
次に、前記油圧式無段変速装置50について、図1乃至図3により説明する。
該油圧式無段変速装置50は、前記エンジン動力軸7に平行で回転自在に支持される変速入力軸51上に配置される。そして、該変速入力軸51の後端には、ジョイント32を介して伝達軸29の前端が同一軸心上で連結され、該伝達軸29の後端に設けた第一入力ギア30には、前記エンジン動力軸7上の第一出力ギア27が噛合されており、これにより、エンジン4からのエンジン動力が、ギア列27・30から伝達軸29を介して、油圧式無段変速装置50の変速入力軸51に伝達される。
更に、該変速入力軸51の後端側、すなわち変速入力軸51の入力側と同じ側から伝達軸29の前後途中部にかけて、前後に第一変速出力ギア52aと第二変速出力ギア52bを有する円筒状の変速出力軸52が被嵌されている。該変速出力軸52は、ミッションケース3の隔壁に玉軸受等によって回転自在に支持されると共に、該変速出力軸52の軸孔には、コロ軸受53等を介して、変速入力軸51と伝達軸29が回転自在に支持されている。
このようにして支持される変速入力軸51上の前後略中央には、シリンダブロック54がスプラインにて相対回転不能に被嵌され、該シリンダブロック54を挟んで変速入力軸51の入力側には、油圧モータ部56が配置される一方、シリンダブロック54を挟んで入力側と反対側には、油圧ポンプ部55が配置されている。
該油圧ポンプ部55には、前記変速入力軸51の前端に係合されるハウジング57と、該ハウジング57の後面にボルトによって締結固定される斜板ホルダ58と、該斜板ホルダ58の後端部の略半円状の凹部58aにメタル軸受59を介して摺動可能に支持される第一斜板60と、該第一斜板60に摺動自在に設けるシュー61と、該シュー61に球体自在継手により連結する第一プランジャ62と、該第一プランジャ62を後方のシリンダブロック54に前方から出入自在に配置する第一プランジャ孔63とが備えられる。
そして、前記第一プランジャ62の前端側は、第一プランジャ孔63内に収容する図示せぬバネの弾性力により、シリンダブロック54の前面から前記第一斜板60に向かって突出して当接されており、これにより、シリンダブロック54が回転すると、第一斜板60の斜板面60bから受ける押動力により、第一プランジャ62が往復動できるようにしている。
更に、前記変速入力軸51と斜板ホルダ58との間には、変速入力軸51に被嵌するスリーブ64と、該スリーブ64外周のローラ軸受65と、ラジアル及びスラスト荷重用のコロ軸受66が介設され、該コロ軸受66の抜け止め防止用のナット67が、変速入力軸51の前端に設けられている。そして、該変速入力軸51上の前記シリンダブロック54には、第一プランジャ62と同数の第一スプール弁68が設けられている。
前記油圧モータ部56には、出力ケース69と、該出力ケース69にボルト70によって締結固定されて傾斜角が一定の第二斜板71と、該第二斜板71に摺動自在に設けるシュー72と、該シュー72に球体自在継手により連結する第二プランジャ73と、該第二プランジャ73を前記シリンダブロック54に前方から出入自在に配置する第二プランジャ孔74とが備えられる。
そして、前記第二プランジャ73の後端側は、第二プランジャ孔74内に収容するバネ75の弾性力によって、シリンダブロック54の後面から前記第二斜板71に向かって突出して当接されており、これにより、第二プランジャ73の往復動によって、傾斜状態にある第二斜板71に対して回転力を付与できるようにしている。加えて、該第二斜板71に締結固定した前記出力ケース69の後端内周部と、前記変速出力軸52の前端外周部とは、スプラインにて嵌合されており、これら第二斜板71、出力ケース69、及び変速出力軸52は、一体化した状態で、前記変速入力軸51上を回転自在に配置されている。
更に、前記変速入力軸51と第二斜板71との間にも、変速入力軸51に被嵌するスリーブ76と、該スリーブ76外周のローラ軸受77と、ラジアル及びスラスト荷重用のコロ軸受78が介設され、該コロ軸受78の抜け止め防止用のナット79が、変速入力軸51の後端に設けられている。そして、該変速入力軸51上の前記シリンダブロック54には、油圧ポンプ部55と同様に、第二プランジャ73と同数の第二スプール弁80が設けられている。
前記シリンダブロック54には、前記第一プランジャ孔63と第二プランジャ孔74が、シリンダブロック54の回転中心の同一円周上に交互に形成されると共に、該シリンダブロック54で前記変速入力軸51が挿入される軸孔54aには、前から順に、輪溝形状の第一油路81と第二油路82が形成される。更に、シリンダブロック54には、前記第一スプール弁68と第二スプール弁80をそれぞれ収容する弁孔も、シリンダブロック54の回転中心の同一円周上で交互に形成されている。加えて、前記第一油路81と第二油路82のいずれも、第一スプール弁68の弁孔を介して第一プランジャ孔63に連通されると共に、第二スプール弁80の弁孔を介して第二プランジャ孔74に連通されている。
一方、第一スプール弁68の突出端に形成された円盤状の係合部68aは、前記シリンダブロック54の前面から突出され、前記斜板ホルダ58の後端に連結固定したリング状の第一スプールカム83のカム溝83aに係合されている。これにより、前記シリンダブロック54が一回転すると、カム溝83aに沿って係合部68aが移動し、第一スプール弁68が弁孔内を往復摺動して第一油路81または第二油路82に対する開閉動作を行い、第一プランジャ孔63が第一油路81または第二油路82と交互に連通されるようにしている。
同様に、第二スプール弁80の突出端に形成された円盤状の係合部80aは、前記シリンダブロック54の後面から突出され、前記第二斜板71の前端に連結固定したリング状の第二スプールカム84のカム溝84aに係合されている。これにより、前記シリンダブロック54が一回転すると、カム溝84aに沿って係合部80aが移動し、第二スプール弁80が弁孔内を往復摺動して第一油路81または第二油路82に対する開閉動作を行い、第二プランジャ孔74が第一油路81または第二油路82と交互に連通されるようにしている。
このような構成において、油圧式無段変速装置50では、スプールカム83・84に従って往復摺動するスプール弁68・80により、第一プランジャ孔63と第二プランジャ孔74が、第一油路81と第二油路82から成る閉回路を介して、所定の回転位置で流体接続される。
すなわち、前記油圧式無段変速装置50は、入力軸である変速入力軸51に被嵌したシリンダブロック54を挟んで変速入力軸51の軸方向前後に油圧ポンプ部55と油圧モータ部56を配置して構成し、前記シリンダブロック54には、前記油圧ポンプ部55の第一プランジャ62、前記油圧モータ部56の第二プランジャ73、該第一プランジャ62と第二プランジャ73との間を連通する一対のメイン油路である第一油路81と第二油路82、及び該第一油路81と第二油路82内で送油方向を変更するスプール弁68・80を設けると共に、前記変速入力軸51と同一軸心上に油圧モータ部56からの出力軸である変速出力軸52を配置するので、油圧式無段変速装置50の変速入力軸51と変速出力軸52を内外二重構造にする等して、油圧式無段変速装置50の軸方向長さを短縮することができ、後述するような正逆転クラッチ8による変速装置2の小型化・軽量化を、更に推し進めることができる。
また、以上のような構成から成る油圧式無段変速装置50の油圧制御について説明する。
前記変速入力軸51の軸中心部には、作動油の供給油路85が形成され、該供給油路85と前記第一油路81との間には第一チェックリリーフ弁91が介設され、供給油路85と前記第二油路82との間には第二チェックリリーフ弁92が介設される一方、この供給油路85は、油路93を介して戻りポート94に連通されている。
ここで、前記変速入力軸51の前端には走行用油圧ポンプ95が駆動可能に連結され、該走行用油圧ポンプ95の吸込口は、油路96から該油路96の途中部に設けたフィルタ97を介して、ミッションケース3内の油溜まり98に連通される一方、走行用油圧ポンプ95の吐出口は、油路99を介して供給ポート100に連通されている。これにより、前記走行用油圧ポンプ95が変速入力軸51の回転によって駆動されると、前記油溜まり98から油路96を介して吸い上げられた作動油が、油路99から供給ポート100を介して吐出される。
該供給ポート100から吐出された作動油は、外部配管101を通って、前記正逆転クラッチ8の駆動・潤滑用の第一バルブユニットV1、前記高低速クラッチ10の駆動・潤滑用の第二バルブユニットV2、及び前記前後進クラッチ11の駆動・潤滑用の第三バルブユニットV3に供給された後、戻り油として外部配管102から前記戻りポート94に流入する。これにより、前記走行用油圧ポンプ95によって油溜まり98から吸い上げられた作動油が、油路93、供給油路85を介して、前記チェックリリーフ弁91・92に供給される。
該チェックリリーフ弁91・92は、前記第一油路81・第二油路82の作動油が不足した場合には、供給油路85から第一油路81・第二油路82に作動油を補給するためのチェック弁として機能し、逆に、前記第一油路81・第二油路82の圧力が所定のリリーフ設定圧よりも大きくなった場合には、作動油を供給油路85に逃がすためのリリーフ弁として機能する。
該供給油路85には、リリーフ弁103も接続されており、該リリーフ弁103によって、前記戻りポート94から供給される作動油の油圧を所定値に設定できるようにしている。更に、前記供給油路85からは、変速入力軸51の半径方向に複数の潤滑油路85aが分岐され、該潤滑油路85aの外端は、前記油圧ポンプ部55・油圧モータ部56の回転部分に連通されており、供給油路85の作動油が潤滑油としても供給される。
また、このような油圧回路における前記第一斜板60の傾斜角制御について説明する。
該第一斜板60の傾斜角αは、傾倒アクチュエータ90によって変更することができ、該傾倒アクチュエータ90は、前記ハウジング57の上部に前後方向に形成されたシリンダ57aと、該シリンダ57a内に前後摺動可能に内挿されるピストン104とから構成されている。該ピストン104の後端には、係止フック105が固設され、該係止フック105には、前記第一斜板60から上方に延出された係止部60aが係合されており、前記ピストン104の前後方向への往復摺動動作によって、第一斜板60が、図示せぬ傾転中心軸線を中心にして前後に傾倒されるようにしている。
一方、前記ピストン104の前端部には、拡径部104aが形成され、該拡径部104aの後端面とシリンダ57aとによって後側油室106が構成され、拡径部104aの前端面とシリンダ57aとによって前側油室107が構成されており、これらの油室106・107は、それぞれ油路108・109を介して、2ポート3位置式の傾倒切替弁110に接続される。
該傾倒切替弁110には、往復摺動可能なスプール110aが備えられ、該スプール110aの一端側に設けた頂部油室110bには、前記油路93への油路111が連通され、該油路111の途中部には比例調整弁112が介設されており、頂部油室110b内の油圧を調整可能としている。一方、スプール110aの他端側に設けたバネ113は、フィードバックリンク114を介して、前記傾倒アクチュエータ90のピストン104に連係されており、該ピストン104の位置に応じてもスプール110aの位置が切り替わるようにしている。ここで、該比例調整弁112のソレノイド、及び前記バルブユニットV1・V2・V3の各ソレノイドは、いずれもコントローラ43に接続され、該コントローラ43には、変速操作レバー44に接続されており、該変速操作レバー44を操作すると、操作量に応じてコントローラ43から各ソレノイドに変速信号が送信される。
更に、前記傾倒切替弁110には、パイロット油圧を供給するパイロットポート115とドレンポート116が形成され、このうちのパイロットポート115は油路117、油路93を介して前記戻りポート94に連通され、ドレンポート116は油路118を介して油溜まり119に連通されている。
従って、変速操作レバー44を操作して、変速信号をコントローラ43から比例調整弁112に送信し、前記傾倒切替弁110を位置120・122のいずれかに設定すると、前記油室106・107のうちの一方には戻りポート94から作動油が流入し、他方からは油溜まり119に作動油が排出され、前記油室106・107内の油圧によってピストン104を前後方向に往復摺動させて第一斜板60を前後に傾倒することができる。更に、傾倒切替弁110を位置121に設定すると、前記油室106・107のいずれも、戻りポート94と油溜まり119との連通が遮断され、ピストン104の前後摺動を停止して第一斜板60を所定の傾斜角αに保持することができる。これにより、第一斜板60の傾斜角αを、例えばプラス側の最大値αmaxからマイナス側の最大値−αmaxまで無段階で変更することができる。
以上のようにして、前記比例調整弁112を介して傾倒アクチュエータ90を動作させ、第一斜板60の傾斜角αを無段階で変化させると、第一プランジャ孔63内を往復動する第一プランジャ62の振幅量が変化し、該往復動に伴って給排される作動油量が変化する。すると、該第一プランジャ孔63と前記第一油路81または第二油路82を介して接続される第二プランジャ孔74に給排される作動油量も変化し、第二プランジャ73の振幅量も変化し、これにより、該第二プランジャ73に当接している第二斜板71の回転数と回転方向が可変となり、該第二斜板71と前述の如く一体回転する変速出力軸51からは、無段の変速動力を出力することができる。
また、この際の変速動力の出力形態について説明する。なお、本説明では、簡単にするため、エンジン4から変速入力軸51に入力される回転動力の回転数をaとした場合、その回転方向を「正転側」として回転速度aと表記し、該正転側と反対の回転方向を「逆転側」として回転速度−aと表記する。
該変速入力軸51の軸線に対して第一斜板60を略直交させて該第一斜板60の傾斜角αを略ゼロに保持した場合は、変速入力軸51と一緒にシリンダブロック54が正転側に回転しても、第一プランジャ孔63内を第一プランジャ62が往復動しない。
このため、第一プランジャ孔63内の作動油は、前記第一油路81または第二油路82を介して第二プランジャ孔74に給排されることがなく、各第二プランジャ73は往復動せずに現在の往復位置に維持される。すると、該第二プランジャ73によって第二斜板71が保持され、第二斜板71が第二プランジャ73を介してシリンダブロック54に連結固定された状態となり、該第二斜板71は、シリンダブロック54と同じ回転数と回転方向で回転される。つまり、変速入力軸51の回転速度aが変更されることなく変速出力軸52に伝達される。
これに対し、変速入力軸51の軸線との直交線に対して、第一斜板60の傾斜角αを、例えば、前出のように、プラス側の最大値αmaxからマイナス側の最大値−αmaxの間で傾斜させた場合は、変速入力軸51と一緒にシリンダブロック54が正転側に回転するのに伴い、第一プランジャ孔63内を第一プランジャ62が往復動する。
このため、第一プランジャ孔63内の作動油が、前記第一油路81または第二油路82を介して第二プランジャ孔74に給排されることとなり、第二プランジャ73の往復動によって、第二斜板71がシリンダブロック54に対して相対回転される。この際、第二斜板71を所定の傾斜角に固定した上で、スプール弁68・80を駆動し、シリンダブロック54の各回転位置における第一プランジャ孔63と第二プランジャ孔74との連通状況を適正に制御することで、シリンダブロック54に対する第二斜板71の相対回転速度を変更可能としている。
第一斜板60の傾斜角αを−αmax≦α<0または0<α≦αmaxのうちの一方に設定すると、前記相対回転速度が最大でaとなって前記変速入力軸51の回転速度aに加算され、最大で回転速度2aの変速動力が変速出力軸52に伝達される。逆に、第一斜板60の傾斜角αを−αmax≦α<0または0<α≦αmaxのうちの他方に設定すると、前記相対回転速度が最小で−aとなって前記変速入力軸51の回転速度aに加算され、最小で回転速度がゼロとなって変速出力軸52は停止状態となる。
つまり、変速入力軸51が回転速度aで回転する場合、第一斜板60の傾斜角αを−αmax〜αmaxの間で変化させることにより、変速出力軸52からは回転速度0〜2aの速度範囲の変速動力を出力することができるのである。
次に、前記油圧式無段変速装置50からの変速動力の速度範囲を拡大するための変速構成について、図1により説明する。
該油圧式無段変速装置50の左方で前記走行出力軸16の前方には、該走行出力軸16と同一軸心上に、前後の伝達軸33・38が回転自在に支持され、該伝達軸33・38から走行出力軸16にかけて、前から順に、正逆転クラッチ8、遊星ギア機構9、高低速クラッチ10、前後進クラッチ11が配置されている。
このうちの正逆転クラッチ8においては、前伝達軸33の前部に、逆転クラッチギア34と正転クラッチギア35が回転自在に遊嵌されると共に、該逆転クラッチギア34と正転クラッチギア35との間の前伝達軸33の外周面には、クラッチハウジング8aが外嵌固定されている。そして、該クラッチハウジング8aの内周面と、前記逆転クラッチギア34と正転クラッチギア35からクラッチハウジング8aに向かって延出された延出部の外周面には、複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ自在に支持されている。
これにより、逆転クラッチギア34とクラッチハウジング8aとの間、及び正転クラッチギア35とクラッチハウジング8aとの間に、それぞれ、動力を断接可能な逆転クラッチ部8bと正転クラッチ部8cが一体的に設けられており、該逆転クラッチ部8bと正転クラッチ部8cとから摩擦多板式の正逆転クラッチ8が形成されている。該正逆転クラッチ8は、油圧作動式に構成されており、図示せぬ正逆転用のピストンを前後進させて前記摩擦エレメント間を離間または係合することにより、前記逆転クラッチギア34や正転クラッチギア35を、クラッチハウジング8aを介して前伝達軸33と断接するクラッチ動作を行うようにしている。
更に、前記逆転クラッチギア34は、前記油圧式無段変速装置50からの変速出力軸52上の第一変速出力ギア52aと噛合される。一方、正転クラッチギア35は、中間軸37に固設されたアイドルギア36と噛合され、該アイドルギア36は、前記変速出力軸52上の第二変速出力ギア52bと噛合されている。
これにより、前記第一変速出力ギア52a、逆転クラッチギア34から成る逆転ギア列52a・34と、前記第二変速出力ギア52b、アイドルギア36、正転クラッチギア35から成る正転ギア列52b・36・35が常時形成されている。ここで、該正転ギア列52b・36・35を通過した後の変速動力の回転方向は、前記変速出力軸52と同じ正転側であるのに対し、逆転ギア列52a・34を通過した後の変速動力の回転方向は、前記変速出力軸52と反対の逆転側に反転される。
このような構成において、変速操作レバー44を操作し、バルブユニットV1に変速信号を送信して図示せぬピストンを作動させ、正逆転クラッチ8のクラッチ動作を行うと、正転クラッチ部8cのみが「入」状態となって、変速動力が正転ギア列52b・36・35からクラッチハウジング8aを介して正転側のまま前伝達軸33に伝達される「正転クラッチ入」と、逆転クラッチ部8bのみが「入」状態となって、変速動力が逆転ギア列52a・34からクラッチハウジング8aを介して逆転側で前伝達軸33に伝達される「逆転クラッチ入」と、前記正転クラッチ部8c・逆転クラッチ部8bのいずれも「切」状態となって、変速動力が前伝達軸33には伝達されない「クラッチ中立」のうちのいずれか一つのクラッチ状態を選択して、正転または逆転の回転動力を前伝達軸33に伝達することができる。
また、前記遊星ギア機構9は、前記前伝達軸33の後端に固設されたサンギア130と、該サンギア130の外周に配置・噛合されプラネタリキャリア128のキャリア軸128aに回転自在に支持される複数のプラネタリギア127と、該プラネタリギア127の外周に噛合されるリング状のインターナルギア129とから構成される。
このうちのインターナルギア129において、その軸部129aが、前記前伝達軸33上に相対回転自在に環設されると共に、この軸部129aの前端には、第二入力ギア31が固設され、該第二入力ギア31は、前記エンジン動力軸7上に固設された第二出力ギア28と噛合されており、エンジン動力がインターナルギア129に常時入力されるようにしている。
前記プラネタリギア127は、前記キャリア軸128aに回転自在に支持される軸部127bと、該軸部127bの前後端にそれぞれ形成される第一ギア部127a・第二ギア部127cとから成る二連式ギアであって、このうちの第一ギア部127aが、外側では、前記インターナルギア129の後端に形成されたギア部129bに噛合される一方、内側では、前記サンギア130に噛合されている。同時に、前記第二ギア127cは、内側で、前記後伝達軸38前端に固設される高速ギア131に噛合されている。
前記プラネタリキャリア128は、前記キャリア軸128aと、該キャリア軸128aを前端で支持する筒体128bとから成り、該筒体128bの後端には低速ギア132が固設されている。
このような構成において、エンジン動力を、ギア列28・31からインターナルギア129を介してプラネタリギア127に伝達すると同時に、前記正逆転クラッチ8からの正転または逆転の回転動力を、前伝達軸33、サンギア130からプラネタリギア127に伝達することができる。
すると、該プラネタリギア127は、伝達されてきた2つの回転動力の合力によって、キャリア軸128aを中心として自転しながら、前伝達軸33を中心として公転する。このうちの自転により、プラネタリギア127の第二ギア127cから前記高速ギア131に前進方向の高速動力が伝達される一方、公転により、プラネタリキャリア128の筒体128bから前記低速ギア132に前進方向の低速動力が伝達される。
また、前記高低速クラッチ10は、前記プラネタリキャリア128の筒体128b内で、前記高速ギア131と低速ギア132との間に配設され、該低速ギア132は、前記走行出力軸16の前部に回転自在に遊嵌されている。そして、該走行出力軸16の前端には、クラッチハウジング10aが外嵌固定されると共に、該クラッチハウジング10aの内周面、前記後伝達軸38の後部の外周面、及び前記高速ギア131からクラッチハウジング10aへの延出部の外周面には、前述した複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ自在に支持されている。
これにより、高速ギア131とクラッチハウジング10aとの間、及び低速ギア132とクラッチハウジング10aとの間に、それぞれ、動力を断接可能な高速クラッチ部10bと低速クラッチ部10cが一体的に設けられており、該高速クラッチ部10bと低速クラッチ部10cとから摩擦多板式の高低速クラッチ10が形成される。そして、該高低速クラッチ10は、前記筒体128b内に収容されるようにして遊星ギア機構9に一体的に付設されると共に、前記正逆転クラッチ8と同様に、油圧作動式に構成されており、前記高速ギア131や低速ギア132をクラッチハウジング10aを介して走行出力軸16と断接するクラッチ動作を行うことができる。
このような構成において、変速操作レバー44を操作し、バルブユニットV2に変速信号を送信して図示せぬピストンを作動させ、高低速クラッチ10のクラッチ動作を行うと、高速クラッチ部10bのみが「入」状態となって、前進方向の高速動力が高速ギア131・後伝達軸38からクラッチハウジング10aを介して走行出力軸16に伝達される「高速クラッチ入」と、低速クラッチ部10cのみが「入」状態となって、前進方向の低速動力が低速ギア132からクラッチハウジング10aを介して走行出力軸16に伝達される「低速クラッチ入」と、前記高速クラッチ部10b・低速クラッチ部10cのいずれも「切」状態となって、回転動力が走行出力軸16には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかの一つのクラッチ状態を選択して、中立以外では高速または低速の回転動力を走行出力軸16に伝達することができる。
また、前記前後進クラッチ11は、前記低速ギア132と後進入力ギア41との間に配設され、該後進入力ギア41は、前記低速ギア132後方の走行出力軸16上に回転自在に遊嵌されている。そして、該走行出力軸16には、クラッチハウジング11aが外嵌固定されると共に、該クラッチハウジング11aの内周面と、前記後進入力ギア41からクラッチハウジング11aに向かって延出された延出部の外周面には、前述した複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ自在に支持されている。
これにより、後進入力ギア41とクラッチハウジング11aとの間に、前記正逆転クラッチ8・高低速クラッチ10と同様な、摩擦多板式・油圧作動式の前後進クラッチ11が形成されている。
ここで、前記エンジン動力軸7上には、二連式の反転ギア39が回転自在に遊嵌され、該反転ギア39の第一ギア部39aは、前記低速ギア132に噛合されると共に、第二ギア部39bは、中間軸42に固設されたアイドルギア40と噛合され、該アイドルギア40は、前記後進入力ギア41と噛合されている。
このような構成において、変速操作レバー44を操作し、バルブユニットV3に変速信号を送信して図示せぬピストンを作動させ、前後進クラッチ11のクラッチ動作を行うと、前後進クラッチ11が「入」状態となって、低速ギア132からの前進方向の低速動力が、反転ギア39からアイドルギア40・後進入力ギア41を介して反転し、後進方向の低速動力として走行出力軸16に伝達される「後進クラッチ入」と、前後進クラッチ11が「切」状態となって、後進方向の低速動力が走行出力軸16には伝達されない「後進クラッチ切」のうちのいずれか一つのクラッチ状態を選択して、後進方向の低速動力を走行出力軸16に伝達することができる。
次に、前記変速装置2による走行動力の出力状況について、図4、図5により説明する。
図4に示すように、前記油圧式無段変速装置50においては、前記エンジン4から変速入力軸51に入力されるエンジン動力の回転速度をaとした場合、前述したように、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxの範囲で変化させると、変速出力軸52から出力される変速動力を速度範囲0〜2aで変速可能な構成としている。
そして、前記正逆転クラッチ8において、「正転クラッチ入」では、前進方向の回転動力が速度範囲0〜2aで得られ、「逆転クラッチ入」では、後進方向の回転動力が速度範囲−2a〜0で得られ、その結果、前伝達軸33から出力される回転動力を速度範囲−2a〜2aまで拡大することができる。
更に、前記遊星ギア機構9においては、前記正逆転クラッチ8からの回転動力が速度範囲−2a〜2aで前記サンギア130に伝達されると共に、前記エンジン4からのエンジン動力が回転速度aで前記インターナルギア129に伝達される。すると、前述したように、この両回転動力は、該インターナルギア129と前記サンギア130に対して同時に噛合しているプラネタリギア127で合成され、前進方向の低速動力が速度範囲0〜4aで低速ギア132に伝達される一方、前進方向の高速動力が速度範囲4a〜8aで高速ギア131に伝達される。
加えて、前記高低速クラッチ10と前後進クラッチ11においては、該前後進クラッチ11を「後進クラッチ切」のままで、高低速クラッチ10を「低速クラッチ入」にすると、前進方向の低速動力が速度範囲0〜4aで得られ、「高速クラッチ入」にすると、前進方向の高速動力が速度範囲4a〜8aで得られ、いずれも走行出力軸16に伝達される。更に、前記高低速クラッチ10を「クラッチ中立」のままで前後進クラッチ11を「後進クラッチ入」にすると、前述した前進方向の低速動力が反転されて後進方向の低速動力の速度範囲−4a〜0が得られ、走行出力軸16に伝達される。
以上のようにして、走行出力軸16から出力される走行動力により変速可能な車速範囲を、−4a〜8aまで大きく拡大することができる。
また、具体的な車速変化の一例について図5により説明する。
この車速変化は、六つのステップから成り、最初の第一ステップ141では、正逆転クラッチ8を「逆転クラッチ入」、高低速クラッチ10を「クラッチ中立」、前後進クラッチ11を「後進クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、車速vは−4aから−2aまで後進側で減速される。
第二ステップ142では、高低速クラッチ10と前後進クラッチ11のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ8のみを「正転クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは−2aから0まで後進側で減速され、斜板角−αmaxでは作業車両1が停止する。
第三ステップ143では、正逆転クラッチ8のクラッチ状態はそのままで、高低速クラッチ10を「低速クラッチ入」に、前後進クラッチ11を「後進クラッチ切」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、作業車両1は前進を開始し、車速vは0から2aまで前進側で増速される。
第四ステップ144では、高低速クラッチ10と前後進クラッチ11のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ8のみを「逆転クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは2aから4aまで前進側で更に増速される。
第五ステップ145では、正逆転クラッチ8と前後進クラッチ11のクラッチ状態はそのままで、高低速クラッチ10のみを「高速クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、車速vは4aから6aまで前進側で更に増速される。
第六ステップ146では、高低速クラッチ10と前後進クラッチ11のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ8のみを「正転クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは6aから8aまで前進側で更に増速される。
このようにして、変速可能な車速範囲として、ステップ141とステップ142から成る後進速度域133、ステップ143とステップ144から成る前進低速度域134、及びステップ145とステップ146から成る前進高速度域135が得られ、これらの速度域133・134・135の合成範囲として前記車速範囲−4a〜8aを得ることができる。
すなわち、以上のような構成において、エンジン4からの入力軸である変速入力軸51によって駆動する油圧式無段変速装置50を備えた作業車両1の変速装置2において、前記エンジン4からのエンジン動力と油圧式無段変速装置50からの変速動力を合成して合成動力として出力するための遊星ギア機構9を備えると共に、該遊星ギア機構9と前記油圧式無段変速装置50との間に、前記変速動力を正転側または逆転側の回転動力に変えてから前記遊星ギア機構9に入力する正逆転クラッチ8を介設したので、該正逆転クラッチ8を介して変速動力の回転方向を正転側または逆転側に切り替え、走行動力で変速可能な車速vの範囲を、例えばaから−4a〜8aのように、大きく拡大することができ、大型作業車両に必要な車速範囲が得られて、多段で変速比の大きな大型の副変速機構が不要となり、変速装置2の小型化・軽量化による燃費の向上や製造コストの低減を図ることができる。
更に、前記正逆転クラッチ8を軸支するクラッチ軸である前伝達軸33は、前記遊星ギア機構9と同一軸心上に配置するので、本実施例のように、前記前伝達軸33を遊星ギア機構9への入力軸と兼用したり、正逆転クラッチ8から遊星ギア機構9までの動力伝達経路を短縮したりすることができ、新たな軸の配設に必要な軸・軸受け等の部品や、動力伝達経路のための設置スペースが不要となる。これにより、更なる変速装置2の小型化・軽量化を図ることができる。
加えて、前記遊星ギア機構9から合成動力を出力する低速側出力部材である低速ギア132と高速側出力部材である高速ギア131を設け、該高速ギア131と前記低速ギア132を、前記作業車両1の後車軸14等を駆動する走行出力軸16に対して、それぞれ断接可能に接続するための低速側クラッチである低速クラッチ部10cと高速側クラッチである高速クラッチ部10bを設け、該低速クラッチ部10cと高速クラッチ部10bとから成る高低速クラッチ10を前記遊星ギア機構9に一体的に付設するので、高低速2段切換式のコンパクトな副変速機構として遊星ギア機構9を利用することができ、大型の副変速機構を設けることなく、更なる変速装置2の小型化・軽量化を図ることができる。
そして、前記遊星ギア機構9は、中心のサンギア130と、該サンギア130の外周に配置・噛合されプラネタリキャリア128のキャリア軸128aに回動自在に支持される複数のプラネタリギア127と、該プラネタリギア127の外周に噛合されるリング状のインターナルギア129とから構成し、前記サンギア130と同一軸心上を回転自在に前記プラネタリキャリア128を設け、該プラネタリキャリア128と前記プラネタリギア127を、それぞれ前記低速側出力部材である低速ギア132と高速側出力部材である高速ギア131に連係するので、通常の遊星ギア機構9を利用して低速動力と高速動力を取り出し、走行出力軸16に断接可能に伝達することができ、複雑な部品や構造が不要となり、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
なお、以下には、本発明の別形態について説明するが、実施例1と同等な構成のものは同じ符号で表記する。
次に、実施例2に係わる作業車両1Aとその変速装置2Aについて、図6により説明する。
該作業車両1Aでは、変速装置2Aにおけるエンジン動力軸7・正逆転クラッチ8から遊星ギア機構9までの動力伝達構成が、前記実施例1とは異なるが、変速装置2Aの構成要素は、伝動上手から順に、油圧式無段変速装置50、正逆転クラッチ8、遊星ギア機構9、高低速クラッチ10、前後進クラッチ11であって、前記実施例1と同様である。
さて、前記作業車両1Aにおいては、前記エンジン動力軸7に平行に、エンジン動力軸7の左方には、右から順に、前端に変速入力軸51を連結した伝達軸29、第一伝達軸150、同一軸心上に前後方向に並設した第二伝達軸151・後伝達軸38・走行出力軸16、及び前出力軸17が回転自在に配置されている。
そして、このうちの第一伝達軸150の前部に、前記正逆転クラッチ8を設けると共に、第一伝達軸150の後部には、クラッチ出力ギア152が固設され、該クラッチ出力ギア152は、前記遊星ギア機構9のインターナルギア129前端に設けた第二入力ギア31に噛合されており、正逆転クラッチ8からの正転または逆転の回転動力は、ギア列152・31を介してインターナルギア129に断接可能に入力される。
一方、前記第二伝達軸151の後端には、遊星ギア機構9のサンギア130が固設されると共に、第二伝達軸151の前部には、前入力ギア153が固設され、該前入力ギア153は、前記前エンジン動力軸7上の第二出力ギア28に噛合されており、エンジン4からのエンジン動力は、ギア列28・153から第二伝達軸151を介してサンギア130に常時入力される。
つまり、前記実施例1では、エンジン動力はインターナルギア129に入力され、正逆転クラッチ8からの回転動力はサンギア130に入力されるのに対し、本実施例2では、逆に、エンジン動力はサンギア13に入力され、正逆転クラッチ8からの回転動力はインターナルギア129に入力されるようにしている。
このように、正逆転クラッチ8からの回転動力をインターナルギア129に入力するため、本実施例2では、前記実施例1の前伝達軸33を二本の伝達軸150・151に分割して左右に並設した上で、そのうちの第一伝達軸150の後部にクラッチ出力ギア152を固設し、該クラッチ出力ギア152を、前記第二伝達軸151の前部の第二入力ギア31の右側方に並設し、該第二入力ギア31と前記クラッチ出力ギア152が噛合できるようにしている。しかも、このような動力伝達構成においては、前記第二出力ギア28やクラッチ出力ギア152等の位置を変えるだけで、前記実施例1のようにエンジン動力がインターナルギア129に入力するように変更することも可能である。
すなわち、変速装置2Aでは、前記実施例1の変速装置2とは異なり、正逆転クラッチ8からの出力部と遊星ギア機構9への入力部を異なる軸体、本実施例2では第一伝達軸150と第二伝達軸151に設けるので、変速装置2Aにおける軸数は増えるものの、エンジン4や正逆転クラッチ8からの回転動力を遊星ギア機構9に入力するための動力伝達経路の選択自由度を高めることができ、仕様変更が容易となって変速装置2Aの汎用性を向上できる。
次に、実施例3に係わる作業車両1Bとその変速装置2Bについて、図7により説明する。
該作業車両1Bでは、変速装置2Bにおける油圧式無段変速装置50A・正逆転クラッチ160・前後進クラッチ163の一部構造とその動力伝達構成が、前記実施例2と異なるが、変速装置2Bの構成要素の種類は、伝動上手から順に、油圧式無段変速装置50A、正逆転クラッチ160、遊星ギア機構9、高低速クラッチ10、前後進クラッチ163であって、前記実施例2と同様である。
さて、前記作業車両1Bにおいては、エンジン4の後面から前記エンジン出力軸5が後方に突出され、該エンジン出力軸5の後端は、ミッションケース3の前壁3aの前面に固設した入力ギアボックス164に挿入され、該入力ギアボックス164内で、同一軸心上でエンジン動力軸7の前端に連結されており、エンジン動力が前記変速装置2Bに入力されるようにしている。前記エンジン動力軸7の後端は、PTOクラッチ161を介してPTO軸162の前端に接続されており、該PTO軸162の後端に連結された図示せぬ作業機に対してエンジン動力がPTO動力として断接可能に出力される。
また、前記入力ギアボックス164において、その前面には、前記油圧式無段変速装置50A等に作動油や潤滑油を供給するための走行用油圧ポンプ168が、前記エンジン出力軸5により駆動可能に収容されている。一方、入力ギアボックス164内では、前後方向に軸支された前記エンジン動力軸7に平行に、伝達軸167が回転自在に支持され、該伝達軸167上に、第一入力ギア179が固設され、該第一入力ギア179は、前記エンジン動力軸7上の第一出力ギア165と噛合されている。更に、前記伝達軸167の後端には、油圧式無段変速装置50Aから前方に突出した変速入力軸172の前端が同一軸心上で連結されている。これにより、エンジン4からのエンジン動力が、ギア列165・179から伝達軸167を介し、油圧式無段変速装置50Aの前方から変速入力軸172に伝達される。なお、前記入力ギヤボックス164内に増速ギヤを設けることにより、高出力、高馬力対応を行うことができる。
該変速入力軸172は、油圧式無段変速装置50Aを貫通するように後方に突出して後軸部172aを形成し、該後軸部172a上に、円筒状の前記変速出力軸52が被嵌されており、変速入力軸172の入力側が、油圧式無段変速装置50Aを挟んで、変速出力軸52とは反対側に配置される配置構造としている。
すなわち、油圧式無段変速装置50Aでは、前記実施例1と実施例2の油圧式無段変速装置50とは異なり、エンジン動力が出力側とは反対側から入力される入力構成とするので、油圧式無段変速装置50Aに入力するための動力伝達経路の選択自由度を高めることができ、仕様変更が容易となって変速装置2Aの汎用性を向上できる。
また、前記変速入力軸172に平行に、変速入力軸172の左方には、右から順に、第一伝達軸150、同一軸心上で前後方向に並設した第二伝達軸151・後伝達軸38・走行出力軸16、及び前出力軸17が回転自在に支持されている。そして、このうちの第一伝達軸150の前後に、正逆転クラッチ160と前後進クラッチ163が配置され、第二伝達軸151から走行出力軸16にかけて、前から順に、遊星ギア機構9と高低速クラッチ10が配置されている。
このうちの正逆転クラッチ160において、前記第一伝達軸150上には、前後に、逆転クラッチギア176と正転クラッチギア177が回転自在に遊嵌されると共に、該逆転クラッチギア176と正転クラッチギア177との間の第一伝達軸150の外周面には、前後に、クラッチハウジング160cとクラッチハウジング160dが外嵌固設されている。そして、該クラッチハウジング160cとクラッチハウジング160dの内周面、前記逆転クラッチギア176からクラッチハウジング160cへの延出部の外周面、及び、前記正転クラッチギア177からクラッチハウジング160dへの延出部の外周面には、複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ自在に支持されている。
これにより、逆転クラッチギア176とクラッチハウジング160cとの間、及び正転クラッチギア177とクラッチハウジング160dとの間に、それぞれ、動力を断接可能な逆転クラッチ部160aと正転クラッチ部160bが設けられており、該逆転クラッチ部160aと正転クラッチ部160bとから摩擦多板式の正逆転クラッチ160が形成される。
すなわち、正逆転クラッチ160では、前記実施例1と実施例2の正逆転クラッチ8とは異なり、逆転クラッチ部160aと正転クラッチ部160bを別体として設けるので、部品を細分化することができ、部品交換等のメンテナンス時の部品コストの低減や作業性の向上を図ることができる。
更に、前記逆転クラッチギア176は、前記油圧式無段変速装置50Aからの変速出力軸52上の第一変速出力ギア52aと噛合されて、逆転ギア列52a・176が常時形成される。一方、正転クラッチギア177は、前記エンジン動力軸7に回転自在に遊嵌されたアイドルギア178に噛合され、該アイドルギア178は、前記変速出力軸52上の第二変速出力ギア52bと噛合されて、正転ギア列52b・178・177が常時形成されている。
すなわち、正逆転クラッチ160では、前記実施例1と実施例2の正逆転クラッチ8とは異なり、変速動力がエンジン動力軸7上のアイドルギア178を介して入力される入力構成とするので、該アイドルギア178を支持するための前記中間軸37を省略することができ、軸数を少なくして、変速装置2Bの小型化・軽量化に貢献することができる。
このような構成により、正逆転クラッチ160のクラッチ動作を行うと、前述のように、「正転クラッチ入」「逆転クラッチ入」「クラッチ中立」のうちのいずれか一つのクラッチ状態を選択して、正転または逆転の回転動力を第一伝達軸150に伝達することができる。
また、前記遊星ギア機構9において、前記実施例1・2と同様に、第二伝達軸151の後端にサンギア130が固設され、第二伝達軸151の前部には前入力ギア153が固設され、該前入力ギア153は、前記エンジン動力軸7上の第二出力ギア166に噛合されている。一方、インターナルギア129前端の第二入力ギア31は、前記第一伝達軸150を後方に延出して設けたクラッチ出力ギア174に噛合されている。これにより、前記実施例2と同様に、エンジン動力はサンギア130に入力され、正逆転クラッチ160からの回転動力はインターナルギア129に入力される。
このような構成により、前記インターナルギア129とサンギア130に同時に噛合されるプラネタリギア127において、エンジン動力と正逆転クラッチ160からの回転動力が合成され、高速ギア131に前進方向の高速動力が伝達される一方、プラネタリキャリア128の筒体128bに前進方向の低速動力が伝達される。なお、該筒体128bの後端には、前記実施例1・2とは異なり、前進方向の低速動力を前後進クラッチ163に伝達するための前記低速ギア132は設けられていない。
また、前記高低速クラッチ10は、前記実施例1・2と同様に、動力を断接可能な高速クラッチ部10bと低速クラッチ部10cから、摩擦多板式の高低速クラッチ10が一体的に形成されており、クラッチ動作により、前述のように、「高速クラッチ入」「低速クラッチ入」「クラッチ中立」のうちの、いずれか一つのクラッチ状態を選択して、中立以外では高速または低速の回転動力を走行出力軸16に伝達するようにしている。
また、前記前後進クラッチ163において、前記第一伝達軸150の延出後端に固設した後進出力ギア175が、前記前出力駆動ギア18に噛合されており、前記正逆転クラッチ160からそのまま伝達されてきた正転側の回転動力を、ギア列175・18を介して、後進方向の回転動力として走行出力軸16に断接可能に伝達できるようにしている。
すなわち、前後進クラッチ163は、前記実施例1と実施例2の前後進クラッチ11とは異なり、正逆転クラッチ160からの正転側の回転動力をそのまま入力して伝動下手側のギア列175・18で反転する入力構成とするので、動力伝達経路を迂回させる必要がなく、経路長を短縮して車軸への動力伝達効率を高めることができる。
このような構成により、前後進クラッチ163のクラッチ動作を行うと、前述のように、「後進クラッチ入」「後進クラッチ切」のうちのいずれか一方のクラッチ状態を選択して、後進方向の回転動力を走行出力軸16に伝達するようにしている。
次に、実施例4に係わる作業車両1Cとその変速装置2Cについて、図8乃至図10により説明する。
該作業車両1Cでは、変速装置2Cにおける遊星ギア機構180・高低速クラッチ181の構造とその動力伝達構成、及び前後進クラッチ163の動力伝達構成が、前記実施例3等と異なるが、変速装置2Cの構成要素の種類は、伝動上手から順に、油圧式無段変速装置50A、正逆転クラッチ160、遊星ギア機構180、高低速クラッチ181、前後進クラッチ163であって、前記実施例1・2・3と同様である。
さて、前記作業車両1Cにおいては、前記変速装置2Bと同じ構成により、エンジン4からの動力が、走行用油圧ポンプ168から、入力ギアボックス164、油圧式無段変速装置50Aを介して変速動力として正逆転クラッチ160に伝達される。
そして、該正逆転クラッチ160では、前記実施例3と同様に、逆転ギア列52a・176と正転ギア列52b・178・177が常時形成されている。そこで、クラッチ動作を行うと、正転クラッチ部160bのみが「入」状態となって、変速動力が正転ギア列52b・178・177からクラッチハウジング160dを介して正転側のまま第一伝達軸150に伝達される「正転クラッチ入」と、逆転クラッチ部160aのみが「入」状態となって、変速動力が逆転ギア列52a・176からクラッチハウジング160cを介して逆転側で第一伝達軸150に伝達される「逆転クラッチ入」と、前記正転クラッチ部160b・逆転クラッチ部160aのいずれも「切」状態となって、変速動力が第一伝達軸150には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかのクラッチ状態を選択して、正転または逆転の回転動力を第一伝達軸150に伝達することができる。
また、該第一伝達軸150の後方には、同一軸心上で第三伝達軸182が回転自在に軸支され、第一伝達軸150から第三伝達軸182にかけて、前から順に、前記遊星ギア機構180と高低速クラッチ181が配設されると共に、該第一伝達軸150の左方の第二伝達軸151と、該第二伝達軸151の後方で同一軸心上にある走行出力軸16との間に、前後進クラッチ163が介設されている。
このうちの遊星ギア機構180は、中心のサンギア183と、該サンギア183の外周に配置・噛合されプラネタリキャリア185のキャリア軸185aに回転自在に支持される複数のプラネタリギア184と、該プラネタリギア184の外周に噛合されるリング状のインターナルギア186とから構成される。
そして、前記プラネタリキャリア185の前部に筒体185bが形成され、該筒体185bの前端に入力ギア187が固設され、該入力ギア187は、前記エンジン動力軸7上に固設された第二出力ギア166と噛合される。更に、前記サンギア183は、前記第一伝達軸150の後端に固設されると共に、前記インターナルギア186の後端中央には、第三伝達軸182の前端が連結されている。
更に、エンジン動力はプラネタリキャリア185に入力され、正逆転クラッチ160からの回転動力はサンギア183に入力され、その後、前記プラネタリキャリア185に支持されつつサンギア183と噛合するプラネタリギア184において合成され、該合成動力は、インターナルギア186から第三伝達軸182に出力される。
すなわち、遊星ギア機構180では、前記実施例1乃至実施例3の遊星ギア機構9とは異なり、プラネタリキャリア185からエンジン動力を入力しインターナルギア186から合成動力を出力する構造と動力伝達構成としている。
また、前記高低速クラッチ181において、前記第三伝達軸182上には、前後に、小径の低速ギア188と大径の高速ギア189が回転自在に遊嵌されると共に、該低速ギア188と高速ギア189との間の第三伝達軸182の外周面には、前後に、クラッチハウジング181cとクラッチハウジング181dが外嵌固設され、各部材間には、複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ自在に支持されている。
これにより、低速ギア188とクラッチハウジング181cとの間、及び高速ギア189とクラッチハウジング181dとの間に、それぞれ、動力を断接可能な低速クラッチ部181aと高速クラッチ部181bが設けられ、該低速クラッチ部181aと高速クラッチ部181bとから摩擦多板式の高低速クラッチ181が形成される。
更に、小径の前記低速ギア188は、走行出力軸16上の大径の前出力駆動ギア18に噛合されると共に、大径の前記高速ギア189は、走行出力軸16上の小径の伝達ギア190に噛合されており、低速ギア列188・18と高速ギア列189・190が常時形成されている。
そこで、クラッチ動作を行うと、低速クラッチ部181aのみが「入」状態となって、遊星ギア機構180からの回転動力が低速ギア列188・18で減速され、前進方向の低速動力として走行出力軸16に伝達される「低速クラッチ入」と、高速クラッチ部181bのみが「入」状態となって、遊星ギア機構180からの回転動力が高速ギア列189・190で増速され、前進方向の高速動力として走行出力軸16に伝達される「高速クラッチ入」と、前記高速クラッチ部181b・低速クラッチ部181aのいずれも「切」状態となって、回転動力が走行出力軸16には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかの一つのクラッチ状態を選択して、中立以外では高速または低速の回転動力を走行出力軸16に伝達することができる。
すなわち、高低速クラッチ181では、前記実施例1乃至実施例3までの高低速クラッチ10とは異なり、高速と低速間の変速をギア比の変更によって行う構造と動力伝達構成としている。
また、前記前後進クラッチ163は、前述のように、第二伝達軸151と走行出力軸16との間に介設されると共に、第二伝達軸151の前端には、後進入力ギア194が固設され、該後進入力ギア194は、前記油圧式無段変速装置50Aの第一変速出力ギア52aに噛合されており、前記油圧式無段変速装置50Aからの正転側の変速動力を、ギア列52a・194を介して反転して後進方向の回転動力として第二伝達軸151に入力し、走行出力軸16に断接可能に伝達できるようにしている。
すなわち、本実施例4の前後進クラッチ163では、前記実施例3の前後進クラッチ163とは異なり、油圧式無段変速装置50Aからの正転側の変速動力をギア列52a・194で反転する動力伝達構成としている。
このような構成により、前後進クラッチ163のクラッチ動作を行うと、「後進クラッチ入」「後進クラッチ切」のうちのいずれか一方のクラッチ状態を選択して、後進方向の回転動力を走行出力軸16に伝達するようにしている
次に、前記変速装置2Cよる走行動力の出力状況について、図9、図10により説明する。
図9に示すように、油圧式無段変速装置50Aにおいても、前記油圧式無段変速装置50と同様に、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxの範囲で変化させると、変速出力軸52から出力される変速動力は速度範囲0〜2aで変速する。
そして、前記正逆転クラッチ160と前後進クラッチ163において、前後進クラッチ163を「後進クラッチ切」のままで、正逆転クラッチ160を「正転クラッチ入」にすると前進方向の回転動力が速度範囲0〜2aで得られ、「逆転クラッチ入」にすると後進方向の回転動力が速度範囲−2a〜0が得られ、その結果、第一伝達軸150から出力される回転動力を速度範囲−2a〜2aまで拡大することができる。正逆転クラッチ160を「クラッチ中立」のままで、前後進クラッチ163を「後進クラッチ入」にすると、変速出力軸52からの変速動力が反転されて後進方向の回転動力が速度範囲−2a〜0で得られ、走行出力軸16に伝達される。
更に、前記遊星ギア機構180においては、前記正逆転クラッチ160からの回転動力が速度範囲−2a〜2aで前記サンギア183に伝達されると共に、前記エンジン4からのエンジン動力が回転速度aで前記プラネタリキャリア185に伝達される。すると、前記遊星ギア機構9と同様に、この両回転動力は、該プラネタリキャリア185のキャリア軸185aに回転自在に支持されると同時に前記サンギア183と噛合するプラネタリギア184で合成され、合成動力が速度範囲0〜4aでインターナルギア186を介して第三伝達軸182に伝達される。
加えて、前記高低速クラッチ181において、「低速クラッチ入」にすると前進方向の低速動力が速度範囲0〜2aで得られ、「高速クラッチ入」にすると前進方向の高速動力が速度範囲2a〜4aで得られ、いずれも走行出力軸16に伝達される。
以上のようにして、走行出力軸16から出力される走行動力により変速可能な車速範囲を、速度範囲−2a〜4aまで拡大することができる。
また、具体的な車速変化の一例について図10により説明する。
この車速変化は、三つのステップから成り、最初の第一ステップ191では、正逆転クラッチ160を「クラッチ中立」、高低速クラッチ181を「クラッチ中立」、前後進クラッチ163を「後進クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、車速vは−2aから0まで後進側で減速される。
第二ステップ192では、正逆転クラッチ160を「逆転クラッチ入」、高低速クラッチ181を「低速クラッチ入」、前後進クラッチ163を「後進クラッチ切」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで再び傾倒させると、車速vは0〜2aまで前進側で増速される。
第三ステップ193では、前後進クラッチ163のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ160を「正転クラッチ入」、高低速クラッチ181を「高速クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは2aから4aまで前進側で更に増速される。
このようにして、変速可能な車速範囲として、ステップ191、192、193のそれぞれから成る後進速度域195、前進低速度域196、前進高速度域197が得られ、これらの速度域195・196・197の合成範囲として前記車速範囲−2a〜4aを得ることができる。
次に、実施例5に係わる作業車両1Dとその変速装置2Dについて、図11乃至図14により説明する。
該作業車両1Dでは、変速装置2Dにおける油圧式無段変速装置50への動力伝達構成、前後の車軸駆動装置22・12への動力伝達構成、及び前記高低速クラッチの省略が、前記実施例1乃至実施例4と異なるが、変速装置2Dの構成要素の種類として、伝動上手から順に、油圧式無段変速装置50、正逆転クラッチ211、遊星ギア機構180を有するのは、前記実施例1乃至実施例4と同様である。
さて、前記作業車両1Dにおいて、エンジン4の後面からエンジン出力軸5が後方に突出され、該エンジン出力軸5の後端は、ドライブシャフト6を介して、ミッションケース206から前方に突出したエンジン動力軸7の前端に連結されており、エンジン動力が前記変速装置2Dに入力されるようにしている。
該エンジン動力軸7に平行に、エンジン動力軸7の右方には、内から順に、中間軸201、減速軸202、及び同一軸心上で前後に並設したPTO伝達軸203・PTO軸162が、回転自在に前後方向に支持される。
このうちの減速軸202上には、大径ギア207と小径ギア208が前後に固設され、前記大径ギア207には、前記エンジン動力軸7の前部に固設される第一出力ギア216が噛合されると共に、前記小径ギア208には、前記PTO伝達軸203に固設されるPTO伝達ギア210が噛合されている。そして、大径ギア207は第一出力ギア216よりも大径に、PTO伝達ギア210は小径ギア208よりも大径に構成されると共に、PTO伝達軸203とPTO軸162との間には、PTOクラッチ161が介設されている。
これにより、前記エンジン動力軸7からのエンジン動力が、減速ギア列216・207から減速ギア列208・210によって減速された後、PTOクラッチ161を介して、PTO動力としてPTO軸162に断接可能に出力されるようにしている。
また、前記エンジン動力軸7の後端には、前記油圧式無段変速装置50から前方に突出した変速入力軸51の前端が同一軸心上で連結されており、これにより、前記エンジン動力軸7からのエンジン動力を、迂回させることなく油圧式無段変速装置50の変速入力軸51に直接入力することができる。
すなわち、本実施例5の油圧式無段変速装置50では、前記実施例1乃至実施例4とは異なり、エンジン4からのエンジン動力軸7に、油圧式無段変速装置50への変速入力軸51を直接接続してエンジン動力を伝達する動力伝達構成とするので、該変速入力軸51とエンジン動力軸7との間にギア等の動力伝達要素を介設する場合と比べて、動力伝達効率を更に高めることができる。
なお、前記ミッションケース206の後面にはケース224が設けられ、該ケース224内には、前記変速入力軸51の後端によって駆動可能に連結された前記走行用油圧ポンプ95が収容されている。
また、前記エンジン動力軸7の左方には、内から順に、同一軸心上で前後に並設した前伝達軸204・後伝達軸205と、走行出力軸16が回転自在に支持され、該前伝達軸204から後伝達軸205にかけて、前から順に、前後進クラッチ200、遊星ギア機構180、正逆転クラッチ211が配置されている。
該正逆転クラッチ211は、前記正逆転クラッチ160を前後に反転したものであって、前記後伝達軸205上において、逆転クラッチギア212とクラッチハウジング211cとの間、及び正転クラッチギア213とクラッチハウジング211dとの間に、それぞれ、動力を断接可能な逆転クラッチ部211aと正転クラッチ部211bが設けられており、該逆転クラッチ部211aと正転クラッチ部211bとから、摩擦エレメント間の係合によって入切する摩擦多板式の正逆転クラッチ211が形成される。
そして、前記逆転クラッチギア212は、油圧式無段変速装置50からの変速出力軸52上の変速出力ギア52cと噛合されて、逆転ギア列52c・212が常時形成される。一方、正転クラッチギア213は、前記中間軸201に固設された中間出力ギア215と噛合され、該中間出力ギア215よりも後方の中間軸201上に固設された中間入力ギア214には、前記変速出力ギア52cが噛合されて、正転ギア列52c・214・215・213が常時形成される。
このような構成において、正逆転クラッチ211のクラッチ動作を行うと、正転クラッチ部211bのみが「入」状態となって、変速動力が正転ギア列52c・214・215・213からクラッチハウジング211dを介して正転側のまま後伝達軸205に伝達される「正転クラッチ入」と、逆転クラッチ部211aのみが「入」状態となって、変速動力が逆転ギア列52c・212からクラッチハウジング211cを介して逆転側で後伝達軸205に伝達される「逆転クラッチ入」と、前記正転クラッチ部211b・逆転クラッチ部211aのいずれも「切」状態となって、変速動力が後伝達軸205には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかのクラッチ状態を選択して、正転または逆転の回転動力を後伝達軸205に伝達することができる。
また、前記遊星ギア機構180は、前記実施例4と同様であって、プラネタリキャリア185に固設した入力ギア187は、前記エンジン動力軸7の中央部に固設される第二出力ギア217と噛合され、サンギア183は、前記後伝達軸205の前端に固設され、インターナルギア186の前端中央には、前伝達軸204の後端が連結されている。
これにより、エンジン動力が、プラネタリキャリア185に入力されると共に、正逆転クラッチ211からの回転動力が、サンギア183に入力され、プラネタリギア184にて合成された後、合成動力としてインターナルギア186から前伝達軸204に出力される。
また、前記前後進クラッチ200は、この前伝達軸204上にあって、後進出力ギア218とクラッチハウジング200cとの間、及び前進出力ギア219とクラッチハウジング200dとの間に、それぞれ、動力を断接可能な後進クラッチ部200aと前進クラッチ部200bが設けられており、該後進クラッチ部200aと前進クラッチ部200bとから摩擦多板式の前後進クラッチ200が形成される。
更に、前記後進出力ギア218は、走行出力軸16に固設された後進入力ギア220と噛合されて、後進ギア列218・220が常時形成される。一方、前進出力ギア219は、中間軸223に固設されたアイドルギア222と噛合され、該アイドルギア222は、走行出力軸16に固設された前進入力ギア221と噛合されて、前進ギア列219・222・221が常時形成される。
このような構成において、前後進クラッチ200のクラッチ動作を行うと、前進クラッチ部200bのみが「入」状態となり、合成動力が、クラッチハウジング200dから前進ギア列219・222・221を介して、前進方向の回転動力として走行出力軸16に伝達される「前進クラッチ入」と、後進クラッチ部200aのみが「入」状態となって、合成動力が、クラッチハウジング200cから後進ギア列218・220を介して、後進方向の回転動力として走行出力軸16に伝達される「後進クラッチ入」と、前記前進クラッチ部200b・後進クラッチ部200aのいずれも「切」状態となって、合成動力が走行出力軸16には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかのクラッチ状態を選択して、前進または後進の回転動力を走行出力軸16に伝達することができる。
すなわち、以上のようにして、変速装置2Dでは、前記実施例1乃至実施例4の変速装置2・2A・2B・2Cとは異なり、正逆転クラッチ211、遊星ギア機構180、前後進クラッチ200を、同一軸心上で、しかも、左右方向に並設されたエンジン動力軸7と走行出力軸16との間の空間に、集中して配置するので、ミッションケース206内の空間を有効に利用することができ、変速装置2Dの小型化・軽量化を、更に進めることができる。
また、前記走行出力軸16の前端は、ドライブシャフト20を介して前車軸駆動装置22への入力軸21の後端に連結される一方、走行出力軸16の後端は、ベベルギア26を介して後車軸駆動装置12へのリングギア23bに連結されている。
すなわち、作業車両1Dでは、前記実施例1乃至実施例4の作業車両1・1A・1B・1Cとは異なり、前後の車軸駆動装置22・12を、単一の軸体である走行出力軸16で連結して駆動する駆動構成としている。
次に、前記正逆転クラッチ211、遊星ギア機構180、前後進クラッチ200等の油圧回路とその制御構成について説明する。
前記ミッションケース206の底面には、前後に第一バルブユニットU1と第二バルブユニットU2が取り付けられている。
このうちの第二バルブユニットU2においては、そのポンプポート225に、図3に示す走行用油圧ポンプ95の供給ポート100が、外部配管101を介して連通されると共に、そのアウトポート226には、図3に示す油圧式無段変速装置50への戻りポート94が、外部配管102を介して連通されている。
更に、前記ポンプポート225は、途中部にフィルタ227を設けた油路228を介して、2ポート2位置式の正転クラッチ弁229と逆転クラッチ弁230に接続されると共に、前記油路228には、作動油を既定値に調圧するための調圧弁231も接続されている。更に、このうちの正転クラッチ弁229の給排ポート229aは、油路232から油路233を介して、正転用ピストン234を収容する正転用シリンダ室235に連通されると共に、逆転クラッチ弁230の給排ポート230aは、油路236から油路237を介して、前記逆転用ピストン238を収容する逆転用シリンダ室239に連通される。
そして、正転クラッチ弁229と逆転クラッチ弁230では、いずれのスプール229b・230bの位置も、位置240と位置241との間で切り替え可能としている。このうちの位置240では、前記油路228からの作動油の供給を遮断した上で、前記給排ポート229a・230aが油路242を介して油溜まり243に連通され、位置241では、油溜まり243への連通を遮断した上で、給排ポート229a・230aが、それぞれスプール229b・230b等を介してポンプポート225に連通されるようにしている。
従って、正転クラッチ弁229と逆転クラッチ弁230の両クラッチ弁を位置240に設定すると、前記正転用シリンダ室235が給排ポート229a等を介して油溜まり243に連通されると共に、前記逆転用シリンダ室239も給排ポート230a等を介して油溜まり243に連通されて、正転用シリンダ室235と逆転用シリンダ室239が油溜まり243に開放される。すると、正転用ピストン234と逆転用ピストン238は、それぞれ、図示せぬ戻しバネの付勢力によって摩擦エレメントから離間しており、摩擦エレメント間が非係合状態となるため、前記正転クラッチギア213と逆転クラッチギア212は、両クラッチハウジング211d・211cとの連係が遮断される。これにより、前記油圧式無段変速装置50からの変速動力が、正転クラッチギア213と逆転クラッチギア212から両クラッチハウジング211d・211cを介して後伝達軸205に伝達されることのない、前記「クラッチ中立」のクラッチ状態が選択される。
更に、正転クラッチ弁229だけを位置241に切り替えると、正転用シリンダ室235のみが給排ポート229a等を介してポンプポート225に連通されて、正転用シリンダ室235内に作動油が流入し、正転用ピストン234が図示せぬ戻しバネの付勢力に抗して摩擦エレメント間を押圧し、該摩擦エレメント間が係合状態となる。すると、正転クラッチギア213のみがクラッチハウジング211dと接続し、これにより、前記油圧式無段変速装置50からの変速動力が、前記正転ギア列52c・214・215・213からクラッチハウジング211dのみを介して後伝達軸205に伝達されて、前記「正転クラッチ入」のクラッチ状態が選択される。
逆に、逆転クラッチ弁230だけを位置241に切り替えると、逆転用シリンダ室239のみが給排ポート230a等を介してポンプポート225に連通されて、逆転用シリンダ室239内に作動油が流入し、逆転用ピストン238が図示せぬ戻しバネの付勢力に抗して摩擦エレメント間を押圧し、該摩擦エレメント間が係合状態となる。すると、逆転クラッチギア212のみがクラッチハウジング211cと接続し、これにより、前記油圧式無段変速装置50からの変速動力が、前記逆転ギア列52c・212からクラッチハウジング211cのみを介して後伝達軸205に伝達されて、前記「逆転クラッチ入」のクラッチ状態が選択される。
なお、前記ポンプポート225には、油路228を介して、リリーフ弁244を接続した潤滑用の油路245が連通され、該油路245は、油路246と油路247とに分岐される。そして、このうちの油路246の先部は、前記正逆転クラッチ211と前後進クラッチ200の軸受部や摺動部分等に向かって開口され、前記油路247の先部は、前記遊星ギア機構180のギア要素の噛合部等に向かって開口されており、該開口から作動油を潤滑油として供給できるようにしている。更に、ポンプポート225は、油路228から油路247を介して供給ポート248に接続されている。
前記第一バルブユニットU1においては、そのポンプポート249には、前記第二バルブユニットU2の供給ポート248が外部配管250を介して連通されると共に、ポンプポート249は、油路251介して、2ポート2位置式の後進クラッチ弁252と前進クラッチ弁253に接続される。このうちの後進クラッチ弁252の給排ポート252aは、油路254から油路255を介して、後進用ピストン256を収容する後進用シリンダ室257に連通されると共に、前進クラッチ弁253の給排ポート253aは、油路258から油路259を介して、前記前進用ピストン260を収容する前進用シリンダ室261に連通される。
そして、後進クラッチ弁252と前進クラッチ弁253では、いずれのスプール252b・253bの位置も、前記位置240と位置241との間で切り替え可能とし、位置240では、前記油路251からの作動油の供給を遮断した上で、前記給排ポート252a・253aが油路262を介して油溜まり263に連通され、位置241では、油溜まり263への連通を遮断した上で、給排ポート252a・253aが、それぞれスプール252b・253b等を介してポンプポート249に連通されるようにしている。
従って、前記第二バルブユニットU2と同様に、後進クラッチ弁252と前進クラッチ弁253の両クラッチ弁を位置240に設定すると、前記遊星ギア機構180からの合成動力が、前伝達軸204から両クラッチハウジング200c・200dを介して後進出力ギア218と前進出力ギア219に伝達されることのない、前記「クラッチ中立」のクラッチ状態が選択される。更に、後進クラッチ弁252だけを位置241に切り替えると、前記遊星ギア機構180からの合成動力が、前伝達軸204からクラッチハウジング200cを介して後進出力ギア218のみに伝達される「後進クラッチ入」のクラッチ状態が選択され、逆に、前進クラッチ弁253だけを位置241に切り替えると、前記遊星ギア機構180からの合成動力が、前伝達軸204からクラッチハウジング200dを介して前進出力ギア219のみに伝達される「前進クラッチ入」のクラッチ状態が選択される。
次に、前記変速装置2Dよる走行動力の出力状況について、図13、図14により説明する。
図13に示すように、油圧式無段変速装置50においては、油圧モータ部56の固定斜板の傾きを逆にする等の状態で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxの範囲で変化させると、変速出力軸52から出力される変速動力は速度範囲−2a〜0で変速する。
そして、前記正逆転クラッチ211において、「正転クラッチ入」では、そのまま後進方向の回転動力が速度範囲−2a〜0で得られ、「逆転クラッチ入」では、反転して前進方向の回転動力が速度範囲0〜2aで得られ、その結果、後伝達軸205から出力される回転動力を速度範囲−2a〜2aまで拡大することができる。
更に、前記遊星ギア機構180においては、前記正逆転クラッチ211からの回転動力が速度範囲−2a〜2aで前記サンギア183に伝達されると共に、前記エンジン4からのエンジン動力が回転速度aで前記プラネタリキャリア185に伝達される。すると、前記遊星ギア機構9と同様に、この両回転動力は、該プラネタリキャリア185のキャリア軸185aに回転自在に支持されると同時に前記サンギア183と噛合するプラネタリギア184において合成され、合成動力が速度範囲0〜4aでインターナルギア186を介して前伝達軸204に伝達される。
加えて、前記前後進クラッチ200において、「前進クラッチ入」では、前伝達軸204からそのまま前進方向の回転動力が速度範囲0〜4aで得られ、「後進クラッチ入」では、反転して後進方向の回転動力が速度範囲−4a〜0で得られ、いずれも走行出力軸16に伝達される。
以上のようにして、走行出力軸16から出力される走行動力により変速可能な車速範囲を、速度範囲−4a〜4aまで拡大することができる。
また、具体的な車速変化の一例について図14により説明する。
この車速変化は、四つのステップから成り、最初の第一ステップ271では、正逆転クラッチ211を「逆転クラッチ入」、前後進クラッチ200を「後進クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、車速vは−4aから−2aまで後進側で減速される。
第二ステップ272では、前後進クラッチ200のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ211を「正転クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは−2aから0まで後進側で更に減速される。
第三ステップ273では、正逆転クラッチ211のクラッチ状態はそのままで、前後進クラッチ200を「前進クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αを−αmaxからαmaxまで傾倒させると、車速vは0から2aまで前進側で増速される。
第四ステップ274では、前後進クラッチ200のクラッチ状態はそのままで、正逆転クラッチ211を「逆転クラッチ入」に切り替えた上で、第一斜板60の斜板角αをαmaxから−αmaxまで傾倒して戻すと、車速vは2aから4aまで前進側で更に増速される。
このようにして、変速可能な車速範囲として、ステップ271とステップ272から成る後進速度域264、ステップ273とステップ274から成る前進速度域265が得られ、これらの速度域264・265の合成範囲として前記車速範囲−4a〜4aを得ることができる。
次に、実施例6に係わる作業車両1Eとその変速装置2Eについて、図15により説明する。
該作業車両1Eでは、変速装置2Eにおける走行出力軸16から後車軸駆動装置12までの動力伝達経路の変速構成が前記実施例5とは異なり、具体的には、後車軸駆動装置12の直前に高低速クラッチ281を設けている。それ以外の構成は前記実施例5と同様である。なお、前記実施例5と本実施例6の無段変速装置50は、図11と図15に示すように、いずれもミッションケース206の後方から挿入して配置されており、着脱自在な構成とすることができ、組立性・メンテナンス性を容易にしている。
さて、前記作業車両1Eにおいては、前記変速装置2Dと同様に、エンジン4からのエンジン動力が、油圧式無段変速装置50から正逆転クラッチ211、遊星ギア機構180、前後進クラッチ200を介して、前進または後進の回転動力として走行出力軸16に伝達される。そして、該走行出力軸16の後方には、同一軸心上に後車軸伝達軸280が回転自在に軸支され、該後車軸伝達軸280と前記走行出力軸16との間に、高低速クラッチ281が介設されている。
該高低速クラッチ281においては、前記後車軸伝達軸280の前部には、シンクロクラッチ式のクラッチ部282が固設されると共に、該クラッチ部282によって切替可能な低速ギア283と高速ギア284が回転自在に遊嵌されている。そして、このうちの低速ギア283の前端中央は、前記走行出力軸16の後端に連結されており、走行出力軸16からの回転動力が、低速ギア283に常時伝達されるようにしている。
一方、前記後車軸伝達軸280に平行に、中間軸285が固定して支持され、該中間軸285上には、二連式の変速ギア286が回転自在に遊嵌されている。そして、該変速ギア286の第一ギア部286aは、該第一ギア部286aと略同径の前記低速ギア283に噛合されると共に、第二ギア部286bは、該第二ギア部286bよりも小径の高速ギア284に噛合されており、高速ギア列283・286a・286b・284が常時形成されている。これにより、走行出力軸16からの回転動力が、増速されてから高速ギア284に常時伝達されるようにしている。
このような構成において、高低速クラッチ281のクラッチ動作を行うと、低速ギア283のみがクラッチ部282と係合して、走行出力軸16の回転動力がそのまま低速ギア283から後車軸伝達軸280に伝達される「低速クラッチ入」と、高速ギア284のみがクラッチ部282と係合して、走行出力軸16の回転動力が、前記高速ギア列283・286a・286b・284で増速されて、高速ギア284から後車軸伝達軸280に伝達される「高速クラッチ入」と、回転動力が後車軸伝達軸280には伝達されない「クラッチ中立」のうちの、いずれかの一つのクラッチ状態を選択して、中立以外では高速または低速の回転動力を後車軸伝達軸280に伝達することができる。
すなわち、このような高低速クラッチ281を、走行出力軸16から後車軸駆動装置12までの動力伝達経路に介設するので、例えば、作業時等の低速走行時には、「低速クラッチ入」にして前輪と後輪を同じ回転動力で同時に駆動する四輪駆動に切り替え、圃場間移動時等の高速走行時には、前車軸駆動装置22内の動力伝達を「切」状態にした上で「高速クラッチ入」にして後輪のみを駆動する二輪駆動に切り替えることができ、走行条件に適した駆動方式を選択することができる。
なお、以下には、本発明以外で、車速範囲を容易に拡大可能な変速装置について、その各種構成例についても説明する。
まず、構成例1に係わる作業車両1Fとその変速装置2Fについて、図16により説明する。
該作業車両1Fでは、変速装置2Eにおける変速出力軸52から遊星ギア機構180までの動力伝達経路の変速構成が前記実施例5とは異なり、具体的には、これまで実施例1乃至実施例5では備えていた正逆転クラッチを省いている。なお、それ以外の構成は前記実施例5と同様である。
さて、前記作業車両1Fにおいては、前記変速装置2Dと同じ構成により、エンジン4からのエンジン動力が、油圧式無段変速装置50に伝達されると共に、遊星ギア機構180からの合成動力が、前後進クラッチ200を介して、前進または後進の回転動力として走行出力軸16に伝達されている。
そして、このうちの油圧式無段変速装置50の変速出力軸52から遊星ギア機構180までの動力伝達経路においては、前記後伝達軸205の後部に伝達ギア290が固設され、該伝達ギア290は、前記変速出力軸52上の変速出力ギア52cに噛合されており、変速動力が後伝達軸205にそのまま常時伝達されるようにしている。
従って、前記遊星ギア機構180に対し、エンジン動力は、前記実施例5と同様に、第二出力ギア217から入力ギア187を介してプラネタリキャリア185に入力されるが、変速動力は、変速出力ギア52cから伝達ギア290を介してそのままサンギア183に入力される。このため、エンジン動力軸7と減速軸202との間には、前記変速装置2D・2Eのような、中間軸201や該中間軸201上の中間入力ギア214・中間出力ギア215を設ける必要がない。
すなわち、このように正逆転クラッチを省略すると、例えば、それほど大きな車速範囲を必要としない場合には、変速装置2Fの軸数が少なくて済み、配置空間も小さくて済むので、更なる変速装置2Fの小型化・軽量化を図ることができるのである。
次に、構成例2に係わる作業車両1Gとその変速装置2Gについて、図17により説明する。
該作業車両1Gでは、変速装置2Gにおけるエンジン4から遊星ギア機構9までの動力伝達経路の変速構成が前記実施例2とは異なり、具体的には、油圧式無段変速装置50を油圧式無段変速装置300に変更すると共に、前記構成例1と同様に、正逆転クラッチ8を省いている。なお、それ以外の構成は前記実施例2と同様である。
さて、前記作業車両1Gにおいては、前記変速装置2Aと同様に、遊星ギア機構9による合成動力は、高低速クラッチ10から前後進クラッチ11を介して、前進または後進の回転動力として走行出力軸16に伝達される。一方、前記遊星ギア機構9の伝動上手側には、前記油圧式無段変速装置300が配置されている。
該油圧式無段変速装置300においては、油圧ポンプ部301と油圧モータ部302が、エンジン動力軸7の左方で左右方向に並設され、該油圧ポンプ部301と油圧モータ部302の前後一側は、図示せぬ板状のセンタセクションによって覆設されており、該センタセクション内に内設した閉回路によって、油圧ポンプ部301と油圧モータ部302との間が作動油によって流体接続されている。
そして、前記油圧ポンプ部301から後方に、変速入力軸303が突出され、該変速入力軸303の後端は、前記第二伝達軸151の前端に連結されると共に、該第二伝達軸151の前部には、第一入力ギア307が固設され、該第一入力ギア307は、前記エンジン動力軸7上に固設した出力ギア305と噛合されている。これにより、エンジン動力は、ギア列305・307から変速入力軸303を介して、油圧ポンプ部301に入力される一方、同じギア列305・307から第二伝達軸151を介して、遊星ギア機構9のサンギア130に入力されるようにしている。
そして、前記油圧モータ部302から後方には、変速出力軸304が突出され、該変速出力軸304の後端には、出力ギア306が固設され、該出力ギア306は、前記遊星ギア機構9のインターナルギア129の前端に固設した第二入力ギア308と噛合されている。これにより、変速動力が、変速出力軸304からギア列306・308を介して、遊星ギア機構9へのインターナルギア129に直接入力されるようにしている。
従って、前記遊星ギア機構9に対し、エンジン4からのエンジン動力は、前記実施例2と同様に、そのままサンギア130に入力されるのに対し、変速出力軸304からの変速動力は、前記構成例1と同様に、正逆転クラッチを介することなく、そのままインターナルギア129に入力される。これにより、正逆転クラッチを支持する軸等は不要となり、例えば、それほど大きな車速範囲を必要としない場合には、変速装置2Gの軸数が少なくて済み、配置空間も小さくて済むので、更なる変速装置2Gの小型化・軽量化を図ることができる。
更に、前記油圧式無段変速装置300の変速入力軸303と変速出力軸304とは、互いに平行に離間して配置する構成とするので、油圧式無段変速装置50の如く、シリンダブロック54内に複雑な油路を設けたり、変速入力軸51と変速出力軸52を内外二重構造にする等の必要がなく、加工コストの低減や組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
次に、構成例3に係わる作業車両1Hとその変速装置2Hについて、図18により説明する。
該作業車両1Hでは、変速装置2Hにおけるエンジン4から遊星ギア機構9までの動力伝達経路の変速構成が前記構成例2とは異なり、具体的には、前記遊星ギア機構9のサンギア130へのエンジン動力の伝達経路が、油圧式無段変速装置300の変速入力軸303への伝達経路とは異なるように設定している。なお、それ以外の構成は前記構成例2と同様である。
さて、前記作業車両1Hにおいては、エンジン動力軸7の前部で前記出力ギア305の後方には、出力ギア310が固設され、このうちの出力ギア305には、前記変速入力軸303後端の第一入力ギア307が噛合される。一方、前記出力ギア310には、第二伝達軸151前端の入力ギア311が噛合されている。これにより、エンジン動力は、ギア列305・307から変速入力軸303を介して、油圧ポンプ部301に入力されると共に、異なるギア列310・311から第二伝達軸151を介して、遊星ギア機構9のサンギア130に入力されるようにしている。
従って、エンジン4からのエンジン動力は、エンジン出力軸7上で分離し、異なる伝達経路を介して、油圧式無段変速装置300の油圧ポンプ部301と、遊星ギア機構9のサンギア130に伝達される。これにより、前記ギア列305・307やギア列310・311のギア比を変更する等して、油圧式無段変速装置300や遊星ギア機構9に入力する回転動力を適正化することができる。
本発明は、エンジンからの入力軸によって駆動する油圧式無段変速装置を備えた、すべての作業車両の変速装置に適用することができる。
1 作業車両
2 変速装置
4 エンジン
8 正逆転クラッチ
9 遊星ギア機構
10 高低速クラッチ
10b 高速クラッチ部(高速側クラッチ)
10c 低速クラッチ部(低速側クラッチ)
14 後車軸(車軸)
16 走行出力軸
33 前伝達軸(クラッチ軸)
50 油圧式無段変速装置
51 変速入力軸(入力軸)
52 変速出力軸(出力軸)
54 シリンダブロック
55 油圧ポンプ部
56 油圧モータ部
62 第一プランジャ
68・80 スプール弁
73 第二プランジャ
81 第一油路(メイン油路)
82 第二油路(メイン油路)
127 プラネタリギア
128 プラネタリキャリア
128a キャリア軸
129 インターナルギア
130 サンギア
131 高速ギア(高速側出力部材)
132 低速ギア(低速側出力部材)

Claims (5)

  1. エンジンからの入力軸によって駆動する油圧式無段変速装置を備えた作業車両の変速装置において、前記エンジンからのエンジン動力と油圧式無段変速装置からの変速動力を合成して合成動力として出力するための遊星ギア機構を備えると共に、該遊星ギア機構と前記油圧式無段変速装置との間に、前記変速動力を正転側または逆転側の回転動力に変えてから前記遊星ギア機構に入力する正逆転クラッチを介設したことを特徴とする作業車両の変速装置。
  2. 前記正逆転クラッチを軸支するクラッチ軸は、前記遊星ギア機構と同一軸心上に配置することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置。
  3. 前記遊星ギア機構から合成動力を出力する低速側出力部材と高速側出力部材を設け、該低速側出力部材と高速側出力部材を、前記作業車両の車軸を駆動する走行出力軸に対して、それぞれ断接可能に接続するための低速側クラッチと高速側クラッチを設け、該低速側クラッチと高速側クラッチとから成る高低速クラッチを前記遊星ギア機構に一体的に付設することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両の変速装置。
  4. 前記遊星ギア機構は、中心のサンギアと、該サンギアの外周に配置・噛合されプラネタリキャリアのキャリア軸に回動自在に支持される複数のプラネタリギアと、該プラネタリギアの外周に噛合されるリング状のインターナルギアとから構成し、前記サンギアと同一軸心上を回転自在に前記プラネタリキャリアを設け、該プラネタリキャリアと前記プラネタリギアを、それぞれ前記低速側出力部材と高速側出力部材に連係することを特徴とする請求項3に記載の作業車両の変速装置。
  5. 前記油圧式無段変速装置は、前記入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に油圧ポンプ部と油圧モータ部を配置して構成し、前記シリンダブロックには、前記油圧ポンプ部の第一プランジャ、前記油圧モータ部の第二プランジャ、該第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路、及び該一対のメイン油路内で送油方向を変更するスプール弁を設けると共に、前記入力軸と同一軸心上に油圧モータ部からの出力軸を配置することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の作業車両の変速装置。
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