JP2005013829A - ポリオキシメチレン樹脂製フィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性良く工業的に製造することができ、機械物性、耐薬品性等に優れたポリオキシメチレン樹脂製フィルターを提供する。
【解決手段】主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの特定のオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されたポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
【選択図】 なし
【解決手段】主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの特定のオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されたポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のポリオキシメチレン共重合体製の繊維集合体からなるフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオキシメチレン樹脂は、結晶化度が高く、剛性、強度、耐薬品性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐アルコール性等の点で優れていることが知られている。そして、結晶化速度が速く、成形サイクルが速いことから、主に射出成形材料として自動車、電気機器の機構部品の分野で幅広く使われている。
【0003】
このようにポリオキシメチレン樹脂は優れた諸特性を有する樹脂ではあるが、結晶化度が高く且つ結晶化速度が速いが故に、射出成形以外の成形加工を利用した用途への応用にはある種の制約があった。
【0004】
例えば、ポリオキシメチレン樹脂製繊維の集合体からなるフィルターは、ポリオキシメチレン樹脂が有する前記の如き優れた特性を生かした有効な利用が期待されるものの、上記の如き結晶化特性のためにフィルターを形成する繊維の製造において曳糸性、紡糸性、延伸性等に欠けるものとなり、溶融紡糸等によって工業的に安定した品質の繊維を製造することができず、結果として該繊維の集合体からなるフィルターも得ることができなかった。
【0005】
かかる課題に対し、溶融粘度が100〜500であるポリアセタール樹脂を鞘にした複合繊維からなる繊維状集合体とポリアセタール樹脂からなるフィルターが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
尚、この文献において溶融粘度と称している特性は、[0008]欄にその測定法が記載されており、これは一般にはメルトインデックス(或いはメルトフローインデックス)と呼ばれるものであり、樹脂の流動性を示す特性である。これを溶融粘度と呼ぶことは不適切なため、以下ではメルトインデックスと呼び、必要なら注釈を付けることとする。かかるメルトインデックスが大きいことは、樹脂の分子量が小さく、真の意味での溶融粘度が低いことを意味するものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−215520号公報(請求項1、実施例)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示された発明によれば、特定のメルトインデックス(文献では溶融粘度と称している)のポリアセタール樹脂を鞘にし、他のポリマーを芯にした複合繊維でフィルターを形成するものであり、かかる複合繊維の製造装置は複雑なものとなり、また、鞘と芯の成分比や2層構造等が均一で品質の優れた複合繊維を得ることは極めて難しい。更に、上記特許文献1では、複合繊維の鞘を形成するポリアセタール樹脂のメルトインデックスのみに着目し、具体的にはその実施例に見られるように、コモノマーであるエチレンオキシドが2重量%(オキシメチレン単位100モルに対するオキシアルキレン単位が約1.4モル)であってメルトインデックスのみが異なる各種のポリアセタール樹脂を調製し、メルトインデックスが特定範囲(即ち100〜500)にあるポリアセタール樹脂が効果を示すとされている。
【0009】
しかしながら、メルトインデックスがかかる範囲にあるポリアセタール樹脂が、範囲外のメルトインデックスを有するポリアセタール樹脂との比較において相対的に効果を示すものであっても、かかる如くメルトインデックスだけが調整されたポリアセタール樹脂では、これを鞘材とし他のポリマーを芯材とする複合繊維の曳糸性及び可紡性はなお不十分であり、実用性に欠けるものであった。
【0010】
また、本発明者が、上記特許文献に記載されたメルトインデックス(文献では溶融粘度と称しているもの)が100〜500であるポリアセタール樹脂の調製を追試したところ、かかるメルトインデックスのポリアセタール樹脂は分子量が小さく、真の意味での溶融粘度が低いため、その調製は極めて困難であり、工業的に製造できるようなものではなかった。さらに、かかる低溶融粘度のポリアセタール樹脂は溶融加工性に欠けるものであり、通常、ポリアセタール樹脂(共重合体)の製造においては常套手段として行なわれる溶融混練による不安定末端の分解除去処理や、安定剤を配合して押出機で溶融混練する安定化処理が著しく困難であった。また、分子量が小さいため、熱安定性や機械的特性の面でも不十分なものであった。
【0011】
このように、メルトインデックスだけを100〜500に調整したポリアセタール樹脂を鞘材とし他のポリマーを芯材として複合繊維を形成し、該繊維の集合体を用いることを特徴とする特許文献1に開示されたフィルターでは、上記の如く多くの課題を抱えるものであった。
【0012】
本発明の目的は、上記のような課題を解決し、生産性良く工業的に製造することができ、機械物性、耐薬品性等に優れたポリオキシメチレン樹脂製フィルターを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、結晶化特性、流動性等を制御した特定のポリオキシメチレン共重合体を用いることにより、これらの課題が一気に解決し、機械物性、耐薬品性、耐酸性等に優れたポリオキシメチレン樹脂製フィルターを経済的に製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち本発明は、主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されたポリオキシメチレン樹脂製フィルターである。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示す。)
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターは、前述した如く、主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明で使用するかかるポリオキシメチレン共重合体において、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合は、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molであり、好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり2〜8mol、特に好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり2〜5molである。一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合が少なくなるとポリオキシメチレン共重合体の結晶化速度が速くなり、フィルターを構成する繊維紡糸時の断糸発生が増大するばかりでなく、紡糸直後の結晶化度が増大することにより延伸性も低下し、フィルターに適した繊維の製造が困難になる。逆に一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合が多くなり過ぎると、ポリオキシメチレン共重合体の機械的特性等が低下する。
【0019】
また、本発明で使用するポリオキシメチレン共重合体は、ASTM D−1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定されるメルトインデックス(MI)が1〜100g/10分のものであり、好ましくは2.5〜90g/10分、特に好ましくは5〜80g/10分である。なお、フィルターを構成する繊維の製造方法により、かかるメルトインデックスの範囲内で更に好ましいメルトインデックスの適合範囲が存在するが、この点については後述する。
【0020】
メルトインデックス(MI)が過大なポリオキシメチレン共重合体は、これを工業的に安定して製造することが難しく、また、低分子量で溶融粘度が低くなり過ぎるために、ポリオキシメチレン共重合体の製造においては常套手段として行なわれる溶融混練による不安定末端の分解除去処理や、安定剤を配合して押出機で溶融混練する安定化処理等における溶融加工性が著しく劣るものとなる。さらに、低分子量であるために熱安定性や機械的特性が劣るものとなり、フィルターを構成する繊維の紡糸及び延伸時に断糸し易くなり、繊維の製造が不安定なものとなる。逆にメルトインデックス(MI)が過小のポリオキシメチレン共重合体では、溶融粘度が高くなり過ぎるために紡糸時の負荷が増大し押出しが困難となる。
【0021】
本発明で使用する上記の如きポリオキシメチレン共重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的にはトリオキサンとコモノマーである環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物とを、主としてカチオン重合触媒を用いて塊状重合させる方法で得ることができる。重合装置としては、バッチ式、連続式等の公知の装置が何れも使用できる。ここで、前述した一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の導入割合は、共重合させるコモノマーの量により、また、メルトインデックス(MI)は、重合時に使用する連鎖移動剤、例えばメチラール等の添加量により調整することができる。
【0022】
コモノマーとして用いられる環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、その中でもエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。また、本発明に使用するポリオキシメチレン共重合体は、分岐又は架橋構造を有するものであってもよい。
【0023】
本発明において使用するポリオキシメチレン共重合体において、かかるコモノマーによって形成される前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位はポリオキシメチレン共重合体の分子鎖中に極力均一に分散していることが好ましく、前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位が2個以上連鎖したものの割合は、オキシアルキレン単位全体の5mol%以下であるのが好ましい。
【0024】
重合によって得たポリオキシメチレン共重合体は、触媒の失活化処理、未反応モノマーの除去、重合体の洗浄、乾燥、不安定末端部の安定化処理等を行った後、更に各種安定剤の配合による安定化処理等を行って、実用に供される。代表的な安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。
【0025】
更に、本発明で使用するポリオキシメチレン共重合体には、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは有機高分子材料、無機または有機の繊維状、板状、粉粒状の充填剤等の1種または2種以上を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0026】
次に、本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターを構成する繊維集合体としての不織布及び繊維集合体の要素となる繊維の製造方法について説明する。
【0027】
不織布加工方法については、スパンボンド法、メルトブローン法、一旦短繊維或いは長繊維を紡糸した後、何れかの方法により繊維を結合或いは絡めることによる不織布の製造方法等が使用でき特に限定されるものではない。ここで、メルトブローン法の場合は、前述したメルトインデックス(MI)の中でメルトインデックスが20〜100g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは30〜90g/10分である。また、スパンボンド法および短繊維不織布の場合は、メルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは5〜20g/10分である。繊維を結合或いは絡める方法としても特に限定されるものではなく、熱による融着、接着剤による接着、液体・気体の流れによる絡合、特殊形状の針によるニードルパンチ等の方法を用いることができる。熱による融着法の場合、融点の低いポリマーを配合或いは外層(鞘)に使用する芯鞘構造とすることで融着温度範囲も広がり、接着強度も増大することが期待できる。
【0028】
また、繊維としてのモノフィラメント或いはマルチフィラメントの製造方法についても特に限定されるものではなく、一般的な溶融紡糸及び延伸製造方法を用いることが可能である。ここで、モノフィラメントの場合は、前述したメルトインデックス(MI)の中でメルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは1.5〜15g/10分である。また、マルチフィラメントの場合は、メルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは3〜20g/10分である。
【0029】
フィラメントの製造方法の一例としては、溶融混練装置、ギヤポンプ、吐出ノズル等で構成される紡糸装置より吐出された溶融ポリマーをローラーにより巻き取ることで紡糸を行う方法が挙げられる。紡糸工程で得られた繊維は、延伸工程に付し、連続的、或いは非連続的に延伸を行うことが出来る。
【0030】
延伸比は巻出ロールと巻取ロールの速度比を適宜設定することによって調整することができ、所望の延伸倍率の繊維が得られる。この時の加熱方法は、加熱気体、加熱液体、熱板接触、遠赤外線加熱、レーザー光加熱、電磁誘導加熱 等の方法を用いることが可能であり特に限定されるものではない。延伸加工時には、対象となる未延伸糸の温度が100〜180℃となるよう前述の何れかの方法で加熱することが好ましく、更に好ましくは130〜160℃である。加熱不足状態では延伸応力が大きくなり生産性が低下するばかりでなく断糸も発生しやすくなる。過加熱状態ではポリマーが溶融状態となり断糸するため好ましくない。短繊維を得る場合は、延伸工程後、必要に応じて捲縮処理を施し、10mmから100mm程度の長さに切断することで得られる。
【0031】
上記の如き方法で得られる繊維径は、フィルター性能を決定する開口径を決定する因子となるため、濾過分離する目的対象物に応じて調整するのが好ましい。フィルター構成成分である繊維の径については用途により任意に設定することが可能であり特に限定されるものでは無いが、例えば2d(デニール)から5000d程度好ましくは10dから2000dの繊維を単体或いは組合せて用いることができる。
【0032】
本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターとしては、上述のような方法で得られた不織布をそのまま所望の形状に切断し用いることも可能であり、またフィラメントを織機にて織ることにより得られる織布もフィルターとして用いることができる。織り方についても一層の平織、綾織、多重織、その他特に限定されるものではない。さらにフィラメントの編布もフィルターとしての使用が可能である。不織布単体と比較して、シート面方向の機械強度が大きく通気・通水性があるため、搬送機能のある搾水フィルターとして工業的にも応用範囲が広いものである。
【0033】
以上の様な織布、不織布単体をフィルターとして用いること以外に、モノフィラメント或いはマルチフィラメントなどからなる織布・メッシュ・編布を基材として短繊維をニードリングし短繊維をメッシュに絡めつけることにより製造されるシートも、フィルターとしての使用が可能である。強度・フィルター機能を兼備えているため、工業的に応用範囲の広いものである。
【0034】
また、ポリオキシメチレン樹脂繊維のみからなる種々のフィルターの強度が使用目的に対し不足する場合には、金属メッシュ等を支持部材として使用し、繊維の集合体を支持部材に支持させるか或いは固定することで機械的強度を有するフィルターとすることが可能である。また、上記のポリオキシメチレン樹脂繊維集合体によるフィルター同士を組み合わせて使用したり、あるいはポリオキシメチレン樹脂繊維集合体によるフィルターと他素材フィルターとを複合化して使用することも可能である。
【0035】
本発明の特徴の一つとして、特定のポリオキシメチレン共重合体を用いることにより、フィルターを構成する繊維の紡糸加工性、延伸性が良好となり、低い応力により分子・結晶配向し易いことがある。配向度が高くなることで繊維に強度、靭性が付与され、フィルターとしての性能に大きく寄与する。
【0036】
本発明のフィルターを構成する繊維は、広角X線回折測定により算出される配向度が50%以上であることが好ましく、前述した特定のポリオキシメチレン共重合体の使用はこれを可能にするものである。配向度が過小の場合は構成繊維が脆性的な特性を有し、繊維は脆く、フィルターへの実使用が困難となる。ここで、配向秩序パラメーターは次式で与えられ、Sを配向度として算出した。
【0037】
【数1】
【0038】
本発明のポリオキシメチレン樹脂製のフィルターは、その高強度、高弾性率、耐溶剤性、耐熱性、摩擦磨耗特性、耐アルコール性 等の優れた特性を活かし種々の応用が可能である。例えば、抄紙工程の搾水フィルター、バグフィルター、濾過目的土木シート、自動車用燃料フィルター等が例示できる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜11
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、液状のトリオキサン、コモノマーとして環状エーテル又は環状ホルマール(1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、エチレングリコールホルマール)を加え、更に分子量調節剤としてメチラール、同時に触媒の三フッ化ホウ素50ppm(全モノマーに対し)を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行い、表1に示すポリオキシアルキレン量の重合体を調製した。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0040】
次いで、この粗ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量部、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し不安定部分を除去した。
【0041】
上記の方法で得たポリオキシメチレン樹脂100重量部に、安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.03重量部およびメラミン0.15重量部を添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し、ペレット状のポリオキシメチレン樹脂を得た。
【0042】
上記のポリマーを用いてフィルターを次の方法で得た。
(1)メルトブローン法
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で定量によりメルトブローンし、サクション付のネット上に連続的に積層しながら捕集した。次に得られた積層物をニードルパンチにより繊維を絡合させ厚さ5mmの不織布を製造した後、切断してフィルターとした(実施例4、5)。
(2)スパンボンド法
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量し、ノズル温度225℃にてスパンボンドし連続的に捕集しウェブを作製した後、ニードルパンチにより繊維を絡合させて厚さ約5mmの不織布を製造した後、切断しフィルターとした(実施例3)。
(3)短繊維不織布
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で溶融紡糸し、150℃熱風炉中で3倍延伸した後、約35mm長に切断することにより短繊維を得た。得られた短繊維径は20dであった。得られた短繊維をカード方式で開繊しウェブを作製した後ニードルパンチにて絡合することで厚さ約5mmの不織布を製造した後、切断することでフィルターとした(実施例1、2、6〜9)。
(4)モノフィラメント平織メッシュ
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で溶融紡糸し、150℃熱風炉中で5倍延伸し約800dのモノフィラメントを得た後、織機にて平織りすることでメッシュフィルターを得た(実施例10)。
(5)モノフィラメント+単繊維複合型
上記実施例10の800dのモノフィラメント平織メッシュに、上記実施例2に従って調製し、長さ約70mmに切断した短繊維をニードリングすることで厚さ約5mmのメッシュ+不織布複合型フィルターを得た(実施例11)。
比較例1〜4
コモノマー使用量或いはメチラールの添加量を変えた以外は実施例と同様にして、表1に示すようにオキシアルキレン単位量或いはメルトインデックスが本発明の規定外であるポリオキシメチレン樹脂を調製し、同様にフィルターを得た。結果を表1に示す。
比較例5
コモノマーとしてエチレンオキシドを用い、オキシアルキレン単位量及びメルトインデックスが本発明の規定外であるポリオキシメチレン樹脂を調製し、同様にフィルターを得た。結果を表1に示す。
【0043】
尚、実施例・比較例における評価基準等は以下の通りである。
[メルトインデックス(MI)測定]
ASTM D−1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定した。
[ポリマー組成分析]
物性評価に用いたポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールd2に溶解し、1H−NMR測定を行った。各ユニットに対応するピーク面積より定量した。
[配向度]
広角X線回折装置(理学電機製 Rint−1400)を用い、Niフィルターでモノクロ化したX線(Cu−Kα)ピンホールビームと平板イメージングプレート(IP)を使って、透過法による二次元散乱図形を撮影することにより測定。次式により算出した。
【0044】
【数2】
【0045】
[耐酸性]
耐酸性について次の通り判定した。室温中で混合酸水溶液(水:塩酸:硫酸=4:1:3)中にフィルターを5分間浸漬し、劣化状態を繊維表面のクラック発生を顕微鏡(×300)倍にて拡大し観察し、下記基準で評価した。
【0046】
5点…クラックは観察されない
3点…繊維表面の1部にクラック発生がわずかに認められる。
【0047】
1点…繊維表面に全体にクラックが発生しており劣化が進行している。
【0048】
【表1】
【0049】
DO;1,3−ジオキソラン
BDF;1,4−ブタンジオール
EGF;エチレングリコールホルマール
EO;エチレンオキシド
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のポリオキシメチレン共重合体製の繊維集合体からなるフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオキシメチレン樹脂は、結晶化度が高く、剛性、強度、耐薬品性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐アルコール性等の点で優れていることが知られている。そして、結晶化速度が速く、成形サイクルが速いことから、主に射出成形材料として自動車、電気機器の機構部品の分野で幅広く使われている。
【0003】
このようにポリオキシメチレン樹脂は優れた諸特性を有する樹脂ではあるが、結晶化度が高く且つ結晶化速度が速いが故に、射出成形以外の成形加工を利用した用途への応用にはある種の制約があった。
【0004】
例えば、ポリオキシメチレン樹脂製繊維の集合体からなるフィルターは、ポリオキシメチレン樹脂が有する前記の如き優れた特性を生かした有効な利用が期待されるものの、上記の如き結晶化特性のためにフィルターを形成する繊維の製造において曳糸性、紡糸性、延伸性等に欠けるものとなり、溶融紡糸等によって工業的に安定した品質の繊維を製造することができず、結果として該繊維の集合体からなるフィルターも得ることができなかった。
【0005】
かかる課題に対し、溶融粘度が100〜500であるポリアセタール樹脂を鞘にした複合繊維からなる繊維状集合体とポリアセタール樹脂からなるフィルターが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
尚、この文献において溶融粘度と称している特性は、[0008]欄にその測定法が記載されており、これは一般にはメルトインデックス(或いはメルトフローインデックス)と呼ばれるものであり、樹脂の流動性を示す特性である。これを溶融粘度と呼ぶことは不適切なため、以下ではメルトインデックスと呼び、必要なら注釈を付けることとする。かかるメルトインデックスが大きいことは、樹脂の分子量が小さく、真の意味での溶融粘度が低いことを意味するものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−215520号公報(請求項1、実施例)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示された発明によれば、特定のメルトインデックス(文献では溶融粘度と称している)のポリアセタール樹脂を鞘にし、他のポリマーを芯にした複合繊維でフィルターを形成するものであり、かかる複合繊維の製造装置は複雑なものとなり、また、鞘と芯の成分比や2層構造等が均一で品質の優れた複合繊維を得ることは極めて難しい。更に、上記特許文献1では、複合繊維の鞘を形成するポリアセタール樹脂のメルトインデックスのみに着目し、具体的にはその実施例に見られるように、コモノマーであるエチレンオキシドが2重量%(オキシメチレン単位100モルに対するオキシアルキレン単位が約1.4モル)であってメルトインデックスのみが異なる各種のポリアセタール樹脂を調製し、メルトインデックスが特定範囲(即ち100〜500)にあるポリアセタール樹脂が効果を示すとされている。
【0009】
しかしながら、メルトインデックスがかかる範囲にあるポリアセタール樹脂が、範囲外のメルトインデックスを有するポリアセタール樹脂との比較において相対的に効果を示すものであっても、かかる如くメルトインデックスだけが調整されたポリアセタール樹脂では、これを鞘材とし他のポリマーを芯材とする複合繊維の曳糸性及び可紡性はなお不十分であり、実用性に欠けるものであった。
【0010】
また、本発明者が、上記特許文献に記載されたメルトインデックス(文献では溶融粘度と称しているもの)が100〜500であるポリアセタール樹脂の調製を追試したところ、かかるメルトインデックスのポリアセタール樹脂は分子量が小さく、真の意味での溶融粘度が低いため、その調製は極めて困難であり、工業的に製造できるようなものではなかった。さらに、かかる低溶融粘度のポリアセタール樹脂は溶融加工性に欠けるものであり、通常、ポリアセタール樹脂(共重合体)の製造においては常套手段として行なわれる溶融混練による不安定末端の分解除去処理や、安定剤を配合して押出機で溶融混練する安定化処理が著しく困難であった。また、分子量が小さいため、熱安定性や機械的特性の面でも不十分なものであった。
【0011】
このように、メルトインデックスだけを100〜500に調整したポリアセタール樹脂を鞘材とし他のポリマーを芯材として複合繊維を形成し、該繊維の集合体を用いることを特徴とする特許文献1に開示されたフィルターでは、上記の如く多くの課題を抱えるものであった。
【0012】
本発明の目的は、上記のような課題を解決し、生産性良く工業的に製造することができ、機械物性、耐薬品性等に優れたポリオキシメチレン樹脂製フィルターを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、結晶化特性、流動性等を制御した特定のポリオキシメチレン共重合体を用いることにより、これらの課題が一気に解決し、機械物性、耐薬品性、耐酸性等に優れたポリオキシメチレン樹脂製フィルターを経済的に製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち本発明は、主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されたポリオキシメチレン樹脂製フィルターである。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示す。)
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターは、前述した如く、主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molの前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、かつメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜100g/10分であるポリオキシメチレン共重合体からなる繊維の集合体で形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明で使用するかかるポリオキシメチレン共重合体において、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合は、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜10molであり、好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり2〜8mol、特に好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり2〜5molである。一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合が少なくなるとポリオキシメチレン共重合体の結晶化速度が速くなり、フィルターを構成する繊維紡糸時の断糸発生が増大するばかりでなく、紡糸直後の結晶化度が増大することにより延伸性も低下し、フィルターに適した繊維の製造が困難になる。逆に一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合が多くなり過ぎると、ポリオキシメチレン共重合体の機械的特性等が低下する。
【0019】
また、本発明で使用するポリオキシメチレン共重合体は、ASTM D−1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定されるメルトインデックス(MI)が1〜100g/10分のものであり、好ましくは2.5〜90g/10分、特に好ましくは5〜80g/10分である。なお、フィルターを構成する繊維の製造方法により、かかるメルトインデックスの範囲内で更に好ましいメルトインデックスの適合範囲が存在するが、この点については後述する。
【0020】
メルトインデックス(MI)が過大なポリオキシメチレン共重合体は、これを工業的に安定して製造することが難しく、また、低分子量で溶融粘度が低くなり過ぎるために、ポリオキシメチレン共重合体の製造においては常套手段として行なわれる溶融混練による不安定末端の分解除去処理や、安定剤を配合して押出機で溶融混練する安定化処理等における溶融加工性が著しく劣るものとなる。さらに、低分子量であるために熱安定性や機械的特性が劣るものとなり、フィルターを構成する繊維の紡糸及び延伸時に断糸し易くなり、繊維の製造が不安定なものとなる。逆にメルトインデックス(MI)が過小のポリオキシメチレン共重合体では、溶融粘度が高くなり過ぎるために紡糸時の負荷が増大し押出しが困難となる。
【0021】
本発明で使用する上記の如きポリオキシメチレン共重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的にはトリオキサンとコモノマーである環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物とを、主としてカチオン重合触媒を用いて塊状重合させる方法で得ることができる。重合装置としては、バッチ式、連続式等の公知の装置が何れも使用できる。ここで、前述した一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の導入割合は、共重合させるコモノマーの量により、また、メルトインデックス(MI)は、重合時に使用する連鎖移動剤、例えばメチラール等の添加量により調整することができる。
【0022】
コモノマーとして用いられる環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、その中でもエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。また、本発明に使用するポリオキシメチレン共重合体は、分岐又は架橋構造を有するものであってもよい。
【0023】
本発明において使用するポリオキシメチレン共重合体において、かかるコモノマーによって形成される前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位はポリオキシメチレン共重合体の分子鎖中に極力均一に分散していることが好ましく、前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位が2個以上連鎖したものの割合は、オキシアルキレン単位全体の5mol%以下であるのが好ましい。
【0024】
重合によって得たポリオキシメチレン共重合体は、触媒の失活化処理、未反応モノマーの除去、重合体の洗浄、乾燥、不安定末端部の安定化処理等を行った後、更に各種安定剤の配合による安定化処理等を行って、実用に供される。代表的な安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。
【0025】
更に、本発明で使用するポリオキシメチレン共重合体には、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは有機高分子材料、無機または有機の繊維状、板状、粉粒状の充填剤等の1種または2種以上を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0026】
次に、本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターを構成する繊維集合体としての不織布及び繊維集合体の要素となる繊維の製造方法について説明する。
【0027】
不織布加工方法については、スパンボンド法、メルトブローン法、一旦短繊維或いは長繊維を紡糸した後、何れかの方法により繊維を結合或いは絡めることによる不織布の製造方法等が使用でき特に限定されるものではない。ここで、メルトブローン法の場合は、前述したメルトインデックス(MI)の中でメルトインデックスが20〜100g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは30〜90g/10分である。また、スパンボンド法および短繊維不織布の場合は、メルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは5〜20g/10分である。繊維を結合或いは絡める方法としても特に限定されるものではなく、熱による融着、接着剤による接着、液体・気体の流れによる絡合、特殊形状の針によるニードルパンチ等の方法を用いることができる。熱による融着法の場合、融点の低いポリマーを配合或いは外層(鞘)に使用する芯鞘構造とすることで融着温度範囲も広がり、接着強度も増大することが期待できる。
【0028】
また、繊維としてのモノフィラメント或いはマルチフィラメントの製造方法についても特に限定されるものではなく、一般的な溶融紡糸及び延伸製造方法を用いることが可能である。ここで、モノフィラメントの場合は、前述したメルトインデックス(MI)の中でメルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは1.5〜15g/10分である。また、マルチフィラメントの場合は、メルトインデックスが1〜30g/10分のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは3〜20g/10分である。
【0029】
フィラメントの製造方法の一例としては、溶融混練装置、ギヤポンプ、吐出ノズル等で構成される紡糸装置より吐出された溶融ポリマーをローラーにより巻き取ることで紡糸を行う方法が挙げられる。紡糸工程で得られた繊維は、延伸工程に付し、連続的、或いは非連続的に延伸を行うことが出来る。
【0030】
延伸比は巻出ロールと巻取ロールの速度比を適宜設定することによって調整することができ、所望の延伸倍率の繊維が得られる。この時の加熱方法は、加熱気体、加熱液体、熱板接触、遠赤外線加熱、レーザー光加熱、電磁誘導加熱 等の方法を用いることが可能であり特に限定されるものではない。延伸加工時には、対象となる未延伸糸の温度が100〜180℃となるよう前述の何れかの方法で加熱することが好ましく、更に好ましくは130〜160℃である。加熱不足状態では延伸応力が大きくなり生産性が低下するばかりでなく断糸も発生しやすくなる。過加熱状態ではポリマーが溶融状態となり断糸するため好ましくない。短繊維を得る場合は、延伸工程後、必要に応じて捲縮処理を施し、10mmから100mm程度の長さに切断することで得られる。
【0031】
上記の如き方法で得られる繊維径は、フィルター性能を決定する開口径を決定する因子となるため、濾過分離する目的対象物に応じて調整するのが好ましい。フィルター構成成分である繊維の径については用途により任意に設定することが可能であり特に限定されるものでは無いが、例えば2d(デニール)から5000d程度好ましくは10dから2000dの繊維を単体或いは組合せて用いることができる。
【0032】
本発明のポリオキシメチレン樹脂製フィルターとしては、上述のような方法で得られた不織布をそのまま所望の形状に切断し用いることも可能であり、またフィラメントを織機にて織ることにより得られる織布もフィルターとして用いることができる。織り方についても一層の平織、綾織、多重織、その他特に限定されるものではない。さらにフィラメントの編布もフィルターとしての使用が可能である。不織布単体と比較して、シート面方向の機械強度が大きく通気・通水性があるため、搬送機能のある搾水フィルターとして工業的にも応用範囲が広いものである。
【0033】
以上の様な織布、不織布単体をフィルターとして用いること以外に、モノフィラメント或いはマルチフィラメントなどからなる織布・メッシュ・編布を基材として短繊維をニードリングし短繊維をメッシュに絡めつけることにより製造されるシートも、フィルターとしての使用が可能である。強度・フィルター機能を兼備えているため、工業的に応用範囲の広いものである。
【0034】
また、ポリオキシメチレン樹脂繊維のみからなる種々のフィルターの強度が使用目的に対し不足する場合には、金属メッシュ等を支持部材として使用し、繊維の集合体を支持部材に支持させるか或いは固定することで機械的強度を有するフィルターとすることが可能である。また、上記のポリオキシメチレン樹脂繊維集合体によるフィルター同士を組み合わせて使用したり、あるいはポリオキシメチレン樹脂繊維集合体によるフィルターと他素材フィルターとを複合化して使用することも可能である。
【0035】
本発明の特徴の一つとして、特定のポリオキシメチレン共重合体を用いることにより、フィルターを構成する繊維の紡糸加工性、延伸性が良好となり、低い応力により分子・結晶配向し易いことがある。配向度が高くなることで繊維に強度、靭性が付与され、フィルターとしての性能に大きく寄与する。
【0036】
本発明のフィルターを構成する繊維は、広角X線回折測定により算出される配向度が50%以上であることが好ましく、前述した特定のポリオキシメチレン共重合体の使用はこれを可能にするものである。配向度が過小の場合は構成繊維が脆性的な特性を有し、繊維は脆く、フィルターへの実使用が困難となる。ここで、配向秩序パラメーターは次式で与えられ、Sを配向度として算出した。
【0037】
【数1】
【0038】
本発明のポリオキシメチレン樹脂製のフィルターは、その高強度、高弾性率、耐溶剤性、耐熱性、摩擦磨耗特性、耐アルコール性 等の優れた特性を活かし種々の応用が可能である。例えば、抄紙工程の搾水フィルター、バグフィルター、濾過目的土木シート、自動車用燃料フィルター等が例示できる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜11
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、液状のトリオキサン、コモノマーとして環状エーテル又は環状ホルマール(1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、エチレングリコールホルマール)を加え、更に分子量調節剤としてメチラール、同時に触媒の三フッ化ホウ素50ppm(全モノマーに対し)を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行い、表1に示すポリオキシアルキレン量の重合体を調製した。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0040】
次いで、この粗ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量部、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し不安定部分を除去した。
【0041】
上記の方法で得たポリオキシメチレン樹脂100重量部に、安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.03重量部およびメラミン0.15重量部を添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し、ペレット状のポリオキシメチレン樹脂を得た。
【0042】
上記のポリマーを用いてフィルターを次の方法で得た。
(1)メルトブローン法
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で定量によりメルトブローンし、サクション付のネット上に連続的に積層しながら捕集した。次に得られた積層物をニードルパンチにより繊維を絡合させ厚さ5mmの不織布を製造した後、切断してフィルターとした(実施例4、5)。
(2)スパンボンド法
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量し、ノズル温度225℃にてスパンボンドし連続的に捕集しウェブを作製した後、ニードルパンチにより繊維を絡合させて厚さ約5mmの不織布を製造した後、切断しフィルターとした(実施例3)。
(3)短繊維不織布
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で溶融紡糸し、150℃熱風炉中で3倍延伸した後、約35mm長に切断することにより短繊維を得た。得られた短繊維径は20dであった。得られた短繊維をカード方式で開繊しウェブを作製した後ニードルパンチにて絡合することで厚さ約5mmの不織布を製造した後、切断することでフィルターとした(実施例1、2、6〜9)。
(4)モノフィラメント平織メッシュ
得られたポリマーを用い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により樹脂を溶融可塑化しギヤポンプで計量しノズル温度225℃、熱風温度200℃で溶融紡糸し、150℃熱風炉中で5倍延伸し約800dのモノフィラメントを得た後、織機にて平織りすることでメッシュフィルターを得た(実施例10)。
(5)モノフィラメント+単繊維複合型
上記実施例10の800dのモノフィラメント平織メッシュに、上記実施例2に従って調製し、長さ約70mmに切断した短繊維をニードリングすることで厚さ約5mmのメッシュ+不織布複合型フィルターを得た(実施例11)。
比較例1〜4
コモノマー使用量或いはメチラールの添加量を変えた以外は実施例と同様にして、表1に示すようにオキシアルキレン単位量或いはメルトインデックスが本発明の規定外であるポリオキシメチレン樹脂を調製し、同様にフィルターを得た。結果を表1に示す。
比較例5
コモノマーとしてエチレンオキシドを用い、オキシアルキレン単位量及びメルトインデックスが本発明の規定外であるポリオキシメチレン樹脂を調製し、同様にフィルターを得た。結果を表1に示す。
【0043】
尚、実施例・比較例における評価基準等は以下の通りである。
[メルトインデックス(MI)測定]
ASTM D−1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定した。
[ポリマー組成分析]
物性評価に用いたポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールd2に溶解し、1H−NMR測定を行った。各ユニットに対応するピーク面積より定量した。
[配向度]
広角X線回折装置(理学電機製 Rint−1400)を用い、Niフィルターでモノクロ化したX線(Cu−Kα)ピンホールビームと平板イメージングプレート(IP)を使って、透過法による二次元散乱図形を撮影することにより測定。次式により算出した。
【0044】
【数2】
【0045】
[耐酸性]
耐酸性について次の通り判定した。室温中で混合酸水溶液(水:塩酸:硫酸=4:1:3)中にフィルターを5分間浸漬し、劣化状態を繊維表面のクラック発生を顕微鏡(×300)倍にて拡大し観察し、下記基準で評価した。
【0046】
5点…クラックは観察されない
3点…繊維表面の1部にクラック発生がわずかに認められる。
【0047】
1点…繊維表面に全体にクラックが発生しており劣化が進行している。
【0048】
【表1】
【0049】
DO;1,3−ジオキソラン
BDF;1,4−ブタンジオール
EGF;エチレングリコールホルマール
EO;エチレンオキシド
Claims (17)
- ポリオキシメチレン共重合体が、オキシメチレン単位100mol当たり2〜8molの前記オキシアルキレン単位を含むものである請求項1記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- ポリオキシメチレン共重合体が、オキシメチレン単位100mol当たり2〜5molの前記オキシアルキレン単位を含むものである請求項1記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- ポリオキシメチレン共重合体が、2.5〜90g/10分のメルトインデックスを有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- ポリオキシメチレン共重合体が、5〜80g/10分のメルトインデックスを有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- ポリオキシメチレン共重合体が、分岐又は架橋構造を有するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- フィルターを構成するポリオキシメチレン共重合体からなる繊維が、広角X線回折測定により得られる繊維軸方向の配向度として、50%以上の配向度を有するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、不織布である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、モノフィラメントで形成されたメッシュである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、マルチフィラメントの織布である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、モノフィラメントと不織布を複合化させてなるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、マルチフィラメントと不織布を複合化させてなるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、モノフィラメントメッシュを基材としたニードリング不織布である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が、モノフィラメント又はマルチフィラメントの編布である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が支持部材に支持されている請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 繊維の集合体が支持部材に固定されている請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂製フィルター。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の繊維集合体によるフィルターと他素材フィルターとを複合化することにより構成されるフィルター。
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