JP5243703B2 - トラクタの変速伝動装置 - Google Patents
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この種の変速伝動装置として、従来、特許出願(特願2005−286073号)されたものを先に開発した。
変速出力部3bは、遊星伝動部3aの出力が入力されるクラッチ部Cと、このクラッチ部Cの出力が入力される副変速部100とを備えている。クラッチ部Cは、遊星伝動部3aの一対の出力部に入力側が各別に連結された第1クラッチC1と第2クラッチC2とを備えている。副変速部100は、この副変速部100の入力軸と出力軸との間に設けた低速クラッチCLと高速クラッチCHとを備えている。
これらの図に示すように、先に開発した変速伝動装置3は,次の如きものである。
すなわち、第1クラッチC1と低速クラッチCLとが入り状態に操作され、静油圧式無段変速部20が「−MAX」から「+MAX」に向けて変速操作されると、変速伝動装置3が1速レンジになって変速作動し、副変速出力の回転速度が「0」から無段階に増速していく。静油圧式無段変速部20が「+MAX」の変速状態になると、副変速出力の回転速度が「B11」になる。これに伴って第2クラッチC2と低速クラッチCLとが入り状態に操作され、かつ、静油圧式無段変速部20が「+MAX」から減速操作されると、変速伝動装置3が2速レンジになって変速作動し、副変速出力の回転速度が「B11」から無段階に増速していく。静油圧式無段変速部20が「+MAX」と「N」の間の変速状態「A」になると、副変速出力の回転速度が「B12」になる。これに伴って第1クラッチC1と高速クラッチCHとが入り状態に操作され、かつ、静油圧式無段変速部20が「A」から増速操作されると、変速伝動装置3が3速レンジになって変速作動し、副変速出力の回転速度が「B12」から無段階に増速していく。静油圧式無段変速部20が「+MAX」の変速状態になると、副変速出力の回転速度が「B13」になる。これに伴って第2クラッチC2と高速クラッチCHとが入り状態に操作され、かつ、静油圧式無段変速部20が「−MAX」に向けて変速操作されると、変速伝動装置3が4速レンジになって変速作動し、副変速出力の回転速度が「B13」から無段階に増速していく。静油圧式無段変速部20が「−MAX」の変速状態になると、副変速出力の回転速度が最高速度の「B14」になる。
すなわち、速度レンジが2速レンジと3速レンジの間で切り換わるレンジ超え変速は、全てのクラッチを切り状態と入り状態の一方から他方に切り換えることによって行われる。また、変速伝動装置に掛かる駆動負荷が変化し、クラッチに掛かる負荷が変化すると、クラッチには設計どおりの強さの切り換え操作力が付与されても、クラッチが設計タイミングとは異なったタイミングで切り換わる事態が発生しやすくなる。また、切り換えるべきクラッチの数が多いほど、設計タイミングとは異なったタイミングで切り換わるクラッチが発生しやすくなり、かつ、クラッチ間に発生する切り換りタイミングのずれが大きくなりやすい。このため、速度レンジが2速レンジと3速レンジの間で切り換わるレンジ超え変速が行われる際、各クラッチが所定の操作状態に切り換わって変速出力部が2速レンジあるいは3速レンジを現出する操作状態に切り換わるまでの途中において、長時間にわたって切り状態やスリップ状態になるクラッチが発生することがある。また、一部のクラッチが所定の操作状態に切り換わっても、他のクラッチが未だ所定の操作状態に切り換わっておらず、変速出力部が2速レンジや3速レンジを現出する操作状態に切り換わる前に1速レンジや4速レンジを現出する操作状態になってしまうという、不安定な変速作動が発生することがある。
前記遊星伝動部は、前記複数の出力部として、内筒軸側の第1出力部と外筒軸側の第2出力部とを備え、
前記変速出力部に、前記遊星伝動部の前記車体前後向き回転軸芯に対して偏倚して平行な出力軸と、前記遊星伝動部における前記複数の出力部の駆動力を前記出力軸に伝達するように、かつ、前記出力軸の回転速度を相違させるように前記複数の出力部と前記出力軸とにわたって設けた4つの伝動機構と、前記4つの伝動機構に各別に設けた4つのクラッチとを備え、
前記4つのクラッチは、1速クラッチと、2速クラッチと、3速クラッチと、4速クラッチと、から構成されており、
前記4つの伝動機構として、前記第1出力部側に設けた第1伝動機構を一対備え、前記第2出力部側に設けた第2伝動機構を一対備え、
一対の前記第1伝動機構は、一方の第1伝動機構が前記第1出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度が、他方の第1伝動機構が前記第1出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度よりも高速になるように、互いに異なる伝動比を備えているとともに、前記一方の第1伝動機構に前記3速クラッチを備え、前記他方の第1伝動機構に前記1速クラッチを備えており、
一対の前記第2伝動機構は、他方の第2伝動機構が前記第2出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度が、一方の第2伝動機構が前記第2出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度よりも高速になるように、互いに異なる伝動比を備えているとともに、前記他方の第2伝動機構に前記4速クラッチを備え、前記一方の第2伝動機構に前記2速クラッチを備えており、
前記4つのクラッチのそれぞれを、前記4つの伝動機構からの駆動力がそれぞれ入力される入力側回転部材と、前記出力軸に駆動力を出力する出力側回転部材とを備えて構成して、これら4組の入力側回転部材及び出力側回転部材を前記出力軸の回転軸芯に沿う方向に並列配置して前記出力軸に支持し、前記4つのクラッチを別々に入り状態と切り状態とに切り換え自在に構成してそれぞれのクラッチの入り状態で4段階の速度レンジを現出するように構成してあり、
前記4段階の速度レンジにおける1速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記1速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける2速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記2速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける3速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記3速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける4速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記4速クラッチのみを入り状態とすることで現出されるように構成してあり、
前記1速レンジと前記2速レンジとの切り換えについては、前記1速クラッチと前記2速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行い、
前記2速レンジと前記3速レンジとの切り換えについては、前記2速クラッチと前記3速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行い、
前記3速レンジと前記4速レンジとの切り換えについては、前記3速クラッチと前記4速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行うように構成してある。
つまり、速度レンジが1速レンジと2速レンジの間で切り換わるレンジ超え変速と、2速レンジと3速レンジの間で切り換わるレンジ超え変速と、3速レンジと4速レンジの間で切り換わるレンジ超え変速とのいずれのレンジ超え変速が行われる場合も、4つのクラッチのうちのいずれか二つのクラッチを切り換え操作するだけで済む。
〔第一実施例〕
図1は、本発明の第一実施例に係る変速伝動装置3の線図である。この図に示すように、本発明の第一実施例に係る変速伝動装置3は、トラクタが備える走行伝動装置に装備されている。
尚、図1に示す如くミッションケース10の後部に設けた動力取り出し軸11は、トラクタの車体後部に連結されたロータリ耕耘装置(図示せず)など、各種の作業装置に前記エンジン1の駆動力を伝達するものである。この動力取り出し軸11は、伝動軸12と、作業クラッチ13と、伝動ギヤ14a,14bと、伝動ギヤ14bの回転支軸15とを介して前記変速伝動装置3の入力軸21に連動されている。
尚、前後進レバー81を中立位置S2に操作すると、制御手段84が前進クラッチCF及び後進クラッチCRを切り状態に切換え操作する。これにより、前後進切換え装置30が中立状態になって後輪差動機構5および前輪差動機構9への伝動が停止され、トラクタが停止状態になる。
図9は、本発明の参考例としての第二実施例に係る変速伝動装置3の線図である。この図に示すように、本発明の参考例としての第二実施例に係る変速伝動装置3は、トラクタが備える走行伝動装置に装備されている。この走行伝動装置は、エンジン1の出力軸1aからの出力が入力される主クラッチ2と、この主クラッチ2からの出力が入力される前記変速伝動装置3と、この変速伝動装置3の出力軸70に連動された前後進切換え装置30と、この前後進切換え装置30の出力軸32に連動された後輪差動機構5と、前記前後進切換え装置30の出力軸32に連動された前輪差動機構9とを備えている。
動力を第1伝動機構71と1速クラッチCL1とによって1速レンジの速度段階の駆動力となるようにして出力軸70に伝達し、この出力軸70から前後進切換え装置30に伝達する。遊星伝動部3aがこのように操作された状態において、無段変速部20が「−MAX」から「+MAX」に向けて変速操作されると、これに伴って出力軸70の回転速度が「0」から無段階に増速する。無段変速部20が「+MAX」の変速状態になると、出力軸70の回転速度が「B21」になる。
伝動機構72と2速クラッチCL2とによって2速レンジの速度段階の駆動力となるようにして出力軸70に伝達し、この出力軸70から前後進切換え装置30に伝達する。変速出力部3bがこのように操作された状態において、無段変速部20が「+MAX」から「−MAX」に向けて変速操作されると、これに伴って出力軸70の回転速度が「B21」から無段階に増速する。無段変速部20が「−MAX」の変速状態になると、出力軸70の回転速度が「B22」になる。
伝動機構73と3速クラッチCL3とによって3速レンジの速度段階の駆動力となるようにして出力軸70に伝達し、この出力軸70から前後進切換え装置30に伝達する。変速出力部3bがこのように操作された状態において、無段変速部20が「−MAX」から「+MAX」に向けて変速操作されると、これに伴って出力軸70の回転速度が「B22」から無段階に増速する。無段変速部20が「+MAX」の変速状態になると、出力軸70の回転速度が「B23」になる。
伝動機構74と4速クラッチCL4とによって4速レンジの速度段階の駆動力となるようにして出力軸70に伝達し、この出力軸70から前後進切換え装置30に伝達する。変速出力部3bがこのように操作された状態において、無段変速部20が「+MAX」から「−MAX」に向けて変速操作されると、これに伴って出力軸70の回転速度が「B23」から無段階に増速する。無段変速部20が「−MAX」の変速状態になると、出力軸70の回転速度が最高速度の「B24」になる。
3a 遊星伝動部
3b 変速出力部
10 ミッションケース
20 静油圧無段変速部
30 前後進切換え装置
41,42,43 出力部
70 出力軸
71,72,73,74 伝動機構
95 入力側回転部材
96 出力側回転部材
CF 前進クラッチ
CR 後進クラッチ
PF,PR 遊星伝動機構
CL1,CL2,CL3,CL4 クラッチ
Claims (2)
- エンジンの出力が入力されるものでかつエンジンよりも車体後方側に配設された静油圧式無段変速部と、前記静油圧式無段変速部から出力される駆動力と前記静油圧式無段変速部による変速作用を受けないエンジン駆動力とを複数の遊星伝動機構によって合成するものでかつ前記静油圧式無段変速部よりも車体後方側でミッションケースの内部に車体前後向き回転軸芯を有するよう配設された遊星伝動部と、前記遊星伝動部の複数の出力部から出力される合成駆動力を複数段階の速度レンジに段階分けして出力するものでかつミッションケースの内部における前記遊星伝動部の車体後方側に配設された変速出力部とを備えたトラクタの変速伝動装置であって、
前記遊星伝動部は、前記複数の出力部として、内筒軸側の第1出力部と外筒軸側の第2出力部とを備え、
前記変速出力部に、前記遊星伝動部の前記車体前後向き回転軸芯に対して偏倚して平行な出力軸と、前記遊星伝動部における前記複数の出力部の駆動力を前記出力軸に伝達するように、かつ、前記出力軸の回転速度を相違させるように前記複数の出力部と前記出力軸とにわたって設けた4つの伝動機構と、前記4つの伝動機構に各別に設けた4つのクラッチとを備え、
前記4つのクラッチは、1速クラッチと、2速クラッチと、3速クラッチと、4速クラッチと、から構成されており、
前記4つの伝動機構として、前記第1出力部側に設けた第1伝動機構を一対備え、前記第2出力部側に設けた第2伝動機構を一対備え、
一対の前記第1伝動機構は、一方の第1伝動機構が前記第1出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度が、他方の第1伝動機構が前記第1出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度よりも高速になるように、互いに異なる伝動比を備えているとともに、前記一方の第1伝動機構に前記3速クラッチを備え、前記他方の第1伝動機構に前記1速クラッチを備えており、
一対の前記第2伝動機構は、他方の第2伝動機構が前記第2出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度が、一方の第2伝動機構が前記第2出力部の駆動力を前記出力軸に伝達した場合の前記出力軸の回転速度よりも高速になるように、互いに異なる伝動比を備えているとともに、前記他方の第2伝動機構に前記4速クラッチを備え、前記一方の第2伝動機構に前記2速クラッチを備えており、
前記4つのクラッチのそれぞれを、前記4つの伝動機構からの駆動力がそれぞれ入力される入力側回転部材と、前記出力軸に駆動力を出力する出力側回転部材とを備えて構成して、これら4組の入力側回転部材及び出力側回転部材を前記出力軸の回転軸芯に沿う方向に並列配置して前記出力軸に支持し、前記4つのクラッチを別々に入り状態と切り状態とに切り換え自在に構成してそれぞれのクラッチの入り状態で4段階の速度レンジを現出するように構成してあり、
前記4段階の速度レンジにおける1速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記1速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける2速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記2速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける3速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記3速クラッチのみを入り状態とすることで現出され、
前記4段階の速度レンジにおける4速レンジについては、前記4つのクラッチのうち、前記4速クラッチのみを入り状態とすることで現出されるように構成してあり、
前記1速レンジと前記2速レンジとの切り換えについては、前記1速クラッチと前記2速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行い、
前記2速レンジと前記3速レンジとの切り換えについては、前記2速クラッチと前記3速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行い、
前記3速レンジと前記4速レンジとの切り換えについては、前記3速クラッチと前記4速クラッチとの2つのクラッチの入り状態と切り状態とを切り換えることで行うように構成してあるトラクタの変速伝動装置。 - 前記出力軸からの出力を前進クラッチと後進クラッチとによって前進駆動力と後進駆動力とに切り換えるものでかつミッションケースの内部における前記出力軸の車体後方側に配設された前後進切り換え装置を備えている請求項1記載のトラクタの変速伝動装置。
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