JP2005014382A - ワニスの含浸方法及びワニスの含浸装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維シート基材1にワニス2を含浸した後、このワニス2により液封された減圧空間3に繊維シート基材1を導入する。この後、減圧空間3から繊維シート基材1を導出しながら減圧空間3を液封するワニス2に繊維シート基材1を導入する。減圧空間3を通過した直後の減圧状態の繊維シート基材1が常圧の外気に曝されることがなくなって、繊維シート基材1に常圧の外気(空気)が作用することがなくなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板用のプリプレグなどを製造する際に用いるワニスの含浸方法及び含浸装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリプレグと銅箔等の金属箔を積層一体化することによって、プリント配線板等の電気用積層板を製造することが行われている。プリプレグは樹脂含浸基材であり、例えば、ガラス繊維などの繊維を用いて形成される繊維シート基材にエポキシ樹脂などの樹脂を含有するワニスを含浸し、この後、繊維シート基材を乾燥すると共に繊維シート基材中の樹脂を半硬化状態にすることによって、プリプレグを形成することができる。
【0003】
このようなプリプレグを製造するにあたって、一般的なワニスのプレ含浸(キッス方式)及びディッピング方式を採用すると、プリプレグの内部にボイド(気泡)やワニスの未含浸部が多く残留することになり、このようなプリプレグを使用してプリント配線板等を成形しても、成形後のプリント配線板等の内部に空隙部分が発生して成形不良となっていた。
【0004】
そこで、繊維シート基材にワニスを含浸させる際に、繊維シート基材中に空気がボイドとして残存したりワニスの未含浸部が生じたりしないように、各種の含浸方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の発明は毛細管浸透を利用してワニスの含浸性を高めたものであって、繊維シート基材の片面にワニスを接触させるようにして繊維シート基材の片面側からワニスを含浸させるものであり、これにより、繊維シート基材の他の片面から空気を追い出しながらワニスを含浸させることができ、繊維シート基材中に気泡や未含浸部が生じにくくなるものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の発明では、ワニスを含浸した繊維シート基材が複数本のロールで囲まれた減圧空間と常圧の外気とを繰り返し通過するものであり、これにより、減圧空間を通過する際に繊維シート基材から脱泡することができ、繊維シート基材中に気泡や未含浸部が生じにくくなるものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−248823号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平5−253929号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載の発明では、成形不良を抑制できるほどに繊維シート基材から空気を充分に除去してワニスの含浸性を高めようとすると、繊維シート基材とワニスの接触時間を長くして徐々にワニスを繊維シート基材に含浸していかなければならず、空気の除去を短時間で効率よく行うことができないという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載の発明では、ワニスを含浸した繊維シート基材を減圧空間に導入しているために、繊維シート基材から空気を強制的に除去することができるが、繊維シート基材が減圧空間を通過した後に常圧の外気を通過するために、減圧状態の繊維シート基材に常圧の空気が作用することになり、この結果、脱泡した繊維シート基材に再び空気が浸入して空気の除去が不十分になる恐れがあった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、繊維シート基材からの空気の除去を効率よく充分に行うことができるワニスの含浸方法及び含浸装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るワニスの含浸方法は、繊維シート基材1にワニス2を含浸した後、このワニス2により液封された減圧空間3に繊維シート基材1を導入し、この後、減圧空間3から繊維シート基材1を導出しながら減圧空間3を液封するワニス2に繊維シート基材1を導入することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明では、請求項1において、減圧空間3に導入する前の繊維シート基材1に含浸させるワニス2aと、減圧空間3から導出される繊維シート基材1が導入されるワニス2bとして、種類の異なるものを用いることができる。
【0012】
また、本発明では、請求項2において、種類の異なるワニス2a、2bとして粘度の異なるものを用いることができる。
【0013】
また、本発明では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、減圧空間3中において繊維シート基材1の表面に付着した余剰のワニス2を除去することができる。
【0014】
また、本発明では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、減圧空間3の圧力が、減圧空間3の温度におけるワニス2の蒸気圧以上で、且つこの蒸気圧よりも100Pa高い圧力以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、減圧空間3の圧力が、減圧空間3の温度におけるワニス2の蒸気圧よりも低くするのが好ましい。
【0016】
また、本発明では、請求項1乃至6のいずれかにおいて、ワニス2が減圧空間3に移動するのを防止するために、ワニス2を排除しながら減圧空間3をワニス2で液封することができる。
【0017】
本発明の請求項8に係るワニスの含浸装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載のワニスの含浸方法を行うためのワニスの含浸装置であって、繊維シート基材1に含浸させるためのワニス2を貯留する含浸槽4と、含浸槽4に貯留されたワニス2で液封される減圧空間3が形成される減圧棟5とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明では、請求項8において、減圧空間3とワニス2との境界に減圧空間3側とワニス2側とに移動可能な仕切り板6を設けることができる。
【0019】
また、本発明では、請求項8又は9において、ワニス2が減圧空間3に移動するのを防止するために、含浸槽4からワニス2を排除するためのワニス排除手段を具備することができる。
【0020】
また、本発明では、請求項8乃至10のいずれかにおいて、減圧空間3に導入する前の繊維シート基材1に含浸させるワニス2aと、減圧空間3から導出される繊維シート基材1が導入されるワニス2bとを分割するための分割壁8を含浸槽4に設けることができる。
【0021】
また、本発明では、請求項8乃至11のいずれかにおいて、繊維シート基材1の表面に付着した余剰のワニス2を除去するための除去手段9を減圧空間3に設けることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
本発明はプリプレグ(樹脂含浸基材)等を製造するために用いられるものであって、本発明で製造されたプリプレグはプリント配線板等の電気用積層板を形成するためなどに用いることができる。
【0024】
本発明において繊維シート基材1としては、従来から積層板の製造に使用されているものであれば特に限定なく使用することができるが、液状のワニス2が浸透する細かい連続(または開放)した開口部(空隙)を有する層状のものであることが好ましく、例えば、ヤーン(繊維シート基材1を構成する糸)20を用いて形成されるクロス、ペーパー、マット等を挙げることができる。ヤーン20としてはいずれの種類の繊維であってもよく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリイミド繊維等の有機質繊維や、セルロース繊維、木綿等の天然繊維を用いた用いることができるが、汎用性の高いガラス繊維を用いるのが好ましい。また、ヤーン20はモノフィラメントヤーンであっても、マルチフィラメントヤーンであってもよい。
【0025】
本発明においてワニス2としては、従来から積層板の製造に使用される液状のものであれば特に限定されることなく使用することができるが、熱硬化性樹脂のワニス2、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ならびにラジカル重合型熱硬化性樹脂のワニス2を使用することができる。ラジカル重合型熱硬化性樹脂は硬化性樹脂がラジカル重合可能な二重不飽和基を含み、該不飽和基のラジカル重合反応によって硬化するものであり、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、スピラン樹脂などがある。また、本発明においてワニス2には、これらの樹脂に加えて、架橋剤として架橋用単量体、例えばスチレンモノマーや、重合開始剤を配合して用いることができる。さらに、無機充填剤(例えばシリカ、炭酸カルシウム)やワニス2の粘度を調節したり液状化したりするための溶剤(例えば、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類)を配合して用いることもできる。尚、ワニス2は使用前に予め脱泡しておくのが好ましく、これにより、繊維シート基材1が減圧空間3に導入された時にワニス2自身からの発泡を少なくすることができ、繊維シート基材1の内部からの空気の除去効果を高くすることができる。また、後述のような含浸槽4を用いる場合は、例えば、導入側のワニス2として脱泡処理したものを用い、導出側のワニス2として未脱泡処理のものを用いるようにして、種類の異なる2種類以上のワニス2を用いることができる。
【0026】
図1に本発明のワニスの含浸装置の一例を示す。この含浸装置は含浸槽4と減圧棟5などを備えて形成されている。含浸槽4は上面が開口する有底箱型の容器で形成されており、含浸槽4には上記のようなワニス2が貯留されている。また、減圧棟5は上面が閉塞し下面が開口する筒型の容器で形成されており、減圧棟5の下端は含浸槽4に貯留されたワニス2に浸漬されており、これにより、減圧棟5の下面の開口は閉塞されている。また、減圧棟5にはその内部を上下に仕切る仕切り板6が設けられており、減圧棟5の内部において仕切り板6よりも上側の空間が減圧空間3として形成されている。
【0027】
上記の含浸槽4には導入ローラ21と一対の導出ローラ22及び一対のスクイズロール23が設けられている。繊維シート基材1をガイドするための導入ローラ21と一対の導出ローラ22とは含浸槽4に貯留するワニス2に全体が浸漬されており、一対のスクイズロール23は左右に対向して配置されており、各スクイズロール23の下部は含浸槽4に貯留するワニス2に浸漬すると共に各スクイズロール23の上部は含浸槽4に貯留するワニス2の液面よりも上側に位置している。また、導入ローラ21と導出ローラ22の間において含浸槽4の底面には分割壁8が立設されている。分割壁8は減圧棟5の仕切り板6よりも下側の空間と含浸槽4とを左右に分割(区分)するように設けられており、分割壁8の上部は仕切り板6を貫通して減圧空間3の下部にまで到達している。
【0028】
また、含浸槽4に貯留するワニス2の液面よりも上側で、且つ仕切り板6よりも下側において、減圧棟5の側壁には二つ排出口24が設けられている。この二つの排出口24は分割壁8を挟んで対向するように減圧棟5の側壁に形成されている。また、仕切り板6には上下方向(厚み方向)に貫通する導入孔26と導出孔27が設けられている。導入孔26と導出孔27とは分割壁8を挟むようにして仕切り板6に設けられており、導入孔26の下方には導入ローラ21が、導入孔27の下方には導出ローラ22がそれぞれ配置されている。また、導入孔26の直上において減圧空間3には、繊維シート基材1の表面に付着した余剰のワニス2を除去するための除去手段9として左右一対の掻き落としバー29が設けられていると共に掻き落としバー29の上方において減圧空間3の上部には反転ロール30が設けられている。さらに、減圧棟5の上部側面には減圧空間3に通じる吸引口31が設けられている。
【0029】
上記のように形成されるワニス2の含浸装置において、減圧空間3は吸引口31に接続される真空ポンプなどの吸引手段で吸引することによって、減圧棟5の外気の圧力(大気圧)よりも減圧されるが、これにより、減圧棟5内の仕切り板6の導入孔26と導出孔27を介して含浸槽4に貯留したワニス2に吸引作用が及んで、ワニス2が減圧棟5の仕切り板6よりも下側の空間に導入される。また、減圧棟5に導入されたワニス2は仕切り板6の下面にまで達することになり、これにより、ワニス2で導入孔26と導出孔27が塞がれて減圧空間3が液封されることになる。また、仕切り板6によりワニス2の液面での局所的な溶剤の揮発を少なくすることができ、ワニス2の粘度上昇を少なくすることができるものである。
【0030】
ここで、ワニス2が導入孔26と導出孔27を通じて減圧空間3に移動するのを防止するために、ワニス2を排出口24から連続的に排除するようにしている。このようにしてワニス2を排除しながら減圧空間3をワニス2で液封することができるものであり、しかも、このワニス2の排除によりワニス2の液面の上昇を防止して減圧空間3の減圧度を高くすることができるものである。ワニス2を排出口24から連続的に排除するにあたっては、排出口24に接続された吸引ポンプ等のワニス排除手段を用いることができる。尚、排出口24から排除されたワニス2は再び含浸槽4に返送されるものである。また、排出口24からのワニス2の排出量は、ワニス2の粘度や減圧空間3の圧力などに応じて設定することができるが、例えば、1〜60m3/minとすることができる。
【0031】
さらに、仕切り板6は掻き落としバー29よりも下側で排出口24よりも上側において上下移動可能に配置されるが、減圧空間3の減圧の度合いにより仕切り板6が掻き落としバー29よりも上側に移動したり排出口24よりも下側に移動したりするのを防止するために、上記のようにワニス2を排出口24から連続的に排除するものである。
【0032】
そして、上記のワニス2の含浸装置を用いて長尺の繊維シート基材1にワニス2を連続的に含浸することができる。すなわち、まず、繊維シート基材1は分割壁8で導入側と導出側に分割された含浸槽4の導入側の上面開口から含浸槽4に貯留されているワニス2内に導入されて浸漬される。次に、繊維シート基材1は導入ローラ21の下側に掛架されて略鉛直上向きに引き上げられる。次に、繊維シート基材1は仕切り板6の導入孔26を通って減圧空間3に導入される。ここで、減圧空間3は上記のようにして減圧されている。次に、繊維シート基材1は一対の掻き落としバー29の間を下から上に向かって通過した後、反転ロール30の上側に掛架されて進行方向が略鉛直下向きに反転される。次に、繊維シート基材1は仕切り板6の導出孔27を通って導出側のワニス2に導入されて浸漬される。この後、繊維シート基材1は一対の導出ローラ22の下側に掛架されて略鉛直上向きに引き上げられる。そして、一対のスクイズロール23の間を通しながら含浸槽4の導出側の上面開口からワニス2外に繊維シート基材1を引き上げる。
【0033】
本発明では、長尺の繊維シート基材1を長手方向に進行(搬送)させて上記の順で各工程を通過させることによって、空気がほとんど残存しない状態で長尺の繊維シート基材1に連続的にワニス2を含浸させることができる。すなわち、繊維シート基材1を導入側にワニス2に浸漬した状態では、図2(a)に示すように、繊維シート基材1の内部にワニス2の未含浸部分や気泡等の空気40が多量に残存しているが、繊維シート基材1を減圧空間3に導入した際に、図2(b)に示すように、繊維シート基材1の内部の空気40は膨張すると共に掻き落としバー29で繊維シート基材1の表面に付着したワニス2が掻き落とされるものであり、これにより、図2(c)に示すように、繊維シート基材1の内部で膨張した空気40が繊維シート基材1中のワニス2の表面に露出した際に破壊し、空気40が繊維シート基材1の外部に放出される。この後、脱気された繊維シート基材1は導出側のワニス2に浸漬され、さらにワニス2が繊維シート基材1に含浸される。そして、繊維シート基材1は余分なワニス2がスクイズロール23で絞られながら導出側のワニス2から引き上げられて再び大気圧中に戻されるが、この時、図2(d)に示すように、繊維シート基材1中のほとんどの空気40は破壊されて消滅し、また、繊維シート基材1中に僅かに空気40が残った場合もこの空気40は圧縮されて縮小するものであり、ワニス2の含浸性の良好なプリプレグを得ることができるものである。尚、スクイズロール23を通過した後の繊維シート基材1は含浸装置から乾燥機に送られるものである。
【0034】
そして、本発明ではワニス2を含浸した繊維シート基材1を減圧空間3に導入して繊維シート基材1中の空気40を除去するので、繊維シート基材1に減圧を作用させて強制的に空気40を除去することができ、繊維シート基材1からの空気40の除去を短時間で効率よく行うことができるものである。しかも、繊維シート基材1は減圧空間3から含浸槽4内のワニス2に直接導入されるので、減圧空間3を通過した直後の減圧状態の繊維シート基材1が常圧の減圧棟5外の外気に曝されることがなくなって、繊維シート基材1に常圧の外気(空気)が作用することがなく、従って、減圧空間3で空気を除去した繊維シート基材1に再び空気が浸入せず、繊維シート基材1からの空気の除去を確実に充分に行うことができるものである。また、本発明では減圧棟5を高く形成することによって、特許文献1に記載の発明に比べて、床面積の省スペース化を図ることができるものである。
【0035】
上記のように本発明において、含浸槽4及び減圧棟5は分割壁8により導入側と導出側に分割されているが、減圧空間3に導入する前の繊維シート基材1に含浸させる導入側のワニス2aと、減圧空間3から導出された繊維シート基材1に含浸させる導出側のワニス2bとして同じ種類のものや異なる種類のものを用いることができる。異なる種類のワニス2a、2bを用いる場合は互いに組成を相違させることにより粘度を異ならせることができるが、特に、導入側のワニス2aの粘度を導出側のワニス2bの粘度よりも低くするのが好ましい。このように粘度の低いワニス2aを粘度の高いワニス2bよりも先に繊維シート基材1に含浸させることによって、繊維シート基材1にワニス2aを含浸させ易いものであり、これにより、繊維シート基材1へのワニス2の含浸性及び脱泡性を高くすることができるものである。尚、粘度の低いワニス2aは粘度の高いワニス2bの粘度よりも1/10〜1/2の粘度にするのが好ましい。
【0036】
また、減圧空間3の減圧度合い(圧力)はワニス2(導入側のワニス2a)の溶剤に応じて設定することができる。すなわち、減圧空間3の温度におけるワニス2(2a)の蒸気圧よりも100Pa高い圧力以下であることが好ましい。減圧空間3の減圧度合いが、減圧空間3の温度におけるワニス2(2a)の蒸気圧よりも100Paを超えて高い圧力であると、減圧度合いが低すぎて繊維シート基材1からの空気40の除去を効率よく行えない恐れがある。また、減圧空間3の減圧度合いは、例えば、減圧空間3の温度におけるワニス2(2a)の蒸気圧以上とすることができ、この場合はワニス2(2a)中の溶剤を揮発させることなく、繊維シート基材1からの空気40の除去を行うことができるものである。また、減圧空間3の減圧度合いは、減圧空間3の温度におけるワニス2(2a)の蒸気圧よりも低くすることができ、この場合は繊維シート基材1からの空気40の除去と同時に、ワニス2(2a)中の溶剤を揮発させることになり、乾燥機における乾燥工程での熱負荷を減らすことができて省エネルギー化や生産速度の向上を図ることができるものである。尚、減圧空間3の減圧度合いを減圧空間3の温度におけるワニス2(2a)の蒸気圧よりも低くする場合、減圧空間3の減圧度合いの下限は減圧手段等の性能にもよるが、0.8kPaとすることができる。また、本発明において減圧空間3内の温度は通常15〜30℃であるので、ワニス2の沸点を考慮すると、減圧空間3内の圧力は3.7〜2.7kPaとなる。また、繊維シート基材1の進行速度は2〜20m/minとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)
長尺の繊維シート基材1としてはガラス繊維シート(日東紡(株)製の「7628H258」)を用いた。ワニス2としては15℃における粘度が2Pa・s(200cps)のエポキシ樹脂ワニス(EBR)を用いた。このエポキシ樹脂ワニスはエポキシ樹脂100質量部に対して溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部配合して調製されるものであり、このワニス2は15℃における蒸気圧が2.7kPaである。
【0039】
そして、図1に示すワニスの含浸装置により上記の方法で繊維シート基材1にワニス2を含浸した。ここで、繊維シート基材1を搬送している際に繊維シート基材1に掛かる張力を25〜30kg/mとした。また、減圧空間3における減圧処理時間は5秒間の固定とした。さらに、スクイズロール23による塗工絞り工程は固定条件とした。また、この実施例1においては掻き落としバー29による余剰のワニス2の掻き落としは行わなかった。さらに、減圧空間3の圧力と繊維シート基材1の搬送速度(ラインスピード)をそれぞれ3.7〜2.7kPaと2.2m/minに設定した。
【0040】
(実施例2)
減圧空間3の圧力と繊維シート基材1の搬送速度をそれぞれ2.6kPaと2.4m/minに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0041】
(実施例3)
掻き落としバー29を用いると共に繊維シート基材1の搬送速度を2.4m/minに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0042】
(実施例4)
掻き落としバー29を用いると共に繊維シート基材1の搬送速度を2.6m/minに設定した以外は、実施例2と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0043】
(実施例5)
ワニス2として導入側の低粘度のワニス2aと導出側の高粘度のワニス2bを用いた。低粘度のワニス2aとしては15℃における粘度が0.5Pa・s(50cps)のエポキシ樹脂ワニス(EBR)を用いた。このエポキシ樹脂ワニスは実施例1のワニス2を溶剤で希釈して調製したものである。また、高粘度のワニス2bとしては実施例1のワニス2をそのまま用いた。さらに、繊維シート基材1の搬送速度を2.3m/minに設定した以外は、実施例3と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0044】
(実施例6)
ワニス2として実施例5と同様に導入側の低粘度のワニス2aと導出側の高粘度のワニス2bを用いた。また、繊維シート基材1の搬送速度を2.5m/minに設定した以外は、実施例4と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0045】
(比較例1)
減圧空間3の圧力を常圧(0.1MPa)とした以外は、実施例1と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0046】
(比較例2)
減圧空間3の圧力を常圧とした以外は、実施例3と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0047】
(比較例3)
減圧空間3の圧力を常圧とした以外は、実施例5と同様にして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。
【0048】
上記の実施例1〜6及び比較例1〜3のようにしてワニス2を含浸した繊維シート基材1に対して、ワニス2の未含浸残存率の測定を行った。すなわち、ワニス2を含浸した繊維シート基材1には図3に示すように、ワニス2の未含浸部分や気泡などの空気40が残存しているが、繊維シート基材1の縦糸と横糸の交差範囲S(図3で点線で囲まれる部分)における空気40の部分の面積と、交差範囲Sの面積との比率(面積比)でワニス2の未含浸残存率を表した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜6は比較例1〜3に比べて、ラインスピードが同等以上であるにもかかわらず、未含浸残存率が小さくなった。
【0051】
(実施例7)
実施例1において、脱泡を施したワニス2を使用するようにし、また、仕切り板6を用いないようにし、さらに排出口24からのワニス2の排出を行わないようにした。これら以外は実施例1と同様にしてワニス2を繊維シート基材1に含浸した。
【0052】
(実施例8)
排出口24からワニス2を40m3/minで排出した以外は、実施例7と同様にしてワニス2を繊維シート基材1に含浸した。
【0053】
(実施例9)
仕切り板6を用いた以外は、実施例8と同様にしてワニス2を繊維シート基材1に含浸した。
【0054】
上記の実施例7〜9について、ワニス2を繊維シート基材1に連続的に含浸して生産した場合の未含浸残存率の経時変化を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(比較例4)
片面含浸工法である特許文献1と同様のワニスの含浸装置を形成した。この含浸装置は図4に示すように、長さL2が600mmのプレートパン50を備えるものであり、プレートパン50の上面には実施例1と同様のワニス2を保持した。また、実施例1と同様のワニス2を貯留した浸漬槽51、搬送ロール52及びスクイズロール53も具備した。そして、プレートパン50上で繊維シート基材1の片面をワニス2に接触させて繊維シート基材1にワニス2を含浸させた後、この繊維シート基材1を浸漬槽51のワニス2に浸漬してさらにワニス2を含浸させ、この後、スクイズロール53を通して繊維シート基材1を引き上げるようにして繊維シート基材1にワニス2を含浸した。そして、この工法により得られる繊維シート基材1のワニス2の未含浸残存率が20%となるために、ラインスピードを0.6m/minとした。
【0057】
一方、実施例6はワニス2の未含浸残存率が20%となるものであるが、この時、図1に示すように、導入ローラ21と導出ローラ22の間隔L1は200mm、仕切り板6と反転ロール30の中心との距離Hは625mmである。
【0058】
従って、表3のように比較例4のラインスピードを2.5m/min換算して実施例6と対比すると、実施例6における導入ローラ21と導出ローラ22の間隔L1の投影距離(平面視における距離)が200mmであるのに対して、比較例4では長さL2が600mmのプレートパン50の投影距離がラインスピード2.5m/min換算で2500mmとなり、実施例6の方が比較例4よりも小型化できるものである。
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
上記のように本発明は、繊維シート基材に減圧を作用させて強制的に空気を除去することができ、繊維シート基材からの空気の除去を短時間で効率よく行うことができるものである。しかも、繊維シート基材は減圧空間から含浸槽内のワニスに直接導入されるので、減圧空間を通過した後の減圧状態の繊維シート基材が常圧の減圧棟外の外気に曝されることがなくなって、繊維シート基材に常圧の空気が作用することがなく、従って、減圧空間で空気を除去した繊維シート基材に再び空気が浸入せず、繊維シート基材からの空気の除去を確実に充分に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は同上の脱泡作用を示す概略の断面図である。
【図3】同上の繊維シート基材の縦糸と横糸の交差範囲を示す概略図である。
【図4】従来例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 繊維シート基材
2 ワニス
2a ワニス
2b ワニス
3 減圧空間
4 含浸槽
5 減圧棟
6 仕切り板
8 分割壁
9 除去手段
Claims (12)
- 繊維シート基材にワニスを含浸した後、このワニスにより液封された減圧空間に繊維シート基材を導入し、この後、減圧空間から繊維シート基材を導出しながら減圧空間を液封するワニスに繊維シート基材を導入することを特徴とするワニスの含浸方法。
- 減圧空間に導入する前の繊維シート基材に含浸させるワニスと、減圧空間から導出される繊維シート基材が導入されるワニスとして、種類の異なるものを用いることを特徴とする請求項1に記載のワニスの含浸方法。
- 種類の異なるワニスとして粘度の異なるものを用いることを特徴とする請求項2に記載のワニスの含浸方法。
- 減圧空間中において繊維シート基材の表面に付着した余剰のワニスを除去することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のワニスの含浸方法。
- 減圧空間の圧力が、減圧空間の温度におけるワニスの蒸気圧以上で、且つこの蒸気圧よりも100Pa高い圧力以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のワニスの含浸方法。
- 減圧空間の圧力が、減圧空間の温度におけるワニスの蒸気圧よりも低くすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のワニスの含浸方法。
- ワニスが減圧空間に移動するのを防止するために、ワニスを排除しながら減圧空間をワニスで液封することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のワニスの含浸方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のワニスの含浸方法を行うためのワニスの含浸装置であって、繊維シート基材に含浸させるためのワニスを貯留する含浸槽と、含浸槽に貯留されたワニスで液封される減圧空間が形成される減圧棟とを備えて成ることを特徴とするワニスの含浸装置。
- 減圧空間とワニスとの境界に減圧空間側とワニス側とに移動可能な仕切り板を設けて成ることを特徴とする請求項8に記載のワニスの含浸装置。
- ワニスが減圧空間に移動するのを防止するために、含浸槽からワニスを排除するためのワニス排除手段を具備して成ることを特徴とする請求項8又は9に記載のワニスの含浸装置。
- 減圧空間に導入する前の繊維シート基材に含浸させるワニスと、減圧空間から導出される繊維シート基材が導入されるワニスとを分割するための分割壁を含浸槽に設けて成ることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のワニスの含浸装置。
- 繊維シート基材の表面に付着した余剰のワニスを除去するための除去手段を減圧空間に設けて成ることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のワニスの含浸装置。
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