JP2005015963A - 偽造防止用紙 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材10上にOVD部20を有し、前記OVD部20は、支持体31にOVD層2が積層され、細巾に切断されたスレッドでなり、前記基材10に支持体31側が表面側になるように漉き込まれている偽造防止用紙において、前記OVD層2が光を透過し、かつ支持体31とOVD層2との間に、検証に可能な蛍光インキ等による情報パターンの検証機能層1が設けられている偽造防止用紙としたもので、
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は偽造防止の対策を必要とする種々の品物に使用される用紙に関するものであり、より詳しくは、商品券、ギフト券、等の有価証券類、あるいは各種の証明書等のような真正さの証明を必要とする偽造防止用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、偽造防止手段として光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現し得る、ホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜のようなOVD(Optical Variable Device)が利用されるようになってきている。これらOVDは高度な製造技術を要すること、独特な視覚効果を有し、一瞥で真偽が判定できることから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等の一部にあるいは全面に貼り付けられ使用されている。一方、上記のようにOVDをカードなどの情報媒体に貼り付ける手法以外にも、紙の一部にOVDのスレッドあるいは細片をすき込む偽造防止用紙もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この手法は、高度な製紙技術を要するため、同じものを偽造することは非常に難しい構成となる。
【0004】
しかし上記OVDを用いた偽造防止用紙は偽造が難しく確認が容易な偽造防止手段であるが、実際には、似て非なるものを使用された偽造品を見抜くことができないケースが後を絶たない。このOVD画像を全く同じにコピーすることや、紙に漉き込まれたOVDを採取することは設備面、技術面において非常に難しいが、似た画像であれば、市販のOVDを流用して細工することが可能である。
この問題に対し、確実に本物と贋物を区別する手法として、ホログラム形成層と金属反射層の間に紫外線発光タイプの蛍光インキでなる印刷層を設けたOVDを紙に漉き込む手法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
登録実用新案第3034283号公報(第5頁、図8)
【特許文献2】
特開平10−140500号公報
【0006】
この構成では、紫外線を照射しその発光を検証して確実に真偽判定することを可能としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成では金属反射層の上に蛍光インキ層を設けるためにその部分の透明感が異なるため、OVD画像が一部損なわれるという問題があり、さらには、似た画像を有する市販のOVDの上に蛍光インキで印刷を施すと、同一の効果を有する偽造品が作製可能であるという問題点がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、紙の部分的に又は全面にOVDが漉き込まれている偽造防止用紙において、このOVDの画像を損なうことなく検証機能を付与することを可能とする偽造防止用紙を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、基材上に部分的に又は全面にOVD部を有する偽造防止用紙であって、前記OVD部は、少なくとも支持体にOVD層が積層され、細巾に切断されたスレッドもしくは細片でなり、前記基材に支持体側が表面側になるように漉き込まれている偽造防止用紙において、前記OVD層が光を透過し、かつ支持体とOVD層との間には、検証に使用可能な検証機能層が設けられていることを特徴とする偽造防止用紙としたものである。
【0010】
また、請求項2の発明では、上記検証機能層が、紫外線、赤外線、もしくは電子線等の外部刺激で可視光線を発光する発光材料を含有していることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙としたものである。
【0011】
また、請求項3の発明では、上記OVD部は、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すような情報パターン状に形成されて成ることを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止用紙としたものである。
【0012】
また、請求項4の発明では、上記OVD部を構成するOVD層は、光透過率が5%〜80%であることを特徴とする請求項1及至3のいずれかに記載の偽造防止用紙としたものである。
【0013】
また、請求項5の発明では、上記OVD層に光学効果をより高めるOVD効果層が設けられ、該OVD効果層は金属薄膜でなることを特徴とした請求項1及至4のいずれかに記載の偽造防止用紙としたものである。
【0014】
また、請求項6の発明では、上記OVD効果層は、微小な面積を持ち互いに離間した多数の金属薄膜が前記OVD層の上に海島状に並んで出来てきていることを特徴とする請求項5記載の偽造防止用紙としたものである。
【0015】
また、請求項7の発明では、上記OVD効果層の、前記微小な面積を持ち互いに離間した多数の金属薄膜の集まりによって、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すようなパターン状に形成されて成ることを特徴とした請求項5または6記載の偽造防止用紙としたものである。
【0016】
また、請求項8の発明では、上記OVD効果層は、金属粉を有機高分子樹脂に分散して得られた金属光沢インキ層でなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の偽造防止用紙としたものである。
【0017】
また、請求項9の発明では、上記検証機能層は、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すような情報パターン状に形成されて成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の偽造防止用紙としたものである。
【0018】
さらにまた、請求項10の発明では、上記検証機能層の中の発光材料には、蛍光体、燐光体、又は蓄光体の少なくともいずれか1つ以上が使用され、該検証機能層に乾燥重量で0.5〜80%の範囲内で含有してなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の偽造防止用紙としたものである。
【0019】
上記本発明でいう情報パターンは、絵柄だけ、文字だけ、数字だけ、絵柄と文字、文字と数字、数字と絵柄、あるいは絵柄と文字と数字のいずれでもよい。また、少なくとも1つ以上とは、このように絵柄、文字、あるいは数字のいずれかが用いてあればよく、さらにこれら以外の何か、例えば記号、マーク、等々が使用されていてもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を用いながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明による偽造防止用紙の一実施例を示す図であり、図2にはその断面を示した。図3は図2に示したOVD部の断面を拡大した図であり、OVD部の構成の一実施例を示した図であり、図4は後述する海島状に設けたOVD効果層2を説明する図である。
【0022】
本発明による偽造防止用紙は、図1および図2に示すように、基材10に検証機能を有するOVD部20が設けてあるもので、このOVD部20は、図3に示すように、支持体31にOVD層2および検証機能層1をもつ積層体であり、接着層34で基材10に接着している。このとき検証機能層1はOVD層2に隠蔽されているため、表面を目視で観察するだけではその存在を確認することができないが、簡単な検証方法により確認可能である。例えば検証機能層1を光を吸収する黒色インキで文字パターン等で設けた場合には、その部分が光を透過しないため、光に透かして確認するとその文字が確認できるようになる。また、検証機能層1を外部刺激(紫外線や赤外線等)で発光するインキで設けた場合には、外部刺激となる特定の光を照射し、その存在を確認することができる。前者の透かして検証する構成ではもちろんであるが、発色で確認する構成においても、検証機能層を全面のみならず、任意の図形、数字、文字等の情報パターン状に設けることも可能である。
【0023】
まず、図1および図2を用いて本発明の偽造防止用紙を説明する。
本発明の偽造防止用紙は、スリッターあるいは打ち抜き機によりOVDシート(フィルム)を細巾にスレッド化、あるいは細片化し、基材10に漉き込んで成るもので、基材10とOVD部20が一体化した構成でなるものである。
【0024】
上記基材10としては、たとえば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等を主体とした製紙用パルプに紙用増強剤、サイズ剤、定着剤、蛍光剤等の添加剤を適宜併用し、長網抄紙機等の公知の抄紙機を使用して前述したOVDを漉き込む。これらは一例であり、公知の漉き込み技術であれば適宜選択され使用可能である。
一方、OVDスレッドの巾あるいは細片の大きさは0.120mm程度が好ましく、それ以下ではOVDが確認し難く、それ以上の大きさであると、漉き込みが困難であったり、あるいは基材10との密着が劣るために好ましくない。このように漉き込まれるOVDシート(フィルム)に関しては、以降、図3および4を用いて詳細に説明する。
【0025】
上記OVD部20は、図3に示すように、支持体31のフィルムあるいはシートに各機能を有する層を積層した多層構造である。
上記支持体31としては、厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではなく、その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性の高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用することが可能である。また、他のフィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、加工の際に問題を生じなければ適宜使用可能である。
【0026】
また、上記OVD部20を構成するOVD層2に関して説明する。
このOVD層2は、図3に示すように、OVD形成層2aとOVD効果層2bとから構成される。
ここで言うOVDとは、光の干渉を利用した画像であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体である。例えば、ホログラムや回折格子のごときOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や体積方向に干渉縞を記録する体積型が挙げられる。また、ホログラムや回折格子と手法が異なり、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層し、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層膜方式もその例である。
これら、OVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0027】
上記レリーフ型のホログラム(回折格子)は光学的な撮影方式により、微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製し、電気メッキ法によりパターンを複製したニッケル製のプレス版にて量産を行う。すなわち、このプレス版を加熱しOVD形成層2aに押し当て、凹凸パターンを複製する。
【0028】
上記OVD形成層2aは、プレス版にて成形可能であるという性能が要求され、その材質は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。例を挙げればアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線あるいは電子線硬化樹脂を単独もしくはこれらを複合して使用できる。また上記以外のものであっても、OVD画像を形成可能である公知の材料であれば、使用可能である。
【0029】
一方、これらの画像技術としては、立体的画像を再現する3Dホログラムや回折格子を微小なドットで表現し、高い輝感を与えることが可能な特殊な回折格子(本発明者等はグレーティングイメージと称する)、等の撮影技術が挙げられる。最近では回折格子の微小なドットを星型等の特定形状で形成する手法や、マイクロ文字と言われる肉眼では見えない細かな文字を描画する手法、回折格子を使用していながらあたかも写真のように被写体の色彩を忠実に再現する手法、あるいは見る角度でまったく違う複数の画像を表現する手法(本発明者等はチェンジングと称する)等が開発されている。
尚、本発明においては、OVD自体の画像表現の手法は必ずしも限定しない。前述の画像表現の手法はもちろんのこと、公知の画像表現の手法であれば適宜利用可能である。
【0030】
また、上記OVD形成層2aに付与されるOVD効果層2bは、OVD画像の回折効率を高めるためレリーフ面を構成する高分子材料と屈折率の異なる材料からなる。また、本発明の偽造防止媒体においては、検証時に特定の光を与え発光を観察する媒体であるため、光の透過性を有した材料あるいは部分的には光を透過する構成にて設ける必要がある。
このOVD効果層2bに用いる材料としては、OVD形成層2aと屈折率の異なり、かつ透明なTiO2 、Si2 O3 、SiO、Fe2 O3 、ZnS、などの高屈折率材料やより反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられる。
【0031】
このOVD効果層2bは一面に設けられていても良いが、絵柄、数字、文字等の情報を有するパターンで形成し、意匠性を向上すると共に、加工が複雑とし、より高い偽造防止効果を付与することもできる。
その手法としては、
イ)OVD形成層に溶解性の樹脂をパターン状に形成、金属薄膜を設けた後、溶解性樹脂とその部分の金属薄膜層を洗浄し除去する手法
ロ)金属薄膜層に耐酸あるいは耐アルカリ性樹脂を用いてパターンを印刷した後、金属薄膜を酸やアルカリでエッチングする方法
ハ)さらには光を露光することによって、溶解するあるいは溶解し難くなる樹脂材料を塗布、所望のパターン状のマスク越しに露光した後、不要部分を洗浄あるいはエッチングで除去する手法等
が挙げられる。
以上は一例であり、これらに限定されるものではなく、公知の部分的に金属薄膜を形成する技術であれば適宜利用可能である。
【0032】
一方、このOVD効果層2bに金属薄膜を用いることは、光の反射光効果および検証機能層を隠蔽する点において優れており、本発明において好適な材料である。しかしながら、光を透過しにくいため、例えば、
イ)光を透過する程度の薄膜で設ける。
ロ)金属薄膜を図4(OVD効果層2b)のように微細な海島状に形成する(本発明においてはOVD形成層2aの全面を海面に見たてたときに、OVD効果層2bを成す1つ1つの微小な面積を持つ金属薄膜が、あたかも海に浮かぶ多数の島のように見えるので、OVD効果層2bの形態を「海島状」と称する。)。等、部分的に光を透過させる細工が必要である。そこで、光の透過程度としては、検証機能層1の着色や発光の度合いにより異なるが、好ましくは5%以上の光を透過することが望まれる。一方、検証機能層を目立たぬよう隠すためには透過率80%以下であることが好ましい。
これらの材料は単独あるいは積層して使用でき、真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成され、その膜厚は材質の光の反射性と透過性によって異なるが、50〜10000Å程度で形成される。
【0033】
また、海島状の薄膜を形成する手段は蒸着法で直接得る以外にも次の手法が利用可能である。
イ)一様の金属薄膜を部分的に除去し、金属面を一部残す手法。
ロ)金属片を有機高分子樹脂に分散した金属光沢インキを印刷によって設ける手法等が挙げられる。
これらの手法はデザインや濃淡(光透過性)を変化させ意匠性を向上させることも可能であるため、本発明には好適な手法といえる。さらには、図4に示した一つ一つの微小な薄膜部分(OVD効果層2b)を絵柄、図形、文字、数字等の肉眼では確認できない情報パターンで形成することにより、拡大鏡等で確認する検証機能を付与することも可能である。
【0034】
一方、多層薄膜方式を用いる場合、前述したように、OVD層2は異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜またはそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。例えば屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
この多層薄膜層は、セラミックスや金属などの材料が用いられ、おおよそ2つ以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。
【0035】
以下に用いられる材料の一例を挙げる。まず、セラミックスとしては、Sb2O3(3.0=屈折率n:以下同じ)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、SiO2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al2O3(1.6)、GaO(1.7)等があり、金属単体もしくは合金の薄膜、例えばAl、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。また、低屈折率の有機ポリマーとしては、例えばポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等がある。これらの高屈折率材料もしくは30%〜60%透過の金属薄膜より少なくとも一種、低屈折率材料より少なくとも一種選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収あるいは反射を示すようになる。
なお、金属から構成される薄膜は、構成材料の状態や形成条件などにより、屈折率などの光学特性が変わってくるため、本発明の実施例では一定の条件における値を用いている。
【0036】
上記した各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層され多層薄膜を形成する。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法にて形成される。
多層薄膜方式においても先のホログラムや回折格子の例で述べたように、一部分を任意の絵柄、図形、文字、数字等の情報パターンで形成することにより、情報を付与させることや、海島状に設けることや、その微細な薄膜を情報パターンとすることも可能である。
また、光学多層干渉多層膜ではないが、多層反射(散乱)が基本となる還元二酸化チタン被覆雲母や酸化鉄被覆雲母の粉末をバインダー中に分散したインキを用いても、見る角度により微妙な色変化を与える(フリップフロップ効果を)ことができるため、ここで例として挙げておく。
以上、OVD部20の構成に関し述べてきたが、本発明においてはこれらに限定されるものではなく、見る角度により色や画像の変化する公知のOVD表示技術であれば利用可能である。また、前述したOVD表示技術は単独で用いられるとは限らず、お互いの機能を阻害しない範囲で、複数組み合わせて使用することも可能である。たとえば、レリーフ型のOVD形成層2aと支持体31の間にフリップフロップ効果を有した還元二酸化チタン雲母の分散インキでパターンを印刷することや、レリーフ型のOVD効果層2bを光学多層干渉膜で形成するなど、適宜選択され利用可能である。
【0037】
また、上記検証機能層1は、有機高分子材料からなるバインダー樹脂に染料あるいは顔料を加えたものが使用される。先に述べたように光に透かして検証する場合には可視光線を透過しにくい染料、顔料を溶解あるいは分散した着色インキが使用され、その材料は既存公知の着色インキ材料であれば適宜使用可能である。一方、外部刺激を照射し、その発光を確認する手法においては、この検証機能層1に発光材料を溶解あるいは、分散したものが使用される。このような、発光材料は外部刺激により可視域の光を発するものであり、紫外線・赤外線・電子線・X線・放射線・電界・化学反応等の外部刺激により発光する蛍光体・燐光体・畜光体等が挙げられる。これら発光材料は、検証機能層1を形成してなるバインダー樹脂に適宜添加して使用される。その添加量としては0.5〜80%の範囲内で添加するのが望ましい。0.5%以下の添加量では十分な発光が得られず、80%以上の添加量になるとバインダー樹脂との結着力が弱くなり、最終製品としての耐性が弱くなる。それゆえ少なすぎても多すぎても好ましくない。
【0038】
以下にはこれら発光材料に関して詳しく説明する。
蛍光体は、外部からの刺激(励起)により可視域付近の光を発するものであるが、励起の停止後に目に感じられる程度の時間(0.1sec程度)以上の残光が続くものを燐光体という。また、長残光のものを畜光体と呼ぶ。
【0039】
蛍光性物質としては、次のものが挙げられる。
紫外線発光蛍光剤は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、硫化亜鉛やアルカリ土類金属の硫化物の高純度蛍光体に、発光をより強くするために微量の金属(銅、銀、マンガン、ビスマス、鉛など)を付活剤として加えた後、高温焼成にて得られる。母体結晶と付活剤の組み合わせにより、色相、明るさ、色の減衰の度合いを調整できる。
【0040】
一方、赤外線発光蛍光剤は、赤外光で励起し、可視光に発光する赤外可視変換蛍光剤と、赤外光で励起し、より長波長に発光するものがある。前者の赤外可視変換蛍光剤は、非常に特殊な励起機構を持つ蛍光体であり、エネルギーの小さな赤外線の光子を複数個用いることによって可視発光の励起を行う。これらの発光機構には2つのタイプがあり、一方は付活剤イオンの多段階の励起によって、他方は増感剤からの複数回の共鳴エネルギー伝達によって、それぞれ高い励起が可能になる。先のタイプは、Er3+ やHo3+ を付活剤とする多くの母体結晶で観測され、後のタイプは増感剤Yb3+ が赤外線を吸収し、多段階のエネルギー伝達によって発光中心のEr3+ 、Tm3+ 、Ho3+ 等を高い準位に励起する。また、母体結晶として硫化物(ZnS、CdS)や酸硫化物(Y2O2S)のように電子の移動度が大きく、光導電性を持った半導体的物質は、電子線励起蛍光体として使用することが可能である。
【0041】
一方、X線や粒子線などの放射線に対して効率の高い蛍光体(Zn、Cd)S:Agや、電気エネルギーを直接ルミネッセンスに変える電界発光蛍光体も使用可能な例として挙げておく。
さらには、上記の蛍光材料以外にも、ジアミノスチルベンジルスルホン酸などのスチルベン系、ジアミノジフェニル系、イミダゾール系、チアゾール系、クマリン系、ナフタールイミド系、チオフェン系などの有機系の顔料や染料を使用しても良い。
【0042】
これらの中で、検証機の製作又は入手が比較的容易なことから、紫外線あるいは赤外線で発光する材料が好ましく、さらには、紫外線によって蛍光を発する発光材料は、低コストで入手できることから、本発明に好適である。
【0043】
このような発光材料を添加した検証機能層1はグラビア法、スクリーン印刷法等の公知のコーティングあるいは印刷方法によって厚さ0.1〜50μm程度に形成される。
【0044】
次に、接着層24は上記支持体31、OVD層2、検証機能層1よりなるOVDシートを後述する基材10となる紙に漉き込む際に紙とOVD層2がより接着性を高めるために設けるそうであり、十分に紙と接着が得られる場合には、特に必要がない。また、支持体31状に基材が接する場合に、基材31の表面側(OVD層2を設けた側とは逆側)に接着剤を設けることも可能である。この接着層24の材料としては、基材10と検証機能層1、あるいはOVD効果層2bや支持体31とを接着することが可能であれば良く、たとえば、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂およびその共重合体や、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、アイオンノマー樹脂、 エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらはあくまでも一例であり、これらに限定されず、公知の感熱接着剤であれば適宜選択され使用可能である。
【0045】
以上、本発明の偽造防止用紙に用いられるOVD部20の一実施例を説明してきたが、意匠性の向上等の目的で各層を着色することや支持体31の表面側(OVD層2を形成した側とは逆側)や各層間に印刷を施す等、使用の目的により適宜利用可能である(例えば、図6を参照。)。
また、耐久性や各層の接着性を鑑み、各層間に接着アンカー層を設けることや、コロナ処理、フレーム処理等の各種易接着処理を施すことも可能である。
【0046】
【実施例】
次に実施例により、本発明を具体的に説明する。
〈実施例1〉
厚み12μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る支持体31にOVD効果層2aとしてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚0.05μmのSn薄膜層(OVD効果層2b)を海島状に設けた。その後、検証機能層1として、グラビア印刷法により、紫外線を照射すると可視光線を発光する紫外蛍光材料を添加してなるアクリル樹脂を使用して図5に示すような「OK」の文字を3μmの厚みで印刷した。次に、接着層34をグラビアコート法にて5μm設けてOVDシートを得た。
【0047】
〈比較例1〉
厚み12μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る支持体31にOVD効果層2aとしてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚0.05μmのAl薄膜層(OVD効果層2b)一面に設けた。その後、検証機能層1として、グラビア印刷法により、紫外線を照射すると可視光線を発光する紫外蛍光材料を添加してなるアクリル樹脂を使用して「OK」の文字を3μmの厚みで印刷した。次に、その上に接着層34をグラビアコート法にて5μm設けてOVDシートを得た。
【0048】
〈比較例2〉
厚み12μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る支持体31にOVD効果層2aとしてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚0.05μmのAl薄膜層(OVD効果層2b)一面に設けた。その後、接着層34をグラビアコート法にて5μm設けた。次に、図6に示すように、検証機能層1として、支持体31の上面(OVD効果層2a面と反対側)にグラビア印刷法により、紫外線を照射すると可視光線を発光する紫外蛍光材料を添加してなるアクリル樹脂を使用して「OK」の文字を3μmの厚みで印刷した構成の偽造防止用紙に漉き込まれるOVDシートを作成した。
【0049】
以上実施例及び比較例で得られたOVDシートを10mm巾にスリットし、基材10となる紙に漉き込んで、それぞれの偽造防止用紙を作製した。
得られた偽造防止用紙のサンプルに紫外線を照射し、その発光を確認し、その結果と可視光線下でシールの外観を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1より、比較例1では発光が観察されず、比較例2では検証機能層が目立つ構成となってしまう。一方、実施例1で検証機能層の有無が可視光下では判らず、紫外線照射により真偽を判定可能な媒体となった。比較例1および2の手法で偽造されたとしても、その外観あるいは検証機能が異なるため、容易に偽造品と判断可能となる。
【0052】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、OVDを損なうことなく、かつその存在が目視ではわからないように隠れた検証機能層を付与することが可能である。さらには同一の検証機能を有する偽造品を容易に製造することを不可能とする。
【0053】
従って本発明は、偽造防止の対策を必要とする種々の品物に使用される用紙で、例えば商品券、ギフト券、等の有価証券類、あるいは各種の証明書等のような真正さの証明を必要とする偽造防止用紙として、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偽造防止用紙の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】本発明の偽造防止用紙の一実施の形態を示すもので、図1のB−B面を表す側断面図である。
【図3】本発明の偽造防止用紙を構成するOVD部の一事例を側断面で表した説明図である。
【図4】本発明の偽造防止用紙を構成するOVD部の海島状に設けたOVD効果層を説明する模式的概略図である。
【図5】本発明の偽造防止用紙を構成するOVD部の検証機能層の一事例を示す平面図である。
【図6】本発明の偽造防止用紙を構成するOVD部の他の一事例を側断面で表した説明図である。
【符号の説明】
1‥‥検証機能層
2‥‥OVD層
2a‥‥OVD形成層
2b‥‥OVD効果層
10‥‥基材
20‥‥OVD部
31‥‥支持体
34‥‥接着層
Claims (10)
- 基材上に部分的に又は全面にOVD部を有する偽造防止用紙であって、前記OVD部は、少なくとも支持体にOVD層が積層され、細巾に切断されたスレッドもしくは細片でなり、前記基材に支持体側が表面側になるように漉き込まれている偽造防止用紙において、前記OVD層が光を透過し、かつ支持体とOVD層との間には、検証に使用可能な検証機能層が設けられていることを特徴とする偽造防止用紙。
- 上記検証機能層が、紫外線、赤外線、もしくは電子線等の外部刺激で可視光線を発光する発光材料を含有していることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD部は、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すような情報パターン状に形成されて成ることを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD部を構成するOVD層は、光透過率が5%〜80%であることを特徴とする請求項1及至3のいずれかに記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD層に光学効果をより高めるOVD効果層が設けられ、該OVD効果層は金属薄膜でなることを特徴とした請求項1及至4のいずれかに記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD効果層は、微小な面積を持ち互いに離間した多数の金属薄膜が前記OVD層の上に海島状に並んで出来てきていることを特徴とする請求項5記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD効果層の、前記微小な面積を持ち互いに離間した多数の金属薄膜の集まりによって、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すようなパターン状に形成されて成ることを特徴とした請求項5または6記載の偽造防止用紙。
- 上記OVD効果層は、金属粉を有機高分子樹脂に分散して得られた金属光沢インキ層でなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の偽造防止用紙。
- 上記検証機能層は、情報を文字、記号、数字、図形、又は絵柄等の少なくとも1つ以上を用いて示すような情報パターン状に形成されて成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の偽造防止用紙。
- 上記検証機能層の中の発光材料には、蛍光体、燐光体、又は蓄光体の少なくともいずれか1つ以上が使用され、該検証機能層に乾燥重量で0.5〜80%の範囲内で含有してなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の偽造防止用紙。
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