本発明に係る動力伝動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る動力伝動装置が搭載された作業機の一例である収穫機としての自脱型コンバイン(以下、コンバイン100という。)の一部が示されている。
コンバイン100は、左右一対の走行装置1(1L,1R)によって走行する本体の前端に刈取部2が昇降自在に備えられるとともに、走行装置1の前部上方に運転者が搭乗する運転部3が備えられ、運転部3の側方に刈取部2から供給された刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4と、脱穀装置4の後方に脱穀により得られた処理物から選別された穀粒を貯留する穀粒タンク5とが備えられている。本実施形態においては、走行装置1(1L,1R)は、駆動輪1W(1LW,1RW)、転動輪及びそれらに巻回されたクローラベルトが備えられた、いわゆる無限軌道である。
運転部3の下部位置には動力発生装置としてのエンジン6が備えられている。走行装置1の前部位置においてコンバイン100の前進方向と垂直な幅方向における中央位置にはエンジン6の動力を走行装置1の駆動輪1Wに伝動する動力伝動装置7が設けられている。
運転部3には、運転者が搭乗するステップと、運転者が着座する運転座席とが備えられている。運転座席の前方位置には運転者が操作する操向操作具としての操向レバー3Sが備えられ、運転座席の側部位置には変速操作具としての主変速レバー3T及び副変速レバー3Cが備えられ、ステップには後述する駐車ブレーキ機構60を操作するためのブレーキペダル3Pが備えられている。
ブレーキペダル3Pを制動位置まで踏み込み操作することにより、動力伝動装置7に備えられた駐車ブレーキ機構60が作動し走行装置1は制動される。ブレーキペダル3Pの前部位置には、ブレーキペダル3Pが制動位置を超える領域まで踏み込まれた場合に、この踏み込み状態を保持するペダルロック3Rが備えられている。
〔動力伝動装置〕
図2に示すように、動力伝動装置7は、エンジン6からの動力を走行装置1(1L,1R)のそれぞれに伝動するための機構であり、エンジン6からの動力を無段階に変速して出力する第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20と、第一無段変速機構10からの動力を走行装置1Lに伝動する第一伝動機構30と、第二無段変速機構20からの動力を走行装置1Rに伝動する第二伝動機構40と、第一伝動機構30及び第二伝動機構40が収容される伝動ケース70等を備えている。
第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20は、伝動ケース70を挟むように左右に振り分けて伝動ケース70の外部に支持される。なお、左や右とは各図中における方向をいう。したがって、たとえば図2においては、伝動ケース70の左側に第一無段変速機構10が設けられ、伝動ケース70の右側に第二無段変速機構20が設けられている。なお、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20は、同一の構成の無段変速機構であるが説明の便宜上区別して説明する。
第一無段変速機構10には、第一変速ケース14の内部に、第一油圧ポンプ11と、第一油圧モータ12と、第一油圧ポンプ11と第一油圧モータ12とを流体的に接続する第一油路13とが備えられている。
第二無段変速機構20には、第二変速ケース24の内部に、第二油圧ポンプ21と、第二油圧モータ22と、第二油圧ポンプ21と第二油圧モータ22とを流体的に接続する第二油路23とが備えられている。
〔油圧ポンプ〕
第一油圧ポンプ11及び第二油圧ポンプ21は、それぞれエンジン6からの動力により駆動するアキシャルプランジャ形かつ容量可変形の油圧ポンプである。
第一油圧ポンプ11には、エンジン6からの動力が伝動される第一入力軸としての第一ポンプ軸11Sが備えられている。第一ポンプ軸11Sに、当該第一ポンプ軸11Sの軸心に対する傾斜角度が可変の第一ポンプ斜板が備えられている。
第二油圧ポンプ21には、エンジン6からの動力が伝動される第二入力軸としての第二ポンプ軸21Sが備えられている。第二ポンプ軸21Sに、当該第二ポンプ軸21Sの軸心に対する傾斜角度が可変の第二ポンプ斜板が備えられている。
前記第一ポンプ斜板及び前記第二ポンプ斜板は、第一ポンプ軸11Sの軸心又は第二ポンプ軸21Sの軸心に対する傾斜角度が、運転部3の操向レバー3S及び主変速レバー3Tに連係された操向装置及び油圧機構(図示せず)によって、それぞれ独立して中立停止位置、前進側又は後進側に無段階に変更操作可能に構成されている。
前記第一ポンプ斜板の前記傾斜角度に応じて、第一ポンプ軸11Sの軸心まわりに設けられた複数のプランジャのピストン量が変更され、第一ポンプ軸11Sの一定の回転あたりの作動油の吐出量が変化する。
前記第二ポンプ斜板の前記傾斜角度に応じて、第二ポンプ軸21Sの軸心まわりに設けられた複数のプランジャのピストン量が変更され、第二ポンプ軸21Sの一定の回転あたりの作動油の吐出量が変化する。
第一油圧ポンプ11や第二油圧ポンプ21は、前記第一ポンプ斜板及び前記第二ポンプ斜板の斜板角度が第一ポンプ軸11Sの軸心及び第二ポンプ軸21Sの軸心に対して小さくなるほど作動油の吐出量が多くなり、前記各斜板角度が前記各軸心に対して大きくなるほど、作動油の吐出量が少なくなる。また、前記各傾斜角度が前記各軸心と90度であるときは作動油は吐出されない。
〔油圧モータ〕
第一油圧モータ12及び第二油圧モータ22は、それぞれ第一油圧ポンプ11及び第二油圧ポンプ21からの作動油により駆動するアキシャルプランジャ形かつ可変容量形の油圧モータである。
第一油圧モータ12に、第一ポンプ軸11Sと平行な軸心を有し、第一伝動機構30へと動力を出力する第一出力軸としての第一モータ軸12Sが備えられている。第一モータ軸12Sに、当該第一モータ軸12Sの軸心に対する傾斜角度が可変の第一モータ斜板が備えられている。
第二油圧モータ22に、第二ポンプ軸21Sと平行な軸心を有し、第二伝動機構40へと動力を出力する第二出力軸としての第二モータ軸22Sが備えられている。第二モータ軸22Sに、当該第二モータ軸22Sの軸心に対する傾斜角度が可変の第二モータ斜板が備えられている。
前記第一モータ斜板及び前記第二モータ斜板は、第一モータ軸12Sの軸心又は第二モータ軸22Sの軸心に対する傾斜角度が、運転部3の副変速レバー3Cに連係された操向装置及び油圧機構(図示せず)によって、最小傾斜状態から最大傾斜状態まで無段階に変更操作可能に構成されている。
前記第一モータ斜板の前記傾斜角度に応じて、第一モータ軸12Sの軸心まわりに設けられた複数のプランジャのピストン量が変更され、一定の作動油あたりの第一モータ軸12Sの回転数が変化させられる。
前記第二モータ斜板の前記傾斜角度に応じて、第二モータ軸22Sの軸心まわりに設けられた複数のプランジャのピストン量が変更され、一定の作動油あたりの第二モータ軸22Sの回転数が変化させられる。
第一油圧モータ12及び第二油圧モータ22は、前記第一モータ斜板及び前記第二モータ斜板の第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sに対する傾斜角度が大きくなるほど、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sを一定回転させるのに必要な作動油量が多くなるため、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sの回転数は低下する。逆に、前記各傾斜角度が小さくなるほど、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sを一定回転させるのに必要な作動油量が少なくなるため、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sの回転数は増加する。
したがって、第一油圧ポンプ11及び第二油圧ポンプ21を主変速機構として機能させ、第一油圧モータ12及び第二油圧モータ22を副変速機構として機能させることができる。
〔伝動ケース〕
伝動ケース70は、第一無段変速機構10が支持される一方側の分割ケース70Lと第二無段変速機構20が支持される他方側の分割ケース70Rとから構成される。分割ケース70Lと分割ケース70Rとはボルト等の締結部材(図示せず)を用いて締結される。伝動ケース70は、前記締結部材による締結を解除すると、伝動ケース70に第一無段変速機構10と第二無段変速機構20とを取り付けたまま分割することができる。このため伝動ケース70の内部のメンテナンス等の作業性が良い。
図2から図4に示すように、伝動ケース70に、エンジン6からの動力を伝動ケース70に入力するための動力入力部8が備えられている。動力入力部8に、分割ケース70Rに設けられた玉軸受8Rと分割ケース70Lに設けられたころ軸受8Lとに軸支された動力入力軸部8Sと、動力入力軸部8Sに一体形成された動力入力歯車8Gとが備えられている。動力入力軸部8Sに、分割ケース70Rを貫通して分割ケース70Rの外部に延出しその端部にプーリ8Pが備えられている。プーリ8Pと、エンジン6の出力軸6Sに設けられたプーリ6Pとの間にはベルト6Vが巻回されている。これらの構成により、エンジン6からの動力がベルト6Vを介して動力入力軸部8S、すなわち動力入力歯車8Gに伝動される。
伝動ケース70に、動力入力部8により入力された動力を第一無段変速機構10に伝動するための入力中継部9が備えられている。入力中継部9は、分割ケース70Lに設けられたころ軸受9Lと、分割ケース70Rに設けられたころ軸受9Rと、ころ軸受9L及びころ軸受9Rに軸支された入力中継軸部9Sと、入力中継軸部9Sに一体形成された入力中継歯車9Gとから構成されている。なお、入力中継部9は、動力伝動装置7に必須の構成ではないが、本実施形態においては、分割ケース70Rのうち動力入力軸部8Sが収容される部分と、第二無段変速機構20の第二変速ケース24との物理的距離を確保し、互いに干渉することを避けることを目的として設けられている(図3も参照)。
第一ポンプ軸11Sは、図2中左から分割ケース70Lに挿入されている。第一ポンプ軸11Sに、第一入力歯車11Gがスプライン結合されている。第一入力歯車11Gは、分割ケース70Lに設けられた玉軸受11Lと、分割ケース70Rに設けられた玉軸受11Rとに軸支されている。
第二ポンプ軸21Sは、図2中右から分割ケース70Rに挿入されている。第二ポンプ軸21Sに、第二入力歯車21Gがスプライン結合されている。第二入力歯車21Gは、分割ケース70Rに設けられた玉軸受21Rと、分割ケース70Lに設けられた玉軸受21Lとに軸支されている。
図2から図4に示すように、入力中継歯車9Gと第一入力歯車11Gとが噛み合わされ、第一入力歯車11Gと第二入力歯車21Gとが噛み合わされている。したがって、動力入力歯車8Gからの動力は、入力中継歯車9Gを介して第一入力歯車11Gに伝動され、さらに、第一入力歯車11Gを介して第二入力歯車21Gに伝動される。つまり、動力入力歯車8Gからの動力は第二入力歯車21Gを介さずに第一入力歯車11Gに伝動される。
第一モータ軸12Sは、図2中左から分割ケース70Lに挿入されている。第一モータ軸12Sに、第一出力歯車12Gがスプライン結合されている。第一出力歯車12Gは、左端部が分割ケース70Lに設けられた玉軸受12Lに軸支され、軸状に構成された右端部は、後述する第二出力歯車22Gに形成された中空部に遊挿され、かつ、前記右端部と前記中空部との間に設けられた針軸受12Mに軸支されている。
第二モータ軸22Sは、図2中右から分割ケース70Lに挿入されている。第二モータ軸22Sに、第二出力歯車22Gがスプライン結合されている。第二出力歯車22Gは、右端部が分割ケース70Rに設けられた玉軸受22Rに軸支され、前記中空部には、第一出力歯車12Gの前記右端部が遊挿され、かつ、針軸受12Mに軸支されている。
以上のように、第一出力歯車12Gと第二出力歯車22Gとは同一の回転軸心上においてそれぞれ独立して回転可能に構成されている。
〔点検カバー〕
図2及び図6から図8に示すように、分割ケース70Lには点検口70Hが備えられている。点検口70Hに、点検カバー75がボルト等の締結部材(図示せず)によって着脱自在に設けられている。
点検カバー75は、点検口70Hを覆う蓋部751と、蓋部751の周縁から一体的に延出する円筒部752とから構成されている。円筒部752の外周囲にフランジ部753が一体的に設けられている。点検カバー75を円筒部752が点検口70Hに挿入され異形嵌合(インロー嵌合)される態様により点検口70Hに設けたときに、フランジ部753が点検口70Hの周縁に当接して点検口70Hは密閉される。
〔第一伝動機構及び第二伝動機構〕
図2及び図5に示すように、第一伝動機構30は、第一無段変速機構10から走行装置1Lに至るまでに複数段の第一歯車群(中継歯車31G−36G)を備えている。第二伝動機構40は、第二無段変速機構20から走行装置1Rに至るまでに複数段の第二歯車群(中継歯車41G−46G)を備えている。第一歯車群(中継歯車31G−36G)における前記歯車間の変速比と、第二歯車群(中継歯車41G−46G)における前記歯車間の変速比とが、同一に設定されている。
中継歯車31Gは、左端側が分割ケース70Lの内壁に支持され、右端側が分割ケース70Rの内壁に支持された中継軸31Sに、ころ軸受31Lを介して回転自在に軸支されるとともに、第一出力歯車12G及び中継歯車32Gと噛み合い、第一出力歯車12Gの回転を中継歯車32Gに伝動する。
中継歯車41Gは、中継軸31Sにころ軸受41Rを介して回転自在に軸支されるとともに、第二出力歯車22G及び中継歯車42Gと噛み合い、第二出力歯車22Gの回転を中継歯車42Gに伝動する。
中継歯車32Gは、中継軸42Sに針軸受33L及び針軸受33Rを介して回転自在に軸支された中継歯車33Gにスプライン結合されている。したがって、中継歯車32Gと中継歯車33Gとは一体的に回転する。
中継歯車32Gは中継歯車31Gと噛み合い、中継歯車33Gは中継歯車34Gと噛み合っている。したがって、中継歯車31Gからの動力は、中継歯車32G及び中継歯車33Gを介して中継歯車34Gに伝動される。
中継歯車42Gは、分割ケース70L(本実施形態においては点検カバー75)に設けられた玉軸受42Lと分割ケース70Rに設けられた玉軸受42Rとに軸支された中継軸42Sにスプライン結合されている。中継歯車43Gは、中継歯車42Gに右側に隣接して中継軸42Sにスプライン結合されている。したがって、中継歯車42Gと中継歯車43Gとは一体的に回転する。
中継歯車42Gは中継歯車41Gと噛み合い、中継歯車43Gは中継歯車44Gと噛み合っている。したがって、中継歯車41Gからの動力は、中継歯車42G及び中継歯車43Gを介して中継歯車44Gに伝動される。
中継歯車34Gは、中継軸34Sにスプライン結合されている。中継歯車35Gは、中継歯車34Gの右側に隣接して中継軸34Sにスプライン結合されている。中継軸34Sは、左端部が分割ケース70Lに設けられた玉軸受34Lに軸支され、右端部が、前記各図中左側に開口部45Oを有し前記各図中右側に底部45Bを有する有底円筒体45Cの開口部45Oに遊挿され、かつ、中継軸34Sと有底円筒体45Cとの間に設けられた中間軸受としての針軸受34M及び針軸受34Rに有底円筒体45Cに相対回転自在に軸支されている。したがって、中継歯車34Gと中継歯車35Gとは一体的に回転する。
中継歯車34Gは中継歯車33Gと噛み合い、中継歯車35Gは中継歯車36Gと噛み合っている。したがって、中継歯車33Gからの動力は、中継歯車34G及び中継歯車35Gを介して中継歯車36Gに伝動される。
中継歯車45Gは、有底円筒体45Cの外周面に備えられている。中継歯車44Gは、有底円筒体45Cの外周面にスプライン結合されている。有底円筒体45Cは、その内周面が開口部45Oに挿入された中継軸34Sに針軸受34M及び針軸受34Rを介して軸支され、外周面が分割ケース70Rに設けられた玉軸受45Rに軸支されている。したがって、中継歯車44Gと中継歯車45Gとは一体的に回転する。
中継歯車44Gは中継歯車43Gと噛み合い、中継歯車45Gは中継歯車46Gと噛み合っている。したがって、中継歯車43Gからの動力は、中継歯車44G及び中継歯車45Gを介して中継歯車46Gに伝動される。
中継歯車36Gは、そのボス部36Bが、走行装置1Lの車軸1LSにスプライン結合されている。なお、車軸1LSは、分割ケース70Lに設けられた玉軸受1LRに軸支されている。中継歯車36Gのボス部36Bは、分割ケース70Lに設けられた玉軸支36Lに軸支されている。中継歯車36Gは、中継歯車35Gと噛み合っている。したがって、中継歯車35Gからの動力は、中継歯車36Gを介して車軸1LSに伝動される。車軸1LSの先端部には駆動輪1LWが備えられており、車軸1LSが回転することにより駆動輪1LWが回転し、駆動輪1LWに巻回されているクローラベルト(図示せず)が回転する。
中継歯車46Gは、そのボス部46Bが、走行装置1の車軸1RSにスプライン結合されている。なお、車軸1RSは、分割ケース70Rに設けられた玉軸受1RLに軸支されている。中継歯車46Gのボス部46Bは、その外周部が分割ケース70Rに設けられた玉軸支46Rに軸支され、その内周部が車軸1LSとの間に設けられた玉軸受46Lに軸支されている。中継歯車36Gと玉軸受46Lとの間には、カラー36Cが設けられている。中継歯車46Gは、中継歯車45Gと噛み合っている。したがって、中継歯車45Gからの動力は、中継歯車46Gを介して車軸1RSに伝動される。車軸1RSの先端部には駆動輪1RWが備えられており、車軸1RSが回転することにより駆動輪1RWが回転し、駆動輪1RWに巻回されているクローラベルト(図示せず)が回転する。
従来のコンバインの動力伝動装置においては、左右の最終段の中継歯車(本発明における中継歯車36G及び中継歯車46Gに相当する位置に設けられている歯車)は、それぞれの車軸(本発明における車軸1LS及び車軸1RSに相当する位置に設けられている車軸)に片持ち支持される構成である。
そのため、片持ち支持された中継歯車に大きな負荷がかかった場合に、当該中継歯車に傾きが生じる虞があり、仮に当該中継歯車に傾きが生じると、その前段の中継歯車との噛み合いが悪化し、動力の伝動ロスが大きくなる。このような不都合を解消するために、クラウニング加工など歯当たりを改善するための加工を行う必要があった。
本発明に係る動力伝動装置7においては、車軸1LSの右端部と車軸1RSの左端部とは、それぞれ回動自在な状態で荷重を支持しあうように構成されているため、中継歯車36G及び中継歯車46Gに傾きが生じる虞を抑制することができる。したがって、片持ち支持される構成の場合に行われる歯当たりの改善のための加工が不要となる。
〔回転センサ〕
本発明に係る動力伝動装置7においては、第一伝動機構30による動力の伝動の状態と第二伝動機構40による動力の伝動の状態とをそれぞれ個別に監視するために分割ケース70Lに第一回転センサ71が備えられ、分割ケース70Rに第二回転センサ72が備えられている。第一回転センサ71及び第二回転センサ72としては、レゾルバタイプの回転センサが好ましく例示できる。
中継軸34Sの左端部に、分割ケース70Lに形成された第一貫通穴73を貫通する第一軸状部34Nが一体的に備えられている。第一回転センサ71は、第一軸状部34Nの回転を検知する。
有底円筒体45Cの底部45Bに、分割ケース70Rに形成された第二貫通穴74を貫通する第二軸状部45Nが一体的に備えられている。第二回転センサ72は、第二軸状部45Nの回転を検知する。
以上の構成により、第一伝動機構30及び第二伝動機構40は、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20からの動力をそれぞれ独立して走行装置1L,1Rに伝動可能であり、運転部3の操向レバー3Sを操作することによりコンバイン100は、直進、旋回、停止等が自在である。
操向レバー3Sが直進(前進・後進)操作されると、前記操向装置は、第一油圧ポンプ11の前記第一ポンプ斜板と第二油圧ポンプ21の前記第二ポンプ斜板とを、それぞれ第一ポンプ軸11S及び第二ポンプ軸21Sと成す角度の絶対値が同じであって、第一油圧モータ12の第一モータ軸12Sの回転方向と第二油圧モータ22の第二モータ軸22Sの回転方向とが同じ方向になるように傾動させる。なお、第一モータ軸12Sの回転方向と第二モータ軸22Sの回転方向とが同じ方向とは、第一出力歯車12Gが第一モータ軸12S側から見て時計回りであるときに、第二出力歯車22Gが第二モータ軸22S側から見て反時計回りである、又は第一出力歯車12Gが第一モータ軸12S側から見て反時計回りであるときに、第二出力歯車22Gが第二モータ軸22S側から見て時計回りであることをいう。これにより、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sから出力される動力が、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20を介して走行装置1L,1Rに伝動され、走行装置1L,1Rが同じ速度で、両方とも前進方向又は後進方向に駆動し、コンバイン100は直進(前進・後進)する。
また、たとえばコンバイン100が直進走行しているときに、操向レバー3Sが旋回(左旋回・右旋回)操作されると、前記操向装置は、第一油圧ポンプ11の前記第一ポンプ斜板又は第二油圧ポンプ21の前記第二ポンプ斜板のいずれか一方が現在の傾斜角度を維持したまま、他方が吐出量が少なくなるように傾動させる。これにより、第一油圧モータ12又は第二油圧モータ22のいずれか一方の回転数が低下し、その結果コンバイン100は旋回する。なお、第一油圧ポンプ11の前記第一ポンプ斜板が第一ポンプ軸11Sと成す角度又は第二油圧ポンプ21の前記第二ポンプ斜板が第二ポンプ軸21Sと成す角度のいずれか一方のみを0度とすることにより、対応する油圧ポンプからの作動油の吐出量は零となり、対応する油圧モータからの動力の出力が停止し、したがって対応する走行装置1が停止し、当該停止している走行装置1を中心としてコンバイン100は信地旋回する。
操向レバー3Sが超信地旋回(左旋回・右旋回)操作されると、前記操向装置は、第一油圧ポンプ11の前記第一ポンプ斜板と第二油圧ポンプ21の前記第二ポンプ斜板とを、それぞれ第一ポンプ軸11S及び第二ポンプ軸21Sと成す角度の絶対値が同じであって、第一油圧モータ12の第一モータ軸12Sの回転方向と第二油圧モータ22の第二モータ軸22Sの回転方向とが逆の方向になるように傾動させる。なお、第一モータ軸12Sの回転方向と第二モータ軸22Sの回転方向とが逆の方向とは、第一出力歯車12Gが第一モータ軸12S側から見て時計回りであるときに、第二出力歯車22Gが第二モータ軸22S側から見て時計回りである、又は第一出力歯車12Gが第一モータ軸12S側から見て反時計回りであるときに、第二出力歯車22Gが第二モータ軸22S側から見て反時計回りであることをいう。これにより、第一モータ軸12S及び第二モータ軸22Sから出力される動力が、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20を介して走行装置1L,1Rに伝動され、走行装置1L,1Rは同じ速度で、一方は前進方向に駆動し、他方は後進方向に駆動し、コンバイン100はその場で超信地旋回する。
ところで、第一歯車群(中継歯車31G−36G)における前記歯車間の変速比と、第二歯車群(中継歯車41G−46G)における前記歯車間の変速比とが、同一に設定されている。したがって、操向レバー3Sが直進操作されたときは、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20は、同じエンジン6から伝動入力される同じ大きさの動力を、設計上同じように変速したあとに、同じ大きさで左右の走行装置1に出力し、車軸1LSと車軸1RSとは同じ回転数で回転させられる。
しかし、実際は、第一無段変速機構10と第二無段変速機構20との個体差や、第一無段変速機構10及び第二無段変速機構20におけるオイルリークや、第一伝動機構30による動力の伝動ロスと第二伝動機構40による動力の伝動ロスとの差等に起因して、車軸1LSと車軸1RSとに回転数差が発生してしまうことがある。このような回転数差が発生すると、操向レバー3Sを直進操作したにもかかわらずコンバイン100は直進走行せずに旋回してしまう。
これを是正するために、動力伝動装置7は、伝動ケース70には操向レバー3Sの直進操作時における車軸1LSと車軸1RSとの回転数を一致させることが可能なクラッチ機構50が備えられている。
〔クラッチ機構〕
クラッチ機構50は、本実施形態においては、第一歯車群(中継歯車31G−36G)及び第二歯車群(中継歯車41G−46G)のうち、中継歯車33G(及び中継歯車32G)の回転数と中継歯車43G(及び中継歯車42G)の回転数とを一致させる。
中継歯車32G及び中継歯車33Gを相対回転可能に支持し、中継歯車42G及び中継歯車43Gを相対回転不能に支持する中継軸42Sが、クラッチ機構50が備えるロック軸51である。なお、ロック軸51は、左端部が点検口70Hから外方に突出する長さに構成され、その左端部を支持する玉軸受42Lは、点検カバー75の蓋部751の内面に設けられている。
中継歯車33G(及び中継歯車32G)及び中継歯車43G(及び中継歯車42G)は、第一歯車群(中継歯車31G−36G)及び第二歯車群(中継歯車41G−46G)のうちで、たとえば中継歯車34G及び中継歯車44Gなどに比べて高回転で低トルクである。したがって、中継歯車34Gの回転数と中継歯車44Gの回転数とを一致させる場合に比べて、クラッチ機構50の構造を簡素化することできる。
以下、クラッチ機構50について詳述する。図6から図8に示すように、クラッチ機構50に、ロック軸51に、ロック軸51の軸心方向に沿って摺動可能かつ相対回転可能に設けられたクラッチシフタ52と、ロック軸51と中継歯車33Gとの間に設けられたロッククラッチ53とが備えられ、ロック軸51と中継歯車33Gとは連結状態(図7参照)又は非連結状態(図6参照)とに切り替え可能に構成されている。
クラッチシフタ52に、ロック軸51にスプライン結合の態様によりロック軸51の軸心方向に沿って摺動可能かつ相対回転不能に設けられた支持部52aと、支持部52aからロック軸51の径方向外側に延在する第一鍔状部52bと、第一鍔状部52bの外縁からロック軸51の軸心方向に沿って中継歯車33Gを囲むように延在する筒状部52cと、筒状部52cの先端からロック軸51の径方向外側に延在する第二鍔状部52dとが備えられている。
筒状部52cは、内周面にスプライン結合の態様により、後述する第一外側摩擦板53Oをロック軸51の軸心方向に沿って摺動可能かつ相対回転不能に支持する第一支持部と、外周面にスプライン結合の態様により、後述する第二内側摩擦板63Iをロック軸51の軸心方向に沿って摺動可能かつ相対回転不能に支持する第二支持部を有している。
第一鍔状部52bには、筒状部52c側の面に、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとを、第一内側摩擦板53Iの移動を規制するために中継歯車33G側に備えられた受圧部材54との間で圧接するための押圧面52eが備えられている。
第二鍔状部52dには、筒状部52c側の面に、第二内側摩擦板63Iと後述する第二外側摩擦板63Oとを、後述するブレーキシフタ62との間で圧接するための受圧面52fが備えられている。
前記第一支持部と前記第二支持部とは、筒状部52cを構成する周壁を挟んで互いに対向する位置に設けられている。これによりクラッチ機構50及び駐車ブレーキ機構60をロック軸51の軸心方向に対してコンパクトに構成することができる。
ロック軸51とクラッチシフタ52との間には、ロック軸51から離間する方向へクラッチシフタ52を付勢する付勢機構55が設けられている。付勢機構55は、ロック軸51に設けられた止め輪とクラッチシフタ52の支持部52aとの間に設けられた圧縮コイルばねである。付勢機構55により、クラッチシフタ52は止め輪から遠ざかる方向へと付勢されている。
ロッククラッチ53は、中継歯車33G側に設けられた複数の第一内側摩擦板53Iとクラッチシフタ52側に設けられた複数の第一外側摩擦板53Oとが、受圧部材54との押圧面52eとの間に、交互に配置される態様により構成されている。
〔第一内側摩擦板〕
第一内側摩擦板53Iは、内縁部に中継歯車33Gの外側スプライン部と噛み合う歯部が形成されており、中継歯車33Gに相対回転不能、かつ、中継歯車33Gの回転軸心に沿った方向に移動可能な態様により中継歯車33Gに外嵌されている。つまり、第一内側摩擦板53Iはロック軸51に相対回転可能である。
〔第一外側摩擦板〕
第一外側摩擦板53Oは、外縁部にクラッチシフタ52の内側スプライン部と噛み合う歯部が形成されており、クラッチシフタ52に相対回転不能、かつ、クラッチシフタ52の回転軸心に沿った方向に移動可能な態様によりクラッチシフタ52に内嵌されている。つまり、第一外側摩擦板53Oはロック軸51に相対回転不能である。
交互に設けられた複数の第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとの間には、隣り合う摩擦板どうしの間隙を広くする方向に弾性力を付勢する弾性部材(図示せず)が備えられていてもよい。これにより、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとが圧接されていないときは、隣り合う摩擦板どうしが離間され、その摩耗が抑制される。
分割ケース70Lには、ロッククラッチ53を構成する第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとが離間した状態から圧接された状態、すなわち非連結状態から連結状態へ切り替えるための押圧機構56が備えられている。
押圧機構56は、分割ケース70L、本実施形態においては、点検カバー75の蓋部751の内面に形成されたシリンダ56Sと、シリンダ56Sに設けられたピストン56Pとから構成される。
操向レバー3Sの操作に応じて、ピストン56Pは図示しない油圧回路からシリンダ56Sに供給される圧油によって作動させられる。なお、油圧回路は、エンジン6の動力により駆動する油圧ポンプ等を備えて構成されている。したがって、当該油圧回路によってシリンダ56Sに供給される圧油によって作動するピストン56Pが、本発明の操作機構である。
第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとの連結状態及び非連結状態は、押圧機構56が発生する油圧力の大きさと、付勢機構55の付勢力の大きさとの関係により決定される。前記油圧力を、付勢力より大きくすれば、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとは圧接され、連結状態となる。
押圧機構56の押圧力を徐々に弱めることで第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとは徐々にすべり始め、やがてすべりが大きくなり、第一内側摩擦板53I及び第一外側摩擦板53Oの連結状態から非連結状態への移行が完了する。
非連結状態であるときに、押圧機構56の押圧力を徐々に強めると、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとは、徐々にすべりが小さくなり、やがて圧接され、第一内側摩擦板53I及び第一外側摩擦板53Oの非連結状態から連結状態への移行が完了する。
このように、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとの切り替えに、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとのすべりを利用することができるため、連結状態から非連結状態への移行時及び非連結状態から連結状態への移行時における衝撃等の発生が少なく、円滑な切り替えが可能となる。
なお、クラッチ機構50は、操向レバー3Sの直進操作時において、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとにすべりが生じないように、大きな圧接力を必要とする。この大きな圧接力を、仮に圧縮コイルばねの付勢力により得ようとすると、コンバイン100の旋回操作時において、連結状態から非連結状態への移行時及び非連結状態の維持のために、圧縮コイルばねの強い付勢力に打ち勝つ必要があるため、押圧機構56に要求される押圧力が増大してしまう。したがって、押圧機構56及び付勢機構55が大型化してしまう。
これに対して、クラッチ機構50は、上記のように、操向レバー3Sの直進操作時における、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとの圧接に、押圧機構56の押圧力を利用し、コンバイン100の旋回操作時における、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとの離間に、付勢機構55の付勢力を利用することができる構成としたため、押圧機構56及び付勢機構55に要求される押圧力及び付勢力を低減することができる。したがって、押圧機構56及び付勢機構55をコンパクトにすることができる。
以上の構成により、操向レバー3Sが直進(前進・後進)操作されると、押圧機構56のシリンダ56Sに圧油が供給され、ピストン56Pがシリンダ56Sから進出し、クラッチシフタ52が右方向へ移動させられ、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとが圧接され、中継歯車33Gとロック軸51とが連結状態となる。これにより中継歯車33Gと中継歯車43Gとの一体的に回転する。第一無段変速機構10と第二無段変速機構20との個体差や、第一伝動機構30と第二伝動機構40との個体差や、動力の伝動ロスの差や、左右の走行装置1L,1Rにかかる負荷によるオイルリーク等が発生したとしても、動力の伝動経路の途中において、中継歯車33Gの回転数と中継歯車43Gの回転数とを強制的に一致させることができるため、コンバイン100を直進操作したときの直進性を高めることができる。
操向レバー3Sが旋回(左旋回・右旋回)操作されると、押圧機構56のシリンダ56Sへの圧油の供給が停止され、付勢機構55による付勢力によってクラッチシフタ52が左方向へ移動させられ、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとが離間し、ロック軸51と中継歯車33Gとが非連結状態となる。これにより中継歯車33Gと中継歯車43Gとがそれぞれ個別に回転する。したがって、旋回操作したときにコンバイン100は滑らかに旋回することができる。
なお、操向レバー3Sの旋回操作量(レバー角)と、第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとを圧接するためのピストン56Pの移動量とは、線形的に変化する構成に限らず、二次曲線的に変化してもよい。つまり、たとえば、操向レバー3Sの旋回操作量が大きくなるにしたがって、ピストン56Pによる圧接力が弱くなるように設定することも可能である。また、運転者の好みに応じて操向レバー3Sの旋回操作量(レバー角)とピストン56Pの移動量との関係を自由に選択できるようにしてもよい。
〔駐車ブレーキ機構〕
さらに、動力伝動装置7は、点検カバー75の内部に走行装置1を制動するための駐車ブレーキ機構60を備えている。
駐車ブレーキ機構60に、クラッチシフタ52と伝動ケース70との間に設けられたブレーキクラッチ63と、ブレーキクラッチ63を連結状態(図8参照)又は非連結状態(図6参照)に切り替えるブレーキシフタ62と、ブレーキペダル3Pの操作に連動してブレーキシフタ62を作動させるためのブレーキ作動部61とが備えられ、ロック軸51を間接的に制動状態(図8参照)又は非制動状態(図6参照)に切り替え可能に構成されている。
ブレーキクラッチ63は、クラッチシフタ52側に設けられた複数の第二内側摩擦板63Iと、分割ケース70L側、本実施形態においては点検カバー75に設けられた複数の第二外側摩擦板63Oとが、ブレーキシフタ62側に設けられた環状の押圧部材65とクラッチシフタ52の受圧面52fとの間に交互に配置されている態様により構成されている。
〔第二内側摩擦板〕
第二内側摩擦板63Iは、内縁部にクラッチシフタ52の外側スプライン部と噛み合う歯部が形成されており、クラッチシフタ52に相対回転不能、かつ、クラッチシフタ52の回転軸心に沿った方向に移動可能な態様によりクラッチシフタ52に外嵌されている。つまり、第二内側摩擦板63Iは、ロック軸51に相対回転不能である。
〔第二外側摩擦板〕
第二外側摩擦板63Oは、外縁部に点検カバー75の円筒部752の内側スプライン部と噛み合う歯部が形成されており、点検カバー75に相対回転不能、かつ、点検カバー75の円筒部752の軸心に沿った移動可能に内嵌されている。つまり、第二外側摩擦板63Oは点検カバー75に相対回転不能である。
なお、交互に設けられた複数の第二内側摩擦板63Iと第二外側摩擦板63Oとの間には、隣り合う摩擦板どうしの間隙を広くする方向に弾性力を付勢する弾性部材(図示せず)が備えられていてもよい。これにより、第二内側摩擦板63Iと第二外側摩擦板63Oとが圧接されていないときは、隣り合う摩擦板どうしが離間され、その摩耗が抑制される。
ブレーキシフタ62は、点検カバー75の内部に収容された状態で、ロック軸51の軸心と同一の回動軸心まわりに回動自在、かつ第二内側摩擦板63Iと第二外側摩擦板63Oとを圧接させる方向に移動自在な部材であり、玉軸受42Lを取り囲む位置、かつ、蓋部751の内面に対向するように配置された盤状部62aと盤状部62aの周縁からロック軸51の軸心方向に延在する筒状部62bとを備えている。なお、ブレーキシフタ62は、第二内側摩擦板63Iと第二外側摩擦板63Oとを離間させるための前記弾性部材の弾性力により、点検カバー75の蓋部751側へと付勢されている。
点検カバー75には、ブレーキシフタ62を前記回動軸心を中心にして回動させるために、点検カバー75に対して回動自在な作動アーム61Aが設けられている。
作動アーム61Aの一端部にはブレーキワイヤ61Wを介してブレーキペダル3Pに接続され、他端部にはロック軸51の回転軸心と平行な揺動軸心を有し、点検カバー75を厚み方向に貫通する揺動軸61Sが設けられている。揺動軸61Sには、点検カバー75との間にねじりバネ(図示せず)が設けられ、このねじりバネによって作動アーム61Aは中立位置に復帰するように揺動付勢されている。
さらに、図9から図11に示すように、揺動軸61Sの先端部は扇形柱状に形成され、その一面に作動面61cが形成されている。これに対してブレーキシフタ62には、揺動軸61Sの作動面61cが当接する接当面62cが形成されている。
このような構造から、揺動軸61Sが回動すると、作動面61cからの操作力がブレーキシフタ62の接当面62cに伝えられ、ブレーキシフタ62は揺動軸心を中心に揺動させられる。
また、点検カバー75とブレーキシフタ62との間には、作動アーム61Aの点検カバー75に対する揺動動作を、ブレーキシフタ62の回動及び直進動作に変換するためのボールカム機構64が備えられている。
ボールカム機構64は、点検カバー75の蓋部751に回転自在に保持される複数のボール64Bと、ブレーキシフタ62に形成されたカム溝64Gとから構成されている。カム溝64Gは、盤状部62aの回動方向に沿って延びかつ前記回動方向に沿って下手側が浅くなるように形成されている。
作動アーム61Aの操作に伴い揺動軸61Sが回動すると作動面61cが接当面62cを押してブレーキシフタ62が回動軸心を中心にして回動する。ブレーキシフタ62が、図9に示す状態から図10に示す状態へと、点検カバー75内において所定方向に回動すると、カム溝64Gの深さが浅くなるにつれて、ボール64Bはブレーキシフタ62を点検カバー75から離間させ、即ちブレーキシフタ62を回動軸心に沿って前記弾性部材の弾性力に抗しながら右方向に移動させる。
やがて、ブレーキシフタ62は、押圧部材65を介して、クラッチシフタ52の受圧面52fとの間で第二内側摩擦板63Iと第二外側摩擦板63Oとを圧接する。
これと同時に又はこれに前後して、ブレーキシフタ62からの押圧力は前記弾性部材を介してクラッチシフタ52を右方へ移動させ、クラッチシフタ52は、押圧面52eと受圧部材54との間で第一内側摩擦板53Iと第一外側摩擦板53Oとを圧接する。
以上のように、ブレーキペダル3Pを操作することによって、ブレーキクラッチ63及びロッククラッチ53が連結状態となり、結果としてロック軸51は回転不能状態、すなわち制動状態となる。
駐車ブレーキ機構60によってロック軸51を制動状態とすることにより、第一伝動機構30及び第二伝動機構40は動力の伝動が不能となる。すなわち、走行装置1L,1Rに駐車ブレーキが掛かる。
ブレーキペダル3Pの操作によりブレーキシフタ62がブレーキクラッチ63を連結状態とするのに連動して、クラッチシフタ52はロッククラッチ53を連結状態に切り替え、ロック軸51は回転不能状態、すなわち第一伝動機構30及び第二伝動機構40は制動状態に切り替えられる。
以上のように、駐車ブレーキ機構60の操作に連動してクラッチ機構50が操作されることにより、第一伝動機構30及び第二伝動機構40が同時に制動されるため、動力伝動装置7は、第一伝動機構30と第二伝動機構40との両方に駐車ブレーキ機構60を備えずに済む。
また、本実施形態のように、クラッチ機構50及び駐車ブレーキ機構60が一体的にアッシ化され、点検カバー75に組み込まれる構成により、点検カバー75を分割ケース70Lから取り外す際に、アッシ化されたクラッチ機構50及び駐車ブレーキ機構60を一括して取り外すことができるため、点検作業や交換作業が容易となる。
以上の構成により、直進操作時の直進性が高く、旋回操作時に滑らかな旋回が可能で、コンパクトな動力伝動装置7が実現される。