JP2005012103A - 電波吸収筐体及びその製造方法 - Google Patents

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茂 山内
Satoru So
哲 宗
Eiji Hirose
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Abstract

【課題】生産性及び作業性に優れ、安価に製造することが出来る電波吸収筐体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電波吸収筐体Pは、基板B上に設置された少なくとも一個以上の電磁波発信部品Da及びDbを配設し、この電磁波発信部品Da及びDbを所定の空間Yを隔てて囲むように設置された断面箱状の外殻1により構成されている。なお、外殻1の形状は、箱状に限定されず、ドーム状に構成することも可能である。外殻1は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を一体的に形成して構成され、外殻1の外表面には、収納している電磁波発信部品Da及びDbが外部からの電磁波Qの影響を受けないように所定厚さの導電性塗料または金属メッキで被覆した反射層Xが形成してある。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電波吸収筐体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、電磁波発信部品を内部に配設した電波吸収筐体内の電磁界における電磁波障害を防止するための電波吸収筐体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年のマイクロ波帯やミリ波帯における電子機器の実用化に伴い、電波吸収筐体内に配置されたIC等の電磁波発信部品間での電磁結合や、これらから放射された電磁波が電波吸収筐体内で共振現象を起こすことにより、他の電磁波発信部品に悪影響を及ぼすことが指摘されるようになってきた。
【0003】
この対策として出願人は、自らの開発した平面波用の電波吸収体の組成物(特願2000−164931号)が、電波吸収体の厚さを調整することにより近傍電磁界における電波吸収構造体としても有効であることを見出した(特許文献1参照)。そして、図5に例示するように、かかる電波吸収組成物Rを電波吸収筐体Pを構成する基板B上に設置された電磁波発信部品Da、Dbを覆い、かつ収納する金属ケースSの内面に塗布又はシート貼りすることにより初期の目的を達成してきた。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−151884号公報(第2〜〜第3頁、図1,図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、このような方法には以下に述べるような種々の課題が残されていた。即ち、
(1).電波吸収筐体として、金属等の導電性の構造体(金属ケース)の使用が前提となる(形態上の自由度が少なく、生産性が悪い)、
(2).電波吸収体の組成物の塗布時の塗布厚さ、または電波吸収体の組成物のシート貼り時のシート厚さの制御を必要とする(特に、塗布厚さの制御が難しい)、
(3).電波吸収体の組成物の塗布時、または電波吸収体の組成物のシート貼り時の作業性が悪い(作業や乾燥に多くの時間を要する)、
(4).電波吸収筐体内に外部と受発信する電磁波発信部品を備える場合には金属ケースに電磁波の通過孔を形成する必要がある、
等の問題であった。
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、生産性及び作業性に優れ、安価に製造することが出来る電波吸収筐体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の電波吸収筐体は、基板上に電磁波を発信する少なくとも1個以上の電磁波発信部品を配設し、該電磁波発信部品を所定の空間を隔てて外殻により覆うようにした電波吸収筐体において、前記外殻を、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物により一体的に形成したことを要旨とするものである。
【0008】
ここで、前記熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性カーボンブラックを4重量部以下配合することも可能であり、また前記外殻の外壁面を、導電性塗料または金属メッキから成る反射層で被覆し、また前記電磁波発信部品が複数であり、かつ発信する電磁波の周波数が異なる場合の前記外殻を、前記各電磁波発信部品の対応する位置に、前記電磁波の周波数に対応した樹脂組成物により構成するものである。
【0009】
また、前記電磁波発信部品が複数であり、かつ発信する電磁波の周波数が異なる場合の前記外殻を、前記電磁波発信部品が発信する電磁波の周波数に対応した厚さを異にする樹脂組成物により構成するものである。
【0010】
更に、前記外殻に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の樹脂組成物からなる透過領域を設けることも可能である。
【0011】
このように、外殻を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合したり、またこれに加えて熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性カーボンブラックを4重量部以下配合した樹脂組成物により一体的に形成したので、外殻の形態を自由に設定することができると共に、所望の電波吸収性能に応じて任意にその厚さを変更させた外殻を大量生産できることから、生産性及び作業性に有利となる。
【0012】
また、この発明の電波吸収筐体の製造方法は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を、射出成形またはプレス成形により所定形状の外殻を成形し、この外殻を、前記基板上の電磁波発信部品に対して所定の空間を隔てて覆うように固定することを要旨とするものである。
【0013】
ここで、前記樹脂組成物を、前記熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性カーボンブラックを4重量部以下配合することも可能である。
【0014】
このように、外殻を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる組成物を射出成形またはプレス成形により一体的に形成し、これを基板上の電磁波発信部品と所定の間隔を隔てて覆うように固定したので、従来の金属ケース内面に電波吸収組成物の塗布又はシート貼りをして基板上に固定する方法に比較して生産性及び作業性に優れている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0016】
なお、以下の説明において、従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0017】
図1はこの発明による電波吸収筐体の構造の第1実施形態を示す断面図であって、電波吸収筐体Pは、基板B上に設置された少なくとも一個以上(この実施形態では2個設置してあるが、数には限定されない)の電磁波発信部品Da及びDbを配設し、この電磁波発信部品Da及びDbを所定の空間Yを隔てて囲むように設置された断面箱状の外殻1により構成されている。なお、外殻1の形状は、箱状に限定されず、ドーム状に構成することも可能である。
【0018】
前記外殻1は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を一体的に形成して構成され、外殻1の外表面には、収納している電磁波発信部品Da及びDbが外部からの電磁波Qの影響を受けないように所定厚さの導電性塗料または金属メッキで被覆した反射層Xが形成してある。
【0019】
このように外殻1を構成することで、電磁波発信部品Da及びDbが発信した電磁波Qが周囲を取り囲む上記樹脂組成物から成る外殻1に入射し、外殻1内を通過する過程で外殻1の材料に配合された導電性酸化チタンにより吸収されて外部への放射を防いでいる。
【0020】
また、外殻1の外表面に形成した反射層Xにより、外殻1の内部の電磁界が外部からの電磁波Qの影響を受けることがなくなると共に、電磁波発信部品Da及びDbが発信した電磁波が外殻1内を通過する過程で、吸収しきれなかった電磁波の外部への放射を防ぐことが出来るものである。
【0021】
また、電波吸収筐体Pを構成する外殻1は、内部に配設する電磁波発信部品Da及びDbが発信する電磁波Qの波長に応じてその厚さtを異にする多種のものが用意される。外殻1の厚さtは電磁波発信部品Da及びDbが発信する電磁波Qの波長の0.1〜0.2倍の厚さtになるように調整することが好ましい。このような厚さtの範囲内にすることによって、電磁波の吸収効果がより得られるために好ましいのである。
【0022】
外殻1の厚さが吸収すべき電磁波Qの波長の0.1倍未満では吸収効果が充分得られず、0.2倍超では吸収効果が頭打ちになるからである。
【0023】
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等ポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、ポリエステル樹脂等、またはこれらの混合物が使用される。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノ−ル樹脂、等が使用される。
【0024】
電波吸収筐体Pを構成する外殻1の組成は、樹脂の種類やこれに添加する導電性酸化チタンの種類と配合量により左右される材料の複素比誘電率の変動要素を考慮すると、導電性酸化チタンの配合量を樹脂100重量部に対して5〜40重量部、好ましくは10〜35重量部とする。
【0025】
導電性酸化チタンは吸収性能の広帯域化に効果があるが、その配合量が樹脂100重量部に対して5重量部未満であると材料の複素比誘電率が実部、虚部共に低くなり過ぎてミリ波帯域の電波に整合できなくなり、40重量部超となると逆に複素比誘電率の実部、虚部が共に高くなり過ぎてミリ波帯域の電波に整合できなくなる。
【0026】
また、上述する樹脂に導電性酸化チタンに加えて導電性カ−ボンブラックを配合してもよい。導電性カ−ボンブラックは複素比誘電率の虚部を高くして電波吸収性能に影響を及ぼすことなく外殻1の厚さを薄くすることを可能にする。導電性カ−ボンブラックの配合量は樹脂100重量部に対して4重量部以下とするとよい。このように、導電性カ−ボンブラックの配合量を4重量部以下にすることによって、材料の粘度を適度に保つ事が可能となり、良好な施工性が得られるため好ましい。
【0027】
外殻1内に配設される電磁波発信部品Da及びDbが、上記第1実施形態の図1に示すように、複数である場合には、各々が発信する電磁波Qの周波数に対応した電波吸収性能を備えるために、例えば、図2に示す第2実施形態のように、電磁波発信部品Daに対応する1aの部分と電磁波発信部品Dbに対応する1bの部分とで外殻1の組成を変化させるか、または、図3に示す第3実施形態のように、電磁波発信部品Daに対応する外殻1の厚さtaと電磁波発信部品Dbに対応する外殻1の厚さtbを変化させることが好ましい。これにより、単一の成形体により周波数が異なる複数の電磁波Qの吸収を可能にすることが出来る。
【0028】
また、外殻1内に配備される複数の電磁波発信部品Da及びDbのうち、例えば電磁波発信部品が受発信アンテナ等のように外部との受発信を行なう必要のある電磁波発信部品Dxである場合には、図4に示す第4実施形態のように、外殻1の電磁波発信部品Dxに対応する部分に電磁波Qを通過させるための透過領域1cを形成しておく。
【0029】
そして、透過領域1cにおける外殻1の組成物として導電性酸化チタンを配合しない樹脂を使用し、導電性酸化チタンを配合した樹脂からなる非透過領域1dと組み合わせて一体的に成形するとよい。これにより、外殻1に電磁波通過孔を形成することなしに、電磁波発信部品Daが透過領域1cを通して外部との受発信を行なうことができる。
【0030】
更に、外殻1に収容されている電磁波発信部品Dbが外部からの電磁波Qの影響を受けないように、非透過領域1dの外壁を所定厚さの導電性塗料または金属メッキで被覆した反射層Xで形成することが好ましい。
【0031】
次に、この発明の電波吸収筐体Pの製造方法としては、先ず外殻1を、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を射出成形、またはプレス成形により所定の形状に一体的に成形しておく。
【0032】
そして、外殻1を基板B上に、電磁波発信部品Da、Dbと所定の空間Yを隔てて覆うように固定する。これにより得られた外殻1は、必要に応じてその外表面に所定厚さの導電性塗料または金属メッキで被覆した反射層Xを形成する。
【0033】
また、外殻1内に収容する電磁波発信部品Daの中に外部との受発信を必要とする電磁波発信部品Daが含まれる場合には、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した組成物からなる非透過領域1dと、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性酸化チタンを配合しない樹脂組成物からなる透過領域1cとを射出成形又はプレス成形により一体的に成形するとよい。これにより得られた外殻1は、必要に応じて透過領域1cを除いた非透過領域1dの外表面に所定厚さの導電性塗料または金属メッキで被覆した反射層Xを形成する。
【0034】
上述したこの発明による電波吸収筐体Pを構成する外殻1は、電波吸収筐体P内に配備した少なくとも1個以上の電磁波発信部品Daによる電磁波障害を防止するもので、この発明の各実施形態では、特に近傍電磁界における電磁波障害の防止のために使用されるが、これに限られることなく、遠方電磁界における電磁波障害の防止にも有効である。
【0035】
【発明の効果】
この発明は、上記のように外殻を、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物により一体的に形成したので、外殻の形態を自由に設定することができると共に、所望の電波吸収性能に応じて任意にその厚さを変更させた外殻を形成でき、従って外殻を大量生産できることから、コストダウンを図ることが出来ると共に、生産性及び作業性を向上させることが出来る効果がある。
【0036】
また、電磁波発信部品のうち外部との受発信を必要とする電磁波発信部品が含まれる場合には、外殻に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に導電性酸化チタンを配合しない樹脂組成物からなる透過領域を設けることにより、外殻に電磁波通過孔を形成することなしに、外部との受発信が導電性酸化チタンを配合しない透過領域を介して行なうことができる。
【0037】
また、この発明の電波吸収筐体の製造方法は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を、射出成形またはプレス成形により所定形状の外殻を成形し、この外殻を、前記基板上の電磁波発信部品に対して所定の空間を隔てて覆うように固定するので、従来の金属ケース内面に電波吸収組成物の塗布、またはシート貼りをして基板上に固定する方法に比較して生産性及び作業性に優れると言う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の電波吸収筐体の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明の電波吸収筐体の第2実施形態を示す断面図である。
【図3】この発明の電波吸収筐体の第3実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明の電波吸収筐体の第4実施形態を示す断面図である。
【図5】従来の電波吸収筐体の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 外殻
B 基板
D、Da、Db、Dx 電磁波発信部品
P 電波吸収筐体
R 電波吸収組成物
S 金属ケース
Y 空間部
Q 電磁波
X 反射層

Claims (8)

  1. 基板上に電磁波を発信する少なくとも1個以上の電磁波発信部品を配設し、該電磁波発信部品を所定の空間を隔てて外殻により覆うようにした電波吸収筐体において、
    前記外殻を、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物により一体的に形成して成る電波吸収筐体。
  2. 前記熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性カーボンブラックを4重量部以下配合した請求項1に記載の電波吸収筐体。
  3. 前記外殻の外壁面を、導電性塗料または金属メッキから成る反射層で被覆した請求項1または2に記載の電波吸収筐体。
  4. 前記電磁波発信部品が複数であり、かつ発信する電磁波の周波数が異なる場合の前記外殻を、前記各電磁波発信部品の対応する位置に、前記電磁波の周波数に対応した樹脂組成物により構成した請求項1,2または3に記載の電波吸収筐体。
  5. 前記電磁波発信部品が複数であり、かつ発信する電磁波の周波数が異なる場合の前記外殻を、前記電磁波発信部品が発信する電磁波の周波数に対応した厚さを異にする樹脂組成物により構成した請求項1,2または3に記載の電波吸収筐体。
  6. 前記外殻に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の樹脂組成物からなる透過領域を設けた請求項1,2,3,4また5に記載の電波吸収筐体。
  7. 基板上に電磁波を発信する少なくとも1個以上の電磁波発信部品を配設し、該電磁波発信部品を所定の空間を隔てて外殻により覆う電波吸収筐体の製造方法において、
    熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性酸化チタンを5〜40重量部配合した樹脂組成物を、射出成形またはプレス成形により所定形状の外殻を成形し、この外殻を、前記基板上の電磁波発信部品に対して所定の空間を隔てて覆うように固定する電波吸収筐体の製造方法。
  8. 前記樹脂組成物を、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性カーボンブラックを4重量部以下配合した請求項7に記載の電波吸収筐体の製造方法。
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